説明

真空支援型の経皮器具

導管と流体接続している多孔性の内スリーブを有する、挿入部位での因子の透過を低下させるための装置を提供する。真空または流体力学源が導管と流体接続している。装置は線維芽細胞の内殖によって安定化されており、細菌コロニー形成を阻害する。また、内腔および導管外表面を有する導管を備える装置を提供する。導管外表面は、場合により、線維芽細胞の接着を促進し、細菌の滞在を限定するためにナノテクスチャー加工されている。導管の内腔と流体連通しているスリーブが提供されており、これは、装置の挿入部位の周辺部からの流体の引き出しによって安定化を促進し、細菌コロニー形成を低下させるプロセスにおいて、それを通して真空または流体力学的な引き出しが達成される、孔マトリックスによって特徴付けられる物質から形成されている。スリーブは、場合により、遠位のナノテクスチャー加工した表面を有する。


【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が本明細書中に参照により援用されている2010年2月23日出願の米国仮特許出願第61/307,166号、2010年10月26日出願の第61/406,814号、および2010年12月3日出願の第61/419,491号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に経皮アクセスに関し、詳細には経皮アクセス部位での感染症を予防するためのプロセスおよび装置に関する。より詳細には、本発明は、細菌の内部移行(internalization)、他の感染性因子または他の所望しない物質がカテーテル、シュタインマンピン、キルシュナー鋼線、もしくは他の経皮機器のアクセス点に入ることを防止するためのプロセスおよび装置を提供する。
【背景技術】
【0003】
静脈内カテーテルは微生物の付着点として作用し、生物膜の形成、および、挿入部位でもしくは装置の表面に沿った感染症をもたらす。カテーテル受口(hub)の感染症およびカテーテル関連の血流感染症は、留置カテーテルを用いた患者における主要な合併症である(たとえば、SafdarおよびMaki、Intensive Care Med.、2004年1月、30(1):62〜7;Saintら、Infect Control Hosp Epidemiol.、2000年6月、21(6):375〜80)。
【0004】
カテーテル関連の感染症を制御するための以前の試みは、挿入部位に施用したまたはカテーテル自体に組み込まれた局所的または流体的な抗細菌剤などによる、滅菌技法に向けられている。エチルアルコール(エタノール)および他のアルコールの抗微生物活性は周知である。60〜70%の濃度のイソプロピルアルコールは、表面および皮膚を衛生化するための抗微生物剤として幅広く使用されている。10%の濃度のエチルアルコールはほとんどの微生物の成長を阻害する一方で、40%以上の濃度は一般に殺菌性であるとみなされる(Sissonsら、Archives of Oral Biology、第41巻、第1号、JN 1996、27〜34)。
【0005】
カテーテル挿入は、ドレナージまたは送達のために、数秒間の短い間、その場に保つことができる。しかし、末梢穿刺中心静脈カテーテル(PICC)、骨ガイドワイヤー(skeletal guide wires)、心臓補助装置ライン、または他の機器などの経皮アクセスのために、数週間または数カ月の間、その場に保つことがますます一般的である。そのような装置が皮膚を通して維持される時間の増加は、機器関連の感染症の可能性を増加させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】SafdarおよびMaki、Intensive Care Med.、2004年1月、30(1):62〜7
【非特許文献2】Saintら、Infect Control Hosp Epidemiol.、2000年6月、21(6):375〜80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、経皮機器に関連する感染症の可能性を予防するまたは低下させるためのプロセスおよび装置の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
導管と流体接続している多孔性の内スリーブが含まれる、挿入部位での因子の透過を低下させるための装置を提供する。真空または流体力学源は導管と流体接続して、対象組織から内スリーブを通って導管までの流体を引き出す。導管は、内腔および導管外表面を有するように容易に形成されており、導管外表面は場合によりナノテクスチャー加工されている。導管の内腔は医療器具を収容するように適応されている。導管と流体連通しているスリーブは、真空または流体力学的な引き出し(draw)条件下で崩壊することなしに、それを通して真空または流体力学的な引き出しが達成される、孔マトリックスによって特徴付けられる物質から容易に形成される。
【0009】
対象組織中の経皮挿入部位で埋め込み装置を安定化させるプロセスには、前述の装置を皮下に挿入するステップと、挿入部位でスリーブ及び導管を通して前記対象組織に対して真空を引き、または前記挿入部位から前記導管を通して流体を引き、線維芽細胞を前記スリーブ内および上に引き出して、前記埋め込み装置を安定化させるステップとが含まれる。
【0010】
経皮アクセス装置と接続しているガスケット、およびガスケットに取り付けられた帯具を備えることで、経皮挿入部位の周りに気密シール(pressure−tight seal)を形成する、対象組織中の経皮挿入部位で因子の透過を低下させるためのキットを提供する。経皮アクセス装置と接続している導管は、帯具および挿入部位を取り囲む対象組織と流体連通している。導管に対する真空または流体力学的な引き出しは、対象組織中の経皮挿入部位での因子の透過を低下させる役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、視覚的な明確さのために外観の相対寸法を誇張した本発明の装置の断面図である。
【図2】図2は、皮膚貫通の保護のために内スリーブを覆う外スリーブを示す、視覚的な明確さのために外観の相対寸法を誇張した本発明の装置の断面図である。
【図3】図3は、皮膚表面で終端する外スリーブを示す、視覚的な明確さのために外観の相対寸法を誇張した本発明の装置の断面図である。
【図4】図4は、皮膚の外表面に対して圧力シールをもたらす帯具を用いた、本発明の装置の斜視図である。
【図5】図5は、拡張可能な外スリーブを有する、視覚的な明確さのために外観の相対寸法を誇張した本発明の装置の斜視図である。
【図6】図6は、ガスケットおよび帯具を用いて皮膚の外表面に対して形成した圧力シールを示す、視覚的な明確さのために外観の相対寸法を誇張した断面図である。
【図7A】図7Aは、皮膚の外表面に対するスライド可能な気密シールを形成するシリコン継ぎ環(silicon collar)およびプラスチック基部を示す、視覚的な明確さのために外観の相対寸法を誇張した本発明の装置の断面図である。
【図7B】図7Bは、皮膚の外表面に対するスライド可能な気密シールを形成するシリコン継ぎ環およびプラスチック基部を示す、視覚的な明確さのために外観の相対寸法を誇張した本発明の装置の断面図である。
