説明

眼の手術または外傷後の脈絡膜の新生血管形成を制御するための血管静止性因子

本明細書において、眼の手術または眼組織に対する外傷に起因する脈絡膜の新生血管形成を処置する組成物およびそれらの使用方法が開示されている。本発明により提供される、血管静止性ステロイドおよびそれらの薬学的処方物は、外科的処置または外傷から生じる脈絡膜の新生血管形成を処置するために有用である。本発明はまた、血管静止性ステロイドを使用する、外科的処置または外傷から生じる脈絡膜の新生血管形成を処置する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年4月23日に出願された米国特許出願第60/546,815号からの優先権を主張している。
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、外科的処置に起因する脈絡膜の新生血管形成を処置するための血管静止性因子(angiostatic agent)の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
ヘパリンまたは特定のヘパリンフラグメントの存在下で、新脈管形成を阻害するように機能するステロイドが非特許文献1に開示される。この著者らは、このようなステロイドを「血管静止性」ステロイドとして言及する。血管静止性であることが見出されたステロイドの新規のクラスとしては、コルチソル、コルテキソロンならびにいくつかのジヒドロ誘導体およびテトラヒドロ誘導体が挙げられる。ステロイドが新脈管形成を阻害する機構に関する仮説を試験することを対象とする追跡研究において、ヘパリン/血管静止性ステロイド組成物が、足場依存性の内皮が付着している基底膜足場の溶解を引き起こし、毛細血管の退縮をもたらすことが示された;非特許文献2を参照のこと。
【0004】
新脈管形成の阻害に有用なテトラヒドロステロイドの一つの群は、Aristoffらに発行された特許文献1に開示される。この化合物は、頭部損傷、脊髄損傷、敗血性ショックまたは外傷性ショック、脳卒中および出血性ショックの治療における使用について開示される。さらに、この特許はこれらの化合物の胚移植ならびに癌、関節炎および動脈硬化の処置における有用性について議論している。これらの化合物は、眼科用途について開示されていない。特許文献1に開示されるテトラヒドロステロイドのうちのいくつかは、温血動物において新脈管形成を阻害するために、ヘパリンまたはヘパリンフラグメントと組み合わせて、特許文献2に開示される。この特許文献2は、眼科用途のための組み合わせは開示していない。
【0005】
ヒドロコルチゾンの組成物である「テトラヒドロコルチソル−S」およびU−72,745G(それぞれ、βシクロデキストリンと組み合わせられる)は、角膜の新生血管形成を阻害することが示されてきた。非特許文献3。このステロイドは単独で新生血管形成をやや低減するが、しかし新生血管形成の退行を導くほどには単独では有効ではない。
【0006】
レーザー処置は、眼の新生血管形成を阻害するために現在使用されている一つの方法である。光ダイナミック療法(PDT)は、光活性化可能な色素が全身に与えられ、その後眼において新血管形成の部位でレーザーによるこの色素の活性化がなされる処置である(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。光活性化された薬物は、遊離酸素基を生成し、これは新しく形成された血管を封鎖する。この処置は、黄斑変性の滲出性形態を有する患者において使用され、そして多くの患者が彼らの網膜下の血管新生膜の退行を示す。残念なことに、PDTにより誘導される新生血管形成の阻害は一過性であり、6〜12週間のみしか続かないようである(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)。健康な生存組織の破壊を含まない、眼の血管新生疾患の処置のために有効な治療は現在存在しない。広範囲網膜光凝固は糖尿病性網膜障害の処置のための現在の医療行為であり、糖尿病性の網膜の新生血管形成阻害に有効であるが、この処置は健康な周辺網膜組織を破壊する。この健康な組織の破壊は、網膜の代謝要求を減少し、それにより新生血管形成を起こす網膜の虚血を低減する。
【0007】
ヘパリンまたは特定のヘパリンフラグメントの存在下で、新脈管形成を阻害するように機能するステロイドが非特許文献11に開示される。この著者らは、このようなステロイドを「血管静止性」ステロイドとして言及する。血管静止性であることが見出されたステロイドの新規のクラスとしては、コルチソルおよびコルテキソロンのジヒドロ代謝物およびテトラヒドロ代謝物が挙げられる。ステロイドが新脈管形成を阻害する機構に関する仮説を試験することを対象とする追跡研究において、ヘパリン/血管静止性ステロイド組成物が、足場依存性の内皮が付着している基底膜足場の溶解を引き起こし、毛細血管の退縮をもたらすことが示された;非特許文献2を参照のこと。
【0008】
新脈管形成の阻害に有用なテトラヒドロステロイドの一つの群が、Aristoffら(The Upjohn Company)の国際特許出願番号PCT/US86/02189に開示される。この化合物は、頭部損傷、脊髄損傷、敗血性ショックまたは外傷性ショック、脳卒中および出血性ショックの治療における使用について開示される。さらに、この特許出願はこれらの化合物の胚移植ならびに癌、関節炎および動脈硬化の処置における有用性について議論している。これらの化合物は、眼科用途について開示されていない。
【0009】
テトラヒドロコルチソル(THF)は、デキサメタゾンのみ、またはデキサメタゾン/5−β−ジヒドロコルチソルで高眼圧にしたウサギの眼圧(IOP)の低下における使用について開示されてきた;非特許文献12を参照のこと。この著者らは、THFが抗緑内障剤として有用であり得ることを示唆する。1989年9月5日にSouthrenらに発行された特許文献3において、THFを含有する薬学的組成物およびこれらの組成物を使用して眼圧を制御する方法が開示される。THFは、非特許文献13において血管静止性ステロイドとして開示されており、ここで、血管静止性ステロイドが、糖尿病性の網膜障害、血管新生緑内障および水晶体後線維増殖症を含む、異常な新生血管形成によって特色付けられる疾患についての使用可能性を有し得ることが示唆される。
【特許文献1】米国特許第4,975,537号明細書
【特許文献2】米国特許第4,771,042号明細書
【特許文献3】米国特許第4,863,912号明細書
【非特許文献1】Crumら、「A New Class of Steroids Inhibits Angiogenesis In The Presence of Heparin or Heparin Fragment」、Science(1985年12月20日)230:p.375−378
【非特許文献2】Ingberら、「A Possible Mechanism for Inhibition of Angiogenesis by Angiostatic Steroids: Induction of Capillary Basement Membrane Dissolution」、Endocrinology(1986年)119:p.1768−1775
