説明

真空脱ガス槽の整備システム及び整備方法

【課題】真空脱ガス槽の整備システムの占有面積を小さくし、排気口内の付着物の除去や予熱処理などの整備の作業効率を向上させる。
【解決手段】整備システムは、整備位置に移動可能な自走式の付着物除去装置と予熱排気装置50とを有している。予熱排気装置50は、整備位置まで走行可能で、かつ整備位置から退避可能な走行台車51を有している。走行台車51には、予熱排気ダクト54が設けられている。予熱排気ダクト54は、シリンダ58によって真空脱ガス槽10の排気口11の軸心方向に移動可能になっている。整備位置近傍には設置排気ダクト70が設けられ、設置排気ダクト70は、予熱排気ダクト54における真空脱ガス槽側接続部60を排気口11に接続した際に、予熱排気ダクト54における設置排気ダクト側接続部62が、設置排気ダクト70の接続端部71に接続されるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空脱ガス槽の排気口内に付着した付着物を除去し、当該真空脱ガス槽の予熱処理を行う整備システム及びその整備システムを用いた整備方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼の製鋼工程においては、例えばRH、DH方式等の二次精錬が行われている。これらの二次精錬処理では、例えば真空脱ガス槽内に溶鋼を移動させ、溶鋼の真空脱ガス処理等が行われる。真空脱ガス処理では、真空脱ガス槽の排気口に排気ダクトが接続され、当該真空脱ガス槽内の真空排気が行われる。この真空排気は溶鋼スプラッシュを伴うため、真空脱ガス槽の排気口内に地金やスラグが付着する。
【0003】
この真空脱ガス処理が繰り返し行われると、地金やスラグなどの付着物が排気口内に堆積し、当該排気口の内径が減少して排気通路が狭くなる。そうすると、排気性能が悪くなるなどの支障が生じるため、定期的に排気口内の付着物の除去作業を行う必要がある。
【0004】
そこで、従来より、真空脱ガス槽の排気口内の付着物を除去するため、排気口の軸心方向に走行する横行台車と、横行台車に設けられ、先端側のリンクにブレーカ及び破砕物掻き出し板を取付けた平行リンク機構と、を有する付着物除去装置が提案されている(特許文献1)。そして、排気口に対向する位置に横行台車を移動させ、ブレーカにより付着物を破砕し、破砕物掻き出し板により破砕された付着物を掻き出して、排気口内の付着物を除去している。
【0005】
また、真空脱ガス処理を適切に行うためには、処理中の真空脱ガス槽内に溶鋼を移動させることに起因する溶鋼の温度低下を最小にするため、真空脱ガス槽内を予め予熱しておくことが必要になる。この予熱処理では、真空脱ガス槽の排気口に予熱排気ダクトが接続され、当該真空脱ガス槽内の燃焼ガス(CO、CO)や熱気などの排気が行われる。この排気を行わないと、真空脱ガス槽の下方から高温の燃焼ガスなどが放出されて周囲の作業環境が悪くなるため、予熱処理の排気は必ず行われる必要がある。
【0006】
以上のように真空脱ガス処理を行うために、排気口内の付着物除去や予熱処理などの真空脱ガス槽の整備が行われるが、従来の真空脱ガス処理の際の排気ダクトと予熱処理の際の予熱排気ダクトは共に所定の位置に固定されている。そのため、これら排気ダクトと予熱排気ダクトの設置場所においては、例えば上述した特許文献1の付着物除去装置を用いて付着物の除去作業を行おうとしても、これら排気ダクトと予熱排気ダクトは退避できず、排気口内の付着物の除去は、排気ダクトと予熱排気ダクトの設置場所と別の場所で行う必要があった。
【0007】
そこで、真空脱ガス槽の整備は、例えば図12に示す整備システム100において行われている。整備システム100では、先ず、処理位置Q1において所定回数の真空脱ガス処理が終了した真空脱ガス槽110が、中間位置Q2に移動される。中間位置Q2では、付着物除去装置120によって、真空脱ガス槽110の排気口内の付着物が除去される。その後、真空脱ガス槽110は、補修位置Q3に移動される。補修位置Q3では、真空脱ガス槽110の排気口に予熱排気ダクト121が接続され、バーナー(図示せず)によって真空脱ガス槽110の予熱処理が行われる。そして、このように整備された真空脱ガス槽110は、再び処理位置Q1に移動され、排気口に排気ダクト122が接続されて真空脱ガス処理が行われる。
【0008】
