説明

真正性識別体および真正性識別可能な基材

【課題】真正性確認洋等に用いるホログラムに、より一層の外観の複雑さ、および真正性の判定の容易さが不要された新しい真正性識別体を提供することを課題とする。
【解決手段】透明基材2の上面もしくは下面にコレステリック液晶層3、それらの下面にホログラム形成層4およびホログラム形成層4の微細凹凸に沿った反射性金属層5からなり、反射性金属層5を上面から見てパターン状になるよう形成して真正性識別体1とすることにより、課題を解決することができた。コレステリック液晶層は二層でもよく、さらに下面に接着剤層7を積層してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばIDカード等に適用して、偽造防止性を高めることが可能な真正性識別体に関するものであり、また、そのような真正性識別体が適用された、種々の用途に用いることが可能な真正性識別可能な基材に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
物品の真正性を確認できるようにする目的で、物品に真正性確認用のシールを貼り付けることがよく行なわれており、例えば、ホログラムをシール状に形成したホログラムシールがよく用いられている。この理由は、ホログラムを製造するためには高度な技術を要するからである。しかし、ホログラムは既に長期にわたって用いられていて、不正な意図による偽造が試みられることも少なくない。この意味で、偽造の一層困難なホログラムが求められている。
【0003】
また、一方で、ホログラムには、簡単な手段により真正性を確認できることも求められる。例えば、IDカードの一つであるクレジットカードを例に取れば、多種類のクレジットカードが出回っていて、色々な場面で使用されているが、クレジットカードの真正性を判定するのは、必ずしも専門の判定員ではなく、多くは店頭の販売員であるため、真正性を判定する方法としては、簡便で時間を要しないものが求められている。
【0004】
そこで、ホログラムに金属蒸着層を部分的に施すことにより、金属蒸着層の部分に応じた回折光もしくはホログラム像を与えることが提案されている。(特許文献1)。
また、ホログラムとコレステリック液晶を組み合わせ、コレステリック液晶によって生じる、見る角度により色彩が変化する効果、および偏光効果を加味することが試みられている。例えば、コレステリック液晶層そのものにホログラムの微細凹凸を形成し、この微細凹凸を熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂により充填して耐熱性を補ない、好ましくは暗色もしくは濃色の着色層を伴なった真正性識別構造が提案されている。(特許文献2)。
【特許文献1】特開平4−104188号公報。
【特許文献2】特開2003−185835号公報。
【0005】
特許文献1に記載された発明によれば、ホログラムに金属蒸着層の有無により生じるパターンを付与することができ、また、特許文献2に記載された発明によれば、コレステリック液晶によって生じる、見る角度により色彩が変化する効果をホログラムに加えることができるが、前者においては、ホログラムが見える区域と見えない区域とが区分けされるにとどまるものであり、後者においては、ホログラムが見えにくい上、単に、ホログラムの全面にコレステリック液晶層に基づく効果が加わったのみである。従って、いずれにおいても、より一層の外観の複雑さ、および真正性の判定の容易さを伴なうことが求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、真正性確認用等に用いるホログラムに、より一層の外観の複雑さ、および真正性の判定の容易さが不要された新しい真正性識別体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者の検討により、ホログラムとコレステリック液晶を別層として形成したものを組み合わせ上で、ホログラムが伴なう反射性金属層をパターン状とすることにより、下層に反射性金属層のある部分では、ホログラムの見えやすさを確保でき、下層に反射性金属層の無い部分では、コレステリック液晶によって生じる、見る角度により色彩が変化する効果を発揮でき、しかも、それら両効果がパターン状に区分けされた、複雑な外観を有する真正性識別体を得ることができた。
【0008】
第1の発明は、透明基材の少なくとも一方の側にコレステリック液晶層が積層されたコレステリック液晶層積層体の非観察側に、透明樹脂層の表面にホログラムの微細凹凸が形成されたホログラム形成層が積層されており、前記ホログラム形成層の微細凹凸が形成された面に反射性金属層がパターン状に積層されていることを特徴とする真正性識別体に関するものである。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記コレステリック液晶層積層体は、前記透明基材の観察側に前記コレステリック液晶層が積層されたものであることを特徴とする真正性識別体に関するものである。
【0010】
第3の発明は、第1の発明において、前記コレステリック液晶層積層体は、前記透明基材の非観察側に前記コレステリック液晶層が積層されたものであることを特徴とする真正性識別体に関するものである。
【0011】
第4の発明は、第1の発明において、前記コレステリック液晶層積層体は、前記透明基材の観察側および非観察側のそれぞれに前記コレステリック液晶層が積層されたものであることを特徴とする真正性識別体に関するものである。