【非特許文献3】Liら、「Angiostatic Steroids Potentiated by Sulphated Cyclodextrin Inhibit Corneal Neovascularization」、Investigative Ophthalmology and Visual Science(1991年10月)32(11):p.2898−2905
【非特許文献4】AsraniおよびZeimer、Br J Ophthalmol(1995年8月)79(8):p.776−770
【非特許文献5】Asraniら、Invest Ophthalmol.Vis Sci(1997年12月)38(13);p.2702−2710
【非特許文献6】Husainら、Ophthalmology(1997年8月)104(8):p.242−1250
【非特許文献7】Linら、Curr Eye Res(1994年7月)13(7)p.513−522
【非特許文献8】Gragoudasら、Investigative Ophthalmology & Visual Science(1997年3月15日)38(4):p.S17
【非特許文献9】Sickenbergら、Investigative Ophthalmology & Visual Science(1997年3月15日)38(4):p.S92
【非特許文献10】Thomasら、Investigative Ophthalmology & Visual Science(1998年3月15日)39(4):p.S242
【非特許文献11】Crumら、「A New Class of Steroids Inhibits Angiogenesis in the Presence of Heparin or a Heparin Fragment」、Science(1985年12月20日)230:p.1375−1378
【非特許文献12】Southrenら、「Intraocular Hypotensive Effect of a Topically Applied Cortisol Metabolite: 3−alpha,5−beta−tetrahydrocortisol」Investigative Ophthalmology and Visual Science(1987年5月)28
【非特許文献13】Folkmanら、「Angiostatic Steroids」Ann.Surg.,(1987年)206(3)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
血管静止性ステロイドおよびそれらの薬学的処方物は、外科的処置または外傷から生じる脈絡膜の新生血管形成を処置するために有用である。本発明はまた、血管静止性ステロイドを使用する、外科的処置または外傷から生じる脈絡膜の新生血管形成を処置する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
後区新生血管形成(NV)は、視覚を脅かす病理であり、先進国における後天性の失明の二つの最も一般的な原因を担う:滲出性加齢性黄斑変性(AMD)および増殖性糖尿病性網膜障害(PDR)。滲出性AMDの間に起こる後区NVのために現在認められている唯一の処置は、レーザー光凝固療法またはVisudyne(登録商標)での光ダイナミック療法である;両方の治療は、病気に冒された血管系の閉鎖に関与し、これは網膜への限局性のレーザーにより誘導される損傷を生じる。PDRを有する患者に対して、硝子体切除および網膜前方の膜の除去による外科的介入は、現在利用可能な唯一の選択肢である。本発明は、眼の手術または眼への外傷により生じる脈絡膜の新生血管形成を予防するための方法を提供する。
【0012】
後区NVを含む病理学的な眼の新脈管形成は、異常な新しい毛細血管の形成への刺激を開始することから進行する事象のカスケードとして起こる。滲出性AMDおよびPDRの両方において刺激となる原因は、未だ不明であるが、種々の脈管形成促進(proangiogenic)増殖因子の生成が、共通の刺激であることが明らかである。可溶性増殖因子(例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFまたはFGF−2)、インスリン様増殖因子1(IGF−1)など)は、病理学的な眼の新脈管形成を有する患者から取り出された組織および流体中に見出された。脈管形成カスケードの開始に従い、毛細血管の基底膜および細胞外マトリクスが分解され、そして毛細血管内皮細胞の増殖および移動が起こる。内皮は吻合を出芽し、続く開存性の管腔形成により管を形成する。新しい毛細血管は、一般的に、未熟な障壁機能に起因して、脈管透過性または漏出性を増大し、組織浮腫をもたらし得る。成熟した毛細血管への分化は、他の内皮細胞と周皮細胞との間の連続基底膜および正常な内皮連結の存在によって示されるが;この分化プロセスは、しばしば病理学的な状態の間に損なわれる。
【0013】
眼の手術または眼組織への他の外傷から生じ得る、脈絡膜の新生血管形成、病理学的な眼の新脈管形成および浮腫の有効な処置は、患者の生活の質および社会での生産性を改善し得る。また、盲目者への補助および健康管理を提供することに関連する社会的な費用が劇的に低減され得る。
【0014】
生存組織を維持する目的のための血管の発生は、新脈管形成として知られる。新脈管形成を阻害する薬剤は、血管静止性因子、血管崩壊剤または向血管性(angiotropic)剤のような種々の用語によって知られている。本明細書の目的のために、用語「血管静止性因子」とは、新脈管形成を阻害するために使用され得る化合物を意味する。
【0015】
本発明の特定の血管静止性因子はステロイドまたはステロイド代謝物である。本明細書の目的のために、用語「血管静止性ステロイド」とは、新脈管形成を阻害するステロイドおよびステロイド代謝物を意味する。本発明は、血管静止性ステロイドが、眼の手術または眼組織への外傷から生じる脈絡膜の新生血管形成および他の状態の処置のために使用され得るという知見に基づく。
【0016】
本発明の好ましい血管静止性ステロイドは、次式を有する:
【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

ここで、Rは、H、β−CHまたはβ−Cである;
は、F、C〜C11二重結合、C〜C11エポキシ、HまたはClである;
は、H、OR26、OC(=O)R27、ハロゲン、C〜C11二重結合、C〜C11エポキシ、=O、−OH、−O−アルキル(C〜C12)、−OC(=O)アルキル(C〜C12)、−OC(=O)ARYL、−OC(=O)N(R)または−OC(=O)ORであり、ここで、ARYLは、フリル、チエニル、ピロリルまたはピリジルであり、該部分の各々は、必要に応じて、1個または2個の(C〜C)アルキル基で置換されているか、またはARYLは、−(CH−フェニルであり、ここで、fは、0〜2であり、ここで、該フェニル環は、必要に応じて、1個〜3個の基で置換されており、該基は、塩素、フッ素、臭素、アルキル(C〜C)、アルコキシ(C〜C)、チオアルコキシ−(C〜C)、ClC−、FC−、−NHおよび−NHCOCHから選択され、そしてRは、水素、アルキル(C〜C)またはフェニルであり、各Rは、同一または異なり得、そしてRは、本明細書中で定義されたARYL、またはアルキル(C〜C12)である;