【特許文献1】特開平3−11048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の整備システム100は、予熱排気ダクト121が補修位置Q3から移動せず、また排気ダクト122も処理位置Q1から移動しないため、上述したように排気口内の付着物を除去するスペース、すなわち中間位置Q2を確保する必要があった。このため、整備システム100の占有面積が大きくなっていた。
【0010】
また、真空脱ガス槽110の移動距離が長く、しかも真空脱ガス槽110を中間位置Q2で一旦停止させる必要があるため、真空脱ガス槽110の整備に時間がかかる。さらに、中間位置Q2において、真空脱ガス槽110の下方にバケットを配置して除去された付着物を収集したり、飛散した付着物を清掃する作業が発生するため、作業が煩雑になっていた。したがって、真空脱ガス槽110の整備の作業効率の向上に改善の余地があった。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、真空脱ガス槽の整備システムの占有面積を小さくし、排気口内の付着物の除去や予熱処理などの整備の作業効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するため、本発明は、真空脱ガス槽の排気口内に付着した付着物を除去し、当該真空脱ガス槽の予熱処理を行う際に使用する整備システムであって、真空脱ガス槽の排気口内に付着した付着物を除去し、かつ同じ場所にてその後に当該真空脱ガス槽の予熱処理を行う位置となる整備位置まで走行可能で、かつ前記整備位置から退避可能な走行台車と、前記整備位置近傍に設けられた設置排気ダクトと、前記走行台車に設けられた予熱排気ダクトと、前記走行台車に設けられ、前記整備位置にある真空脱ガス槽の排気口側に前記予熱排気ダクトを移動可能な移動機構と、を有し、前記移動機構によって前記予熱排気ダクトを真空脱ガス槽の排気口側に移動させて、前記予熱排気ダクトにおける真空脱ガス槽側接続部を真空脱ガス槽の排気口に接続した際に、前記予熱排気ダクトにおける設置排気ダクト側接続部が設置排気ダクトの接続端部に接続されるように、前記設置排気ダクトが配置されていることを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、走行台車により予熱排気ダクトが整備位置まで走行可能で、かつ整備位置から退避可能になっている。これによって、整備位置において、予熱排気ダクトを真空脱ガス槽の排気口と設置排気ダクトに接続して真空脱ガス槽の予熱処理を行うことができる。また、予熱排気ダクトを整備位置から退避させた状態で、例えば自走式の付着物除去装置を整備位置に移動させて、排気口内の付着物を除去することができる。このように真空脱ガス槽の排気口内の付着物の除去と予熱処理を一の整備位置において行うことができるので、従来のように付着物除去と予熱処理の作業スペースを別々に設ける必要がなく、整備システムの占有面積を小さくすることができる。また、真空脱ガス槽の移動距離も短くすることができ、従来のように真空脱ガス槽を中間位置で一旦停止させる必要もないので、真空脱ガス槽の整備を短時間で行うことができる。しかも、従来の中間位置における付着物の収集や清掃などの作業が不要になる。したがって、本発明によれば、真空脱ガス槽の整備の作業効率を向上させることができる。
【0014】
前記設置排気ダクトは前記整備位置の上方に配置され、前記予熱排気ダクトはアングル状であってもよい。
【0015】
前記予熱排気ダクトにおける設置排気ダクト側接続部の端面には弾性部材が設けられ、この弾性部材の上端の高さ位置は、前記設置排気ダクトの接続端部の高さ位置よりも高く設定されていてもよい。
【0016】
前記設置排気ダクトの接続端部は、前記整備位置にある真空脱ガス槽の排気口と反対側に水平に突出する、下面がテーパ状または凸に湾曲した突出部を有していてもよい。
【0017】
前記予熱排気ダクトを鉛直方向に移動させる他の移動機構を有していてもよい。
【0018】
前記整備位置に移動可能で、当該整備位置において前記排気口内の付着物を除去する付着物除去装置をさらに有していてもよい。
【0019】
