説明

真空ポンプ

【解決手段】本発明は、真空気密なハウジング(12)と、ハウジング(12)内の電気部品(14,16,18) とハウジングの外側との間の電気接続を形成するための気密な電気的導出部(20)とを有する真空ポンプ(10)に関する。導出部(20)は、ハウジング開口部(22)と、開口部に固定されたシーリング化合物体(24)と、シーリング化合物体(24)内の電気線と、ハウジング開口部(22)の開口縁とシーリング化合物体(24)との間のシーリング環(26)と、シーリング化合物体(24)をハウジング(12)に固定するための固定手段(32)とによって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプのハウジングが気密な電気的導出組立体を備えている真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプは、真空気密なハウジング内に配置された、例えば電気駆動モータ、電気センサ、磁気軸受などの電気部品を通常備えている。真空側の電気部品は、電気線を介してハウジングの外側に接続される必要がある。この目的のために、電気線は、気密な電気的導出組立体によってハウジングの内部からハウジングの外部に導かれる必要がある。
【0003】
最新技術から、接続ピンが貫通している接触板から構成された導出組立体は公知であり、前記接触板は、ハウジングの対応する開口部を閉じるように構成されている。接触板は、シーリング環を用いて前記ハウジングの開口部の縁に向かって密閉されている。接触板での前記接続ピンの密閉は、苦労してやっともたらされることが可能であり、機械的圧力がたまたま接触板に作用するようなことがあれば確実ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2861142号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を考慮して、本発明は、ハウジングが確実であり気密な電気的導出組立体を備えた真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、請求項1に定義された特徴を有する真空ポンプによって達成される。
【0007】
本発明に係る真空ポンプは、真空気密なハウジングとハウジング内に配置された電気部品とを備える。前記電気部品とハウジングの外部との間の電気接続を形成するための気密な電気的導出組立体は、ハウジングの開口部と、ハウジングの内側とハウジングの外側との間に延びてシーリング化合物を貫通する電気線を備えており、ハウジングの開口部に固定された前記シーリング化合物体と、ハウジングの開口部の開口縁とシーリング化合物体との間に配置されたシーリング環と、シーリング化合物体をハウジングに固定するための固定手段とによって形成されている。従って、導出組立体は、実質上三つの部分、すなわち、全ての電気線が成形されているシーリング化合物体と、シーリング化合物体と開口部の開口縁との間の気密且つ真空気密な密閉作用を保証するためのシーリング環と、シーリング化合物体をハウジングの開口部の開口縁に不変に押し付けるために効果的なシーリング化合物体の固定手段とから構成されている。
【0008】
シーリング化合物は、一定の弾性を有し、シーリング化合物体による一又は複数の電気線の気密且つ真空気密な貫通を保証する。好ましくは、基部及び末端の両方で、一又は複数の電気線は、電気接続線の取り付けを可能にすべく、シーリング化合物体から外側に少なくとも僅かに突出する必要がある。シーリング化合物体と開口部の開口縁との間の密閉効果は、シーリング環によって確実に得られる。
【0009】
シーリング化合物体の厚さは、電気線とシーリング化合物との間の十分に長い密閉空間を保証すべく少なくとも5mm であり、好ましくは10mmである必要がある。
【0010】
全ての電気線を一体構造の弾性シーリング化合物体に成形することにより、多数の電気線の場合にも、比較的簡易な方法で確実で真空気密な貫通を実現することが可能になる。磁気軸受を備えた真空ポンプは、多くの場合真空気密なハウジングを通って導かれるべく50本以上の電気導管を必要とするので、この構成は特にこれらのポンプに適している。
【0011】
好ましい実施形態によれば、シーリング化合物体はハウジングの開口部の開口縁に外側から固定されている。作動中では、外側から作用する大気圧とハウジング内に広がっている真空との間の圧力差の作用により、シーリング化合物体はハウジングの開口部の縁に押し付けられる。このようにして、真空ポンプが操作されるとき、シーリング化合物体とハウジングの開口部の縁との間の密閉効果は更に高められる。
【0012】
固定手段は、ほとんど完全にシーリング化合物を取り込み、ハウジングの開口部の縁に対してシーリング化合物を押し付けるように構成されたシーリング化合物ハウジングであることが好ましい。シーリング化合物ハウジングは、一又は複数の電気線のために、一つの基部の開口部及び一つの末端の開口部のみを含む。シーリング化合物ハウジングの主な機能は適所にシーリング化合物体を固定することにあるのに対して、このハウジングは主として密閉機能を有していない。それにもかかわらず、シーリング化合物ハウジングは、実際には同様に密閉効果を有することがある。
【0013】
好ましい実施形態によれば、電気線は、シーリング化合物に配置された導電性基板を含むことが可能である。従って、電気線はプリント回路基板の導体線の形で部分的に実現される。電気線は、シーリング化合物体からハウジングの内部に向かって突出する一つのプラグと、シーリング化合物体からハウジングの外部に向かって突出する一つのプラグとを夫々更に含むことが可能である。前記二つの電気プラグは、プリント回路基板によって互いに接続され得るが、別の方法で互いに電気的に接続されることも可能である。
【0014】
好ましい実施形態によれば、プリント回路基板は電子部品を含む。この点に関してあり得る電子部品は、電気信号の増幅、干渉抑制又は別の操作として役立ち得る全ての電子部品であり、つまり、例えば増幅器、サプレッサチョーク及びコンデンサのような部品、信号処理のための集積回路等である。
【0015】
電子部品は、例えば各真空ポンプのエラー履歴であるポンプに固有の関数パラメータの記憶、及びそのような関数パラメータの常時の検索のために適合された読出可能なポンプのデータ・メモリであることが好ましい。
【0016】
