説明

真偽判定体及び真偽判定体付き媒体

【課題】 真偽判定体あるいは真偽判定体が付与された媒体において、偽造防止性が非常に高く、また真偽判定を確実に行なえる真偽判定体及び真偽判定体付き媒体を提供する。
【解決手段】 位相差フィルムまたは位相差層の上下に、コレステリック液晶層が設けられた真偽判定体において、該位相差フィルムまたは位相差層の一方の面に設けられたコレステリック液晶層Aと、該位相差フィルムまたは位相差層の他方の面に設けられたコレステリック液晶層Bとの形成された形状が、互いに異なっているものである。この真偽判定体はコレステリック液晶層Aとコレステリック液晶層Bを組み合わせたものである。この真偽判定体に対して、偏光板を介して見ると、コレステリック液晶層AとBとの見え方が、異なり、一方の液晶層の色が見え、他方の液晶層の色が見えないようにすることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止性が非常に高く、また見る角度によって色相が異なって見え、また左偏光板もしくは右偏光板のいずれかを介して観察し、反射光の有無を確認することにより、見えるパターンが変化して、真偽判定を確実に行なえる真偽判定体及び真偽判定体付き媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、経済的に価値の高い高額商品や、ID(Identification;照合一致)手段として用いると高い価値を生じるクレジットカードや、トラベラーズチェック、または金券類等には、それらの真偽性を判定するのに適したホログラム(ラベル)を付与させて、偽造を防止して、真正物として証明することが行われている。しかし、最近では、目視では本物と区別がつかないようなホログラムの製造が行われて、真正性を証明する新規なものが要求されている。
【0003】
偽造防止対策として、例えば、特許文献1にあるように、対象物の真正性を識別するべく対象物に設けられる識別媒体として、入射した光のうち、左回り偏光又は右回り偏光のいずれか一方の光のみを反射する光選択反射層として、コレステリック液晶インキにより印刷して、その光選択反射層を形成することが記載されている。
【0004】
偽造防止の対策として、上記の方法で改善はされたものの、高分子コレステリック液晶の材料を入手すれば、偽造することは不可能ではなく、未だ十分に偽造防止の方法として、満足できるものとは言えないものである。
【特許文献1】特開2000−25373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上記のような課題を解決するために、本発明は、真偽判定体あるいは真偽判定体が付与された媒体において、偽造防止性が非常に高く、また真偽判定を確実に行なえる真偽判定体及び真偽判定体付き媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の状況を鑑み、鋭意研究開発を進め、本発明は真偽判定体及び真偽判定体付き媒体において、上記の課題を解決したものである。すなわち、請求項1に記載の発明は、位相差を生じさせる効果を有したフィルム(位相差フィルム)の両面に、コレステリック液晶層が設けられた真偽判定体において、該位相差フィルムの一方の面に設けられたコレステリック液晶層Aと、該位相差フィルムの他方の面に設けられたコレステリック液晶層Bとの形成された形状が、互いに異なっていることを特徴とする真偽判定体である。
【0007】
また、請求項2の発明は、位相差を生じさせる効果を有した層(位相差層)の上下に、コレステリック液晶層が設けられた真偽判定体において、該位相差層の一方の面に設けられたコレステリック液晶層Aと、該位相差層の他方の面に設けられたコレステリック液晶層Bとの形成された形状が、互いに異なっていることを特徴とする真偽判定体である。請求項3の発明は、請求項1または2のコレステリック液晶層A及びBが、各々の反射波長が異なることを特徴とする真偽判定体である。また、請求項4の発明は、請求項1または2のコレステリック液晶層A及びBが、各々の反射波長が同等であることを特徴とする真偽判定体である。
【0008】
請求項5の発明は、請求項1〜4の真偽判定体を粘着剤を介して、媒体に貼着させたもの、該真偽判定体を、媒体に転写またはラミネートして付着させたもの、該真偽判定体を基紙に、スレッド状に抄き込んだものの中のいずれかの一つであることを特徴とする真偽判定体付き媒体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の真偽判定体は、位相差フィルムまたは位相差層の上下に、コレステリック液晶層が設けられた真偽判定体において、該位相差フィルムまたは位相差層の一方の面に設けられたコレステリック液晶層Aと、該位相差フィルムまたは位相差層の他方の面に設けられたコレステリック液晶層Bとの形成された形状が、互いに異なっているものである。従来のコレステリック液晶材料をフィルム化させたものでは、偽造防止性(セキュリティ性)をさらに付加させることが困難であったが、本発明の真偽判定体はコレステリック液晶層Aとコレステリック液晶層Bを組み合わせたものである。この本発明の真偽判定体に対して、偏光板を介して見ると、コレステリック液晶層AとBとの見え方が、異なり、一方の液晶層の色が見え、他方の液晶層の色が見えないようにすることができた。これにより、偽造防止性が非常に高く、また真偽判定を確実に行なえるものが得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の真偽判定体1の一つの実施形態を示す概略断面図であり、位相差を生じさせる効果を有したフィルムである位相差フィルム2の一方の面に、コレステリック液晶層A(3)が部分的に、つまりパターン状に設けられ、また該位相差フィルム2の他方の面には、コレステリック液晶層B(4)が位相差フィルムの片側の全面に設けられたものであり、コレステリック液晶層Aと、コレステリック液晶層Bとの形成された形状が、互いに異なっている。このコレステリック液晶層AとBは、いずれも入射した光のうち、左回り偏光又は右回り偏光のいずれか一方の光のみを反射する機能をもつので、言い換えれば、光選択反射層でもある。
