説明

真偽判定部を有するラベル

【課題】優れた偽造防止効果を有するとともに、真正品と偽造品との判定に利用可能なラベルを提供すること。
【解決手段】基材と、該基材の一方の面の少なくとも一部に真偽判定部を有するラベル。真偽判定部は、基材側から、反射層、ホログラム形成層、ならびに入射光のうち左円偏光および右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有する光選択反射層をこの順に有し、かつ反射層は反射性パターン層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造や改ざんを容易に判定することができ、しかも偽造困難な真偽判定部を有するラベルに関する。
【0002】
高級ブランド品等の経済的に価値の高い高額商品、ID(Identification;照合一致)カード、金券類等にラベルを貼ることによって商品番号や個別情報等を付与することが行われている。しかし、簡単に製造可能なラベルは容易に偽造されるおそれがあり、しかも真正品と偽造品を判別することは難しい。
【0003】
そこで、上記用途に使用されるラベルに、真偽判定および偽造防止のためにホログラムを付与することが行われている。また、近年、ホログラムに代わるものとして、コレステリック液晶を使用することが提案された(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−25373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コレステリック液晶は、一般に入手困難であり、またコレステリック液晶の色調を正確に再現するには高度な技術を要する。そのため、コレステリック液晶を使用することにより、偽造防止効果を高めることができる。しかし、近年、偽造手段はますます高度化しているため、上記技術の偽造防止効果は必ずしも十分なものとは言えず、更なる改善が求められていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、優れた偽造防止効果を有するとともに、真正品と偽造品との判定に利用可能なラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、光選択反射層とホログラムとを組み合わせ、さらにホログラムを形成する反射層をパターン化した真偽判定部を設けることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、基材と、該基材の一方の面の少なくとも一部に真偽判定部を有するラベルであって、真偽判定部は、基材側から、反射層、ホログラム形成層、ならびに入射光のうち左円偏光および右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有する光選択反射層をこの順に有し、かつ反射層は反射性パターン層を含む、前記ラベルを提供する。
【0008】
更に、本発明の一態様によれば、反射層は、可視光透過性反射層を更に含む前記ラベル;真偽判定部は、基材側から、可視光透過性反射層、反射性パターン層、ホログラム形成層および光選択反射層をこの順に有する前記ラベル;光選択反射層はコレステリック液晶層である前記ラベル;真偽判定部はスレッドである前記ラベル;真偽判定部を有する面または該面とは反対の面に、情報受容部を有する前記ラベル、が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のラベルは、円偏光選択性および選択反射性を併せ持つ光選択反射層とホログラムを有する複雑な層構成の真偽判定部を有する。更に、ホログラムの反射層をパターン化するためには高度な技術を要する。このように光選択反射層と反射層がパターン化されたホログラムを含む真偽判定部を有する本発明のラベルの偽造防止効果はきわめて高い。また、真偽判定部を、スレッドとして紙に抄き込むか、または転写もしくはラミネートにより基材に適用すれば真偽判定部と基材が一体化するため、偽造品に適用するために真正品から真偽判定部のみを分離することは困難となる。これにより偽造防止効果を更に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のラベルは、基材と、該基材の一方の面の少なくとも一部に真偽判定部を有する。前記真偽判定部は、基材側から、反射層、ホログラム形成層、ならびに入射光のうち左円偏光および右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有する光選択反射層をこの順に有し、かつ反射層は反射性パターン層を含む。また、「スレッド」とは、幅0.5〜8mm程度の糸状物またはテープ状物であり、基紙に抄き込む等して使用することができる。
本発明において、「真偽判定部」とは、当該部分を目視および/または真偽判定ツールを使用することにより、真正品と偽造品や改ざん品を判別し得る部分をいうものとする。また、本発明において、「可視光透過性」とは、可視光(波長380nm〜780nm)の透過率が、例えば50%以上であることをいう。
【0011】
前記真偽判定部は、光選択反射層を有する。光選択反射層は、右円偏光板を介して観察した場合と左円偏光板を介して観察した場合で異なる外観を呈する。この円偏光選択性および選択反射性を利用して真偽判定を行うことができる。また、適用する円偏光板によって異なる外観を呈することは目視では判別できない。しかも光選択反射層の材料は、一般に入手困難であり、また使用する材料や組成により色彩可変効果が異なるため、色彩可変効果を正確に再現することは困難である。このような光選択反射層を有することは、偽造・改ざん防止にきわめて有効である。更に、光選択反射層は、コピー機で複写すると複写物に現れるため、光選択反射層を有することにより複写による偽造・改ざんを効果的に防止ないしは抑制することができる
更に、前記真偽判定部は、ホログラムを形成する反射層がパターン状である。反射層をパターン化するためには高度な技術を要するため、反射性パターン層を有することは偽造・改ざん防止にきわめて有効である。また、前記真偽判定部では、ホログラム形成層の絵柄と反射層のパターンにより形成される絵柄を組み合わせて複雑なホログラム絵柄を形成することができる。このような複雑なホログラム絵柄を形成するためにも高度な技術が必要とされるため、この点も偽造・改ざん防止に有効である。
こうして、本発明によれば、偽造・改ざん防止にきわめて有効な真偽判定部付ラベルを提供することができる。
次に、本発明のラベルに含まれる各部の詳細を説明する。
【0012】
[真偽判定部]
本発明のラベルは、基材と、該基材の一方の面の少なくとも一部に真偽判定部を有する。真偽判定部の基材への適用例を、図1〜4に基づき説明する。但し、本発明のラベルは図1〜4に示す態様に限定されるものではない。
【0013】
図1は、基紙2に真偽判定部をスレッド3として抄き込んだもので、スレッド3が間欠的に露出する複数の露出部4と、各露出部間でスレッド3を間欠的に覆う被覆部5とを備えている。この露出部4と被覆部5のパターンに対応した抄き網を使用して抄紙機で、抄造することにより得ることができる。
【0014】
図2は、図1に示したものと同様に、基紙2に真偽判定部をスレッド3として抄き込んだもので、スレッド3が間欠的に露出する複数の露出部4と、各露出部間でスレッド3を間欠的に覆う被覆部5とを備えている。また、スレッド3の設けられた部分から外れた基紙2の表面に、例えばオフセット印刷等により固定情報6として、「日付」、「名称」および枠線が、予め形成されている。更に、ラベル1の日付の記入欄および名称の記入欄には、可変情報7として、個別データが印字されている。
【0015】