は、H、CH、ClまたはFである;
は、H、OH、F、Cl、Br、CH、フェニル、ビニルまたはアリルである;
は、HまたはCHである;
は、CHCHOR26、CHCHOC(=O)R27、H、OH、CH、F、=CH、CHC(=O)OR28、OR26、O(C=O)R27またはO(C=O)CH(C=O)OR26である;
10は、−C≡CH、−CH=CH、ハロゲン、CN、N、OR26、OC(=O)R27、H、OH、CHであるか、あるいはR10は、C−16位置とC−17位置との間で、第二結合を形成する;
12は、Hであるか、あるいはRまたはR14と二重結合を形成する;
13は、ハロゲン、OR26、OC(=O)R27、NH、NHR26、NHC(=O)R27、N(R26、NC(=O)R27、N、H、−OH、=O、−O−P(=O)(OH)または−O−C(=O)−(CHCOOHであり、ここで、tは、2〜6の整数である;
14は、Hであるか、あるいはR12と二重結合を形成する;
15は、H、=Oまたは−OHである;
そしてR23は、R10と共に、環状ホスフェートを形成する;
ここで、RおよびR15は、上で定義した意味を有する;
または、ここで、R23は、−OH、O−C(=O)−R11、−OP(O)−(OH)または−O−C(=O)−(CHCOOHであり、ここで、tは、2〜6の整数である;そしてR11は、−Y−(CH−X−(CH−SOH、−Y’−(CH−X’−(CH−NR1617または−Z(CHQであり、ここで、Yは、結合または−O−である;Y’は、結合、−O−または−S−である;XおよびX’の各々は、結合、−CON(R18)−、−N(R18)CO−、−O−、−S−、−S(O)−または−S(O)−である;R18は、水素またはアルキル(C〜C)である;
16およびR17の各々は、1個〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基であり、該低級アルキル基は、必要に応じて、1個のヒドロキシルで置換されているか、またはR16およびR17は、各々が結合する窒素原子と一緒になって、単環式複素環を形成し、該単環式複素環は、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジノまたはN(低級)アルキル−ピペラジノから選択され、ここで、該アルキルは、1個〜4個の炭素原子を有する;nは、4〜9の整数である;mは、1〜5の整数である;pは、2〜9の整数である;qは、1〜5の整数である;
Zは、結合または−O−である;rは、2〜9の整数である;そしてQは、以下の1つである:
(1)−R19−CHCOOHであって、ここで、R19は、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−SON(R20)−またはN(R20)SO−である;そしてR20は、水素または低級アルキル−(C〜C)である;但し、R20および(CH中の全炭素原子数は、10を超えない;または
(2)−CO−COOH;または
(3)CON(R21)CH(R22)COOHであって、ここで、R21は、Hであり、そしてR22は、H、CH、−CHCOOH、−CHCHCOOH、−CHOH、−CHSH、−CHCHSCHまたは−CHPh−OHであり、ここで、Ph−OHは、p−ヒドロキシフェニルである;
またはR21は、CHであり、そしてR22は、Hである;
またはR21およびR22は、一緒になって、−CHCHCH−である;
または−N(R21)CH(R22)COOHは、一緒になって、−NHCHCONHCHCOOHである;
但し、もし、R23がホスフェートであるなら、Rがβ−CHである化合物を除いて、R13が=OであるときR10と共に、環状ホスフェートを形成しなければならず、RおよびRは、一緒になって、9位置と11位置の間で、二重結合を形成し、RおよびRは、水素であり、R12およびR14は、一緒になって、4位置と5位置の間で二重結合を形成し、Rは、α−Fであり、Rは、β−CHであり、R10は、α−OHであり、R13およびR15は、=Oであり、そしてR23は、−OP(O)−(OH)である;
24=C、C〜C二重結合、Oである;
25=C(R15)CH−R23、OH、OR26、OC(=O)R27、R26、COOH、C(=O)OR26、CHOHCHOH、CHOHCHOR26、CHOHCHOC(=O)R27、CHCHOH、CHCHOR26、CHCHOC(=O)R27、CHCN、CH、CHNH、CHNHR26、CHN(R26、CHOH、CHOR26、CHO(C=O)R27、CHO(P=O)(OH)、CHO(P=O)(OR26、CHSH、CHS−R26、CHSC(=O)R27、CHNC(=O)R27、C(=O)CHR28OH、C(=O)CHR28OR26、C(=O)CHR28OC(=O)R27であるか、または
10およびR25は、一緒になって、=C(R28、すなわち、必要に応じてアルキル置換したメチレン基であり得る;
ここで、R26=C〜C(アルキル、分枝アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アリール)である;R27=R26+OR26である;R28=H、C〜C(アルキル、分枝アルキル、シクロアルキル)である。
【0019】
特に明記しない限り、構造[A]および[B]のシクロペンタノフェナントレン部分に結合された全ての置換基は、α位置またはβ位置のいずれかであり得る。さらに、上記構造は、これらの血管静止性ステロイドの全ての薬学的に受容可能な塩を含む。
【0020】
好ましい血管静止性ステロイドには、21−メチル−5β−プレグナン−3α,11β,17α,21−テトロール−20−オン 21−メチルエーテル;3β−アジド−5β−プレグナン−11β,17α,21−トリオール−20−オン−21−アセテート;3β−アジド−21−アセトキシ−5β−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オン;3β−アセトアミド−21−アセトキシ−5β−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オン;3β−アセトアミド−21−アセトキシ−5β−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンアセテート;5β−プレグナン−11β,17α,21−トリオール−20−オン;17−((4−フルオロ)チオフェノキシ)メチル−1,3,5−エストラトリエン−3,17−ジオール;20−アジド−21−ノル−5β−プレグナン−3α,17α−ジオール;20−(カルボエトキシメチル)チオ−21−ノル−5β−プレグナン−3α,17α−ジオール;20−(4−フルオロフェニル)チオ−21−ノル 5β−プレグナン−3α,17β−ジオール;20−アセトアミド−21−ノル−5β−プレグナン−17α−ジオール−3−アセテート;16α−(2−ヒドロキシエチル)−17β−メチル−5β−アンドロスタン−3α,17α−ジオール;20−シアノ−21−ノル−5β−プレグナン−3α,17α−ジオール;17α−メチル−5β−アンドロスタン−3α,17β−ジオール;21−ノル−5β−プレグナ−17(20)−エン−3α−オール;21−ノル−5β−プレグナ−17(20)−エン−3α−オール−3−アセテート;21−ノル−5β−プレグナ−17(20)−エン−3α−オール−16−酢酸−3−アセテート;21−ノル−5β−プレグナン−3α,17α,20−トリオール;21−ノル−5β−プレグナン−3α,17α,20−トリオール−3−アセテート;4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオン−21−アセテート、および4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオンがある。
