説明

真空断熱材内包構造体とその製造方法、真空断熱材内包風呂蓋

【課題】 簡単に製造でき、外観及び断熱性能に優れた真空断熱材内包構造体とその製造方法、真空断熱材内包風呂蓋の提供。
【解決手段】 真空断熱材の少なくとも一つの面に、熱可塑性樹脂発泡シートを重ね合わせ、これらを成形型のキャビティ内に収容して加熱し、前記熱可塑性樹脂発泡シートを二次発泡させて前記真空断熱材の表面の凹凸を埋めるとともに、前記熱可塑性樹脂発泡シートを前記真空断熱材に接着し、真空断熱材内包構造体を得ることを特徴とする真空断熱材内包構造体の製造方法。真空断熱材11と、該真空断熱材の少なくとも一つの面に接着され、かつ該真空断熱材表面の凹凸に沿って熱成形された熱可塑性樹脂発泡シート12とを有することを特徴とする真空断熱材内包構造体10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた断熱性を有し、また表面が平滑で外観の優れた真空断熱材内包構造体とその製造方法、真空断熱材内包風呂蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空断熱材を内包した構造体に関しては、例えば、特許文献1及び2に記載のものが提案されている。また風呂蓋に関しては、特許文献3及び4に記載の物が提案されている。
【0003】
特許文献1には、真空断熱部材を内包する断熱壁部材において、第1の板と、第1の板上に配設される断熱材よりなる第1の板状断熱材と、第1の板状断熱材上に配設される真空断熱部材と、真空断熱部材の上に配設される断熱材よりなる第2の板状断熱材と、第2の板状断熱材の上に配設される第2の板と、第1の板と第2の板との間の第1の板状断熱材、真空断熱部材、第2の板状断熱材で囲まれる部分を充填する発泡性プラスチックフォームとを備え、第1の板状断熱材と第2の板状断熱材の板厚は所定の厚さ寸法を有することを特徴とする断熱壁部材が開示されている。
【0004】
特許文献2には、無機または有機物質の微細粉末を通気性の中袋に充填し、当該中袋の開口部をシールして得られたもの、または、発泡プラスチックの板状成形物からなる骨材と、上記骨材の上下面にそれぞれ配置された骨材成形補強板と、上記骨材及び骨材成形補強板をその内部に収容する非通気性の外袋とを備え、上記外袋の内部を真空脱気し、かつ、当該外袋の開口部をシールしてなることを特徴とする真空断熱材が開示されている。
【0005】
特許文献3には、浴槽上に並列に配置される複数の平板形蓋板を有する風呂蓋であって、前記蓋板が、板状の内部剛性部材と、その内部剛性部材の外周全域に被覆された被覆部材とを備え、前記内部剛性部材が、硬質の合成樹脂発泡体からなる芯板と、その芯板の上下両面に積層され、かつ抗張性を有する抗張性シートとを具備し、前記被覆部材が、軟質の合成樹脂発泡体により構成されてなることを特徴とする風呂蓋が開示されている。
【0006】
特許文献4には、蓋本体の周縁部にエッジプロテクターが設けられたエッジプロテクター付き風呂蓋において、前記エッジプロテクターの上面に1ないし複数の排水用切欠凹陥部が設けられていることを特徴とするエッジプロテクター付き風呂蓋が開示されている。
【特許文献1】特開2000−356296号公報
【特許文献2】特開平8−178176号公報
【特許文献3】特開2003−225173号公報
【特許文献4】特開2004−33601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来技術には、次のような問題があった。
特許文献1に記載された断熱壁部材は、発泡性プラスチックフォームを充填して真空断熱部材周囲の空間を埋めなければならないが、空間の隅々まで発泡性プラスチックフォームを充填することは困難であり、充填不良が生じ易く、真空断熱部材のがたつきや断熱性能の低下をまねくおそれがある。また、製造工程が煩雑となり、製造に時間と手間を要することから、製造コストが上昇する問題がある。
【0008】