【0012】
第5の発明は、第1〜第4いずれかの発明において、前記コレステリック液晶層の少なくとも一部がパターン状であることを特徴とする真正性識別体に関するものである。
【0013】
第6の発明は、第1〜第5いずれかの発明の真正性識別体の前記反射性金属層側に接着剤層が積層されて構成された貼着用の真正性識別体に関するものである。
【0014】
第7の発明は、第1〜第5いずれかの発明の真正性識別体が、前記反射性金属層側が別の基材に積層されて構成された真正性識別可能な基材に関するものである。
【0015】
第8の発明は、第1〜第5いずれかの発明の真正性識別体が、別の基材に可視可能に埋め込まれて構成された真正性識別可能な基材に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、ホログラム形成層とコレステリック液晶層とを別の層として形成し、ホログラム形成層の微細凹凸が形成された面に反射性金属層をパターン状に積層したので、下層に反射性金属層が積層された部分ではホログラムが見えやすく、また、下層に反射性金属層が積層されてない部分ではコレステリック液晶によって生じる見る角度により色彩が変化する効果を確認しやすく、また、右円偏光板もしくは左円偏光板を介して観察することにより、右円偏光もしくは左円偏光の有無を確認することが可能であり、しかも、ホログラムが見えやすい部分とコレステリック液晶層の効果が確認しやすい部分とがパターン状に区分けされて観察されるので、複雑な外観を有する上に、真正性の識別性が高い真正性識別体を提供することができる。
【0017】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、コレステリック液晶層が透明基材の観察側に積層されているために、コレステリック液晶によって生じる効果をより一層確認しやすい真正性識別体を提供することができる。
【0018】
第3の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、透明基材が観察側であるために、コレステリック液晶層の表面の保護効果の高い真正性識別体を提供することができる。
【0019】
第4の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、透明基材の両面にコレステリック液晶層が積層してあるので、これらコレステリック液晶層として、特性の異なるものどうしを用いることにより、見る角度により色彩が変化する効果がより複雑な真正性識別体を提供することができる。
【0020】
第5の発明によれば、第1〜第4いずれかの発明の効果に加えて、コレステリック液晶層の少なくとも一部がパターン状であるので、見る角度により色彩が変化する効果が少なくともそのパターンに応じて得られる真正性識別体を提供することができる。
【0021】
第6の発明によれば、接着剤層が積層されたことにより、第1〜第5いずれかの発明の効果を発揮し得る真正性識別体を物品に適用することが容易な貼着用の真正性識別体を提供することができる。
【0022】
第7の発明によれば、基材に、第1〜第5いずれかの発明の真正性識別体を積層したので、第1〜第5いずれかの発明の効果を発揮する、真正性識別可能な基材を提供することができる。
【0023】
第8の発明によれば、基材に、第1〜第5いずれかの発明の真正性識別体を可視可能に積層したので、第1〜第5いずれかの発明の効果を発揮する、真正性識別可能な基材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1および図2は、本発明の真正性識別体の積層構造を示す図である。図3および図4は、図1および図2に示す真正性識別体における反射性金属層のパターンを示す図であり、特に図4は、微細パターンを示す図である。図5および図6は、反射性金属層のパターンを形成する過程を説明する図である。図7〜図9は、本発明の真正性識別体を別の基材に適用した真正性識別可能な基材を示す図である。
【0025】
図1(a)に示すように、本発明の真正性識別体1は、透明基材2の片面(図では上面である。以降において上下は図中の上下を基準とする。なお、本発明の真正性識別体は、上面側が観察側である。)にコレステリック液晶層3が積層され、透明基材2の他方の面(下面)には透明樹脂からなるホログラム形成層4が積層され、ホログラム形成層4は、その下面にホログラムの微細凹凸が形成されたものである。さらにホログラム形成層4には、その微細凹凸に沿って、パターン状に反射性金属層5が積層されている。図1(a)に示す真正性識別体1におけるように、コレステリック液晶層3が透明基材2の観察側に積層されていると、コレステリック液晶層3によって生じる効果をより一層確認しやすい。
【0026】
図1(b)に示すように、本発明の真正性識別体1においては、コレステリック液晶層3が透明基材2の下面側に積層されていてもよく、この場合、ホログラム形成層4はコレステリック液晶層3の下面側に積層され、さらにその下面の微細凹凸に沿って、パターン状に反射性金属層5が積層されている。このようにコレステリック液晶層3が透明基材2の非観察側に積層されていると、透明基材2が観察側となるために、コレステリック液晶層3の表面(上面である。)の保護効果が高い。
【0027】
