説明

眼科用剤

【課題】長期保存においてもプラノプロフェンの劣化が生じることなく、安定な品質を保持することが可能なプラノプロフェン含有眼科用剤を提供する。
【解決手段】プラノプロフェンを含む眼科用剤であって、ビタミンAを更に含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラノプロフェンを含有する眼科用剤に関し、更に詳しくはビタミンA、ビタミンEを含有する眼科用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プラノプロフェンはプロピオン酸系の酸性非ステロイド系抗炎症化合物であり、眼科用としては外眼部及び前眼部における角結膜炎等の炎症疾患に対して有用で、点眼剤の形態で実用に供されている。しかし、プラノプロフェンは水溶液状態では、不安定であり、特に光に対しては長期保存中に徐々に分解されてしまうという問題がある。この光安定性の低さを改善するために種々の試みがなされている。例えば、酸化防止剤を添加する方法や、容器を遮光容器にする方法(非特許文献1参照)等が提案されている。
【非特許文献1】医薬品研究,vol.7,No2,200−210,1976
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非特許文献1に記載の方法では、眼科用剤の容器を遮光性にしただけで、眼科用剤そのものの光劣化を抑制している訳ではないため、時間の経過と共にプラノプロフェンが分解されてしまう可能性が高い。
【0004】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的はプラノプロフェンを含有した眼科用剤において、プラノプロフェンをより安定な状態で存在させることが可能な眼科用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0006】
(1) プラノプロフェンを含む眼科用剤であって、ビタミンAを更に含むことを特徴とする眼科用剤。
【0007】
(1)の発明によれば、ビタミンAを含有することによってプラノプロフェンの光劣化を抑制することが可能となる。なおビタミンAと共にビタミンEを添加してもよい。
【0008】
(2) 前記プラノプロフェンは0.005w/v%から0.2w/v%、前記ビタミンAは0.001w/v%から0.05w/v%含有するものである(1)に記載の眼科用剤。
【0009】
(2)の発明によれば、プラノプロフェンを0.005w/v%から0.2w/v%、ビタミンAを0.001w/v%から0.05w/v%含有させたことによって、ビタミンAがプラノプロフェンの光劣化をより効果的に抑制することが可能となる。
【0010】
(3)ビタミンEを更に含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の眼科用剤。
【0011】
(3)の発明によれば、ビタミンEを更に含むことによってビタミンAが眼科用剤中で安定に存在することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の眼科用剤によれば、プラノプロフェンを含む水溶液にビタミンAを添加させることによって、プラノプロフェンの光安定性を向上させることが可能となった。これによって長期保存においても一定の品質を保つ眼科用剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0014】
本発明に係る眼科用剤は「プラノプロフェン」を含有する。「プラノプロフェン」とは、α−メチル−5H−〔1〕ベンゾピラノ〔2,3−b〕ピリジン−7−酢酸といい、下記の構造式で示される。プラノプロフェンは、インドメタシンに代表される非ステロイド性鎮痛消炎剤の1つであり、シクロオキシゲナーゼを阻害し、炎症の原因物質プロスタグランジンの生成を抑制することで炎症部位の消炎鎮痛作用を示す物質である。また、プロピオン酸系の非ステロイド性抗炎症剤であり、インドメタシン等に比べて副作用の少ないのが特長である。医療用としては、ニフラン(登録商標)の販売名で市販されている。
【0015】
本発明に係る点眼液の主薬であるプラノプロフェンの使用濃度は症状に応じて適宜選択することができるが、0.005〜0.2w/v%であることが好ましく、0.025〜0.1w/v%であることが更に好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
また、本発明に係る眼科用剤は「ビタミンA」を含有する。ビタミンAは、夜盲症に効く脂溶性ビタミンとして知られており、天然にはレチノール(ビタミンA1)の他に3−デヒドロレチノール(ビタミンA2)およびその誘導体がある。側鎖にある4個の2重結合に由来するシス‐トランス異性体中、全トランス体(レチノール)の生理活性が最も強い。多くの有機溶媒、油脂に溶けるが、水には不溶である。本発明では、上述の2種のビタミン及びその誘導体の全てがビタミンAに含まれるが、パルミチン酸レチノール及び酢酸レチノールを用いることが好ましく、パルミチン酸レチノールを用いることが更に好ましい。
【0018】
【化2】

