説明

真空チャンバ内での固体フィラメントの製造のための方法及び装置

液体(2)から真空チャンバ(70)の中で固体フィラメント(1)を製造するための、以下の行程を有する方法が開示されている。気体が熱交換器装置(20)で液化され、液体(2)を製造され、この液体(2)は、供給ライン(27)とノズル(30)とを介して、真空チャンバ(70)の中へと供給される。熱交換器装置(20)でのガスの液化は、液体(2)のp−T作動点を調整することを有し、この作動点では、液体(2)は、固体凝縮状態へと転換され、ノズル(30)から真空チャンバ(70)の中へと排出された後に、コリメートされた安定したジェットを形成する。真空中で固体フィラメント(1)を製造するためのノズル装置も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の導入部の特徴を有する、液体、特に液化された気体、を真空チャンバの中へと供給することにより複数の固体フィラメントを製造するための方法に関する。本発明は、また、このような方法を実行するようにデザインされているノズル装置、及び、このようなノズル装置と、このような真空チャンバとを備えている放射線源に関する。
【背景技術】
【0002】
液状のターゲット材がノズル装置で真空チャンバの中へと注入され、このターゲット材がレーザの照射によりプラズマ状態へと転換され、このプラズマ状態で物質特有のX線蛍光放射が放射される、複数のX線放射線源が既知である。真空チャンバの中へと供給されるターゲット材が、可能な限り空間的に安定で、可能な限り発散が少ない液状ジェット又は固体フィラメント(凍結した液状ジェット)を形成していれば望ましい。相互に関連している、これらの必要条件は、レーザ放射の各々で発生されるX線放射の安定性と再現性とを向上させる役割を果たす。さらに、レーザ照射をノズル装置から可能な限り遠く離れて実行することに利益がある。これは、ターゲット材のプラズマ状態からイオンや他の高速粒子が放射され、この結果、ノズルの浸食や損傷が生じ得るからである。
【0003】
上に掲げた複数の必要条件は、従来のX線放射線源で満たされている。液状ジェットは、特定の崩壊長を有し、この崩壊長の中で液体の中の揺らぎがジェットが複数の液滴に崩壊するまで成長する。この崩壊長は、液体の表面張力と粘性との関数である。以前は、ノズルからの距離がこの崩壊長よりも短い所でレーザの照射が行なわれなければならなかった。
【0004】
US 2002/0044629 A1には、液化されたキセノンを真空チャンバの中へと供給するためのノズル装置が記載されている。このノズル装置は、ノズルヒータを有し、このノズルヒータで、流れの形状に不都合な影響を与える、ターゲット材のノズルへの望ましくない堆積は、防止される。この技術により、流れの形成の再現性が向上する。しかしながら、ターゲット材は、このノズルヒータにより影響を受けないという不都合な点がある結果、流れるターゲット材の中の不安定性又は揺らぎを低減することができない。流れ込む材料は、安定したジェットを形成せず、むしろ短い行程の後で液滴又はスプレーへと崩壊してしまう流れ部分を形成する。例えば、もし、真空チャンバの中へと流れ込む液体材料が、凍結すると、短時間で崩壊し、スプレーを形成する固体材料の流れ部分が形成する。したがって、US 2002/0044629 A1に記載されている技術では、有効性は限定されており、レーザ照射のフォーカスは、ノズルに近づけて局所化されなければならない。
【0005】
流れるターゲット材の中の上に掲げた不安定さは、特に、液状のターゲット材が気体を凝縮させることにより形成される、X線放射線源において現れる。凝縮は、例えば、EP 1 182 912 A1又はWO 02/085080 A1に記載されているような熱交換器の中で行なわれる。従来用いられている熱交換器は、典型的には、壁が、例えば、液体窒素のような冷却媒体で冷却される凝縮容器を有している。接続されている窒素の貯蔵器の中と同様に凝縮容器の中での液化の際にも、泡の形成と沸騰の遅れとが生じる。結果として、生じているジェットに伝えられる揺らぎ、又はこのジェットの中断さえもが引き起こされる。しかしながら、このような中断は、例えば、数時間又は数日の中断のない運転時間が必要とされる実際のX線放射線源を使用するためには受け入れられない。
【0006】
もし、熱交換器が、コンプレッサが直接機械的にノズルに接続されている蒸発冷却器と共に作動しているならば(例えば、WO 02/085080 A1を見よ)、このコンプレッサから生じる振動により、流れるターゲット材の中に不安定さも引き起こされ得る。
【0007】
これらの挙げられた複数の問題は、従来のX線放射線源の中だけではなく、例えば、EUV放射を発生させる際、又は質量分析計への技術的な又は医学的な試料を結合させる際のような高真空中での物理的かつ化学的な研究のために、ターゲットとしての希薄な液状ジェットを適用する他の場合にも生じる。これらの例において、信頼がおける作動をし、メインテナンスが容易なコンパクトなジェット注入システムへの関心もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の不都合な点が克服されている、真空チャンバ内で固体フィラメントを製造するための改良された方法を提供することである。この目的は、特に、時間的にかつ空間的に安定性が向上された、固体フィラメントを液化されたガスから製造することができる方法を提供することからなる。さらに、これらフィラメントは、中断がなく、方向的な安定性が向上されている(すなわち、発散が低減されている)ことを特徴とするべきである。本発明の目的の他の部分的な側面は、この方法は、利用可能な放射線源又は質量分析計と互換性を有するべきで、真空中へと供給されることができる気体に関して広い適用範囲を有するべきことである。本発明は、また、従来の装置の不都合な点が克服されることができ、また、このノズル装置は、時間的かつ空間的に安定したターゲット材の注入するためと、特に高真空中での液化された気体から長いフィラメントの製造を長く続けるためとに特に適している、改良されたノズル装置を提供する目的を有している。本発明のノズル装置は、特に、異なるターゲット材を注入するために特に適しているべきで、又は異なるターゲット材の供給のためにただちに適用可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、請求項1又は17に係る特徴を有する方法とノズル装置とで解決される。本発明の有利な実施の形態は、従属請求項から生じる。
【0010】