図3および図4は、基材2に対して、真偽判定部8を転写またはラミネートにより、基材2と一体化したものである。この真偽判定部8は、接着層を介して、圧力のみ、または熱および圧力により、プラスチックフィルム等の基材上に転写またはラミネートさせたものである。図3中、真偽判定部8は、ラベル1にストライプ状に連続的に形成されている。図4中、真偽判定部8は、ラベル1に、個別に円形状に形成されている。また、その真偽判定部8の設けられた部分から外れた基材2の表面に、例えばオフセット印刷等により固定情報6として、「日付」、「名称」および枠線が、予め形成されている。更に、ラベル1の日付の記入欄および名称の記入欄には、可変情報7として、個別データが印字されている。図3、4で説明した真偽判定部を基材に接着層を介して転写またはラミネートさせる場合、真偽判定部の転写シートとして、基材シート上に剥離可能に光選択反射層、ホログラム形成層、反射層、接着層を順次形成した転写シートを用意し、その転写シートの接着層と基材を接するように重ね合わせて、真偽判定部を基材に転写させることができる。この転写は、通常、熱および圧を加えて行う。
【0016】
前記真偽判定部は、基材(ラベル基材)側から、反射層、ホログラム形成層、ならびに入射光のうち左円偏光および右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有する光選択反射層をこの順に有し、前記反射層は反射性パターン層を含む。本発明のラベルに含まれる真偽判定部の層構成の具体例を図5に示す。
【0017】
前記真偽判定部は、図5(a)に示すように、ホログラムを形成する反射層として反射性パターン層を単独で有することもでき、図5(b)〜(e)に示すように反射性パターン層と可視光透過性反射層との組み合わせを有することもできる。また、ホログラム形成層と光選択反射層は、図5(a)〜(c)に示すように、基材を介して配置されていてもよく、図5(d)および(e)に示すように、基材の一方の面に順次配置されていてもよい。また、図5(c)および(d)に示すように、光選択反射層を2層以上有することもでき、また図5(c)に示すように、パターン状の光選択反射層を有することもできる。
次に、真偽判定部に含まれる各層の詳細を説明する。
【0018】
(基材)
光選択反射層は、例えば図5に示すように、基材上に形成することができる。但し、ホログラム形成層上に光選択反射層を形成する場合や配向膜を設ける場合等は基材を設けることは必須ではない。
基材としては、可視光透過性を有するプラスチック基材および位相差性が少ない基材が望ましい。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロール(TAC)、ジアセチルセルロール、ポリエチレン−エチルビニルアルコールなどを例示できる。
【0019】
(配向膜)
光選択反射層とホログラム形成層との間、基材と光選択反射層との間等に配向膜を形成することもできる。この場合、配向膜は、光選択反射層中の液晶分子を配向させ所望の光反射性を付与する役割を果たす。
【0020】
配向膜は、一般に配向膜として使用し得るものであればいずれでもよいが、光選択反射層やホログラムの視認性に影響を与えないためには可視光透過性を有するものであることが好ましい。
配向膜としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリイミド樹脂等を用いることができる。配向膜は、これらの樹脂の溶剤溶液を、適宜な塗布法により塗布し、乾燥させた後に、布、ブラシ等を用いて摩擦するラビングを行って形成することができる。配向膜として、基材フィルムや光選択反射層と接着性のよいものを選ぶと該配向膜は接着層として機能し、他方、接着性に乏しいものを選ぶと該配向膜は剥離層として機能する。例えば基材/配向膜(剥離層)/光選択反射層/ホログラム形成層/反射層の場合、ラベルに適用された真偽判定部を剥がそうとすると、剥離層より上が剥がれてしまうため、真偽判定部全体として剥がすことが難しい。そのため、配向膜が剥離層として機能することは、改竄防止に有効である。
【0021】
但し、液晶層は、下層の物性によっては配向膜なしでも層内の液晶分子を配向させることができるので、上記配向膜は必須ではない。例えば、延伸フィルム(例えばPETフィルム)からなる基材を用いる場合には、配向層なしでも液晶層中の分子を配向させることができる。この場合、基材の少なくとも一方の面に剥離層を設けることにより、前記と同様の効果を得ることができる。剥離層としては、例えばアクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等から、1種または2種以上を混合したもの等を用いることができる。上記の中でも、分子量20000〜100000程度のアクリル系樹脂単独、またはアクリル系樹脂と分子量8000〜20000の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とからなり、さらに添加剤として分子量1000〜5000のポリエステル樹脂が1〜5重量%含有する組成物からなることが特に好ましい。剥離層を介して積層された両層の間の剥離力が1〜5g/インチ(90°剥離)となるようなものであることが好ましい。また、その厚みは剥離力、箔切れ等の面から、0.1μm〜2μmの範囲内であることが好ましい。
【0022】
更に、基材の光選択反射層と対向する表面を易剥離化することによっても、前述と同様の効果を得ることができる。一般に基材として使用され得る透明フィルムは、他層と積層可能な程度の接着力を示すものもあるが、通常は接着力を向上させるための処理が行われる。そこで、この接着力向上処理を行わないか、またはその程度を調整することにより表面の接着力を意図的に低くした(易剥離化した)透明フィルムを使用することにより、透明フィルムと他層との接着力を低下させることができる。このような透明フィルムを基材として使用すれば、易剥離化された表面において剥離するため、前記と同様の効果を得ることができる。
【0023】
前記接着力向上処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、プライマー塗布処理またはケン化処理を挙げることができる。いずれの処理も、公知の装置、方法を用いて行うことができる。処理条件は、基材フィルム表面に対し、他層と接着可能ではあるが剥離しようとしたときにその表面において剥離する程度の接着力を付与し得るように適宜設定することができる。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムのように、未処理でも他層と接着可能な程度の接着力を有するフィルムを基材として使用する場合は、接着力向上処理を行わないことにより、基材表面で剥離することができる。
また、基材フィルムの膜厚を過度に薄くしたり成分を調整し、基材自体の強度を意図的に低下させれば、本発明の真偽判定用媒体を適用した物品に外力を加えて媒体を剥ぎ取ろうとすると基材が破壊されるため、前述と同様の効果を得ることができる。
【0024】
(光選択反射層)
光選択反射層は、入射光のうち左円偏光および右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有するものであればよく、コレステリック液晶層であることが好ましい。また、可視光透過性を有するものであれば、下層のホログラムの絵柄を容易に視認することができる。ここで、コレステリック液晶層とは、コレステリック型液晶分子を含む層である。液晶材料は一般に入手困難であり、しかも高度な配向技術が要求されるので、前記光選択反射層がコレステリック液晶層であれば、高い偽造防止効果を得ることができる。
【0025】
光選択反射層がコレステリック液晶層である場合、使用する液晶材料は特に限定されず、公知のものを用いることができる。コレステリック液晶層は、コレステリック液晶材料を適当な溶媒に溶解し、各種の印刷方法によって適用し、乾燥させることによって形成することができる。このとき、重合性のコレステリック液晶を用いて紫外線重合性組成物を調製し、得られた紫外線重合性組成物を各種の印刷法によって適用し、乾燥後に紫外線を照射して重合させて形成することもできる。
【0026】
具体的には、コレステリック液晶層を形成するための材料としては、三次元架橋可能な液晶性の重合性モノマー分子または重合性オリゴマー分子を用いることができる。所定の重合性モノマー分子または重合性オリゴマー分子に任意のカイラル剤を添加することにより、コレステリック型液晶分子を含む層を得ることができる。
【0027】