【0019】
ビタミンAの使用濃度は必要に応じて適宜選択することができるが、0.001〜0.05w/v%であることが好ましく、0.005〜0.03w/v%であることが更に好ましい。
【0020】
さらにまた、本発明に係る眼科用剤は「ビタミンE」を含有してもよい。「ビタミンE」とは、トコフェロール、トコトリエノールとも呼ばれ、下記の構造式で示されるトコールのメチル誘導体である。トコフェノールには、αトコフェロール(5,7,8‐トリメチル体)、βトコフェロール(5,8‐ジメチル体)、γトコフェロール(7,8‐ジメチル体)、δトコフェロール(8‐メチル体)の4種があり、トコトリエノールも同様にα、β、γ、δ型の4種が知られている。これらは胚芽、ダイズに多く含まれる。いずれも無色から淡黄色の粘稠澄明な油状物質で、水に不溶、油脂および多くの有機溶媒に溶ける。血行促進作用、生体膜安定化作用等を有する。なお、本発明におけるビタミンEには、上記の天然型8種の他、酢酸トコフェロール、酢酸d−α−トコフェロール等の合成型も含まれる。
【0021】
【化3】

【0022】
ビタミンEの使用濃度は必要に応じて適宜選択することができるが、0.001〜0.5w/v%であることが好ましく、0.005〜0.1w/v%であることが更に好ましい。
【0023】
本発明に係る眼科用剤にはさらに緩衝剤、等張化剤、溶解補助剤、保存剤、粘稠剤、pH調整剤のような各種の添加剤を適宜添加してもよい。
【0024】
緩衝剤としては、例えばリン酸塩緩衝剤(リン酸二水素ナトリウム−リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム−水酸化カリウム)、ホウ酸緩衝剤(ホウ酸−ホウ砂)、酒石酸塩緩衝剤(酒石酸−酒石酸ナトリウム)、アミノ酸(グルタミン酸ナトリウム、イプシロンアミノカプロン酸)等が挙げられる。
【0025】
等張化剤としては、ソルビトール、グルコース、マンニトール等の糖類、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール類、塩化ナトリウム、ホウ砂等の塩類、ホウ酸等が挙げられる。
【0026】
溶解補助剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0027】
保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等の第四級アンモニウム塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ソルビン酸及びそれらの塩、チメロサール、クロロブタノール、デヒドロ酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
粘稠剤としては、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの塩等が挙げられる。
【0029】
pH調整剤としては、塩酸、リン酸、酢酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0030】
本発明に係る眼科用剤は、点眼剤、洗眼剤等として使用される。点眼剤として用いる場合、pHは5.0〜8.5であることが好ましく、5.5〜7.5であることが更に好ましい。また洗眼剤として用いる場合、pHは5.5〜8.0であることが好ましく、6.0〜7.5であることが更に好ましい。
【0031】
本発明に係る眼科用剤は、従来の方法で点眼剤又は洗眼剤として調製することができる。点眼剤は1日数回、1回1滴から数滴投与することができる。また、洗眼剤は1日数回、目の洗浄をすることができる。
【0032】
以下に、本発明に係る眼科用剤の製剤処方例を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0033】
〔実施例1〕
以下に本発明に係る眼科用剤の製造工程を示す。なお、本実施例では点眼剤として用いている。
【0034】
精製水(85mL)にホウ砂、ポリソルベート80、プラノプロフェンを溶解後、ビタミンA(パルミチン酸レチノール)、ビタミンE他各成分を添加し、溶解させ、希塩酸でpHを5.76に調節した後、全量を100mLとした。このときの水溶液の外観は無色澄明であった。
【0035】
〔実施例2〕
また実施例1の配合成分のうち、ビタミンEを添加しない眼科用剤を作成した。
【0036】
〔比較例1〕
本発明の比較例として、プラノプロフェンのみを添加させた眼科用剤を作成した。
【0037】
実施例1、実施例2及び比較例1の眼科用剤を無色のガラス瓶に入れ、3000ルクスのもと98時間放置し、その外観観察を行なった。このときの結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、プラノプロフェンの分解が抑制された眼科用剤として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラノプロフェンを含む眼科用剤であって、ビタミンAを更に含むことを特徴とする眼科用剤。
【請求項2】
前記プラノプロフェンは0.005w/v%から0.2w/v%、前記ビタミンAは0.001w/v%から0.05w/v%含有するものである請求項1に記載の眼科用剤。
【請求項3】
ビタミンEを更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科用剤。

【公開番号】特開2006−36651(P2006−36651A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214900(P2004−214900)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【復代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
【Fターム(参考)】