説明

真空脱ガス装置の浸漬管

【課題】キャスタブル層の外方に配置されている空気がキャスタブル層をこれの径内方向に透過して溶湯通路側に移行することを抑制し、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分を抑え、溶鋼等の溶湯の高品質化に貢献できる真空脱ガス装置の浸漬管を提供する。
【解決手段】浸漬管1は、縦方向に沿った中心軸線1pの回りに巡らされた芯金2と、中心軸線1pを通過する縦向きの溶湯通路30を形成する芯金2の内周側に筒形状に配置されたれんが層31と、芯金2の外周側に配置され流動性を有するキャスタブル材料を固化させて形成された筒形状のキャスタブル層32とを備える。キャスタブル層32の外周壁面32pには、気体に対して難透過性をもつ気体難透過性部材8が筒形状に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空脱ガス装置の浸漬管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空脱ガス装置に用いられる浸漬管が提供されている(特許文献1)。この浸漬管は、縦方向に沿った中心軸線の回りに巡らされた芯金と、中心軸線を通過する縦向きの溶湯通路を形成する芯金の内周側に筒形状に配置されたれんが層と、芯金の外周側に配置され流動性を有するキャスタブル材料を固化させて形成された筒形状のキャスタブル層とを備えている。このものによれば、使用時には、高温の溶湯が溶湯通路を通過するため、浸漬管は高温に晒される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−226092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浸漬管の溶湯通路は、使用時に真空度が高い減圧雰囲気に晒される。ここで、上記したキャスタブル層は、流動性をもつキャスタブル材料を乾燥固化させて形成されているため、キャスタブル層の緻密性は必ずしも充分ではない。このためキャスタブル層は多数の気孔を有する。このため浸漬管の使用時には、キャスタブル層の外方に配置されている空気がキャスタブル層をこれの径内方向に透過し、溶湯通路側に浸透するおそれがある。この場合、溶湯通路を流れる溶鋼等の溶湯に空気が混入し、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分等が過剰に増加するおそれがある。この場合、溶鋼等の溶湯の高品質化に好ましくない。
【0005】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、キャスタブル層の外方に配置されている空気がキャスタブル層をこれの径内方向に透過して溶湯通路側に移行することを抑制し、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分を抑え、溶鋼等の溶湯の高品質化に貢献できる真空脱ガス装置の浸漬管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る真空脱ガス装置の浸漬管は、縦方向に沿った中心軸線の回りに巡らされた芯金と、中心軸線を通過する縦向きの溶湯通路を形成する芯金の内周側に筒形状に配置されたれんが層と、芯金の外周側に配置され流動性を有するキャスタブル材料を固化させて形成された筒形状のキャスタブル層とを備えており、キャスタブル層の外周壁面には、気体に対して難透過性をもつ気体難透過性部材が筒形状に設けられている。
【0007】
キャスタブル層は、キャスタブル材を流し込んで固化させることにより形成されているため、製造は容易であるものの、緻密性は必ずしも充分ではない。そこで、キャスタブル層の外周壁面には、気体に対して難透過性をもつ気体難透過性部材が筒形状に設けられている。気体難透過性部材は、キャスタブル層の外方に配置されている空気がキャスタブル層をこれの径内方向に透過して溶湯通路側に移行することを抑制する。よって、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分を抑え、溶鋼等の溶湯の高品質化に貢献できる。
【0008】