【図8A】図8Aは、フランジ内スリーブおよび任意のオープンセル埋め込み適合型ベロアカフ(velour cuff)を示す、視覚的な明確さのために外観の相対寸法を誇張した本発明の装置の経皮構成要素の透視断面図である。
【図8B】図8Bは図8Aの分解組立図である。
【図9】図9は、視覚的な明確さのために外観の相対寸法を誇張した、本発明のフランジ装置の部分切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の好ましい実施形態の説明は単に例示的な性質のものであり、いかなる様式でも、当然ながら変動し得る本発明の範囲、その応用、または使用を限定することを意図しない。本発明は、それ中に含まれている非限定的な定義および専門用語に関連して記載される。これらの定義および専門用語は、本発明の範囲または実施の限定として機能するように設計されておらず、例示的および説明的な目的でのみ提示されている。本発明の装置は、一般にカテーテルに関して本明細書中に開示されているが、これは本発明の限定であることを意味するわけではない。対象の皮膚を貫通する任意のチューブ、機器、ワイヤー、物質またはアセンブリが、本発明の装置と共にまたはそれと一体化して使用するために同様に作動可能である。
【0013】
本発明は、経皮機器関連の感染症の可能性を低下させるための装置としての有用性を有する。
【0014】
本発明の装置は、経皮機器と共に使用することを意図する。皮膚を横断することを意図する任意の機器が、本発明の装置で作動可能である。装置は、場合により、経皮アクセス装置、例示的にはPICC、カニューレ、もしくは他のカテーテル、またはピン、例示的にはシュタインマンピン、キルシュナー鋼線、および皮膚に入り込む他の装置もしくは機器と共に使用する。装置は、膀胱または他のカテーテル挿入機器と共にも同様に作動可能であることが理解されよう。
【0015】
本発明の装置は、因子の存在による透過または合併症を減少させるか、または予防する。本明細書中で使用する「因子」とは、例示的には、細菌、ウイルス、真菌、他の生物などの感染性因子、または外来物質である。外来物質の例示的な例には、帯具、土壌、水、唾液、尿、もしくは他の流体、糞便、化学物質、または当技術分野で知られている他の物質が含まれる。透過が予防されるまたは合併症を生じる感染性因子の例示的な例には、緑膿菌(P.aeruginosa)、エンテロバクター・クロアカ(E.cloacae)、大便連鎖球菌(E.faecalis)、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)または他の感染性因子が含まれる。
【0016】
本発明の装置は、場合により対象の表皮上で使用する。本明細書中で使用する用語「対象」とは、ヒトまたは非ヒト動物、場合により、ヒト;ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、鳥類およびげっ歯類などの非霊長類を含めた哺乳動物、ならびにサル、チンパンジー、および遠人類などの非ヒト霊長類、ならびにヒト(具体的に「ヒト対象」としても表示する)を言う。
【0017】
本発明の装置は、例示として、経皮機器−組織の界面に沿った流体の集まりまたは流れに対抗する力を提供することによって作動する。流体は、しばしば挿入の直後に開始されて経皮機器を取り囲む空間中で発生することが一般的である。この流体の存在により、通常は無傷の皮膚によって皮膚より下の領域へと排除される因子の遊走、流れ、または他の浸透が生じる。これらの因子による透過は、感染性疾患、挿入部位での炎症、または他の所望しない合併症の発生をもたらし得る。
【0018】
本明細書中で使用する「挿入部位」とは、医療器具を配置するための皮膚または他の組織の意図的な妨害(interruption)として定義される。
【0019】
例示として、力は真空である。真空は、例示的には、流体が組織と包埋したカテーテルまたは他の機器との間の界面に沿って移動することを防止する。真空の陰圧は、生体物質の自然圧力または他の大気圧が、所望しない物質を挿入部位で、またはそれより下の領域から遠ざけることを可能にする。
【0020】
本発明の装置は、1つまたは複数のスリーブを備える。スリーブは場合により内スリーブまたは外スリーブである。本明細書中で使用する用語「内」および「外」とは、相対寸法を包含する観点からの相対的な用語であり、表皮に対する位置決めに関する文脈の中で解釈されるべきでない。内スリーブは、流体または気体が任意に透過する多孔性物質または足場から場合により作製される。足場とは、任意選択で、細胞の付着、例示的には内スリーブの表面への線維芽細胞の付着を可能にするか、または促進する組織足場である。内スリーブは場合により処理されている。内スリーブの処理には、例示的には、線維芽細胞または他の細胞物質の付着を促進する化合物または表面テクスチャーが含まれる。場合により、内スリーブは織布から作製される。織布は、場合により、細胞、流体、気体(gas)、または他の物質を透過可能である。
【0021】
内スリーブは、場合により、装置中に存在する唯一のスリーブであることが理解される。内スリーブは、場合により、当該スリーブを通じて流体または気体を周辺環境から遠ざけるのに適した多孔性足場である。内スリーブとして使用するために作動可能な物質には、例示的には、コラーゲン、PEBAX、ナイロン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレン(HDPE、UHWPE、LDPE、もしくは前述のポリエチレンの任意の混合物)、PET、NiTi、MYLAR、ニッケルチタン合金、他の熱可塑性ポリマーなどの他のポリマー、布、シリコンゴムなどのシリコン、ラテックス、ガラス、または当技術分野で知られている他の物質が含まれる。架橋結合の密度の勾配をその物質を通じて有するポリマー物質が、真空または流体力学的な引き出しおよび線維芽細胞の浸潤の促進に関して特定の利点を与えることが理解される。例として、遠位表面と比較して装置の中心軸の近位でより高い強剛性を有するポリマーは、圧力差に誘導される崩壊を阻止する。ある実施形態では、内スリーブは化学的に不活性な物質から作製される。ある実施形態では、多孔性足場は、対象の皮膚と直接接触しているか、または対象の皮膚を横断する。ある実施形態では、内スリーブは、線維芽細胞の付着部位を提供するような態様でテクスチャー加工または織り加工されている。テクスチャーは、場合により、ナノテクスチャーである。例示的なナノテクスチャーは、線維芽細胞の偽足伸長のアンカー・ポイントを提供する一方で、細菌コロニー形成が不都合な寸法を有するように、均一に500ナノメートル未満である孔径を有する。本明細書中で使用するナノテクスチャー加工した表面は、50〜500ナノメートルの中央値寸法の圧痕を特徴とする。ある実施形態では、圧痕は100〜300ナノメートルの中央値寸法を有する。
【0022】