図2(a)に示すように、本発明の真正性識別体1においては、透明基材2の観察側にコレステリック液晶層A(符号3A)、非観察側にコレステリック液晶層B(符号3B)が積層された、即ち、透明基材2の両面に二つのコレステリック液晶層AおよびB(符号3Aおよ3B)が積層してあるものであってもよい。コレステリック液晶層3Bの下面にはホログラム形成層4およびパターン状に反射性金属層5が積層されている。このようにコレステリック液晶層A(符号3A)およびB(符号3B)が透明基材2をはさんで積層されていると、見る角度により色彩が変化する効果がより複雑な真正性識別体を提供することができる。また、コレステリック液晶層A、Bの両層を透明基材2の同じ側に積層するのにくらべ、積層工程で用いるコレステリック液晶組成物中の溶剤が先に積層されたコレステリック液晶層に悪影響を与えることを回避することができる利点も生じる。
【0028】
図2(b)に示すように、本発明の真正性識別体1においては、透明基材2の観察側にコレステリック液晶層A(符号3A)が積層されており、コレステリック液晶層A(符号3A)の観察側にパターン状にコレステリック液晶層B(符号3B)が積層されたものであってもよい。下面にはホログラム形成層4およびパターン状に反射性金属層5が積層されている。なお、パターン状にコレステリック液晶層B(符号3B)が積層されたもののバリエーションは幾つかあり得る。例えば、コレステリック液晶層A(符号3A)およびB(符号3B)は、積層順が逆でもよいし、もしくはパターン状のコレステリック液晶層B(符号3B)のみでコレステリック液晶層A(符号3A)を欠いてもよい。
【0029】
また、以上の説明では、コレステリック液晶層A(符号3A)およびB(符号3B)は、透明基材2の観察側に積層されているが、透明基材2の非観察側に積層されていてもよい。また、コレステリック液晶層A(符号3A)とパターン状のコレステリック液晶層B(符号3B)は、透明基材2の同じ側ではなく、透明基材2をはさんで、即ち透明基材2の両側に別々に積層されたものであってもよい。このようにコレステリック液晶層の少なくとも一部がパターン状であると、見る角度により色彩が変化する効果が少なくともそのパターンに応じて得られる効果がある。
【0030】
図3は、パターン状に積層された反射性金属層5のパターンを平面的に例示する図である。図3(a)に示すように、パターンは、左右方向の幅が狭く上下方向に長い四角形が等間隔で配列した反射性金属層が等間隔に、例えば、四角形の左右方向の長さ(即ち幅)と等しい間隔を有して配列したことによる縞状のパターンであってもよいし、あるいは、図3(b)に示すように、反射性金属層5が幾何学形状(図では長方形と星形)であってもよい。また、パターンは、以上のような具体的なパターンをポジパターンとするとき、それらのネガパターンであってもよい。なお、これらのパターンは例示であって、パターンは、主に意匠的な観点から自由に決めることができ、幾何学形状以外の文字や記号であってもよく、任意の形状であってよい。また、パターンをホログラム形成層4のホログラムに同調させたものとしてもよい。
【0031】
パターンの大きさは、肉眼で解像し得るものであればよいが、コレステリック液晶が見る角度により色彩が変化するのを観察する上で、着色層6は形状が四角形であれば、縦横が1mm×1mm以上、好ましくは3mm×3mm以上であり、より好ましくは5mm×5mm以上である。幾何学形状の場合には、円形であれば、直径が1mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上であり、そのほかの形状の場合には、内接円の直径が1mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上である。
【0032】
図4(a)および(b)に示すように、反射性金属層5は微細パターン状に積層されていてもよい。この場合のパターン(微細パターン)は、図4(a)に示すように、微細パターンは、図では下方の向かって左側から上方の向かって右側を向いた有限幅の線条からなる反射性金属層5が、幅方向に幅の2倍のピッチで配列した万線パターン状の微細パターンを構成したものであってもよく、あるいは、微細パターンは、図4(b)に示すように、円形状もしくは四角形状の微細な形状の反射性金属層5が等ピッチで配列したものであってもよい。
【0033】
これらの微細パターンは例示であって、微細パターンを構成するパターン自体は、自由に決めることができるので、万線パターン状や網点状以外の幾何学形状、文字もしくは記号等の形状のものであってもよい。微細パターンを構成するパターンの大きさは、通常の観察では観察しにくいか、もしくは観察不可能な微細なものであることが好ましく、万線パターン状の場合、線の幅が0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下であり、形成可能である限り、かなり小さくてもよいが、実際上0.01mm程度以上であることが好ましい。網点が円形状の場合には、直径が0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下であり、0.01mm程度以上であることが好ましい。また、網点が四角形状の場合には、縦横が0.3mm×0.3mm以下、好ましくは0.1mm×0.1mm以下であり、0.01mm×0.01mm程度以上であることが好ましい。そのほかの形状の場合には、内接円の直径が0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下であり、0.01mm程度以上であることが好ましい。