別な観点による本発明は、前記整備システムを用いた真空脱ガス槽の整備方法であって、前記走行台車を前記整備位置から退避させた状態で、前記付着物除去装置を前記整備位置に移動させる工程と、その後、前記付着物除去装置により前記排気口内の付着物を除去する工程と、その後、前記付着物除去装置を前記整備位置から退避させた後、前記走行台車を前記整備位置に移動させ、前記移動機構により前記予熱排気ダクトを前記排気口と前記設置排気ダクトに接続する工程と、その後、前記予熱処理を行う工程と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、真空脱ガス槽の整備システムの占有面積を小さくし、排気口内の付着物の除去や予熱処理などの整備の作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる真空脱ガス槽の整備システム1の構成の概略を示す平面図である。図1に示すように、真空脱ガス槽10は、真空脱ガス処理を行う処理位置P1と、真空脱ガス槽10の排気口11内の付着物の除去及び真空脱ガス槽10の予熱処理などの整備を行う整備位置P2との間を移動することができる。
【0022】
整備システム1は、図1に示すように、整備位置P2において真空脱ガス槽10の排気口11内の付着物を除去する付着物除去装置20を有している。付着物除去装置20は、整備位置P2において排気口11に対向するように配置される。また、付着物除去装置20は、後述するように自走式に構成されており、整備位置P2に移動可能であると共に、当該整備位置P2から退避可能になっている。
【0023】
付着物除去装置20は、図2に示すように無限軌道21を具備している。したがって、付着物除去装置20は、所定の高さに設けられたプラットフォーム30上を前進・後退及び旋回動作等自在に移動することができる。無限軌道21上には、回転部22を介して付着物除去装置20を操作する操作部23が設けられている。操作部23は回転部22の軸心周り、すなわち鉛直軸周りに回転することができる。操作部23には、アーム24が設けられている。アーム24は、基端部24aを中心に鉛直方向に移動できると共に、アーム24の中間に設けられた支点24bを中心に鉛直方向に屈曲自在に構成されている。アーム24の先端には、排気口11内の付着物Sを除去する除去機構25が設けられている。除去機構25も、基端部25aを中心に鉛直方向に移動することができる。除去機構25の先端には、付着物Sを破砕するブレーカ26と、ブレーカ26によって破砕された付着物Sを掻き出す掻き出し板27が設けられている。ブレーカ26には、例えばエアブレーカが用いられる。そして、このような構成の付着物除去装置20を用いて付着物Sを除去する際には、操作部23においてブレーカ26の位置を調整しながらブレーカ26により付着物Sを破砕し、掻き出し板27により破砕された付着物Sを真空脱ガス槽10外に掻き出し除去する。
【0024】
付着物除去装置20を用いて付着物Sを除去する際には、掻き出し板27により掻き出され、真空脱ガス槽10の下端の開口部10aから落下する付着物Sを収容するバケット40が、真空脱ガス槽10の下方に配置される。バケット40は、下部走行台車41上に載置され、真空脱ガス槽10の下方に移動可能であると共に、当該位置から退避可能になっている。なお、この下部走行台車41は、真空脱ガス槽10の下部に取付けられる浸漬管などの下部槽(図示せず)を交換する際にも用いられる。
【0025】
また図1に示すように、整備システム1は、整備位置P2において予熱処理の際に真空脱ガス槽10内の排気を行う予熱排気装置50を有している。予熱排気装置50は、図3に示すように走行台車51を有している。走行台車51は、モータ52によりプラットフォーム30に敷設された走行用軌条53を走行することができる。走行用軌条53は、図1に示すように整備位置P2から走行台車51の待機位置P3まで延伸している。すなわち、走行台車51は、整備位置P2と待機位置P3との間を移動することができ、整備位置P2に移動可能であると共に、当該整備位置P2から退避可能になっている。また、走行用軌条53には、整備位置P2において後述する予熱排気ダクト54が排気口11に対向する位置に配置されるように、走行台車51のリミットストッパ(図示せず)が設けられている。
【0026】
走行台車51上には、図3に示すように、予熱排気ダクト54が支持部材55に支持されて設けられている。支持部材55は、基台56と、基台56上に設けられ、予熱排気ダクト54の外周を囲うように支持する支持枠57を有している。基台56には、移動機構としてのシリンダ58が設けられている。シリンダ58は走行台車51上に設けられている。このシリンダ58によって、予熱排気ダクト54及び支持部材55は排気口11の軸心方向に移動可能になっている。
【0027】
予熱排気ダクト54は、排気口11よりも小さい内径を有する本体部59を有している。本体部59は、水平方向に延伸する部分と鉛直方向に延伸する部分から構成され、直角に屈曲したアングル状に成形されている。このアングル状を維持するため、本体部59の水平方向に延伸する部分(後述する真空脱ガス槽側接続部60)と、鉛直方向に延伸する部分には、ブレース61が設けられている。