ある実施形態では、テクスチャーは足場の形態である。足場は、例示的には金から形成される。金の足場は、場合により、スリーブを金/銀の合金から作製し、これを鉱酸などの酸に浸し、それによって銀を選択的に溶かして、適切な空隙率を有する金の構造を残すことによって形成する。あるいは、足場は、ポリカーボネートなどのポリマーメルト中に分散されている銀またはシリカなどの酸エッチング可能な生体適合性のナノ結晶から形成されており、首部(neck)がそれから直接形成されているか、またはナノ結晶をドープしたポリマーが首部の基質上にコーティングされている。ナノ結晶をドープしたポリマーを酸または塩基の溶液に供することで、ナノ結晶の溶解度に応じて、元のナノ結晶ドーパントを反映して空隙がポリマー中に形成される。たとえば、銀は6Nの塩酸に容易に溶解する一方で、シリカは濃フッ化水素酸に溶解する。プロセスを促進するために超音波処理の存在下での溶解が好ましい。具体的なナノ結晶寸法に応じて、1〜10重量パーセントのナノ結晶の充填が、孔の所望の均一性および密度を達成するために十分である。他の多孔性表面および製造方法は、そのそれぞれがその全体で本明細書中に参照により援用されている、米国特許第7,704,225号およびそれ中に引用されている参考文献中に例示されている。
【0023】
内スリーブは、場合により、第1の化合物でコーティングまたは含浸されていることが理解される。コーティングまたは含浸は、場合により、機器の皮膚内への挿入を容易にするための潤滑を提供する。化合物は、場合により、その内容が本明細書中に参照により援用されているWO2008/060380号に記載されているものなどの抗菌剤であるか;細胞接着に抵抗するもしくはそれを促進するか;抗凝固剤もしくは凝血促進剤であるか;または他の望ましい化合物である。
【0024】
化合物には、場合により、線維芽細胞の成長を選択的に促進するおよび/または細菌もしくは他の汚染物質の付着を減少させるために作動可能な因子が含まれる。化合物は、線維芽細胞などの細胞の成長を場合により促進する。コーティングには、場合により、線維芽細胞成長因子(FBF)化合物が含まれる。場合により、FBFは、インスリンおよび/またはデキサメタゾンと共にコーティングに使用される。デキサメタゾンおよび/またはインスリンの存在は、スリーブの表面上またはその孔内での線維芽細胞の複数層の成長を促進する。
コーティング物質には、例示的には、そのそれぞれが本明細書中に参照により援用されている、米国特許第5,874,500号、第6,056,970号、および第6,656,496号、ならびにNormanら、Tissue Eng. 3/2005、11(3〜4)375〜386頁に詳述されているように、細胞成長足場材料マトリックスが含まれる。例示的なコーティングは、組織足場材料、ポリ−pキシリレン、パリレンおよびそのようなコーティングの化学修飾されたタイプであり、挿入後の安定化を増強させる。化学修飾には、例示的には、フィブロネクチンおよび治癒プロセスに関連づけられている他の分子の結合が含まれる。組織足場材料およびポリマーは塗布、浸漬コーティングおよび噴霧によって容易に施用される一方で、ポリマーコーティングは化学蒸着(CVD)などの気相蒸着技術によっても容易に施用されることが理解される。コーティングは、毛細管現象(capillary draw)を増強させるために、場合により多孔性である。ある実施形態では、コーティングは生分解性である。コーティングは、場合により、典型的には10〜500ミクロンの平均サイズ、場合により、30〜50ミクロンの平均サイズの孔を有する。
【0025】
本発明の装置は、場合により、外スリーブを備える。外スリーブは、真空引き出し圧力(vacuum draw pressure)を内スリーブから隔離するまたはそれに届ける役割を果たす。外スリーブは、場合により、内スリーブを円周方向に及び縦方向に覆う。この立体配置は、場合により、挿入時に内スリーブを表皮細菌または他の因子から保護する。
【0026】
外スリーブは、一端または両端において場合により先細りになっている。遠位末端(使用中にカテーテルの内部末端に一番近い末端)での先細りは、機器を対象の皮膚内に挿入することの改良を提供する。先細りは、外スリーブの遠位末端でカテーテルとの円滑な相互作用を形成し得るか、または、場合により、カテーテルとの相互作用する装置の部位もしくはその近傍に突起部(ridge)が存在する。
【0027】
外スリーブは、場合により、経皮機器と共に使用するために適した任意の物質から作製されている。外スリーブで作動可能な例示的な物質には、記憶型または自己拡張性の物質が含まれる。外スリーブとして使用するために作動可能な物質には、例示的には、PEBAX、ナイロン、ポリウレタン、ポリエチレン(HDPE、UHWPE、LDPE、もしくは前述のポリエチレンの任意の混合物)、PET、NiTi、MYLAR、ニッケルチタン合金、他の熱可塑性ポリマーなどの他のポリマー、布、シリコンゴムなどのシリコン、ラテックス、ガラス、または当技術分野で知られている他の物質が含まれる。外スリーブは、場合により、足場を備えるか、またはそれから形成される。外スリーブの足場は、場合により、内スリーブの足場と同じまたは異なる物質から作製されている。内スリーブで作動可能な足場は、同様に外スリーブで作動可能である。
【0028】
外スリーブは、場合により、拡張可能である。拡張可能な外スリーブは、場合により、物質の伸びによるもの、例示的にはアコーディオン式のまたは他の機構のような物質の展開によるもの、または外スリーブに拡張性もしくは圧縮性をもたらす物質である。
【0029】
外スリーブは、場合により、第2の化合物でコーティングまたは含浸されていることが理解される。第2の化合物は、場合により、第1の化合物と同じである。コーティングまたは含浸は、場合により、機器の皮膚内への挿入を容易にするための潤滑を提供する。化合物は、場合により、その内容が本明細書中に参照により援用されているWO2008/060380号に記載されているものなどの抗菌コーティングもしくは含浸物質、細胞接着に抵抗するもしくはそれを促進する化合物、抗凝固剤もしくは凝血促進剤、または他の望ましい化合物である。
【0030】
ある実施形態では、外スリーブはテクスチャー加工されている。テクスチャーは場合により、組織足場から形成される。外または内スリーブ上のテクスチャーは、場合により、均一または非均一である孔径、隆線(ridge)、陥没(depression)、圧痕(indentation)、または他のテクスチャーを有する。テクスチャーは、場合により、線維芽細胞の偽足伸長のアンカー・ポイントを提供する一方で、細菌コロニー形成が不都合な寸法を有するように、500ナノメートル未満の深さである。本明細書中で使用するナノテクスチャー加工した表面は、50〜500ナノメートルの中央値寸法の圧痕の均一分布を有する。ある実施形態では、圧痕は100〜300ナノメートルの中央値寸法を有する。
【0031】
ある実施形態では、外スリーブは内スリーブを取り囲む。外スリーブおよび内スリーブは、場合により、単一の物質部分から形成される。外スリーブは、場合により、内スリーブを取り囲む配向であり、場合により、内スリーブの周りをスライド可能に配置可能である。ある実施形態では、外スリーブは、本発明の機器を挿入する際に内スリーブを保護し、内スリーブに対して、例示的には、印または、場合により、表皮の上部に位置する他の領域まで位置が調節可能である。ある実施形態では、内スリーブは皮膚を横断したまま保たれる一方で、外スリーブは表皮の上部に配置されるか、または1つもしくは複数の所望の深さもしくはレベルまで貫通する。
【0032】
外スリーブは、場合により、装置を用いる際に、皮膚の外部または皮膚の表面付近に配置される。外スリーブは、場合により、内スリーブまたはその上部表面の内部または全体にわたって真空圧の均一な分布をもたらす上部チャンバを形成することが理解される。
【0033】
