説明

真空ポンプのロータの回転の故障を予測する方法および関連ポンプ装置

本発明は、以下のステップを備える、真空ポンプのロータの回転の故障を予測する方法に関する:
− 真空ポンプの機能信号の経時的な変化に関連するイベントシーケンスが記録されるステップ101と、
− 少なくとも1つのイベントシーケンス、およびその記録されたイベントシーケンス内の真空ポンプ挙動モデルの少なくとも1つの事前に確立された結合規則の発生原因の間で一致が探求されるステップであって、前記事前に確立された結合規則の発生原因がロータの回転の故障を含む、ステップ102と、
− その期間中にロータの回転の故障が真空ポンプ内で生じることになる時間予測ウィンドウが推定されるステップ103。
本発明はまた、以下を備えるポンプ装置に関する:
− 少なくとも1つのロータおよび1つのポンプ本体を備える真空ポンプ7であって、前記ロータが前記ポンプ7のモータによって前記ポンプ本体内で回転駆動される可能性をもつ、真空ポンプ7と、
− 前記ポンプ7の機能信号センサ9と、
− その期間中にロータの回転の故障が真空ポンプ7内で生じることになる時間予測ウィンドウを予測する手段10であって、前記機能信号センサ9によって提供される測定結果に基づいてその予測時間ウィンドウを計算する、予測の手段10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスチャンバに関連する真空ポンプの予測および予防保守の分野に関する。より詳細には、真空ポンプから到達するセンサ信号を追跡すること、および予防保守作業をスケジューリングすることを可能にするためにポンプの動作不能(seizing)による故障を予測することを可能にすることに関する。本発明はさらに、関連ポンプ装置にまで及ぶ。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプは概して、動作中に、ポンプの本体(ステータ)を回るようにモータによって駆動される、1つまたは複数のロータを備える。回転中、プロセスチャンバに吸い込まれたガスは、出口へと排出されるように、ロータとステータの間の空きスペース内に閉じ込められる。
【0003】
真空ポンプは特に、常圧よりも低い圧力を必要とする、半導体、フラットスクリーン、または光起電基材を製造する方法で使用される。しかし、これらの方法で使用されるガスは、固形の副産物に変わることがあり、これらの副産物は、ポンプの可動および固定部分の上に層状に堆積することがあり、ポンプが詰まり、次いで動作不能になるおそれがあり、それによりステータに対するロータの過度の摩擦により機構が停止するおそれがある。
【0004】
他のソースは、真空ポンプの動作不能の原因であることもある。たとえば、熱関連の動作不能が、ロータが熱くなった影響で歪んだ後に、生じうる。同様に、真空ポンプが設備されるまたは製造されるときのロータのバランスまたはアライメント不良が、ロータが不均衡になるおよび真空ポンプの動作不能の原因となりうる。加えて、真空ポンプがローラベアリングを有する場合、それらの劣化もまたステータ内の1つまたは複数のロータの動作不能の原因になりうる。
【0005】
ポンプの動作不能は、製造が関連プロセスチャンバ内で、ならびに真空ポンプ内で進行中の製品(たとえば、半導体ウエハ)に回復不可能な損害を引き起こしうる。その場合、真空ポンプを取り替えるために、そのチャンバ内で行われる処理を中断することは避けられない。これらの予定外の生産の中断によって被るコストはかなりの額である。
【0006】
今日、真空ポンプの保守は、真空ポンプが故障し、停止する前に予防保守を予測することができる最善の状況で、修正措置および予防措置の両方に基づく。
【0007】
そうすることにより、予防保守作業は、真空ポンプが使用されているアプリケーションに基づいて定義されるスケジュールにしたがって、実行される。しかし、頻度は、生産負荷によってさまざまであり、またポンプが摩耗するまたは詰まる速さに直接影響を多く及ぼしうる、ポンプの使用の実情に合わせて調整されず、不必要なまたは遅くすらある保守作業の原因となっている。
【0008】
真空ポンプ故障予測方法は、ポンプの動作不能を予測し、その取替えを先んじて行うために、開発された。
【0009】