【0034】
パターンが微細パターンであるときは、微細パターンを形成する区域の形状である外形パターン(図4(a)もしくは(b)であれば、外形の四角形)も任意に設定することができ、この外形パターンをホログラム形成層4のホログラムの絵柄に同調させたものとしてもよい。
【0035】
反射性金属層5が微細パターンを構成する場合、反射性金属層5の面積率は20%〜80%であり、より好ましくは30%〜60%である。
【0036】
反射性金属層5がパターン状に形成されている場合、下層に反射性金属層5がある部分では、ホログラム形成層4のホログラムがよく見え、下層に反射性金属層5のがない部分では、ホログラムはよく見えず、コレステリック液晶層3の存在による見る角度により色彩が変化することが観察できる。また、反射性金属層5が微細パターン状に形成された反射性金属層5の場合、微細パターンがある区域、即ち、外形パターン内においては、ホログラムも見えるし、コレステリック液晶層3の存在による見る角度により色彩が変化することも観察できる。
【0037】
本発明の真正性識別体1は、上記のような基本的な積層構造を有し、この基本的な積層構造のものをそのまま使用することもできるが、この真正性識別体1を別の基材に適用して、適用された基材に真正性識別性を付与するという使用法がある。
【0038】
真正性識別体1を別の基材に適用する際、真正性識別体1は、図1もしくは図2を引用して説明したものの下面に接着剤層を積層したものであってもよい。このように接着剤層が積層されていることにより、真正性識別体1を種々の物品に適用する際に、その都度、接着剤層を設ける必要がなく、貼り付けが容易になる利点が生じる。
【0039】
図1〜図4を引用して説明した本発明の真正性識別体1は、種々の物品に適用された場合、不正な意図で物品から分離して他の物品に適用する事の防止性、いわゆる貼り替えの防止性を高めるために、真正性識別体1を構成する各層のいずれかを比較的脆弱な材料で構成するか、もしくは隣接する層どうしの間の接着性を弱めることにより、物品から分離しようとする際に、破壊されるよう構成してもよい。例えば、透明基材2とホログラム形成層4の間に、両者の接着性を低下させるための低接着性材料もしくは、脆性材料を介在させることにより、適用された真正性識別体1を剥離しようとすると、真正性識別体1が破壊されるよう構成することができる。
【0040】
真正性識別体1の透明基材2としては、機械的強度を有し、製造時もしくは他の物品への適用時の加工に耐える程度の耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
【0041】
透明基材2のコレステリック液晶層3を積層する側には、必要に応じて配向膜を設けることが好ましく、配向膜は、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリイミド樹脂等の一般に配向膜として使用し得るものであれば、いずれを用いて構成したものでもよい。配向膜は、これらの樹脂の溶剤溶液を、上記のような透明基材2の表面に適宜な塗布方法により塗布し、乾燥させた後に、布、ブラシ等を用いて摩擦するラビングを行なって形成することができる。
【0042】
コレステリック液晶層3は、配向状態にあるものであり、入射した光のうち、左円偏光もしくは右円偏光のいずれか一方のみを反射する性質を有するものであるか、もしくは、各々の性質を持つものを並べてもよいし、または、左円偏光もしくは右円偏光のいずれか一方のみを反射する性質を有する材料を混合して、両方の偏光作用を有するものとしてもよい。この左円偏光もしくは右円偏光のいずれか一方のみを反射する性質を利用して、右円偏光板もしくは左円偏光板を介して観察することによって、左円偏光もしくは右円偏光の反射の有無を確認することができる。
【0043】
コレステリック液晶層3は、層を構成するコレステリック液晶のらせんピッチおよび層の厚みによって、見る角度により異なる色相を呈するものでもある。左右両方の円偏光を持つものを用いる場合には、両者の色相は互いに同じでもよく、または、互いに異ならせてもよい。
【0044】
このようなコレステリック液晶層3は、コレステリック液晶の溶剤溶液を各種の塗布法によって適用し、乾燥させることにより形成することができ、あるいは、このとき、重合性のコレステリック液晶を用いて紫外線重合性組成物を調製し、得られた紫外線重合性組成物を各種の塗布法によって適用し、乾燥後に、紫外線を照射して重合させて形成することもできる。コレステリック液晶層3をパターン状に形成する場合には、上記のコレステリック液晶の溶剤溶液もしくは紫外線重合性組成物を用いて公知の印刷法により行なうことができる。
【0045】