【0021】
さらに好ましい化合物には、21−メチル−5β−プレグナン−3α,11β,17α,21−テトロール 20−オン−21−メチルエーテル;3β−アジド−21−アセトキシ−5β−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オン;3β−アセトアミド−21−アセトキシ−5β−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オン;および5β−プレグナン−11β,17α,21−トリオール−20−オンがある。最も好ましい化合物には、4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオン−21−アセテート(酢酸アネコルタブ(anecortave))および4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオンがある。
【0022】
酢酸アネコルタブは、新しい種類の抗新脈管形成コルチセン(cortisenes)であり、これらは、病的な眼の新脈管形成を阻止する。(Clark AF,Exp.OPIN.IVEST.DRUGS 12:1867−1877(1999);Benezra D.ら、INVEST.OPHTHALMOL.VIS.SCI.38:1954−1962(1997);Clark AFら、INVEST.OPHTHALMOL.VIS.SCI.40:2156−2162(1999);DeFaller JM,Clark AF.:PTERYGIUM.Kugler Publ.,The Hague,Netherlands,2000;Penn JSら,INVEST OPHTHALMOL.VIS.SCI.42:283−290(2001))。ステロイドホルモン骨格から構造的に誘導されて、永久的な化学変性により、その強力な抗新脈管形成活性を維持しつつ、通常の糖質コルチコイド(抗炎症性)または鉱質コルチコイド活性に欠けた化合物が提供される。(Clark 1999)。酢酸アネコルタブは、ラットOIRモデルでの硝子体内注射に続くその公開された活性により立証されるように、後区新生血管形成(NV)に抗する再現可能な有効性を生じる。(Penn 2001)。酢酸アネコルタブの抗血管形成効果は、一部には、uPA(ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子)およびマトリックスメタロプロテイナーゼの発現の減少およびPAI−1(プラスミノゲン活性化因子阻害剤)の発現の増加に起因している(図1および図2)(DeFallerおよびClark 2000;Penn 2001)。
【0023】
本発明の血管静止性ステロイドは、目に送達するために、種々の処方物に取り込まれ得る。例えば、局所処方物が使用でき、これらは、眼科的に受容可能な防腐剤、界面活性剤、粘度向上剤、緩衝剤、塩化ナトリウムおよび水性無菌点眼剤を形成する水、および懸濁物を挙げることができる。無菌眼科用軟膏処方物を調製するために、血管静止性ステロイドは、適当なビヒクル(例えば、鉱油、液状ラノリンまたは白色ワセリン)中にて、防腐剤と混ぜ合わされる。本発明の血管静止性ステロイドを含有する無菌眼科用ゲル処方物は、血管静止性ステロイドを親水性塩基(これは、類似の眼科用製剤用に公開された処方に従って、例えば、Carbopol−940(B.F.Goodrich Companyから入手できるカルボキシビニル重合体)の組み合わせから調製した)に懸濁させることにより、調製できる。
【0024】
選択される処方物の特定の種類は、種々の要因(例えば、使用する血管静止性ステロイドまたはその塩、および投薬頻度)に依存している。局所眼科用水溶液、懸濁液、軟膏およびゲルは、好ましい剤形である。この血管静止性ステロイドは、通常、これらの処方物中にて、約0.005〜約5.0重量パーセント(重量%)の量で、含有される。好ましい濃度は、約0.05〜約2.0重量%の範囲である。それゆえ、局所投与には、これらの処方物は、熟練した臨床医の日常的な自由裁量に依存して、眼の表面に、1日1〜4回送達される。
【0025】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様を明示するために、含まれている。当業者は、以下の実施例で開示された技術が、本発明の実施に際してうまく機能するように、本発明が発見した技術を代表し、それゆえ、その実施のための好ましい様式を構成すると見なされることを理解するはずである。しかしながら、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することになく、本開示に照らして、開示された特定の実施態様において、多くの変更を行うことができ、依然として、同様または類似の結果が得られることを理解するはずである。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
【0027】
【化5】

(実施例2)
【0028】
【化6】

(実施例3)
(5β−プレグナン−11β,17α,21−トリオール−20−オンの調製)
(テトラヒドロコルチソル−F−21−t−ブチルジフェニルシリルエーテル(PS03842))
テトラヒドロコルチソル−F(Steraloids No.P9050)5.7g(15.6mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)2.3g(19mmol)の乾燥DMF(30mL)撹拌溶液に、N下にて、−25〜−30℃(CO−MeCNで維持した)で、t−ブチルジフェニルクロロシラン4.75g(17.3mmol)の乾燥DMF(5mL)溶液を滴下した。−30℃でさらに20分後、その混合物を、一晩にわたって、23℃まで温めた。
【0029】
この混合物をエーテルと水との間で分配し、その有機溶液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、そして濃縮して、10.7gの白色発泡体を得た。
【0030】
この物質をフラッシュカラムクロマトグラフィー(400gのシリカ;62.5〜70%エーテル/ヘキサン)で精製した。3−シロキシ異性体がまず最初に溶出し、続いて、混合画分が溶出し、続いて、表題化合物が溶出した。濃縮し混合した画分(4.0g)を、同じカラムでクロマトグラフィー(これは、35%酢酸エチル/ヘキサンを使う)にかけた。この3−シロキシ異性体の全収量は、0.42g(5%)であり、そして表題化合物の全収量は、5.05g(53.5%)であった。25%MeOH/EtOAcで溶出し続けると、未反応テトラヒドロコルチソル−Fが回収できた。
