説明

真空析出プロセスのプロセス的に重要なデータを求めるための方法

【課題】プロセス上重要なデータを求める際の誤差を最小限に抑えるため、真空析出プロセスのプロセス的に重要なデータの求める方法を提供する。
【解決手段】マグネトロンに連結されたターゲットでコーティングされる際の光学的発光スペクトルで、少なくとも2つのプロセス材料によって、スペクトル線の少なくとも3つの強度I...Iが光学的発光スペクトルから求められることによって解決される。この発光スペクトルから、単一または多重の強度が互いに数学的に合成され、そして合成結果から、他の数学的合成によってプロセス上重要なデータが求められ、このデータが後続の測定プロセスまたは制御プロセスで使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板が真空室内で、制御される電圧源によって供給されるターゲット電圧をターゲットと対向電極との間にかけながらかつプロセスガスを真空室内に導入しながら、マグネトロンに連結されたターゲットから溶出した材料によって、プロセス室内でコーティングされ、その際光学的発光スペクトルが撮影され、この発光スペクトルから、真空析出プロセスのプロセス的に重要なデータが測定プロセスまたは制御プロセスでの更なる処理のために求められる、真空析出プロセスのプロセス的に重要なデータを求めるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、強度とは、材料のスペクトル線の強さの値であると理解される。1つの材料の複数の強度について言及するときは、これは、1つの分光写真から複数のスペクトル線の高さが定められていることを意味する。すなわち、それぞれのスペクトル線の強さの値が求められ、強度としてさらに処理される。
【0003】
次に述べるようなプロセスガスは特に、真空室内の圧力を調節する働きをする。プロセスガスは1つの作動ガスからなっていてもよい。この作動ガスは不活性である。すなわち、例えばアルゴン、クリプトンまたはキセノンのように、プロセスに対して化学的な影響を及ぼさない。反応性プロセスに関しては、層析出の際に例えば酸化のための酸素によって化学反応を起こすために、プロセスガスが反応ガス、例えば酸素からなっていてもよい。しかし、プロセスガスは作動ガスと反応ガスの混合物からなっていてもよい。
【0004】
プロセスガス、特に作動ガスと反応ガスは、コーティングプロセスに関与する材料である。本発明においては、この材料を短く、プロセス材料と呼ぶ。
【0005】
他のプロセス材料はマグネトロンのターゲットを構成するターゲット材料、例えばアルミニウムまたは亜鉛である。
【0006】
同じパラメータを有する層の析出を保証するために、ターゲット材料が消費される間、長時間にわたってコーティングプロセスを一定に保つ必要がある。特に、層の厚さ、層組成(ドーピング)および層抵抗のような他の特性に関する均一性を長時間安定して保持すべきである。ターゲット材料の連続的な消費がこれに逆らう。消費の結果、まず第1に、ターゲット表面と磁界とガス流入部との間の位置関係が変化する。
【0007】
最初の較正(いわゆるトリミング)によって、作動ガスと反応ガス(定義は下記参照)のガス圧分配を行うことができる。
【0008】
プロセス進行中に、プロセスパラメータとも呼ばれるガス圧やターゲット電圧が再調整される。マグネトロン回転時の回転速度も他のプロセスパラメータである。
【0009】
プロセスパラメータを短時間で自動的に再調整することは、連続的な基板のために必要である。調整のために2つの強度の商を利用する解決策は特許文献1に既に開示されている。
【0010】
長時間安定性の検査は、プラズマからなる少なくとも2つの線の光学的発光分光学(OES)に基づいている。このプラズマは真空室内でターゲット電圧をかける際にターゲット表面にわたって生じる。その際、不連続波長に関する強度線は、コーティングプロセスに関与する材料、すなわち上述のようなプロセス材料の状態を示す。
【0011】
成長する層の一定の層パラメータ、特に一定の層抵抗を保証するために、プラズマが観察され、プロセスパラメータが再調整される。
【0012】
普通の(低価格の)分光計と、プロセス近くにおける分光計の配置は、測定された強度またはその絶対値に関して欠点を有する(精度、保存、変動)。波長に関する分解能が部分的に不鮮明であると、申し分なく識別可能な(制御技術的に利用可能な)強度線に関して妥協をしなければならないという結果になる。この線は時として互いに密接配置されている。
【0013】
