説明

真空チャンバの通気を必要としない取り外し可能なイオン源

イオン体積部、レンズスタック、及び取り外された多極イオンガイドと同様に協働するイオン光学系を組み合わせる方法及び装置は、ここでは、通気することなしに質量分析計器から取り外すことができる単一のサブアセンブリに組み込まれる。このような構成により、操作者は、システムを通気する必要なしに、通常の操作時に汚染されるイオン経路のすべての部品を洗浄し、適時に再組立し、再挿入し、次に許容可能な真空までポンプで排気することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析法の分野に、より詳細には、取り外し可能なイオン化チャンバ及び質量分析計のためにしばしば構成される関連のイオンガイド内の取り外し可能な構成要素の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の質量分析計に利用されるイオン源は、イオン体積部、レンズスタック、及び高周波(RF)多極イオンガイドを含むことができる。現在、イオン体積部は、計器を通気することなしに取り外すことができる。このような構成は、ユーザが、イオン体積部と関連する汚染された部品を取り外し、当該部品を洗浄し、あるいは真空を破壊することなしに計器を操作し続けるように当該部品を交換することを可能にする。しかし、このような解決方法は、イオン体積部内に構成された部品の清浄度が、イオン源の性能を回復する際の制限ファクタである場合にのみ機能する。計器の感度が不適切である程度にレンズスタック又はイオンガイドが汚染された場合、計器を通気しなければならず、洗浄するためにイオン源全体を取り外さなければならない。
【0003】
相互交換可能なイオン化チャンバを有するシステムに関する背景情報が、1983年6月14日にStaffordらに交付された「相互交換可能なイオン化チャンバを有するイオン化器」という名称の米国特許第4,388,531号に記載されかつ請求されており、次のこと、「分析されるべきサンプルのイオンを提供するための真空エンベロープに配置されるように適応されたイオン化器が、ここに開示され、また電子源、イオン加速及び集束電極、及び相互交換可能なイオン化チャンバを含む......」を含む。
【0004】
交換可能なイオン化チャンバを有する質量分析計に関する追加の背景情報が、1973年3月27日にKrugerらに交付された「質量分析計に使用するためのイオン化チャンバ」という名称の米国特許第3,723,729号に記載されかつ請求されており、次のこと、「質量分析計用の交換可能なイオン化チャンバは、イオン化領域によって分離された同心の管状電極に取り付けられた平行に穿孔された2つの膜によって定義されたイオン化領域を備える。2つのフィラメント及び2つの電子集束電極は、イオン化領域の周辺を中心に対称的に配置され、サンプル入力ポートが周辺を中心に同様に配置される」を含む。
【0005】
区分化されたRFイオンガイドを有する質量分析計に関する背景情報が、2006年4月25日にWhitehouseらに交付された「様々な圧力領域の区分化されたRFマルチプルイオンガイドによる質量分析法」という名称の米国特許第7,034,292B1号に記載されかつ請求されており、次のこと、「質量分析計は、共通の中心線に沿って整列してアセンブリに構成された個々の多極イオンガイドで構成され、この場合、アセンブリに取り付けられた少なくとも1つの多極イオンガイドの少なくとも一部分は、より高い背景圧力を有する真空領域に位置し、他方の部分はより低い背景圧力を有する真空領域に位置する。前記多極イオンガイドは、高圧領域又は低圧領域で、選択モード及びイオンフラグメント化モードを課するように質量操作され、前記領域は、実行された機能に最適な圧力又は圧力勾配に従って選択される。直径、長さ及びこれらの隣接したイオンガイドに適用される周波数及び位相は、同一でもよく又は異なってもよい。様々なMS及びMS/MSn分析機能は、より高い背景真空圧力で、又は圧力が高圧から低圧に低下する領域の圧力勾配に沿って、又は低圧領域で動作する一連の隣接した多極イオンガイドを使用して達成することができる。RF、+/−DC及び共振周波数波形の電圧供給の個々の組は、各々の多極イオンガイドのロッドに電位を提供して、イオン伝送、イオントラップ、質量の操作により、各々のイオンガイドで独立して選択機能及びイオンフラグメント化機能を課することを可能にする」を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、システムを通気することなく計器からひとまとめに取り外すことができる単一の質量分析計イオン源サブアセンブリ(すなわち、イオン源、レンズスタック、及びイオンガイドの一部として構成された前置フィルタ)に対し、大きな顧客ニーズが存在する。