たとえば、故障予測方法は、その時間内に故障が乾式真空ポンプで発生することになる時間を判断することで知られている。真空ポンプが故障の発生前に使用されている期間の推定が、生産プロセスの特性(ガスフロー、圧力、基材の温度など)と併せたポンプの仕様(電流、温度、振動など)の統計的使用を行うことによって、実行される。しかし、この方法は単独で機能することはできない。それは、プロセスの動作状態を考慮に入れることなくポンプの寿命を予測することはできない。その分析システムは、生産機器によって提供される情報に依存し、その機器と真空ポンプの間の通信回線の設備を必要とする。加えて、プロセス条件を変更することは次に、分析システムのモデルを修正することを必要とし、その真空ポンプが使用されている間に簡単に行われることはできない。
【0010】
文献EP1,754,888もまた知られており、真空ラインの故障を予測する方法を開示する。この方法では、ポンプのモータに関する第1の機能パラメータおよびポンプのガス排出システムに関する第2の機能パラメータの経時的な変化が両方とも測定される。測定された機能パラメータは次に、目詰まりが発生する前の真空ポンプの使用持続期間を予測するために、統計的処理によって相関される。それによって、真空ラインは、外部信号との相関なしに自己診断を行うことができる。この方法は、特に、ポンプが詰まることにつながる真空ライン内の固形の生成物による汚染の現象の進行を追跡するのに適している。しかし、目詰まりを介する動作不能の場合の真空ポンプの異常な挙動を予測することは、故障の直前にのみ生じる。その場合、真空ポンプを止める前に処置を取ることが必ずしも可能とは限らない。さらに、このプロセスは、その製造または設備中の加熱または故障によって引き起こされるもののようなポンプの他の動作不能関連の誤作動を予測することを可能にしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1,754,888号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
問題は、ポンプが使用されている間にそれが故障するのを防ぐことを目的とした予防保守をスケジューリングするために、動作不能関連の真空ポンプ故障の発生を予測することである。
【0013】
問題はまた、プロセスチャンバ内で起こるプロセスの指示なしで、真空ポンプによって異常な挙動を識別することである。特にポンプで送り込まれるさまざまなガスフローに関する、真空ポンプの使用の状態、ポンプで送り込まれるガスの性質、使用の持続期間の知識に関わらず、換言すれば、真空ポンプから来るもの以外の特定の条件およびパラメータを考慮せずに、故障予測を実行することが可能でなければならない。
【0014】
加えて、その予測は信頼できるものでなければならない。換言すれば、故障生産は、状況の50%を超える、もしかすると状況の80%を超える、故障を予測する十分な程度の信頼度で生じる可能性をもたなければならない。加えて、その予測は、予防保守のスケジューリングを可能にするために十分早くに生じなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのために、本発明の目的は、真空ポンプのロータの回転の故障を予測する方法であり:
− 真空ポンプの機能信号の経時的な変化に関するイベントシーケンスが記録されるステップと、
− 少なくとも1つのイベントシーケンスと記録されたイベントシーケンス内の真空ポンプ挙動モデルの少なくとも1つの事前に確立された結合規則の発生原因の間の一致が探求されるステップであって、前記結合規則は1つまたは複数の抽出パラメータに限定して知識を抽出することによって確立され、前記事前に確立された結合規則の発生原因がロータの回転の故障を含む、ステップと、
− その期間中にロータの回転の故障が真空ポンプ内で生じることになる時間予測ウィンドウが推定されるステップと、を備える。
【0016】
それによって、本故障予測方法は、記録された機能信号の経時的な変化に基づいて真空ポンプの動作不能による故障の発生を確実に予測することを可能にする。そうすると、ポンプが使用されている間にそのポンプが実際に故障する前にそのポンプの故障を予想し、予防保守をスケジューリングすることが可能である。本診断は早く、構成要素の劣化に関連する損害を最小化し、保守オペレータのモニタリング作業を容易にし、したがって、保守コストをさらに減らすことを可能にする。