【0031】
【化7】

下線を付けた共鳴は、APT実験における反転を示した。アサインメント:E.Breitmaier、W.Voelter 「Carbon−13 NMR Spectroscopy」、3版、VCH,1987;pp.345−348。
【0032】
【化8】

この化合物は、はっきりした融点を示さなかったが、80〜100℃で、発泡体になった。
【0033】
再結晶する多くの試みは、失敗した。
【0034】
(5β−プレグナン−11β,17α,21−トリオール−20−オン)
PSO3842(0.91g、1.50mmol)およびチオカルボニルジイミダゾール(1.05g、5.9mmol)の無水ジオキサン8mL溶液を、N下にて、3.5時間還流した。冷却した溶液をエーテルと水の間で分配し、その有機溶液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、そして濃縮した。その残渣をクロマトグラフィー(120gのSiO、35%EtOAc/ヘキサン)にかけて、0.86g(80%)のイミダゾリルチオエステルを得た。
【0035】
BuSnH(1.6mL、5.9mmol)の急速に撹拌し還流した無水ジオキサン100mL溶液に、N下にて、2.2時間にわたって、この化合物0.75g(1.05mmol)の無水ジオキサン100mL溶液を滴下した。還流状態でさらに1時間後、その溶液を冷却し、濃縮し、その残渣をクロマトグラフィー(200gのSiO、9%EtOAc/ヘキサン)にかけて、0.43g(70%)の3−デオキシ−21−シリルエーテルを得た。この物質をメタノール20mLに溶解した;BuNF・3HO(0.50g、1.6mmol)を加え、その混合物を、N下にて、4時間にわたって、還流状態まで加熱した。冷却した溶液を2容量のEtOAcで希釈し、1/4の容量まで濃縮し、分配し(EtOAc/HO)、その有機溶液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、そして濃縮した。その残渣(0.40g)をクロマトグラフィー(30gのSiO、40%EtOAc/ヘキサン)にかけて、0.25g(98%)の油状物を得た。
【0036】
この油状物を結晶化して(n−BuCl)、白色固形物として、0.14gの表題化合物を得た。融点167〜170℃。
【0037】
【化9】

(実施例4)
(21−メチル−5β−プレグナン−3α,11β,17α,21−テトロール−20−オン 21−メチルエーテルの調製)
テトラヒドロコルチソル−F(0.73g、2.0mmol)およびCHI(0.60mL、9.6mmol)の無水DMF(8mL)撹拌溶液に、N下にて、水素化ナトリウム(60%オイル分散体、0.10g、2.5mmol)を加えた。水素が発生し、その温度を35℃まで上げた。1時間後、その混合物をEtOAcで希釈し、水(中性になるまで)およびブラインで抽出し、乾燥し(MgSO)、濾過し、そして濃縮した。その残渣をクロマトグラフィー(70gのSiO、80%EtOAc/ヘキサン)にかけて、0.17gの白色固形物を得た(MS(CI)=395(M+1))。この物質を再結晶(EtOAc−n−BuCI)して、羽毛のような白色固形物として、0.12g(16%)の表題化合物を得た。融点208〜213℃。
【0038】
【化10】

(実施例5)
(3β−アジド−21−アセトキシ−5β−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンの調製)
PS03842(実施例4を参照)(1.75g、2.90mmol)、ジフェニルホスホリルアジド(2.2mL、10.2mmol)およびアゾジカルボン酸ジエチル(1.55mL、10mmol)の撹拌溶液に、N下にて、その内部温度を35℃未満で保ちつつ(発熱的)、トリフェニルホスフィン(2.6g、10mmol)のトルエン10mL溶液を慎重に加えた。その溶液を1.2時間撹拌し、次いで、エーテルで希釈し、水およびブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、そして濃縮し、その残渣(9.5g、油状物)をクロマトグラフィー(175gのSiO、15%EtOAc/ヘキサン)にかけて、1.83gの粘着性の油状物を得た。
【0039】
この物質1.73gおよびBuNF・3HO(1.75g、5.5mmol))のメタノール20mL溶液を、N下にて、2.5時間還流した。その粗生成物(1.94g)を酢酸エチルで単離し、そしてクロマトグラフィー(100gのSiO、50%EtOAc/ヘキサン)にかけて、0.60g(56%)の白色半固形物を得た。倍散(4:1のヘキサン−エーテル)すると、0.57g(53%)の固形物が得られた。
【0040】
この物質0.40gの乾燥ピリジン3mL撹拌溶液を無水酢酸0.3mLで処理し、そして23℃で、N下にて、一晩撹拌した。その混合物をメタノール1mLでクエンチし、15分間撹拌し、エーテルで希釈し、1M HCl水溶液、水(中性になるまで)、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、そして濃縮した。その残渣(0.41g、油状物)をクロマトグラフィー(35gのSiO、33%EtOAc/ヘキサン)にかけて、白色発泡体として、0.33g(76%)の表題化合物を得た。融点80〜90℃(分解点)。
【0041】
【化11】

(実施例6)
(3β−アセトアミド−21−アセトキシ−5β−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンの調製)
3β−アジド−21−アセトキシ−5β−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オン(0.15g、0.35mmol)の無水エタノール(これは、C上10%Pd(0.03g)を含有する)8mL溶液を、H(1atm)下にて、23℃で、2時間撹拌した。その混合物を濾過し、そして濃縮し、その残渣をEtOAcに溶解し、塩基性物質を1M HCl水溶液に抽出し、遊離し(NaCO)、抽出し(EtOAc)、その有機抽出物を水(中性になるまで)およびブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、そして濃縮して、58mgの固形物を得た。
【0042】
この物質をアセチル化し(1.0mLの乾燥ピリジン、0.20mLのAcO、23℃、N、一晩)、続いて、(実施例6[この前の工程]のステロイドについて記述したように)、ワークアップして、粗生成物を得、これを、クロマトグラフィー(25gのSiO、EtOAc)にかけた。この生成物をエーテルで倍散して、白色固形物として、51mg(33%)の生成物を得た。融点179〜181℃。
【0043】
【化12】

(実施例7)
(マウスにおいて誘導した脈絡膜の新生血管形成の処置)