特許文献2に記載された真空断熱材は、成形型内に発泡粒子と真空断熱材を入れ、これを型内発泡成形して真空断熱材の周囲に補強層を形成するものなので、製造時に成形型内に発泡粒子と真空断熱材を充填する作業に手間と時間を要する問題がある。
【0009】
特許文献3に記載された風呂蓋は、風呂蓋内部が合成樹脂発泡体からなるものなので、高い断熱性能は期待できず、浴槽内の保温能力は乏しい。また、風呂蓋の表面となる被覆部材が軟質合成樹脂発泡体であるので、使用中にこの被覆部材が吸水し、水垢汚れやカビが発生し易い問題がある。
【0010】
特許文献4に記載された風呂蓋は、風呂蓋内部が合成樹脂発泡体からなるものなので、高い断熱性能は期待できず、浴槽内の保温能力が乏しい。
【0011】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、簡単に製造でき、外観及び断熱性能に優れた真空断熱材内包構造体とその製造方法、真空断熱材内包風呂蓋の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、真空断熱材の少なくとも一つの面に、熱可塑性樹脂発泡シートを重ね合わせ、これらを成形型のキャビティ内に収容して加熱し、前記熱可塑性樹脂発泡シートを二次発泡させて前記真空断熱材の表面の凹凸を埋めるとともに、前記熱可塑性樹脂発泡シートを前記真空断熱材に接着し、真空断熱材内包構造体を得ることを特徴とする真空断熱材内包構造体の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の真空断熱材内包構造体の製造方法において、前記真空断熱材又は前記熱可塑性樹脂発泡シートに補強板を重ね合わせ、該補強板を前記真空断熱材又は熱可塑性樹脂発泡シートに接着することが好ましい。
【0014】
本発明の真空断熱材内包構造体の製造方法において、構造体外面に保護シートを接着することが好ましい。
【0015】
本発明の真空断熱材内包構造体の製造方法において、前記真空断熱材、前記熱可塑性樹脂発泡シート、前記補強板及び前記保護シートのそれぞれの部材間にホットメルト接着剤シートを配した状態で前記成形型内で加熱、放冷し、前記各部材間をホットメルト接着剤により接着することが好ましい。
【0016】
本発明の真空断熱材内包構造体の製造方法において、構造体周囲又は構造体内部に補強枠体を設けることが好ましい。
【0017】
また本発明は、真空断熱材と、該真空断熱材の少なくとも一つの面に接着され、かつ該真空断熱材表面の凹凸に沿って熱成形された熱可塑性樹脂発泡シートとを有することを特徴とする真空断熱材内包構造体を提供する。
【0018】
本発明の真空断熱材内包構造体において、前記真空断熱材又は前記熱可塑性樹脂発泡シートに補強板が接着されていることが好ましい。
【0019】
本発明の真空断熱材内包構造体において、構造体外面に保護シートが接着されていることが好ましい。
【0020】
本発明の真空断熱材内包構造体において、前記真空断熱材、前記熱可塑性樹脂発泡シート、前記補強板及び前記保護シートのそれぞれの部材間がホットメルト接着剤によって接着されていることが好ましい。
【0021】
本発明の真空断熱材内包構造体において、構造体周囲又は構造体内部に補強枠体が設けられていることが好ましい。
【0022】
また本発明は、板状の真空断熱材と、該真空断熱材の両主面に接着された熱可塑性樹脂発泡シートと、該熱可塑性樹脂発泡シートの外面側に接着された補強板とを備え、前記熱可塑性樹脂発泡シートの真空断熱材側が前記真空断熱材表面の凹凸に沿って熱成形されていることを特徴とする真空断熱材内包風呂蓋を提供する。
【0023】
本発明の真空断熱材内包風呂蓋において、該真空断熱材内包風呂蓋の外面に保護シートが接着されていることが好ましい。
【0024】
本発明の真空断熱材内包風呂蓋において、前記真空断熱材、前記熱可塑性樹脂発泡シート、前記補強板及び前記保護シートのそれぞれの部材間がホットメルト接着剤によって接着されていることが好ましい。
【0025】
本発明の真空断熱材内包風呂蓋において、真空断熱材内包風呂蓋の周囲又は真空断熱材内包風呂蓋内部に補強枠体が設けられていることが好ましい。