特許文献2「反応性のプラズマ支援式真空コーティングプロセスで反応ガス流を制御するための方法」において既に、OES信号の2つの線の観察が記載され、反応性のプラズマ支援式真空コーティングプロセスで反応ガス流を制御するための解決策が開示されている。この解決策では、真空コーティングプロセスのプラズマによって決まる制御量が、制御系としての真空室から、光学的発光分光学を用いて測定要素内で検出され、真空コーティングプロセスに供給される反応ガスの量が補正係数として調節される。その際、プロセスに関与するコーティング材料のスペクトル線の強度の測定値と、反応ガスのスペクトル線の強度の測定値とからの計算値としての制御量あるいはこれらの強度から求められる値の計算値としての制御量が使用される。この特許文献2に同様に開示された装置では、測定要素がコントローラ出力部に接続された制御入力部を有する音響−光学式分光計を備えている。
【0014】
この公知の解決策では、2つの線の強度の比が求められて、制御量として使用されるが、反応ガス流は補正係数として使用される。これは、例えば成長する層の一定の層抵抗のような、連続するターゲット浸食の場合の層パラメータの不変性を十分に保証しない。
【0015】
特許文献3には、動作点制御を行うマグネトロンスパッタ法が記載されている。その際、コーティングプロセスに関与する材料のスペクトル線の2つの強度の商が、制御のための制御量として使用される。この制御の場合、ターゲット電圧が補正係数として有効である。本発明によって、このような動作点制御の作用が改善可能であることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許発明第102009053903B2号明細書
【特許文献2】独国特許発明第10341513B4号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1553206A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、次の測定プロセスまたは制御プロセスを確実に行うために、測定場所によっておよび/または分光計によって引き起こされる、プロセス的に重要なデータを求める際の誤差を最小限に抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は本発明に従い、少なくとも2つのプロセス材料によって、スペクトル線の少なくとも3つの強度I...Iが光学的発光スペクトルから求められることによって解決される。1対の強度I...Iから、第1の数学的合成によって、第1の相対強度Rが計算される。他の対の強度I...Iから、第2の数学的合成によって、第2の相対強度Rが計算される。最後に、第1相対強度Rと第2相対強度Rから、第3の数学的合成によって、プロセス的に重要なデータとしての強度合成IVが計算される。そして、このプロセス的に重要なデータは次の測定プロセスまたは制御プロセスで使用される。それによって、測定プロセスまたは制御プロセスの精度と信頼性が高められる。
【0019】
本方法の実施形態では、少なくとも2つのプロセス材料から少なくとも4つの強度I...Iが求められる。同じプロセス材料に由来しないそれぞれ2つの強度I...Iから、第1相対強度Rが計算される。同じプロセス材料に由来しないそれぞれ2つの他の強度I...Iから、第2相対強度Rが計算される。
【0020】
それによって、一方の材料の強度を他の材料で較正することができる。
【0021】
プロセス制御のためおよび成長する層の特性を推定するために本発明に従って複数の線を使用することにより、線強度が当然励起条件に依存するという事実が考慮される。例えば、圧力に依存してZn線対O線の比が生じる。というのは、相互作用横断面が電子温度(すなわち圧力)に異なるように依存するからである。
【0022】
本発明の根底をなす効果は、本発明の利用に関係なく、数学的な合成によって、誤差を含む強度の絶対値あるいは誤差の大きな単一の相対強度がもはや使用されないで、2つの相対強度によって得られる第3相対強度が使用されることにある。この第3相対強度の誤差は外乱が十分に除去されている。数学的な合成の方法と、強度の選択と、この強度が推定される材料は、次に詳しく説明するように、プロセス的に重要なデータの利用によって決定される。
【0023】
本発明の利用は、真空室内での析出プロセスを制御するための方法に関する。この方法の場合、プロセスに関与する材料のスペクトルがその場所で撮影され、それからプロセス材料の複数の強度が求められ、この強度が互いに数学的に合成され、数学的合成の結果が制御回路の制御量として使用され、この制御回路は、数学的合成の結果が基準量に従うように、補正係数としてのプロセスパラメータを調節する。
【0024】