【0017】
本予測方法の第1の実施形態によれば、真空ポンプのポンプ本体内で振動信号の経時的な変化に関するイベントシーケンスが記録される。
【0018】
本予測方法の第2の実施形態によれば、真空ポンプモータの電流信号の経時的な変化に関するイベントシーケンスが記録される。
【0019】
その機能信号は周波数スペクトルに変換されることができ、周波数帯域は前記スペクトル内の真空ポンプの運動の周波数特性付近で選択されることができる。
【0020】
ポンプ本体の振動信号および真空ポンプモータの電流信号は生信号であり、それらは真空ポンプから直接生じ、場合によって、たとえばポンプの電力についての、他の信号を組み合わせることによってもたらされない。したがって、これらの信号は、より正確であり、ポンプの状態を直接反映する。加えて、振動信号または電流信号のスペクトルへの変換は、固定速度で回転する真空ポンプの動作を特徴付ける周期現象を調べることを可能にする。
【0021】
結合規則は、動作が開始してからロータの回転が故障するまで続く真空ポンプの寿命に亘って真空ポンプの一団から獲得され、複数のイベントシーケンスを備える学習データベースから知識を抽出することによって、真空ポンプの挙動モデルを記述し、確立されることができる。
【0022】
真空ポンプの挙動モデルはその後、数日に亘って記録されたイベントシーケンスに基づいて確立され、プロセスチャンバ内で起きていることがあるプロセスの周期的状態からそれが独立することを可能にする。プロセスによって引き起こされる混乱は数分間のみ続きうるため、それらはモデルを確立するために明白になる。
【0023】
したがって、本予測プロセスは、プロセスチャンバ内で起こるプロセスの指示なしに、およびプロセスへの混乱または修正によって影響を受けることなしに、真空ポンプ内で異常な挙動を識別することを可能にする。機械の挙動モデルは、プロセスがいかに進行するかに基づいて再調整される必要はない。
【0024】
単独でまたは組合せで、本予測方法の1つまたは複数の特性によれば、
− 前記結合規則が、以下のうちから選択される1つまたは複数の抽出パラメータに限定して抽出される:結合規則のサポート、信頼度、および各イベントの間の最大持続期間、
− 1つまたは複数の結合規則が、N真空ポンプから記録された学習データベースからのイベントのN−1シーケンスから抽出され、前記結合規則が抽出に使用されなかったイベントシーケンスに対して承認される、
− 前記学習データベースから、イベントシーケンスが、第1に基準レベルおよびその基準レベルの倍数に対応する中間動作レベルの前記周波数帯域と真空ポンプの動作の特性の間からの選択によって、そして第2に前記レベルの持続期間特性によって、決定される。
【0025】
本発明の他の目的は:
− 前記ポンプのモータによって前記ポンプ本体内で回転駆動される可能性をもつ少なくとも1つのロータ、および1つのポンプ本体を備える、真空ポンプと、
− 前記ポンプの機能信号のセンサと、
− その期間中にロータの回転の故障が真空ポンプ内で生じることになる時間予測ウィンドウを予測する手段であって、前記機能信号センサによって提供される測定結果に基づいて予測時間ウィンドウを計算するために、前述のような真空ポンプのロータの回転の故障を予測する方法を実装するように構成された、予測の手段、を備えるポンプ装置である。
【0026】
本ポンプ装置の第1の実施形態によれば、機能信号センサは、振動センサ、たとえば前記ポンプ本体のベアリングに固定されたもの、である。
【0027】
本ポンプ装置の第2の実施形態によれば、機能信号センサは、真空ポンプモータの電流を測定する手段である。
【0028】
診断を提供することができる予測の手段を備えるポンプ装置の使用は、真空ポンプがその一部である設備が進行中の生産フェーズ内にあるとき、重大な故障を予測することによってそれらを回避することを可能にする。
【0029】
他の利益および特性が、決して制限的なものではなくても、本発明の特定の実施形態の以下の説明、ならびに以下のような添付の図面を読むことで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ポンプ装置に接続されたプロセスチャンバを備える設備の概略図である。
【図2】故障予測方法の図である。