ここで、気体難透過性部材は、金属板または緻密コート被膜で形成されていることが好ましい。また、気体難透過性部材は、キャスタブル層よりも気孔率が小さく筒形状に一体成形された低気孔率れんがで形成されていることも好ましい。また、気体難透過性部材は、キャスタブル層よりも気孔率が小さく筒形状に配置された複数の低気孔率れんがと、気体に対して難透過性をもち隣り合う低気孔率れんが間の目地を塞ぐ気体難透過性目地材とで形成されていることも好ましい。また、気体難透過性部材の下端部は、溶湯の湯面よりも下方または湯面付近に位置することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、浸漬管の使用時において溶鋼等の溶湯に空気が侵入することを抑制できる。よって、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分等の空気成分を抑え、溶鋼等の溶湯の高品質化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1に係り、浸漬管の断面図である。
【図2】実施形態2に係り、浸漬管の断面図である。
【図3】実施形態3に係り、浸漬管の断面図である。
【図4】実施形態4に係り、浸漬管の断面図である。
【図5】実施形態5に係り、浸漬管の断面図である。
【図6】実施形態6に係り、浸漬管の断面図である。
【図7】図6におけるA−A線で切断した断面図である。
【図8】適用形態に係り、浸漬管が搭載された真空脱ガス装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
図1は実施形態1の概念を示す。図1は、中心軸線1pよりも右半分のみを図示しており、中心軸線1pよりも左半分は省略されているが、基本的には中心軸線1pを介して対称形状をなす。本実施形態は、真空脱ガス装置に用いられる浸漬管1に適用されている。
【0012】
浸漬管1は、縦方向に沿った中心軸線1pの回りに連続的に巡らされた筒形状をなす合金(例えば炭素鋼、合金鋼等の鉄合金)で形成された芯金2と、中心軸線1pを通過する縦向きの溶湯通路30を形成する耐火物層3とを備えている。耐火物層3は筒状をなしており、中心軸線1pを通過する縦向きの溶湯通路30を形成する芯金2の内周側、芯金2の外周側、および、芯金2の下側に配置されている。芯金2は、上端部を溶接またはボルト締結等で固定するリング形状をなす固定フランジ部24と、定形れんが層31の下部を支える芯金2において径内方向に突設されたアーム状またはフランジ状の支持部26とを備えている。なお、支持部26は、芯金2の下端部22dよりも上方に位置するが、これに限定されるものではない。また、図1に示すように浸漬管1のリング形状の固定フランジ部24は、相手部材にボルト固定される。
【0013】
芯金2は、金属(例えば炭素鋼、合金鋼)で筒形状に形成されている。芯金2は、耐火物層3の芯体として機能する。更に、浸漬管1の使用時(真空脱ガス処理時)には、溶湯通路30側は減圧される。このため、周方向に連続する金属で形成された芯金2は、外気遮断性を有しており、更に、浸漬管1の外周側に存在する外気を溶湯通路30側に吸い込むことを抑制する機能を有することができる。従って、溶湯通路30に対する空気浸透性は抑制されている。但し、芯金2の下端部22dは、後述する底側キャスタブル層33の下面33dよりも上方に位置するため、浸漬管1の外部の空気が、底側キャスタブル層33を介して矢印X方向(径内方向,図1参照)に沿って溶湯通路30に向けて浸透する可能性がある。この場合、溶湯通路30を通過する溶鋼等の溶湯に空気が巻き込まれるおそれがある。なお、芯金2は筒形状でなくても良く、必要に応じて、棒材を筒形状に組み付けて形成しても良い。
【0014】
耐火物層3は、芯金2の内周側に筒形状に配置された定形れんが層31と、芯金2の外周側に配置された外側キャスタブル層32と、芯金2の下部側に配置された底側キャスタブル層33とを有する。底側キャスタブル層33は下面33dをもつ。定形れんが層31は、複数個の定形れんがを中心軸線1p回りで周方向に配置することにより形成されている。定形れんがは、高温において焼成されており、耐熱性および強度をもつ。図1から理解できるように、定形れんが層31の内周部31iと底側キャスタブル層33の内周部33iとは、高温の溶湯(例えば溶鋼)が通過できる上下方向に延びる1本の溶湯通路30を形成する。外側キャスタブル層32は、流動性をもつキャスタブル材料を流し込んで乾燥固化させたキャスタブル層とされている。底側キャスタブル層33は、流動性をもつキャスタブル材料を流しこんで乾燥固化させたキャスタブル層とされている。芯金2の内周面と耐火れんが層31の外周面との間にも、キャスタブル層330が装填されている。
【0015】