高い層品質を保証するためには、コーティングプロセス中にターゲット浸食の増大によって生じる層パラメータの変化を、動作点の長時間安定化を保証することによって回避することが必要である。
【0025】
本発明は特に、析出プロセスの際の層品質の長時間安定を目指すことができ、そしてこの場合特にTCOとしてのZnO:Alを析出するための長時間安定した反応プロセスの開発を目指すことができる。その際、基板は、制御される電圧源から供給されるターゲット電圧をターゲットと対向電極との間にかけながらかつ真空室にプロセスガスを導入しながら、マグネトロンに連結されたターゲットから溶出した材料によってプロセス室内でコーティングされる。この場合、出力または放電電流は酸素流を介して制御される。
【0026】
本発明のこのような利用のために、
少なくとも2つのプロセス材料から少なくとも4つの強度I...Iが求められ、この場合一方のプロセス材料の第1スペクトル線の強度Iと、一方のプロセス材料の第2スペクトル線の強度Iが、プロセス室内の第1場所で測定され、これらの強度から第1相対強度Rが第1の数学的合成f(I,I)によって求められ、
第1スペクトル線の強度Iと第2スペクトル線の強度Iが、第1場所とは異なるプロセス室内の第2場所で測定され、これらの強度から第2相対強度Rが第2の数学的合成f(I,I)によって求められ、そして
第3の数学的合成fが第1相対強度Rと第2相対強度Rからf={f(I,I),{f(I,I)}によって求められ、強度合成IVとしてのその結果が制御プロセスの制御量として使用される。
【0027】
この制御は、制御の制御量としての強度合成IVが基準量として調節された強度合成IVの目標値IVに一定に保持されるよう、ターゲット電圧Uおよび/または磁気系とターゲットとの間の相対運動の速度が、制御の補正係数として使用されるように行うことができる。
【0028】
ターゲット電圧および/または相対速度の速度制御は、非常に少ない費用で行うことができる。値を連続運転で一定に保持するために、速度制御または電圧制御が行われる。この制御は、強度合成が一定値に保たれるように、電圧および/または速度を調節するために利用可能である。
【0029】
本方法の実施形態では、第2の数学的合成が第1の数学的合成と同じ種類である(f=f)。
【0030】
第1スペクトル線としてターゲット材料のスペクトル線を、そして第2スペクトル線として反応ガスのスペクトル線を選択することができると有利である。
【0031】
本発明に係る方法の精度を高めるために、できるだけ重要なスペクトル線が使用される。そのために、上記では、異なる材料のスペクトル線を使用した。さらに、少なくとも1つのスペクトル線が、中立の材料状態ではなく、励起された材料状態(例えばイオン化された亜鉛線)に割り当てられる発光線として選択されることによって、重要性が高められる。
【0032】
層特性、ターゲット電圧の電圧値、ターゲット相対運動の速度およびスペクトル線の強度の一義的な割り当てを決定できることが本発明に係る方法の出発点である。その際さらに、2つの強度の強度合成を求めることによって、この一義的な割り当てに対する妨害作用を閉め出すことができる。
【0033】
商f=I/Iとf=I/Iを求める形態の第1と第2の数学的合成が行われることにより、強度を有利に実現することができる。
【0034】
第3の数学的合成は、商f=f(I,I)/f(I,I)あるいは平均値f=f(I,I)+f(I,I)/2を求める形態で行うことができる。
【0035】
上記の割り当ては、達成すべき層特性aの値aに関する強度合成IVを関数IV=f(a)によって定めることにより、目標値を設定するために合目的に使用可能である。
【0036】
そのために、層特性の値aを測定することにより、関数IV=f(a)が較正コーティングプロセス中に検知され、実際の値aが値aに一致しない場合に、後の値an+xが意図した層特性の値に一致するまで、ターゲット電圧および/または磁気系とターゲットとの間の相対運動の速度が変更され、その際求められる強度合成IVが目標値IVとして使用され、かつ基準量として生じる。
【0037】
さらに、良好に再現可能な結果をもたらし、それによって本方法の精度を高めることができるがしかし複雑である、上述の較正コーティングプロセスのコストを低減することができるように、本方法を構成することができる。その際、達成すべき層特性aの値aに関する目標値IVが、コーティングプロセス中に層特性の値aを測定することにより求められ、実際の値aが値aに一致しない場合に、後の値an+xが意図した層特性の値に一致するまで、ターゲット電圧および/または磁気系とターゲットとの間の相対運動の速度が長時間にわたり変更され、その際求められる強度合成IVが目標値IVとして使用され、かつ基準量として生じる。それによって、いろいろなパラメータを読み取ることができる特性曲線を生じないで、層パラメータの量に関連した目標値を求める特性曲線を生じる。