ホログラム形成層4は、下面にホログラムの微細凹凸が形成されたものであるが、層自体は、ホログラムの微細凹凸の形成が可能な種々の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の素材を用いて構成し得るものである。例えば、ホログラム形成層4は、ポリ塩化ビニル、アクリル酸エステル樹脂(例、PMMA)、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂などの透明な熱可塑性樹脂で構成することができる。あるいは、不飽和ポリエステル、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂の熱硬化性樹脂で構成することができる。これらの樹脂は単独もしくは2種以上を用いて構成することができ、必要に応じ、各種イソシアネート、ナフテン酸コバルトもしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸、ベンゾイルパーオキサイドもしくはメチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等の熱あるいは紫外線開始剤を配合してもよい。電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができる。電離放射性硬化性樹脂には、必要に応じ、架橋構造、粘度の調整等を目的として、他の単官能、もしくは多官能モノマー、オリゴマー等を含ませることができる。
【0046】
ホログラム形成層4へのホログラムの微細凹凸の形成は、回折格子やホログラムの干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型として用い、透明基材2に上記の樹脂を塗布用組成物として調製したものを、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法などの手段で塗布して、塗膜を形成し、その上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着する等により、行なうことができる。また、フォトポリマーを用いる場合は、透明基材2上に、フォトポリマーを同様に塗布した後、前記原版を重ねてレーザー光を照射することにより複製してもよい。
【0047】
反射性金属層5は、ホログラムの微細凹凸の回折効率を高めるためのもので、Al、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Mg、Sb、Pb、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、もしくはRb等の反射性金属を用いて構成することができ、またはこれらの酸化物、もしくはこれらの窒化物を単独で、もしくは組合わせて構成することもできるので、便宜上、反射性金属の酸化物、もしくはこれらの窒化物も反射性金属の範囲として含めるものとする。上記のうちでも、Al、Cr、Ni、Ag、もしくはAu等が特に好ましい。反射性金属層5の厚みは、1〜10000nmが好ましく、より好ましくは、2〜200nmである。
【0048】
反射性金属層5としては、上記以外に、透明のホログラムを形成するための薄膜も、ホログラム効果を発現できる光透過性のものであれば、いかなる材料のものも使用できる。例えば、ホログラム形成層の樹脂と屈折率の異なる透明材料がある。この場合の屈折率はホログラム形成層の樹脂の屈折率よりも大きくても、小さくてもよいが、屈折率の差は0.1以上が望ましく、より好ましくは0.5以上であり、1.0以上が最適である。また、上記以外にも、20nm以下の厚みの金属性反射膜がある。好適に使用される透明タイプの薄膜としては、酸化チタン(TiO2)、硫化亜鉛(ZnS)、Cu・Al複合金属酸化物等が挙げられる。反射性金属層5は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの薄膜形成法によって形成することが好ましいが、メタリック顔料を含有するメタリックインクを用いての印刷法によって形成することもできる。
【0049】
反射性金属層5をパターン状に形成するには、種々の方法で行うことができる。反射性金属層5を形成する際に、層をパターン状に形成できる方法、例えば、上記の薄膜形成法をパターンマスクを介して行う方法によるか、もしくは印刷法によって行うことができるし、一旦、一様な反射性金属層を形成した後に、不要部分を除去する下記のような方法によっても行なうことができる。
【0050】
図5に示すように、反射性金属層5のパターン化を水溶性樹脂パターンを利用して行うことができる。なお、図5および以降に説明する際に引用する図6においては、ホログラム形成層4以外の層、例えば、透明基材2、コレステリック液晶層3等は省略する。
【0051】
図5(a)に示すように、まず、下面にホログラムの微細凹凸が形成されたホログラム形成層4を準備する。次に、図5(b)に示すように、ホログラム形成層4の微細凹凸が形成された面の反射性金属層5が不要な部分に水溶性樹脂パターン6を形成する。水溶性樹脂パターン6の形成は、水溶性樹脂もしくは水膨潤性樹脂を溶解または分散した水溶性樹脂組成物、いわゆる水溶性インキを用いて印刷する等により行なう。さらに、図5(c)に示すように、水溶性樹脂パターン6が形成された面の一面に反射性金属層5を形成する。その後、反射性金属層5が形成された面に、水、又は酸性もしくはアルカリ性の水溶液等を接触させて、水溶性樹脂パターン6を除去すると共に、水溶性樹脂パターン6が積層されていた部分の反射性金属層5を除去することにより、図5(d)に示すように、水溶性樹脂パターン6が積層されていなかった部分の反射性金属層5が残り、反射性金属層5がパターン状に形成される。
【0052】