【図3】時間、たとえばイベントシーケンス、に基づく振動の複数の周波数帯域を介する振動信号を表すグラフである。
【図4】もう1つの例示的なイベントシーケンスを象徴的に示す図である。
【図5】最適ウィンドウのサイズに基づく信頼度パーセンテージのグラフである。
【図6】時間に基づく例示的なイベントシーケンスおよび関連予測時間ウィンドウのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
これらの図において、同一の要素は同じ参照番号を与えられる。
【0032】
明確さのために、本方法の段階は100で始まる番号を付されている。
【0033】
本発明は、ポンプ本体のステータ内で回転駆動されるロータを備えるすべてのタイプの真空ポンプに適用する。その真空ポンプは、たとえば、2つまたは3つのローブをもつ、ルーツ真空ポンプなどの、回転するローブをもつものでもよい。ルーツ真空ポンプにおいて、各ポンピング段階は、反対方向にステータ内で回転する、同一のプロファイルをもつ2つのロータを備える。それらが回転するとき、吸引されたガスはロータとステータの間に見つかった空きスペース内に閉じ込められ、次に、出口または次の段階へと排気を介して抜ける。回転ローブ真空ポンプはまた、クローポンプとしても知られる、2トング真空ポンプでもよい。さらに、その真空ポンプはまた、分子、ターボ分子、もしくはハイブリッド、またはベーンポンプもしくはスクリュタイプのポンプでもよい。
【0034】
図1に示す設備1は、矢印6で示される流れ方向で、チャンバ2から引き込まれたガスをポンプで送り出すためのポンプ装置5の取入れ口4に管3によって接続されたプロセスチャンバ2を備える。それは、任意のプロセス、たとえばシリコンウエハ上のマイクロ電子デバイスの製造、またはフラットスクリーンもしくは光起電基材製造プロセスに使用される付着、エッチング、イオン注入、または熱加工プロセスが実行されている、チャンバ2でもよい。
【0035】
ポンプ装置5は、その中でロータがポンプ7のモータ(図示せず)によって回転駆動されることができるポンプ本体を示す真空ポンプ7を備える。動作中、ロータの回転速度は、固定値にセットされる。真空ポンプ7の出口は、排出管と接触させられている。
【0036】
ポンプ装置5はさらに、ポンプ本体の振動センサ9、および、動作不能による故障がポンプ7内で生じることになる予測時間ウィンドウの予測手段10を備える。動作不能は、回転機構を停止させうる、ポンプ本体内のロータの回転動作における故障として定義される。
【0037】
振動センサ9は、たとえば、有効な振動速度(m/sで)を提供することを可能にする圧電型加速度計でもよい。振動センサ9の出力は、予測手段10に接続される。
【0038】
振動を分析することは、固定速度で回転する真空ポンプの動作不能を予測するために必要な周期的特性現象を識別することを可能にする。ポンプ本体の剛構造を考えると、単一の振動センサ9は、単一の測定点でポンプ本体の特性振動現象のすべてをつなぐのに十分でありうる。振動センサ9のアナログ出力は、周期現象を識別するために、フーリエ変換によってスペクトルに変換される。
【0039】
振動センサ9は、そこでロータの力がポンプ本体に伝送されるため、たとえば、真空ポンプ7の2つのベアリングに固定されることができる。さらに具体的には、ルーツ乾式真空ポンプの例で、振動センサは、ポンプ本体に対するロータのシャフトによって引き起こされる圧縮力が最も高い、凡そ2つのロータの間で、ポンプ本体の上面に垂直に配置される。
【0040】
予測の手段10は、振動センサ9によって提供される振動信号の経時的な変化の測定に基づいて、その期間中に動作不能による故障が真空ポンプ7内で生じることになる予測時間ウィンドウを計算する。予測の手段10は、真空ポンプ7内に配置された、または遠く離れて専用のエキスパートセンタ内に配置された、処理ユニットを備える。その処理ユニットは、たとえば、ポンプモニタリングサーバに予測情報を送ることができる。そのサーバは次に、保守オペレータのモニタリングデバイスに順にメッセージを送ることができる。
【0041】
動作不能による故障が生じることになる予測時間ウィンドウを計算するために、予測の手段10は、図2に示す故障予測方法100を実装する。
【0042】