【0038】
解決策の第1代替形態、すなわちターゲット電圧Uの変化は、ターゲットと磁気系との間の静的配置構造および動的配置構造を有する装置でのスパッタプロセスのために使用可能である。第2代替形態は動的配置構造のために使用可能である。この動的配置構造では両代替形態が適用可能である。
【0039】
本発明が平面マグネトロンで使用されると、この平面マグネトロンによって、相対運動がターゲットを介して発生する、ターゲット表面と相対的なプラズマの運動によって実現される。これは例えば、ターゲットの下で運動可能な磁気系によって実現可能である。しかし、平面マグネトロンを基板と相対的に動かすことができる。この両相対運動の速度は、本発明に係る方法の特別な実施形態では、強度合成を一定に保つために制御可能である。
【0040】
本発明はさらに、管マグネトロンでの使用のために特に適している。管マグネトロンは好ましくは、基板の搬送方向に対して横方向に位置する細長い磁気系を備え、この磁気系を中心に、管ターゲットが回転可能に配置されている。それによって特に、均一なターゲット浸食が達成され、ターゲット材料収量が高められる。本発明では、回転運動が基板に対する管ターゲットの相対運動として見なされ、その回転速度が制御される。
【0041】
実際には、スペクトル線の強度がターゲット回転中に変動することがわかった。本発明に係る方法に対するこのような変動の影響を閉め出すために、強度合成が管マグネトロンの少なくとも1回転にわたる平均値として生じると有利である。
【0042】
上述の方法は特に、真空室内の個々のマグネトロンに適している。プラズマと異なる動作電圧を介して2個のマグネトロンに影響を及ぼすことができる。この理由から、有利な実施形態では、真空室内に2個のマグネトロンが配置され、制御がその都度各マグネトロンのために分離して行われる。各マグネトロンのために、その都度他のマグネトロンと異なるスペクトル線の少なくとも1つの強度を使用することにより、両制御の分離が補助され、相互の影響が最小限に抑えられる。それによって、両制御において異なる強度合成が使用される。
【0043】
制御のための利用に役立つ本方法の他の実施形態では、3つのプロセス材料から4つの強度I...Iが求められる。その際、第1プロセス材料から第1強度Iが求められ、第2プロセス材料から第2強度Iが求められ、第3プロセス材料から第3強度Iと第4強度Iが求められる。第1強度Iは第3強度Iと共に第1の数学的合成によって第1相対強度Rに合成され、第2強度Iと第4強度Iは第2の数学的合成によって第2相対強度Rに合成される。第1相対強度Rと前記第2相対強度Rから、第3の数学的合成によって強度合成IVが求められ、制御量として制御回路で使用される。
【0044】
プロセスパラメータであるターゲット電圧が制御回路において補正係数として使用されると合目的である。
【0045】
反応性析出プロセスの場合に、プロセスパラメータである反応ガス流を補正係数として使用することができる。
【0046】
反応性析出プロセスの場合さらに、第1乃至第4強度I−Iを、プロセス材料である作動ガス、反応ガスおよびターゲット材料から求めることができる。
【0047】
例えば、層要素の線の強度を、作動ガスの線の強度で「較正」することを試みることができる。
【0048】
例えば、
[I(Zn)/I(Ar,1)] / [I(O)/I(Ar,2)]
この場合、 I(Zn)は亜鉛線の強度であり、
I(O)は酸素線の強度であり、I(Ar,1)は第1アルゴン線の強度であり、I(Ar,2)は第2アルゴン線の強度である。
【0049】
合目的な合成は数学的には異なるものと見なすことができる。というのは、純粋な商が所定の範囲においてのみ良好な近似であるからである。
【0050】
本発明に係る方法の他の利用可能性、すなわちドーピングの測定では、2つのターゲット材料によるコーティングの際に、3つの強度I...Iが3つのプロセス材料から求められる。その際、第1ターゲット材料から第1強度Iが求められ、第2ターゲット材料から第2強度Iが求められ、そして第3プロセス材料から第3強度Iが求められる。第1強度Iは第2強度Iと共に第1の数学的合成によって第1相対強度Rに合成され、第2強度Iと第3強度Iは第2の数学的合成によって第2相対強度Rに合成される。第1相対強度Rと第2相対強度Rから、第3の数学的合成によって強度合成IVが求められ、プロセス的に重要なデータとして、一方または他方のターゲット材料による析出された層のドーピングのための測定部に供給される。