このような構成により、ユーザは、通常の操作時に汚染されるイオン経路のすべての部品を時間効率的に洗浄することが可能である。本発明は、このような必要性に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、通気することなしに質量分析計器から取り外すことができる取り外し可能なイオン源サブアセンブリを提供する。特に、このような装置は、イオン体積部と、1つ以上のレンズと、質量分析計により構成された固定多極と協働関係にあるように適応されたイオン光学系と、共通の取り囲み真空を通気する必要なしに、ユニットとして取り外されたときに、イオン体積部、レンズ、及び/又はイオン光学系を洗浄し及び/又は交換し、そしてユニットとして動作するために質量分析計に戻すことができるように、イオン体積部、レンズ、及びイオン光学系をユニットとして前記分析計に取り外し可能に固定するための手段と、を含む。
【0008】
他の形態では、本発明は、固定多極と、最高約2cmの長さを有する複数の電極により構成された取り外し可能なイオン光学系アセンブリ、及び固定多極と協働関係にあるようにイオン体積部を取り外し可能に固定するための手段とを含む区分化された質量分析計の多極に関する。このような構成により、共通の取り囲み真空を通気する必要なしに操作システムに再挿入して戻すために個々の部品を洗浄及び/又は交換するように、分解のために多極の前面を取り外すことができる。
【0009】
したがって、本発明は、新規な方法及び単一サブアセンブリのコンパクトなユニットに関し、このユニットは、イオン体積部、レンズスタック、及び他の利点と共に効率的な加熱と冷却を可能にするイオン光学系セクション、ならびに計器を通気し、次にこのようなシステムを許容可能な真空までポンプで排気する時間を費やすことなく、通常操作で汚染されるイオン経路のすべての部品をユーザが洗浄することを可能にするためのより小さな真空インターロック及び取り外し工具を含む。他の利点は、洗浄/交換操作中に、ヒータカートリッジ、抵抗温度検出器(RTD)の要素等のような、しかしそれらに限定されない何かを破壊する可能性を低減すること、及び同様に混乱させるワイヤがなく、真空インターロックがない場合にも利点であることを含むが、それらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】本発明の取り外し可能なイオン源サブアセンブリを含む組み立てられた一般的な分析計システムの図面である。
【図1B】イオン源サブアセンブリの新規な取り外し可能な機能の一般的な図面である。
【図2A】本発明のイオン源の第1のサブアセンブリ用の部品の有益な構成の図面である。
【図2B】本発明のイオン源の第2のサブアセンブリ用の部品の有益な構成の図面である。
【図3】一体構成で構成された有益なイオン源サブアセンブリの図面である。
【図4A】本発明の一例のイオン光学系の図面である。
【図4B】図4Aに示した一例のイオン光学系の分解図である。
【図5A】本発明の他の有益なイオン光学系アセンブリの図面である。
【図5B】図5Aに示したアセンブリから得られるイオン光学系の例の一体構成の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の説明では、暗示的に又は明示的に理解されるかあるいは特に述べない限り、単数で現れる言葉はその複数の相手部材を含み、複数で現れる言葉はその単数の相手部材を含むことが理解される。さらに、本明細書に説明した任意の所定の構成要素又は実施形態に関し、当該構成要素について挙げられる可能な候補又は代替例の任意のものは、暗示的に又は明示的に理解されるかあるいは特に述べない限り、一般に、個別に又は互いに組み合わせて使用し得ることが理解される。さらに、暗示的に又は明示的に理解されるかあるいは特に述べない限り、このような候補又は代替例の任意のリストが例示目的に過ぎず、限定的でないことが理解されるであろう。
【0012】