【0011】
また、図2は本発明の真偽判定体1の他の実施形態を示す概略断面図であり、位相差フィルム2の一方の面の全面に、コレステリック液晶層A(3)がベタ状に設けられ、また該位相差フィルム2の他方の面には、コレステリック液晶層B(4)が部分的に、つまりパターン状に設けられたものであり、コレステリック液晶層Aと、コレステリック液晶層Bとの形成された形状が、互いに異なっている。
【0012】
また、図3は本発明の真偽判定体1の他の実施形態を示す概略断面図であり、基材フィルム5の一方の面の全面に、コレステリック液晶層A(3)がベタ状に設けられ、そのコレステリック液晶層A(3)の上に、位相差層6がベタ状に設けられ、さらにその位相差層6の上に、コレステリック液晶層B(4)が部分的に、つまりパターン状に設けられたものである。この形態の状態のままで、真偽判定体として利用することが可能であるが、コレステリック液晶層A(3)を含めた積層体(符号では3、6、4で示される3層)が基材フィルムから剥離可能にした転写フィルムとして利用し、被転写体の対象物(媒体)にその積層体を熱、圧力を加えて、転写して付着させることが好ましく行なわれる。この転写フィルムの形態の場合、基材フィルムとコレステリック液晶層との熱離型性が不十分であれば、基材フィルム表面に各種の熱離型性をもたせるための手段として、従来公知の離型層を設けてもよい。さらに、転写フィルムの表面となるコレステリック液晶層の上に、熱転写の際に被転写体との密着性を高めるために、従来公知の接着層を設けることができる。尚、図3のものでも、コレステリック液晶層Aと、コレステリック液晶層Bとの形成された形状が、互いに異なっている。また、図示はしないが、図3に示した真偽判定体において、位相差層6の上に設けられたコレステリック液晶層A(3)とコレステリック液晶層B(4)において、コレステリック液晶層A(3)を部分的に、パターン状に設け、コレステリック液晶層B(4)を位相差層6の上の全面に設けても良い。
【0013】
図4は、本発明の真偽判定体1の一つの実施形態のものを、偏光板を介して観察した時に見えるコレステリック液晶層の発色状態を説明する概略図である。図4で示した真偽判定体1は、コレステリック液晶層Aが位相差フィルムまたは位相差層の片側の全面にベタ状に設けられ、コレステリック液晶層Bが、その位相差フィルムまたは位相差層の反対側に、「DNP」というパターンを設けたものである。この真偽判定体1を例えば、右円偏光板を介して観察すると、コレステリック液晶層Aのベタ状の発色の背景が見え、また左円偏光板を介して観察すると、その背景の色は消えて、コレステリック液晶層Bの「DNP」というパターンの発色が浮き出てくる。また、上記のコレステリック液晶層A、Bを構成するコレステリック液晶材料を変更する等により、上記の真偽判定体を左円偏光板を介して観察すると、コレステリック液晶層Aのベタ状の発色の背景が見え、また右円偏光板を介して観察すると、その背景の色は消えて、コレステリック液晶層Bの「DNP」というパターンの発色が浮き出てくるようにすることもできる。
【0014】
図5は、本発明の真偽判定体付き媒体7の一つの実施形態を示す概略平面図であり、真偽判定体がスレッド状(糸状)のもので、媒体として紙を用い、基紙8に、図1〜4に示したような真偽判定体のスレッド9を抄き込んだもので、スレッド9が間欠的に露出する複数の露出部10と、各露出部間でスレッド9を間欠的に覆う被覆部11とを備えている。また、その露出部10のスレッド9には、図4で示したような「DNP」というパターンの発色が浮き出てくるようにしたものである。この露出部10と被覆部11のパターンに対応した抄き網を使用した抄紙機で、スレッドの搬送を制御する等して、露出部10に「DNP」というパターンが図示したような位置になるようにして、抄造することにより、真偽判定体付き媒体7を得ることができる。図5では、真偽判定体を基紙に、スレッド状に抄き込んだものを示したが、これに限らず、真偽判定体を粘着剤を介して、媒体に貼着させたもの、あるいは真偽判定体を、媒体に転写またはラミネートして付着させたもの等がある。
【0015】
以下、本発明の真偽判定体及び真偽判定体付き媒体を構成する各層や、構成要素について、詳細に説明する。
(位相差フィルムまたは位相差層)
本発明の真偽判定体における位相差を生じさせる効果を有した位相差フィルム2または位相差層6に関し、位相差フィルムは、延伸したフィルムの形態であり、また位相差層は、その構成成分を含有する塗工液により、塗布して形成される塗膜の形態である。位相差フィルム、位相差層のいずれにおいても、つまり成膜された延伸フィルムであっても、塗工された塗膜であっても、それらの構成する材料としては、位相差を生じる材料であれば、限定するものではない。例えば、ネマチック相を形成し得る液晶材料や延伸フィルムが挙げられる。ネマチック相を形成し得る液晶材料としては、重合性液晶材料と重合性の無い高分子液晶材料とを挙げることができる。重合性液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、および重合性液晶高分子のいずれかを用いることが可能である。
【0016】
