説明

真空ポンプ

【課題】従来技術の欠点を解消する、きわめて高い排気速度を有する真空ポンプを提供する。
【解決手段】本発明は、1つのフランジ(2)と、少なくとも2つのガス流入開口(4)と、少なくとも1つのガス流出開口(5)と、少なくとも2つのロータ軸(6)であって、ロータ軸(6)はそれぞれ回転ポンプ作用構造部分(7)を支持し、回転ポンプ作用構造部分(7)はそれぞれ固定ポンプ作用構造部分(8)と向かい合っている前記ロータ軸(6)と、少なくとも1つのハウジング下部部分(9)と、フランジ(2)を支持するハウジング上部部分(10)と、ロータ軸(6)を回転させる駆動手段(11)とを有する真空ポンプ(1)に関するものである。全てのガス流入開口(4)がフランジ(2)の内部に存在し、およびフランジ(2)が共通ハウジング上部部分(10)に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念に記載の真空ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
数十年前から高真空の発生においてターボ分子ポンプが使用されてきた。このポンプにおいては、ポンプ作用は羽根を有するディスクにより発生され、羽根はロータおよびステータ上に交互に装着されている。排気速度がポンプの標準特性変数でありおよび排気速度は特にロータ・ディスクの直径およびロータの回転速度の関数である。二、三の用途はきわめて高い排気速度を必要とする。例えば粒子加速器においては大容量が排気される。ここでは、排気速度が5000リットル/分になることがあるきわめて大きいターボ分子ポンプが使用される。このターボ分子ポンプは技術的には簡単ではない。問題点は、例えば、大きな直径を有するロータ内にきわめて高い運動エネルギーが蓄積され、この高い運動エネルギーがエラー機能における好ましくない場合に放出されることである。他の問題点は複雑なロータ動特性であり、即ち、大きなディスク直径を有する短いロータにおける質量分布は、異なる軸線の周りの回転慣性モーメントが類似するという結果をもたらすからである。したがって、回転装置は不安定となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来技術から出発して、上記欠点を解消する、きわめて高い排気速度を有する真空ポンプを提供することが本発明の課題である。この解決はさらにコスト的に有利であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は請求項1の特徴により解決される。他の請求項は本発明の形態を示す。本発明により、真空ポンプは、1つのフランジと、このフランジの内部の複数のガス流入開口と、および複数のロータ軸であって、ロータ軸は回転ポンプ作用構造部分を支持し、回転ポンプ作用構造部分は固定ポンプ作用構造部分と協働してポンプ作用を達成する前記ロータ軸とを有している。
【0005】
この手段により、高い排気速度を達成すること、および同時に、慣性モーメントがロータ軸線周りの安定な回転を補助するように、ロータ長さに比較してロータ・ディスクの直径を形成することが可能となる。個々のロータ軸に対して、その軸受手段および駆動手段、およびそのポンプ作用構造部分を標準部品とすることが可能であり且つ新たな構造部分として共通ポンプ上部部分が追加されるにすぎないので、真空ポンプはきわめてコスト的に有利に製造可能である。即ち、組み立てるためには、はじめに標準部品が予め組み立てられ、それに続いて共通ポンプ上部部分内にそれが押し込まれるだけでよい。円形フランジ形状は、真空ポンプを、大きな排気速度を有する既存の真空ポンプに対するスペアとして使用することを可能にする。真空室により予め与えられる任意の形状にフランジを適合させることが考えられることは当然である。
【0006】
本発明による真空ポンプの形態を図により詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明による真空ポンプを断面図で示す。真空ポンプ1はフランジ2を有している。このフランジ2の内部に複数のガス流入開口4が存在する。1つまたは複数のガス流出開口5は排気されるべきガスの排出を可能にする。複数のロータ軸6はそれぞれ回転ポンプ作用構造部分7を支持する。ロータ軸6が回転されたとき直ちに、回転ポンプ作用構造部分7は固定ポンプ作用構造部分8と協働してポンプ作用を達成する。フランジ2は共通ハウジング上部部分10に配置されている。ハウジングは少なくとも1つのハウジング下部部分9により完成される。駆動手段11はロータ軸6を回転させるために使用される。この場合、駆動手段11は電動機であってもよく、電動機のステータはハウジング内に装着され且つ電動機のロータ要素はそれぞれのロータ軸6に固定されている。このために必要な電気供給は制御12により行われる。軸の回転を支持するために軸受手段13が使用される。軸受手段13は例えばオイル潤滑転がり軸受であってもまたはグリース潤滑転がり軸受であってもよい。同様に、気体軸受もまた考えられる。特殊形状ハウジング上部部分10に至るまで、他の前記構成要素が、小さい排気速度でただ1つのロータを有するポンプの量産品から形成されてもよい。
【0008】
図2は考えられるフランジ形状を示す。図2aにおいて、同じ直径を有する複数のガス流入開口4が共通円形フランジ内に配置されている。この場合、異なるロータ軸上に固定されている回転ポンプ作用構造部分の直径は同じである。
【0009】
図2bは、共通円形フランジ内に異なる直径を有する複数の円形ガス流入開口4が配置されている他の実施形態を示す。
図2cに、共通フランジが円形ではなくて矩形である他の実施形態が示されている。この手段により、真空ポンプは排気されるべき室に最適に適合可能である。ここには示されていない他のフランジ形状もまた考えられる。
【0010】
図3は2つの異なるフランジ形状を断面図で示す。変更態様a)においては、ガス流入開口4の間のウェブ14が引き込まれて形成され、これにより、ガス流入開口4がそれにより直接結合されているガス入口3が形成される。変更態様b)においては、ウェブ14はフランジ高さまで引き上げられ且つフランジと同一平面において終端している。
【0011】
他の実施形態においては、ロータ軸6は、その軸方向長さの少なくとも一部が、フランジ2を支持する共通ハウジング上部部分10内に存在している。
他の実施形態においては複数の制御12が設けられ、複数の制御12は相互に連絡している。この連絡は例えば電気配線を介して行われてもよい。この連絡は、例えば、ロータ軸の回転速度等のような運転パラメータを交換するために使用される。