【0051】
この方法は特にアルミニウム−亜鉛−酸化物−(AZO)−コーティングにおいて利用可能である。相対強度Rはターゲット材料であるアルミニウムの強度と、ターゲット材料である亜鉛の強度から求められ、第2相対強度Rは反応ガスである酸素の強度とターゲット材料であるアルミニウムの強度あるいはターゲット材料である亜鉛の強度から求められる。
【0052】
第1相対強度はR=I/Iによって、第2相対強度はR=I/Iによって、そして強度合成はIV=R/Rによって求めることが可能である。
【0053】
これにより、幾分広いドーピング濃度を用いることができる。AZOの場合最初から少なくとも3つの線:亜鉛、酸素およびアルミニウムを必要とした(合成例えば[I(Zn)/I(Al)] / [I(O)/I(Zn)];場合によっては異なるZn線によって)。
【0054】
次に、実施形態に基づいて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】補正係数としてターゲット電圧を有する制御回路に基づいて、本発明に係る方法の第1の実施形態を示す。
【図2】補正係数として回転速度を有する制御回路に基づいて、本発明に係る方法の第2の実施形態を示す。
【図3】作動ガス(AG)と反応ガス(RG)とターゲット材料(TM)のスペクトル線の位置とその強度を分光写真で示す。
【図4】プロセス材料である作動ガス(AG)と反応ガス(RG)とターゲット材料(TM)の強度の絶対値の時間的な変化を示す。
【図5】3つのプロセス材料である作動ガス(AG)と反応ガス(RG)とターゲット材料(TM)の4つの強度から強度合成関数IVを求めることを示す。
【図6】3つのプロセス材料である第1ターゲット材料(TMa)と第2ターゲット材料(TMb)と反応ガス(RG)の強度の絶対値の時間的な変化を示す。
【図7】3つのプロセス材料である第1ターゲット材料(TMa)と第2ターゲット材料(TMb)と反応ガス(RG)の4つの強度から強度合成関数IVを求めることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
次の実施形態では、真空コーティング装置で縦方向に搬送される基板が、搬送方向に対して横方向に配置された管マグネトロンによってコーティングされることを前提としている。その際、いろいろな層特性を有する層が析出される。図示した本発明に係る制御と平行して、それ自体公知の制御装置が出力に応じて酸素流を制御する。この制御装置は図に詳しく示していない。
【0057】
ZnO:Alを析出するための反応プロセスに関するこの実施形態において、他のすべての層特性aの代わりに、比抵抗ρが考察される。この比抵抗は所定の値を有し、特に基板長さにわたって一定であり、かつ均一である。
【0058】
図1に示すように、測定要素4としての1個または複数の光学式発光分光計を用いて、第1スペクトル線と第2スペクトル線の強度I11、I21、I12、I22がそれぞれプロセス空間内の第1場所と第2場所で測定される。さらに、第1の数学的合成f(I11,I21)と第2の数学的合成f(I12,I22)が求められる。その際、第2の数学的合成は第1の数学的合成と同じ種類である(f=f)。すなわち、第1の数学的合成が商を求めるものであるとき、第2の数学合成も商を求めることによって実現される。
【0059】
第1および第2の数学的合成から、第3の数学的合成f={f(I11,I21),f(I12,I22)}によって、強度合成IVが求められる。その結果は制御装置の制御量として使用される。
【0060】
前の較正コーティングプロセスから、層特性aのi番目の測定の値aに関する対の値{IV,ρ}、例えばその際検知された比抵抗としてのρを有する対の値が存在している。
【0061】
所定の比抵抗ρが生じると、対応する対の値から、対応するIV値が推定され、目標値IVとして使用される。そして、実際値IVと目標値IVから制御偏差ΔIVが計算され、コントローラ5に供給される。このコントローラ5とここに図示した計算はプロセスコンピュータ6内で実現される。このプロセスコンピュータは制御電圧Ustの対応する値を算出し、この制御電圧はアクチュエータとしての電圧制御されるジェネレータ7に供給される。このジェネレータから出力電圧がターゲット電圧Uとして生じる。このターゲット電圧は制御系と見なすことができる真空室8内のターゲットに加えられる。
【0062】
強度合成IVを一定に保つ他の方法は、ターゲット回転速度Nの変更である。この場合、ターゲット電圧は酸素流を介して一定に保たれる。
【0063】