図1は、中心軸線1pに沿った方向で切断した縦断面を示す。図1に示すように、芯金2の外周部のほぼ全域には、Vスタッド(Vスタッドを含むYスタッドも包含)からなる複数個の係合部57が溶接やボルト等で固定されている。係合部57は、外側キャスタブル層32に埋設されており、その脱落を抑制する。係合部57は、中心軸線1pの回りを1周するように周方向においておよび高さ方向において間隔を隔てて、芯金2の外周側において複数個配置されている。
【0016】
本実施形態によれば、使用時には、浸漬管1の溶湯通路30付近は減圧される。ここで、キャスタブル層32,33は、流動性をもつキャスタブル材料を乾燥固化させて形成されているため、キャスタブル層32,33の緻密性は必ずしも充分ではない。従ってキャスタブル層32,33は多数の気孔をもつ。このため浸漬管1の使用時において、キャスタブル層32,33の外方に配置されている空気がキャスタブル層32,33をこれの径内方向に透過して溶湯通路30側に浸透するおそれがある。この場合、溶湯通路30を流れる溶鋼等の溶湯に空気が混入し、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分等が過剰に増加するおそれがある。この場合、溶鋼等の溶湯の高品質化に好ましくない。
【0017】
この点本実施形態によれば、図1に示すように、外側キャスタブル層32の外周壁面32pには、気体に対して難透過性をもつ薄肉または厚肉状の金属板(例えば炭素鋼や合金鋼等の鉄合金、チタン合金)で形成された気体難透過性部材8Aが筒形状にほぼ同軸的に被覆されて設けられている。金属板の厚みは浸漬管1のサイズ等に応じて適宜選択できるが、0.1〜5ミリメートル、0.5〜2ミリメートルが例示される。但しこれに限定されるものではない。なお、気体難透過性部材8Aとしては、金属板に替えてセラミックス板としても良い。
【0018】
気体難透過性部材8Aは、外側キャスタブル層32の外周壁面32p、特に外周壁面32pの上部領域の外周側に接触しつつ全周にわたり包囲している。図1に示すように、気体難透過性部材8Aは段付き円筒形状をなしており、内筒部80と、内筒部80の下端部に設けられたフランジ部81と、フランジ部81の外周部に設けられた外筒部82と、シール性を高めるべく中心軸線1pの回りを1周するように連続して形成されたリング形状の溶接部84,85,86とを備えている。このように気体難透過性部材8Aは段付き円筒形状をなしているため、径が全長にわたり同一の直円筒構造に比較して、段部(フランジ部81)における応力吸収によって捲れ上がりが抑制される構造とされている。溶接部84,85,86は、中心軸線1pの回りをそれぞれ1周するように連続して形成されているため、シール性が確保される。なお、溶接部84により、気体難透過性部材8Aは、固定フランジ部24の下面24dに固定されている。
【0019】
図1に示すように、気体難透過性部材8Aの上部は、溶鋼等の溶湯W102の湯面(スラグライン)W100よりも上方に配置されている。従って、気体難透過性部材8Aは、湯面W100に対面する位置に配置されている。よって、浸漬管1の使用初期には、気体難透過性部材8Aの下端部8dは、湯面W100よりも下方とされている。湯面(スラグライン)W100よりも上方の空気は、キャスタブル層32,33などを介して溶湯通路30側に透過する。しかしこの空気の透過を、気体透過遮断性をもつ緻密性をもつ金属板で形成された気体難透過性部材8Aが遮断させる。気体難透過性部材8Aのうち湯面(スラグライン)W100よりも下方は、湯面(スラグライン)W100よりも下方に存在する溶湯W102に対面しているものの、空気には対面していないため、空気の侵入は抑えられ、空気に含まれる窒素の侵入の不具合は抑えられている。なお、本発明者が行った試験によれば、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素濃度を従来技術(同タイプおよび同サイズであるが、気体難透過性部材8Aが設けられていない浸漬管)に比較して、40〜70%程度に低減できることが確認された。
【0020】
本実施形態によれば、図1に示すように、金属製の気体難透過性部材8Aが湯面W100の上方に存在することが有効である。使用時には、気体難透過性部材8Aのうち湯面(スラグライン)W100に対面する領域8xには、スラグW101が付着することがある。このように領域8xはスラグW101により覆われる。この結果、気体難透過性部材8Aのうち湯面(スラグライン)W100に対面する領域8x付近は、溶鋼等の溶湯に起因する消耗が抑えられ、耐久性が確保されている。