脈絡膜の新生血管形成(CNV)を、局所レーザー光凝固によりブルーフ膜を破壊することによって、C57BL/Jマウスに誘導した(図3)。(Tobe Tら、AM.J.PATHOL.、153:1641−1646(1998))。3〜4の個の網膜熱傷を、スリットランプ送達システムを備えるAlcon532nm EyeLiteレーザー(75μmのスポットサイズ、0.1秒の継続時間、120mW)を用いて、該当する眼にランダムに配置した。このレーザー熱傷を使用して、ブルーフ膜において裂け目(これは網膜下の気泡の形成によって検眼鏡検査で示された)を生成した。眼ごとに3つの気泡を生じたレーザー熱傷を有するマウスのみを、本研究において含めた。網膜の動脈および静脈の分岐を避けるために、熱傷を、代表的には、網膜の後極において3時、6時、9時または12時の位置に配置した。
【0044】
各マウスを、レーザー後に以下の処置群のうちの1つにランダムに割り当てた:非注射コントロール、偽注射コントロール、ビヒクル注射マウス、または3つの酢酸アネコルタブ注射群のうちの1つ。コントロールマウスに、レーザー光凝固を両眼に受容させ、ここで、片眼には偽注射(すなわち、毛様体輪の針穿刺)を受容させた。硝子体内注射した動物に対して、片方のレーザー処置した眼に、0%、0.1%、1%または10%の酢酸アネコルタブの5μl硝子体内注射を受容させた。この硝子体内注射を、レーザー光凝固後、すぐに実施した。
【0045】
レーザー後14日目に、全てのマウスを安楽死させ、フルオレセインで標識したデキストランで全身を灌流した。次いで、眼を回収し、脈絡膜のフラットマウントとして調製し、そして2次元のCNV領域をコンピューター化デジタル分析によって定量化した。(Mori K.ら、AM.J.PATHOL.159:313−320(2001))。処置ごとの、マウスあたりのCNV領域/熱傷の中央値を、統計学的な分析に使用した;P≦0.05を有意とみなした。
【0046】
(結果)
CNV発達の全体の低減を、10%の酢酸アネコルタブを注射した眼 対 コントロール眼における、レーザー光凝固の部位での過蛍光領域の減少として観察した(図4)。処置群間の全体的な有意差を、Kruskal−Wallis片側ANOVA(P<0.001)で確立した(図5)。10%の酢酸アネコルタブを注射した眼は、ビヒクル注射眼に比べてCNVの有意な阻害(↓57.8%)を示した(Mann−Whitney順位和検定;P<0.001)。0.1%酢酸アネコルタブまたは1%酢酸アネコルタブを注射した眼と、ビヒクル注射コントロール眼との間には差は観察されなかった。
【0047】
本明細書中で開示され請求された組成物および/または方法の全ては、本発明の開示に照らして、過度の実験なしで、製造され実行できる。本発明の組成物および方法は、好ましい実施態様に関して記述されているものの、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書中で記述された組成物および/または方法およびその方法の工程または工程手順に対して、そのバリエーションが適用され得ることは、当業者に明らかである。さらに具体的には、類似の結果を得るために、本明細書中で記述された薬剤に代えて、化学的および構造的の両方で関連した特定の薬剤が代用され得ることが明らかである。当業者に明らかなこのような全ての代用および改良は、添付の請求の範囲で規定される本発明の精神、範囲および概念に入ると見なされる。
【0048】
本明細書中で引用された全ての参考文献の内容は、本明細書中で示されたものを補足する代表的な手順または他の詳細を提供する範囲まで、本明細書中で参考として援用されている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
以下の図は、本明細書の一部をなし、本発明の特定の局面をさらに実証するために包含される。本発明は、これらの図面と本明細書中において示される特定の実施形態の詳細な説明とを組み合わせて参照することによって、より良く理解され得る。
【図1】図1は、新脈管形成におけるタンパク質分解カスケードおよびこのカスケード内の酢酸アネコルタブの作用を示す。
【図2】図2は、抗新脈管形成剤の作用の提案されるメカニズムを示す。
【図3】図3は、ブルーフ膜の破壊によって誘導される脈絡膜の新生血管形成(CNV)のマウスモデルである。図3Aは、レーザー後14日目の、フルオレセインで標識したデキストランで還流したマウスからの、脈絡膜のフラットマウントを示す(後極におけるCNV病変)。図3Bは、限局性の過蛍光を示す高倍率のCNV病変を示す。図3Cは、レーザー後14日目に、GSAレクチンで染色した、新鮮凍結した網膜断面の光学顕微鏡写真である。新たに形成された血管およびRPE細胞は、脈絡膜からブルーフ膜の裂け目を通って網膜下の空間内に伸びている。(倍率200×)。
【図4】図4は、フルオレセインで標識したデキストラン染色した脈絡膜のフラットマウントの、過蛍光CNV病変である。図4Aは、ビヒクル処理した眼を示す。図4Bは、10%酢酸アネコルタブで処理した眼を示す。(デジタル画像、倍率200×)。
【図5】図5は、マウスにおける単回硝子体内注射後の、酢酸アネコルタブがレーザー誘導した脈絡膜の新生血管形成を阻害することを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の手術または眼組織に対する外傷に起因する脈絡膜の新生血管形成を処置するための方法であって、該方法は、以下の構造:
【化1】

を有する血管静止性因子またはそれらの薬学的に受容可能な塩の薬学的有効量を投与する工程を包含し、
ここで、Rは、H、β−CHまたはβ−Cであり;
は、F、C〜C11二重結合、C〜C11エポキシ、HまたはClであり;
は、H、OR26、OC(=O)R27、ハロゲン、C〜C11二重結合、C〜C11エポキシ、=O、−OH、−O−アルキル(C〜C12)、−OC(=O)アルキル(C〜C12)、−OC(=O)ARYL、−OC(=O)N(R)または−OC(=O)ORであり、ここで、ARYLは、フリル、チエニル、ピロリルまたはピリジルであり、該部分の各々は、必要に応じて、1個または2個の(C〜C)アルキル基で置換されているか、またはARYLは、−(CH−フェニルであり、ここで、fは、0〜2であり、ここで、該フェニル環は、必要に応じて、1個〜3個の基で置換されており、該基は、塩素、フッ素、臭素、アルキル(C〜C)、アルコキシ(C〜C)、チオアルコキシ−(C〜C)、ClC−、FC−、−NHおよび−NHCOCHから選択され、そしてRは、水素、アルキル(C〜C)またはフェニルであり、各Rは、同一または異なり得、そしてRは、本明細書中で定義されたARYL、またはアルキル(C〜C12)であり;
は、H、CH、ClまたはFであり;
は、H、OH、F、Cl、Br、CH、フェニル、ビニルまたはアリルであり;
は、HまたはCHであり;
は、CHCHOR26、CHCHOC(=O)R27、H、OH、CH、F、=CH、CHC(=O)OR28、OR26、O(C=O)R27またはO(C=O)CH(C=O)OR26であり;
10は、−C≡CH、−CH=CH、ハロゲン、CN、N、OR26、OC(=O)R27、H、OH、CHであるか、あるいはR10は、C−16位置とC−17位置との間で、第二結合を形成し;
12は、Hであるか、あるいはRまたはR14と二重結合を形成し;