図2に示すようにさらに、測定要素4としての1個または複数の光学式発光分光計を用いて、第1スペクトル線と第2スペクトル線の強度I11、I21、I12、I22がそれぞれプロセス空間内の第1場所と第2場所で測定される。さらに、第1の数学的合成f(I11,I21)と第2の数学的合成f(I12,I22)が求められる。その際、第2の数学的合成は第1の数学的合成と同じ種類である(f=f)。すなわち、第1の数学的合成が商を求めるものであるとき、第2の数学的合成も商を求めることによって実現される。
【0064】
第1および第2の数学的合成から、第3の数学的合成f={f(I11,I21),f(I12,I22)}によって、強度合成IVが求められる。その結果は制御装置の制御量として使用される。
【0065】
前の較正コーティングプロセスから、層特性aのi番目の測定の値aに関する対の値{IV,ρ}、例えばその際検知された比抵抗としてのρを有する対の値が存在している。
【0066】
所定の比抵抗ρが生じると、対応する対の値から、対応するIV値が求められ、目標値IVとして使用される。そして、実際値IVと目標値IVから制御偏差ΔIVが計算され、コントローラ5に供給される。このコントローラ5とここに図示した計算は同様に再びプロセスコンピュータ6内で実現される。このプロセスコンピュータは回転数nの対応する値を算出し、この回転数はアクチュエータとしてのターゲット駆動部9に供給される。このターゲット駆動部からターゲット回転速度Nが生じる。このターゲット回転速度は制御対象と見なすことができる真空室8内のターゲットと基板との間の相対速度を決定する。
【0067】
図3において、作動ガス、この場合アルゴン(Ar)の第1スペクトル線11と、作動ガスの第2スペクトル線12と、反応ガス、この場合酸素(O)のスペクトル線13と、第1ターゲット材料、この場合アルミニウム(Al)のスペクトル線14と、第2ターゲット材料、この場合亜鉛(Zn)のスペクトル線15が分光写真10に示してある。
【0068】
図4と図5の実施形態では、プラズマ室内での電子の高エネルギー励起状態の程度と、その電子温度の程度が、線形強度に基づいて多重強度から求められる。層特性を調節するための制御量を導き出すために、電子温度のこの程度に基づいて単一強度の評価が行われる。
【0069】
プロセス材料である作動ガス(AG)と反応ガス(RG)とターゲット材料(TM)のその都度3つについてスペクトル線11〜14の全部で少なくとも4つの強度I〜Iが出力量として測定および処理される。その際、2つのプロセス材料(AGとTM)について1つずつの強度 − 単一強度 − が求められ、そして第3プロセス材料(AG)について少なくとも2つの強度 − 多重強度 − が求められる。
【0070】
制御のために、先ず最初にそれぞれ1つの単一強度が多重強度に対して対比される(数学的に合成させられる)。それから、2つの制御量が得られる。この制御量は互いに対比させられて(数学的に合成されられて)最終制御量を生じる。
【0071】
第1近似では、従来技術で知られているように、制御にとって、プロセス材料に関する単一強度を取り入れることで十分である。ターゲット近くおよび基板近くで測定を行うと、制御が一層改善される。
【0072】
しかしながら、本発明では、1つの同一の材料に関する2つ以上の線形強度(多重強度)から、他の制御量が導き出される。強度の比を求めることにより、図5から分かるように、分光計の感度の変動を補正することができる(例えばコリメータを追加減衰することによって)。この場合、制御は従来技術に従って鈍感である。
【0073】
多重強度の測定のために、本例ではアルゴンの作動ガスについて言及する。しかし、本発明はその他のプロセス材料にも適用可能である。数学的な合成もここでは例示的に記載する。例えば差または比を求めることによるような他の数学的合成を、制御量を実際に求めるために使用することができる。
【0074】
例えば、ターゲット材料の強度ITMと作動ガスの第1強度IAG1から、第1相対強度Rが次式によって求められる。
=ITM / IAG1
【0075】
第2相対強度Rが反応ガスの強度IRGと作動ガスの第2強度IAG2から次式によって求められる。
=IRG / IAG2
【0076】
最終的に制御量として使用される強度合成IVは次式から求められる。
IV=R / R
【0077】
上述の思想によって、改善された精度が達成される。それによって、他の実施形態では、ドーピング濃度も決定することができる。
【0078】
多重強度決定のために他の量も使用することができるという上記前提の下で、例えば第1ターゲット材料(例えばAl)のスペクトル線14の強度ITMaと、第2ターゲット材料(例えばZn)のスペクトル線15の強度ITMbとから、第1相対強度Rが次式によって求められる。