さらに、特に示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲に使用される成分、構成要素、反応条件等の量を表す数は、「約」という用語によって修正されるものと理解されるべきである。したがって、反対のことを示さない限り、本明細書及び添付の請求の範囲に規定された数値パラメータは、本明細書に提示した主題によって獲得されることが追求される望ましい特性に応じて変化し得る近似である。少なくとも、また等価物の原則の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは、報告される有効桁数に鑑み、また通常の丸め技術を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。本明細書に提示した主題の広い範囲を規定する数値範囲及びパラメータが近似であることにもかかわらず、特定の実施例に規定する数値は可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値は、本質的に、数値のそれぞれの試験測定で確認される標準偏差に必ず起因するある誤差を含む。
【0013】
一般的な説明
質量分析計を使用するある特定の市場は、可能な限り多くのサンプルを計器を通すことに重点を置いている。システムを通気し、分解し、洗浄し、再組立し、次に操作圧力までポンプで排気するために必要な時間は、高価であり、かつ時間的に非効率である。しかし、メンテナンスの通気及びポンプ排気局面を排除することができる場合、操作における相当量の時間/費用の節約を達成することができる。本発明は、例えば、イオン体積部、レンズスタック、及びRFイオン光学系セグメントのようなイオン源の部品をコンパクトな取り外し可能なユニット内に組み合わせることによって、このような市場のニーズに取り組む。システムのバルクイオンガイドと動作的に協働するこのようなユニットは、最大約70mmの全長で設計され、すべての一体部分は、計器を通気する必要なしに単一の操作で洗浄及び/又は交換するために容易に取り外されるように、機械的に結合され、精密に整列して固定される。
【0014】
本発明の取り外し可能なイオン源サブアセンブリの一般的な構成要素の内訳は、電子イオン化(EI)モード、化学イオン化(CI)モード、又はEI/CIコンボモードのような、しかしそれに限定されないモードで動作できるイオン体積セクションを含む。このような選ばれたモードは、イオン形成を可能にするために、サンプル又は試薬ガス分子と相互作用するためのこのような電子用の部位を設けることによって、電子源から発生された電子を利用するように有益に設計される。形成されたイオンは、イオン体積部の壁部と、このようなイオン体積部内に一体化された、例えば、発生イオンと同一の極性を有するリペラ電極のような要素の壁部との間の所定の電位を介して抽出することができ、リペラ電極は、イオン体積部内にしばしば収容され、したがって、サブアセンブリの残部と共に取り外し可能である。
【0015】
本明細書に開示した一例の構成の部分として、イオン源サブアセンブリはまた、このようなイオンを抽出して、全体的なレンズスタックを備える構成された追加の1つ以上のイオンレンズによって引き続く集束を可能にするために、イオン体積部内に形成されたイオンに対する符号の所定の極性を有するイオンレンズをしばしば含む(例えば、プラスイオンに関し、レンズ用の接地に対する電位は、イオン体積部の接地に対する電位未満にあるべきである)。その後、発生イオンは、本発明の新規なイオン光学系を介して導かれることができ、この光学系は、本発明の新規なサブアセンブリの残部と取り外し可能であるように同様に構成される。一例の構成として、本明細書に開示したようなイオン光学系は、一般に、約2mm〜最大約2cmの長さ、より頻繁には最大約1cmの長さを有するように設計された多極構造体(例えば、八極、六極、より頻繁には四極)として構成された複数の電極(ロッド、頻繁には平坦な電極)を備え、電極は、真直な多極イオンガイド、しかしより頻繁には湾曲した多極イオンガイドのような計器に位置するイオンガイドに動作的に結合される。
【0016】
このような構成の有益な形態を認識するために、低質量カットオフの結果として、また洗浄のために抽出を必要とする衝突するニュートラルのため、通常の操作中に、このような多極イオンガイド構造体が一般に汚染される(例えば、多極イオンガイドの最初の2cmまで、より頻繁には多極イオンガイドの最初の約1cmまで)ことが指摘され、当業者によって理解される。しかし、汚染された領域の後のイオンガイドのバルクは、操作中にそれほど汚染しない。したがって、本発明の構造は、イオン光学系の取り外しを可能にすることによって(取り外し可能なサブアセンブリとの結合を介して)このような有害な汚染効果に対処し、イオン光学系は、イオンガイドの前部セクションの部分としてしばしば同様に動作する(例えば、協働関係で)。このように、本発明のイオン光学系は、計器に位置する固定イオンガイドと同様に協働するので、このような構成要素は、このような手順が必要である場合に洗浄及び/又は交換するために、新規なイオン源サブアセンブリの残部、例えば、イオン体積部及びレンズスタックと共に容易に取り外すことができる。