【0028】
本体部59の水平部分の排気口11側の端部には、整備位置P2での予熱処理時に排気口11に接続される真空脱ガス槽側接続部60が設けられている。真空脱ガス槽側接続部60は、内外径とも排気口11との接合面に近づくにつれテーパ状に拡大しており、排気口11との接合面において、真空脱ガス槽側接続部60の内径は排気口11の内径と同一である。
【0029】
本体部59の鉛直部分の上端である、図4に示す設置排気ダクト側接続部62の端面には、弾性部材63が設けられている。弾性部材63には、弾性を有する材料、例えばゴム製の樹脂などが用いられる。弾性部材63は、整備位置P2での予熱処理時に、本体部59の上方に固定して設けられた設置排気ダクト70に接続される。なお、設置排気ダクト70は、シリンダ58によって予熱排気ダクト54を排気口11側に移動させて、予熱排気ダクト54における真空脱ガス槽側接続部60を排気口11に接続した際に、予熱排気ダクト54における設置排気ダクト側接続部62の弾性部材63が、設置排気ダクト70の接続端部71に接続されるように配置されている。また、設置排気ダクト70は、付着物除去装置20に干渉しない高さに設けられている。
【0030】
また、図5に示すように予熱排気ダクト54が設置排気ダクト70に接続されていない状態、例えば整備位置P2での予熱処理を行っていない状態において、弾性部材63は、図6に示すように、その上端の高さ位置が設置排気ダクト70の接続端部71の高さ位置よりも数mm程度、例えば3mm〜5mm程度高くなるように設けられている。これによって、図4に示したように予熱排気ダクト54を設置排気ダクト70に接続した際に、弾性部材63を設置排気ダクト70の接続端部71に密着させ、予熱排気ダクト54と設置排気ダクト70との気密性を確保することができる。
【0031】
設置排気ダクト70の接続端部71は、排気口11と反対側に水平に突出した突出部72を有している。突出部72の下面73(排気口11と反対側の端部)は、凸に湾曲している。なお、下面73はテーパ状に成型されていてもよい。突出部72は、図7に示すように、排気口11側の設置排気ダクト70の半円(図7中の左半円)において当該設置排気ダクト70の側壁の内側に形成され、排気口11と反対側の設置排気ダクト70の半円(図7中の右半円)において当該設置排気ダクト70の側壁の外側に形成されている。そして、予熱排気ダクト54上の弾性部材63と設置排気ダクト70を接続する際には、図8に示すように、弾性部材63のすべての点が下面73を通過する。これによって、弾性部材63を下面73の湾曲に沿って円滑に移動させることができる。
【0032】
本実施の形態にかかる整備システム1は以上のように構成されている。次に、この整備システム1を用いて、排気口11内の付着物Sの除去や真空脱ガス槽10の予熱処理などの整備を行う方法について説明する。
【0033】
先ず、図9に示すように、処理位置P1において所定回数の真空脱ガス処理が終了した真空脱ガス槽10を整備位置P2に移動させると共に、走行台車51を待機位置P3で待機させた状態で、付着物除去装置20を整備位置P2に移動させる。そして、図2に示したように付着物除去装置20により排気口11内の付着物Sを除去する。このとき、真空脱ガス槽10の下方には下部走行台車41によりバケット40が配置され、除去された付着物Sがバケット40に収容される。
【0034】
付着物Sが除去されると、下部走行台車41によりバケット40を所定の位置に移動させ、さらに当該下部走行台車41により真空脱ガス槽10に取付けられる下部槽が交換される。
【0035】
その後、図10に示すように、付着物除去装置20を整備位置P2から退避させ、走行台車51を整備位置P2に移動させる。このとき、移動中の走行台車51上の予熱排気ダクト54は、図5に示したように排気口11から離れ、設置排気ダクト70と接触しない位置に配置されている。そして、走行台車51が整備位置P2に到着すると、シリンダ58により予熱排気ダクト54を排気口11側に移動させて、図3に示したように予熱排気ダクト54を排気口11と設置排気ダクト70に接続する。その後、真空脱ガス槽10内にバーナ(図示せず)を配置して予熱処理を行う。このとき、真空脱ガス槽10内の高温の燃焼ガスは、排気口11、予熱排気ダクト54、設置排気ダクト70を通って排気される。
【0036】