13は、ハロゲン、OR26、OC(=O)R27、NH、NHR26、NHC(=O)R27、N(R26、NC(=O)R27、N、H、−OH、=O、−O−P(=O)(OH)または−O−C(=O)−(CHCOOHであり、ここで、tは、2〜6の整数であり;
14は、Hであるか、あるいはR12と二重結合を形成し;
15は、H、=Oまたは−OHであり;
そしてR23は、R10と共に、環状ホスフェートを形成し;
ここで、RおよびR15は、上で定義した意味を有し;
または、ここで、R23は、−OH、O−C(=O)−R11、−OP(O)−(OH)または−O−C(=O)−(CHCOOHであり、ここで、tは、2〜6の整数である;そしてR11は、−Y−(CH−X−(CH−SOH、−Y’−(CH−X’−(CH−NR1617または−Z(CHQであり、
ここで、Yは、結合または−O−であり;Y’は、結合、−O−または−S−であり;XおよびX’の各々は、結合、−CON(R18)−、−N(R18)CO−、−O−、−S−、−S(O)−または−S(O)−であり;R18は、水素またはアルキル(C〜C)であり;
16およびR17の各々は、1個〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基であり、該低級アルキル基は、必要に応じて、1個のヒドロキシルで置換されているか、またはR16およびR17は、各々が結合する窒素原子と一緒になって、単環式複素環を形成し、該単環式複素環は、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジノまたはN(低級)アルキル−ピペラジノから選択され、ここで、該アルキルは、1個〜4個の炭素原子を有し;nは、4〜9の整数であり;mは、1〜5の整数であり;pは、2〜9の整数であり;qは、1〜5の整数であり;
Zは、結合または−O−であり;rは、2〜9の整数であり;そしてQは、以下の1つである:
(1)−R19−CHCOOHであって、ここで、R19は、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−SON(R20)−またはN(R20)SO−であり;そしてR20は、水素または低級アルキル−(C〜C)であり;但し、R20および(CH中の全炭素原子数は、10を超えず;または
(2)−CO−COOH;または
(3)CON(R21)CH(R22)COOHであって、ここで、R21は、Hであり、そしてR22は、H、CH、−CHCOOH、−CHCHCOOH、−CHOH、−CHSH、−CHCHSCHまたは−CHPh−OHであり、ここで、Ph−OHは、p−ヒドロキシフェニルであり;
またはR21は、CHであり、そしてR22は、Hであり;
またはR21およびR22は、一緒になって、−CHCHCH−であり;
または−N(R21)CH(R22)COOHは、一緒になって、−NHCHCONHCHCOOHであり;
但し、もし、R23がホスフェートであるなら、Rがβ−CHである化合物を除いて、R13が=OであるときR10と共に、環状ホスフェートを形成しなければならず、RおよびRは、一緒になって、9位置と11位置の間で、二重結合を形成し、RおよびRは、水素であり、R12およびR14は、一緒になって、4位置と5位置の間で二重結合を形成し、Rは、α−Fであり、Rは、β−CHであり、R10は、α−OHであり、R13およびR15は、=Oであり、そしてR23は、−OP(O)−(OH)であり;
24=C、C〜C二重結合、Oであり;
25=C(R15)CH−R23、OH、OR26、OC(=O)R27、R26、COOH、C(=O)OR26、CHOHCHOH、CHOHCHOR26、CHOHCHOC(=O)R27、CHCHOH、CHCHOR26、CHCHOC(=O)R27、CHCN、CH、CHNH、CHNHR26、CHN(R26、CHOH、CHOR26、CHO(C=O)R27、CHO(P=O)(OH)、CHO(P=O)(OR26、CHSH、CHS−R26、CHSC(=O)R27、CHNC(=O)R27、C(=O)CHR28OH、C(=O)CHR28OR26、C(=O)CHR28OC(=O)R27であるか、あるいは
10およびR25は、一緒になって、=C(R28、すなわち、必要に応じてアルキル置換したメチレン基であり得;
ここで、R26=C〜C(アルキル、分枝アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アリール)であり;
27=R26+OR26であり;R28=H、C〜C(アルキル、分枝アルキル、シクロアルキル)である、
方法。
【請求項2】
前記化合物が、21−メチル−5β−プレグナン−3α,11β,17α,21−テトロール−20−オン 21−メチルエーテル;3β−アジド−21−アセトキシ−5β−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オン;3β−アセトアミド−21−アセトキシ−5β−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オン;5β−プレグナン−11β,17α,21−トリオール−20−オン;4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオン−21−アセテートおよび4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が、4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオン−21−アセテートおよび4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
眼の手術または眼組織に対する外傷に起因する脈絡膜の新生血管形成を処置する組成物であって、該組成物は、以下の構造:
【化2】

を有する血管静止性因子またはそれらの薬学的に受容可能な塩の薬学的有効量を含有し、
ここで、Rは、H、β−CHまたはβ−Cであり;
は、F、C〜C11二重結合、C〜C11エポキシ、HまたはClであり;
は、H、OR26、OC(=O)R27、ハロゲン、C〜C11二重結合、C〜C11エポキシ、=O、−OH、−O−アルキル(C〜C12)、−OC(=O)アルキル(C〜C12)、−OC(=O)ARYL、−OC(=O)N(R)または−OC(=O)ORであり、ここで、ARYLは、フリル、チエニル、ピロリルまたはピリジルであり、該部分の各々は、必要に応じて、1個または2個の(C〜C)アルキル基で置換されているか、またはARYLは、−(CH−フェニルであり、ここで、fは、0〜2であり、ここで、該フェニル環は、必要に応じて、1個〜3個の基で置換されており、該基は、塩素、フッ素、臭素、アルキル(C〜C)、アルコキシ(C〜C)、チオアルコキシ−(C〜C)、ClC−、FC−、−NHおよび−NHCOCHから選択され、そしてRは、水素、アルキル(C〜C)またはフェニルであり、各Rは、同一または異なり得、そしてRは、本明細書中で定義されたARYL、またはアルキル(C〜C12)であり;
は、H、CH、ClまたはFであり;
は、H、OH、F、Cl、Br、CH、フェニル、ビニルまたはアリルであり;
は、HまたはCHであり;