三次元架橋可能なモノマー分子としては、例えば特開平7−258638号公報や特表平10−508882号公報で開示されているような、液晶性モノマーおよびキラル化合物の混合物がある。より具体的な例を示すと、例えば下記一般化学式(1)〜(11)に示されるような液晶性モノマーを用いることができる。尚、一般化学式(11)で示される液晶性モノマーの場合、Xは2〜5の範囲の整数であることが望ましい。
【0028】
【化1】

【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
【化11】

【0039】
また、カイラル剤としては、例えば下記一般化学式(12)〜(14)に示されるようなカイラル剤を用いることができる。尚、一般化学式(12)、(13)で示されるカイラル剤の場合、Xは2〜12の範囲の整数であることが望ましく、また、一般化学式(14)で示されるカイラル剤の場合、Xが2〜5の範囲の整数であることが望ましい。
【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

【0042】
【化14】

【0043】
また、オリゴマー分子を用いる場合は、例えば特開昭57−165480号公報で開示されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物を用いることができる。例えば、重合性モノマー分子または重合性オリゴマー分子に、カイラル剤を数%〜10%程度添加することによりコレステリック液晶層を得ることができる。コレステリック液晶層は、ほぼ均一な厚みを有する層として形成することができるが、層の有無や厚みの違いによりパターンが形成されたパターン層とすることもできる。パターン層は、各種印刷方法を用いて形成することができる。
【0044】
光選択反射層は、異なる光反射性を有する2層以上の層から形成することもできる。例えば、複数のコレステリック液晶層の厚みを変えるか、または各層を螺旋ピッチが異なる液晶材料を用いて形成することにより、光反射性を変えることができる。上記のように重合性のコレステリック液晶を用いて紫外線重合性組成物からコレステリック液晶層を形成する場合には、重合性のネマチック液晶とカイラル剤を組み合わせて用い、このとき重合性のネマチック液晶とカイラル剤との配合比を異ならせた紫外線重合性組成物を調製して用いることにより、互いに螺旋ピッチの異なるコレステリック液晶層を形成することができる。このように2種以上のコレステリック液晶層を設ける場合にも、各コレステリック液晶層は、ほぼ均一な厚みを有する層として形成することができるが、層の有無や厚みの違いによりパターンが形成されたパターン層とすることもできる。
【0045】
また、二層の光選択反射層を設ける場合、両層の間に位相差層を設けることもできる。位相差層とは、入射した光を複屈折して、偏光方向によって異なる位相を生じさせ、位相差を付与する層である。複屈折は、媒質の屈折率が、偏光方向によって均質でないため生じる現象であり、このような媒質を透過した光の位相差σは、σ=2π(ne−no)d/λで、与えられることが知られている。ここで、neは異常光線屈折率、noは常光線屈折率、dは媒質の厚さ、λは光の波長である。すなわち、ある一定の厚さdの媒質に対して、位相差σは、光の波長λに依存する。位相差層に、波長λ=2(ne−no)dなる右円偏光を入射すると、その右円偏光を透過しながら、位相差σ=π(すなわち、1/2波長)を与える。そのため、入射した右円偏光は、左円偏光に変換されて出射し、また、入射した左円偏光は右円偏光に変換されて出射する。
【0046】
二層の光選択反射層が位相差層を介して積層されている場合、二層の光選択反射層は、一方の側から見て同じ方向の円偏光を反射する光反射性を有することが好ましい。以下に、この点について、図6に基づき、入射光のうち右円偏光を反射する光反射性を有する二層の光選択反射層が位相差層を介して積層されている場合を例にとり説明する。なお、図6では簡略化のため光選択反射層および位相差層以外の層は省略している。
【0047】
図6に示すように、光選択反射層A側から自然光を入射すると、自然光は、右円偏光および左円偏光を含んでいるので、光選択反射層Aの作用により、右円偏光のみが選択的に反射される。よって、光選択反射層Aの上に右円偏光板を重ねれば、右円偏光板を介して、この反射光(右円偏光)を観察することができる。
また、光選択反射層A側から入射した自然光のうち左円偏光は、光選択反射層Aにおいて反射されずに光選択反射層Aを透過する。透過した左円偏光は、位相差層を経て右円偏光に変換される(図中の「左→右」は、左円偏光から右円偏光への変換を示す。)。変換された右円偏光は光選択反射層Bで反射される。この反射光(右円偏光)は、再び位相差層2を透過して左円偏光に変換される(図中の「右→左」は、右円偏光から左円偏光への変換を示す。)。変換された左円偏光は、光選択反射層Aを経て出射する。よって、光選択反射層Aの上に左円偏光板を重ねれば、左円偏光板を介して、この出射光(左円偏光)を観察することができる。
このように、図6に示す態様では、右円偏光板または左円偏光板をそれぞれ単独で用いることにより、上記のような異なる経過を経た光を観測することができる。この性質は目視では視認できないため、このような偽造防止手段が施されていることは円偏光板を用いない限り確認できない。この点は偽造・改ざん防止に有効である。更に、前記2層の光選択反射層は、各々の反射光の中心波長が異なることが好ましい。反射光の中心波長が異なれば、右円偏光板を重ねた場合に観察される反射光の色と、左円偏光板を重ねた場合に観察される反射光の色が異なるため、右円偏光板使用時と左円偏光板使用時に観察される光の色の違いが出るため、偽造・改ざん防止効果を更に高めることができる。
【0048】
また、2つの光選択反射層が異なる方向の円偏光に対する反射性を有する場合には、右円偏光板または左円偏光板をそれぞれ単独で用いた場合、いずれか一方の円偏光板を重ねた場合に反射光が観察されず、黒色となる。よって、一方の円偏光板を重ねた場合には反射光が観察されるが、他方の円偏光板を重ねた場合には反射光が観察されない。この性質を偽造・改ざん防止に利用することも可能である。
【0049】
(位相差層)
位相差層は、入射した光を複屈折して、偏光方向によって異なる位相を生じさせ、位相差を付与することができれば特に限定されず、例えば、透明フィルム、ネマチック液晶層、またはネマチック液晶層と透明フィルムとの積層体で構成することができる。
【0050】
位相差層は、例えば、ネマチック液晶を用いて構成することができ、ネマチック液晶を含むインキ組成物、好ましくはネマチック液晶の溶剤溶液からなるインキ組成物を用いた各種印刷法により形成することができる。また、位相差層は、ネマチック液晶層のみから構成することもでき、または、それ自体で配向性を有する透明フィルムの表面にネマチック液晶層を積層形成した積層体を位相差層として用いることもできる。または、ネマチック液晶層を、配向膜を介して透明フィルム上に積層形成した積層体を位相差層として用いることもできる。
【0051】
透明フィルムとしては、高い機械的強度を有するものや真偽判定用媒体を製造する際の加工に耐え得る耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので限定されるものではないが、フィルム状またはシート状のプラスチックが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムは単独で位相差層として用いることができるため好ましい。
【0052】
光選択反射層がコレステリック液晶層である場合、位相差層の片面または両面には、必要に応じて配向膜を積層することができる。配向膜の詳細は前述の通りである。但し、位相差層の物性によっては配向膜なしでもコレステリック液晶層中の液晶分子を配向させることができるので、配向層は必須ではない。例えば、位相差層として延伸フィルム(例えばPETフィルム)を用いる場合には、配向層なしでもコレステリック液晶層中の液晶分子を配向させることができる。
【0053】
(中間層)