【0017】
しかし、本明細書に開示したようなイオン光学系の協働関係は、イオン光学系が同一の電極数、形状(例えば、双曲線、平坦等)、電位、配線、及び本発明の結合された多極としての電極分離(r0)で構成されることをしばしば含むことを認識すべきである。しかし、このような協働関係の構成が望ましいが、同様に、協働関係はまた、異なる電極数、異なる電位と配線(例えば、イオン光学系はRF電位で操作することができ、一方、結合された多極はRF/DC又はその逆によって構成される)、異なる電極分離(r0)、ならびに本発明の精神と範囲内で動作するように、このような結合された多極と異なる形状を有する構造を含むことを認識すべきである。さらに、協働関係はまた、イオン光学系の電極が、電極と物理的に接触しているか又は隣接して結合されることを伴うことができる。
【0018】
したがって、本出願に開示したようなかつ請求したようなイオン光学系は、システム性能を維持するために個別に又は全体的に洗浄され及び/又は時間効率的に交換されるように、サブアセンブリの残部(例えば、イオン体積部及びレンズスタック)と共に取り外されるように構成され、一方、イオンガイドの実質的な残部は、計器の分析器部分を中断することなく、すべて通気なしにかつ有益に適所に留まる。
【0019】
詳細な説明
次に、一般に参照番号10と10’でそれぞれ示した図1Aと図1Bの図面を参照すると、分析計システム、頻繁には質量分析計、より頻繁には本発明のガスクロマトグラフ(GC)質量分析計の新規な有益なサブアセンブリの原理が示されている。特に、図1Aは、組み立てられた分析計システム10を示しており、このシステムは、一般に、ヒータブロック2、新規な取り外し可能なイオン源サブアセンブリ6、イオンガイド14、イオンガイド14からイオンを受容する単一の分析器18を含むが、それらに限定されない。
【0020】
図1Aに示したような単一の分析器18は、例えば、飛行時間型(TOF)装置、直線状イオントラップ(LIT)、磁気型分析器と静電型分析器、四極、イオンサイクロトロン共鳴(ICR)計器、オービトラップ、又はフーリエ変換質量分析計(FTMS)のような質量分析法の能力がある単一段分析器システムの多様性を含むことができることを認識すべきである。さらに、本発明の実施形態はまた、当業者に公知のように、2つ以上の分析器(タンデムインスペースとして知られる)を有するタンデム型質量分析計に利用することができる。例えば、1つの質量分析器は、質量分析器に入る多くの前駆物質から1つの前駆物質を単離することができ、その後、単離した前駆物質は、衝突セル内のガスと衝突し、単離した前駆物質のフラグメント化を引き起こす。次に、第2の質量分析器は、フラグメント化された単離した前駆物質から生成されたフラグメントを分類することができる。
【0021】
同様に、真直なイオンガイドを本発明に適応させることができるが、より頻繁には、本発明は、湾曲した多極の前置フィルタイオンガイド14(例えば、六極、八極、より頻繁には四極)を利用して、所定のイオン及び励起したニュートラルがナビゲートできない経路を提供することを認識すべきである。本発明のこのような極構造体を高周波(RF)モードのみで又はRF/DCモードで操作することができることを指摘したい。RF電圧のみが所定の電極(例えば、ロッド対、平坦な電極対)の間に印加された場合、ある閾値質量の上方でイオンを伝送するように操作される。RFとDC電圧の組み合わせがロッド対の間に印加された場合、上方カットオフ質量ならびに下方カットオフ質量がある。DC対RF電圧の比率が増加するにつれ、イオン質量の伝送帯域が狭くなる。このように、当業者に公知のように、計器の通過帯域が単一のイオン質量のみの伝送を可能にするようにDC対RFの印加比率が設計された場合、質量フィルタ操作を行うことができる。
【0022】
図1Aと図1Bのようにイオンガイド14として動作する湾曲した極構造体に関し、多極フィールド(頻繁には四極フィールド)の集束性質は、分析器18によって問合わせされるために通過帯域内の所望のイオンを装置の湾曲軸に沿って案内しつつ、ニュートラルノイズ及びイオン前置フィルタとして動作するように構成することができる。このような構成に基づき、通過帯域の限界に近い質量を有するニュートラル及びイオンは、湾曲したイオン経路に従うためにイオンガイドの効果を経験せず、伝送されない。このような伝送されない粒子は、頻繁には、従来のイオンガイドの約2cmまで、より頻繁には、このような装置の最初の約1cmまでを汚染する源である。