予測方法100の第1のステップ101で、ポンプ本体の振動信号の経時的な変化に関するイベントシーケンスが、たとえば80秒毎に、取られる測定結果に基づいて、記録される。
【0043】
学習データベースのサイズを減らすために、真空ポンプの運動の周波数特性付近の振動の周波数帯域が振動スペクトル内で選択される。図3は、4つの振動周波数帯域B1、B2、B3およびB4の振動信号(速度で)を示す。
【0044】
たとえば、ロータの回転速度に対応する特性周波数を中心にして振動周波数帯域が選択される。
【0045】
回転する機械部品(シャフト、ローブ、ローラベアリング、およびギアなど)のジオメトリに対応する特性周波数付近の振動周波数帯域を選択するように計画することもできる。
【0046】
振動周波数帯域はまた、たとえばロータのシャフトのロータ不釣合いまたはミスアライメントの特性でもよい、ポンプの回転数の1つまたは複数の高調波付近で選択されうる。
【0047】
イベントシーケンスは、第1に周波数帯域の間から選択される振動信号のレベルによって、そして第2に前記振動レベルの過去の特性持続期間によって、特徴付けられる。
【0048】
たとえば、イベントシーケンスは、以下の4つの特性持続期間で測定されることができる:2時間、2日間、1週間、および1週間超。
【0049】
たとえば、基準レベルおよび中間動作レベルが決定される。それらのレベルは、たとえば、所定の持続期間に亘って一連の信号を平均化することによって決定される。
【0050】
振動センサから生じる振動信号の周波数帯域レベルS1、S2、S3の3つの例が、図3の曲線B1に示されている。
【0051】
基準レベルS1は、たとえば現在進行中のプロセスに関連しうる、偶然変動を克服するためになど、約24時間の特性持続期間に亘って評価される振動信号の低閾値に対応する。
【0052】
基準レベルS1の測定は、振動レベルがまだ安定化されていない、真空ポンプ7のバーンイン期間を克服するために、新しい真空ポンプの開始後少なくとも24時間で開始する。
【0053】
振動信号の上限に対応する第1の中間動作レベルS3は、たとえば、基準レベルS1の約4倍である(図3を参照)。それは、たとえば、約2時間の特性持続期間に亘って測定される。この持続期間は、たとえば現在進行中のプロセス(約数分間続く)に関連しうる、他の偶然変動を克服することを可能にする。
【0054】
第2の中間動作レベルS2は、基準レベルS1の3倍を表し、たとえば、約2時間の特性持続期間に亘って測定される。
【0055】
2日間観測された第2の中間レベルS2が次に続く、1週間観測された第1の中間動作レベルS3は、たとえば真空ポンプ動作不能のイベントFに対応する。
【0056】
予測方法100の第2のステップ102において、一致は、少なくとも1つのイベントシーケンスと記録されたイベントシーケンス内の真空ポンプ挙動モデルの少なくとも1つの事前に確立された結合規則の発生原因との間で探求され、その結合規則は1つまたは複数の抽出パラメータに限定して知識を抽出することによって確立される。
【0057】
その結合規則は、以下の書式をもつ:「if originating cause then result」。それらは、ロータの回転の故障を含む。それらは、以下の公式にしたがって示される(1):
:α=>F
但し:
「α」は、イベントシーケンスA、B、C...を備える発生原因であり、各イベントは、最大事前設定持続期間だけ時間で離隔され、発生原因の最後のイベントと動作不能イベントの間の最大持続期間を課される。イベント間の最大持続期間は、たとえば、10日にセットされる。発生イベントのイベントシーケンスは、以下の公式(2)により示される、
:A−>B、
但し、Aは、次にB、第2のイベント、が続く第1のイベントであり、
− 「F」は、ロータの回転の故障の結果、動作不能イベント「F」であり、
− 「=>」は、発生原因と結果の間のif−then演算である。
【0058】
一実施形態によれば、結合規則は、学習データベースから知識を抽出することによって、真空ポンプ7の挙動モデルを記述し、確立される。
【0059】