外スリーブは、場合により、継ぎ環(collar)内で終端するか、またはそれと一体化している。継ぎ環は、場合により、導管と流体接続している。ある実施形態では、継ぎ環は、外スリーブと比較して強剛性が増大した物質から作製されている。
【0034】
本発明の装置は、場合により、皮膚を横切って配置される前にカテーテルと結合可能であるように、別々のアセンブリまたは単一の部品として製造される。本発明の装置は、場合により、カテーテルまたは他の機器を受け入れるための溝(slot)を有するように形成されている。機器は、場合により、皮膚を通してカテーテルを挿入する前に、カテーテル上にスライド可能である。場合により、カテーテルは、カテーテルを同じ挿入位置に挿入した後に機器がカテーテル上にスライドされるように、本発明の機器のガイドとしての役割を果たす。機器の関与(engagement)は、因子が挿入点に進入することを予防するか、または既に挿入点の中もしくはその下にある因子を除去する。
【0035】
ある実施形態では、本発明の装置はカテーテルまたは他の経皮機器と一体化している。
【0036】
本発明の完全な機器は、ガスケット、導管、弁、および真空源を場合により備える。
【0037】
特定の理論に束縛されることを意図しないが、装置を挿入するための機能低下皮膚(compromised skin)と接触する本発明の装置の表面は、表面がテクスチャー加工されているか、コーティングされているか、またはそれらの組合せであるかにかかわらず、線維芽細胞の挿入を促進して、一度に複数層の線維芽細胞の、好ましくは装置に同時に固着している5層より多い線維芽細胞の、より好ましくは10層より多いそのような線維芽細胞の層の深さまでの、環状形態(circulatory form)から樹状および/または星状形態への線維芽細胞のオルソロジー変化(orthological changes)を同時に促進する。複数層の線維芽細胞のオルソロジーの同時変化は、本発明の経皮的装置を迅速に安定化させる役割を果たす。プロセス中の真空圧の引き出しと併せて、感染症の危険性は最小限化され、本発明の装置は、周辺の真皮層に対して、引き抜き(pullout)または装置の他の動きから安定化される。
【0038】
本発明の装置は、場合により、1つまたは複数のガスケットまたはシールを備える。シールは、真空圧が大気へと漏れること、または体液が機器の皮下末端から系内に引き出されることを防止する。ガスケットは、場合により、カテーテルの外周の周りにシールを作るために適した任意の物質から作製される。ガスケットは、例示的にはシリコンゴム、ラテックス、ナイロン、または他のポリマー物質から作製される。ガスケットは、場合により、外スリーブ、内スリーブ、帯具、または継ぎ環と連絡しているか、またはそれと一体化している。
【0039】
導管は、場合により、ガスケットを介してまたは直接接続のどちらかによって、内スリーブと流体接続している。導管は、場合により、本発明で使用する真空圧下で完全崩壊に耐える任意の物質から作製されている。
【0040】
導管は、場合により、弁によって横切断されている。弁は、内スリーブに伝えられる真空圧を与える、解放する、または調節するために作動可能である。弁は、場合により、機械的または電気的に制御されている。当技術分野で知られている任意の弁または弁システムが本発明で作動可能である。弁は、場合により、本発明の装置の導管と機器部分との間の接合部に位置する。
【0041】
本発明の装置は、場合により、真空源と連絡している。真空源は、装置内またはその周りに陰圧を作るために作動可能な任意の供給源であることができる。真空源は、場合により、真空チューブもしくはボトルなどの受動的真空、または能動的真空源、例示的には機械的ポンプ、シリンジ、もしくは他の真空源である。真空源は、場合により、連続的または断続的な陰圧を適用する。陰圧の規模は、場合により、調節可能、一定、または可変性である。ある実施形態では、断続的な真空を使用する。あるいは、流体を周辺組織からスリーブを通して導管を介して引き出す、流体力学的引き出し手段が提供される。流体力学的引き出し源には、例示的には、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミドコポリマー、エチレン無水マレイン酸コポリマー、架橋カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールコポリマー、架橋ポリエチレンオキシド、およびポリアクリロニトリルのデンプングラフトコポリマーなどの超吸収性ポリマー;水溶性塩などの高浸透圧組成物;ならびに乾燥シリカまたはセルロース物質などの他の乾燥親水性粉末等の毛細管流動引き出し剤(capillary flow draw agents)が含まれる。
【0042】
本発明の装置は、場合により、血液または他の流体の検出システムを備える。血液検出システムは、場合により、流体検出装置である。流体検出装置は、場合により、高すぎるレベルの流体が導管を通った場合、または他の態様で本発明の装置の内部もしくは周囲を通った場合に、本発明の装置を停止するか、または陰圧を低下させる。ある実施形態では、流体検出システムは、流量を一定または可変の速度で維持するために真空レベルを調節する。血液または他の体液が高すぎる速度で検出された場合、検出システムは、場合により、真空レベルを低下させて、流量の速度を低下させるか、または流量の種類を調節する。
【0043】
本発明の機器は、場合により、帯具を備える。帯具は、例示的には皮膚の表面上にシールを形成する。ある実施形態では、帯具は、内または外スリーブを取り囲む皮膚の表面上にチャンバを形成する。絶対に必要ではないが、チャンバは、カテーテルの外周の周りに真空圧を迅速かつ均一に適用することを可能にする。帯具は、場合により、ポリマー物質、布、または当技術分野で知られている他の物質である。
【0044】
ある実施形態では、本発明の装置は皮膚を貫通しない。帯具は、場合により、ガスケットと結合しているか、または、それ自体がカテーテルの周りのガスケットとして機能するように作動可能な物質から、それ自体が作製されている。帯具は、場合により、帯具の表皮側上において真空の陰圧下で完全に崩壊しないように、十分な強剛性を有する物質から作製されている。帯具は、場合により、外または内側の形状が環状である。この環状の形状は完全に任意である。三角形、四角形、楕円形、または多角形などの他の形状も同様に作動可能である。
【0045】
本発明の装置は、場合により、カテーテルまたは他の機器を取り囲む帯具であり、帯具は、弁または導管と流体連通している。帯具の表皮側に適用される陰圧は、場合により、帯具の外側の外周を表皮層に密着させるために十分な力のものである。真空の存在自体が、場合により、カテーテルの部位での、対象の皮膚内への、因子の動きを低下させるか、または排除するために十分である。
【0046】
帯具と接触させるために、任意選択の接着剤が帯具上または表皮上に存在する。接着剤は当技術分野で知られている物質である。場合により、帯具は機器と一体化している。
【0047】
ディフューザまたは他の多孔性物質が、場合により、カテーテルを取り囲み、場合により、表皮層上に静置されている。装置は、場合により、カテーテルを取り囲んで、真空が挿入点の周りに形成されることを可能にするために十分なシールを形成する接着剤によって、適切な位置に維持される。あるいは、真空自体が、機器の外周の周りまたは表皮とディフューザとの間に十分な密着(seal)を提供して、一方または両方の位置を保ち、かつ、カテーテルを取り囲む皮膚上に装置を引き寄せるために十分な圧力を提供する。