【0021】
(実施形態2)
図2は実施形態2の概念を示す。本実施形態は、前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。気体難透過性部材8Bは、外側キャスタブル層32の外周壁面32pを外周側から包囲しており、直円筒形状をなしており、溶接部84を備えている。溶接部84はシール性をもち、中心軸線1pの回りを1周するようにリング形状をなしている。気体難透過性部材8Bは、固定フランジ部24の下面24dに固定されている。気体難透過性部材8Bは、溶鋼等の溶湯W102の湯面(スラグライン)W100に対面する位置に配置されている。従って、浸漬管1の使用初期には、気体難透過性部材8Bの下端部8dは、湯面(スラグライン)W100よりも下方とされている。湯面(スラグライン)W100よりも上方の空気は、溶湯通路30側に透過するが、この空気の透過を、緻密性をもつ金属板で形成された気体難透過性部材8Bが遮断させる。なお、図略の取付具により浸漬管1のリング形状の固定フランジ部24は、相手部材に連結固定される。
【0022】
(実施形態3)
図3は実施形態3の概念を示す。本実施形態は、前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。気体難透過性部材8Cは、外側キャスタブル層32の外周壁面32pを外周側から包囲しており、直円筒形状をなしている。気体難透過性部材8Cは、外側キャスタブル層32よりも緻密であり、気体透過を遮断できるものであり、耐熱性を有する微小なセラミックス粉末の集合体を無機バインダ等のバインダと共に緻密コート皮膜として堆積させることにより形成されている。堆積手段としては、セラミックス粉末を火炎と共に溶射する方式、あるいは、セラミックス粉末をバインダと共に分散させた液状物を塗布させた後に乾燥させる塗工が例示される。セラミックス粉末は、例えばシリカ、炭化珪素、マグネシア、アルミナ、スピネル、ムライト、窒化ケイ素等が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0023】
気体難透過性部材8Cの難透過性を高めるためには、セラミックス粉末の粒子の粒径は微細な方が好ましい。例えば、20マイクロメートル以下、10マイクロメートル以下、5マイクロメートル以下が好ましい。場合によっては、セラミックス粉末に替えて、鉄合金等の微小な金属粒子を溶射させて溶射膜を気体難透過性部材8Cを形成しても良い。セラミックス粒子または金属粒子で形成された気体難透過性部材8Cは、キャスタブル層32,33よりも緻密性をもち、キャスタブル層32,33よりも気孔率が低い。気体難透過性部材8Cの気孔率をα1とし、キャスタブル層32,33の気孔率をα2とすると、α1/α2=0.4以下、0.3以下、特に0.2以下、0.1以下されていることが好ましい。
【0024】
気体難透過性部材8Cは、溶鋼等の溶湯W102の湯面(スラグライン)W100に対面する位置に配置されている。従って、気体難透過性部材8Cの下端部8dは、湯面(スラグライン)W100よりも下方とされている。湯面(スラグライン)W100よりも上方の空気は、溶湯通路30側に透過するが、この空気の透過を、緻密コート皮膜で形成された気体難透過性部材8Cが遮断させる。なお、図略の取付具により浸漬管1のリング形状の固定フランジ部24は、相手部材に連結固定される。
【0025】
(実施形態4)
図4は実施形態4の概念を示す。本実施形態は、前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。金属の筒で形成された気体難透過性部材8Dは、断面で波形状とされた部分、つまり、伸縮変形可能な断面波部である蛇腹部88をもつ。このため浸漬管1の使用時において気体難透過性部材8Dに熱膨張および熱収縮が繰り返して作用するときであっても、蛇腹部88の伸縮が期待でき、溶接部84,85,86に作用する負荷が低減される。この場合、溶接部84,85,86の耐久性、シール性の向上に貢献できる。更に気体難透過性部材8Dのうち湯面W100に対面する領域8xでは、付設部材として機能する金属板810を溶接等で積層させて厚肉化させて強化させている。金属板810は、スラグW101を付着させ易くするため凹凸811を有することが好ましい。領域8xはスラグW101で覆われるため、金属板810の耐久性が向上することを期待できる。なお、図4に示すように浸漬管1のリング形状の固定フランジ部24は、相手部材にボルト固定される。