【0012】
他の実施形態においては、ただ1つの制御または複数の制御は、それらが補助ポンプ装置を制御するために使用されるように形成されている。補助ポンプ装置は1つまたは複数の真空ポンプから構成され、真空ポンプの少なくとも1つはガスを大気圧まで圧縮する。制御は例えば補助ポンプの1つまたは複数の排気速度の設定を含む。
【0013】
他の実施形態においては、ロータ軸はオフセットされた回転速度で回転される。即ち、ロータ軸がまだ最終回転速度に到達していない初期において、ロータ軸はそれぞれ異なる回転速度で回転する。ロータ軸が停止している真空ポンプのスタートと運転回転速度への到達との間の各時点において、ロータ軸は相互に異なる回転速度で回転する。これにより、全てのロータ軸が同時に共振範囲内にある回転速度で回転することが回避可能である。したがって、共振によって発生する振動の相互増幅による荷重が回避可能である。
【0014】
他の実施形態においては、ロータ軸は少なくとも一部が平行に配置されている。これは、ハウジング下部部分およびパケットが回転ポンプ作用構造部分および固定ポンプ作用構造部分から構造群として予め組立可能であるので、きわめてコスト的に有利で且つ簡単な組立を可能にする。予め組み立てられた構造群上に、次に、そのフランジ2を有するハウジング上部部分10がさらに載せられるだけでよい。
【0015】
この実施形態は、相互に平行なのは個々のロータ軸の軸線のみではないことがさらに考えられる。フランジは、面したがってその面に垂直な垂直面を形成する。さらに考えられる実施形態は、この垂直面およびロータ軸の少なくとも一部が相互に平行であるときに発生する。
【0016】
他の実施形態においては、軸受手段の少なくとも1つが磁気軸受である。この場合、磁気軸受は受動磁気軸受であっても、回転を半径方向または軸方向に支持する能動磁気軸受であってもよい。
【0017】
他の実施形態においては、回転ポンプ作用構造部分7および固定ポンプ作用構造部分8が、それがターボ分子真空ポンプであるように羽根として形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による真空ポンプの断面図である。
【図2】図2a、2b、2cは異なるフランジ形状の平面図である。
【図3】a)、b)は2つのフランジ形状の断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 真空ポンプ
2 フランジ
3 ガス入口
4 ガス流入開口
5 ガス流出開口
6 ロータ軸
7 回転ポンプ作用構造部分
8 固定ポンプ作用構造部分
9 ハウジング下部部分
10 ハウジング上部部分
11 駆動手段
12 制御
13 軸受手段
14 ウェブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのフランジ(2)と、少なくとも2つのガス流入開口(4)と、少なくとも1つのガス流出開口(5)と、少なくとも2つのロータ軸(6)であって、ロータ軸(6)はそれぞれ回転ポンプ作用構造部分(7)を支持し、回転ポンプ作用構造部分(7)はそれぞれ固定ポンプ作用構造部分(8)と向かい合っている前記ロータ軸(6)と、少なくとも1つのハウジング下部部分(9)と、フランジ(2)を支持するハウジング上部部分(10)と、ロータ軸(6)を回転させる駆動手段(11)とを有する真空ポンプ(1)において、
全てのガス流入開口(4)がフランジ(2)の内部に存在することと、および
フランジ(2)が共通ハウジング上部部分(10)に配置されていることと、
を特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
全てのロータ軸(6)は、少なくともその軸方向長さの一部が共通ハウジング上部部分(10)内に配置されていることを特徴とする請求項1の真空ポンプ。
【請求項3】
駆動手段(11)を電気操作するために1つの制御(12)が存在することを特徴とする請求項1または2の真空ポンプ。
【請求項4】
駆動手段(11)を電気操作するために複数の制御(12)が存在し且つそれらが相互に連絡していることを特徴とする請求項1または2の真空ポンプ。
【請求項5】
制御(12)が背圧真空装置を電気操作するために使用されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの真空ポンプ。
【請求項6】
異なるロータ軸(6)の回転ポンプ作用構造部分(7)の直径および固定ポンプ作用構造部分(8)の直径が同じであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの真空ポンプ。
【請求項7】
ロータ軸(6)がオフセットされた回転速度で回転されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの真空ポンプ。
【請求項8】
垂直面によりおよびロータ軸(6)により与えられている真空ポンプの軸線の少なくとも一部が平行に配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの真空ポンプ。
【請求項9】
軸受手段(13)の少なくとも一部が磁気軸受であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの真空ポンプ。
【請求項10】
フランジ(2)が円形であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかの真空ポンプ。
【請求項11】
真空ポンプが分子真空ポンプであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかの真空ポンプ。
【請求項12】
真空ポンプがターボ分子真空ポンプであることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかの真空ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−52728(P2006−52728A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211535(P2005−211535)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(391043675)プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー (44)
【Fターム(参考)】