方法に関して、本発明は、真空中で固体フィラメントを製造するために、まず気体が液化され、続いて、この液化された気体がノズルを介して真空中へと注入され、この気体の液化は、液体の状態変数の調整と関連し、この調整は、液体がノズルを離れた後真空中での膨張と関連する冷却とにより固体凝縮状態へと変化されるように選ばれている、一般的な技術的な教示に基づいている。これら状態変数は、液体の圧力と温度とからなる。これら状態変数は、相図の液体範囲の中のp−T作動点を決定し、これは、固液の相の境界のすぐ近傍に選択されている。従来の凝縮による液化と対照的に、本発明によれば、液体の所定の作動点が、熱交換器装置の中で設定され、この作動点では、この液体は、ノズルから出た後で、固体凝縮状態のコリメートされ安定なジェットを形成する。このジェットは、固体凝縮状態の直線的でフィラメント状の構造(フィラメント)であり、真空中で崩壊することなく連続する。この自由ジェットは、時間的かつ空間的に安定である。
【0011】
最初液体であるジェットの真空中での長さ(すなわち、液体状態の持続時間)好都合なことに特定の方法で調整されることができ、作動点を調節することにより最小化され、又はほとんどゼロに減少されることさえできる。結果として、ノズルの形状により与えられる液体ジェットの断面形状は、固体フィラメントを形成する凍結する液体に直接与えられる。真空中への従来の液体注入の場合に生じる、再現性のないジェットの広がりは、防止される。
【0012】
固体凝縮状態への転移は、作動点を調整することにより、好都合なことには著しい速さで行なわれる。これは、凍結長さとも称される、ノズルからのある距離ではっきりとした境界として観測されることができる。液体状態の中にまだ存在している揺らぎが原因の、固体状態における不規則さは、抑制される。固体凝縮状態への転移は、液体がノズルから出た直後に起こることが好ましい。凍結長さは、液体の崩壊長よりも短い。
【0013】
一般に、液体の所定のp−T作動点の調整は、圧力値並びに/もしくは温度値を調整することを有している。基本的に、特定の温度で熱交換器装置において、供給ラインを介して、そして、対応してこの熱交換器装置を通る液体の流速を介して、所望の作動点を調整する可能性がある。しかしながら、本発明の好ましい実施の形態に係われば、所定のp−T作動点の調整は、温度の調整を有する。液体がノズルから出た後に直接固体状態に移るように、熱交換器装置内で作動点温度Tを調整することを、特に、この熱交換器装置内の流速に応じて行なうことができる。もし、相図の中で固液の相の境界が、例えば、キセノンの場合のように、実際的に関心のある条件下で、実質的に圧力に依存しないで位置を取っているならば、温度の調整は、液体の流速又は圧力に独立に行なわれることができる。
【0014】
もし、圧力の調整が、温度の調整の後に追加的に設けられているならば、ジェットの安定性とコリメーションとは、好都合なことにこの上さらに改良されることができる。圧力の調整の結果、所望の作動点の微調整が可能となる。
【0015】
具体的な適用の場合に、液体の温度と圧力との条件が与えられているならば、本発明の他の変形例によると、p−T作動点の調整は、供給ラインのラインの直径の調整により行なわれることができる。
【0016】
液体の臨界温度の調整が、1ケルビン未満、特に0.5ケルビン未満であり、例えば、液体の三重点の10分の1又は10分の数度上であると、特に好ましい。この結果、好都合なことに、熱交換器装置の中での液体の予定より早い凍結が防止される。自由ジェットの中での氷の形成のための条件は、液体がノズルから出た後に膨張されるとすぐに実現されて好都合である。
【0017】
本発明の他の好ましい実施の形態に係われば、液体の温度調節(Temperierung)は、この液体が供給ラインを通って流れている間に行なわれる。従来の熱交換器で凝縮容器を使用することに対照的に、液化と液体の温度調整とは供給ラインの中で行なわれる。流入する気体をゆっくりと注意深く凝縮させることが好都合なことに達成され、この結果、沸騰の遅れが原因の望ましくない振動は、防止されることができる。所望のp−T作動点を選択するための温度調整は、ノズルに向かって生じる可能性のある温度勾配を考慮に入れて行なわれることができる。例えば、熱交換器装置とノズルとの間でわずかな昇温が起こり得て、これは、可能な程度まで熱交換器装置の中で温度を調整している間に補償される。これは、特に、液体を三重点の近くで冷却している間に、限られた程度までだけ可能であるため、本発明によると、供給ラインに沿って延びている熱交換器装置とノズルとの間の間隔は、可能な限り小さく保たれている。本発明の好ましい実施の形態に係われば、熱交換器装置は、供給ラインに沿ってノズルまで延び、このノズルを、この熱交換器装置の中へと一体化し、又は、この熱交換器装置に直接隣接させて配置させることができる。したがって、熱交換器装置の中で調整される液体の温度は、ノズルの中の液体の温度と実質的に等しく、その結果、液体のp−T作動点は、高い精度で調整されることができ好都合である。
【0018】
供給ラインに沿っての液化は、例えば、冷却が冷却媒体を供給することにより行なわれる熱交換器装置又は熱電効果に基づいた熱交換器装置のような、様々なタイプの熱交換器装置と実現されることができる。本発明による温度調整は、液体の冷却媒体で特に好ましい方法で行なわれる。気体の冷却媒体が用いられると、局所的に望ましくない温度勾配が生じえて、この温度勾配の結果、局所的な凍結又は局所的な泡の形成が引き起こされる。一方、液体の冷却媒体を用いると、熱交換器装置の中でより一様な温度調整が可能となる。望ましくない局所的な温度勾配は、取り除かれる。この結果、液体が所望の作動点に、特に三重点に、可能な限り近くまで冷却されることが可能となる。
【0019】
熱交換器装置の中の冷却媒体の温度が、サーモスタットで調整されるならば、この結果、p−T作動点の調整の精度に対してさらに有利となる。サーモスタットを使用するということは、冷却媒体の温度が固定された値に設定されることができるということである。冷却と、液体の凍結を防止するための逆加熱(Gegenheizung)が、凝縮容器で時間的かつ空間的に一定の温度変化が生じるように行なわれている従来の液化装置に対照的に、本発明では、サーモスタット(Thermostatierung)が設けられ、このサーモスタットの作用の下で所望の作動点が、非常に精度良く、時間的に安定して調整されることができる。
【0020】
もし、サーモスタットの動作により、例えば、コンプレッサにより、機械的な振動が引き起こされ得るならば、サーモスタットとノズル装置との間の振動を分離することが行なわれることが好ましい。サーモスタットは、ノズル装置を備えた真空チャンバから空間的に離されて動作されることが好ましく、このサーモスタットは、冷却媒体ラインを介して熱交換器装置に接続され、この過程で、望ましくない機械的な振動を減衰させることができる。