図6に示すように、反射性金属層5のパターン化をレジストパターンを利用して行なうこともできる。まず、図6(a)に示すように、まず、下面にホログラムの微細凹凸が形成されたホログラム形成層4を準備する。次に、図6(b)に示すように、ホログラム形成層4の微細凹凸が形成された面の一面に反射性金属層5を形成する。さらに、図6(c)に示すように、反射性金属層5の下面の、反射性金属層が必要な部分にレジストパターン7を形成する。その後、レジストパターン7が形成された面にエッチング液を作用させ、レジストパターン7で被覆された部分以外の部分の反射性金属層5をエッチングして除去することにより、図6(d)に示すように、レジストパターン7で被覆された部分の反射性金属層5が残ることにより、反射性金属層5がパターン状に形成される。なお、パターン状に形成された反射性金属層5上に残ったレジストパターン7は、残したままでもよいが、除去したい場合には、残ったレジストパターン7を溶解等により除去する。
【0053】
上記の水溶性樹脂パターンもしくはレジストパターンを用いて行なう方法は、どちらかと言うと、同じパターンの真正性識別体1を多数枚、製作するのに適している。
反射性金属層5のパターン化は、上記の種々の方法以外にも、反射性金属層5を部分的に加熱し、加熱された部分の反射性金属層5を、溶融もしくは蒸発させて除去する方法があり、サーマルヘッドによる加熱もしくはレーザー光の照射によって行なえばよく、これらの方法は、真正性識別体1を作成した後にも行え、また、どちらかと言うと、個別の情報に基づいたパターン化を行なうのに適している。
以上の、反射性金属層5をパターン化するための種々のパターン化の方法は、任意に組み合わせて用いることができる。
【0054】
接着剤層は、真正性識別体1の種々の物品に対する接着性を確保するためのものであるので、接着剤層を構成する接着剤としては、反射性金属層5およびホログラム形成層4との接着性がよく、被着体と強固に接着できるものが好ましい。具体的には、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ゴム変性物などが挙げられ、これらの中から適するものを適宜選択して使用でき、また、これらは単体、もしくは2種以上の混合系で、更に必要に応じてハードレジンや可塑剤、その他の添加剤を加えて使用することができる。この他、ポリアクリル酸エステル樹脂系、もしくはゴム系の粘着剤を用いることもできる。接着剤層が粘着剤で構成されるときは、剥離性のあるプラスチックフィルムや剥離性を付与した紙等を粘着剤の表面に貼り付けておくことが好ましい。
【0055】
本発明の真正性識別体1は、単独でも用い得るが、真正性の識別を必要とする適宜な物品に適用することにより、それらの物品の真正性の識別を可能にすることができる。
【0056】
図7に示すように、真正性識別体1を適宜な基材12上に積層して、真正性識別可能な基材11とすることができる。図7(a)は平面図であり、図7(b)は正面図である。積層は適宜な方法で行なえるが、反射性金属層5の下面に接着剤層が積層された真正性識別体を用いれば、この接着剤層を利用して接着させることにより積層することができる。接着剤層を伴なわない真正性識別体を用いるときは、必要に応じ、基材12もしくは真正性識別体1の互いに接着する面の少なくともいずれか一方に接着剤層を適用する。
【0057】
また、真正性識別体1は、図8(a)の平面図および図8(b)の正面図に示すように、幅の狭い、例えば、0.2mm〜5mm程度のごく狭い幅のテープ状もしくは糸状の形状のスレッドの形に加工されたものを、基材12の上面に積層し、真正性識別可能な基材11としてもよい。
【0058】
スレッドの形に加工された真正性識別体1は、図9(a)の平面図に示すように、真正性識別体1の一部が、基材12の表面に設けられた凹部12aの底から現われたものであってもよい。具体的には、図9(b)の斜視図に示すように、孔(貫通孔である。)12a’があけられた上用基材12Aと、孔があけられてない下用基材12Bとを用意して、上用基材12Aと下用基材12Bとの間に、スレッドの形に加工された真正性識別体1をはさんで積層することにより、上用基材12Aの孔12a’が基材12の上面に凹部12aを形成して、凹部12aの底から真正性識別体1の一部が現われ、凹部12a以外の部分では、真正性識別体1が基材12の内部に埋め込まれた積層構造とすることができる。このような積層構造を取ることによって、真正性識別体1と基材12との接着性がより一層高まる上、真正性識別体1の視認性も確保できる。上用基材12Aが薄いか、透明性を有するときは、真正性識別体1が基材12の内部に埋め込まれた部分においても、真正性識別体1を上用基材12Aを通して視認することができる。
【0059】
本発明の真正性識別体1は、真正性を識別する必要性のある種々の物品に貼り付ける等により適用すると価値が高いものである。このような真正性を識別する必要性のある物品としては様々なものがあり、必要とされる真正性識別性のレベルも一定ではないが、次のようなものを例示することができる。
【0060】
即ち、真正性を識別する必要性のある種々の物品としては、保持者の本人確認(ID)用であるID証、金券類、純正品、ブランドが著名な高級ブランド品等がある。ID証とは、例えば、パスポート、預貯金用カード、クレジットカード、運転免許証、保険証、図書カード(図書館の貸出し用カード)等である。金券とは、例えば、交通機関の切符、紙幣、商品券、ギフト券、証券、株件等の有価証券、公営競技の投票券、プリペイドカード等である。純正品とは、種々の機器類に用いるための部品や消耗品等であって、純正である認証の必要なものであり、物品としては、電子機器、電気機器、コンピュータ製品、プリンタ等に用いる消耗品(用紙、インクカートリッジ、もしくはトナーカートリッジ等)、医薬品、化学薬品等がある。高級ブランド品としては、著名なブランドの通常は高価な商品、例えば、時計、衣類、バッグ、宝飾品、スポーツ用品、化粧品がある。さらに、コンピュータソフト、音楽ソフトもしくは映像ソフトが記憶された媒体類も、真正性を識別する必要性のある種々の物品として挙げることができる。