上記の延伸フィルムは、延伸工程で作製されたプラスチックフィルムである。延伸とは、プラスチックを融点以下ガラス転移点以上の適当な温度で引き延ばしてフィルムを作製する工法であり、その引き延ばす方向によって、一軸延伸、二軸延伸などがある。本発明では、屈折率異方性が存在すればよいので、一軸延伸、二軸延伸のいずれの工法で作製したフィルムでも使用することができる。具体的には、位相差層は、セロハン,セルロース,ポリエステル,ポリカーボネート(PC),ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリビニルアルコール(PVA),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリ塩化ビニリデン(PVDC),ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリスチレン(PS),ポリエチレンテレフタレート(PET),ナイロン等を材料とする延伸フィルムを用いることができる。
【0017】
(基材フィルム)
また、本発明の真偽判定体において、基材フィルム5に対して、コレステリック液晶層A(3)、位相差層6、コレステリック液晶層B(4)の順に積層した形態が挙げられる。(図3参照)その際の基材フィルムとしては、構成する材料としては特に制限されるものではなく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロール(TAC)、ジアセチルセルロール、ポリエチレン−エチルビニルアルコールなどのプラスチックを単独あるいは組み合わせて、単層のものや積層したりして用いることができる。基材フィルムの厚さは、0.005〜5mm程度が適当である。
【0018】
(コレステリック液晶層)
本発明の真偽判定体におけるコレステリック液晶層は、位相差フィルムまたは位相差層の上下に、コレステリック液晶層Aと、コレステリック液晶層Bを設ける構成であり、コレステリック液晶層Aと、コレステリック液晶層Bとの形成された形状が、互いに異なっている条件を満足すれば、コレステリック液晶層A及びBが、各々の反射波長が異なるものであってもよく、また、コレステリック液晶層A及びBが、各々の反射波長が同等であるものであってもよい。また、コレステリック液晶層A及びBを構成する液晶材料は、同じものであっても、異なる材料であってもよい。いずれにしても、上記の反射波長の条件を満たせばよい。
【0019】
コレステリック液晶層は、上記に挙げた位相差フィルムの上、あるいは上記の基材フィルムの上に、高分子コレステリック液晶をインキ化して、グラビア印刷等の凹版印刷、オフセット方式などの平版印刷、凸版印刷、スクリーン印刷等で形成される。位相差フィルムあるいは基材フィルム上に、コレステリック液晶層を積層する側には、必要に応じて配向膜を設けても良く、配向膜は、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリイミド樹脂等の一般に配向膜として使用し得るものであれば、いずれを用いて構成したものでもよい。配向膜は、これらの樹脂の溶剤溶液を、プラスチックフィルム基材の表面に適宜な塗布方法により塗布し、乾燥させた後に、布、ブラシ等を用いて摩擦するラビングを行なって形成することができる。
【0020】
このように形成されるコレステリック液晶層の厚さは、1μm〜20μm程度が望ましい。単位面積当たりの質量では、乾燥時で約1〜20g/m2程度である。その厚さが少なすぎると、コレステリック液晶特有の円偏光選択性と選択反射性の2つの特性を充分に発揮できなくなり、また厚すぎると液晶の配向が低下し、基材との密着性が低下したり、さらにコスト的にも不利である。コレステリック液晶層は単層で設けるだけでなく、2層以上を積層することも可能である。尚、上記の高分子コレステリック液晶の材料をインキ化したものは、例えばワッカーケミー社のコレステリック液晶「HELICONE(登録商標)」等で、市販されているものを使用することができる。
【0021】
本発明で使用される高分子コレステリック液晶とは、液晶分子の配向構造が膜厚方向に螺旋を描くように規則的なねじれを有している。また、高分子コレステリック液晶は、ピッチP(液晶分子が360°回転するのに必要な膜厚)と、入射光の波長λとがほぼ等しい場合に、選択反射性と円偏光選択性という2つの光学的性質を示すことが知られている。(参考文献;液晶とディスプレイ応用の基礎、コロナ社等)
【0022】
選択反射性とは、入射光のうち特定の波長帯域内にある光を強く反射する性質をいう。この選択反射性は、特定の波長帯域内に限定されて発現するため、高分子コレステリック液晶のピッチPを適切に選択することで、反射光は色純度の高い有彩色となる。その帯域の中心波長をλS、帯域幅をΔλとすれば、これらは光学媒体のピッチP(=λ/nm)と平均屈折率nm(=√((ne2+no2)/2))によって、下記式(1)、(2)のように決まる。ここで、Δnは光学媒体の面内の異常光線屈折率neと、常光線屈折率noの差(Δn=ne−no)とする。
λS=nm・P ・・・(1)
Δλ=Δn・P/nm ・・・(2)
【0023】
上記式(1)、(2)に示した中心波長λsおよび波長帯域幅Δλは、コレステリック液晶層への入射光が垂直入射(0°入射、on−axis入射)の場合において定義されるが、入射光が斜め入射(off−axis入射)である場合、ピッチPが見かけ上、減少することから、中心波長λSは短波長側へ移行し、波長帯域幅Δλは減少する。この現象は、λSが短波長側に移行することから、ブルーシフトと呼ばれ、その移行量は入射角に依存するが、目視で観察しても容易に識別可能である。例えば、垂直(0°入射位置)から観察して赤色に呈色する高分子コレステリック液晶の反射色は、視野角を大きくすることにつれ、オレンジ色、黄色、緑色、青緑色、青色と順次変化するように観察される。このように、コレステリック液晶層は観察する角度によって、色が短波長側にシフトし、カラーコピー等で再現することができない特殊な色を示す(変化する)ために、偽造防止には非常に有効なものである。
【0024】