【0026】
(実施形態5)
図5は実施形態5の概念を示す。本実施形態は、前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。気体難透過性部材8Eは、外側キャスタブル層32よりも気孔率が小さく緻密であり、気体透過を遮断できる直円筒形状に一体成形された筒状低気孔率れんが800Aよりなる。直円筒形状の気体難透過性部材8E(筒状低気孔率れんが800A)は、二重円筒形状に組まれた型枠内にれんが材料を流し込み、プレス成形または冷間等方圧成形(CIP成形)等を行った後に乾燥することにより形成され、外側キャスタブル層32の外周壁面32pを外周側から包囲している。図5に示すように、気体難透過性部材8Eの上部には、断面L形の金属製の複数個の結合部材801が中心軸線1pの回りを1周するように一定間隔で埋め込まれている。この結合部材801と固定フランジ部24とが溶接部802により溶接されている。これにより気体難透過性部材8Eは、固定フランジ部24の下面24dに固定されている。なお、外側キャスタブル層32は、気体難透過性部材8Eを固定フランジ部24の下面24dに固定した後に、気体難透過性部材8Eと芯金2との間にキャスタブル材料を流し込んで乾燥固化させることにより形成される。
【0027】
気体難透過性部材8Eは、溶鋼等の溶湯W102の湯面(スラグライン)W100に対面する位置に配置されている。従って、気体難透過性部材8Eの下端部8dは、湯面(スラグライン)W100よりも下方とされている。湯面(スラグライン)W100よりも上方の空気は、溶湯通路30側に透過するが、この空気の透過を、外側キャスタブル層32よりも気孔率が小さくて緻密な筒状低気孔率れんが800Aで形成された気体難透過性部材8Eが遮断させる。なお、図略の取付具により浸漬管1のリング形状の固定フランジ部24は、相手部材に連結固定される。
【0028】
(実施形態6)
図6は実施形態6の概念を示す。本実施形態は、前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。気体難透過性部材8Fは、外側キャスタブル層32よりも気孔率が小さく緻密であり、気体透過を遮断できる直円筒形状に配置された複数個のブロック状低気孔率れんが800Bと、ブロック状低気孔率れんが800B間の目地を塞ぐ溶接部(気体難透過性目地材)804とで形成されている。図6及び7に示すように、中心軸線1pの回りを1周するように周を36分割して10°毎に隙間無く配置された36個のブロック状低気孔率れんが800Bは、外側キャスタブル層32の外周壁面32pを外周側から包囲している。図7に示すように、ブロック状低気孔率れんが800Bは上面視で台形状をなしており、台形状の先細側が中心軸線1p側を向いている。ブロック状低気孔率れんが800Bの横方向(周方向)の両端には、側面メタルケース803が複数枚の爪803aをブロック状低気孔率れんが800B内に埋め込むことにより固定されている。爪803aは、側面メタルケース803の面にV字の切り込みを入れて頂点を起こすことにより形成されている。
【0029】
型枠内の所定の位置に側面メタルケース803を配置した後、型枠内にれんが材料を流し込み、プレス成形または冷間等方圧成形(CIP成形)等を行った後に乾燥することによりブロック状低気孔率れんが800Bが形成される。36個のブロック状低気孔率れんが800Bを直円筒形状に配置した後、隣り合うブロック状低気孔率れんが800Bの側面メタルケース803同士を内周側から溶接部804により溶接する。これによりブロック状低気孔率れんが800B間の目地が塞がれて、周方向の全体にわたって気体透過を遮断できる気体難透過性部材8Fが形成される。図6及び7に示すように、中心軸線1pの回りの複数の所定の位置にあるブロック状低気孔率れんが800Bの上部には、断面L形の金属製の複数個の結合部材801が埋め込まれている。この結合部材801と固定フランジ部24とが溶接部802により溶接されている。これにより気体難透過性部材8Fは、固定フランジ部24の下面24dに固定されている。なお、外側キャスタブル層32は、気体難透過性部材8Fを固定フランジ部24の下面24dに固定した後に、気体難透過性部材8Fと芯金2との間にキャスタブル材料を流し込んで乾燥固化させることにより形成される。
【0030】