=ITMa / ITMb
【0079】
反応ガスのスペクトル線13の強度IRGと第1ターゲット材料のスペクトル線14の強度ITMaから、第2相対強度Rが次式によって求められる。
=IRG / ITMa
【0080】
その代わりに、第2相対強度Rが作動ガスの第1強度IAG1と作動ガスの第2強度IAG2から次式によって求められる。
=IAG1 / IAG2
【0081】
最終的にドーピング濃度の程度として使用される強度合成IVは次式から求められる。
IV=R / R
【符号の説明】
【0082】
4 測定要素
5 コントローラ
6 プロセスコンピュータ
7 ジェネレータ
8 真空室
9 ターゲット駆動装置
10 分光写真
11 作動ガスの第1スペクトル線
12 作動ガスの第2スペクトル線
13 反応ガスのスペクトル線
14 第1ターゲット材料のスペクトル線
15 第2ターゲット材料のスペクトル線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が真空室内で、制御される電圧源によって供給されるターゲット電圧をターゲットと対向電極との間にかけながらかつプロセスガスを真空室内に導入しながら、マグネトロンに連結されたターゲットから溶出した材料によって、プロセス室内でコーティングされ、その際光学的発光スペクトルが撮影され、コーティングプロセスに関与するプロセス材料のスペクトル線の強度から、真空析出プロセスのプロセス的に重要なデータが測定プロセスまたは制御プロセスでの更なる処理のために求められる、真空析出プロセスのプロセス的に重要なデータを求めるための方法において、
少なくとも2つのプロセス材料によって、スペクトル線(11〜15)の少なくとも3つの強度I...Iが光学的発光スペクトル(10)から求められることと、
1対の強度I...Iから、第1の数学的合成によって、第1の相対強度Rが計算されることと、
他の対の強度I...Iから、第2の数学的合成によって、第2の相対強度Rが計算されることと、
前記第1相対強度Rと前記第2相対強度Rから、第3の数学的合成によって、プロセス的に重要なデータとしての強度合成IVが計算されることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも2つのプロセス材料から少なくとも4つの強度I...Iが求められることと、
同じプロセス材料に由来しないそれぞれ2つの強度I...Iから、第1相対強度Rが計算されることと、
同じプロセス材料に由来しないそれぞれ2つの他の強度I...Iから、第2相対強度Rが計算されることとを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つのプロセス材料から少なくとも4つの強度I...Iが求められ、この場合一方のプロセス材料の第1スペクトル線の強度Iと、一方のプロセス材料の第2スペクトル線の強度Iが、プロセス室内の第1場所で測定され、これらの強度から第1相対強度Rが第1の数学的合成f(I,I)によって求められることと、
第1スペクトル線の強度Iと第2スペクトル線の強度Iが、前記第1場所とは異なるプロセス室内の第2場所で測定され、これらの強度から第2相対強度Rが第2の数学的合成f(I,I)によって求められることと、
第3の数学的合成fが前記第1相対強度Rと前記第2相対強度Rからf={f(I,I),{f(I,I)}によって求められ、強度合成IVとしてのその結果が制御プロセスの制御量として使用されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
制御プロセスの制御量としての前記強度合成IVが基準量として調節された強度合成IVの目標値IVに一定に保持されるよう、ターゲット電圧Uおよび/または磁気系とターゲットとの間の相対運動の速度が、制御の補正係数として使用されるように、前記強度合成IVが制御プロセスの制御量として用いられることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
達成すべき層特性aの値aに関する前記目標値IVが関数IV=f(a)によって定められることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
達成すべき層特性aの値aに関する前記目標値IVsが関数IV=f(a)から求められることと、層特性の値aiを測定することにより、前記関数IV=f(a)が較正コーティングプロセス中に検知され、実際の値aが値aに一致しない場合に、後の値an+xが意図した層特性aの値に一致するまで、ターゲット電圧Uおよび/または磁気系とターゲットとの間の相対運動の速度が変更され、その際求められる強度合成IVが目標値IVとして使用され、かつ基準量として生じることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