コレステリック液晶層は、特有の反射色を示すことから、その液晶層を用いた真偽判定体に対し、目視でも容易に真偽判定を行うことができ、さらにその円偏光選択性を有しているため、左円偏光か右円偏光のどちらかを選択的に反射する。尚、円偏光選択性とは、特定の回転方向の円偏光だけを透過し、これと回転方向が反対の円偏光を反射する性質をいう。入射光のうち高分子コレステリック液晶の配向構造のねじれ方向と同方向の円偏光成分は反射され、その反射光の回転方向も同一方向となるのに対し、逆方向に回転する円偏光成分は透過する点が高分子コレステリック液晶に特有な特異な性質である。左ねじれ構造を有する高分子コレステリック液晶の場合、左円偏光を反射し、かつ反射光は左円偏光のままであり、右円偏光は透過することになる。また、右ねじれ構造を有する高分子コレステリック液晶の場合、右円偏光を反射し、かつ反射光は右円偏光のままであり、左円偏光は透過することになる。
【0025】
本発明の真偽判定体におけるコレステリック液晶層に使用される液晶材料は、例えば側鎖に液晶形成基を有するポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリマロネート等の側鎖型ポリマー、主鎖に液晶形成基をもつポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミドなどの主鎖型ポリマーを挙げることができる。
【0026】
配向状態にあるコレステリック液晶層は、入射した光のうち、左円偏光もしくは右円偏光のいずれか一方のみを反射する性質を有している。また、見る角度により、色相が異なって見える効果も有する。したがって、このコレステリック液晶層は光を選択して反射する層であり、言い換えれば、光選択反射層である。この光選択反射層はコレステリック液晶の溶剤溶液を各種の印刷法によって適用し、乾燥させることにより形成することができ、あるいは、このとき、重合性のコレステリック液晶を用いて紫外線重合性組成物を調製し、得られた紫外線重合性組成物を各種の印刷法によって適用し、乾燥後に、紫外線を照射して重合させて形成することもできる。コレステリック液晶層からなる光選択反射層は、上記の見る角度により、色相が異なって見えることを除けば、透視性を有しており、その意味で透明性を有するものである。
【0027】
配向状態を実現するには、延伸したプラスチックシートの表面にコレステリック液晶の溶剤溶液もしくは重合性のコレステリック液晶を用いて調製した紫外線重合性組成物を適用するか、もしくは対象物の表面に配向膜を形成してからコレステリック液晶の溶剤溶液もしくは重合性のコレステリック液晶を用いて調製した紫外線重合性組成物を適用すればよい。光選択反射層を二層以上設けるときは、層の厚みや素材のらせんピッチ等を異なるように構成し、より複雑な光学特性を付与することができる。あるいは光選択反射層はパターン状に形成することもできるので、一方を一様な層として形成し、他方をパターン状に形成してもよい。
【0028】
重合性のコレステリック液晶材料としては、下記の一般式(1)で表される化合物や、式(2)〜式(10)で示す化合物を例示することができる。これら例示したものはモノマーであるが、オリゴマーやポリマーであってもよい。一般式(1)で表される化合物を2種類以上併用することや、一般式(1)で表される化合物および式(2)〜式(10)で示す化合物の中から選択して2種類以上併用してもよい。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【0029】
上記の一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ水素もしくはメチル基を示し、Xは塩素もしくはメチル基であることが好ましい。また一般式(1)で表される化合物のスペーサーであるアルキレン基の鎖長を示すaおよびbは、2〜9の範囲であることが液晶性を発現させる上で好ましい。
【0030】
上記の液晶性化合物には、下記式(11)〜式(13)で表されるカイラル剤を配合してもよい。
【化11】

【化12】

【化13】

【0031】
上記の式(11)において、R3は、水素もしくはメチル基を示す。上記式(11)および式(12)において、Yは、下記式(14)および(15)で示す式(i)〜式(xxiv)のうちのいずれかである。また、上記式(11)〜式(13)において、アルキレン基の鎖長を示すc、dおよびeは、2〜9の範囲であることが液晶性を発現させる上で好ましい。
【化14】

【化15】

【0032】
上記のコレステリック液晶材料およびカイラル剤は、必要に応じて紫外線重合開始剤、さらに溶剤や希釈剤と共に、一例として、コレステリック液晶材料:カイラル剤:紫外線重合開始剤=100:5:5(質量基準)の配合比で混合し、混合して得られた粉体をトルエン等の溶剤を用いて溶解し、30質量%程度の濃度の塗布用溶液を調製するとよい。なお、配合比は、使用するコレステリック液晶材料、カイラル剤、もしくは紫外線重合開始剤等の種類、塗布方式もしくは塗布機、または得たい塗布量によって適宜に定めることができる。
【0033】
コレステリック液晶層は、左回り偏光または右回り偏光のどちらを反射するタイプでもよく、同方向でも複数の異なる反射色を示す液晶材料を使用してもよい。また、コレステリック液晶層を基材上に、形成する方法としては、上記の液晶材料を、例えば分子配向させ、次に紫外線照射し、架橋させてから、粉砕して顔料化させた液晶顔料をビヒクル中に分散させて、つまり液晶材料をインキ化して、上記に説明したような公知の印刷方式が挙げられる。
【0034】