【0026】
本発明の真空断熱材内包風呂蓋において、周縁部にエッジプロテクターが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の真空断熱材内包構造体の製造方法は、真空断熱材の少なくとも一つの面に、熱可塑性樹脂発泡シートを重ね合わせ、これらを成形型のキャビティ内に収容して加熱し、前記熱可塑性樹脂発泡シートを二次発泡させて前記真空断熱材の表面の凹凸を埋めるとともに、前記熱可塑性樹脂発泡シートを前記真空断熱材に接着し、真空断熱材内包構造体を得ることによって、簡易に真空断熱材の空隙を埋めることができると共に、発泡樹脂を充填するための作業工数が不要であるため、簡単かつ少ない製造工数で優れた断熱性能を有する真空断熱材内包構造体を製造することができる。
【0028】
本発明の真空断熱材内包構造体は、真空断熱材と、該真空断熱材の少なくとも一つの面に接着され、かつ該真空断熱材表面の凹凸に沿って熱成形された熱可塑性樹脂発泡シートとを有するものなので、簡易に真空断熱材の空隙を埋めることができると共に、発泡樹脂を充填するための作業工数が不要であるため、優れた断熱性能を有する真空断熱材内包構造体を低コストで提供することができる。
【0029】
本発明の真空断熱材内包風呂蓋は、真空断熱材を内包した構造であるので、断熱性能に優れており、浴槽内の保温効果が高く、省エネルギーに優れている。
また、周縁部にエッジプロテクターを設けることで、吸水を防止し、水垢やカビが発生し難い風呂蓋を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明に係る真空断熱材内包構造体の一実施形態を示す斜視図であり、本実施形態の真空断熱材内包構造体10は、板状をなす真空断熱材11の両主面に、それぞれ熱可塑性樹脂発泡シート12,補強板13及び保護シート14を順に接着した構成になっている。前記熱可塑性樹脂発泡シート12は、真空断熱材11表面の凹凸15に沿って熱成形されている。
【0031】
図2は、本実施形態の真空断熱材内包構造体10に用いられる真空断熱材11の一例を示す斜視図である。この真空断熱材11は、板状をなす本体部と、その周縁に延出した包材余長部からなり、この包材余長部は本体部から折り曲げて本体部のいずれかの主面側の包材に接着固定されている。この真空断熱材11の表面には、多数のしわ、或いは包材余長部分の接着固定により生じた膨らみや凹みなどの凹凸15が多数形成されている。この真空断熱材11の寸法は特に限定されず、各種の大きさとすることができる。また真空断熱材11の形状は、四角形板状に限定されず、平面視した形状が円形、三角形、六角形などの多角形、楕円形、長丸形、雲形、不定形などの他の形状としてもよい。またその立体形状は板状に限らず、箱形(容器形状)、椀型、球形や半球形、波板状などの各種の立体形状とすることができる。
【0032】
この真空断熱材11は、合成樹脂の連続発泡フォームなどの充填物をアルミラミネートフィルムで被覆し、真空雰囲気下で内部のガスを除去し、開口シール部を密封シールして作製されたものである。アルミラミネートフィルムは、ポリアミド樹脂層、アルミ(Al)を蒸着したポリエステル樹脂層、アルミ箔層、ポリエチレン層を順に積層した積層フィルムであって、全体層厚は50〜100μm程度である。このアルミラミネートフィルム内への充填物としては、例えば、有機物系の連続発泡のウレタンフォーム及びその他樹脂の連続発泡フォーム(ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ラバー等)及び無機物系の発泡パーライト、シリカバルーン、ガラスマイクロバルーン、シリカ、含水珪酸、珪酸カルシウム、珪藻土、メチル化珪酸、炭酸マグネシウム、珪酸アルミナ、カーボンフォーム並びに繊維状ウール(グラスウール、石綿、アスベスト、セラミック繊維、綿ウール、ポリエステルウール、シリカアルミナウール)等が挙げられる。
【0033】
