説明

眼科用溶液

眼科用溶液として、眼科用装置を保管するためのパッケージング溶液や、眼科用装置のクリーニング、および/または殺菌、および/またはリンス、および/または保管のためのレンズ手入れ用溶液が開示されている。この眼科用溶液は、(a)常に正電荷である中心を有するモノマーと(b)非イオン性エチレン型不飽和モノマーとを含むモノマー混合物から得られた少なくとも1種類の重合生成物を含んでいて、この溶液は、浸透圧が少なくとも約200mOsm/kgであり、pHが約4〜約9である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、パッケージング溶液や多目的溶液といった眼科用溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
常に正電荷である中心を少なくとも有するモノマーと、エチレン型不飽和モノマーとに由来するコポリマーが知られている。例えばアメリカ合衆国特許第5,648,442号、第5,705,583号、第5,783,650号には、常に正電荷である中心を有する基(カチオン性の基または両性イオン性の基が可能だが、後者が好ましい)を含むエチレン型不飽和ポリマーと;イオン相互作用によって表面に結合できるイオン性の基を有するエチレン型不飽和コモノマーとを共重合させることによって得られるポリマーが開示されている。これらの特許にはさらに、このポリマーを希釈用モノマー(N-ビニルピロリドン(NVP)、(アルク)アクリル酸ヒドロキシル、(アルク)アクリル酸ポリヒドロキシル(例えばメタクリル酸ソルビトール)など)と共重合させてもよいことが開示されている。これらの特許には、その中に開示されているポリマー生成物が、生体適合性を与えるために表面(完成したインプラント、プロテーゼ、膜、カテーテル、コンタクト・レンズ、眼内レンズなど)を被覆するのに有用であることも開示されている。
【0003】
アメリカ合衆国特許出願公開第2002/0165324号(“'324号出願”)には、中性の1種類または複数種類の希釈用モノマーと、常に正電荷である中心を有する1種類または複数種類のモノマーと、二官能性または三官能性の架橋剤とを重合することによって得られる架橋したコポリマーをコンタクト・レンズとして使用することが開示されている。この'324号出願にはさらに、希釈用モノマーとしてNVPまたは(アルク)アクリル酸ヒドロキシルアルキル(例えば(アルク)アクリル酸2-ヒドロキシエチル)が可能であることと、常に正電荷である中心を有する1種類または複数種類のモノマーとしてカチオン性または両性イオン性のものか可能であることが開示されている。
【0004】
顧客に販売するためそれぞれのソフト・コンタクト・レンズを個別に包装するのにブリスター-パックとガラス製バイアルが用いられている。コンタクト・レンズの包装または製造に関するさまざまな特許で言及されているように、レンズをブリスター-パックの中に保管するのに生理食塩水または脱イオン水が一般に用いられる。レンズ材料はそれ自身とレンズのパッケージにくっつく傾向を持つ可能性があるため、ブリスター-パックのためのパッケージング溶液は、レンズの折れ曲がりとくっつきを減らす、またはなくすように調製されることがあった。この理由でポリビニルアルコール(PVA)がコンタクト・レンズのパッケージング溶液で使用されてきた。
【0005】
レンズが装着前に完全に清潔であるならば、涙液がレンズを十分に濡らすことができると言われてきた。さらに、パッケージング溶液への界面活性剤の添加は、商品寿命が短くなる可能性、および/または熱殺菌の間に好ましくない反応が起こる可能性があるという理由もあって困難であるため、レンズの快適さに影響する可能な効果やちょっとした効果を提供することを目的としてパッケージング溶液で界面活性剤を使用することはさらに限られる。レンズを装着した後、タンパク質その他の沈殿物がレンズの表面に形成されたときにだけ、標準的なレンズ手入れ用溶液で界面活性剤が使用されてきた。
【0006】
コンタクト・レンズは装着者にとってできるだけ快適であることが非常に望ましい。コンタクト・レンズの製造者は、レンズの快適さを改善するため努力を続けている。それにもかかわらず、コンタクト・レンズを装着する多くの人は、一日中、特に一日の終わりに乾きや目の痛みを感じている。どの時点であれ、十分に濡れていないレンズは、レンズの装着者に大きな不快感を引き起こすことになろう。そうした不快感を緩和するのに必要に応じて湿潤にする液滴を使用できるが、そもそもそうした不快感が起こらないことが確実に望ましかろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、眼科用装置(例えば実際に最初に使用するときに装着して快適であるとともに、角膜に対する痛みやそれ以外の不利な効果なしに長期にわたって装着することが可能であるような眼科用レンズ)を保管するための改善された包装システムが提供されると望ましかろう。さらに、例えば装着中にコンタクト・レンズを再び湿らせるために目に直接滴下したり目に間接的に点滴したりできる改良されたレンズ手入れ用溶液(例えばコンタクト・レンズを目の表面に挿入する前に処理するためのコンタクト・レンズ処理溶液)が提供されると望ましかろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様によれば、眼科用装置を保管するための包装システムであって、(a)常に正電荷である中心を少なくとも有するモノマーと(b)非イオン性エチレン型不飽和モノマーとを含むモノマー混合物から得られた重合生成物を含むパッケージング水溶液に浸された未使用の1つ以上の眼科用装置が収容される密封された容器を備えていて、上記水溶液は、浸透圧が少なくとも約200mOsm/kgであり、pHが約4〜約9であり、加熱殺菌されている包装システムが提供される。
【0009】
本発明の第2の実施態様によれば、保管可能な殺菌済み眼科用装置を収容するパッケージを用意する方法が提供される。この方法は、
(a)(i)常に正電荷である中心を少なくとも有するモノマーと(ii)非イオン性エチレン型不飽和モノマーとを含むモノマー混合物から得られた重合生成物を含んでいて、浸透圧が少なくとも約200mOsm/kgであり、pHが約4〜約9の範囲であるパッケージング水溶液に眼科用装置を浸し;
(b)その水溶液とその眼科用装置を包装してその眼科用装置が微生物に汚染されることを防止し;
(c)その包装された水溶液と眼科用装置を殺菌する操作を含んでいる。
【0010】
本発明の第3の実施態様によれば、(a)(i)常に正電荷である中心を少なくとも有するモノマーと(ii)非イオン性エチレン型不飽和モノマーとを含むモノマー混合物から得られた重合生成物と、(b)その重合生成物にとって眼科学的に許容可能な基剤とを含む眼科学的に許容可能な多目的溶液が提供される。
【0011】
本発明の第4の実施態様によれば、
(a)(i)常に正電荷である中心を少なくとも有するモノマーと(ii)非イオン性エチレン型不飽和モノマーとを含むモノマー混合物から得られた重合生成物と、(b)その重合生成物にとって眼科学的に許容可能な基剤とを含む眼科学的に許容可能な多目的溶液に眼科用レンズを浸し;
レンズをその溶液から取り出し;
レンズを目の中に直接入れる操作を含む方法が提供される。
【0012】
本発明の第5の実施態様によれば、生体医学装置を処理する方法であって、
(a)常に正電荷である中心を有するモノマーと(b)非イオン性エチレン型不飽和モノマーとを含むモノマー混合物から得られた重合生成物を含む溶液に生体医学装置を接触させる操作を含む方法が提供される。
【0013】
本発明の第6の実施態様によれば、眼科用装置を保管するための包装システムであって、陽電荷を持つ1つ以上の第1のモノマー区画と、非イオン性の1つ以上の第2のモノマー区画とを有するコポリマーを含んでいて、浸透圧が少なくとも約200mOsm/kgであり、pHが約4〜約9であり、加熱殺菌されているパッケージング水溶液に浸された状態で1つ以上の未使用の眼科用装置を収容する密封された容器を備える包装システムが提供される。
【0014】
本発明の第7の実施態様によれば、(a)陽電荷を持つ1つ以上の第1のモノマー区画と、非イオン性の1つ以上の第2のモノマー区画とを有するコポリマーと;(b)そのコポリマーにとって眼科学的に許容可能な基剤とを含む眼科学的に許容可能な多目的溶液が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、目に適用するための眼科用溶液、または目に接触して配置される生体医学装置(例えばコンタクト・レンズ)を処理するための眼科用溶液に関する。眼科用溶液として特に、目に直接点滴するための組成物として、例えば、眼科用液滴溶液(例えばドライ・アイの治療用)、目に直接滴下されるコンタクト・レンズ処理溶液(例えば装着中にコンタクト・レンズを再び湿らせることを目的とする)や、多目的溶液と呼ぶことのできる溶液などが挙げられる。眼科用組成物としては、目に間接的に点滴するための組成物もあり、例えばコンタクト・レンズを目の表面に挿入する前に処理するためのコンタクト・レンズ処理溶液や、レンズを保管するためのパッケージング溶液などが挙げられる。
【0016】
本発明による眼科学的に許容可能な溶液は、生理学的な適合性がある。特に、この溶液は、コンタクト・レンズとともに使用する上で“眼科学的に安全”でなければならない。これは、この溶液で処理したコンタクト・レンズが、一般に、リンスなしで目の表面に直接配置するのに適していて安全であることを意味する。すなわち、この溶液は、この溶液で湿らせたコンタクト・レンズを通じて目と毎日接触しても安全かつ快適であることを意味する。眼科学的に安全な組成物は、張性とpHが目に適合しており、含まれる材料とその量が、ISO(国際標準機構)の基準とアメリカ合衆国FDAの規制に従って非細胞毒性である。この組成物は無菌でなければならない。そのため、発売前の製品中の汚染微生物がそのような製品に必要な程度に少ないことが、統計的に証明されねばならない。
【0017】
一般に、本発明の眼科用溶液は、(a)常に正電荷である中心を少なくとも有するモノマーと(b)非イオン性エチレン型不飽和モノマーとを含むモノマー混合物から得られた少なくとも1種類の重合生成物を含むことになる。常に正電荷である中心を有するコモノマーとして、カチオン性モノマーまたは両性イオン性モノマーが可能である。後者の場合、モノマーは、構造内に、常に正電荷である中心だけでなく、負電荷である中心も含んでいる。
【0018】
常に正電荷である中心を少なくとも有するモノマーの代表例は、一般式(I):
Y-B-X (I)
のものである。ここに、Bは、結合、置換された直鎖アルキレン、置換された分岐鎖アルキレン、置換されていない直鎖アルキレン、置換されていない分岐鎖アルキレン、置換された直鎖オキサアルキレン、置換された分岐鎖オキサアルキレン、置換されていない直鎖オキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オキサアルキレン、置換された直鎖オリゴオキサアルキレン、置換された分岐鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない直鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オリゴオキサアルキレンのいずれかであり;Xは、常に正電荷である中心を有する基であり;Yは、重合可能なエチレン型不飽和基である。
【0019】
一般に、常に正電荷である中心を有する基Xとして、一般式が-Z1-N+(R1)3、-Z1-P+(R2)3、-Z1-S+(R2)2、-Z1-Het+のいずれかであるものが可能である。ただしZ1は、炭素原子が1〜約12個の置換されたアルキレン基、炭素原子が1〜約12個の置換されていないアルキレン基、置換された二置換アリーレン基、置換されていない二置換アリーレン基、置換されたアルキレンアリーレン基、置換されていないアルキレンアリーレン基、置換されたアリーレンアルキレン基、置換されていないアリーレンアルキレン基、置換されたアルキレンアリールアルキレン基、置換されていないアルキレンアリールアルキレン基、置換されたシクロアルキレン基、置換されていないシクロアルキレン基、置換されたアルキレンシクロアルキル基、置換されていないアルキレンシクロアルキル基、置換されたシクロアルキルアルキレン基、置換されていないシクロアルキルアルキレン基、置換されたアルキレンシクロアルキルアルキレン基、置換されていないアルキレンシクロアルキルアルキレン基のいずれかであり;R1は、独立に、水素、炭素原子が1〜4個の置換されたアルキル基(メチル基が好ましい)、炭素原子が1〜4個の置換されていないアルキル基(メチル基が好ましい)、置換されたアリール(例えば置換されたフェニル)、置換されていないアリール(例えば置換されていないフェニル)のいずれかであるか、2つのR1基が、これらの基が結合している窒素原子と合わさって原子が5〜7個の脂肪族複素環を形成するか、3つのR1基が、これらの基が結合している窒素原子と合わさり、それぞれの環の原子が5〜7個の縮合環構造を形成し;R2は、独立に、R1または基OR1であり(ただしR1は上に定義したのと同じものである);Hetは、窒素含有C3〜C30芳香族環、リン含有C3〜C30芳香族環、イオウ含有C3〜C30芳香族環のいずれかである(例えばピリジン)。
【0020】
Xが両性イオン性の基である場合には、常に正電荷である中心として、一般式(IIA)〜(IIE)の基Xが可能である。その中の一般式(IIA)の基は以下の通りである:
【化1】