また、光選択反射層として、上記のコレステリック液晶層だけでなく、種々の素材を用いて構成することができ、例えば、見る角度によって色が変化する顔料を用いる、蒸着薄膜を用いる、もしくは二色性色素を用いることにより構成することができる。見る角度によって色が変化する顔料としては、高屈折率の酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄などの層と、低屈折率のマイカ等の層を積層したパール顔料を例示することができ、具体的には、(株)資生堂製の商品名;インフィニットカラーや、メルク社(独国)製の商品名;イリオジン等が入手可能である。蒸着薄膜はアルミニウム等の金属やそのほかの素材を気相法により薄膜として形成したもので、水面に浮かんだ油の薄膜のようないわゆる干渉色を示すものである。二色性色素は、分子軸の方向によって光の吸収性を相違する長鎖色素分子からなり、例えば、色素分子の分子軸の方向に対して法線方向の光成分は吸収性がほぼなく光を透過するのに対して、分子軸の方向に対して平行方向の光成分は吸収性を有し、光を透過しない性質を有するもので、アントラキノン系、アゾ系、もしくはビスアゾ系の色素を例示することができる。上記のうち、見る角度によって色が変化する顔料もしくは二色性色素は適宜なバインダ樹脂中に分散し、溶剤で希釈して塗布用組成物としたものをシルクスクリーン印刷、グラビア印刷、もしくは公知のコーティング法によって対象表面に適用すればよい。
【0035】
(ホログラム形成層)
本発明の真偽判定体では、偽造防止性をより高めるために、ホログラム形成層をコレステリック液晶層と組み合わせて使用することができる。位相差フィルムの上、あるいは基材フィルムの上に形成されたコレステリック液晶層の上、または。位相差フィルム、あるいは基材フィルムとコレステリック液晶層との間に、ホログラム形成層を設けることができる。
【0036】
ホログラム形成層は、下面にホログラムの微細凹凸が形成されたものであるが、層自体は、ホログラムの微細凹凸の形成が可能な種々の素材を用いて構成し得るものである。例えば、ホログラム形成層4は、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの透明な熱可塑性樹脂で構成することができる。あるいは、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレートなどの透明熱硬化性樹脂で構成することができる。さらには、上記の熱可塑性樹脂と上記の熱硬化性樹脂とを混合して使用し、更には、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質、或いは、これらにラジカル重合性不飽和単量体を加え電離放射線硬化性としたものなどを使用して構成することができる。
【0037】
ホログラム形成層へのホログラムの微細凹凸の形成は、回折格子やホログラムの干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型として用い、基材に上記の樹脂を塗布用組成物として調製したものを、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法などの手段で塗布して、塗膜を形成し、その上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着する等により、行なうことができる。また、フォトポリマーを用いる場合は、基材上に、フォトポリマーを同様に塗布した後、前記原版を重ねてレーザー光を照射することにより複製してもよい。
【0038】
またホログラムの微細凹凸の回折効率を高めるために、反射性金属層を設けることができる。その反射性金属層は、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Al、Mg、Sb、Pb、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、もしくはRb等の金属を用いて構成することができ、またはこれらの金属の酸化物、もしくはそれらの窒化物を単独で、もしくは組合わせて構成することもできるので、便宜上、金属の酸化物、もしくはそれらの窒化物も金属の範囲として含めるものとする。上記のうちでも、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、もしくはAu等が特に好ましい。反射性金属層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの薄膜形成法によって形成することが好ましいが、メタリック顔料を含有するメタリックインクを用いて印刷することによって形成してもよい。また、透明タイプのホログラムを形成する薄膜はホログラム効果を発現できる光透過性のものであれば、いかなる材料のものも使用できる。たとえば、ホログラム形成層(光硬化性樹脂層)の樹脂と屈折率の異なる透明材料がある。この場合の屈折率はホログラム形成層の樹脂の屈折率よりも大きくても、小さくても良いが、屈折率の差は0.1以上が望ましく、より好ましくは0.5以上であり、1.0以上が最適である。また、上記以外では20nm以下の金属反射層がある。好適に使用される透明タイプ反射層としては酸化チタン(TiO2)、硫化亜鉛(ZnS)、Cu・Al複合金属酸化物等が挙げられる。
【0039】
(真偽判定体を粘着剤を介して、媒体に貼着させる方法)
本発明の真偽判定体は、粘着剤を介して、真偽判定の対象となる種々の物品、すなわち媒体に貼着させることができる。図1、2に示すような真偽判定体では、一方のコレステリック液晶層の上に、つまり表面に粘着剤層を積層させ、さらにその粘着剤層の上に離型シートを積層させることができる。また、図3に示すような真偽判定体では、基材フィルムのコレステリック液晶層の設けられていない表面に、粘着剤層を積層させ、さらにその粘着剤層の上に離型シートを積層させることができる。このような形態は、いわゆるラベルと呼ばれるもので、離型シートを剥がして、粘着剤層により任意の物品に、真偽判定体(ラベル)を貼り付けることができる。粘着剤層は、例えば、アクリル系樹脂、天然ゴム系樹脂、合成ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等からなる水性タイプまたは溶剤系タイプの塗工液を用いて、形成できる。塗工方法はロールコーター法、リバースコーター法、ナイフコーター法、コンマコーター法、グラビアコーター法などの一般的な方法で塗工する。その塗工量として0.1〜50g/m2(乾燥状態)が好ましい。
【0040】