この真空断熱材11の両主面には、二次発泡した熱可塑性樹脂発泡シート12が接着されている。この熱可塑性樹脂発泡シート12の材料である熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂等が挙げられるが、これらの樹脂に限定されず、発泡可能な熱可塑性樹脂は全て使用可能である。また、本発明の真空断熱材内包構造体の製造に用いられる二次発泡前の熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、20〜600kg/m程度が好ましく、二次発泡後の熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、15〜300kg/m程度が好ましい。この熱可塑性樹脂発泡シート12の厚さは、二次発泡前のもので0.5mm〜5mm程度であり、二次発泡後の厚さが1mm〜10mm程度であることが望ましい。
【0034】
前記可塑性樹脂発泡シート12の外面には、補強板13が接着されている。この補強板13としては、木材(合板等)、アルミ板、炭素鋼板やステンレス鋼板、超延伸非発泡シート(超延伸ポリエチレンシート)、繊維強化プラスチック(FRP)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)板又はシート、ABS樹脂板又はシートなどが挙げられる。この補強板13の厚さは0.2mm〜2mm程度であることが望ましい。
【0035】
前記補強板13の外面には、保護シート14が接着されている。この保護シート14は、真空断熱材内包構造体10の使用状況に鑑みて、耐衝撃性、耐薬品性、耐水性等に優れた合成樹脂製シートが好ましく、例えば非発泡のハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂シートやフッ素樹脂シートなどが挙げられる。この保護シート14の厚さは、0.05mm〜1mm程度であることが望ましい。
【0036】
なお、図示していないが、真空断熱材11、熱可塑性樹脂発泡シート12、補強板13及び保護シート14の各部材間には、ホットメルト接着剤が設けられ、このホットメルト接着剤によって各部材間が強固に接着固定されている。このホットメルト接着剤としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主体とするホットメルト接着剤、エチレン・エチルアクリレート系共重合体を主体とするホットメルト接着剤、スチレン系ブロック共重合体を主体とするホットメルト接着剤、ポリエステル系樹脂を主体とするホットメルト接着剤、ポリウレタン系樹脂を主体とするホットメルト接着剤からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0037】
このホットメルト接着剤は、真空断熱材内包構造体10の製造時、シート状又はフィルム状として真空断熱材11、熱可塑性樹脂発泡シート12、補強板13及び保護シート14の各部材間に挿入され、型内で加熱される際に溶融し、放冷時の硬化して各部材間を強固に接着している。ホットメルト接着剤の使用量は、それぞれの部材間を強固に接着できればよく、特に限定されないが、ホットメルト接着剤シートを部材間に挟んで熱プレスする場合には、厚さ0.02mm〜0.2mm程度のホットメルト接着剤シートを用いることが望ましい。
【0038】
本実施形態の真空断熱材内包構造体10は、真空断熱材11と、該真空断熱材11の両主面に接着され、かつ真空断熱材表面の凹凸15に沿って熱成形された熱可塑性樹脂発泡シート12とを有するものなので、簡易に真空断熱材11の空隙を埋めることができると共に、発泡樹脂を充填するための作業工数が不要であるため、優れた断熱性能を有する真空断熱材内包構造体を低コストで提供することができる。
また、本実施形態の真空断熱材内包構造体10は、熱可塑性樹脂発泡シート12の外面に補強板13を接着しているので、真空断熱材内包構造体10の機械強度を向上させることができ、風呂蓋や各種の断熱パネルなどへの適用が容易な構造体を構成することができる。