予熱処理が終了すると、真空脱ガス槽10を再び処理位置P1に移動させ、当該処理位置P1において、真空脱ガス処理が行われる。
【0037】
以上の実施の形態によれば、付着物除去装置20が整備位置P2に対して移動可能であると共に、走行台車51により予熱排気ダクト54も同一の整備位置P2に対して移動可能になっている。これによって、予熱排気ダクト54を整備位置P2から退避させた状態で、当該整備位置P2において付着物除去装置20により排気口11内の付着物Sを除去することができる。また、付着物除去装置20を整備位置P2から退避させた状態で、当該整備位置P2において、予熱排気ダクト54を排気口11と設置排気ダクト70に接続して真空脱ガス槽10の予熱処理を行うことができる。このように排気口11内の付着物Sの除去と予熱処理を一の整備位置P2において適切に行うことができるので、従来のように付着物除去と予熱処理の作業スペース(図12の中間位置Q2と補修位置Q3)を別々に設ける必要がなく、整備システム1の占有面積を小さくすることができる。
【0038】
また、真空脱ガス槽10の移動距離を短くすることができ、従来のように真空脱ガス槽を図12に示した中間位置Q2で一旦停止させる必要もないので、真空脱ガス槽10の整備を短時間で行うことができる。しかも、従来の中間位置Q2における付着物の収集や清掃などの作業が不要になる。したがって、真空脱ガス槽10の整備の作業効率を向上させることができる。
【0039】
また、下部走行台車41は、バケット40を真空脱ガス槽10の下方に配置するのに用いられると共に、真空脱ガス槽10に取付けられる下部槽の交換にも用いられる。この点、従来では、図12に示した中間位置Q2にバケットを配置するための移動機構と、補修位置Q3で下部槽を交換する移動機構とを別々に設ける必要があったため、作業が煩雑になっていた。したがって、本実施の形態によれば、従来の作業の煩雑さを解消することができ、作業効率を向上させることができる。
【0040】
また、予熱排気ダクト54の設置排気ダクト側接続部62の端面には弾性部材63が設けられたので、真空脱ガス槽10の予熱処理において、シリンダ58により予熱排気ダクト54と設置排気ダクト70を接続する際、弾性部材63と設置排気ダクト70の接続端部71とを密着させることができる。しかも、予熱排気ダクト54が設置排気ダクト70に接続されていない状態において、弾性部材63は、その上端の高さ位置が設置排気ダクト70の接続端部71の高さ位置よりも高くなるように設けられたので、弾性部材63と設置排気ダクト70の接続端部71とをより確実に密着させることができる。これによって、予熱排気ダクト54と設置排気ダクト70との気密性を確保することができ、予熱処理中の真空脱ガス槽10内の排気を適切に行うことができる。
【0041】
さらに、設置排気ダクト70の接続端部71は、下面73が凸に湾曲した突出部72を有しているので、予熱排気ダクト54を設置排気ダクト70に接続する際に、弾性部材63を下面73の湾曲に沿って円滑に移動させることができ、予熱排気ダクト54と設置排気ダクト70との接続を円滑に行うことができる
【0042】
以上の実施の形態の予熱排気装置50において、図11に示すように予熱排気ダクト54を鉛直方向に移動させる他の移動機構としてのシリンダ80を設けてもよい。シリンダ80は、支持部材55の基台56に代えて設けられる。かかる場合、真空脱ガス槽10の予熱処理の際、シリンダ80により予熱排気ダクト54を設置排気ダクト70側に押圧することができる。これによって、予熱排気ダクト54と設置排気ダクト70との気密性をより確実に確保することができ、予熱処理中の真空脱ガス槽10内の排気をより適切に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、排気口内に付着した付着物の除去やの予熱処理などの真空脱ガス槽の整備を行う際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態にかかる整備システムの構成の概略を示す平面図である。
【図2】付着物除去装置の構成の概略を示す側面図である。
【図3】予熱排気装置の構成の概略を示す側面図である。
【図4】予熱排気ダクトと設置排気ダクトの接続部分付近の構成の概略を示す縦断面図である。
【図5】予熱排気ダクトが設置排気ダクトに接続されていない状態を示す説明図である。
【図6】予熱排気ダクトが設置排気ダクトに接続されていない状態を示す説明図である。
【図7】設置排気ダクトの接続端部底面の構成の概略を示す説明図である。