【0048】
ある実施形態では、いくつかの装置直径が作動可能である。本発明の装置は、場合により、内径および外径を有する。装置の内径は、場合により、経皮機器の直径と関連している。より大きな経皮機器は、一般に、より大きな装置内径を必要とする。あるいは、広範囲のカテーテルの直径または形状を装置で使用することを可能にする、単一の内径の装置を、取り外し可能および交換可能なガスケットまたはシールを用いて生成する。
【0049】
ある実施形態では、機器は再利用可能である。本発明の装置は、場合により、オートクレーブ可能または他の様式で滅菌可能である。
【0050】
また、カテーテル関連の感染症を低下させるかまたは排除するシステムも提供する。システムには、例示的には、複数の本発明の装置が含まれる。複数の装置は、場合により、単一の真空源または複数の真空源と連結される。複数の真空源は、場合により、カテーテル挿入の1つまたは複数の部位での真空圧を増加または減少させるために、相互接続しているか、または他の様式で同時にもしくは個々に調節可能である。
【0051】
また、経皮挿入点での感染症を低下、予防、逆転、処置、または排除するプロセスも提供する。本発明のプロセスには、例示的には、カテーテルの外周または他の経皮機器の周りに真空圧を適用することが含まれる。真空圧は、流体が皮下層から遠ざかることを引き起こして、感染性因子が皮下層に進入することを防止するか、またはカテーテル関連の感染症の処置中にさらなる感染性因子が領域中に進入することを防止する。
【0052】
本発明の装置を概して図1中の10に示し、導管16の内腔(bore)14と流体連通しているスリーブ12を示す。スリーブ12は、内スリーブに関して上記で詳述した物質から形成されており、導管16の穿孔された外表面20に隣接する多孔性マトリックス18によって特徴付けられる。作動中、多孔性マトリックス18は、22に集合的に示されている真空または流体力学的な引き出し源(draw source)によって生み出される強力な真空または流体力学の力を受ける。適切な平均孔直径は、典型的には の間である。マトリックス18は、作動要件として、引き出し圧力下で崩壊を防止するために十分な強剛性を有しており、それによりマトリックスを通る真空または流体力を維持する。高度に架橋したポリマー物質、コラーゲン、多孔性セラミックまたは金属物質が、マトリックス18を形成するために特に良好に適している。マトリックス18は真空引き出しを促進すると理解され、このような大きな孔は、細菌および線維芽細胞がどちらも容易にそのような孔を浸潤するような大きさである。特定の理論に束縛されることは意図しないが、マトリックス18内の有害な因子は、導管の内腔14内に能動的に引き出されるか、または、生物学的増殖が可能な場合は、供給源22によって導管の内腔14上に発揮される力によって増殖が阻害されると考えられる。スリーブ12の遠位表面24は、上記詳述したように線維芽細胞の偽足伸長の接着を促進する一方で細菌コロニー形成を阻止するために十分小さい、任意選択のナノテクスチャー25を有する。表面24は供給源22から限定的な引き出しを受けることが理解される。場合により、マトリックス18と表面24との間に中間マトリックス26を提供する。マトリックス26は、好ましくはマトリックス18と比較してより小さな孔径を有しており、この属性が、単独でまたは低下した架橋密度と組み合わされて、この領域中で供給源22によって生み出される引き出し力を、マトリックス18で受けるものと比較して、低下させる。あるいは、マトリックス26は、マトリックス18と比較して同様の孔径分布、マトリックス18と比較してより大きな孔直径、またはマトリックス26の厚さの関数としての段階的な(graded)孔寸法を有する。マトリックス26は、マトリックス18と同じ埋め込み適合の物質または別の埋め込み適合の物質から形成される。スリーブの多孔性(porosity)をより良く示すために、図1の右側は、マトリックス18の孔と流体連通しているマトリックス26の単一の孔のみを示す。マトリックス26を通った真空引き出しに関連するより高い度合の孔崩壊は、耐容されるだけでなく、装置10の迅速な安定化を促進すると考えられる。したがって、マトリックス18に適用される真空または浸透圧の強さを変動させ、時間の関数としてマトリックス26を伸長させることによる、供給源の引き出しのプログラムが場合により提供される。任意選択的なマトリックス26中の孔径は、循環線維芽細胞がマトリックス26に浸潤することを可能にするサイズのものであり、それにより、線維芽細胞の相互接続したネットワークの形成ならびに組織の肉芽に必要な他の細胞および化合物を通して治癒プロセスが開始される。マトリックス26中の孔の典型的な断面寸法は、3〜50個の循環線維芽細胞の直径である。さらに、線維芽細胞によるマトリックス26への浸潤は、非多孔性表面の埋め込み中で見られる線維芽細胞の単層からマトリックス26の厚さに対応する領域にかけての、装置の安定化を寸法的に拡大するために、作用することが理解される。当業者は、供給源22からの真空または浸透圧の引き出しの強さが容易に調節できるるので、任意選択的なマトリックス26内への浸潤を促進して安定化を加速できることを理解する。また、因子の阻害および線維芽細胞の浸潤の促進に加えて、供給源22を介した引き出し力の適用が、装置10を取り囲む体組織Tを装置10と接触する固定位置に接着させて、その間に安定な界面を形成させる組織スケールの機能を果たすことが理解される。生じる界面は、慣用の縫合糸または接着性帯具と比較して、肉芽形成プロセスにおいて優れている。ナノテクスチャー加工した表面24を有するマトリックス18およびマトリックス26は、一体化しているか、あるいは内および外スリーブに関して上記詳述したように連続した別々の層として形成されていることが理解される。コーティング物質27は場合により表面24の上をコーティングし、コーティング物質には、例示的には、以下にさらに詳述するように細胞移入足場材料(cellular ingress scaffolding)が含まれる。コーティング物質は、場合によりナノテクスチャー加工されている、組織接触表面29を有する。
【0053】
本発明の装置は図2中で概して30でさらに詳述されており、同様の数字は前述の図および明細書の文章に関してそれに与えられた意味に対応する。装置30はカニューレ34として示される中心となる(central)医療器具を有しており、これは、医療器具34と対象の静脈Vとの間に流体連通を提供する脈絡で示されている。医療器具34には、例示的には、カテーテル、カニューレ、ピン、もしくはワイヤー、またはシュタインマンピンおよびキルシュナー鋼線を含む、それらの具体的な型を有する他の経皮機器が含まれる。装置30は、それぞれE、D、およびSとして示される表皮、真皮、および皮下の層を通る経皮的なものである。装置30は、寸法が異なることを例外として図1に関して詳述したスリーブ12に対応する、内スリーブ12aを有する。内スリーブ12aは、真空または流体力学的な引き出し源22と流体連通している多孔性マトリックス18を有する。マトリックス18と表面24との間の中間に、マトリックス26が場合により存在する。好ましくは、コーティング物質27が表面24を覆う。外スリーブ33は真空シール36で医療器具34を嵌め込み、導管38を介して真空または流体力学的な引き出し源22と流体連通を形成する。装置30の外スリーブ33は、図2中では内スリーブ12aを完全に包む外スリーブ33として示されており、装置30を配置することによって作られた創傷に皮膚細菌が感染することを予防するための導入器(introducer)として役割を果たす。図2中に示すように配置した後、外スリーブ33を、器具34および内スリーブ12aに対して、好ましくは表皮Eのすぐ上の位置まで後退させて、それにより、供給源22が、次いで、曝露された表面24および任意選択的なコーティング27の暴露された表面を通じて、周辺組織および引き出しを生み出した供給源22へと流体を引き出すことが可能となる。図2中に示した属性の相対寸法は、視覚的な明確さのために変形されていることが理解される。