また、本実施形態の真空断熱材内包構造体10は、外面に保護シート14を設けたことによって耐衝撃性や耐薬品性を向上したものなので、風呂蓋や各種の断熱パネルなどへの適用が容易な構造体を構成することができる。また、外面を保護シート14で覆うことで、平滑で美しい外観が得られ、印刷も容易にできる。
また、真空断熱材11、熱可塑性樹脂発泡シート12、補強板13及び保護シート14の各部材間をホットメルト接着剤で接着したので、熱成形時に各部材間を容易にかつ確実に接着でき、製造が容易になる。
【0039】
図3〜図5は、本発明に係る真空断熱材内包風呂蓋の一実施形態を示す図であり、図3は真空断熱材内包風呂蓋20の平面図、図4は同じ真空断熱材内包風呂蓋20の横断面図、図5は図3中のA−A’線部縦断面図である。
【0040】
本実施形態の真空断熱材内包風呂蓋20は、四角形板状をなしている真空断熱材21と、該真空断熱材21の両主面に接着された熱可塑性樹脂発泡シート22と、これらの熱可塑性樹脂発泡シート22の外面に接着された補強板23と、これらの補強板23の外面に接着された保護シート24と、真空断熱材21の周囲を囲んで設けられた補強枠体25及びコーナージョイント26と、真空断熱材内包風呂蓋20の周囲に装着されたエッジプロテクター27とを備えて構成されている。前記熱可塑性樹脂発泡シート22は、真空断熱材21表面の凹凸に沿って熱成形されている。
【0041】
この真空断熱材内包風呂蓋20を構成している各部材のうち、真空断熱材21、熱可塑性樹脂発泡シート22、補強板23及び保護シート24については、前述した真空断熱材内包構造体10における真空断熱材11、熱可塑性樹脂発泡シート12、補強板13及び保護シート14と同様のものを用いることができる。ただし、真空断熱材21の厚さは風呂蓋として使用するために10mm〜50mm程度とするのが望ましい。
【0042】
前記エッジプロテクター27としては、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などに可塑剤を配合したものを用いてもよいし、或いはその可塑剤を不要とした内部可塑化ポリ塩化ビニル樹脂、その他のエラストマー(スチレン系SBC、オレフィン系TPO、ウレタン系PU、ポリアミド系TPAE、ポリエステル系TPEE)を用いることもできる。
【0043】
このエッジプロテクター27は、射出成形により風呂蓋本体と一体成形してもよいし、接着剤にて風呂蓋本体のエッジ部に貼り付けてもよい。
【0044】
前記補強枠体25及びコーナージョイント26は、アクリル系樹脂、木材、アルミ、炭素鋼やステンレス鋼などの鋼材、ABS樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂などの材質で構成することができる。
【0045】
本実施形態において、この補強枠体25は断面略円環状の補強パイプを用いているが、補強枠体の形状は本例示に限定されない。図6(a)〜(f)は補強枠体の他の形状を示す断面図である。図6(a)の補強枠体25aは断面円環状である。図6(b)の補強枠体25bは断面半長丸形で円形の孔を有する形状になっている。図6(c)の補強枠体25cは、断面四角形で中央に四角形の孔を有する形状になっている。図6(d)の補強枠体25dは、断面四角形で中央に円形の孔を有する形状になっている。図6(e)の補強枠体25eは、断面半長丸形になっている。図6(f)に示す補強枠体25fは、断面四角形になっている。
【0046】
なお、本実施形態においては、L字状のコーナージョイント26とパイプ状の補強枠体25とをそれぞれ4つ用い、コーナージョイント26の両端にそれぞれ補強枠体25を嵌着し、真空断熱材21を囲む略四角形の枠体としているが、これらを一体成形した枠体を用いることもできる。
【0047】