【図8】設置排気ダクトに予熱排気ダクトが接続される様子を示す説明図である。
【図9】付着物除去装置が整備位置に移動した様子を示す説明図である。
【図10】走行台車が整備位置に移動した様子を示す説明図である。
【図11】他の実施の形態にかかる予熱排気装置の構成の概略を示す側面図である。
【図12】従来の整備システムの構成の概略を示す平面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 整備システム
10 真空脱ガス槽
11 排気口
20 付着物除去装置
21 無限軌道
22 回転部
23 操作部
24 アーム
25 除去機構
26 ブレーカ
27 掻き出し板
30 プラットフォーム
40 バケット
41 下部走行台車
50 予熱排気装置
51 走行台車
52 モータ
53 走行用軌条
54 予熱排気ダクト
55 支持部材
56 基台
57 支持枠
58 シリンダ
59 本体部
60 真空脱ガス槽側接続部
61 ブレース
62 設置排気ダクト側接続部
63 弾性部材
70 設置排気ダクト
71 接続端部
72 突出部
73 下面
80 シリンダ
P1 処理位置
P2 整備位置
P3 待機位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空脱ガス槽の排気口内に付着した付着物を除去し、当該真空脱ガス槽の予熱処理を行う際に使用する整備システムであって、
真空脱ガス槽の排気口内に付着した付着物を除去し、かつ同じ場所にてその後に当該真空脱ガス槽の予熱処理を行う位置となる整備位置まで走行可能で、かつ前記整備位置から退避可能な走行台車と、
前記整備位置近傍に設けられた設置排気ダクトと、
前記走行台車に設けられた予熱排気ダクトと、
前記走行台車に設けられ、前記整備位置にある真空脱ガス槽の排気口側に前記予熱排気ダクトを移動可能な移動機構と、を有し、
前記移動機構によって前記予熱排気ダクトを真空脱ガス槽の排気口側に移動させて、前記予熱排気ダクトにおける真空脱ガス槽側接続部を真空脱ガス槽の排気口に接続した際に、前記予熱排気ダクトにおける設置排気ダクト側接続部が設置排気ダクトの接続端部に接続されるように、前記設置排気ダクトが配置されていることを特徴とする、真空脱ガス槽の整備システム。
【請求項2】
前記設置排気ダクトは前記整備位置の上方に配置され、前記予熱排気ダクトはアングル状であることを特徴とする、請求項1に記載の真空脱ガス槽の整備システム。
【請求項3】
前記予熱排気ダクトにおける設置排気ダクト側接続部の端面には弾性部材が設けられ、
この弾性部材の上端の高さ位置は、前記設置排気ダクトの接続端部の高さ位置よりも高く設定されていることを特徴とする、請求項2に記載の真空脱ガス槽の整備システム。
【請求項4】
前記設置排気ダクトの接続端部は、前記整備位置にある真空脱ガス槽の排気口と反対側に水平に突出する、下面がテーパ状または凸に湾曲した突出部を有することを特徴とする、請求項3に記載の真空脱ガス槽の整備システム。
【請求項5】
前記予熱排気ダクトを鉛直方向に移動させる他の移動機構を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の真空脱ガス槽の整備システム。
【請求項6】
前記整備位置に移動可能で、当該整備位置において前記排気口内の付着物を除去する付着物除去装置をさらに有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の真空脱ガス槽の整備システム。
【請求項7】
請求項6に記載の整備システムを用いた真空脱ガス槽の整備方法であって、
前記走行台車を前記整備位置から退避させた状態で、前記付着物除去装置を前記整備位置に移動させる工程と、
その後、前記付着物除去装置により前記排気口内の付着物を除去する工程と、
その後、前記付着物除去装置を前記整備位置から退避させた後、前記走行台車を前記整備位置に移動させ、前記移動機構により前記予熱排気ダクトを前記排気口と前記設置排気ダクトに接続する工程と、
その後、前記予熱処理を行う工程と、を有することを特徴とする、真空脱ガス槽の整備方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−121171(P2010−121171A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295852(P2008−295852)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】