【0061】
従って、本発明の真正性識別可能な基材11における基材12は、上記のような物品そのもの、もしくは、それら物品のケースであってよく、それらに真正性識別体を貼り付ける等して適用することができる。あるいは、上記の物品に荷札(タグ)として、くくりつける等により適用することもできる。
【実施例1】
【0062】
厚みが50μmのPETフィルムの片方の面にコレステリック液晶の塗布用組成物を用いて塗布を行なった後、乾燥および紫外線照射を順次行なって、コレステリック液晶層を形成した。コレステリック液晶の塗布用組成物としては、重合性のネマチック液晶(BASF(株)製、商品名;「パリオカラーLC242」)、カイラル剤(BASF(株)製、商品名;「パリオカラーLC756」)および紫外線重合開始剤を配合したものの20%トルエン溶液を用い、塗布用組成物中の重合性のネマチック液晶/カイラル剤=95.5/4.5とした。
【0063】
コレステリック液晶層を形成したのとは反対の面に、アクリル系樹脂の塗料を塗布して一様な樹脂層を形成し、この樹脂層の表面に熱エンボスすることによりホログラムの微細凹凸を形成した。形成された微細凹凸の面に、水溶性樹脂のインキ(尾池工業(株)製、品名;「SLNo.14 クリヤー」)を用い、次に形成するアルミニウムの蒸着膜の必要箇所を除いた形状にグラビア印刷法により印刷し、水溶性樹脂のパターンを形成した。印刷後、水溶性樹脂のパターンが形成された微細凹凸の面の全面に、蒸着法によりアルミニウム薄膜を一様に形成し、形成後、水洗を行ない、水溶性樹脂のパターンが形成された箇所のアルミニウム薄膜を水溶性樹脂のパターンごと除去し、アルミニウム薄膜からなるパターンを形成し、真正性識別体とした。得られた真正性識別体は、アルミニウム薄膜のある箇所では、ホログラムを観察することができ、また、アルミニウムのない箇所では、見る角度により色彩が変化する効果が得られるものであった。
【0064】
この真正性識別体のアルミニウム薄膜のある側に粘着剤を塗布し、塗布面に離型紙を重ね、適宜な形状に打ち抜いて、ラベルを作成することができた。作成されたラベルは離型紙を剥がして種々の物品に貼り付けることができた。また、粘着剤と離型紙とに替えて、感熱接着剤層を塗布したものは、感熱接着剤層側を対象物の紙やプラスチックの基材側として加熱加圧することにより、熱圧着することができた。さらに、真正性識別体の表裏に感熱接着剤層を設け、スリッター加工により2mm幅としたものは、紙の紙層の間に漉き込んで、スレッドを有する紙を形成することができた。
【実施例2】
【0065】
水溶性樹脂のインキとして異なるタイプのもの((株)昭和インク工業所製、品名;「シルク水洗用プライマー No.4」)を用い、シルクスクリーン印刷法により、形成されたホログラムの絵柄の特定部分を除いた形状に印刷し、水溶性樹脂のパターンを形成した以外は、実施例1におけるのと同様に行ない、真正性識別体を得た。得られた真正性識別体は、ホログラムの絵柄の特定部分を観察することができ、また、アルミニウムのない箇所では、見る角度により色彩が変化する効果が得られるものであった。
【実施例3】
【0066】
ホログラムの微細凹凸を形成するところまでは、実施例1におけるのと同様に行なった後、形成された微細凹凸の面の全面に、蒸着法によりアルミニウム薄膜を一様に形成し、形成されたアルミニウム薄膜に、エッチング用レジストインキ((株)昭和インク工業所製)を用い、グラビア印刷法により、形成されたホログラムの絵柄の特定部分に合わせた形状に印刷し、エッチングレジストパターンを形成した。エッチングレジストパターン形成後、1%NaOH水溶液を用いて、エッチングを行ない、不要部のアルミニウム薄膜を除去し、真正性識別体を得た。得られた真正性識別体は、ホログラムの絵柄の特定部分を観察することができ、また、アルミニウムのない箇所では、見る角度により色彩が変化する効果が得られるものであった。
【実施例4】
【0067】
実施例1におけるのと同様にしてコレステリック液晶層を形成した後、このコレステリック液晶層に重ねて、コレステリック液晶のインキを用いて、グラビア印刷法により印刷を行ない、印刷を行なった後、乾燥および紫外線照射を順次行なって、コレステリック液晶パターン層を形成した。コレステリック液晶のインキとしては、重合性のネマチック液晶(BASF(株)製、商品名;「パリオカラーLC242」)、カイラル剤(BASF(株)製、商品名;「パリオカラーLC756」)および紫外線重合開始剤を配合したものの40%トルエン溶液を用い、塗布用組成物中の重合性のネマチック液晶/カイラル剤=96.3/3.7とした。
【0068】
コレステリック液晶層およびコレステリック液晶パターン層を形成した後、これらの層が形成されたのとは逆の面に、実施例1におけるのと同様にして、アクリル系樹脂の塗料を塗布して一様な樹脂層を形成し、この樹脂層の表面に熱エンボスすることによりホログラムの微細凹凸を形成した。
【0069】