なお、図示していないが、真空断熱材21、熱可塑性樹脂発泡シート22、補強板23、保護シート24及び補強枠体25の各部材間には、ホットメルト接着剤が設けられ、このホットメルト接着剤によって各部材間が強固に接着固定されている。このホットメルト接着剤としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主体とするホットメルト接着剤、エチレン・エチルアクリレート系共重合体を主体とするホットメルト接着剤、スチレン系ブロック共重合体を主体とするホットメルト接着剤、ポリエステル系樹脂を主体とするホットメルト接着剤、ポリウレタン系樹脂を主体とするホットメルト接着剤からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0048】
本実施形態の真空断熱材内包風呂蓋20は、真空断熱材21を内包した構造なので、断熱性能に優れており、浴槽内の保温効果が高く、省エネルギーに優れている。
また、熱可塑性樹脂発泡シート22の外面に補強板23を接着しているので、真空断熱材内包風呂蓋20の機械強度を向上させることができる。
また、外面に保護シート24を設けたことによって耐衝撃性や耐薬品性を向上することができ、耐久性に優れた風呂蓋を提供できる。また、外面を保護シート24で覆うことで、平滑で美しい外観が得られ、さらに印刷も容易になる。
また、真空断熱材21、熱可塑性樹脂発泡シート22、補強板23、保護シート24及び補強枠体25の各部材間をホットメルト接着剤で接着したので、熱成形時に各部材間を容易に接着でき、製造が容易になる。
また、真空断熱材21の外周に沿って補強枠体25を設けたことによって、真空断熱材21が補強され、衝撃等によって真空断熱材21の包材が傷付きにくくなるので、真空断熱材21の断熱性能低下を防ぐことができる。
また、周縁部にエッジプロテクター27を設けたことによって、吸水を防止し、水垢やカビが発生し難い風呂蓋を提供できる。
【0049】
次に、本発明に係る真空断熱材内包構造体の製造方法の実施形態を図面を参照して説明する。
図7は、本発明の製造方法の第1実施形態を示す図であり、本実施形態では図1に示す構造の真空断熱材内包構造体10を製造する場合を示している。
【0050】
本実施形態において図1に示す構造の真空断熱材内包構造体10を製造するには、成形型となる熱プレス板31に設けられたキャビティ31内に、下から順に、下側の補強板13、図示しないホットメルト接着剤シート、下側の熱可塑性樹脂発泡シート12、図示しないホットメルト接着剤シート、真空断熱材11、図示しないホットメルト接着剤シート、上側の熱可塑性樹脂発泡シート12、図示しないホットメルト接着剤シート、上側の補強板13を重ね合わせたものを入れ、熱プレス板30で押圧しながら加熱する。
【0051】
この熱プレス板30による熱プレスの条件は、温度80℃〜110℃程度、プレス時間0.2〜2分間程度とすることが望ましい。この熱プレスによって、熱可塑性樹脂発泡シート12がキャビティ31内で二次発泡し、真空断熱材11表面の凹凸がこの発泡樹脂で埋められる。熱可塑性樹脂発泡シート12の二次発泡は、その外側に設けられた補強板13が熱プレス板30の内壁に当接した状態で止められる。この熱プレスによって、キャビティ31の空間形状と一致した形状を有する真空断熱材内包構造体が得られる。また、各部材間に配したホットメルト接着剤シートが溶融し、各部材間が接着される。
【0052】
前記熱プレス後、熱プレス板30を開いて真空断熱材内包構造体を取り出す。さらに、得られた真空断熱材内包構造体を保護シート14で包み、接着することによって、図1に示す構造の真空断熱材内包構造体10が得られる。なお、耐熱性のある保護シート14を用いる場合には、補強板13の外側にホットメルト接着剤シートを介して保護シート14を重ね合わせ、熱プレスすることにより、保護シート14付きの真空断熱材内包構造体10を得ることもできる。
【0053】
本実施形態では、真空断熱材の両主面に熱可塑性樹脂発泡シート12を重ね合わせ、これらをキャビティ31内に収容して加熱し、熱可塑性樹脂発泡シート12を二次発泡させて真空断熱材11の表面の凹凸を埋めるとともに、熱可塑性樹脂発泡シート12を真空断熱材11に接着し、真空断熱材内包構造体10を得ることによって、簡易に真空断熱材11の空隙を埋めることができると共に、発泡樹脂を充填するための作業工数が不要であるため、簡単かつ少ない製造工数で優れた断熱性能を有する真空断熱材内包構造体10を製造することができる。