【0023】
図1Bに示したような分解されたシステム10’は、本発明の新規な能力をさらに示しており、この場合、イオン源サブアセンブリ6は、図1Aの組み立てられた質量分析法システム10から取り外し可能に切り離されることが示されている。操作方法では、サブアセンブリ6は、例えば、このような事象を予期して、あるいはこのような計器を利用するときの一般的な調整手順のためにシステム性能が低下したとき、望むなら取り外すことができる(方向矢印で示したように)。
【0024】
したがって、サブアセンブリ6は、図1Bに示したように、一例の構成として、挿入/取り外し(I/R)工具(図示せず)を介して共通の又は区分化された真空筐体1から、ヒータブロック2/イオンガイド14/分析器18の分析計システム10’から切り離されるように設計されることが有益である。I/R工具は、このように、一般に入口弁(図示せず)を通して操作され、この入口弁は、I/R工具の周りの真空気密シールを提供し、例えば、サブアセンブリ6のスリーブ状のハウジングに構成された設計された構造体(例えばガイド)に結合するように設計されるピン(図示せず)を介してサブアセンブリに機械的に貼り付けられる。次に、サブアセンブリ6は取り外され、また個々に機械的に結合された部品の洗浄又は交換のためにしばしば完全に分解され、次に、図1Aに示したように、システム10に挿入して戻すために再び組み立てられて、通常操作を可能にする。
【0025】
図2Aと図2Bは、一例の有益な第1及び第2の部品サブアセンブリを示しており、このサブアセンブリは、完全なアセンブリとして、機械的に結合されかつ電気式に操作されて、例えば、図3に示したような本発明のイオン源サブアセンブリ(一般に参照番号300で図示)のようなイオン源を提供する。特にかつ本発明の一例の新規な構成を示すために、図2Aは、イオン体積部と関連する第1のサブアセンブリとして構成される一群の第1の部品を示しており、この群は一般に参照番号200’で示され、一般に図2Bに示されている一体の取り外し可能な固定手段236から切り離すことができる。
【0026】
図2Aに示したイオン体積サブアセンブリを説明する前に、図2Aと図2Bに参照して示されているように、整列して結合しつつ熱的安定性及び機械的安定性を可能にするように、一例の部品構成全体を収容する取り外し可能な固定手段236が寸法決めされ、成形され、また配向されて、成形スリーブ及び/又は板金スリーブ及び/又はセラミックスリーブ及び/又は機械加工したスリーブ、頻繁には金属スリーブ、より頻繁にはステンレス鋼スリーブを提供できることを認識すべきであり、一例の部品の各々が図2Aと図2Bに示されている。さらに、同様に、図2Bならびに図3に示したような取り外し可能な固定手段236が、質量分析計、例えば当業者に公知かつ理解されているようなGC質量分析計に一体化するための挿入/取り外し工具と機械的に連通するために、本発明の範囲と精神から逸脱することなく、図に示していない他の形状又は設計をとることもできることを認識すべきである。
【0027】
図2Aに戻ると、本発明を分かりやすくするために分解した状態で示したイオン体積サブアセンブリ200’のこのような一例の部品は、取り外し可能な固定手段236から抜き取ることができ、またイオン体積部220、リペラ電極216、絶縁体212、保持手段210、弾性部材206、及びロック手段202を含むことができるが、それらに限定されない。本発明のイオン体積部220は、不適切な挿入(例えば逆さまの取り付け)を防止するために異なる幅でしばしば配置される配置ラグ222’と222”でしばしば構成されるが、必ずしもそうである必要はない。さらに、イオン体積部220それ自体は、約9.5mm〜最大約13mmの内径を有するようにしばしば設計され、イオン体積部220と取り付けられる絶縁体(例えば絶縁体212)及び構成されたレンズとの整列を補助する所定の筒口(図示せず)を具備するように構成することができる。
【0028】
上述のように、本明細書で利用されるようなイオン体積部220は、サンプル又は試薬ガス分子と相互作用してイオンを形成するために発生される電子用の部位を提供し、この場合、形成されたイオンは、次に、イオン体積部220の壁部と、例えば、イオン体積部に対し発生イオンが同一の極性を有するように構成されたリペラ電極216のような一体化された要素の壁部との間の所定の電位を介して抽出される。リペラ電極216を配置して、絶縁するために、絶縁体212、頻繁には、約85%〜最高約99.8%の純粋なアルミナ(例えば、96%)からのアルミナ絶縁体のような、しかしそれらに限定されないセラミック絶縁体が、約1mmの最小厚さ、約10mmの内径及び最大約13mmの外径で配置され、保持手段210(例えば、ブシング)を介してリペラ電極216に取り外し可能に固定される。その後、弾性部材206(例えば、ばね)が、図2Aならびに図2Bの構成要素のすべてを取り外し可能な固定手段236内で圧縮するようにしばしば構成され、1つ以上のタブ204で構成されたロック手段202を介して、一般に図2Bで示した他の構成要素のすべてと共にこのような圧縮状態に保持される。