ただし、aは1〜4であり、R1は上記の意味を持つ。
一般式(IIB)v基は以下v通りである:
【化2】

ただし、aとR1は上記の意味を持つ。
一般式(IIC)の基は以下の通りである:
【化3】

ただし、aとR1は上記の意味を持ち、R3は、水素、一般式-C(O)B1R4の基(ただしR4は水素またはメチルであり、B1は、原子価結合、直鎖アルキレン基、分岐鎖アルキレン基、直鎖オキサアルキレン基、分岐鎖オキサアルキレン基、直鎖オリゴ-オキサアルキレン基、分岐鎖オリゴ-オキサアルキレン基のいずれかである)、一般式-[C(O)]c(CR5)d(SiR62)(OSiR62)eR6の基(ただしそれぞれの基R5は同じでも異なっていてもよく、水素であるか、炭素原子が1〜4個のアルキルであり、それぞれの基R6は同じでも異なっていてもよく、水素、炭素原子が1〜4個のアルキル、C5〜C30アラルキル(ベンジル、フェニルエチルなど)のいずれかであり、cは0または1であり、dは0〜6であり、2〜4が好ましく、ただしcとdは両方が0になることはなく、eは0〜49であり、4〜29が好ましい)のいずれかである。Bが原子価結合でない場合にはbは1であり、Bが原子価結合である場合にはbは0であり、Xが酸素原子または窒素原子やそれ以外のものに直接結合している場合にはbは1である。
一般式(IID)の基は以下の通りである:
【化4】

ただしa、R1、R3は上記の意味を持つ。
一般式(IIE)の基は以下の通りである:
【化5】

ただしa、R1、R3は上記の意味を持つ。
【0021】
一般式(I)の基Bの代表例として、
一般式-(CR72)f-のアルキレン基(ただしそれぞれの基-(CR72)は同じでも異なっていてもよく、それぞれの基の中のR7は同じでも異なっていてもよく、水素、フッ素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基、フルオロアルキル基のいずれかであり、水素が好ましく、fは1〜12であり、1〜6が好ましい);または
オキサアルキレン基(それぞれのアルキル部部に1〜6個の炭素原子を有するアルコキシアルキルなど(例えば-CH2O(CH2)4-));または
一般式-[(CR82)gO]h(CR82)c-のオリゴ-オキサアルキレン基(ただしそれぞれの基-(CR82)-は同じでも異なっていてもよく、それぞれの基の中のR8は同じでも異なっていてもよく、水素、フッ素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基、フルオロアルキル基のいずれかであり、水素が好ましく、gは1〜6であり、2または3が好ましく、hは2〜11であり、2〜5が好ましい)がある。好ましい基Bとして、アルキレン基、オキサアルキレン基、オリゴ-オキサアルキレン基のうちで、炭素原子が24個までで、場合によっては1個以上のフッ素原子を含むものが挙げられる。一実施態様では、基Bは6〜24個の炭素原子を含んでいる。炭素原子は6〜18個であることが好ましい。
【0022】
一般式(I)の基Yの代表例として、以下の一般式:
【化6】

を持つ重合可能なエチレン型不飽和基が挙げられる。ただし、R9は、水素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基、フルオロアルキル基のいずれかであり;Aは、-O-または-NR10-である(ただしR10は、水素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基のいずれかであるか、R10は-B-X(ただしBとXは上に定義したのと同じである)である)。Kは、一般式-(CH2)iCO(O)-、-(CH2)iC(O)O-、-(CH2)iCOC(O)O-、-(CH2)iCNR11-、-(CH2)iNR11C(O)-、-(CH2)iC(O)NR11-、-(CH2)iNR11C(O)O-、-(CH2)iOC(O)NR11-、-(CH2)iNR11C(O)NR11-、-(CH2)iO-、-(CH2)iSO3-いずれかの基であるか、場合によってはBと組み合わさって原子価結合となることができ、iは1〜12であり、R11は同じでも異なっていてもよく、水素、置換されたC1〜C4アルキル、置換されていないC1〜C4アルキルのいずれかである。
【0023】
Bが原子価結合でもよいため、Xの常に正電荷である中心がYのヘテロ原子(例えば酸素原子または窒素原子)に直接結合しないことが保証される。
【0024】
正電荷である中心を有する好ましいモノマーは、一般式(III)または(IV):
【化7】