【0054】
図8は、本発明の製造方法の第2実施形態を示す図であり、本実施形態では図3〜図5に示す構造の真空断熱材内包風呂蓋20を製造する場合を示している。
【0055】
本実施例では、補強枠体25の枠内に真空断熱材21を嵌め込んだ後、前記第1実施形態と同様に、下から順に、下側の補強板23、図示しないホットメルト接着剤シート、下側の熱可塑性樹脂発泡シート22、図示しないホットメルト接着剤シート、前記補強枠体25に嵌め込んだ真空断熱材21、図示しないホットメルト接着剤シート、上側の熱可塑性樹脂発泡シート22、図示しないホットメルト接着剤シート、上側の補強板23を重ね合わせ、これを熱プレス板30のキャビティ31内に入れ、熱プレス板30で押圧しながら加熱する。
【0056】
この熱プレス板30による熱プレスの条件は、温度80℃〜110℃程度、プレス時間0.2〜2分間程度とすることが望ましい。この熱プレスによって、熱可塑性樹脂発泡シート22がキャビティ31内で二次発泡し、真空断熱材21表面の凹凸及び補強枠体25との空隙がこの発泡樹脂で埋められる。熱可塑性樹脂発泡シート22の二次発泡は、その外側に設けられた補強板23が熱プレス板30の内壁に当接した状態で止められる。この熱プレスによって、キャビティ31の空間形状と一致した形状を有する真空断熱材内包風呂蓋が得られる。また、各部材間に配したホットメルト接着剤シートが溶融し、各部材間が接着される。
【0057】
前記熱プレス後、熱プレス板30を開いて真空断熱材内包風呂蓋を取り出す。さらに、得られた真空断熱材内包風呂蓋を保護シート24で包み、接着する。なお、耐熱性のある保護シート24を用いる場合には、補強板23の外側にホットメルト接着剤シートを介して保護シート24を重ね合わせ、熱プレスすることにより、保護シート24付きの真空断熱材内包風呂蓋20を得ることもできる。次に、得られた真空断熱材内包風呂蓋の周縁部にエッジプロテクター27を接着する。これにより図3〜図5に示す構造の真空断熱材内包風呂蓋20が得られる。
【0058】
本実施形態では、補強枠体25に嵌め込んだ真空断熱材21の両主面に熱可塑性樹脂発泡シート22を重ね合わせ、これらをキャビティ31内に収容して加熱し、熱可塑性樹脂発泡シート22を二次発泡させて真空断熱材21の表面の凹凸及び補強枠体25との空隙を埋めるとともに、熱可塑性樹脂発泡シート22を真空断熱材21に接着し、真空断熱材内包風呂蓋20を得ることによって、簡易に真空断熱材21の空隙を埋めることができると共に、発泡樹脂を充填するための作業工数が不要であるため、簡単かつ少ない製造工数で優れた断熱性能を有する真空断熱材内包風呂蓋20を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の真空断熱材内包構造体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】真空断熱材内包構造体に用いる真空断熱材を例示する斜視図である。
【図3】本発明の真空断熱材内包風呂蓋の一実施形態を示す平面図である。
【図4】真空断熱材内包風呂蓋の横断面図である。
【図5】図3中A−A’線部縦断面図である。
【図6】補強枠体の他の断面形状を例示する断面図である。
【図7】本発明の製造方法の第1実施形態を説明する熱プレス時の断面図である。
【図8】本発明の製造方法の第2実施形態を説明する熱プレス時の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10…真空断熱材内包構造体、11,21…真空断熱材、12,22…熱可塑性樹脂発泡シート、13,23…補強板、14,24…保護シート、15…凹凸、25…補強枠体、26…コーナージョイント、27…エッジプロテクター、30…熱プレス板(成形型)、31…キャビティ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空断熱材の少なくとも一つの面に、熱可塑性樹脂発泡シートを重ね合わせ、これらを成形型のキャビティ内に収容して加熱し、前記熱可塑性樹脂発泡シートを二次発泡させて前記真空断熱材の表面の凹凸を埋めるとともに、前記熱可塑性樹脂発泡シートを前記真空断熱材に接着し、真空断熱材内包構造体を得ることを特徴とする真空断熱材内包構造体の製造方法。
