説明

真空設備用ゲートシステム

この発明は、真空成膜設備を通して搬送方向に移動可能な基板に成膜するための真空成膜設備用ゲートシステム(1)であって、入力側と出力側に、それぞれ一次真空ゲートチェンバー(2)と成膜チェンバー(4)に隣接した搬送チェンバー(3)とを備えており、その場合に、搬送方向に対して入力側の搬送チェンバーの前と、搬送方向に対して出力側の搬送チェンバーの後で精密真空に設定可能であるゲートシステムに関する。一次真空ゲートチェンバー(2)が、搬送チェンバー(3)に直接隣接しており、一次真空ゲートチェンバー(2)内で精密真空に設定可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空成膜設備を通して搬送方向に移動可能な基板に成膜するための真空成膜設備用ゲートシステムであって、入力側と出力側に、それぞれ一次真空ゲートチェンバーと成膜チェンバーに隣接した搬送チェンバーとを備えており、その場合に、搬送方向に対して入力側の搬送チェンバーの前と、搬送方向に対して出力側の搬送チェンバーの後で精密真空に設定可能であるゲートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の真空成膜設備用ゲートシステムは、主に、例えば、板ガラスの基板用のインライン大規模面成膜設備における産業用途に用いることができる。従来の成膜チャンバーの両側に組み込まれたゲートシステムの構造は、非特許文献1の建築用ガラスに成膜するための通り抜け型ゲートシステムの形式である。このゲートシステムは、通常一次真空ゲートチャンバーと、精密真空ゲートチャンバーと、搬送チャンバーとから構成される。場合によっては、プロセスの準備と圧力の安定化の機能を持つ別の精密真空ゲートチャンバーが、一次真空ゲートチャンバーと搬送チャンバーの間に繋げられる。その中で基板が真空成膜設備に供給される入力側の一次真空ゲートチャンバーと、同じく出力側の一次真空ゲートチャンバー内において、約10-2バールの圧力範囲の一次真空圧力を生成している。そのことは、通常一次真空ゲートチャンバーに繋がる一次真空ポンプシステムを用いて行われ、そのポンプシステムは、ルーツポンプとも呼ばれるルーツブロワーポンプから構成され、大気側において、このルーツポンプの前は、フォアポンプとしてのスライドベーン型回転ポンプが、直列に接続されている。
【0003】
この精密真空ゲートチャンバーは、別の圧力レベル及び圧力を安定化するための圧力バッファとしての働きを有する。ここで、中間的な真空は、一次真空圧と高真空圧との間に有るが、成膜チャンバーの各プロセス真空圧力に近い、例えば、約10-3バールの圧力で生成される。この場合、通常一つ以上のポンプシステムが、一次真空ポンプシステムの構造に対応して、適合する性能で精密真空ゲートチャンバーに繋がっている。それぞれ搬送方向に対して、最初と最後の成膜チャンバーと直接隣接する搬送チャンバーでは、基板は、最初の成膜チャンバーに引き渡すために準備されるか、或いは最後の成膜チャンバーから取り出される。そこでは、約10-4〜10-5バールの本来のプロセス真空圧力に達している精密真空圧力が保持される。そのために、通常複数の並列に接続されたターボ分子ポンプが、搬送チャンバーと繋がっており、その搬送チャンバーの大気側には、フォアポンプ又はフォアポンプと組み合わせたルーツポンプが、その前に直列に接続される。ゲートシステムのすべてのゲートチャンバーは、大気側もプロセス側もゲートバルブによって互いに真空技術的に分離されている。
【0004】
益々より大きな努力が、真空成膜設備のサイクル時間を短縮することに払われるているので、ゲートシステムに対して、全体的なゲート時間のサイクルを短縮することに関する要求が益々高くなってきている。このサイクル時間は、排気時間と、成膜時間と、付帯的時間、即ち、基板をゲートチャンバーを通して搬送するための時間とゲートバルブの開放及び閉鎖時間とによって決まる。この場合、排気時間と成膜時間は、物理的な制約により、更に低減することができないので、これらの付帯的時間は、大きな部分を占めるとともに、サイクル時間の短縮を制限するものである。
【0005】