【0054】
本発明の装置は図3中に概して40で示されており、同様の数字は前述の図中でそれに帰せられた意味に対応する。装置40は、外スリーブ44が内スリーブ12aの直線状の伸長の全部(full linear extent)まで伸長するように形成されているのではなく、その代わりに表皮Eに対して挿入の停止を形成することだけが、図2中に示したものと異なる。
【0055】
図4は本発明の装置50の透視部分断面図であり、同様の数字は前述の図中でそれに帰せられた意味を有する。経皮的医療器具34は、導管56と医療器具34との間の36に真空シールまたはガスケットを有する。導管56は、寸法以外はスリーブ12および12aと同じである内スリーブ12bと流体連通している。内スリーブ12bは、場合により、それ上のマトリックス26、コーティング物質27、またはそれらの組合せを備えることが理解される。導管56による内スリーブ12bの真空または流体力学的な引き出しは、57で示される、多孔性の内スリーブ12bの領域57で真空引き出しが排除されることを必要とする。内スリーブ12bの皮下部分と比較して領域57を通った優先的な真空引き出しは、気密性の帯具(gas‐tight bandage)59と表皮Eの外表面との接着によって達成される。帯具59は、外スリーブ54の代わりに、またはそれと組み合わせて使用され、供給源22と内スリーブ12bの皮下部分との間に流体連通を達成するために、導管56との気密シールを形成することが理解される。場合により、オープンセル泡沫物質を構成するディフューザまたは織布51が、表皮Eの外表面と帯具59との中間に位置して、それを通る真空引き出しを緩和させる。
【0056】
本発明の装置は図5中に概して50’で示されており、それ中で使用した同様の数字は前述の図に関してそれに帰せられた意味を有する。装置50’は、外スリーブ54’の直線状の伸長を変動させる機序を提供する拡張された蛇腹様の構造を有する外側の鞘(outer sheath)54’を除けば、装置50のすべての属性を有する。導管56は、外スリーブ54’と一緒に、器具34に対してスライド可能であるように容易に構築されていることが理解される。
【0057】
図6は、概して60で示される本発明の装置の断面図であり、同様の数字は前述の図に関してそれに帰せられた意味を有する。内スリーブ12bは、器具34の周りに、表皮Eの外層と接触するガスケットまたはシール36を有する。環形態のディフューザがガスケットを取り囲んでおり、帯具59を介して外部空気が供給源22へと引き出されることに対して密着されている。供給源22による、対象組織、任意選択的なコーティング26および内スリーブ12bを介し、ディフューザ51を通った真空引き出しが示される。
【0058】
本発明の装置は、様々なサイズのガスケット、帯具、およびディフューザを有するキットの形態で容易に提供されて、本発明の装置を取り囲む皮膚との間に、内スリーブを通って供給源22までの真空引き出しの連絡が生じるように、皮膚に密着したシールを提供する。図7Aおよび7Bは、それぞれ、概して、70および80で本発明の装置を示し、同様の数字は前述の図に関してそれに帰せられた意味に対応する。シリコンなどの物質から形成される継ぎ環72または82は、継ぎ環が医療器具34の長さに沿ってスライドすることを可能にする環状分割(annular split)を有しており、好ましくは表皮Eの表面から離れている。プラスチック基部74または84は、帯具59が継ぎ環72または82に容易に固定および密着されるように外に向かって伸長する。
【0059】
図8Aおよび8Bは、視覚的な明確さのために外観の相対寸法を誇張した本発明の装置の経皮構成要素を示し、同様の数字は前述の図に関してそれに帰せられた意味を有する。フランジ内スリーブ12cは内スリーブ12、12a、および12cと同じ属性を有しており、形状のみがそれらと異なる。内スリーブ12cは上記詳述した物質から形成されており、真空源22と流体連通している大きく強固な孔マトリックス18によって特徴付けられている。スリーブ12cは、線維芽細胞の接着を促進するために場合により、ナノテクスチャー加工されている表面24を有する。表面24は、前述のスリーブ12、12a、または12bのうちの任意のものの表面と同様、場合により、装飾され、曲線状の(contoured)細胞運搬チャネル82のパターンを有する。チャネルは様々な形態をとることができることが理解される。作動装置は、表面24の円周を装飾するチャネル82のパターンを典型的には有することが理解される。本明細書中で作動可能なチャネルパターンには、細菌ポケットの形成を不利にする任意のパターンが含まれる。チャネル82は、スリーブ12cへの押印、エンボス加工、鋳造または機械加工などの方法によって形成される。好ましくは、スリーブ12cはナノテクスチャー加工されており、チャネル82で装飾されている。本発明によるチャネル82は、好ましくは線維芽細胞の直径の2〜10倍の桁の寸法を有し、線維芽細胞は10〜15ミクロンの直径を有するため、これは、20〜300ミクロンに相当する。より好ましくは、チャネル82は30〜120ミクロンの幅を有する。最も好ましくは、チャネル82は、細胞の平坦化および接着を不利にする切れ目および鋭角を欠く。放物線断面は、線維芽細胞の成長を促進するチャネルの例である。好ましくは、チャネル82と表面24の隣接領域との間の遷移は、細胞の平坦化および接着を不利にする切れ目および鋭角を欠く。内スリーブ12bは、場合により、それ上のマトリックス26、コーティング物質27、またはそれらの組合せを備えることが理解される。物質27の組織接触表面29は、場合により、ナノテクスチャー加工されている。ベロア84は、場合により、スリーブ12cの一部分を包含する。ベロア84は、例示的には、DACRON(登録商標)から、または移植可能なポリマー物質から形成される。また、ベロア84は場合により、生分解性でもある。
【0060】