【0021】
もし、冷却媒体の温度が以下の制御回路のうちの少なくとも1つで調整されるならば、液体のp−T作動点を正確に安定して調整することの特に有利な点が結果として生じる。第1の変形例に係われば、温度測定は、熱交換器装置の中で少なくとも1つの温度センサで行なわれることができる。測定された温度は、与えられた複数の参照値と比較されることができる。ずれに際して、冷却媒体の供給並びに/もしくは温度が制御されることができる。第2の変形例に係われば、真空中に出て行く温度調整された液体の自由ジェットを光学的に検出し、特に、このジェットの凍結長さを光学的に検出することが行なわれることができる。この例では、冷却媒体の供給並びに/もしくは温度の調整が、真空の中に形成される、液体のジェットと固体のフィラメントとの間の空間的な相の境界を光学的に観測した結果に応じて、行なわれることができる。
【0022】
液体のp−T作動点は、液体の凍結長さが10mm未満、特に好ましくは5mm未満になるように、調整されると好ましい。
【0023】
一般に、液体が真空中へと通過していくノズルを、供給ラインの端部により形成することができる。しかしながら、本発明の特に好ましい実施の形態に係われば、分離したノズル(ノズルヘッド)が設けられており、その中で液体はジェットの形成を受ける。このジェットの形成は、ジェットの特定の流れプロファイルを形成すること(又は安定化すること)並びに/もしくは、液体ジェットの特定の断面プロファイルを調整することを有する。特に、断面プロファイルにテーパ形状(Verju”ngung)が設けられている。液体が乱流を発生させずに出て行くために、ノズルヘッドの中で流れの断面積が、流れがノズルヘッドの内側の輪郭を通って通過する方向に減少されている。ノズルヘッドの内側の輪郭は、内側に向かって曲がり、中央に向かって凸状である。
【0024】
本発明の方法の特に有利な点は、この方法が、例えば複数の放射線源に対して、特定のターゲット材に限定されていないことであり、直ちに非常に様々な気体と液体とに適用されることができる。例えば、本発明に係るフィラメントを、窒素、水素、水、又は有機液体から製造することができる。しかしながら、特別に有利な点は、例えば、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、又はキセノンのような液化された希ガスを注入してノズルが安定に作動している間に、得られる。キセノンは、プラズマに基づいた放射の発生にとても効果的なので、本発明は、液化されたキセノンで実行されると特に好ましい。
【0025】
装置に関して、上にあげた目的は、特に真空中で固体フィラメントを製造するための、気体の液化のための熱交換器装置と、ノズルを備えた供給ラインとを有し、上にあげた液化された気体のp−T作動点は、この熱交換器装置で調節されることができる、ノズル装置を提供することにより解決される。液体の所定のp−T作動点を調節するために、熱交換器装置を使用することは、ノズル装置がコンパクトに構成されることができ、また、ノズル装置が、例えば、放射線源又は質量分析計の真空チャンバのような、発明の典型的な適用のために提供される真空チャンバと互換性があるという有利な点を有する。熱交換器装置は、調整装置を形成し、この調整装置で流れる液体の少なくとも1つの状態変数が所定の方法で制御されることができる。
【0026】
もし、熱交換器装置が、本発明のノズル装置の好ましい実施の形態にしたがって、気体の供給ラインに沿って延びているならば、特に、注意深い、(schonende)振動が除去された液化に対して上述の有利な点が結果として生じる。ノズルヘッドが一体化され、又は熱交換器装置がノズルヘッドまで延びている、熱交換器装置を提供することは特に好ましい。これは、この例では、ノズルヘッドから出る液体の作動点は、特に精度良く調整されることができるからである。供給ラインの中で一様に中断せずに液化することに対して結果としてさらに有利な点が生じる。
【0027】
もし、供給ラインが巻きつけられて延びている時、例えば、冷却媒体を備えた熱交換器装置を通ってらせんに延びている時、このことは、ノズル装置の特にコンパクトな構成のために好都合であり得る。代わりに、この供給ラインは、直線状の形状を有していても良い。
【0028】
本発明のノズル装置の熱交換器装置は、下流の端で冷却媒体が供給され、上流の端で冷却媒体が再び取り除かれる逆流冷却器であることが好ましい。逆流の原理(Gegenstromprinzip)の結果として、一様な温度調整が達成される。
【0029】
本発明のノズル装置の熱交換器装置は、中を供給ラインが通り、中に冷却媒体が配置されている円筒状の容器を有していると好ましい。例えば、管状の冷却カバーが設けられ、この冷却カバーは、真空に面している端部でノズルにより閉じられ、対向する端部で気体のラインと冷却媒体のラインとを通過させる接続プレートにより閉じられている。
【0030】
もし、ノズルヘッドが、解体されることができるように、又は冷却カバーに放出方向が可変であるように配置され、並びに/もしくは熱交換器装置全体が、真空チャンバに、放出方向が可変であるように、例えば傾けることが可能に又は回動可能に、配置されることができるならば、このノズル装置を用いる際に高い柔軟性に対する有利な点が結果として生じる。これらの例において、このノズル装置は、様々な課題と液体とにただちに適用されることができる。
【0031】
もし、熱交換器装置の冷却カバーに、真空チャンバの真空フランジのノズル装置に耐圧性を持たせて固定されるために適した固定装置が設けられているならば、利用可能な真空技術との互換性を向上させることができる。
【0032】
本発明の特に好ましい実施の形態に係われば、熱交換器装置は、サーモスタットに接続されている。この例では、特定の冷却媒体の温度を調整することに対する有利な点が結果として生じる。逆加熱を行なう従来の凝縮器で生じるような、時間的かつ空間的な温度勾配は、防止される。サーモスタットは、このサーモスタットの作動中に生じる機械的振動が気体の液化へ与える効果を、可能な限り抑制するために、熱交換器装置からサーモスタットの振動が分離されるように、配置されていることが好ましい。この目的のために、このサーモスタットは、熱交換器装置に冷却媒体用ラインを介して接続され、真空チャンバから離れて位置されている。もし、この冷却媒体用ラインが、熱的に絶縁され、例えば、真空絶縁(vakuumisoliert)されて真空ホースの中を通っているならば、ラインに沿った熱損失は好都合なことに防止され、温度調整の精度が向上される。
【0033】