達成すべき層特性aの値aに関する前記目標値IVが、コーティングプロセス中に層特性aの値aを測定することにより求められ、実際の値aが値aに一致しない場合に、後の値an+xが意図した層特性aの値に一致するまで、ターゲット電圧および/または磁気系とターゲットとの間の相対運動の速度が変更され、その際求められる強度合成IVが目標値IVとして使用され、かつ基準量として生じることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
平面マグネトロンの場合に、相対運動がターゲットを介して発生する、ターゲット表面と相対的なプラズマの運動によって実現されるかあるいは基板と相対的な平面マグネトロンの運動によって実現され、その速度が制御されることを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
管マグネトロンの場合、相対運動が基板と相対的な管ターゲットの回転運動によって実現され、その回転速度Nが制御され、ターゲット電圧が酸素流を介して一定に保たれることを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
3つのプロセス材料から4つの強度I...Iが求められ、この場合第1プロセス材料から第1強度Iが求められ、第2プロセス材料から第2強度Iが求められ、第3プロセス材料から第3強度Iと第4強度Iが求められることと、第1強度Iが第3強度Iと共に第1の数学的合成によって第1相対強度Rに合成され、第2強度Iと第4強度Iが第2の数学的合成によって第2相対強度Rに合成され、前記第1相対強度Rと前記第2相対強度Rから、第3の数学的合成によって強度合成IVが求められ、制御量として制御回路で使用されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
プロセスパラメータであるターゲット電圧Uが制御回路において補正係数として使用されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
反応性析出プロセスの場合に、プロセスパラメータである反応ガス流が補正係数として使用されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
反応性析出プロセスの場合に、第1乃至第4強度I−Iがプロセス材料である作動ガス、反応ガスおよびターゲット材料から求められることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
2つのターゲット材料によるコーティングの際に、3つの強度I...Iが3つのプロセス材料から求められ、この場合第1ターゲット材料から第1強度Iが求められ、第2ターゲット材料から第2強度Iが求められ、そして第3プロセス材料から第3強度Iが求められることと、第1強度Iが第2強度Iと共に第1の数学的合成によって第1相対強度Rに合成され、第2強度Iと第3強度Iが第2の数学的合成によって第2相対強度Rに合成され、前記第1相対強度Rと前記第2相対強度Rから、第3の数学的合成によって強度合成IVが求められ、プロセス的に重要なデータとして、一方または他方のターゲット材料による析出された層のドーピングのための測定部に供給されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
アルミニウム−亜鉛−酸化物−(AZO)−コーティングの場合に、第1相対強度Rがターゲット材料であるアルミニウムの強度と、ターゲット材料である亜鉛の強度から求められ、第2相対強度Rが反応ガスである酸素の強度とターゲット材料であるアルミニウムの強度あるいはターゲット材料である亜鉛の強度から求められることを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−153976(P2012−153976A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12943(P2012−12943)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(595160477)フオン・アルデンネ・アンラーゲンテヒニク・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (16)
【Fターム(参考)】