【0029】
ロック手段202のタブ設計により、図3に示したようなイオン源サブアセンブリ300を、図1Aと図1Bに示したようなヒータブロック2で構成されたプレート(図示せず)内に固定することができ、またこのようなタブ設計により、図3に示したようなイオン源サブアセンブリ300全体を、特別に設計された挿入/取り外し工具(図示せず)を介してヒータブロックアセンブリ2から容易かつ迅速に切り離すことができ、挿入/取り外し工具は、図2Bならびに図3に示したように、取り外し可能な手段236に構成されるガイド237と結合するようにこのようなタブの間で作動する。
【0030】
イオン源サブアセンブリ300全体の説明を継続すると、図3に示したように、図2Bは、参照番号200”で示した第2のサブアセンブリを示しており、この第2のサブアセンブリは、絶縁体226と結合された第1のレンズ224(例えば、ガラス接合マイカ内に成形されたステンレス鋼製のレンズインサート、例えば、Mycalexのようなセラモプラスチック)と、第2のレンズ228(例えばステンレス鋼製の精密機械加工レンズ)と、第2の絶縁体232と結合された第3のレンズ230(例えば、ステンレス鋼製のインサート成形レンズ)と、分析器に取り付けられたイオンガイドと関連して同様に動作するように構成された複数の電極234(例えば、図1Aと図1Bに示したようなガイド14)と、図2Aと図2Bに示した一例の構成要素を機械的に結合するように設計された取り外し可能な固定手段236と、を備える。
【0031】
第1のレンズ224、第2のレンズ228、及び第3のレンズ230は、群として、スタック内の各々のレンズが接地に対し所定の電位で構成されて、発生イオンが抽出され、集束され、したがって、本明細書に開示したような真直な、しかしより頻繁には湾曲したイオンガイドのようなイオンガイドに向けられることを可能にするレンズスタックを備えることを認識すべきである。同様に、このようなレンズで構成された絶縁体226と232は、最大約1mmの幅、最大約10mmの内径、及び最大約13mmの外径で頻繁には構成され、頻繁には成形材料であり、より頻繁にはセラミック、セラモプラスチック、又は従来の工具で精密な公差でかつ複雑な形状に機械加工することができるMycalex又はVespelのような、しかしそれらに限定されないポリイミドのエンジニアリングプラスチック材料から成形されることを認識すべきである。さらに、このようなセラミック、セラモプラスチック、又はポリイミドのエンジニアリング材料が本発明では好ましいが、この理由は、それらが最高約1300度Fの高温用途(例えば、Vespelでは約550度F〜約900度F)に使用することができ、優れた電気的及び熱的な絶縁特性、室温において約0.5%未満の低い吸湿(ゼロの多孔率)、優れた物理的な強度を有し、また熱循環に耐える有益な能力により衝撃抵抗性であるからである。
【0032】
このような絶縁特性は、同時に(例えば、熱はイオン源サブアセンブリ300の上方から、同時にすべての部品内に導かれる)、あるいは順次に(例えば、熱はイオン源サブアセンブリ300の所定の端部から導かれる)加熱されつつ、図3に示したようなイオン源サブアセンブリ300全体の熱安定性を可能にする。さらに、本明細書に開示した絶縁体の構成は、レンズの各々、すなわち、第1のレンズ226、第2のレンズ228を備えることができるレンズスタックと共に複数の電極234を、最高約1300度F、しばしば約392度Fから最高約662度Fの温度で加熱することを可能にし、一方で、しばしば所望されるように、イオン体積部220、同時に有益に多極ガイド14からのレンズの熱絶縁を提供し、この結果、図1Aと図1Bに示したように、望ましくない熱は質量分析器18に達しない。
【0033】
図4A(囲みボックスで図示)は、参照番号400で示したようなイオン光学系の有益な一例の構造を示している。図4Bは、第1の絶縁体402及び第2の絶縁体406(例えば、セラミック成形の絶縁体)と、第1の電極対410及び第2の電極対414とを有するこのような一例のイオン光学系400の分解図を具体的に示している。このように、図4Aの一例の構造により、図1Aと図1Bに示したように、ガイド14と結合されたときに同様のイオンガイド式にシステム的に動作する四極構造体が得られる。