もし、ノズル装置に、熱交換器装置の温度センサ又は圧力センサが設けられ、並びに/もしくは、特にノズルの出口開口部をモニタするための光学的測定装置が設けられていれば、本発明の他の有利な点が生じ得る。これらの測定装置により、上述の制御回路(Regelkreise)を冷却媒体の温度を安定化させるために利用可能にすることが単純化される。
【0034】
もし、ノズル装置の他の変更に従って、このノズルの内側の輪郭が、凸状であれば、出て行く液体のジェットの形成に対して複数の有利な点が結果として生じ得る。液体は、ノズルヘッドから実質的に乱流を生じずに流れ、この安定化された状態で真空中に出た後で固体状態へと移る。
【0035】
このノズルは、封止部を介して、高い熱伝導率で、供給ラインの端部に接続されていると好ましい。この結果、熱交換器装置の中の供給ラインとノズルヘッドとの間の温度勾配が減少する。この封止部は、銅及びベリリウムからなる合金又は真鍮から構成されていることが好ましい。
【0036】
毛管力の作用のみのために液化された気体が逆流することを防止するために、多孔質のフィルタを供給ラインの中に設けることができる。
【0037】
本発明は、以下の他の複数の有利な点を有する。ノズル装置は、コンパクトで、温度が安定した、高圧ノズルシステムを形成し、このノズルシステムは、2K乃至600Kの温度範囲で作動することができる。真空中で凍結したフィラメントを、少なくとも10cmの長さで、特に、少なくとも20cmの長さで、10μm乃至100μmの範囲内の直径で製造することができる。この結果、特にX線又はUV放射を発生させるために、この凍結したフィラメントに放射されるレーザのフォーカスのノズルヘッドからの距離は、著しく延長される。ノズルヘッドの浸食は、防止されるか遅らされ、この結果、放射線源の耐用年数は、長くなる。さらに、フィラメントは、方向が極めて安定されて製造される。
【0038】
本発明の他の有利な点は、この発明の結果、ノズル装置を様々な、特に水平又は垂直な、放出方向で、作動させることができることである。特に、固体フィラメントは、本発明のノズル装置で、真空チャンバの中に水平に、又は、垂直上方に注入されることができる。
【0039】
液体のp−T作動点を調整することにより、真空中で5mm未満の経路長に沿って固化させることができる。例えば、キセノンの固化は、1乃至2mmの経路長を経て既に行なわれている。ノズルヘッドの直後でこの集中的な(gezielte)固化を行なうことは、従来のノズルでは達成することができない。
【0040】
本発明のノズル装置の他の有利な点は、熱交換器装置の冷却カバーの直径が小さいことにある。蒸発した粒子の可能な限り長い平均自由行程を達成するために、ノズルの周囲で十分なスペースが、利用可能とされる。液体の迅速な気化とそれに伴う迅速な冷却とは、高いポンプ速度により行なわれる。さらに、直径が小さければ小さいほど、特定の実験にアクセス可能な作動領域の角度範囲をより大きく選択することができる。ノズル装置は、真空中への挿入長さがただちに変化されることができる。
【0041】
本発明の他の複数の有利な点と、詳細とは、添付されている図面の記載から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の複数の実施の形態が、以下で、真空チャンバ内でのX線放射線源のキセノンのフィラメントの製造を例として参照して、記載されている。しかしながら、本発明の実施は、この適用に限定されず、むしろ、他のターゲット材、ジェット及びフィラメントのディメンジョン、複数の他の放射タイプのための線源、及び他の技術的な応用でも可能である。
【0043】
図1と図2とを参照して、まず、本発明の実施について熱力学的な考察が説明される。図1は、真空中に突出し、供給ライン27に沿って延びている熱交換器装置20及びこの供給ライン27に隣接しているノズルヘッドにより形成されているノズルを備えているノズル装置10の自由端を示している。例えば、X線放射の発生のためのターゲット材として、固体のフィラメント1を製造するためには、気体が熱交換器装置20の中で液化され、この液体が、ノズルヘッド30を介して真空中へと導入される。まず、自由液体ジェット2が形成される。この液体は、ノズルヘッド30から出て行く際に、圧力の減少(膨張)を受ける。真空中へと出て行く間に、液体ジェット2の表面から気化が開始し、この液体ジェットの温度は、気化による冷却のために低下する。温度が、この液体の凝固点以下に低下すると、固体の凝集状態への転移が、続いて開始する(矢印を見よ)。本発明の本質的な特徴は、ノズルヘッド30の出口端31から凝固点の間隔a(凍結長さ(Einfrierla”nge)a、図1を見よ)が、この液体の崩壊長(Zerfallsla”ange)より、短くなるように、好ましくは、最小化されほとんどゼロまで減少されるように、供給ライン27の中の液体の状態変数が、p−T作動点(Arbeitspunkts)へ調節されることである。
【0044】
このp−T作動点の調節を説明するために、図2に例として示されているキセノンの相図を参照する。この相図は、固体(s)、液体(l)、及び気体(g)状態を、状態変数である圧力(p)及び温度(T)の関数として示している。この相図の中の曲線の複数の分岐は、相の境界を表しており、三重点Tで互いにつながっている。本発明に係われば、この液体のp−T作動点は、液体凝縮状態の影の付けられた領域の中に調節され、この液体凝縮状態では、わずかに温度を減少させることにより、固体状態への転移が達成される。キセノン及び他の関心のあるターゲット材の液体−固体の転移が、ほぼ温度に独立に(三重点Tの上方のs−l分岐の垂直な経路)、又はわずかに温度に依存して、関心のある圧力範囲の中で起こると好都合である。この結果、最初に、熱交換器装置20で温度調節をすることによりもっぱら所望のp−T作動点を与えることと、引き続いて、また場合によっては、作動圧力(ガスが供給ラインに導入される圧力)を調整することにより、ジェットのコリメーションの微調整を実現することとが容易になる。
【0045】
供給ライン27を介して流れる液体が中にある熱交換器装置20で調整される、液体の作動点温度Tは、以下のように、三重点Tより高く、わずかに温度が異なるように選ばれている。一方では、この温度差は、すでにノズルヘッドにある熱力学的な揺らぎにより望ましくない凍結をすることを防止するために十分に大きく、凍結長さa(図1を見よ)を例えば5mm未満に調整するために十分小さくなければならない。この際、熱交換器装置20とノズルヘッド30の出口端31との間で形成し得る温度勾配も考慮に入れるべきである。キセノンの場合には、調整された作動点温度は、161.5K乃至165Kの領域の中にある。一般には、三重点で、液体はほんの少しの温度Kまで(bis auf Bruchteile eines Grad K)(例えば、1度未満)冷却される。