また、光選択反射層を二層以上積層する場合、光選択反射層同士の相互作用による、発色トラブル等の悪影響を防止することを目的として、光選択反射層間に前記位相差層以外の中間層を設けることもできる。中間層を構成する樹脂としては、デンプン類、セルロース類、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール類、無水マレイン酸共重合体、アクリル類、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。上記のような樹脂と、必要に応じて各種補助剤を添加して、インキを調製し、オフセット印刷、活版印刷や、グラビアコーティング等の既知の塗布方法で形成できる。中間層は、観察者から見て、その中間層よりも下に位置する光選択反射層やホログラムを判別しやすくするために、可視光透過性を有する層とすることが好ましい。中間層としての機能維持、光選択反射層との密着性およびコスト面から、中間層の厚さは、例えば0.1μm以上、好ましくは1〜10μmであり、乾燥時の塗工量で約0.1〜10g/m2程度である。
【0054】
また、光選択反射層は、コレステリック液晶層だけでなく、種々の素材を用いて構成することができ、例えば、見る角度によって色が変化する顔料を用いる、蒸着薄膜を用いる、または二色性色素を用いることにより構成することができる。見る角度によって色が変化する顔料としては、高屈折率の酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄などの層と、低屈折率のマイカ等の層を積層したパール顔料を例示することができ、具体的には、(株)資生堂製の商品名;インフィニットカラーや、メルク社(独国)製の商品名;イリオジン等が入手可能である。蒸着薄膜はアルミニウム等の金属やそのほかの素材を気相法により薄膜として形成したもので、水面に浮かんだ油の薄膜のようないわゆる干渉色を示すものである。二色性色素は、分子軸の方向によって光の吸収性を相違する長鎖色素分子からなり、例えば、色素分子の分子軸の方向に対して法線方向の光成分は吸収性がほぼなく光を透過するのに対して、分子軸の方向に対して平行方向の光成分は吸収性を有し、光を透過しない性質を有するもので、アントラキノン系、アゾ系、もしくはビスアゾ系の色素を例示することができる。上記のうち、見る角度によって色が変化する顔料または二色性色素は、適宜なバインダ樹脂中に分散し、溶剤で希釈して塗布用組成物としたものをシルクスクリーン印刷、グラビア印刷、または公知のコーティング法によって対象表面に適用すればよい。
【0055】
(ホログラム形成層)
ホログラム形成層としては、公知のホログラム形成層を用いることができるが、前述のように光選択反射層の色調変化を活かすためには、可視光透過性を有するものが好ましい。例えば、ホログラム形成層は、透明な樹脂素材からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することにより作製することができる。ホログラム形成層を構成するための透明な樹脂材料としては、各種の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化樹脂等の各種樹脂材料が選択可能である。例えば、熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独、または2種類以上の共重合体として使用することができる。また、これらの樹脂は単独、または2種類以上を各種イソシアネート樹脂や、ネフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の金属石鹸ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルスルフィド等の熱または紫外線硬化剤を配合してもよい。また、電離放射線硬化型樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等が挙げられる。このような電離放射線硬化型樹脂に架橋構造、粘度調整等を目的として、他の単官能または多官能モノマー、オリゴマー等を抱合させることができる。
【0056】
ホログラム形成層は、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行って現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作製したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料に押し付けることにより、賦型を行うこともできる。熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱または電離放射線照射により硬化を行い、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、本発明では、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層もホログラム形成層に含めるものとする。また、ホログラム形成層および回折格子形成層を合わせたものを光回折構造層と呼ぶこととする。
【0057】
(反射層)
本発明の真偽判定用媒体において、ホログラムを形成する反射層は反射性パターン層を含む。反射層をパターン化する技術はきわめて高度であるため、真偽判定部に反射性パターン層を含むことは偽造防止にきわめて有効である。更に、ホログラム形成層が形成する絵柄と反射性パターン層を含む反射層が形成する絵柄が組み合わされ複雑な外観を有し、意匠性に優れる。また、光選択反射層とホログラムを組み合わせる場合、ホログラムの反射層が可視光を透過しない、いわゆる不透明反射層であると、光選択反射層の色調や色彩変化(見る角度により色彩が変化する効果)を目視で確認することが難しい場合がある。それに対し、本発明の真偽判定用媒体では、ホログラム形成層の下層に位置する反射層は、ホログラムを形成する反射層がパターン状であるため、反射性パターン層が、いわゆる不透明反射層であっても、反射性パターン層が積層されていない部分において光選択反射層の色彩変化を確認することができる。また、後述するように反射層を反射性パターン層と可視光透過性反射層との組み合わせにすれば、ホログラムの下層全面に反射層を配置することができるため、ホログラム絵柄を全面で可視化することができる。これにより、光選択反射層の色彩可変効果による真偽判定およびホログラム絵柄による真偽判定を全面で容易に行うことができる。
【0058】
反射性パターン層を、光を反射する金属等の材料から形成すると不透明タイプのホログラムを得ることができ、可視光透過性を有する材料から形成すると透明タイプのホログラムを得ることができる。後述するように、本発明の真偽判定用媒体では、可視光透過性の反射性パターン層と可視光透過性反射層を組み合わせることも可能である。この場合は反射性パターン層と可視光透過性反射層との屈折率を変えることにより、反射性パターン層のパターンを目視で視認することが可能となる。
【0059】
反射性パターン層のパターンの一例を図7に示す。図7(a)に示すように、パターンは、左右方向の幅が狭く上下方向に長い四角形が等間隔で配列した反射層が等間隔に、例えば、四角形の左右方向の長さ(即ち幅)と等しい間隔を有して配列したことによる縞状のパターンであってもよいし、または、図7(b)に示すように、反射層5が幾何学形状(図では長方形と星形)であってもよい。また、パターンは、以上のような具体的なパターンをポジパターンとするとき、それらのネガパターンであってもよい。なお、これらのパターンは例示であって、パターンは、主に意匠的な観点から自由に決めることができ、幾何学形状以外の文字や記号であってもよく、任意の形状であってよい。また、パターンをホログラム形成層のホログラムに同調させたものとしてもよい。ここで、同調とは、例えば図8(a)に示すように、ホログラム形成層によって現される絵柄と反射性パターン層のパターンにより現される絵柄とにより連続絵柄が形成されること、好ましくは両絵柄が一体となって1つの連続絵柄を形成していることをいう。反射性パターン層のパターンをホログラム形成層の絵柄と同調させるには高度な技術を要するため、この技術を用いて形成された真偽判定用媒体の偽造防止効果はきわめて高い。一方、非同調とは、ホログラム形成層によって現される絵柄と反射性パターン層のパターンにより現される絵柄が一致していないことをいう。非同調の態様としては、例えば図8(b)に示すように、反射性パターン層のパターン絵柄が連続絵柄となっているものや、例えば図8(c)に示すように、ホログラム形成層が形成する絵柄が連続絵柄になっているものがある。