【請求項2】
前記真空断熱材又は前記熱可塑性樹脂発泡シートに補強板を重ね合わせ、該補強板を前記真空断熱材又は熱可塑性樹脂発泡シートに接着することを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材内包構造体の製造方法。
【請求項3】
構造体外面に保護シートを接着することを特徴とする請求項1又は2に記載の真空断熱材内包構造体の製造方法。
【請求項4】
前記真空断熱材、前記熱可塑性樹脂発泡シート、前記補強板及び前記保護シートのそれぞれの部材間にホットメルト接着剤シートを配した状態で前記成形型内で加熱、放冷し、前記各部材間をホットメルト接着剤により接着することを特徴とする請求項3に記載の真空断熱材内包構造体の製造方法。
【請求項5】
構造体周囲又は構造体内部に補強枠体を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の真空断熱材内包構造体の製造方法。
【請求項6】
真空断熱材と、該真空断熱材の少なくとも一つの面に接着され、かつ該真空断熱材表面の凹凸に沿って熱成形された熱可塑性樹脂発泡シートとを有することを特徴とする真空断熱材内包構造体。
【請求項7】
前記真空断熱材又は前記熱可塑性樹脂発泡シートに補強板が接着されていることを特徴とする請求項6に記載の真空断熱材内包構造体。
【請求項8】
構造体外面に保護シートが接着されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の真空断熱材内包構造体。
【請求項9】
前記真空断熱材、前記熱可塑性樹脂発泡シート、前記補強板及び前記保護シートのそれぞれの部材間がホットメルト接着剤によって接着されていることを特徴とする請求項8に記載の真空断熱材内包構造体。
【請求項10】
構造体周囲又は構造体内部に補強枠体が設けられていることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の真空断熱材内包構造体。
【請求項11】
板状の真空断熱材と、該真空断熱材の両主面に接着された熱可塑性樹脂発泡シートと、該熱可塑性樹脂発泡シートの外面側に接着された補強板とを備え、前記熱可塑性樹脂発泡シートの真空断熱材側が前記真空断熱材表面の凹凸に沿って熱成形されていることを特徴とする真空断熱材内包風呂蓋。
【請求項12】
真空断熱材内包風呂蓋の外面に保護シートが接着されていることを特徴とする請求項11に記載の真空断熱材内包風呂蓋。
【請求項13】
前記真空断熱材、前記熱可塑性樹脂発泡シート、前記補強板及び前記保護シートのそれぞれの部材間がホットメルト接着剤によって接着されていることを特徴とする請求項12に記載の真空断熱材内包風呂蓋。
【請求項14】
真空断熱材内包風呂蓋の周囲又は真空断熱材内包風呂蓋内部に補強枠体が設けられていることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の真空断熱材内包風呂蓋。
【請求項15】
周縁部にエッジプロテクターが設けられていることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の真空断熱材内包風呂蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−207713(P2006−207713A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21168(P2005−21168)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】