を持つものである。ただし、R9、A、K、B、Xは上記の意味を持つ。
【0025】
好ましいカチオン性の基は、エチレン型不飽和モノマーY-B-X上にあってカチオン性部分が第四級アンモニウム基をベースとしている基である。好ましい両性イオン性の基は、例えば、エチレン型不飽和モノマーY-B-X上にあって、カチオン性部分が第四級アンモニウム基をベースとし、アニオン性部分がリン酸基(をベースとしている基例えばリン酸アンモニウム・エステルという両性イオン性の基)である。一般に、カチオン性の基は、ぶら下がっている基XのBから離れた端部に位置する。最も好ましい両性イオン性の基は、上記の一般式(IIA)、(IIB)、(IIC)、(IID)、(IIE)を持つものである。これらの基のうちで一般式(IIB)の基が特に好ましい。
【0026】
この明細書で用いるカチオン性モノマーの代表例として、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AETAC)、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(METAC)などと、これらの混合物が挙げられる。この明細書で用いる両性イオン性モノマーの代表例として、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン、2-(メタクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニウム)エチルリン酸内部塩、1(4(4'-ビニルベンジルオキシブタン)-2'(トリメチルアンモニウム)エチルリン酸塩、[3-(メタクリルロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウム水酸化物塩などと、これらの混合物が挙げられる。
【0027】
カチオン性の基または両性イオン性の基を含むモノマー(例えば一般式(II)または(III)のもの)は、公知の反応を利用した従来法で調製することができる。両性イオン性モノマーの調製方法に関しては、例えばアメリカ合衆国特許第5,712,326号を参照のこと。例えば一般式(II)と(III)の化合物は、置換された適切な(アルク)アクリル酸アルキル、または置換された適切なスチレンを前駆体として用いて調製できる。置換された適切な(アルク)アクリル酸アルキルの例として、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルや(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルがある。
【0028】
一般式(IIC)においてR3が-C(O)B1R4である基を含む一般式(II)と(III)のモノマーは、活性化させた酸誘導体(例えば酸無水物O(C(O)B1R4)2または酸ハロゲン化物R4B1COHal(ただしB1とR4は上に定義した通りであり、Halはハロゲンである))を用いてグリセロホスホリルコリンまたはその類似体の第1のヒドロキシル基の位置を選択的にアシル化した後、適切なアシル化剤(例えば塩化メタクリロイル)を用いて第2のヒドロキシル基の位置をアシル化することによって調製できる。望むのであれば、それぞれのアシル化の後に、または第2のアシル化の後だけに、例えば適切な支持体上でのカラム・クロマトグラフィによる精製を実施することができる。活性化させた適切な酸誘導体として、酸無水物、酸ハロゲン化物、反応性エステル、イミダゾリドなどがある。アシル化は、適切な無水非プロトン性溶媒(例えばN,N-ジメチルホルムアミド)の中で、場合によっては適切な非求核性塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下にて実施することができる。
【0029】
あるいはグリセロホスホリルコリンまたはその類似体に含まれる第1のアルコール基は、標準的な条件下で適切な保護基試薬(例えば塩化t-ブチルジメチルシリル)と反応させた後、第2のヒドロキシ基をアシル化剤(例えば塩化メタクリロイル)で処理することによってブロックできる。t-ブチルジメチルシリル保護基は、希有機酸または希無機酸(例えばg-トルエンスルホン酸、塩酸)またはテトラブチルアンモニウムフルオリドを用いた処理によって除去できる。その後、ブロックを外された第1のヒドロキシル基は、活性化させた酸誘導体(例えば酸無水物O(C(O)B1R4)2または酸ハロゲン化物R4B1COHal(ただしB1とR4は上に定義した通りであり、Halはハロゲンである))を用いて処理することができる。
【0030】
グリセロホスホリルコリンの類似体(一般式(IID)においてR3が水素である基を含む一般式(II)または(III)の化合物)は、不活性な非プロトン性溶媒(例えばジクロロメタン)の中でオキシ塩化リンをブロモアルコールと反応させてブロモアルキルホスホロジクロリデートにすることによって調製できる。このようにして生成されたジクロロ誘導体は、次に、適切に保護されたグリセロール誘導体(例えば2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール)を用いて塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下にて処理した後、酸加水分解を行なってブロモアルキルホスホロ-グリセロール誘導体にすることができる。これをその後アミンNR13(ただしR1は上に定義したものである)(例えばトリエチルアミン)で処理してグリセロホスホリルコリン類似体を生成させることができる。
【0031】
一般式(IID)においてR3が-C(O)B1R4である基を含む一般式(II)または(III)のモノマーは、例えば塩化メタクリロイルを用いてグリセロホスホリルコリンまたはその類似体の第1のヒドロキシル基の位置を選択的にアシル化した後、活性化させた酸誘導体(例えば酸無水物O(C(O)B1R4)2または酸ハロゲン化物R4B1COHal(ただしB1とR4は上に定義した通りであり、Halはハロゲンである))を用いて第2のヒドロキシル基を処理することによって調製できる。中間体と最終生成物は、必要に応じて例えばカラム・クロマトグラフィを利用して精製することができる。場合によっては、一般式(IIC)の基を含むモノマーの製造に関して上に概略を説明したのと同様の保護基戦略を利用することができる。
【0032】
一般式(IIE)の基を含む一般式(II)または(III)のモノマーは、一般式(IIC)または(IID)の基を含むモノマーと同様にして調製することができる。
【0033】
非イオン性エチレン型不飽和モノマーの例として、(アルク)アクリル酸ヒドロキシアルキルまたはヒドロキシアルキルアクリルアミド(ヒドロキシアルキル部分に1〜4個の炭素原子を含む(アルク)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどであり、例えば(アルク)アクリル酸2-ヒドロキシエチル);ビニル・モノマー(ラクタム環に5〜7個の炭素原子を含むN-ビニルラクタムなどであり、例えばN-ビニルピロリドンなどのビニルピロリドン);2〜10個(2〜6個が好ましい)のヒドロキシル基と1〜6個の炭素原子を含むアルキル基とを有する(アルク)アクリル酸ポリヒドロキシル(例えばアクリル酸グリセロール、メタクリル酸グリセロール、エタクリル酸グリセロール、グリセロール-アクリルアミド、グリセロール-メタクリルアミド、グリセロール-エタクリルアミド)などと、これらの混合物がある。
【0034】
この明細書に開示するコポリマーは、(a)常に正電荷である少なくとも1つの中心を有する上記の1種類以上のモノマーと(b)上記の1種類以上の非イオン性エチレン型不飽和モノマーとを少なくとも含むモノマー混合物を通常の重合法(典型的には熱重合または光化学重合)により共重合させて得るか、オールドリッチ・ケミカル社(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)などの供給会社から販売されているもの(例えばNVPとメタクリル酸ジメチルアミノエチルのコポリマーを硫酸ジエチルで四級化したもの)を入手できる。あるいは常に電荷を有するこの明細書で用いるコポリマー(例えばカチオン性コポリマーまたは両性イオン性コポリマー)は、常に正電荷である少なくとも1つの中心を持つことのできるモノマー(例えば第三級アミン含有モノマー)と非イオン性エチレン型不飽和モノマーを共重合させ、常に正電荷である少なくとも1つの中心を持つことのできるモノマーが第三級アミン含有モノマーである場合には、次いでそのコポリマーのアミン部分を四級化して第四級アンモニウム塩を形成することによって調製できる。したがって当業者であれば容易にわかるように、最終的なコポリマーにカチオン特性を最終的に与えるモノマーとして、共重合の前にカチオン性であるモノマーか、非イオン性モノマーだが非イオン性コポリマーの四級化の後にカチオン性になるモノマーが可能である。例えば第三級アミン含有モノマーと、アミン以外の非イオン性エチレン型不飽和コモノマーとに由来するコポリマーを四級化することで、アンモニウム塩含有モノマーと非イオン性エチレン型不飽和コモノマーの共重合生成物と同じコポリマーを形成できる。したがって一実施態様では、本発明の眼科用溶液で用いるコポリマーは、正電荷を有する1つ以上の第1のモノマー区画と、非イオン性の1つ以上の第2のモノマー区画を含むことができる。
【0035】
熱重合に関しては、約40℃〜約100℃(典型的には約50℃〜約80℃)の温度が利用される。光化学重合に関しては、照射線(例えばγ線、UV光、可視光、マイクロ波照射)を利用できる。一般に、波長が約200〜約400nmのUV光が使用される。
【0036】
重合は、一般に、例えば溶媒として水を用いるか、1〜4個の炭素原子を含むアルカノール(例えばメタノール、エタノール、プロパン-2-オール)を用いた反応媒体の中で実施される。あるいは上記の任意の溶媒の混合物を使用してもよい。
【0037】
重合は、1種類以上の重合開始剤の存在下で実施することができる。重合開始剤は通常はフリー・ラジカル生成剤であり、普通は過酸化物開始剤またはアゾ開始剤(例えば過酸化ベンゾイル、2,2'-アゾ-ビス(2-メチルプロピオニトリル)、ベンゾインメチルエーテル)が用いられる。使用可能な他の重合開始剤は、例えば『ポリマー・ハンドブック』、第3版、J. BrandrupとE.H. Immergut編、ワイリー-インターサイエンス社、ニューヨーク、1989年に開示されている。
【0038】
一般に、重合は、不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)下で約1〜約72時間にわたって実施することができる(約8〜約48時間が好ましい)。望むのであれば、得られたポリマーを使用前に例えば約5〜約72時間にわたって真空下で乾燥させるか、水溶液の中に放置することができる。得られる重合生成物は、約5,000〜約1,500,000という数平均分子量を持つ可能性がある(約15,000〜約400,000が好ましい)。
【0039】
この明細書に開示したコポリマーを調製するためのモノマー混合物で用いられるさまざまなコモノマーの正確な割合と性質は、本発明の眼科用溶液で用いるのに特に適したコポリマーが提供されるように調節することができる。本発明の重合生成物にするために重合するモノマー混合物は、常に正電荷である中心を有する1種類または複数種類のモノマーを少なくとも約1重量%(約10重量%が好ましく、約25重量%がより好ましい)と、他の非イオン性エチレン型不飽和モノマーを最大で約99重量%(約90重量%が好ましく、約75重量%がより好ましい)含むことができる。
【0040】
本発明の一実施態様は、包装システムで使用するための、この明細書に開示した少なくとも1種類以上のコポリマーを含むパッケージング水溶液である。一般に、この明細書に開示したコポリマーは、本発明の眼科用溶液の中に約0.005%w/w〜約1%w/wの範囲の量が存在していてもよい(約0.01%w/w〜約0.5%w/wが好ましい)。本発明の眼科用装置を保管するための包装システムは、通常、本発明のパッケージング水溶液に浸された未使用の1つ以上の眼科用装置を収容した少なくとも1つの密封容器を備えている。密封容器は、気密にされたブリスター-パックであることが好ましい。このブリスター-パックでは、コンタクト・レンズを収容した凹形ウエルが金属シートまたはプラスチック・シートに覆われているため、剥がしてブリスター-パックを開けることができる。密封容器は、レンズを適切に保護する一般に不活性な適切な任意の包装材料で製造できる。包装材料は、プラスチック材料(例えばポリアルキレン、PVC、ポリアミドなど)が好ましい。
【0041】
すでに述べたように、本発明のパッケージング水溶液は、生理学的適合性がある。このパッケージング水溶液のpHは、約6.0〜約9の範囲に維持せねばならず、約6.5〜約7.8が好ましい。適切な緩衝液を添加してもよい。緩衝液として、例えばホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、炭酸水素ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、さまざまなリン酸塩緩衝液の混合物(例えばNa2HPO4、NaH2PO4、KH2PO4の組み合わせ)などと、これらの混合物がある。一般に、緩衝液は、溶液の約0.05〜約2.5質量%の範囲の量が使用される(約0.1〜約1.5質量%が好ましい)。
【0042】
一般に、本発明のパッケージング水溶液も張性剤を用いて通常の涙液の浸透圧とほぼ同じになるように調節される。この水溶液は、単独で使用されるか組み合わせて使用される生理食塩水と実質的に等張にされる。そうせずに単に殺菌水と混合して低張または高張にする場合には、レンズが望ましい光学的パラメータを失うことになる。それに対応して、生理食塩水を過剰にすると高張溶液が形成され、ヒリヒリしたり目の痛みが発生する可能性がある。
【0043】
適切な張性調節剤の例として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、デキストロース、グリセリン、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどと、これらの混合物がある。これらの張性調節剤は、一般に、約0.01〜約2.5%w/vの範囲の量で個別に使用される(約0.2〜約1.5%w/vが好ましい)。一般に、0.9%塩化ナトリウム溶液は浸透圧が3%グリセロール溶液または5%単糖溶液と等しいため、個別の張性調節剤の量は、どの張性調節剤を用いるかによって異なるであろう。張性調節剤は、最終的な浸透圧が少なくとも約200mOsm/kgの値になる量を使用する。浸透圧は、約200〜約400mOsm/kgであることが好ましく、約250〜約350mOsm/kgであることがより好ましい。