「データマイニング」と称される方法を含む、データ(KDD)から知識を抽出する本方法の目的は、自動化されたまたは半自動化された方法を介して、大量のデータから知識または学習を抽出することである。この方法は、1つまたは複数の結合規則を使用することによって、特性の原因と、組合せと、誤解されたおよび重要な構造/配列とを識別するために、データベース内で入手可能なデータを使用することを可能にする。この方法は、反復的であり、抽出された知識の品質を最適化することを可能にする。加えて、他の方法に反して、本データマイニング方法は、ユーザによって解釈されうる結合規則を獲得することを可能にする。
【0060】
学習データベースは、1セットの真空ポンプから、また真空ポンプが動作し始めてからそれが動作できなくなるまで続く寿命に亘って、獲得される、動作不能を介する故障に関連する複数の関連イベントシーケンスを備える。たとえば約60のポンプをもつものなど、真空ポンプの十分に大きい一団が、イベントを確実に関連させるように、考慮される。真空ポンプの全寿命に亘って予期されるために探求される故障を観測するために、使用の実態の下で動作が開始されることになる、真空ポンプの一団が好ましくは使用される。
【0061】
学習データベースは、「第1の動作不能」の前に獲得されるイベントシーケンスのみを備える。実際には、使用の実態の下で、真空ポンプの動作不能が予測されるときにはいつでも、目標は真空ポンプを新しいポンプと置き換えることである。したがって、第1の動作不能の後に生じる動作不能から知る必要はない。結果として、学習データベースを構築するために、真空ポンプの開始更新とそのポンプが動作できなことが観測された第1の日付の間に行われる獲得が選択される。第1の動作不能は、たとえば、真空ポンプのモータによって消費される電力または真空ポンプの出力でのガス圧力など、真空ポンプに組み込まれたセンサによって送信されるおよび動作中に記録される信号に特に依存しうる、エキスパートによって、観測される。そのエキスパートはまた、動作不能の原因を明確に識別するために、真空ポンプの検査にも依存しうる。
【0062】
図4は、端と端を結んで配置されたポンプのいくつかの寿命に亘って記録された例示的なイベントシーケンスを示す。寿命d1は、たとえば、開始および動作不能イベント「F」の間のイベントシーケンスを示す。
【0063】
結合規則は、以下のうちから選択される1つまたは複数の抽出パラメータに限定して抽出される:結合規則のサポート、信頼度、および各イベントの間の最大持続期間。
【0064】
サポートは、結合規則が動作不能関連の故障を予測した回数に対応する。少なくとも1に等しいサポートが選択されると、結合規則が、学習データベース内の動作不能関連の故障の検出内の1の少なくとも1つの発生をもつ必要があることを意味する。2に等しいサポートは、抽出された結合規則が特別過ぎないように、選択されることができる。
【0065】
信頼度は、結合規則の信頼性尺度である。それは、動作不能イベントFの予測%として表現される。100%の信頼度が選択される。換言すれば、この選択は予測率を下げる傾向があるけれども、発生原因は、誤った予測を防ぐために、動作不能の結果が必ず後に続く必要がある。たとえば、動作不能イベントが10回のうち9回取得される結合規則は、拒否されることになる。
【0066】
結合規則の各イベントの間の最大持続期間は、その予測範囲によって課される限定であり、故障予測と故障自体の発生の間の最大持続期間を意味する。約10日間の各イベント間の最大持続期間が決定される。
【0067】
学習の最後に、結合規則は、各結合規則について、計算から生じた、最適ウィンドウによって特徴付けられる。最適ウィンドウは、最高レベルの信頼度を獲得するために使用される規則の持続期間である。各結合規則について、サポートが1に等しい、信頼度が100%である最適ウィンドウが保持されることになる。
【0068】
たとえば、持続期間が時間u1の3ユニットに等しい最大ウィンドウw1についての、図4にある例示的なイベントシーケンスについて、発生原因A−>Bは2回起こる。さらに、毎回、この発生原因は動作不能イベントFを含んでいた。したがって、その信頼度は100%である。
【0069】
持続期間が時間u1の2ユニットと同等の最大ウィンドウw2について、発生原因A−>Bは2回起こる。この発生原因は、2回のうち1回、動作不能イベントFを含んでいた。したがってその信頼度は50%である。
【0070】
持続期間が時間u1の4ユニットと同等の最大ウィンドウw3について、発生原因A−>Bは3回起こる。しかし、この発生原因は、3回のうち2回のみ動作不能イベントFを含んでいた。その信頼度は66%である。