図9は、本発明の装置を概して100で示しており、同様の数字は前述の図に関してそれに帰せられた意味に対応する。キャップ102はシリコン、ポリマーまたは金属などの物質から形成されており、くず片が装置100に入らないようにする役割を果たす。好ましくは、キャップ102は表皮Eの表面から離れている。カテーテルおよび真空または流体力学的な引き出し用チューブ104として示した医療器具34は、それぞれキャップ102中に形成された相補的な開口部106および108を通る。チューブ104は、真空または流体力学的な引き出し源22と、内スリーブ12、12a、12b、および12cと同じ属性を有しており、形状のみがそれらと異なる内スリーブ12dとの間の流体連通を提供する。内スリーブ12dは上記詳述した物質から形成されており、供給源22が組織液および線維芽細胞をスリーブ12d内に引き出すように、真空源22と流体連通している大きく強固な孔マトリックス18によって特徴付けられている。スリーブ12dは、線維芽細胞の接着を促進するために場合によりナノテクスチャー加工されている表面24を有する。表面24は、前述のスリーブ12、12a、または12bのうちの任意のものの表面と同様、場合により、装飾され、図8Aおよび8Bに示した曲線状の細胞運搬チャネルのパターンを有する。内スリーブ12dは、場合により、それ上のマトリックス26、コーティング物質27、またはそれらの組合せを備えることが理解される。コーティング27は表面24全体を覆う必要がないことが理解される。物質27の組織接触表面29は場合によりナノテクスチャー加工されている。フランジ112は、埋め込み装置100を皮下層S内で安定化させるために提供されている。フランジ112は当技術分野で慣用の物質から構築され、当技術分野で慣用の方法によって形成される。その例は、米国特許第4,634,422号、第4,668,222号、第5,059,186号、第5,120,313号、第5,250,025号、第5,814,058号、第5,997,524号、および第6,503,228号に詳述されているものである。
【0061】
本明細書中に示し記載したものに加えて、本発明の様々な改変が、上記説明の技術分野の当業者に明らかであろう。また、そのような改変も、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図する。
【0062】
明細書中で言及した特許および出版物は、本発明が関連する技術分野の当業者のレベルの指標である。これらの特許および出版物は、それぞれの個々の出願または出版物が具体的かつ個々に本明細書中に参照により援用されている場合と同程度に、本明細書中に参照により援用される。
【0063】
前述の説明は、本発明の特定の実施形態の例示的なものであるが、その実施の際に限定となることを意図しない。そのすべての均等物を含めた以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義することを意図する。
【符号の説明】
【0064】
10 装置
12 スリーブ
14 (導管の)内腔
16 導管
18 多孔性マトリックス
20 穿孔された外表面
22 真空または流体力学的な引き出し源
24 遠位表面
25 ナノテクスチャー
26 中間マトリックス
T 体組織
27 コーティング物質
29 組織接触表面
30 装置
34 カニューレ医療器具
V 静脈
E 表皮層
D 真皮層
S 皮下層
12a 内スリーブ
33 外スリーブ
36 真空シール
38 導管
40 装置
44 外スリーブ
50 装置
50’ 装置
56 導管
12b 内スリーブ
57 領域
59 気密帯具
54 外スリーブ
54’ 外スリーブ
51 オープンセル泡沫物質を構成するディフューザまたは織物
60 装置
26 コーティング
72 継ぎ環
82 継ぎ環
74 プラスチック基部
84 プラスチック基部
12c 内スリーブ
82 曲線状の細胞運搬チャネル
84 ベロア
100 装置
102 キャップ
104 チューブ
106 開口部
108 開口部
12d 内スリーブ
112 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管と流体接続している多孔性の内スリーブと、
前記導管と流体接続している真空または流体力学源と
を備える、対象組織中の挿入部位での、因子の透過の低下用装置。
【請求項2】
前記内スリーブを少なくとも部分的に取り囲む外スリーブをさらに備え、前記内スリーブが前記外スリーブを通って前記導管と流体接続している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記外スリーブが前記内スリーブを移動可能に取り囲んでいる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記内スリーブまたは外スリーブが、線維芽細胞の付着を促すように処理されているかまたは成形されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記線維芽細胞の付着により、前記内スリーブまたは前記外スリーブが前記挿入部位中に固着される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記内スリーブまたは前記外スリーブが多孔性である、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記内スリーブまたは前記外スリーブがコーティング物質をさらに含む、請求項2から5に記載の装置。
【請求項8】
前記内スリーブまたは前記外スリーブがコーティング化合物をさらに含み、前記化合物が、場合により、成長因子、細胞外基質因子、線維芽細胞受容体、フィブロネクチン、ラミネクチン(laminectin)、RGD因子、デキサメタゾン、またはそれらの組合せである、請求項2から5に記載の装置。
【請求項9】
前記内スリーブが医療器具を取り囲んでいる、請求項1から5に記載の装置。
【請求項10】
流体、生物学的、または化学的な検出装置をさらに備える、請求項1から5に記載の装置。
【請求項11】
帯具をさらに備える請求項1から5に記載の装置。
【請求項12】
内腔および導管外表面を有する導管(前記導管外表面は場合によりナノテクスチャー加工されている)と、
前記導管の前記内腔または前記導管外表面と流体連通しているスリーブであって、それを通して真空または流体力学的な引き出しが達成される孔マトリックスによって特徴付けられる物質から形成され、遠位のナノテクスチャー加工された表面を場合により有するスリーブと
を備える、挿入部位での、因子の透過の低下用装置。
【請求項13】
前記孔マトリックスと前記表面との間に、前記孔マトリックスと比較して小さな孔径を有する中間マトリックスをさらに備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記孔マトリックスが、前記中間マトリックスと連結して前記スリーブを形成する連続的な部品である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記孔マトリックスが、前記中間マトリックスと一体化して一体式のスリーブを形成する、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記中間マトリックスが、3〜50個の遊走線維芽細胞の直径の孔径を有する、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記スリーブに足場が含まれる、請求項12から16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
前記スリーブがコーティング化合物をさらに含み、前記化合物が、場合により、成長因子、細胞外基質因子、線維芽細胞受容体、フィブロネクチン、ラミネクチン(laminectin)、RGD因子、デキサメタゾン、またはそれらの組合せである、請求項12から16のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記スリーブが医療器具を取り囲んでいる、請求項12から16に記載の装置。