【0044】
この明細書の“殺菌剤”という用語は、コンタクト・レンズに存在する一群の微生物を減らす、または実質的になくすのに有効な殺菌化合物を意味する。そうなったことは、コンタクト・レンズにそのような微生物の特別な接種原を接種することによってテストできる。殺菌剤の有効量は、使用する製剤中の微生物の集団を少なくとも部分的に小さくする量である。より詳細には、FDA化学的殺菌効率試験、1985年7月、コンタクト・レンズ溶液ガイドラインの草案によれば、殺菌量は、(こすらずに)4時間で微生物の量を2桁減らす、より好ましくは1時間で1桁減らす量である。本発明によるパッケージング溶液のこの好ましい実施態様では、溶液を加熱殺菌し、有効量の殺菌剤が存在しない状態で包装して販売される。
【0045】
望むのであれば、1種類以上の追加成分がパッケージング水溶液に含まれていてもよい。そのような追加成分は、パッケージング溶液に少なくとも1つの有利な特性または望ましい特性を与えるか提供するように選択される。そのような追加成分は、1種類以上の眼科用装置手入れ用組成物で通常用いられている成分の中から選択することができる。そのような追加成分の例として、快適化剤、界面活性剤、クリーニング剤、湿潤剤、栄養剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、コンタクト・レンズ調節剤、酸化防止剤などと、これらの混合物がある。これらの追加成分は、それぞれ、パッケージング溶液に有利な特性または望ましい特性を与えるか提供する量を、そのパッケージング溶液に含めることができる。例えばそのような追加成分は、パッケージング溶液の中に、他の(例えば従来の)コンタクト・レンズ手入れ用製品で使用されるそのような成分と同様の量を含めることができる。
【0046】
界面活性剤はレンズ手入れ用溶液に溶けねばならないが、濁ってはならず、目の組織を刺激してもならない。一実施態様では、界面活性剤は、1つ以上のブロック・コポリマー鎖の中に少なくとも90質量%のポリ(オキシエチレン)区画とポリ(オキシプロピレン)区画を含んでいる(少なくとも95〜100質量%ポリ(オキシエチレン)区画とポリ(オキシプロピレン)区画であることが好ましい)。この界面活性剤の質量平均分子量は約4,000〜約30,000であり、上記区画の少なくとも約40%はポリ(オキシエチレン)区画である。コンタクト・レンズパッケージング溶液で快適化剤として用いるのが好ましい1つの界面活性剤は複数のポリ(オキシアルキレン)鎖を含んでいて、それぞれのポリ(オキシアルキレン)鎖にポリ(オキシエチレン)区画とポリ(オキシプロピレン)区画のブロック・コポリマーが含まれている。この界面活性剤の質量平均分子量は約7,500〜約25,000であり、鎖の少なくとも約40%はポリ(オキシアルキレン)である。鎖の数が2〜6であることと、1個以上(1〜3個が好ましい)の窒素原子を含む中央部分に結合できることが好ましい。特に好ましいことがわかった1つの非イオン性界面活性剤は、エチレンジアミンのポリ(オキシプロピレン)-ポリ(オキシエチレン)付加物からなり、分子量が約7,500〜約25,000であり、この付加物の少なくとも40質量%はポリ(オキシエチレン)である。CTFA化粧品成分事典でこのグループの界面活性剤に採用されている名称は、ポロキサミンである。このような界面活性剤は、BASFワイアンドット社(ワイアンドット、ミシガン州)から登録商標“Tetronic”の名称で入手できる。適切なポロキサマーの例は、Pluronic(登録商標)F108、F88、F68、F68LF、F127、F87、F77、F85、P75、P104、P84である。適切なポロキサミンの例は、Tetronic(登録商標)707、1107、1307である。快適化剤は、組成物または溶液の約0.005〜約5.0質量%の範囲の量を使用できる(約0.01〜約1.0質量%が好ましい)。
【0047】
場合によっては、他の非イオン性界面活性剤(例えば脂肪酸のポリエチレングリコールエステルである、ヤシ油、ポリソルベート、高級アルカン(C12〜C18)のポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシプロピレンエーテルなど)がパッケージング溶液の中に上記の快適化剤(と組み合わせて含まれていてもよい。例として、Tween(登録商標)20(ポリソルベート20)、Tween(登録商標)80、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij(登録商標)35)、ポリオキシエチレン(40)ステアレート(Myrj(登録商標)52)、ポリオキシエチレン(25)プロピレングリコールステアレート(Atlas(登録商標)G2612)などがある。
【0048】
望むのであれば、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤も本発明の剤と組み合わせて存在していてよい。本発明の組成物で用いるのに適した両性界面活性剤として、商品名“Miranol”で市販されているタイプの材料がある。両性界面活性剤の別の有用なクラスの例は、Amphoso CAの商品名で市販されているココアミドプロピルベタインである。
【0049】
本発明で用いるのに適した界面活性剤は、上記の説明に照らすと、『マッカッチョンの洗剤と乳化剤』、ノース・アメリカン出版、マッカッチョン部門、MCパブリッシング社、グレン・ロック、ニュージャージー07452と、コスメティック・トイレタリー・フレグランス・アソシエーション(ワシントンDC)が出版している『CTFA国際化粧品成分ハンドブック』から容易に確認できる。
【0050】
有用な金属イオン封鎖剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、アルカリ金属のヘキサメタリン酸塩、クエン酸ナトリウムなどと、これらの混合物がある。
【0051】
有用な増粘剤として、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(N-ビニルピロリドン)、グアル、ヒドロキシエチルグアル、ヒドロキシプロピルグアル、ポリ(ビニルアルコール)などと、これらの混合物がある。このような増粘剤は、約0.01〜約4.0質量%以下の量を使用できる。
【0052】
有用な酸化防止剤として、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、N-アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどと、これらの混合物がある。
【0053】
本発明の眼科用装置(例えばコンタクト・レンズ)を包装・保管する方法は、眼科用装置を上記のパッケージング水溶液に浸して包装する操作を少なくとも含んでいる。この方法は、眼科用装置を製造した後、その眼科用装置を水溶液の中に浸してから顧客/装着者に直接送達する操作を含むことができる。あるいは本発明の溶液に包装して保管する操作は、最終的な顧客(装着者)に送達する前だがレンズを製造して乾燥した状態で輸送した後の中間的な時点で実施することもできる。すると乾燥状態のレンズは、パッケージング水溶液に浸すことによって水和される。したがって顧客に送達するための包装は、本発明のパッケージング水溶液に浸された未使用の1つ以上のコンタクト・レンズを収容した密封容器を含むことができる。
【0054】
一実施態様では、本発明の眼科用レンズ包装システムを得るステップには、(1)前部と後部を有する鋳型の中で眼科用レンズを成形するステップと、(2)レンズをその鋳型から取り出して水和するステップと、(3)レンズを内部に支持する容器の中に上記の1種類以上のコポリマーを含むパッケージング水溶液を導入するステップと、(4)その容器を密封するステップが含まれる。この方法は、容器の内容物を殺菌するステップも含んでいることが好ましい。殺菌は、容器を密封する前、または密封した後に行なうことができ(たいていは密封後)、従来技術で知られている適切な任意の方法(例えば密封容器とその内容物を約120℃以上の温度でオートクレーブする)で実施できる。
【0055】
本発明によるコンタクト・レンズの保管・送達システムは、上記のパッケージング水溶液に浸された未使用の1つ以上のコンタクト・レンズを収容した密封容器を備えている。密封容器は、気密にされたブリスター-パックであることが好ましい。このブリスター-パックでは、コンタクト・レンズを収容した凹形ウエルが金属シートまたはプラスチック・シートに覆われているため、剥がしてブリスター-パックを開けることができる。
【0056】
本発明の一実施態様は、この明細書に開示した少なくとも1種類以上のコポリマーを含むレンズ手入れ用溶液に関する。一般に、この明細書に開示したコポリマーは、本発明のレンズ手入れ用溶液の中に約0.005〜約1%w/wの範囲の量が存在していてもよい(約0.01〜約0.5%w/wが好ましい)。この眼科用溶液は液滴の形態にすることができ、コンタクト・レンズのクリーニング、または殺菌、または調節のための組成物の一成分として有用である。一実施態様では、本発明の組成物および/または溶液は、“多目的溶液”にすることができる。多目的溶液は、レンズ、その中でも特にソフト・コンタクト・レンズのクリーニング、殺菌、保管、リンスに役立つ。多目的溶液は、一部の装着者、例えば化学的殺菌剤や他の化学物質に特に敏感な装着者がコンタクト・レンズを挿入する前にそのレンズを他の溶液(例えば殺菌された生理食塩溶液)でリンスしたり湿らせたりする可能性のあることを排除しない。“多目的溶液”という用語は、毎日は使用されない定期的クリーナーや、タンパク質をさらに除去するために一般に週一回使用される追加のクリーナー(例えば酵素クリーナー)が使用される可能性のあることも排除しない。“クリーニング”という用語は、溶液が、コンタクト・レンズの表面にゆるく付着しているレンズ堆積物や他の汚染物質を剥離させて除去するために1種類以上の物質を十分な濃度で含むことを意味する。この用語は、指での操作(例えば溶液を用いてレンズを指でこする)またはレンズと接触する溶液を振盪させる付属装置(例えば機械式クリーニング補助具)と関連して用いることができる。
【0057】
従来は、市販されている多目的溶液は、必要な殺菌とクリーニングを行なうためにレンズをその多目的溶液で機械的にこする操作を必要としていた。政府の規制機関(例えばFDAすなわちアメリカ合衆国食品医薬品局(FDA))が、化学的殺菌溶液として認められない化学的殺菌システムに関してこのようなやり方を要求している。本発明の一実施態様では、こすらずにクリーニングと殺菌の性能を改善する一方で、湿潤剤(例えば目薬)として用いるのに十分に穏和なクリーニング・殺菌製品を製造することができる。例えば化学的殺菌溶液として認められる製品は、アメリカ合衆国FDAがコンタクト・レンズ手入れ用製品に関して決めた殺菌性能基準(1997年5月1日)に合致していなければならない(この基準にはレンズをこする操作が含まれていない)。本発明の一実施態様では、FDAの条件、またはコンタクト・レンズ殺菌製品のためのISO独立手続きの条件に合致した組成物にされる。同様に、本発明の組成物は、こすることなくクリーニング能力を向上させることができる。このような組成物は、従来の多目的殺菌・クリーニング製品よりも患者に支持を守らせやすくするとともに、普遍性をより大きくアピールすることができる。多目的溶液は、粘性率が約75cps未満であり(約1〜約50cpsであることがより好ましく、約1〜約25cpsであることが最も好ましい)、全組成物中の水の量が少なくとも約95重量%であることが好ましい。
【0058】
この実施態様の眼科用水溶液は、上記のコポリマーに加え、1種類以上の殺菌剤や保存剤などを含んでいてもよい。本発明の組成物は、一般に、第1の殺菌剤を含んでいる。本発明で用いるのに適した殺菌剤として、殺菌活性が微生物との化学的または物理化学的な相互作用を通じて現われる化学物質がある。このような化学物質は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
【0059】
眼科学的に許容可能な公知の適切な殺菌剤として、ビグアニド、またはその塩、またはその遊離塩基、第四級アンモニア化合物、またはその塩、またはその遊離塩基;テルペンとその誘導体、分岐したグリセロールモノアルキルエーテル、分岐したグリセロールモノアルキルアミン、分岐したグリセロールモノアルキルスルフィド、脂肪酸モノエステル(ただしこの脂肪酸モノエステルは、6〜14個の炭素原子を有する脂肪族脂肪酸部分と、脂肪族ヒドロキシル部分を含んでいる)、アミドアミン化合物などと、これらの組み合わせがある。
【0060】
本発明の眼科用組成物で用いるのに適したビグアニド殺菌剤として、従来技術で知られている任意のビグアニドまたはその塩が可能である。代表的なビグアニドとして、非ポリマー・ビグアニド、ポリマー・ビグアニド、その塩、その遊離塩基などと、これらの混合物がある。代表的な非ポリマー・ビグアニドはビス(ビグアニド)であり、例えばアレキシジン、クロルヘキシジン、アレキシジンの塩(例えばアレキシジンHCl)、クロルヘキシジンの塩、アレキシジン遊離塩基などと、これらの混合物がある。アレキシジンの塩とクロルヘキシジンの塩は有機でも無機でもよく、一般に、殺菌作用のある硝酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物などである。
【0061】
代表的なポリマー・ビグアニドとして、ポリマー・ヘキサメチレン・ビグアニド(PHMB)(ゼネカ社(ウィルミントン、デラウェア州)から市販されている)、そのポリマー、その水溶性の塩などがある。一実施態様では、この明細書で使用する水溶性ポリマー・ビグアニドは、数平均分子量を少なくとも約1,000にすることができる。数平均分子量は約1,000〜約50,000であることが好ましい。遊離塩基の適切な水溶性の塩として、塩酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などがある。一般に、ヘキサメチレンビグアニド・ポリマー(ポリアミノプロピルビグアニド(PAPB)とも呼ばれる)は、約100,000までの数平均分子量を持つ。このような化合物は公知であり、アメリカ合衆国特許第4,758,595号に開示されている(この特許の内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0062】
PHMBは、少なくとも3つ(少なくとも6つが好ましい)のビグアニド・ポリマーを含むポリマー・ビグアニド組成物として最もよく説明される。その3つをPHMB-A、PHMB-CG、PHMB-CGAと呼び、その一般的な化学構造を以下に示す。
【0063】
【化8】