【0071】
図5のグラフは、ウィンドウの持続期間に応じて信頼度パーセンテージを示すことによってこれらの3つの可能性を要約する。より短いまたはより長い持続期間のウィンドウw2、w3について信頼度がより低いとき、その持続期間が3ユニットであるウィンドウw1について信頼度はその最大であることが観測される。換言すれば、信頼度が最大である最適ウィンドウw1が存在する。
【0072】
1つまたは複数の結合規則が次に、N真空ポンプから記録される学習データベースからのN−1イベントシーケンスから抽出され(一般に1セットの結合規則)、それらの結合規則は、抽出に使用されなかったイベントシーケンスに対して承認される。
【0073】
この手法は、確立される結合規則のロバスト性をテストすることを可能にする。有効な結合規則は、抽出中と同じ限定を満たし、結合規則を確立するために使用されなかった残りのイベントシーケンスのすべてに亘って誤作動を予測するまたは予測しないことを可能にする必要がある。本方法は、最も一般的な起こりうる構造物挙動モデルを構築し、独立したイベントシーケンス(未使用の)を介して本方法の動作を検証することを可能にする。
【0074】
本方法は次に、他の結合規則を決定するために、または同じ結合規則を見つけるために、N回繰り返され、毎回、新しい結合規則の承認のための新しい未使用のセットを残す。各シーケンスは次に、前記結合規則を承認するために、結合規則を確立するのに使用されたN−1イベントシーケンスから連続的に分離される。N抽出中に抽出された結合規則群は次に、1セットの結合規則を形成する。
【0075】
抽出プロセス100の第3のステップ103で、その期間中にロータの回転の故障が真空ポンプ7で生じることになる予測時間ウィンドウが推定される。発生イベントの発生について、故障の日付が、結合規則の第1のイベントが現れる日付まで最適ウィンドウのサイズを終らせることによって、予測される。
【0076】
観測ウィンドウd2について、予測時間ウィンドウd3は、最も近い故障日付予測と最も離れた故障日付予測の間の時間の間隔に等しい。
【0077】
観測ウィンドウd2は、最も多数のイベント(k)を備える規則によって課され、各イベント間の最大持続期間の(k−1)倍に等しい。
【0078】
学習データベーから知識を抽出することによって確立される規則は、たとえば(R1)、(R2)、および(R3)である:
(R1) 第1の最適ウィンドウwaをもつ、A−>B−>C=>F
(R2) 第2の最適ウィンドウwcをもつ、D−>E−>G=>F
(R3) 第3の最適ウィンドウwbをもつ、K−>E−>L=>F。
【0079】
図6は、観測ウィンドウd2中の時間に亘って測定されるイベントシーケンスを説明する。
【0080】
発生原因A−>B−>Cの発生は、第1のイベントAが現れる日付、さらに最適ウィンドウwaのサイズ、に生じることになる動作不能Fを予測することを可能にする。この発生イベントはウィンドウd2中に2回現れ、2つの日付が動作不能の発生について予測される。
【0081】
発生原因D−>E−>Gの発生は、第1のイベントDが現れる日付、さらに最適ウィンドウwcのサイズ、に生じることになる動作不能Fを予測することを可能にする。
【0082】
発生原因K−>E−>Lの発生は、第1のイベントKが現れる日付、プラス最適ウィンドウwbのサイズ、に生じることになる動作不能Fを予測することを可能にする。
【0083】
動作不能の発生を予測することのさまざまな仮定に対応する多数のポイントは、規則D−>E−>Gの最適ウィンドウwcによる見積りと規則A−>B−>Cの第1の発生の最適ウィンドウwaによる見積りの間で予測時間ウィンドウd3の範囲に入る。その期間中にロータの回転の故障が真空ポンプで生じることになる時間ウィンドウが次に、予測されることができる。
【0084】
したがって、本予測方法は、プロセスチャンバ内で起こるプロセスの指示なしに、およびそのプロセスの混乱または修正によって影響を受けることなしに、真空ポンプ内の異常な挙動を識別することを可能にする。機械の挙動モデルは、そのプロセスがいかに進行するかに基づいて、再調整される必要はない。
【0085】