シーリング化合物の材料がエポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂は、真空気密であり弾性を有し、電子部品が損なわれない比較的低温で成形可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ハウジングが気密な電気的導出組立体を備えている真空ポンプを概略的に示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態が、図面を参照して以下に更に詳細に説明される。
【0019】
容量ポンプとして構成され得るが、好ましくは磁気軸受を備えた高真空ターボ分子ポンプとして構成される真空ポンプ10が、概略的に図面に示されている。
【0020】
真空ポンプ10は、ハウジング壁13を有し、複数の電気部品14,16,18、特にポンプセンサ18に加えて電気駆動モータ14及び磁気軸受16を収容する真空気密な金属ハウジング12を備える。駆動モータ14は、軸17を介してターボ分子ポンプのポンプロータを駆動すべく作用する。
【0021】
真空ポンプ10は、前記電気部品14,16,18と前記ハウジングの外部との間の電気接続を確立するために、気密な電気的導出組立体20を備えている。導出組立体20は、ハウジング壁13のハウジング開口部22と、ハウジング開口部の外側で前記ハウジング開口部22に固定されたシーリング化合物体24と、ハウジング開口部22の開口縁28とシーリング化合物体との間の弾性シーリング環26と、シーリング化合物ハウジング30として形成された固定手段32と、電気線34とによって実質上形成されている。前記シーリング環26は、シーリング化合物体24の環状溝27に固定されている。
【0022】
電気線34は、基部の電気プラグ40と、末端の電気プラグ42と、導体線及び電気部品46,47,48を含むプリント回路基板44とによって形成されている。前記電気部品46,47,48は、集積回路46及び受動素子47,48である。前記プラグ40,42 は、50を超えるプラグピンを含み、プラグピンは夫々回路基板44上の導体線に個々に接続されている。
【0023】
真空ポンプ10の関数パラメータ及びデータが、集積回路46に記憶されている。関数パラメータは、ポンプに固有であり、真空ポンプ10のエラー履歴を含んでおり、エラー履歴は、適切な読出装置50を用いて、プラグ42に差し込まれるべく適合された電気データライン52を通って末端のプラグ42によって読み出され得る。
【0024】
電気線34の全ての部品は、その周りに成形されているシーリング化合物体24内で気密に囲まれている。シーリング化合物の材料はエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂は、熱膨張、熱伝導率及び/又は他の物理的パラメータに好ましい影響を有する細かい粒状の混合物を備えることが可能である。
【0025】
固定手段32を形成し、カップ状のシーリング化合物ハウジング30の外側に例えばねじで締めて固定されたシーリング化合物ハウジング30の作用により、シーリング化合物体24は、前記開口縁28に押し付けられて、開口縁28とシーリング化合物体24との間で気密且つ真空気密な密閉状態となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ(10)において、
真空気密なハウジング(12)と、
該ハウジング(12)内に配置された電気部品(14,16,18)と、
前記ハウジング(12)内の電気部品(14,16,18)と前記ハウジングの外部との間の電気接続を形成するための気密な電気的導出組立体(20)と、
を備え、
前記導出組立体(20)は、
ハウジング開口部(22)と、
前記ハウジング開口部(22)に配置され、前記ハウジングの内部と前記ハウジングの外部との間に延びる電気線(34)を囲むシーリング化合物体(24)と、
前記ハウジング開口部(22)の開口縁(28)と前記シーリング化合物体(24)との間のシーリング環(26)と、
前記シーリング化合物体(24)を前記ハウジング(12)に取付けるための固定手段(32)と
によって形成されていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記シーリング化合物体(24)は、外側から前記ハウジング開口部(22)に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ(10)。
【請求項3】
前記固定手段(32)は、シーリング化合物ハウジング(30)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空ポンプ(10)。
【請求項4】
前記電気線(34)は、前記シーリング化合物体(24)内に配置された回路基板(44)を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の真空ポンプ(10)。
【請求項5】
前記電気線(34)は、内部及び外部に向かって一つの電気プラグ(40,42) を夫々含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の真空ポンプ(10)。
【請求項6】
前記回路基板(44)は、電子部品(46,47,48)を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の真空ポンプ(10)。
【請求項7】
前記電子部品(46)の内の一つは、読出可能なポンプのデータ・メモリとして構成されていることを特徴とする請求項6に記載の真空ポンプ(10)。
【請求項8】
前記シーリング化合物体(24)の材料がエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の真空ポンプ(10)。

【図1】
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【公表番号】特表2009−545693(P2009−545693A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522209(P2009−522209)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057436
【国際公開番号】WO2008/015105
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(508206070)オーリコン レイボルド バキューム ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】