【0064】
これらポリマーのそれぞれについて“n”は繰り返し基の平均数を表わす。実際には、提示したそれぞれのポリマーについてポリマーの長さが分布しているであろう。PHMBに至る従来の合成経路では、ポリマー組成物の約50重量%がPHMB-CGA(すなわち一端にシアノグアニジノ末端キャップがあり、他端にアミンがある)であり、約25重量%がPHMB-Aであり、約25重量%がPHMB-CGであるポリマー・ビグアニド組成物が得られた。主要な上記3種類のPHMBポリマーの大まかな重量比がこのようになっているため、シアノグアニジノ末端キャップの割合も、末端基の合計数の約50%である。本願では、この従来のポリマー・ビグアニド組成物をポリ(ヘキサメチレンビグアニド)またはPHMBと呼ぶ。
【0065】
ポリマー・ビグアニド組成物の新しい合成経路が、同時係属中の2006年10月23日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第60/853,579号と、2007年3月20日に出願された第60/895,770号に記載されている(それぞれの全開示内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。この新しい合成経路により、13C NMRで測定して末端アミン基が18モル%未満であるポリマー・ビグアニド組成物が提供される。このポリマー・ビグアニド組成物は、末端グアニジン基または末端シアノグアニジノ基のモル濃度が相対的に増加していることも特徴とする。例えば一実施態様では、ビグアニド組成物は、約18モル%未満の末端アミン基と、約40モル%以上の末端グアニジン基を含んでいる。別の一実施態様では、ビグアニド組成物は、約18モル%未満の末端アミン基と、約55モル%以上の末端グアニジン基を含んでいる。
【0066】
本願では、このビグアニド組成物をPHMB-CG*と呼ぶ。ポリマー・ビグアニド組成物を一般的な意味で“ヘキサメチレンビグアニド”とも呼ぶ。当業者であれば、その中にPHMBとPHMB-CG*の両方が含まれることがわかるであろう。
【0067】
本発明の眼科用組成物で用いるのに適した第四級アンモニウム化合物の代表例として、ポリ[(ジメチルイミニオ)-2-ブテン-1,4-ジイルクロリド]、[4-トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニオ]-2-ブテニル-w-[トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニオ]-ジクロリド(化学登録番号第75345-27-6)(ONAMER(登録商標)M(ステパン社、ノースフィールド、イリノイ州)という商品名のポリクワテルニウム1として一般に入手できる)などと、これらの混合物がある。
【0068】
本発明の眼科用組成物で用いるのに適した殺菌剤としてのテルペンとして、任意のモノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、またはこれらの誘導体がある。非環式、および/または単環式、および/または二環式のモノテルペン、および/またはセスキテルペン、および/またはジテルペンと、環の数がより多いものを使用できる。この明細書では、テルペンの“誘導体”は、1つ以上の官能基を有するテルペン炭化水素、例えばテルペンアルコール、テルペンエーテル、テルペンエステル、テルペンアルデヒド、テルペンケトンなどと、これらの組み合わせを意味するものとする。ここでは、トランス異性体とシス異性体の両方が適している。テルペンと、誘導体に含まれるテルペン部分は、6〜約100個の炭素原子を含むことができる。炭素原子は約10〜約25個であることが好ましい。
【0069】
殺菌剤としての適切なテルペンアルコールの代表例として、ベルベノール、トランスピノカルベオール、シス-2-ピナノール、ノポール、イソボルネオール、カルベオール、ピペリトール、チモール、α-テルピネオール、テルピネン-4-オール、メントール、1,8-テルピン、ジヒドロ-テルピネオール、ネロール、ゲラニオール、リナロール、シトロネロール、ヒドロキシシトロネロール、3,7-ジメチルオクタノール、ジヒドロ-ミルセノール、テトラヒドロ-アロシメノール、ペリルアルコール、ファルカリンジオールなどと、これらの混合物がある。
【0070】
殺菌剤としての適切なテルペンエーテルとテルペンエステルの代表例として、1,8-シネオール、1,4-シネオール、イソボルニルメチルエーテル、バラのピラン、α-テルピニルメチルエーテル、メントフラン、トランス-アネトール、メチルシャビコール、アロシメンジエポキシド、リモネンモノエポキシド、酢酸イソボルニル、酢酸ノニル、酢酸α-テルピニル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸ジヒドロ-テルピニル、酢酸メリルなどと、これらの混合物がある。
【0071】
殺菌剤としてのテルペンアルデヒドとテルペンケトンの代表的例として、ミルテナール、カンホレンアルデヒド、ペリルアルデヒド、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、カンフル、ベルベノン、カルベノン、ジヒドロ-カルボン、カルボン、ピペリトン、メントン、ゲラニルアセトン、プソイド-イオノン、α-イオニン、イソ-プソイド-メチルイオノン、n-プソイド-メチルイオノン、イソ-メチルイオノン、n-メチルイオノンなどと、これらの混合物がある。官能基を有する従来技術で知られている他の任意のテルペン炭化水素も本発明の組成物で使用することができる。
【0072】
一実施態様では、殺菌剤としての適切なテルペンまたはその誘導体として、トリシクレン、α-ピネン、テルピノレン、カルベオール、アミルアルコール、ネロール、β-サンタロール、シトラール、ピネン、ネロール、b-イオノン、(チョウジからの)カリオフィレン、グアイオール、アニスアルデヒド、セドロール、リナロール、d-リモネン(オレンジ油、レモン油)、ロンギホレン、アニシルアルコール、パチュウリアルコール、α-カジネン、1,8-シネオール、ρ-シメン、3-カレン、ρ-8-メンタン、トランス-メントン、ボルネオール、α-フェンコール、酢酸イソアミル、テルピン、桂皮酸アルデヒド、イオノン、(バラその他の花からの)ゲラニオール、(ヤマモモの蝋、モクレンとバーベナの油からの)ミルセン、ネロール、シトロネロール、カルバクロール、オイゲノール、カルボン、α-テルピネオール、アネトール、カンフル、メントール、リモネン、ネロリドール、ファルネソール、フィトール、カロテン(ビタミンA1)、スクワレン、チモール、トコトリエノール、ペリリルアルコール、ボルネオール、シメン、カレン、テルペネン、リナロール、1-テルペン-4-オール、(ショウガからの)ジンジベレンなどと、これらの混合物がある。
【0073】
一実施態様では、眼科用組成物の成分(ii)の化合物は、分岐したグリセロールモノアルキルエーテルを含んでいる。別の一実施態様では、眼科用組成物の成分(ii)の化合物は、分岐したグリセロールモノアルキルアミンを含んでいる。別の一実施態様では、眼科用組成物の成分(ii)の化合物は、分岐したグリセロールモノアルキルスルフィドを含んでいる。さらに別の一実施態様では、眼科用組成物の成分(ii)の化合物は、分岐したグリセロールモノアルキルエーテル、分岐したグリセロールモノアルキルアミン、分岐したグリセロールモノアルキルスルフィドの任意の1つの混合物を含んでいる。
【0074】
一実施態様では、本発明の眼科用組成物で用いるための分岐したグリセロールモノアルキルエーテルは、3-[(2-エチルヘキシル)オキシ]-1,2-プロパンジオール(EHOPD)である。別の一実施態様では、分岐したグリセロールモノアルキルアミンは、3-[(2-エチルヘキシル)アミノ]-1,2-プロパンジオール(EHAPD)である。別の一実施態様では、分岐したグリセロールモノアルキルスルフィドは、3-[(2-エチルヘキシル)チオ]-1,2-プロパンジオール(EHSPD)である。さらに別の一実施態様では、眼科用組成物は、EHOPD、EHAPD、EHSPDの任意の1つの混合物を含んでいる。EHOPD、EHAPD、EHSPDの化学構造を以下に示す。
【0075】
【化9】