さらに、本予測は、80%を超える状況で信頼できる。そうすると、ポンプが使用されている間に、それが実際に故障する前に、そのポンプの故障を予期し、予防保守をスケジューリングすることが可能である。その診断は早く、構成要素の劣化に関連する損害を最小限にし、保守オペレータのモニタリング作業を容易にし、その結果、保守コストをさらに低減することを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプのロータの回転の故障を予測する方法であって、
真空ポンプの機能信号の経時的な変化に関連するイベントシーケンスが記録されるステップ(101)と、
少なくとも1つのイベントシーケンス、およびその記録されたイベントシーケンス内の真空ポンプ挙動モデルの少なくとも1つの事前に確立された結合規則の発生原因の間で一致が探求されるステップであって、前記結合規則が1つまたは複数の抽出パラメータに限定して知識を抽出することによって確立され、前記事前に確立された結合規則の発生原因がロータの回転の故障を含む、ステップ(102)と、
その期間中にロータの回転の故障が真空ポンプ内で生じることになる時間予測ウィンドウが推定されるステップ(103)と
を備える、方法。
【請求項2】
真空ポンプのポンプ本体内の振動信号の経時的な変化に関連するイベントシーケンスが記録される(101)、請求項1に記載の予測方法。
【請求項3】
真空ポンプのモータの電流信号の経時的な変化が記録される(101)、請求項1に記載の予測方法。
【請求項4】
その機能信号が周波数スペクトルに変換されることができ、周波数帯域が前記スペクトルの真空ポンプの運動の周波数特性付近で選択されることができる、請求項1から3のいずれか一項に記載の予測方法。
【請求項5】
結合規則が、動作が開始するときからロータの回転が故障するときまで続く真空ポンプの寿命に亘って真空ポンプの一団から取得され、複数のイベントシーケンスを備える学習データベースから知識を抽出することによって真空ポンプの挙動モデルを記述し、確立される、請求項1から4のいずれか一項に記載の予測方法。
【請求項6】
前記結合規則が、結合規則のサポート、信頼度、および各イベントの間の最大持続期間のうちから選択される、1つまたは複数の抽出パラメータの制限で抽出される、請求項5に記載の予測方法。
【請求項7】
1つまたは複数の結合規則が、N真空ポンプから記録され、学習データベースからのN−1イベントシーケンスから抽出され、前記結合規則が、抽出に使用されなかったイベントシーケンスに対して承認される、請求項5または6のいずれか一項に記載の予測方法。
【請求項8】
前記学習データベースから、第1に基準レベルおよびその基準レベルの倍数に対応する中間動作レベルの前記周波数帯域と真空ポンプの動作の特性との間からの選択によって、そして第2に前記レベルの持続期間特性によって、イベントシーケンスが判断される、請求項4と組み合わせた、請求項5から7のいずれか一項に記載の予測方法。
【請求項9】
少なくとも1つのロータおよび1つのポンプ本体を備える真空ポンプ(7)であって、前記ロータが前記ポンプ(7)のモータによって前記ポンプ本体内で回転駆動される可能性をもつ、真空ポンプ(7)と、
前記ポンプ(7)の機能信号センサ(9)と、
その期間中にロータの回転の故障が真空ポンプ(7)内で生じることになる時間予測ウィンドウを予測する手段(10)であって、前記機能信号センサ(9)によって提供される測定結果に基づいて予測時間ウィンドウを計算するために、請求項1から8のいずれか一項に記載の真空ポンプのロータの回転の故障を予測する方法を実装するように構成された、予測の手段(10)と
を備える、ポンプ装置。
【請求項10】
前記機能信号センサ(9)が、前記ポンプ本体のベアリングに固定された振動センサである、請求項9に記載のポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−530875(P2012−530875A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516742(P2012−516742)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058994
【国際公開番号】WO2010/149738
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511148259)
【Fターム(参考)】