【請求項20】
流体検出装置をさらに備える、請求項12から16のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記孔マトリックスおよび前記中間マトリックスが、機械的、幾何学的、架橋、または生物学的な特性のうちの少なくとも1つの特性に関して不均質である、請求項13に記載の装置。
【請求項22】
対象組織中の埋め込み装置を安定化させる方法であって、
内腔および導管外表面を有する導管(前記導管外表面は場合によりナノテクスチャー加工されている)と、前記導管の前記内腔または前記導管外表面と流体連絡しているスリーブであって、それを通して真空または流体力学的な引き出しが達成される孔マトリックスによって特徴付けられる物質から形成され、遠位のナノテクスチャー加工された表面を場合により有するスリーブとを備える装置を提供するステップと、
前記スリーブおよび前記導管を通して対象組織中の前記挿入部位で前記対象組織に対して真空を引く、または前記導管を通して前記挿入部位から流体を引き、線維芽細胞を前記スリーブ内および上に引き出して、前記埋め込み装置を安定化させるステップと
を含む、方法。
【請求項23】
線維芽細胞を、前記ナノテクスチャー加工した、ナノ細孔を有する表面に付着させるステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記真空または流体の引き出しを、チャネル、テクスチャー加工および/または多孔性の覆いを有する、前記表面に沿ってマニホールドで集配する(manifolding)ステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記表面を足場、コラーゲン、化合物、またはそれらの組合せでコーティングするステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記コーティングステップが、機械的、幾何学的または生物学的な特性のうちの少なくとも1つが異なる別々の層または勾配を作る、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記引き出しステップが、前記真空または前記流体の引き出しによって前記装置に対して保たれる前記挿入部位を規定する組織を保持する、請求項22から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記引き出しステップが生体液および/または汚染微生物を挿入点から前記導管内へと運搬する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記引き出しステップが、前記装置と前記組織との間に適合したネットワークを作る、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
経皮アクセス装置と密着可能に連絡可能なガスケットと、
前記ガスケットに取り付けられた帯具と、
前記帯具および前記経皮挿入部位を取り囲む前記対象組織と流体連通している導管と
を備える、対象組織中の挿入部位での、因子の透過の低下用キット。
【請求項31】
前記帯具に取り付けられたディフューザをさらに含む、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
経皮的医療器具を挿入するステップと、
経皮アクセス部位の周りの領域の周囲に真空圧を適用するステップと
を含む、対象組織中の経皮アクセス部位での感染症を低下させる方法。
【請求項33】
経皮的医療器具を挿入するステップと、
周辺の経皮アクセス部位の周辺部から流体を引き出すために流体力学的包帯(hydrodynamic dressing)を適用するステップと
を含む、対象組織中の経皮アクセス部位での感染症を低下させる方法。
【請求項34】
対象組織中の経皮挿入部位で埋め込み装置を安定化させる方法であって、
内腔および導管外表面を有する導管(前記導管外表面は場合によりナノテクスチャー加工されている)と、
前記導管の前記内腔または前記導管外表面と流体連通しているスリーブであって、それを通して真空または流体力学的な引き出しが達成される孔マトリックスによって特徴付けられる物質から形成され、遠位のナノテクスチャー加工された表面を場合により有しており、機械的、幾何学的、架橋、または生物学的な特性のうちの少なくとも1つの特性に関して不均質であるスリーブ、
とを含む装置を提供するステップと、
導管を通して前記挿入部位から真空または流体を引き、前記スリーブ内またはそれ上に線維芽細胞を引き出して、前記埋め込み装置を安定化させるステップと
を含む、方法。
【請求項35】
線維芽細胞を、前記ナノテクスチャー加工した、ナノ細孔を有する表面に付着させるステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記真空または流体の引き出しを、チャネル、テクスチャー加工および/または多孔性の覆いを有する、前記表面に沿ってマニホールドで集配するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
表面を足場、コラーゲン、化合物またはそれらの組合せでコーティングするステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記コーティングステップが、機械的、幾何学的または生物学的な特性のうちの少なくとも1つが異なる別々の層または勾配を作る、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記引き出しステップが、前記真空または前記流体の引き出しによって前記装置に対して保たれる前記挿入部位を規定する組織を保持する、請求項34から38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記引き出しステップが生体液および/または汚染微生物を挿入点から前記導管内へと運搬する、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記引き出しステップが、前記装置と前記組織との間に適合したネットワークを作る、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−520243(P2013−520243A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554107(P2012−554107)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2011/025958
【国際公開番号】WO2011/106454
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512216492)エル−ヴイエイディー テクノロジー インコーポレイティッド (1)
【氏名又は名称原語表記】L−VAD TECHNOLOGY,INC.
【住所又は居所原語表記】300 River Place,Suite 6850,Detroit,MI 48207 U.S.A.
【Fターム(参考)】