【0076】
EHOPDは、オクトキシグリセリンとも呼ばれ、Sensiva(登録商標)SC50の商品名(シュルケ&マイヤー社)で販売されている。EHOPDは、皮膚に優しく、さまざまなグラム陽性菌(例えばミクロコッカス・ルテウス、コリネバクテリウム・アクアティクム、コリネバクテリウム・フラベスケンス、コリネバクテリウム・カルネ、コリネバクテリウム・ネフレディ)に対して殺菌活性を示すことが知られている分岐したグリセロールモノアルキルエーテルである。したがってEHOPDは、さまざまな皮膚脱臭調製物において約0.2〜3重量%の濃度で用いられている。EHAPDは、当業者によく知られた化学的方法を利用して2-エチルヘキシルアミンと2,3-エポキシ-1-プロパンジオールから調製することができる。EHSPDは、当業者によく知られた化学的方法を利用して2-エチルヘキシルチオールと2,3-エポキシ-1-プロパンジオールから調製することができる。
【0077】
本発明の眼科用組成物で用いるのに適した脂肪酸モノエステルとして、6〜14個の炭素原子を有する脂肪族脂肪酸部分と脂肪族ヒドロキシル部分を含む脂肪酸モノエステルなどがある。
【0078】
“脂肪族”という用語は、直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和の炭化水素で炭素原子を6〜14個有するものを意味する。一実施態様では、脂肪族脂肪酸部分は、8〜10個の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖炭化水素である。別の一実施態様では、脂肪族脂肪酸部分は、8〜10個の炭素原子を有する飽和または不飽和の分岐鎖炭化水素である。
【0079】
脂肪酸モノエステルの脂肪族ヒドロキシル部分として、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する任意の脂肪族化合物が可能である。多くの実施態様では、脂肪族ヒドロキシル部分は、3〜9個の炭素を有するであろう。脂肪族ヒドロキシル部分として、プロピレングリコール、グリセロール、ポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール)、環状ポリオール(例えばソルビタン、グルコース、マンノース、フルクトース、フコース、イニシトールや、これらの誘導体)、直線状ポリオール(例えばマンニトール、ソルビタンや、これらの誘導体)などと、これらの混合物がある。
【0080】
本発明の眼科用組成物で用いるのに適したアミドアミンの代表例として、一般式:
R12-(OCH2CH2)m-X-(CH2)n-Y
のアミドアミンがある。ただし、R12は、飽和または不飽和のC6〜C30炭化水素(例えば置換された直鎖アルキル基、置換されていない直鎖アルキル基、置換された分岐鎖アルキル基、置換されていない分岐鎖アルキル基、置換された直鎖アルキルアリール基、置換されていない直鎖アルキルアリール基、置換された分岐鎖アルキルアリール基、置換されていない分岐鎖アルキルアリール基、置換された直鎖アルコキシアリール基、置換されていない直鎖アルコキシアリール基、置換された分岐鎖アルコキシアリール基、置換されていない分岐鎖アルコキシアリール基)であり;mは0〜16であり;nは2〜16であり;Xは-C(O)-NR13-またはR13N-C(O)-であり;Yは-N(R14)2(ただし、それぞれのR13とR14は、独立に、水素、C1〜C8飽和アルキル、C1〜C8不飽和アルキル、C1〜C8飽和ヒドロキシアルキル、C1〜C8不飽和ヒドロキシアルキルのいずれか、またはこれらの薬理学的に許容可能な塩である)である。一実施態様では、mは0であり、R12はヘプタデス-8-エニル、ウンデシル、ウンデセニル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘプタデシルのいずれかであり、R2は水素またはメチルであり、R3はメチルまたはエチルである。
【0081】
本発明で用いるいくつかのアミドアミンは市販されている。例えばミリスタミドプロピルジメチルアミンがアルコン社(フォート・ワース、テキサス州)からAldox(登録商標)の商品名で入手できる。ラウラミドプロピルジメチルアミンは、イノレックス・ケミカル・カンパニー社(フィラデルフィア、ペンシルヴェニア州)からLEXAMINE(登録商標)L-13の商品名で入手できる。ステアラミドプロピルジメチルアミンもイノレックス・ケミカル・カンパニー社からLEXAMINE(登録商標)S-13の商品名で入手できる。上記のアミドアミンは、公知の技術(例えばアメリカ合衆国特許第5,573,726号に記載されている技術)に従って合成することができる。
【0082】
第1の殺菌剤の量は、使用する個々の組成物に応じて異なる可能性がある。上記の有機窒素含有組成物に関しては、一般に、約0.00001〜約0.5質量%の範囲の濃度で存在する。この範囲は、約0.00003〜約0.05質量%が好ましい。ソルビン酸に関してはより多くの量が必要とされる可能性があり、一般に約0.01〜約1質量%、より好ましくは約0.1〜約0.5質量%である。殺菌剤は、使用する製剤中の微生物の集団が少なくとも部分的に減少するであろう量を使用する。望むのであれば、殺菌剤は殺菌量で用いることができる。すると微生物の数が4時間で少なくとも2桁、より好ましくは1時間で1桁減少するであろう。殺菌量は、推奨されている浸漬時間での処理計画(FDA化学的殺菌効率試験、1985年7月、コンタクト・レンズ溶液ガイドラインの草案)で用いるときにコンタクト・レンズの表面の微生物がなくなる量であることが最も好ましい。
【0083】
この実施態様の水溶液は、眼科溶液に一般に存在する1種類以上の他の成分をさらに含んでいてもよい。それは例えば、上に説明した界面活性剤、張性調節剤、緩衝剤、キレート剤、pH調節剤、粘性変更剤、緩和剤などであり、これらは、眼科用組成物をユーザーにとってより快適にする、および/またはユーザーの目的とする用途にとってより効果的にするのを助ける。
【0084】
本発明の溶液および/または組成物のpHは、約4.0〜約9.0の範囲に維持することができる。この範囲は約5.0〜約8.0であることが好ましく、約6.0〜約8.0であることがより好ましく、約6.5〜約7.8であることがより一層好ましい。一実施態様では、pHの値が約7以上であることが最も好ましい。
【0085】
本発明の一実施態様によれば、生体医学装置を処理する方法は、本発明の溶液、すなわち(a)常に正電荷である中心を有するモノマーと(b)非イオン性エチレン型不飽和モノマーとを含むモノマー混合物から得られた少なくとも1種類の重合生成物を含む溶液に生体医学装置を接触させる操作を含んでいる。別の一実施態様の方法は、生体医学装置を本発明の溶液に浸し;生体医学装置を溶液から取り出し;生体医学装置をパッケージング溶液の中に包装してその生体医学装置が微生物で汚染されるのを防止し;その包装された溶液と生体医学装置を殺菌する操作を含んでいる。この実施態様によれば、パッケージング溶液として、従来技術で知られている任意のパッケージング溶液か、(a)常に正電荷である中心を有するモノマーおよび/または(b)非イオン性エチレン型不飽和モノマーを含むこの明細書に記載した重合生成物を含んでいて生体医学装置を最初に浸した溶液とは異なるパッケージング溶液が可能である。さらに別の一実施態様の方法は、生体医学装置を本発明の溶液に浸し;生体医学装置を含むその溶液をパッケージング溶液の中に包装してその生体医学装置が微生物で汚染されるのを防止し;その包装された溶液と生体医学装置を殺菌する操作を含んでいる。この実施態様では、生体医学装置を含む溶液は、従来技術で知られているパッケージング溶液の中に、または(a)常に正電荷である中心を有するモノマーおよび/または(b)非イオン性エチレン型不飽和モノマーを含むこの明細書に記載した重合生成物を含んでいて生体医学装置を最初に浸した溶液とは異なるパッケージング溶液の中に、“そのまま”保管することができる。
【0086】
さらに別の一実施態様の方法は、生体医学装置を本発明の溶液に浸し;溶液と生体医学装置を包装してその生体医学装置が微生物で汚染されるのを防止し;その包装された溶液と生体医学装置を殺菌する操作を含んでいる。さらに別の一実施態様の方法は、生体医学装置を本発明の溶液に浸し;生体医学装置をその溶液から取り出し;その生体医学装置を直接目の中に配置する操作を含んでいる。
【0087】
この明細書では、“生体医学装置”または“眼科用装置”という用語は、目の中または表面に留まる装置を意味する。これら装置は、光学的補正、傷のケア、薬の送達、診断機能、美容増進、美容効果や、これらの性質の組み合わせを提供することができる。このような装置の代表例として、眼科用レンズなどがある。眼科用レンズとしては、ソフト・コンタクト・レンズ(例えばソフト・レンズ、ヒドロゲル・レンズ;ソフトな非ヒドロゲル・レンズなど)、ハード・コンタクト・レンズ(例えばハードなガス透過性レンズ材料など)、眼内レンズ、オーバーレイ・レンズ、目インサート、光学的インサートなどがある。当業者であればわかるように、レンズは折り曲げても破断しないときに“ソフト”であると見なされる。この明細書では、生体医学装置(例えばコンタクト・レンズ)を製造するための公知の任意の材料を使用できる。この明細書では、生体適合性材料を用いることが特に有用である。その中には、眼科用レンズ(例えばコンタクト・レンズ)で一般に用いられる柔らかい材料と固い材料の両方が含まえっる。好ましい基材はヒドロゲル材料であり、その中にはシリコーン・ヒドロゲル材料と非シリコーン・ヒドロゲル材料が含まれる。
【0088】
この明細書では多彩な材料を使用できる。一般にヒドロゲルは、平衡状態の水を含有する水和した架橋ポリマー系を含むよく知られた材料の1つのクラスである。ヒドロゲル製コンタクト・レンズ材料は少なくとも1種類の親水性モノマー(例えばメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)、N-ビニルピロリドン(NVP)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA))から製造される。ヒドロゲルは一般に含水量が約15質量%よりも多く、約20〜約80質量%であることがより一般的である。
【0089】
ヒドロゲルの1つのクラスはシリコーン・ヒドロゲルである。この材料は、通常は、少なくとも1種類のシリコーン含有モノマーと少なくとも1種類の親水性モノマーとを含む混合物を重合させることによって調製される。一般に、シリコーン含有モノマーまたは親水性モノマーが、架橋剤(架橋剤は、多数の重合可能な官能基を有するモノマーとして定義される)として機能する。あるいは別の架橋剤を使用してもよい。シリコーン・ヒドロゲルを形成するために利用可能なシリコーン含有モノマー単位は従来技術でよく知られており、多くの例がアメリカ合衆国特許第4,136,250号、第4,153,641号、第4,740,533号、第5,034,461号、第5,070,215号、第5,260,000号、第5,310,779号、第5,358,995号に与えられている。
【0090】
利用可能なシリコーン含有モノマー単位の代表例として、一般式(V)の構造:
【化10】