【0060】
パターンの大きさは、肉眼で解像し得るものであればよい。例えば形状が四角形であれば、縦横が1mm×1mm以上とすることができ、好ましくは3mm×3mm以上であり、より好ましくは5mm×5mm以上である。幾何学形状の場合には、円形であれば、直径を1mm以上とすることができ、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上とすることができ、そのほかの形状の場合には、内接円の直径を、例えば1mm以上とすることができ、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上とすることができる。
【0061】
反射性パターン層は、図7(c)および(d)に示すように、微細パターン状に積層されていてもよい。この場合のパターン(微細パターン)は、図7(c)に示すように、下方の向かって左側から上方の向かって右側を向いた有限幅の線条からなる反射層を、幅方向に幅の2倍程度のピッチで配列した万線パターン状の微細パターンを構成したものであってもよく、または、図7(d)に示すように、円形状もしくは四角形状の微細な形状の反射層を等ピッチで配列したものであってもよい。
これらの微細パターンは例示であって、微細パターンを構成するパターン自体は、自由に決めることができるので、万線パターン状や網点状以外の幾何学形状、文字または記号等の形状のものであってもよい。微細パターンを構成するパターンの大きさは、通常の観察では観察しにくいか、または観察不可能な微細なものであることが好ましく、万線パターン状の場合、線の幅を、例えば0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下とすることができる。前記パターンは、形成可能である範囲で小さくすることもできるが、実際上0.01mm程度以上であることが好ましい。網点が円形状の場合には、直径を、例えば0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下とすることができ、0.01mm程度以上であることが好ましい。また、網点が四角形状の場合には、縦横を、例えば0.3mm×0.3mm以下、好ましくは0.1mm×0.1mm以下とすることができ、0.01mm×0.01mm程度以上であることが好ましい。そのほかの形状の場合には、内接円の直径を、例えば0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下とすることができ、0.01mm程度以上とすることが好ましい。
【0062】
パターンが微細パターンであるときは、微細パターンを形成する区域の形状である外形パターン(図7(c)または(d)であれば、外形の四角形)も任意に設定することができ、この外形パターンをホログラム形成層のホログラムの絵柄に同調させたものとしてもよい。
【0063】
反射性パターン層が微細パターンを構成する場合、反射性パターン層の面積率は、例えば20%〜80%であり、好ましくは30%〜60%である。
【0064】
反射性パターン層を形成するための金属材料としては、Al、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Mg、Sb、Pb、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、もしくはRb等の金属、またはそれら金属の酸化物もしくは窒化物等を用いることができ、これらのうちから1種もしくは2種以上を組み合わせ用いることができる。これらの中でも、Al、Cr、Ni、Ag、またはAu等が特に好ましく、その膜厚としては1nm〜10,000nmが好ましく、より好ましくは2nm〜200nmである。
【0065】
可視光透過性を有する反射性パターン層を形成するための材料としては、ホログラム形成層を構成する素材と光の屈折率の異なる透明材料を用いることができる。この透明材料の光の屈折率はホログラム層を形成する素材の光の屈折率より大きくてもよいし、小さくてもよいが、ホログラム形成層との光の屈折率の差が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、特に好ましくは1.0以上である。好適に使用される素材の具体例としては、酸化チタン(TiO2)、硫化亜鉛(ZnS)、Cu・Al複合金属酸化物等を挙げることができる。なお、厚みが20nm以下の金属薄膜も透明性を有するので、ホログラム層とは光の屈折率の異なる透明層を構成する素材として使用できる。
【0066】
反射性パターン層を形成する方法としては、種々の方法が挙げられる。例えば、パターンマスクを介して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより薄膜形成を行う方法、印刷法等を用いることができる。また、反射性層を全面に形成した後、不要部分を除去する方法を用いることもできる。
【0067】
以下に、図9および10に基づき、反射性層を全面に形成した後、不要部分を除去することより反射性パターン層を形成する方法の一例を説明する。
図9は、反射性層のパターン化を水溶性樹脂パターンを利用して行う方法の説明図である。なお、図9および以降に説明する際に引用する図10においては、ホログラム形成層以外の層、例えば、光選択反射層等は省略する。
【0068】
図9(a)に示すように、まず、下面にホログラムの微細凹凸を有するホログラム形成層を作製する。
次に、図9(b)に示すように、ホログラム形成層の微細凹凸が形成された面の反射性金属層が不要な部分に水溶性樹脂パターンを形成する。水溶性樹脂パターンの形成は、水溶性樹脂もしくは水膨潤性樹脂を溶解または分散した水溶性樹脂組成物、いわゆる水溶性インキを用いて印刷する等により行うことができる。
その後、図9(c)に示すように、水溶性樹脂パターンが形成された面の一面に反射性層を形成する。その後、反射性層が形成された面に、水または酸性もしくはアルカリ性の水溶液等を接触させて、水溶性樹脂パターンを除去すると共に、水溶性樹脂パターンが積層されていた部分の反射性層を除去することにより、図9(d)に示すように、水溶性樹脂パターンが積層されていなかった部分の反射性層が残り、反射性層がパターン状に形成される。
【0069】
図10は、反射性層のパターン化をレジストパターンを利用して行う方法の説明図である。
まず、図10(a)に示すように、下面にホログラムの微細凹凸を有するホログラム形成層を形成する。
次に、図10(b)に示すように、ホログラム形成層の微細凹凸が形成された面の一面に反射性層を形成する。
その後、図10(c)に示すように、反射性層の下面の、反射性層が必要な部分にレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンが形成された面にエッチング液を作用させ、レジストパターンで被覆された部分以外の部分の反射性層をエッチングして除去する。これにより、図10(d)に示すように、レジストパターンで被覆された部分の反射性層が残り、反射性層がパターン状に形成される。なお、パターン状に形成された反射性層上に残ったレジストパターンは、残したままでもよいが、除去したい場合には、残ったレジストパターンを溶解等すればよい。
【0070】
上記の水溶性樹脂パターンまたはレジストパターンを用いる方法は、同じパターンを有する真偽判定用媒体を量産する際に好適である。反射性層のパターン化は、上記の種々の方法以外にも、反射性層を部分的に加熱し、加熱された部分の反射性層を、サーマルヘッドによる加熱またはレーザー光の照射等により、溶融または蒸発させて除去する方法がある。この方法は、各層を積層した後にも行うことができ、また、どちらかと言うと、個別の情報に基づいたパターン化を行う際に好適である。
以上説明した反射性層をパターン化するための種々の方法は、任意に組み合わせて用いることができる。
【0071】
(可視光透過性反射層)