【0046】
供給ラインの中の液体の流速は、ほぼ1barの作動圧力で、ほぼ10m/sであり、ほぼ100barの作動圧力でほぼ100m/sである。典型的には、ほぼ50m/sの流速が調整される。
【0047】
さらに、凍結長さaを正確に安定させて調整するために、作動点温度Tが、非常に正確に、時間的に安定させて調整されることが重要である。このために、熱交換器装置20における必要な冷却パフォーマンスと、冷却媒体の所望の温度及び流量とが、編纂された表から知られる、注入される流体及びノズル装置の材料の熱力学的な特性に基づき、また、特に、ノズル装置10を通る液体の流量と熱交換器装置20に沿った供給ライン27の長さとのような、ノズル装置の複数の作動パラメータから、決定されることができる。これらの変数は、熱交換器装置を通過した後で、液体と冷却媒体との間の温度差が実質的になくなるように、特別に好ましい方法で選択される。この例では、調整された温度は、ラインの中の流速から独立しており、温度調節の安定性が向上されている。
【0048】
例えば、供給ライン27の中の液体の流量又は質量流量(Massenstrom)を、ノズル装置の作動圧力(供給されるガスの圧力)と供給ラインの直径とから、ベルヌーイの法則で計算できる。p=40barの作動圧力で、1.53cm/秒の流量と4.6g/秒の質量流量とが、20μmのジェット断面積に対して生じる。供給されるガス流を、まずこのガス流を凝縮させるために、そして最終的に作動点温度を調整するために、冷却する目的で熱交換器装置20から取り除かれる熱の量は、流量又は質量流量と作動物質の熱力学的な特性とから決定されることができる。キセノンの毎グラム秒の液化に対して、ほぼ110Wの必要な冷却性能が、求められる。直径30μmの直径を有するキセノンジェットを生成するために、ほぼ15Wが必要とされる。
【0049】
液体を作動点温度へ正確に冷却するために、熱交換器装置20とこの熱交換器装置の中へと入っていく供給ライン27との幾何学的なパラメータが、以下の考察に基づいて最適化されることが好ましい。流れる液体と、供給ラインの壁の温度との温度差は、特に、この流れが通過する供給ラインの長さと、液体の流量との関数である。L1/2=vol.・σ・c・λ―1・0.053(vol.:流量、σ:質量密度、c:比熱、λ:熱伝導率)の特性長さの後で、この温度差は、半分になる。32μmのジェット直径と40barの作動圧力に対して、キセノンに対する半値への冷却長さが、ほぼ16cmと求められる。1%未満の相対的な温度のずれを調整するために、熱交換器装置の中の供給ラインの長さは、半値への冷却長さの倍数に従って調整される。熱交換器長さ(Wa”rmetauscherla”nge)とも称される、この変数は、半値への冷却長さL1/2の少なくとも5倍長いと好ましく、少なくとも10倍長いと特に好ましい。キセノンに対して、ほぼ100Kの周辺での所望の冷却を行なうために、上記の例としてあげた複数の値とほぼ80cmの熱交換器長さとで、0.2K未満の相対的な温度のずれが結果として生じる。このことは、従来のノズルシステムと比較して、本発明の正確さが必要な適用に対して、決定的に有利な点である。
【0050】
類似の評価によると、ターゲット材としてのアルゴンに対する熱交換器長さは、キセノンに対する熱交換器長さのほぼ1/4の結果となる。この熱交換器長さは、気体状のターゲット材の所望の質量流量に対して線形に増加する。200μmのキセノンのジェットに対してほぼ8mの熱交換器長さが必要とされる。
【0051】
最終的に、熱交換器装置20の中の冷却媒体の温度の調整を、供給ラインの壁材料の熱伝導特性を考慮に入れて行なうことができる。壁材料の厚さは、圧力に対する十分な抵抗と、良好な熱伝導とを考慮にいれて、例えば、0.5mmで選択される。
【0052】
ここで示された熱力学的な考察の結果、材料の寸法とノズル装置の作動パラメータとからだけで、十分に正確に、凍結長さaを最小にするためのp−T作動点の調節が導かれることが分かった。本発明の好ましい実施の形態に係われば、作動点温度を代替的に又は補足的に調節を、熱交換器装置20の中の温度又は蒸気圧もしくは凍結長さの光学的な観測により、行なうことが可能である。この光学的な観測は、例えば、光路が真空チャンバの透明な窓を通してノズル30に向けられている顕微鏡で行なわれる。ターゲット材は、実質的に、それが凍結した後に、真空の中で他の変化を受けないので、自由フィラメント長さbは、著しく増加し得る。例えば、20cmのフィラメント長さを有するフィラメント1へのレーザビームのフォーカスが行なわれる。
【0053】
本発明のノズル装置10の好ましい実施の形態が、図3により詳細に示されている。ノズル装置10は、熱交換器装置20とノズルヘッド30とを有している。この熱交換器装置20は、冷却カバー21により形成されている冷却媒体用容器を有しており、この冷却カバーは、その真空側の自由端22で、前面壁とノズルヘッド30とにより閉じられており、その反対の端で閉鎖プレート(abschlussplatte)23により閉じられている。この容器は、第1の冷却媒体用ライン24により供給され、第2の冷却媒体用ライン25により取り除かれ得る、冷却媒体を受容する役割をする。冷却媒体用ライン24、25は、サーモスタット50に接続されている(図4を見よ)。逆流冷却器を実現するために、第1の冷却媒体用ライン24は、冷却カバーの自由端22まで延び、一方、第2の冷却媒体用ライン25は、接続プレート(anschlussplatte)23で終わっている。
【0054】
温度センサ24が、熱交換器装置20の中に配置され、このセンサ信号は、接続プレート23を通って接続ラインを介して外側に導かれている。
【0055】
ターゲット材のための供給ライン27は、接続プレート23からノズルヘッド30へとらせん状に延びている。供給ライン27は、1/16の内側の直径を有する(ほぼ0.16mmに相当する)毛管である。
【0056】
冷却カバー21は、例えば、特殊鋼からなる。この冷却カバーは、ほぼ12mmの内側直径を有している。この冷却カバーの長さは、供給ライン27の所望の熱交換器長さに応じて選択されることができ、ほぼ17cmまたは40cmである。供給ラインは、不活性物質、例えば、特殊鋼又はチタンからなっており、壁の厚さは、ほぼ0.5mmである。
【0057】
以下でより詳細に図7を参照して説明されるノズルヘッド30は、高い熱伝導率を有し、好ましくは銅ベリリウム合金でなっている封止部を介して供給ライン27の端部に接続されている。
【0058】