で表わされるバルクのシロキサニル・モノマー(ただし、Xは-O-または-NR17-を表わし;それぞれのR15は、独立に、水素またはメチルを表わし;それぞれのR16は、独立に、低級アルキル基、フェニル基、
【化11】

で表わされる基(ただしそれぞれのR16'は、独立に、低級アルキル基またはフェニル基を表わす)のいずれかを表わし;hは1〜10である)がある。
【0091】
バルク・モノマーの例は、3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(TRISと呼ばれることがある)、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルビニルカルバメート(TRIS-VCと呼ばれることがある)などである。
【0092】
このようなバルク・モノマーはシリコーン・マクロモノマー(例えばポリ(有機シロキサン)であって、この分子の2つ以上の端部が不飽和基でキャップをされたもの)と共重合させることができる。アメリカ合衆国特許第4,153,641号には、例えばさまざまな不飽和基(例えばアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)が開示されている。
【0093】
代表的なシリコーン含有モノマーの別のクラスとして、シリコーン含有炭酸ビニル・モノマーまたはシリコーン含有カルバミン酸ビニル・モノマーがあり、例えば1,3-ビス[(4-ビニルオキシカルボニルオキシ)ブト-1-イル]テトラメチル-ジシロキサン;3-(トリメチルシリル)プロピルビニルカーボネート;3-(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル[トリス(トリメチルシロキシ)シラン];3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート;3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート;3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカーボネート;t-ブチルジメチルシロキシエチルビニルカーボネート;トリメチルシリルエチルビニルカーボネート;トリメチルシリルメチルビニルカーボネートなどと、これらの混合物が挙げられる。
【0094】
シリコーン含有モノマーの別のクラスとして、従来のウレタン・エラストマーのように硬-軟-硬ブロックを備えることのできるポリウレタン-ポリシロキサン・マクロモノマー(プレポリマーと呼ばれることもある)がある。このマクロモノマーは、端部に親水性モノマー(例えばメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA))のキャップを被せることができる。このようなシリコーンウレタンの例はさまざまな刊行物に開示されており、例えばPCT公開出願WO 96/31792には、そのようなモノマーの例が開示されている(その開示内容はすべてこの明細書に組み込まれているものとする)。シリコーンウレタン・モノマーの代表例は、一般式(VI)と(VII)で表わすことができる。
E(*D*A*D*G)a*D*A*D*E'; (VI)または
E(*D*G*D*A)a*D*A*D*E' (VII)
ただし、Dは、独立に、アルキル・ジラジカル、アルキルシクロアルキル・ジラジカル、シクロアルキル・ジラジカル、アリール・ジラジカル、アルキルアリール・ジラジカルのいずれかで6〜約30個の炭素原子を有するものを表わし;
Gは、独立に、アルキル・ジラジカル、シクロアルキル・ジラジカル、アルキルシクロアルキル・ジラジカル、アリール・ジラジカル、アルキルアリール・ジラジカルのいずれかで1〜約40個の炭素原子を有するものを表わし、主鎖の中にエーテル結合、チオ結合、アミン結合を含んでいてもよく;
*は、ウレタン結合またはウレイド結合を表わし;
aは少なくとも1であり;
Aは、独立に、一般式(VIII)の2価のポリマー基:
【化12】