ゲートサイクル時間の低減は、例えば、特許文献1により周知の複数の圧力レベルを持つ一次真空チャンバーと搬送チャンバーの構成により得られる。特別なフロー部品によって、搬送チャンバーのチェンバー容積を、複数のバッファ区画に区分しており、その結果プロセス領域と一次真空ゲートチャンバーとの圧力の分離を段階的に実現している。そうすることによって、一次真空ゲートチャンバーとプロセスチャンバーとの間の圧力勾配の安定化を実現して、ゲートバルブを備えた別の中間真空チャンバーを不要としている。このため、中間真空チャンバーのゲートバルブに対する動作時間も不必要となる。しかし、この解決法の欠点としては、この搬送チャンバーは、高い構造技術的な負担を必要とするとともに、大きな所要スペースを有する。
【特許文献1】ドイツ特許第19808163−C1号明細書
【非特許文献1】"Vakuumtechnik-Grundlagen und Anwendungen" v. Pupp/Hartmann, Carl Hanser Verlag, S. 426
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、ゲートシステムの全体的なサイクル時間を低減すると同時に構造及び設備技術的な負担を軽減する真空成膜設備のゲートシステムを作ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、一次真空ゲートチャンバーを搬送チャンバーに直接隣接させて、一次真空ゲートチャンバー内において精密真空に設定可能とすることによって解決される。この発明では、別個の精密真空ゲートチャンバーは、もはや不必要となる。プロセス真空圧力に非常に近い精密真空圧力レベルでの精密真空は、一次真空ゲートチャンバー内で直接生成される。このことは、この発明にもとづきターボ分子ポンプと組み合わせた形で、従来の一次真空ポンプシステムをポンプ技術的に拡張することによって実現され、それを一次真空ゲートチャンバーの排気のために使用することは、従来技術では不可能であった。通常ターボ分子ポンプは、約2*10-3バール以下の絶対圧力で初めて使用可能であり、より高い圧力では、高すぎるガス成分は、摩擦と発熱が大きくなるためにポンピング媒体内で破壊を起こす結果となった。ターボ分子ポンプを改善して、このポンプが、圧力に対応可能となり、その結果約10-2バールの絶対圧力でも使用することができるようになった。このことにより、今や一次真空ポンプシステムによって提供される約10-2バールの一次真空ゲートチャンバーのチャンバ圧力以下でターボ分子ポンプを接続することが可能である。
【0008】
精密真空ゲートチャンバー全体の廃止によって、そのゲートバルブも不要となり、そのことは、精密真空ゲートチャンバーのバルブ開放及び閉鎖時間を削減することとなり、基板の停滞時間が低減される。従って、有利には、ゲートシステムの全体的なサイクル時間が低減される。同時に、真空成膜設備の両側の精密真空ゲートチャンバーに関する構造上の所要スペースが不要となる。
【0009】
この解決法の有利な実施形態では、一次真空ポンプシステムと精密真空ポンプシステムは、それぞれ一次真空ゲートチャンバーと接続することが可能である。一次真空を生成するための従来の一次真空ポンプシステムと精密真空を生成するための精密真空ポンプシステムは、駆動可能な制御バルブを用いて一次真空ゲートチャンバーに並列に並んで接続されており、順次動作方式により、一次真空ゲートチャンバー内において、プロセス真空圧力に非常に近い精密真空レベルを達成するまで、圧力のカスケードを実現している。この場合、先ずは一次真空システムを動作させ、その場合に、並行して、待機接続状態で精密真空システムを、一次真空ゲートチャンバーに対する制御バルブを閉じた形で使用可能状態となるまで動作させる。このフェーズの間に、精密真空ポンプシステムのフォアポンプは、低い性能で、保持真空圧力を生成する一方、系に接続された場合、このポンプは、主ポンプによりポンプシステムを始動することができる。このフォアポンプは、必要な目標とする高真空圧力を生成するために精密真空ポンプシステムを一次真空ゲートチャンバーに接続した時に始めてその最高性能に達する。従って、制御技術的に小さい負担で、一次真空ゲートチャンバーと精密真空ゲートチャンバーに対して、周知のポンプシステムを再利用することができる。
【0010】