図4は、本発明のノズル装置10の真空チャンバ70の壁への取り付けを示している。冷却媒体用供給ライン24及び冷却媒体用取り除きライン25は、サーモスタット40へと通じている。供給ライン27は、ターゲット源60の貯蔵器61に接続されている。
【0059】
本発明に係われば、ノズル装置は、ノズル30の前の出て行く向きに熱的に絶縁するために配置されている遮蔽装置を備えることができる。例えば、鋼鉄又はグラファイトからなる熱シールドすなわち遮蔽シールド35は、フィラメント1のための通路の開口部を備えた隔壁として設けられている。遮蔽シールド35は、放射位置(レーザのフォーカス4、図1を見よ)と、ノズル30との間に配置され、例えば、真空チャンバ70の壁に固定されている。この遮蔽シールドは、ノズルへの望ましくない加熱を抑制し、ノズルの温度の熱交換器内の温度への強固な結合を向上させる。遮蔽シールド35のノズル30からの間隔は、例えば、5cmである。
【0060】
ノズル装置10のアライメントは、出口を上から下に向けて垂直方向からずれるように選択されることができる。特に、出口を下から上に向けた水平なアライメント又は垂直なアライメントが取られること(「オーバーヘッドアライメント」)ができる。この例では、供給ラインを介した望ましくない逆流を防止するために、灯心効果(Dochtwirkung)を有するワイヤの束又は多孔質のフィルタが、この供給ラインの中に設けられることができる。このワイヤの束は、例えば、10mmの長さと10μmの直径とを有するワイヤの断片からなっている。
【0061】
本発明の好ましい実施の形態に係われば、ノズル装置10は、固定装置40を備えており、この固定装置は、真空チャンバ70の真空フランジに固定するための役割を果たし、図5により詳細に示されている。この固定装置40は、横方向に周方向に延びているカラー41を有している。周方向の溝42が、固定装置40を接続フランジに取り付ける間に、封止部を受容するために、カラー41の一方の側に設けられている。カラー41は、管ステー(Halterohr)43を反対側に有し、この管ステーには、熱交換装置20の冷却カバー21が、しっかりと取り外し可能に接続され、また、このカラー41は、複数の冷却媒体用ラインの遮蔽用ケーシング44を取り付けるための外側のねじ部を有する突部44を有している(図6を見よ)。冷却カバー21の管ステー43への接続は、ただちに交換可能で、高圧と低圧とに耐久性のある既知のプラスチックの封止部又は金属のカッティングリング(Metallschneidringen)で抱き込みねじ結合(Quetschverschraubung)させることにより行なわれる。
【0062】
固定装置40の特に有利な点は、ノズル装置10がわずかな費用で迅速に着脱されることができることである。このことは、ノズルヘッドを交換する際の、実際の製造サイクルにおいて適用される際に特に重要である。必要な解凍と冷却との時間を含む、本発明のノズル装置の交換は、わずか約30分で終われば好都合である。
【0063】
自動温度調節装置50は、既知の商業的に入手可能な循環低温保持装置である。冷却媒体は、循環ポンプで冷却媒体用供給ライン24を介して、熱交換器装置20の中へと移動され、冷却媒体用取り除きライン25を介して低温保持装置へと戻される。例えば、イソペンタンが冷却媒体として用いられ、このイソペンタンは、−130℃乃至0℃の範囲におけるノズルの作動に対して特に好都合である。代わりに、例えば、メタン、又は、例えば、窒素蒸気もしくはヘリウム蒸気のような冷却ガスが用いられることができる。冷却媒体用ライン24、25は、ケーシング51と柔軟な真空カバー52(図6を見よ)により熱的に絶縁されている。このことにより、これらのラインに沿ったエネルギーの損失が防止され、熱交換器装置における作動点温度の調整が向上する。さらに、周囲の空気からのライン24、25への結露が防止されると好都合である。ケーシング51は、(53での)ねじ込みにより、固定装置40の突部44(図5を見よ)に接続されることができる。
【0064】
ノズル装置10と自動温度調節装置50とが空間的に分離されていることは、さらに、このサーモスタットの動作により生じる振動が減衰するという有利な点を有する。この理由のために、冷却媒体用供給ライン24と冷却媒体用取り除きライン25とは、少なくとも1mの長さを有していることが好ましい。
【0065】
図7は、ノズル30の出口端31を、拡大断面図で示している。ノズル30は、だんだん細くなる、内側に凸に曲がった、一定の内側輪郭32を有している。内側輪郭32からノズル軸33への傾斜の角度は、液体ジェットがノズル30から乱流を生じずに出て行くために45°より小さくなるように選択されていると好ましい。ノズル30は、例えば、石英ガラス又は他の不活性の定腐食の材料からなっている。出口端における直径は、ほぼ20乃至60μmである。
【0066】
本発明により、真空チャンバ70の中で複数の固体のフィラメント1を製造するために、まず、気体状のターゲット材の流れが、圧力下で貯蔵器61からノズル装置10を介して生じ、一方で、ノズル装置(diese)は、冷却される。熱交換器装置20内における冷却がターゲット材を液化させるのに十分になるとすぐに、液体ジェット2が真空チャンバ70の中に注入される。熱交換器装置の中の温度を測定し、そして、低温保持装置の冷却媒体の温度を対応させて制御し、並びに/もしくは、凍結長さ(図1を見よ)を光学的に測定することにより、所望の作動点温度へさらに温度を調整することが行なわれることができる。
【0067】
本発明のノズル装置10の変更された実施の形態が図8にさらに詳細に示されている。ノズル装置10は、熱交換器装置20と、この熱交換器装置20及び供給ライン27に、例えば追加的な中間の部品34を介してねじこまれて接続されているノズルヘッド30とを有している。この中間の部品34により、ノズル30の交換可能性と、場合によっては調整の可能性が容易になる。残りの詳細は、図3のデザインに対応している。
【0068】
中間の部品34は、曲げられることができ、冷却カバーの軸に対するノズルの出口方向は、例えば、90°曲げられることができる。この例においては、ノズル装置を真空チャンバの中へと挿入するのが単純化されることの結果、有利な点が生ずる。
【0069】
蛇腹による接続(Balgverbindung)を、ノズル30又は中間の部品34と、冷却カバーとの間に設けることができる。例えば、冷却カバーの一部である、この蛇腹による接続の結果、ノズルの出口開口部の柔軟な調整ができる。毛管形状の供給ライン27が、この供給ラインが柔軟であるという理由のために、このような調整に従うことができれば有利である。
【0070】