離型シートは、ラベルを物品に貼り付ける迄の間、粘着剤層を保護する為に積層されるものであり、使用時には引き剥がされる。使用する離型シートは一般的なものが利用でき、特に限定されない。例えば、上質紙、コート紙、キャストコート紙、アルミニウム箔/紙、樹脂含浸紙、合成紙などの紙ベース基材やポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、発泡ポリエステル樹脂、発泡ポリプロピレン樹脂などの高分子樹脂フィルムベース基材の一方の面に剥離剤としてシリコーン系樹脂を塗工したもの等が利用できる。紙ベースの場合、紙の坪量は30〜300g/m2のもの、フィルムベースの場合は厚みが10〜300μmの範囲のフィルムが使用できる。
【0041】
(真偽判定体を、媒体に転写して付着させる方法)
真偽判定の対象となる種々の物品である媒体に対して、真偽判定体を転写して、真偽判定体付き媒体を得る方法を、以下に説明する。基材に真偽判定体を転写する場合、以下の転写方法が挙げられる。
(1)位相差フィルムまたは位相差層の上下に、コレステリック液晶層A、Bを設けた本発明の真偽判定体である転写箔を、熱や圧を利用して、転写箔の全体を媒体に転写する。
(2)基材フィルム上にコレステリック液晶層A(3)、位相差層6、コレステリック液晶層B(4)を順次設けた転写フィルムを用いて、熱や圧力を利用して、媒体にコレステリック液晶層A(3)、位相差層6、コレステリック液晶層B(4)からなる3層を転写し、転写フィルムの基材フィルムをコレステリック液晶層A(3)から剥がす。
【0042】
(真偽判定体を、媒体にラミネートして付着させる方法)
真偽判定の対象となる種々の物品である媒体に対して、真偽判定体をラミネートして、真偽判定体付き媒体を得る方法を、以下に説明する。図1、2に示すような真偽判定体では、一方のコレステリック液晶層と、媒体であるフィルムとが接する向きで、接着剤を介して、重ね合わせて、圧力のみ、あるいは熱及び圧力により、真偽判定体とフィルムの媒体をラミネートする。また、図3に示すような真偽判定体では、基材フィルムのコレステリック液晶層の設けられていない表面と、媒体であるフィルムとが接する向きで、接着剤を介して、重ね合わせて、圧力のみ、あるいは熱及び圧力により、真偽判定体とフィルムの媒体をラミネートする。尚、その接着層を構成する接着剤が、感圧接着剤であれば、圧力のみ、またその接着剤が、感熱接着剤であれば、熱及び圧力をかけて接着させる。
【0043】
(真偽判定体を基紙に、スレッド状に抄き込む方法)
真偽判定の対象となる紙である媒体に対して、真偽判定体をスレッド状に抄き込む方法を、以下に説明する。
この媒体となる基紙8は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材パルプや麻、綿、藁を原料とした非木材パルプ等を適宜混合して叩解して、主剤を用意し、これに填料、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、消泡剤、染料、着色顔料、蛍光剤等の助剤などを適宜添加した原料を用いて、長網抄紙機、円網抄紙機等の公知の抄紙機を使用して抄紙される。基紙の厚さは、0.02〜5mm程度が適当である。
【0044】
上記の基紙に、本発明の真偽判定体であるスレッドを抄き込む方法の一つの実施形態を、以下に説明する。二槽のシリンダーバットを備えた円網抄紙機の、一槽目の円網シリンダーの同一円周表面上に予め所定サイズの形のテープを一定間隔で貼り付けて網目を塞いでおき、第一紙層として、一定間隔で、所定サイズの穴が空いた紙層(第一紙層)を形成する。二槽目の円網シリンダーには、上記のような細工を施さず、無地の第二紙層を形成する。
【0045】
また、スレッドの巻き出し装置を第一槽目と第二槽目の円網シリンダー間に設置して、スレッドが第一紙層の穴と重なる位置に、挿入されるようにする。この際、第一紙層と第二紙層が積層された状態で、第一紙層の穴の位置にスレッドがコレステリック液晶層が観察できるようにしておく。そして、マシンカレンダー処理や、スーパーカレンダー処理で表面平滑処理を施して、真偽判定体付きラベルを製造できる。この場合は、スレッドが片面で露出部と被覆部が繰り返し形成された図5に示すようなタイプの真偽判定体付き媒体が得られる。尚、上記の一槽目の円網シリンダーの円周表面上に、テープを連続的に貼り付けて網目を塞いでおけば、連続したストライプ形状の露出部を有したスレッドを基紙に抄き込むことも可能である。
【0046】
本発明の真偽判定体付き媒体は、真正性を識別する必要性のある種々の物品に貼り付ける等により適用すると価値が高いものである。このような真正性を識別する必要性のある物品としては様々なものがあり、必要とされる真正性および識別性のレベルも一定ではないが、次のようなものを例示することができる。
【0047】
真正性を識別する必要性のある種々の物品としては、保持者の本人確認(ID)用であるID証、金券類、純正品、ブランドが著名な高級ブランド品等がある。ID証とは、例えば、パスポート、運転免許証、保険証、図書カード(図書館の貸出し用カード)等である。金券とは、例えば、商品券、ギフト券等の有価証券、プリペイドカード等である。純正品とは、種々の機器類に用いるための部品や消耗品等であって、純正である認証の必要なものであり、物品としては、電子機器、電気機器、コンピュータ製品、プリンタ等に用いる消耗品、医薬品、化学薬品等がある。高級ブランド品としては、著名なブランドの高価な商品、例えば、時計、衣類、バッグ、宝飾品、スポーツ用品、化粧品がある。さらに、コンピュータソフト、音楽ソフトもしくは映像ソフトが記憶された媒体類も真正性を識別する必要性のある種々の物品として挙げることができる。
【0048】
したがって、本発明の真偽判定体付き媒体は、上記のような物品そのもの、もしくは、それら物品のケースであってもよい。あるいは、上記の物品に荷札として、くくりつける等により適用することもできる。
【実施例】