この発明の目的に適った実施形態は、一次真空ポンプシステムを精密真空ポンプシステムと接続可能とすることによって得られる。両方の並行に動作するポンプシステムをそれぞれ直接配管で接続する以外に、媒体側で接続することによって、一次真空ポンプシステムの構成部品を精密真空ポンプシステムを動作させるために使用すること及びその逆が可能となる。このことは、例えば、一方のポンプシステムのポンプが障害となった場合に有効である。並行的なポンプシステムのポンプは、直ちに交代して接続することが可能である。
【0011】
この発明の特に有利な改善構成では、精密真空ポンプシステムの主ポンプの圧力側は、保持ポンプの吸気側と接続されており、精密真空ポンプシステムの主ポンプの圧力側は、制御バルブを備えた接続配管を通して、一次真空ポンプシステムの主ポンプの吸気側と接続することが可能である。この場合、一次真空ポンプシステムは、精密真空ポンプシステムのフォアポンプとして使用される。一次真空ポンプシステムと一次真空ゲートチャンバーとの直接的な接続配管は、対応する圧力レベルが達成された場合、バルブを閉鎖することによって閉められると同時に、バイパスとして働く接続配管の制御バルブが開放され、その結果一次真空ポンプシステムは、精密真空ポンプシステムの主ポンプと直列接続の形で稼動可能な状態で接続されることとなる。バイパスバルブを開放すると同時に、精密真空ポンプシステムの一次真空ゲートチャンバーとの接続配管のバルブを開放し、それによって、一次真空ポンプシステムは、精密真空ポンプシステムのフォアポンプとして動作することが可能となる。精密真空ポンプシステムの本来のフォアポンプの構成は、もはや従来の実施形態及び性能としては必要ではない。精密真空ポンプシステムの主ポンプを、常に使用可能な状態とするために、圧力側には、最小限の性能の保持ポンプを置く必要があるだけであり、この保持ポンプは、始動及び待機フェーズにおいて、制御バルブを閉鎖した場合に、精密真空ポンプシステムの主ポンプに対して、真空保持圧力を実現するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施例により、この発明を説明する。付属の図面には、インライン成膜設備に対する入力側のゲートシステム1が、模式的に図示されている。この場合、この発明に関連する構成部品だけを図示している。この発明によるゲートシステム1では、一次真空ゲートチャンバー2には、搬送チャンバー3が繋がっており、この搬送チャンバーは、又もや成膜チャンバー4と直接隣接している。これらの個々のチャンバーは、ゲートバルブ5によって真空技術的に互いに分離されている。一次真空は、一次真空ゲートチェンバー2内において、一次真空ゲートチェンバー2に対して並列に繋がった二つの一次真空ポンプシステム6によって生成される。これらのポンプシステムは、それぞれ主ポンプ8としてのルーツブロワーポンプ7(ルーツポンプ)とそれと直列に接続されたフォアポンプ10としてのスライドベーン型ロータリーポンプ9とから構成されている。一次真空ポンプシステム6の両方の接続部は、制御バルブ11によって、一次真空ゲートチェンバー2から分離可能である。これらの一次真空ポンプシステム6と並行して、主ポンプ14として四つのターボ分子ポンプ13を並列に配置した精密真空ポンプシステム12が、一次真空ゲートチェンバー2と接続されている。これらの主ポンプ14には、保持ポンプ15よりも低い性能のスライドベーン型ロータリーポンプ9が、直列接続の形で割り当てられている。精密真空ポンプシステム12の接続部も、制御バルブ16によって、一次真空ゲートチェンバー2から分離可能である。精密真空システム14の主ポンプの圧力側と両方の一次真空システム8の中の一方の主ポンプの吸気側との間の接続配管17は、別の制御バルブ18によって分離可能であり、両方の真空システムの間のバイパス接続を実現している。一つ以上の基板を一次真空ゲートチェンバー2に搬入した後、一次真空ポンプシステム6を作動することによって、一次真空を設定する。その間は、精密真空システム16の制御バルブと接続配管18の制御バルブを閉鎖している。同時に、ターボ分子ポンプ13を待機動作レベルで作動させる。これらのターボ分子ポンプ13は、その構造形態に対応して、15分以内の長い始動準備時間を必要とする。しかし、始動準備時間後には、これらのポンプは、真空圧力レベルで直ちに使用可能な待機状態に保持することができる。従って、ターボ分子ポンプ13は、連続動作で作動されており、その場合、制御バルブ11,16を閉鎖した形の待機動作レベルでは、ターボ分子ポンプ13の前に接続された保持ポンプ15が、ターボ分子ポンプ13に対して、約10-5バールの真空保持圧力を生成している。