図9は、顕微鏡で撮られたノズルの出口端の画像の複数の例で、本発明の有利な点を示している。従来技術(所望の作動点の調整がない)においては、ジェットは、不規則な部分流に崩壊してしまい、チャンバの中へとスプレイのように広がっている(左の画像)。本発明に係われば、真空の中へと崩壊することなく延びる安定したジェットが生成される(右の画像)。相の境界は、ノズルの出口端のすぐ後に認められる。
【0071】
図10は、本発明に係るX線源の例を概略的に示している。このX線源は、温度調節されることができる真空チャンバ70に接続されているターゲット源60と、放射装置71と、収集装置72とを有している。
【0072】
ターゲット源60は、ターゲット材のための貯蔵器61と、供給ライン27と、サーモスタット(図示されていない)に接続されている本発明に係るノズル装置10とを有している。ターゲット材は、例えば、ポンプ又は圧電輸送装置を有する作動装置(図示されていない)でノズル装置10に導かれ、上述のように、このノズル装置10から真空チャンバ70の中へと注入される。
【0073】
放射装置71は、放射線源73と放射光学系74とを有し、この放射光学系で放射線源73からの放射は、ターゲット材1にフォーカスされる。放射線源73は、例えば、レーザであり、このレーザの光は、もし必要ならば、複数の偏向ミラー(図示されていない)によって、ターゲット材1に案内される。代わりに、真空チャンバ70の中に配置されているイオン源又は電子源も、放射装置71として設けられることができる。
【0074】
収集装置72は、真空チャンバ70の放射の作用の下で気化されなかったターゲット材を取り除く、例えば、じょうご又は毛管の形式の容器75を有し、このターゲット材を収集容器76の中へと導く。
【0075】
真空チャンバ70は、少なくとも第1の窓77を有し、この第1の窓を通して、ターゲット材1が放射されることができ、また、少なくとも1つの第2の窓を有し、この第2の窓を通して発生されたX線放射が出る。第2の窓78は、場合に応じて、特定の適用のために、発生されたX線放射を真空チャンバ70から切り離すために設けられる。もし、このことが必要とされないならば、第2の窓78は、設けずに済ますことができる。さらに、真空チャンバ70は、真空装置79に接続され、この真空装置で真空チャンバ70の中に真空がつくられる。この真空は、10−5bar未満であることが好ましい。放射光学系74が、また、真空チャンバ70の中に配置されている。もし、真空装置79がクライオポンプであるならば、真空チャンバの中での望ましくない機械的な振動が防止され好都合である。
【0076】
第2の窓78は、軟X線放射に対して透明な窓材料、例えば、ベリリウム、からなっている。もし、第2の窓78が設けられているならば、この窓には、他の真空装置91に接続されている真空にひくことができるプロセスチャンバ90が続き得る。X線放射は、材料プロセスのためのプロセスチャンバ90の中の物体で再発生されることができる。例えば、X線リソグラフィ装置92が設けられ、この装置で半導体基板の表面は照射される。真空チャンバ70の中のX線源と、プロセスチャンバ90の中のX線リソグラフィ装置92とが空間的に分離していると、プロセスされる材料が、気化したターゲット材の堆積にさらされないという有利な点がある。
【0077】
X線リソグラフィ装置92は、例えば、所望のX線波長を選択するためのフィルタ93、マスク94、及び照射される基板95を有している。加えて、結像光学系(Abbildungsoptiken)(例えば、複数のミラー)が、X線放射をX線リソグラフィ装置91にガイドするために、設けられることができる。
【0078】
本発明は、上述の例として示した好ましい実施の形態に限定されず、むしろ本発明の概念を用い、従って、本発明の保護される範囲に入る、複数の変形や変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明にしたがって真空中に注入される液体の作動点の調整を概略的に示している。
【図2】キセノンの相図である。
【図3】本発明のノズル装置の好ましい実施の形態の概略的な斜視図である。
【図4】本発明のノズル装置を真空チャンバへの取り付けの概略的な図である。
【図5】図3に従うノズル装置のさらなる詳細とこのノズル装置のサーモスタットへの接続を示している。
【図6】図3に従うノズル装置のさらなる詳細とこのノズル装置のサーモスタットへの接続を示している。
【図7】本発明に従って用いられるノズルの拡大断面図を示している。
【図8】本発明のノズル装置の他の実施の形態の概略的な斜視図を示している。
【図9】本発明の本質的な有利な点を示す写真である。
【図10】本発明のノズル装置を設けられているX線源の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体(2)を製造するために、熱交換器装置(20)で気体を液化することと、
前記液体(2)を、供給ライン(27)を介し、ノズル(30)を通して真空チャンバ(70)の中へと供給することとを具備する、前記真空チャンバ(70)の中で前記液体(2)から固体フィラメント(1)を製造するための方法において、
前記熱交換器装置(20)で前記気体を液化することは、前記液体(2)のp−T作動点を調整することを有し、このp−T作動点では、この液体(2)は、前記ノズル(30)から前記真空チャンバ(70)の中へと供給された後に、固体凝縮状態へと転換され、コリメートされた安定なジェットを形成することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記液体(2)のp−T作動点を調整することは、前記熱交換器装置(20)でこの液体を、作動点温度Tに温度調整することを有し、この作動点温度T未満ではこの液体は固体になる、請求項1に係る方法。
【請求項3】
前記液体(2)のp−T作動点を調整することは、前記熱交換器装置(20)でこの液体を、この液体(2)の三重点Tより1℃未満だけ高い作動点温度Tに温度調整することを有する、請求項1又は2に係る方法。
【請求項4】
前記液体(2)を温度調整することは、この液体が前記供給ライン(27)を通って流れている間に行なわれる、前記全ての請求項のいずれか1に係る方法。
【請求項5】
前記液体(2)を温度調整することは、前記供給ライン(27)に沿って前記ノズル(30)まで行なわれる、請求項4に係る方法。
【請求項6】
2℃/cm未満の温度勾配が、前記供給ライン(27)に沿って前記熱交換器装置(20)で形成される、前記全ての請求項のいずれか1に係る方法。
【請求項7】
前記温度調整は、液体冷却媒体で前記熱交換器装置(20)で行なわれる、前記全ての請求項のいずれか1に係る方法。