ホログラムを形成する反射層は、反射性パターン層と可視光透過性反射層とを含むこともできる。この場合の反射層積層のバリエーションを図11に示す。本発明の真偽判定用媒体では、図11(a)に示すように反射性パターン層が積層されていない部分に可視光透過性反射層をパターン状に設けてもよい。但し、製造の容易性の点では図11(b)および(c)に示すように全面に設けることが好ましい。反射性パターン層と可視光透過性反射層の積層順序は、図11(b)に示すように、ホログラム形成層/反射性パターン層/可視光透過性反射層の順でもよく、図11(c)に示すように、ホログラム形成層/可視光透過性反射層/反射性パターン層の順でもよい。但し、層形成の容易性の点では図11(b)に示すように反射性パターン層を積層した上に可視光透過性反射層を形成することが好ましい。
【0072】
可視光透過性反射層は、透明タイプのホログラムを形成するための反射層材料として先に説明した各種材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、印刷法等により、例えば反射性パターン層を形成した積層体表面に成膜処理を施すことによって作製することができる。可視光透過性反射層の膜厚は、特に限定されないが、例えば1〜10000nmとすることができる。
【0073】
(下地層)
反射層のホログラム形成層を有する面とは反対の面上に下地層を設けることもできる。ホログラム形成層が可視光透過性を有する場合、ホログラムによって遮断されることなく下地層の色を視認できるため、下地層に所望の色を付すことにより、光選択反射層の色彩との組み合わせによって多様な色調の真偽判定用媒体を得ることができる。また、下地層として着色層を設けることにより、光選択反射層やホログラムの視認性を高めることもできる。なお、下地層に文字や図形等のデザインを付すことも可能である。前記下地層は、後述する真偽判定部の接着層を構成する材料から形成することができる。いずれの場合も、顔料、染料等を適量添加することにより、所望の色調を有する下地層とすることができる。添加する顔料としては、グンジョウ、カドミウムエロー、ベンガラ、クロムエロー、鉛白、チタン白、カーボンブラックなどの無機顔料やアゾ系、トリフェニルメタン系、キノリン系、アントラキノン系、フタロシアニン系、その他の有機顔料を挙げることができ、染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、硫化染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料、キノンイミン染料(アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料)、チアゾール染料、メチン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料などを挙げることができる。添加する染料、顔料の濃度は所望の色調に応じて調整することができる。
【0074】
前記真偽判定部は、必要に応じて、前述の層以外の層を任意の位置に有してもよい。例えば、公知の保護層や各種機能層を有することもできる。
【0075】
前記真偽判定部において、各層の厚さは適宜設定されるものであり特に限定されるものではないが、例えば、光選択反射層の厚さは、0.1〜30μm、ホログラム形成層の厚さは、0.1〜20μmである。反射層の厚さについては前述の通りである。また、基材、配向膜、下地層を設ける場合、基材の厚さは、例えば3〜250μm、配向膜の厚さは、例えば0.05〜20μm、下地層の厚さは、例えば0.1〜50μmとすることができる。
【0076】
前記真偽判定部は、あらかじめ基材に適用するサイズに作製することもできるが、シート状、フィルム状または板状の原反から所望の大きさに裁断する等して作製することもできる。なお、真偽判定部の形状およびサイズは、ラベルの大きさやラベルを適用する物品の大きさ、およびラベルの適用箇所等に応じて決定されるものであり、特に限定されるものではない。
【0077】
本発明のラベルは、前記真偽判定部を基材の一方の面の少なくとも一部に有するものであればよく、真偽判定部の基材への適用方法は限定されるものではない。例えば、シール状の真偽判定部を作製し、そのシールを基材に貼り付けることにより、真偽判定部を基材上に適用することができる。但し、偽造防止効果を高めるためには、真偽判定部を、スレッドとして紙に抄き込むか、または転写もしくはラミネートにより基材に適用することが好ましい。上記方法により真偽判定部と基材を一体化させれば、偽造品に適用するために真正品から真偽判定部のみを分離することは困難となり、偽造防止効果を更に高めることができる。
以下に、真偽判定部をスレッドとして抄き込む方法、真偽判定部をラミネートする方法および転写する方法について説明する。
【0078】
[スレッドを抄き込む方法]
前記真偽判定部がスレッドである場合のスレッドを基紙に抄き込む方法の一つの実施形態を、以下に説明する。
まず、二槽のシリンダーバットを備えた円網抄紙機の、一槽目の円網シリンダーの同一円周表面上に予め所定サイズの形のテープを一定間隔で貼り付けて網目を塞いでおき、第一紙層として、一定間隔で、所定サイズの穴が空いた紙層(第一紙層)を形成する。二槽目の円網シリンダーには、上記のような細工を施さず、無地の第二紙層を形成する。
【0079】
また、スレッドの巻き出し装置を第一槽目と第二槽目の円網シリンダー間に設置して、スレッドが第一紙層の穴と重なる位置に、挿入されるようにする。この際、第一紙層と第二紙層が積層された状態で、第一紙層の穴の位置に、スレッドが、光選択反射層が観察者側に位置するようにしておく。この状態で、マシンカレンダー処理や、スーパーカレンダー処理で表面平滑処理を施して、真偽判定部付ラベルを製造できる。この場合は、スレッドが片面で露出部と被覆部が繰り返し形成された図1、2に示すようなタイプのラベルが得られる。尚、上記の一槽目の円網シリンダーの円周表面上に、テープを連続的に貼り付けて網目を塞いでおけば、連続したストライプ形状の露出部を有したスレッドを基紙に抄き込むことも可能である。
【0080】
[真偽判定部をラミネートする方法]
次に、基材に真偽判定部をラミネートして、基材と真偽判定部を一体化させる方法の一つの実施形態を説明する。
真偽判定部とラベル基材(例えばプラスチック基材)とを、真偽判定部に設けてある接着層とラベル基材が接する向きで重ね合わせて、圧力のみ、または熱および圧力により、真偽判定部とラベル基材をラミネートする。接着層を構成する接着剤としては、公知の感圧接着剤および感熱接着剤を用いることができる。接着層を構成する接着剤が、感圧接着剤であれば圧力のみ、接着剤が感熱接着剤であれば熱および圧力をかけて接着させる。
【0081】
[真偽判定部を転写する方法]
基材に真偽判定部を転写して、基材と真偽判定部を一体化させる方法の具体例としては、以下の転写方法が挙げられる。
(1)真偽判定部を転写箔として、熱や圧を利用して転写箔の全体をラベル基材に転写する。
(2)基材フィルム上に真偽判定部を設けた転写シートを用いて、熱や圧を利用して、基材に真偽判定部を転写し、その後転写シートの基材フィルムを真偽判定部から剥がす。
(3)真偽判定部を設けたラベル(セパ付き)を基材に貼る。
【0082】
[ラベル基材]
ラベル基材としては、例えばシート状、フィルム状または板状の紙またはプラスチック基材であることができる。スレッド状の真偽判定部を適用する場合、基材としては通常、紙が使用される。基紙としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材パルプや麻、綿、藁を原料とした非木材パルプ等を適宜混合して叩解して、主剤を用意し、これに填料、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、消泡剤、染料、着色顔料、蛍光剤等の助剤などを適宜添加した原料を用いて、長網抄紙機、円網抄紙機等の公知の抄紙機を使用して抄紙した紙を使用することが好ましい。基紙の厚さは、一般に0.02〜5mm程度が適当である。
【0083】