この場合、ポンピングする押しのけ容積は、ほぼ零なので、この真空保持圧力を実現するための保持ポンプ15は、低い性能が必要なだけである。一次真空ゲートチェンバー2内において、約10-2バールの一次真空が実現されると、一次真空ポンプシステムの制御バルブ11が閉鎖されると同時に、精密真空ポンプシステムの制御バルブ16と接続配管の制御バルブ18が開放される。ここで、ターボ分子ポンプ13は、その作用動作レベルにおいて、一次真空ゲートチェンバー2から吸気し、その場合に、接続配管17によって接続された一次真空ポンプシステム6は、ここでは精密真空ポンプシステム12のフォアポンプとしての機能を果たし、ターボ分子ポンプ13に対する別個の性能の良いフォアポンプを節約している。一次真空ゲートチェンバー2内における一次真空の生成に続いて、基板を別のゲートチェンバーに移送する必要無しに、直ぐに約10-4〜10-5バールのプロセス真空圧力に近い精密真空が生成される。こうすることによって、精密真空を達成するまでの全体的なゲートサイクル時間は、約60秒に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インライン成膜設備に対する入力側のゲートシステムの模式図
【符号の説明】
【0014】
1 ゲートシステム
2 一次真空ゲートシステム
3 搬送チャンバー
4 成膜チェンバー
5 ゲートバルブ
6 一次真空ポンプシステム
7 ルーツブロワーポンプ(ルーツポンプ)
8 一次真空ポンプシステムの主ポンプ
9 スライドベーン型ロータリーポンプ
10 一次真空ポンプシステムのフォアポンプ
11 一次真空ポンプシステムの制御バルブ
12 精密真空ポンプシステム
13 ターボ分子ポンプ
14 精密真空ポンプシステムの主ポンプ
15 保持ポンプ
16 精密真空ポンプシステムの制御バルブ
17 接続配管
18 接続配管の制御バルブ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空成膜設備を通して搬送方向に移動可能な基板に成膜するための真空成膜設備用ゲートシステムであって、入力側と出力側に、それぞれ一次真空ゲートチェンバーと成膜チェンバーに隣接した搬送チェンバーとを備えており、その場合に、搬送方向に対して入力側の搬送チェンバーの前と、搬送方向に対して出力側の搬送チェンバーの後で精密真空に設定可能であるゲートシステムにおいて、
一次真空ゲートチェンバー(2)が、搬送チェンバー(3)に直接隣接しており、一次真空ゲートチェンバー(2)内で精密真空に設定可能であることを特徴とするゲートシステム。
【請求項2】
一次真空ポンプシステム(6)と精密真空ポンプシステム(12)が、それぞれ一次真空ゲートチェンバー(2)と接続可能であることを特徴とする請求項1に記載のゲートシステム。
【請求項3】
一次真空ポンプシステム(6)が、精密真空ポンプシステム(12)と接続可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゲートシステム。
【請求項4】
精密真空ポンプシステム(14)の主ポンプの圧力側が、保持ポンプ(15)の吸気側と接続されており、精密真空ポンプシステム(14)の主ポンプの圧力側が、制御バルブ(18)を備えた接続配管(17)を通して、一次真空ポンプシステム(8)の主ポンプの吸気側と接続可能であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載のゲートシステム。


【公表番号】特表2007−533844(P2007−533844A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534577(P2006−534577)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002265
【国際公開番号】WO2005/040452
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(595160477)フオン・アルデンネ・アンラーゲンテヒニク・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (16)
【Fターム(参考)】