【0034】
図4Aと図4Bの有益な一例の実施形態は、四極構造体を示すように4つの電極で示されているが、本発明のイオン光学系の実施形態は、六極及び八極のような、しかしそれらに限定されない他の多極ガイド構造体に有効に結合するように、他の電極構造体と等しく配置することができることを指摘したい。したがって、上に簡単に説明したように、本発明のイオン光学系400は、多極構造体(例えば、八極、六極、より頻繁には四極)として構成された複数の電極(頻繁には平坦な電極)を備えることができ、多極構造体は、最大約2cmの長さを有し、頻繁には約2mm〜最大約2cmの長さを有し、より頻繁には約2mm〜最大約1cmの長さを有するように設計され、複数の電極は電気的に結合され、イオンガイドのバルク残部に構成された多極構造に整合されるが、本発明の新規な取り外し可能なサブアセンブリの残部と機械的に結合される。このような構造により、イオン光学系は、バルク固定イオンガイドと同様に協働することができるが、イオン体積部、レンズスタックのようなイオン源サブアセンブリの部品の任意のもの又はすべてが、あるいはこの特定の例では、イオン光学系が汚染されたときに洗浄又は交換するために、イオン光学系400それ自体は、本明細書に示したようにかつ説明したように、新規なサブアセンブリの残部と共に取り外し可能であることが有益である。
【0035】
図5Aと図5Bは、本発明のイオン光学系を製造する際の他の有益な例の構成を示している。上記の図4Aと図4Bに示したような電極対414と410はまた、図5Aに詳細に示したように、分割された別個の電極510、例えば接続されない電極ロッドとして構成することができる。次に、これらのロッド(すなわち電極510)は、分かりやすくするために切り離して示した成形可能なセラミック絶縁体518(例えば、マイカレックス)を提供するために、レンズ3514と共に射出成形工具(図示せず)内に配置され、成形可能なセラミック絶縁体は、電極510、レンズ3514、及び絶縁体518と共に単一の部分を形成するようにロッドの周りにショットされ、図5Bに示した一体のアセンブリを形成するために共に接合される。このような有益な構成により、ユーザが洗浄すべき部品点数が低減され、電極510がそれら自体に又はレンズ3514に接触しないことが保証される。
【0036】
本明細書の様々な実施形態に関し記載した特徴は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、任意の組み合わせで混合しかつ整合することが可能であることを理解すべきである。選択した異なる実施形態について詳細に図示かつ説明してきたが、当該の実施形態が例示的であること、またそれらの様々な置換及び変更が、次の請求の範囲によって規定されるような本発明の精神と範囲から逸脱することなく可能であることを認識すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り外し可能なイオン源サブアセンブリであって、
イオン体積部と、
1つ以上のレンズと、
質量分析計により構成された固定多極と協働関係にあるように適応されたイオン光学系と、
共通の取り囲み真空を通気する必要なしに、ユニットとして取り外されたときに、前記イオン体積部、前記1つ以上のレンズ、及び前記イオン光学系の少なくとも1つを洗浄し及び/又は交換し、そして前記ユニットとして動作するために前記質量分析計に戻すことができるように、前記イオン体積部、前記1つ以上のレンズ、及び前記イオン光学系をユニットとして前記分析計に取り外し可能に固定するための手段と、
を含む、取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項2】
前記イオン光学系が多極を備える、請求項1に記載の取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項3】
前記多極及び前記固定多極が、八極、六極、及び四極から選択された少なくとも1つの多極を備える、請求項2に記載の取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項4】
前記イオン光学系が、複数の平坦な電極で構成された多極を備える、請求項2に記載の取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項5】