【0049】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。
【0050】
(実施例1)
厚さ100μmのポリカーボネート樹脂を一軸延伸配向させてできたフィルムを位相差フィルムとし、該位相差フィルムの一方の面に、右円偏光性をもつコレステリック液晶層インキを用いて、グラビア印刷法により、パターンで印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2のコレステリック液晶層Aを形成した。また、上記位相差フィルムの他方の面に、上記で使用した右円偏光性をもつコレステリック液晶層インキと同じインキ(反射波長が同じである)を用いて、スクリーン印刷法により、位相差フィルムの全面に、ベタ状に印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2のコレステリック液晶層Bを形成し、図1に示すような真偽判定体を作製した。
【0051】
この得られた真偽判定体の全面ベタ印刷面(コレステリック液晶層B)から、右円偏光板を通じて観察すると、全面ベタの色が明瞭に見え、左円偏光板を通じて観察すると、全面ベタ印刷の色は見えず、パターン印刷の色が確認できた。
【0052】
(実施例2)
実施例1で作製した真偽判定体のパターン印刷面(コレステリック液晶層A)の上に、アクリル系樹脂からなる強粘着用粘着剤を用いて、乾燥時の厚さ30g/m2になるように、グラビア印刷により、粘着剤層を形成し、さらに、その粘着剤層の上に、離型シートとして、上質紙ベースでシリコーン樹脂の塗工がされた市販の坪量90g/m2の剥離紙を貼り合せて、さらに抜き加工を行なって、ラベルを作製した。
【0053】
この得られたラベルは、真偽判定の対象となる種々の物品、つまり媒体に、剥離紙を剥がして、粘着剤層により貼着させることができた。また。その真偽判定体(ラベル)付き媒体は、実施例1の真偽判定体と同様に、全面ベタ印刷面(コレステリック液晶層B)から、右円偏光板を通じて観察すると、全面ベタの色が明瞭に見え、左円偏光板を通じて観察すると、全面ベタ印刷の色は見えず、パターン印刷の色が確認できた。
【0054】
(実施例3)
実施例1で作製した真偽判定体のパターン印刷面(コレステリック液晶層A)の上に、ホログラム形成層を設け、そのホログラム形成層の表面に、微細凹凸の加工を施し、さらに、そのホログラム形成層の上に、透明タイプの反射性金属層を設け、さらにその反射性金属層の上に、アクリル系樹脂からなる強粘着用粘着剤を用いて、乾燥時の厚さ30g/m2になるように、グラビア印刷により、粘着剤層を形成し、さらに、その粘着剤層の上に、離型シートとして、上質紙ベースでシリコーン樹脂の塗工がされた市販の坪量90g/m2の剥離紙を貼り合せて、さらに抜き加工を行なって、ラベルを作製した。
【0055】
この得られたラベルは、真偽判定の対象となる種々の物品、つまり媒体に、剥離紙を剥がして、粘着剤層により貼着させることができた。また。その真偽判定体(ラベル)付き媒体は、全面ベタ印刷面(コレステリック液晶層B)から、右円偏光板を通じて観察すると、全面ベタの色が明瞭に見え、左円偏光板を通じて観察すると、全面ベタ印刷の色は見えず、パターン印刷の色が確認できた。さらに、このラベルは、ホログラム形成層におけるホログラム画像を観察することができ、偽造防止性がより高まったものである。
【0056】
(実施例4)
厚さ16μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材フィルムとし、該基材フィルムの一方の面に、右円偏光性をもつコレステリック液晶層インキを用いて、グラビア印刷法により、基材フィルムの全面に、ベタ状に印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2のコレステリック液晶層Aを形成した。また、そのコレステリック液晶層Aの上に、ネマチック液晶層インキを用いて、グラビア印刷法により、全面のベタ状に印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2の位相差層を形成した。さらに、その位相差層の上に、右円偏光性をもつコレステリック液晶層インキを用いて、スクリーン印刷法により、パターンで印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2のコレステリック液晶層Bを形成し、図3に示すような転写フィルムの形態である真偽判定体を作製した。尚、上記の基材フィルムのコレステリック液晶層を設けた側の表面には、予め熱離型性をもたせるための表面処理を施しておいた。
【0057】
この得られた真偽判定体のパターン印刷面(コレステリック液晶層B)から、右円偏光板を通じて観察すると、パターン印刷の色が確認でき、左円偏光板を通じて観察すると、パターン印刷の色は見えず、全面ベタの色が確認できた。
【0058】
(実施例5)
実施例4で作製した真偽判定体の転写フィルムのパターン印刷されたコレステリック液晶層Bの上に、黒色ヒートシール剤をグラビア印刷法により、全面ベタ状に印刷して、接着層を乾燥時で厚さ8g/m2で形成した。この転写フィルムの接着層と、被着体(媒体)とが接するように、重ね合わせて、熱及び圧力を加えて、媒体にコレステリック液晶層A(3)、位相差層6、コレステリック液晶層B(4)からなる3層を転写し、転写フィルムの基材フィルムをコレステリック液晶層A(3)から剥離した。これにより、真偽判定体付き媒体が得られた。この真偽判定体付き媒体は、右円偏光板を通じて観察すると、全面ベタの色が明瞭に見え、左円偏光板を通じて観察すると、全面ベタ印刷の色は見えず、パターン印刷の色が確認できた。
【0059】
(実施例6)