形成された微細凹凸の面に、水溶性樹脂のインキ((株)昭和インク工業所製、品名;「シルク水洗用プライマー No.4」)を用い、シルクスクリーン印刷法により、形成されたホログラムの絵柄の特定部分を除いた形状に印刷し、水溶性樹脂のパターンを形成し、印刷後、水溶性樹脂のパターンが形成された微細凹凸の面の全面に、蒸着法によりアルミニウム薄膜を一様に形成し、形成後、水洗を行ない、水溶性樹脂のパターンが形成された箇所のアルミニウム薄膜を水溶性樹脂のパターンごと除去し、アルミニウム薄膜からなるパターンを形成し、真正性識別体とした。得られた真正性識別体は、ホログラムの絵柄の特定部分を観察することができ、また、アルミニウムのない箇所では、見る角度により色彩が変化する上、コレステリック液晶パターン層に基づく部分では、見る角度により色彩が変化する効果が、周囲のコレステリック液晶層のみの部分とは異なり、二通りの色変化を起こすものであった。
【実施例5】
【0070】
実施例1におけるのと同様にしてコレステリック液晶層を形成した後、このコレステリック液晶層を形成したのとは逆の面に、別のコレステリック液晶の塗布用組成物を用いて、塗布を行なった後、乾燥および紫外線照射を順次行なって、別のコレステリック液晶層を形成した。別のコレステリック液晶の塗布用組成物としては、重合性のネマチック液晶(BASF(株)製、商品名;「パリオカラーLC242」)、カイラル剤(BASF(株)製、商品名;「パリオカラーLC756」)および紫外線重合開始剤を配合したものの20%トルエン溶液を用い、塗布用組成物中の重合性のネマチック液晶/カイラル剤=96.3/3.7とした。
【0071】
後に形成した方のコレステリック液晶層に重ねて、アクリル系樹脂の塗料を塗布して一様な樹脂層を形成し、この樹脂層の表面に熱エンボスすることによりホログラムの微細凹凸を形成した。
【0072】
以降は、実施例4におけるのと同様にして、形成された微細凹凸の面に、水溶性樹脂のパターンの形成、アルミニウム薄膜の一様形成、および水洗を経て、アルミニウム薄膜からなるパターンを形成し、真正性識別体とした。得られた真正性識別体は、ホログラムの絵柄の特定部分を観察することができ、また、アルミニウムのない箇所では、二つのコレステリック液晶層の存在に基づき、見る角度により、異なる二通りの色彩の変化を起こすものであった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】真正性識別体の基本的な積層構造を示す図である。
【図2】真正性識別体の他の積層構造を示す図である。
【図3】真正性識別体の反射性金属層のパターンを示す図である。
【図4】真正性識別体の反射性金属層の他のパターンを示す図である。
【図5】反射性金属層のパターンを形成するプロセスを示す図である。
【図6】反射性金属層のパターンを形成する他のプロセスを示す図である。
【図7】真正性識別体を適用した基材を示す図である。
【図8】スレッド状の真正性識別体を適用した基材を示す図である。
【図9】スレッド状の真正性識別体の一部を埋め込んだ基材を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1……真正性識別体
2……透明基材
3……コレステリック液晶層
4……ホログラム形成層
5……反射性金属層
6……水溶性樹脂パターン
7……レジストパターン
11……真正性識別可能な基材
12……基材(12A;上用基材、12B;下用基材、12a;凹部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の側にコレステリック液晶層が積層されたコレステリック液晶層積層体の非観察側に、透明樹脂層の表面にホログラムの微細凹凸が形成されたホログラム形成層が積層されており、前記ホログラム形成層の微細凹凸が形成された面に反射性金属層がパターン状に積層されていることを特徴とする真正性識別体。
【請求項2】
前記コレステリック液晶層積層体は、前記透明基材の観察側に前記コレステリック液晶層が積層されたものであることを特徴とする請求項1記載の真正性識別体。
【請求項3】
前記コレステリック液晶層積層体は、前記透明基材の非観察側に前記コレステリック液晶層が積層されたものであることを特徴とする請求項1記載の真正性識別体。
【請求項4】
前記コレステリック液晶層積層体は、前記透明基材の観察側および非観察側のそれぞれに前記コレステリック液晶層が積層されたものであることを特徴とする請求項1記載の真正性識別体。
【請求項5】
前記コレステリック液晶層の少なくとも一部がパターン状であることを特徴とする請求項1〜請求項4いずれか記載の真正性識別体。
【請求項6】
請求項1〜請求項5いずれかの真正性識別体の前記反射性金属層側に接着剤層が積層されて構成された貼着用の真正性識別体。
【請求項7】
請求項1〜請求項5いずれかの真正性識別体が、前記反射性金属層側が別の基材に積層されて構成された真正性識別可能な基材。
【請求項8】
請求項1〜請求項5いずれかの真正性識別体が、別の基材に可視可能に埋め込まれて構成された真正性識別可能な基材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−276090(P2006−276090A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90440(P2005−90440)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】