気体難透過性部材8Fは、溶鋼等の溶湯W102の湯面(スラグライン)W100に対面する位置に配置されている。従って、気体難透過性部材8Fの下端部8dは、湯面(スラグライン)W100よりも下方とされている。湯面(スラグライン)W100よりも上方の空気は、溶湯通路30側に透過するが、この空気の透過を、外側キャスタブル層32よりも気孔率が小さくて緻密なブロック状低気孔率れんが800Bとブロック状低気孔率れんが800B間の目地を塞ぐ溶接部804とで形成された気体難透過性部材8Fが遮断させる。なお、図略の取付具により浸漬管1のリング形状の固定フランジ部24は、相手部材に連結固定される。
【0031】
(適用形態)
図8は適用形態を示す。図8に示すように、RH真空脱ガス装置とも呼ばれる真空脱ガス装置は、環流式であり、高い真空状態に減圧される上部槽100と、下部槽110と、浸漬管1として互いに並設された2個一対の浸漬管1R,1Lとを有する。操業時には、浸漬管1R,1Lが取鍋200にセットされる。この状態で、容器としての取鍋200の溶湯230(溶鋼)は、一方の浸漬管1L(上昇管)の溶湯通路30を上昇し、他方の浸漬管1R(下降管)の溶湯通路30を下降して取鍋200に戻るように環流される。このように浸漬管1R,1Lを介して取鍋200内の溶湯230を環流させることにより、取鍋200内の溶湯230の脱ガスが進行する。溶鋼等の溶湯230から排出されたガスは、矢印W方向に排出される。
【0032】
(その他の実施形態)
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。例えば、係合部57はT形状としても良い等、その形状は限定されない。また、実施形態6においては、周を36分割して10°毎にブロック状低気孔率れんが800Bを配置しているが、周の分割数は36分割に限定されない。例えば、周を2分割にして、半筒状の2個のブロック状低気孔率れんが中心軸線1pの回りに配置することもできる。また、実施形態6においては、溶接部804(金属)を気体難透過性目地材としているが、外側キャスタブル層32以上に気体透過を遮断することが可能な材料であれば気体難透過性目地材は金属に限定されない。例えば、実施形態3における気体難透過性部材8C(セラミックス粉末)を気体難透過性目地材として使用することもできる。
【符号の説明】
【0033】
1は浸漬管、1pは中心軸線、2は芯金、3は耐火物層、30は溶湯通路、31は定形れんが層(れんが層)、32は外側キャスタブル層(キャスタブル層)、32pは外周壁面、33は底側キャスタブル層、8A〜8Fは気体難透過性部材、8dは下端部、800Aは筒状低気孔率れんが(低気孔率れんが)、800Bはブロック状低気孔率れんが(低気孔率れんが)、804は溶接部(気体難透過性目地材)、W100は湯面、W102は溶湯を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空脱ガス装置に用いられる浸漬管であって、縦方向に沿った中心軸線の回りに巡らされた芯金と、前記中心軸線を通過する縦向きの溶湯通路を形成する前記芯金の内周側に筒形状に配置されたれんが層と、前記芯金の外周側に配置され流動性を有するキャスタブル材料を固化させて形成された筒形状のキャスタブル層とを備えており、
前記キャスタブル層の外周壁面には、気体に対して難透過性をもつ気体難透過性部材が筒形状に設けられている真空脱ガス装置の浸漬管。
【請求項2】
請求項1において、前記気体難透過性部材は、金属板または緻密コート被膜で形成されている真空脱ガス装置の浸漬管。
【請求項3】
請求項1において、前記気体難透過性部材は、前記キャスタブル層よりも気孔率が小さく筒形状に一体成形された低気孔率れんがで形成されている真空脱ガス装置の浸漬管。
【請求項4】
請求項1において、前記気体難透過性部材は、前記キャスタブル層よりも気孔率が小さく筒形状に配置された複数の低気孔率れんがと、気体に対して難透過性をもち隣り合う該低気孔率れんが間の目地を塞ぐ気体難透過性目地材とで形成されている真空脱ガス装置の浸漬管。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一つにおいて、前記気体難透過性部材の下端部は、前記溶湯の湯面よりも下方または湯面付近に位置する真空脱ガス装置の浸漬管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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