厚さ16μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材フィルムとし、該基材フィルムの一方の面に、右円偏光性をもつコレステリック液晶層インキを用いて、スクリーン印刷法により、パターン印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2のコレステリック液晶層Aを形成した。また、そのコレステリック液晶層Aの上に、ネマチック液晶層インキを用いて、スクリーン印刷法により、全面のベタ状に印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2の位相差層を形成した。さらに、その位相差層の上に、右円偏光性をもつコレステリック液晶層インキを用いて、スクリーン印刷法により、全面のベタ状に印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2のコレステリック液晶層Bを形成し、真偽判定体を作製した。
【0060】
この真偽判定体は、全面ベタ印刷面(コレステリック液晶層B)から、右円偏光板を通じて観察すると、全面ベタの色が明瞭に見え、左円偏光板を通じて観察すると、全面ベタ印刷の色は見えず、パターン印刷の色が確認できた。
【0061】
(実施例7)
上記の実施例1及び実施例6で作製した真偽判定体を用いて、各真偽判定体の両面に、ガラス転移温度30℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体の接着剤を用いて、乾燥時で厚さ2g/m2の接着層をそれぞれ形成した。この真偽判定体をスリッター機により、2mm幅に裁断して、巻芯に巻き取って、ロール状のスレッドとして用意した。
【0062】
二槽のシリンダーバットを備えた円網抄紙機の、一槽目の円網シリンダーの同一円周表面上に予め所定サイズの形のテープを一定間隔で貼り付けて網目を塞いでおき、第一紙層として、一定間隔で、所定サイズの穴が空いた紙層(第一紙層)を形成する。二槽目の円網シリンダーには、上記のような細工を施さず、無地の第二紙層を形成する。また、スレッドの巻き出し装置を第一槽目と第二槽目の円網シリンダー間に設置して、スレッドが第一紙層の穴と重なる位置で、さらにスレッドの接着層と第二紙層とが接する向きで、挿入されるようにする。この際、第一紙層と第二紙層が積層された状態で、第一紙層の穴の位置にスレッドのコレステリック液晶層が観察できるようにしておく。
【0063】
この抄紙機で抄造される紙は、シリンダードライヤー(表面温度約70〜100℃)で乾燥後、マシンカレンダー処理される。上記抄紙機により、上記のスレッドを使用して、図5に示すように、スレッドが片面で露出部と被覆部が繰り返し形成された真偽判定体付き媒体を得た。尚、第一紙層は35g/m2、第二紙層は69g/m2の厚さで、第一紙層と第二紙層が積層された状態では、90kg/四六版の上質紙のものである。
【0064】
実施例1及び実施例6で作製した真偽判定体がスレッドとして紙に抄き込まれた媒体は、両方とも右円偏光板を通じて観察すると、全面ベタの色が明瞭に見え、左円偏光板を通じて観察すると、全面ベタ印刷の色は見えず、パターン印刷の色が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の真偽判定体の一つの実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の真偽判定体の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の真偽判定体の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の真偽判定体の一つの実施形態のものを、偏光板を介して観察した時に見えるコレステリック液晶層の発色状態を説明する概略図である。
【図5】本発明の真偽判定体付き媒体の一つの実施形態を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 真偽判定体
2 位相差フィルム
3 コレステリック液晶層A
4 コレステリック液晶層B
5 基材フィルム
6 位相差層
7 真偽判定体付き媒体
8 基紙
9 スレッド
10 露出部
11 被覆部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相差を生じさせる効果を有したフィルム(位相差フィルム)の両面に、コレステリック液晶層が設けられた真偽判定体において、該位相差フィルムの一方の面に設けられたコレステリック液晶層Aと、該位相差フィルムの他方の面に設けられたコレステリック液晶層Bとの形成された形状が、互いに異なっていることを特徴とする真偽判定体。
【請求項2】
位相差を生じさせる効果を有した層(位相差層)の上下に、コレステリック液晶層が設けられた真偽判定体において、該位相差層の一方の面に設けられたコレステリック液晶層Aと、該位相差層の他方の面に設けられたコレステリック液晶層Bとの形成された形状が、互いに異なっていることを特徴とする真偽判定体。
【請求項3】
前記のコレステリック液晶層A及びBが、各々の反射波長が異なることを特徴とする請求項1または2に記載する真偽判定体。
【請求項4】
前記のコレステリック液晶層A及びBが、各々の反射波長が同等であることを特徴とする請求項1または2に記載する真偽判定体。
【請求項5】
請求項1〜4の真偽判定体を粘着剤を介して、媒体に貼着させたもの、該真偽判定体を、媒体に転写またはラミネートして付着させたもの、該真偽判定体を基紙に、スレッド状に抄き込んだものの中のいずれかの一つであることを特徴とする真偽判定体付き媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−171310(P2007−171310A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365594(P2005−365594)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】