【請求項8】
前記冷却媒体の温度は、サーモスタット(40)で調整される、請求項7に係る方法。
【請求項9】
前記冷却媒体の温度若しくは蒸気圧は、前記熱交換器装置(20)で測定される請求項7又は8に係る方法。
【請求項10】
前記真空チャンバ(70)の中へと供給される前記液体(2)の光学的な測定が、行なわれる、前記全ての請求項のいずれか1に係る方法。
【請求項11】
気体の圧力、冷却媒体の供給体積、及び前記熱交換器装置(20)の冷却媒体の温度のうち少なくとも1つのパラメータは、前記温度測定、蒸気圧測定、又は光学的測定の結果に応じて調整される、請求項9又は10に係る方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのパラメータを調整するために、制御回路が形成されている請求項11に係る方法。
【請求項13】
前記ノズル(30)の中の液体(2)は、ジェットの形成を受ける、前記全ての請求項のいずれか1に係る方法。
【請求項14】
供給される前記気体は、希ガスである、前記全ての請求項のいずれか1に係る方法。
【請求項15】
前記供給されるガスは、キセノンである、請求項14に係る方法。
【請求項16】
前記液体(2)のp−T作動点は、この液体(2)が、前記ノズル(30)から出た後に、10mm未満の凍結長さ(a)のうちに固体になるように、選択されている、前記全ての請求項のいずれか1に係る方法。
【請求項17】
気体から液体(2)を製造するための熱交換器装置(20)と、
前記液体(2)が中を通って真空中へと出て行くことができる、ノズル(30)を備えている供給ライン(27)とを具備する、特に、真空中で固体フィラメント(1)を製造するためのノズル装置(10)において、
前記液体(2)が、前記ノズル(30)から真空中に出た後に、固体凝縮状態と、コリメートされ安定したジェットの形態とに転換されることができるように、前記熱交換器装置(20)は、前記液体(2)のp−T作動点を調整するために適合されていることを特徴とするノズル装置。
【請求項18】
前記熱交換器装置(20)は、前記供給ライン(27)に沿って延びている請求項17に係るノズル装置。
【請求項19】
前記熱交換器装置(20)は、前記供給ライン(27)に沿って前記ノズル(30)まで延びている請求項18に係るノズル装置。
【請求項20】
前記熱交換器装置(20)は、前記供給ラインに沿って少なくとも40cmの長さにわたって延びている請求項17乃至19のいずれか1に係るノズル装置。
【請求項21】
前記供給ライン(27)は、前記熱交換器装置(20)を通ってらせん状に延びている請求項17乃至20のいずれか1に係るノズル装置。
【請求項22】
前記供給ライン(27)は、0.1mm乃至0.5mmの範囲の厚さの壁を有する請求項17乃至21のいずれか1に係るノズル装置。
【請求項23】
前記熱交換器装置(20)は、逆流冷却器である請求項17乃至22のいずれか1に係るノズル装置。
【請求項24】
前記熱交換器装置(20)は、液体の冷却媒体を有している請求項17乃至23のいずれか1に係るノズル装置。
【請求項25】
前記熱交換器装置(20)は、端部(22)に前記ノズル(30)が配置されている、管状の冷却カバー(21)を有している請求項17乃至23のいずれか1に係るノズル装置。
【請求項26】
前記ノズル(30)は、前記冷却カバー(21)に取り外し可能に配置されている請求項25に係るノズル装置。
【請求項27】
前記ノズル(30)は、このノズル(30)の放出方向の向きを前記冷却カバー(21)の長手方向の延びに対して変化することができるように、この冷却カバー(21)に調節可能に配置されている請求項25又は26に係るノズル装置。
【請求項28】
前記ノズルの熱的な絶縁を果たす遮蔽装置(35)が設けられている請求項17乃至27のいずれか1に記載のノズル装置。
【請求項29】
前記冷却カバー(21)を真空フランジに固定するために、固定装置(50)が設けられている請求項25乃至28のいずれか1に係るノズル装置。
【請求項30】
前記熱交換器装置(20)は、この熱交換器装置(20)の中の冷却媒体を温度調節することができるサーモスタット(40)に接続されている請求項25乃至29のいずれか1に記載のノズル装置。
【請求項31】
前記サーモスタット(40)は、前記熱交換器装置(20)に対して、このサーモスタットが振動から分離されるように、配置されている請求項30に係るノズル装置。
【請求項32】
前記熱交換器装置(20)は、熱的に絶縁されている複数の線(24、25)を介して、前記サーモスタットに接続されている請求項30又は31に係るノズル装置。
【請求項33】
温度センサ又は蒸気圧センサが、前記熱交換器装置(20)に配置されている請求項17乃至32のいずれか1に係るノズル装置。
【請求項34】
前記供給ライン(27)は、出口開口へと、内側の輪郭(32)が所定の凸状である前記ノズル(30)で開いている請求項17乃至33のいずれか1に係るノズル装置。
【請求項35】
前記ノズル(30)は、取り外し可能に前記供給ライン(27)に接続され、封止部が、これらノズル(30)と供給ライン(27)との間に配置され、この封止部は、銅及びベリリウムからなる合金から構成されている請求項17乃至34のいずれか1に記載のノズル装置。
【請求項36】
真空チャンバ(70)と、請求項17乃至35のいずれか1に係り、前記真空チャンバ(70)の中で液体から固体フィラメントを製造するためのノズル装置(10)とを備えている装置。
【請求項37】
長さが少なくとも10cmで、直径が10μm乃至100μmの範囲にある凍結したフィラメントを製造するための、前記全ての請求項のいずれか1に係る方法又はノズル装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−519193(P2007−519193A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549984(P2006−549984)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000333
【国際公開番号】WO2005/072027
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(594056568)マツクス−プランク−ゲゼルシャフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシャフテン エー フアウ (13)
【出願人】(505321097)ゲオルグ−アウグスト−ウニベルズィテート・ゲッティンゲン (2)
【Fターム(参考)】