前記複数の平坦な電極の各々が最大約2cmの長さを有する、請求項4に記載の取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項6】
前記複数の平坦な電極の各々が約2mm〜最大約1cmの長さを有する、請求項4に記載の取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項7】
前記ユニットが、最大約70mmの長さを有する、請求項1に記載の取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項8】
前記イオン光学系及び前記固定多極が、RF多極として協働動作するように構成される、請求項1に記載の取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項9】
前記イオン光学系及び前記固定多極が、RF及びDC多極として協働動作するように構成される、請求項1に記載の取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項10】
前記イオン光学系が低質量カットオフ機能を実行する、請求項1に記載の取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項11】
前記サブアセンブリが、リペラ、1つ以上のロック部材、及び1つ以上の絶縁体の少なくとも1つをさらに備える、請求項1に記載の取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項12】
取り外し可能に固定するための前記手段が、工具を介した取り外し及び/又は挿入を可能にするように構成される、請求項1に記載の取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項13】
前記イオン光学系及び前記固定多極と適応された1つ以上の電気接点が、同一の源からである、請求項1に記載の取り外し可能なイオン源サブアセンブリ。
【請求項14】
区分化された質量分析計多極であって、
固定多極と、
イオン光学系アセンブリであって、前記イオン光学系が、
a)最大約2cmの長さで構成された第1の複数の電極と、
b)前記第1の複数の電極と機械的に結合されかつ同様に最大約2cmの長さで構成された第2の複数の電極と、
をさらに備える取り外し可能なイオン光学系アセンブリと、
前記固定多極と協働関係にあるように前記イオン光学系アセンブリを取り外し可能に位置決めするための手段であって、前記第1の複数の電極及び前記第2の複数の電極の少なくとも1つを洗浄し及び/又は交換し、そして前記イオン光学系アセンブリとして前記固定多極との前記協働関係に戻すことができるように、前記イオン光学系を前記固定多極との協働関係から分解し、かつ共通の取り囲み真空を通気する必要なしに取り外すことができるように構成される手段と、
を備える区分化された質量分析計多極。
【請求項15】
前記イオン光学系が多極を備える、請求項14に記載の区分化された質量分析計多極。
【請求項16】
前記多極及び前記固定イオンガイドが、八極、六極、及び四極から選択された少なくとも1つの多極を備える、請求項15に記載の区分化された質量分析計多極。
【請求項17】
前記多極が複数の平坦な電極を備える、請求項15に記載の区分化された質量分析計多極。
【請求項18】
前記電極が約2mm〜最大約1cmの長さを有する、請求項14に記載の区分化された質量分析計多極。
【請求項19】
前記イオン光学系及び前記固定多極が、RF多極として協働動作するように構成される、請求項14に記載の区分化された質量分析計多極。
【請求項20】
前記イオン光学系及び前記固定イオンガイドが、RF及びDC多極として協働動作するように構成される、請求項14に記載の区分化された質量分析計多極。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate


【公表番号】特表2011−517034(P2011−517034A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503049(P2011−503049)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/038452
【国際公開番号】WO2009/123914
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(501192059)サーモ フィニガン リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】