一方、真偽判定部を転写またはラミネートにより適用する場合、基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、セルロースジアセテート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどのプラスチック、銅、アルミニウムなどの金属、紙、含浸紙などを単独または組み合わせ、適宜積層する等して用いることができる。この場合、基材の厚さは、0.005〜5mm程度が適当である。
【0084】
[粘着層]
本発明のラベルは、各種物品に貼り付けるために、真偽判定部を有する面とは反対の面に粘着層を有することができる。更に粘着層上に離型シートを有することもできる。この場合は離型シートを剥がして、粘着剤層により任意の物品に、真偽判定部付ラベルを貼り付けることができる。但し、本発明のラベルは、任意の物品に任意の方法で適用可能であればよく、例えば荷札として、くくりつける等して適用する場合は上記粘着層は必須ではない。
【0085】
粘着剤層は、例えば、アクリル系樹脂、天然ゴム系樹脂、合成ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等からなる水性タイプまたは溶剤系タイプの塗工液を用いて形成することができる。塗工方法は特に限定されず、ロールコーター法、リバースコーター法、ナイフコーター法、コンマコーター法、グラビアコーター法などの一般的な方法を用いることができる。
その塗工量は、0.1〜50g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
【0086】
離型シートは、ラベルを物品に貼り付ける迄の間、粘着剤層を保護する為に積層されるものであり、使用時には引き剥がされる。離型シートとしては、一般的なものが利用でき、特に限定されない。例えば、上質紙、コート紙、キャストコート紙、アルミニウム箔/紙、樹脂含浸紙、合成紙などの紙ベース基材やポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、発泡ポリエステル樹脂、発泡ポリプロピレン樹脂などの高分子樹脂フィルムベース基材の一方の面に剥離剤としてシリコーン系樹脂を塗工したもの等が利用できる。紙ベースの場合、紙の坪量は30〜300g/m2のもの、フィルムベースの場合は厚みが10〜300μmの範囲のフィルムが好ましい。
【0087】
[可変情報の記録]
本発明のラベルは、前記真偽判定部に加えて、情報受容部を有することができる。本発明において、「情報受容部」とは、任意の印刷方法により情報の記録が可能な部分をいうものとする。情報受容部は、真偽判定部を有する面または該面とは反対の面に設けることができる。例えば、本発明のラベルを荷札として物品にくくりつける場合、情報受容部をどちらの面に設けても、記録された情報を視認することができる。一方、本発明のラベルを粘着層を介して物品に貼り付ける場合は、貼り付けられた状態で記録された情報を視認できるように、真偽判定部と同じ面に情報受容部を設けることが好ましい。
【0088】
情報受容部に記録される情報としては、製造日、製品名称、氏名、住所等、その真偽判定部付ラベルが付与される対象品(高額商品や、身分証明カード、クレジットカード、預貯金用カード、プリペイドカード、定期券、トラベラーズチェック、金券類等)の種類を特定する個別のデータ(可変情報)が挙げられる。この可変情報の印刷方式としては、例えば、数字や記号を熱転写リボンを用いたサーマルヘッドによって印刷する感熱転写方式、インクジェット方式、ドットインパクト方式やレーザー照射によるトナー転写方式などが挙げられる。上記情報受容部を有する本発明のラベルは、印字ラベルとして利用することができる。更に、印字ラベルとして利用する場合、可変情報を記録する際に、偽造防止性をより高かめるために、例えば、特開2005−178204号公報に記載の蛍光発色する色材を含有した転写層を有する蛍光転写リボンにより、転写される印字部を蛍光発色をさせたり、磁気材料を含有した転写層を有する転写リボンを用いて、転写される印字部に磁気特性をもたせたりしてもよい。蛍光発色は自然光でチェックしたり、必要に応じてブラックライトでチェックすることができる。また、磁気特性は磁気センサーでチェックすることができる。また、情報受容部には、可変情報の内容を表示するために、あらかじめ情報(固定情報)を記録しておくこともできる。
【0089】
[ラベルを適用する物品]
本発明の真偽判定部付ラベルは、真正性を識別する必要性のある種々の物品に貼り付ける等により適用すると価値が高いものである。このような真正性を識別する必要性のある物品としては様々なものがあり、次のようなものを例示することができる。
【0090】
真正性を識別する必要性のある種々の物品としては、保持者の本人確認(ID)用であるID証、金券類、純正品、ブランドが著名な高級ブランド品等がある。ID証とは、例えば、パスポート、運転免許証、保険証、図書カード(図書館の貸出し用カード)等である。金券とは、例えば、商品券、ギフト券等の有価証券、プリペイドカード等である。純正品とは、種々の機器類に用いるための部品や消耗品等であって、純正である認証の必要なものであり、物品としては、電子機器、電気機器、コンピュータ製品、プリンタ等に用いる消耗品、医薬品、化学薬品等がある。高級ブランド品としては、著名なブランドの高価な商品、例えば、時計、衣類、バッグ、宝飾品、スポーツ用品、化粧品がある。さらに、コンピュータソフト、音楽ソフトもしくは映像ソフトが記憶された媒体類も真正性を識別する必要性のある種々の物品として挙げることができる。
【0091】
したがって、本発明の真偽判定部付ラベルは、上記のような物品そのもの、またはそれら物品のケースに貼り付けることができる。または、上記の物品に荷札として、くくりつける等して適用することもできる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例により説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。また、特に断りのない限り、部または%は質量基準である。
【0093】
[実施例1]
(1)光選択反射層(コレステリック液晶層)の形成
厚さ16μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を基材とし、該基材の一方の面に、下記組成の高分子コレステリック液晶層インキを用いて、スクリーン印刷法により印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥質量10g/m2の高分子コレステリック液晶層を形成した。得られたコレステリック液晶層は、右円偏向のみを選択的に反射する光選択反射性を有していた。
(高分子コレステリック液晶層インキ)
コレステリック液晶顔料(ワッカーケミー社製、HELICONE(登録商標)HCXL) 30部
メジウムインキ(ザ・インクテック(株)製、UVカード用) 70部
【0094】
(2)ホログラム形成層の形成
PET基材のコレステリック液晶層を設けた面とは反対の面上に、透明紫外線硬化性樹脂組成物を塗布し、レリーフホログラムの複製用型の型面を接触させたまま紫外線を照射して、透明紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、レリーフホログラムの形成を行った。これにより厚さ2μmのホログラム形成層が形成された。
【0095】
(3)反射性パターン層の形成
前記のレリーフホログラムの賦型された面に、水溶性グラビアインキを用いてグラビア印刷機により反射性パターン層を形成したい部分以外の部分に印刷を行った。その後、印刷面全面にAl蒸着を行った後に水洗いすると、水溶性インキ層上のAl蒸着層は水溶性インキ層とともに除去された。これにより、厚みが400Åの反射性パターン層が形成された積層体を得た。
【0096】
(4)スレッド用紙の作製
前記積層体の反射性パターン層を有する面に、ガラス転移温度30℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体の接着剤を用いて、乾燥質量2g/m2の接着層を形成した。また、上記のコレステリック液晶層上に、上記と同様に接着層を設けてスレッド原反を作製した。この原反をスリッター機により、2mm幅に裁断して、巻芯に巻き取って、ロール状とした。