は、CHCHOR26、CHCHOC(=O)R27、H、OH、CH、F、=CH、CHC(=O)OR28、OR26、O(C=O)R27またはO(C=O)CH(C=O)OR26であり;
10は、−C≡CH、−CH=CH、ハロゲン、CN、N、OR26、OC(=O)R27、H、OH、CHであるか、あるいはR10は、C−16位置とC−17位置との間で、第二結合を形成し;
12は、Hであるか、あるいはRまたはR14と二重結合を形成し;
13は、ハロゲン、OR26、OC(=O)R27、NH、NHR26、NHC(=O)R27、N(R26、NC(=O)R27、N、H、−OH、=O、−O−P(=O)(OH)または−O−C(=O)−(CHCOOHであり、ここで、tは、2〜6の整数であり;
14は、Hであるか、あるいはR12と二重結合を形成し;
15は、H、=Oまたは−OHである;
そしてR23は、R10と共に、環状ホスフェートを形成する;
ここで、RおよびR15は、上で定義した意味を有し;
または、ここで、R23は、−OH、O−C(=O)−R11、−OP(O)−(OH)または−O−C(=O)−(CHCOOHであり、ここで、tは、2〜6の整数であり;そしてR11は、−Y−(CH−X−(CH−SOH、−Y’−(CH−X’−(CH−NR1617または−Z(CHQであり、
ここで、Yは、結合または−O−であり;Y’は、結合、−O−または−S−であり;XおよびX’の各々は、結合、−CON(R18)−、−N(R18)CO−、−O−、−S−、−S(O)−または−S(O)−であり;R18は、水素またはアルキル(C〜C)であり;
16およびR17の各々は、1個〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基であり、該低級アルキル基は、必要に応じて、1個のヒドロキシルで置換されているか、またはR16およびR17は、各々が結合する窒素原子と一緒になって、単環式複素環を形成し、該単環式複素環は、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジノまたはN(低級)アルキル−ピペラジノから選択され、ここで、該アルキルは、1個〜4個の炭素原子を有し;nは、4〜9の整数であり;mは、1〜5の整数であり;pは、2〜9の整数であり;qは、1〜5の整数であり;
Zは、結合または−O−であり;rは、2〜9の整数であり;そしてQは、以下の1つである:
(1)−R19−CHCOOHであって、ここで、R19は、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−SON(R20)−またはN(R20)SO−であり;そしてR20は、水素または低級アルキル−(C〜C)であり;但し、R20および(CH中の全炭素原子数は、10を超えず;または
(2)−CO−COOH;または
(3)CON(R21)CH(R22)COOHであって、ここで、R21は、Hであり、そしてR22は、H、CH、−CHCOOH、−CHCHCOOH、−CHOH、−CHSH、−CHCHSCHまたは−CHPh−OHであり、ここで、Ph−OHは、p−ヒドロキシフェニルであり;
またはR21は、CHであり、そしてR22は、Hであり;
またはR21およびR22は、一緒になって、−CHCHCH−であり;
または−N(R21)CH(R22)COOHは、一緒になって、−NHCHCONHCHCOOHであり;
但し、もし、R23がホスフェートであるなら、Rがβ−CHである化合物を除いて、R13が=OであるときR10と共に、環状ホスフェートを形成しなければならず、RおよびRは、一緒になって、9位置と11位置の間で、二重結合を形成し、RおよびRは、水素であり、R12およびR14は、一緒になって、4位置と5位置の間で二重結合を形成し、Rは、α−Fであり、Rは、β−CHであり、R10は、α−OHであり、R13およびR15は、=Oであり、そしてR23は、−OP(O)−(OH)であり;
24=C、C〜C二重結合、Oであり;
25=C(R15)CH−R23、OH、OR26、OC(=O)R27、R26、COOH、C(=O)OR26、CHOHCHOH、CHOHCHOR26、CHOHCHOC(=O)R27、CHCHOH、CHCHOR26、CHCHOC(=O)R27、CHCN、CH、CHNH、CHNHR26、CHN(R26、CHOH、CHOR26、CHO(C=O)R27、CHO(P=O)(OH)、CHO(P=O)(OR26、CHSH、CHS−R26、CHSC(=O)R27、CHNC(=O)R27、C(=O)CHR28OH、C(=O)CHR28OR26、C(=O)CHR28OC(=O)R27であるか、あるいは
10およびR25は、一緒になって、=C(R28、すなわち、必要に応じてアルキル置換したメチレン基であり得;
ここで、R26=C〜C(アルキル、分枝アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アリール)であり;R27=R26+OR26であり;R28=H、C〜C(アルキル、分枝アルキル、シクロアルキル)である、
組成物。
【請求項5】
前記血管静止性因子が、21−メチル−5β−プレグナン−3α,11β,17α,21−テトロール−20−オン 21−メチルエーテル;3β−アジド−21−アセトキシ−5β−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オン;3β−アセトアミド−21−アセトキシ−5β−プレグナン−11β,17β−ジオール−20−オン;5α−プレグナン−11β,17α,21−トリオール−20−オン;4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオン−21−アセテートおよび4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオンからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物が、0.005重量パーセントと5.0重量パーセントの間の濃度で存在している、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記化合物が、4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオン−21−アセテートまたは4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物が、0.05重量パーセントと2.0重量パーセントの間の濃度で存在している、請求項6に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−504232(P2008−504232A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509642(P2007−509642)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/013653
【国際公開番号】WO2005/102297
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】