【0097】
二槽のシリンダーバットを備えた円網抄紙機の、一槽目の円網シリンダーの同一円周表面上に予め所定サイズの形のテープを一定間隔で貼り付けて網目を塞いでおき、第一紙層として、一定間隔で、所定サイズの穴が空いた紙層(第一紙層)を形成した。二槽目の円網シリンダーには、上記のような細工を施さず、無地の第二紙層を形成した。また、スレッドの巻き出し装置を第一槽目と第二槽目の円網シリンダー間に設置して、スレッドが第一紙層の穴と重なる位置で、さらにスレッドの接着層と第二紙層とが接する向きで、挿入されるようにした。この際、第一紙層と第二紙層が積層された状態で、第一紙層の穴の位置で、コレステリック液晶層が観察者側に位置するようにした。
【0098】
この抄紙機で抄造される紙を、シリンダードライヤー(表面温度約70〜100℃)で乾燥後、マシンカレンダー処理した。上記抄紙機により、上記のスレッドを使用して、図1に示すように、スレッドが片面で露出部と被覆部が繰り返し形成されたスレッド用紙を得た。第一紙層の乾燥質量は35g/m2、第二紙層の乾燥質量は69g/m2、第一紙層と第二紙層が積層された状態では、90kg/四六版の上質紙となった。
【0099】
(5)ラベルの作製
前記スレッド用紙のスレッドが露出した面と反対面に、アクリル系樹脂からなる強粘着用粘着剤を用いて、乾燥質量30g/m2になるように、グラビア印刷により、ラベル全面に粘着剤層を形成し、さらに、その粘着剤層の上に、離型シートとして、上質紙ベースでシリコーン樹脂の塗工がされた市販の坪量90g/m2の剥離紙を貼り合せて、さらに抜き加工を行って、スレッド付ラベルを作製した。
【0100】
[実施例2]
反射性パターン層表面を含む積層体表面全面に、TiO2蒸着を行い厚さ500Åの可視光透過性反射層を形成した以外は、実施例1と同様の方法でスレッド付ラベルを作製した。
【0101】
[実施例3]
コレステリック液晶層をTACフィルムにポリビニルアルコールを塗布し、ラビング処理を行った上に形成した点、およびコレステリック液晶層上にホログラム形成層および反射層を順次積層した点以外は実施例2と同様の方法で、TACフィルム、ポリビニルアルコール層(配向層)、コレステリック液晶層、ホログラム形成層、反射性パターン層および可視光透過性反射層(TiO2層)をこの順に有する積層体を得た。
前記積層体の可視光透過性反射層上に、ガラス転移温度30℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体の接着剤を用いて、乾燥質量2g/m2の接着層を形成してスレッド原反を作製した。この原反をスリッター機により、2mm幅に裁断して、巻芯に巻き取って、ロール状とした。
タック紙(ベースが上質紙系55kg/四六版で裏面に粘着加工が施され、剥離紙付き)の表面に、上記のスレッドを、接着層とタック紙の表面とが接する向きで重ね合わせて、熱ラミネートを行った。このスレッド付きのタック紙に対して、抜き加工を行って、ラベルを作製した。
【0102】
[実施例4]
コレステリック液晶層上にホログラム形成層および反射層を順次積層した以外は実施例2と同様の方法で、PETフィルム、コレステリック液晶層、ホログラム形成層、反射性パターン層および可視光透過性反射層(TiO2層)をこの順に有する積層体を得た。
前記積層体の可視光透過性反射層上に、ガラス転移温度30℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体の接着剤を用いて、乾燥質量2g/m2の接着層を形成してスレッド原反を作製した。この原反をスリッター機により、2mm幅に裁断して、巻芯に巻き取って、ロール状とした。
タック紙(ベースが上質紙系55kg/四六版で裏面に粘着加工が施され、剥離紙付き)の表面に、上記のスレッドを、接着層とタック紙の表面とが接する向きで重ね合わせて、熱および圧力を加えて、スレッドの高分子コレステリック液晶層をタック紙にストライプ状に転写(ストライプ転写)した後、PETフィルムをコレステリック液晶層から剥がした。その後、このスレッド付のタック紙に対して、抜き加工を行って、ラベルを作製した。
【0103】
[実施例5]
実施例1〜4において、スレッド付ラベルの作製途中で、スレッドの設けられていない箇所に、図2に示すように、オフセット印刷によって、黒インキを用いて固定情報6として、「日付」、「名称」および枠線を、予め形成した。ラベル形成後、日付の記入欄および名称の記入欄に、特開2005−178204号公報の実施例に記載の蛍光インキ層(蛍光ピンク)を有する熱転写シートを用いて、熱転写プリンターにて、図2に示すように、可変情報7である個別データを印字した。
【0104】
実施例1〜5で得られた真偽判定部(スレッド)付ラベルは、基材と真偽判定部とが一体化されたもので、偽造防止性が非常に高いものであった。また、実施例1で得られたラベルは、Al反射層がパターン化されているため、Al反射層がされていない部分でコレステリック液晶層の色彩可変効果を容易に確認することができた。実施例2〜4で得られたラベルでは、Al反射層下に可視光透過性のTiO2層が反射層として配置されているため、コレステリック液晶層の色彩可変効果の確認が容易である上にホログラムの絵柄も全面で鮮明に確認することができた。このように実施例1〜5で得られたラベルは、真偽判定部を目視することにより真偽判定が簡単にでき、また、ツール(右円偏光板または左円偏光板)を用いた真偽判定が可能であった。また、実施例5の真偽判定部付き印字ラベルは、実施例1〜4のラベルで得られる効果に加えて、可変情報である個別データが印字され、より偽造防止性が高いものであり、さらに印字部には鮮明な蛍光色が観察でき、非常に偽造防止性が高いものであった。これらのラベルは、各種物品に貼り付けて真偽判定のために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】真偽判定部の基材への適用例を示す。
【図2】真偽判定部の基材への適用例を示す。
【図3】真偽判定部の基材への適用例を示す。
【図4】真偽判定部の基材への適用例を示す。
【図5】真偽判定部の層構成の具体例を示す。
【図6】位相差層を介して二層の光選択反射層を有する態様の説明図である。
【図7】反射性パターン層のパターンの一例を示す。
【図8】ホログラム絵柄と反射層パターンの組み合わせの一例を示す。
【図9】反射性層のパターン化の説明図である。
【図10】反射性層のパターン化の説明図である。
【図11】反射層積層のバリエーションを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の面の少なくとも一部に真偽判定部を有するラベルであって、
真偽判定部は、基材側から、反射層、ホログラム形成層、ならびに入射光のうち左円偏光および右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有する光選択反射層をこの順に有し、かつ
反射層は反射性パターン層を含む、前記ラベル。
【請求項2】
反射層は、可視光透過性反射層を更に含む請求項1に記載のラベル。
【請求項3】
真偽判定部は、基材側から、可視光透過性反射層、反射性パターン層、ホログラム形成層および光選択反射層をこの順に有する請求項2に記載のラベル。
【請求項4】
光選択反射層はコレステリック液晶層である請求項1〜3のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項5】
真偽判定部はスレッドである請求項1〜4のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項6】
真偽判定部を有する面または該面とは反対の面に、情報受容部を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−203801(P2008−203801A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43143(P2007−43143)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】