を表わし(ただし、それぞれのRSは、独立に、アルキル基またはフルオロ置換されたアルキル基で1〜約10個の炭素原子を有するものを表わし、炭素原子間にエーテル結合を含んでいてもよく;m'は少なくとも1であり;pは、この部分の分子量を約400〜約10,000にする数である);
それぞれのEとE'は、独立に、一般式(IX)で表わされる重合可能な不飽和有機基:
【化13】

である(ただし、R17は水素またはメチルであり;
R18は、独立に、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、-CO-Y-R20基(ただしYは、-O-、-S-、-NH-のいずれかである)のいずれかであり;
R19は、1〜約10個の炭素原子を有する2価のアルキレン基であり;
R20は、1〜約12個の炭素原子を有するアルキル基であり;
Xは、-CO-または-OCO-を表わし;
Zは、-O-または-NH-を表わし;
Arは、約6〜約30個の炭素原子を有する芳香族基を表わし;
wは0〜6であり;xは0または1であり;yは0または1であり;zは0または1である)。
【0095】
好ましい1つのシリコーン含有ウレタン・モノマーは、一般式(X):
【化14】

で表わされる。ただしmは少なくとも1であり、3または4であることが好ましく、aは少なくとも1であり、1であることが好ましく、pは、この部分の分子量を約400〜約10,000にする数であり、少なくとも約30であることが好ましく、R21は、イソシアネート基を除去した後のジイソシアネートのジラジカルであり(例えばジイソシアン酸イソホロンのジラジカル)、それぞれのE"は、
【化15】

によって表わされる基である。
【0096】
本発明の別の一実施態様では、シリコーン・ヒドロゲル材料は、(バルクで、すなわち重合されたモノマー混合物の状態で)約5〜約50質量%(約10〜約25質量%が好ましい)の1種類以上のシリコーン・マクロモノマーと、約5〜約75質量%(約30〜約60質量%が好ましい)の1種類以上のポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリル・モノマーと、約10〜約50質量%(約20〜約40質量%が好ましい)の親水性モノマーを含んでいる。一般に、シリコーン・マクロモノマーは、ポリ(有機シロキサン)の2つ以上の端部に不飽和基を被せたものである。上記の構造式の端部の基に加え、アメリカ合衆国特許第4,153,641号には、追加の不飽和基(例えばアクリロイルオキシ基やメタクリロイルオキシ基)が開示されている。例えばアメリカ合衆国特許第5,310,779号、第5,449,729号、第5,512,205号に開示されているフマレート含有材料も、本発明における有用な基材である。シラン・マクロモノマーは、シリコーン含有炭酸ビニル、またはシリコーン含有カルバミン酸ビニル、または1つ以上の硬-軟-硬ブロックを持ち、末端に親水性モノマーのキャップがあるポリウレタン-ポリシロキサンであることが好ましい。
【0097】
適切な親水性モノマーとして、アミド(例えばN,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド)、環状ラクタム(例えばN-ビニル-2-ピロリドン)、重合可能な基で機能化されたポリ(アルケングリコール)などがある。機能化された有用なポリ(アルケングリコール)の例として、鎖の長さがさまざまで末端にモノメタクリレートまたはジメタクリレートのキャップを含むポリ(ジエチレングリコール)がある。好ましい一実施態様では、ポリ(アルケングリコール)ポリマーは、少なくとも2つのアルケングリコール・モノマー単位を含んでいる。さらに別の例は、アメリカ合衆国特許第5,070,215号に開示されている親水性の炭酸ビニル・モノマーまたはカルバミン酸ビニル・モノマーと、アメリカ合衆国特許第4,910,277号に開示されている親水性のオキサゾロン・モノマーである。他の適切な親水性モノマーは、当業者には明らかであろう。
【0098】
一実施態様では、レンズとして、含水量が約50質量%を超える(約55〜約80質量%が好ましい)基(II)と基(IV)のレンズが可能だが、本発明はあらゆるタイプのソフトなヒドロゲル製コンタクト・レンズに適用できる。コンタクト・レンズの代表的な材料として、USANとUSAPの薬品名事典で知られる以下の材料がある:ブフィルコンA、エタフィルコンA、メタフィルコンA、オクフィルコンC、ペルフィルコンA、フェムフィルコンA、ビフィルコンA、ヒラフィルコンA、ヒラフィルコンB、バラフィルコンA、メタフィルコンB、オクフィルコンD、リドフィルコンA、リドフィルコンB、アルファフィルコンA。
【0099】
上記の材料は単なる例であり、基材として用いるための他の材料であって、さまざまな刊行物に開示されていたり、眼科用装置(例えばコンタクト・レンズや他の医療装置)で用いるために常に開発が続けられていたりするもののうちで、本発明の眼科用組成物でクリーンにして殺菌することによる利益が得られるものも使用できる。例えばこの明細書で用いる眼科用装置として眼科用レンズ(例えばコンタクト・レンズ)が可能であり、この眼科用装置はフッ素化シリコーン含有モノマーで製造できる。このようなモノマーは、例えばアメリカ合衆国特許第4,954,587号、第5,010,141号、第5,079,319号に開示されているように、フルオロシリコーン・ヒドロゲルを形成する際に、この材料でできたコンタクト・レンズの表面に堆積物が蓄積するのを減らすために使用されてきた。いくつかのフッ素化側鎖基すなわち-(CF2)-Hを有するシリコーン含有モノマーを用いると親水性ユニットとシリコーン含有ユニットの間の適合性が向上することが見いだされている。例えばアメリカ合衆国特許第5,321,108号と第5,387,662号を参照のこと。
【0100】
本発明を適用する眼科用装置(例えばコンタクト・レンズ)は、従来からあるさまざまな技術を利用して製造することができ、その結果として望むレンズ後面とレンズ前面を持つ成形製品が得られる。スピンキャスティング法が、アメリカ合衆国特許第3,408,429号と第3,660,545号に開示されている。好ましい静的キャスティング法が、アメリカ合衆国特許第4,113,224号と第4,197,266号に開示されている。モノマー混合物を硬化させた後に加工して望む最終形状のコンタクト・レンズにすることがしばしばある。一例として、アメリカ合衆国特許第4,555,732号には、過剰なモノマー混合物を鋳型の中にスピンキャスティングすることによって硬化させ、レンズ前面と比較的広い幅を有する成形製品を形成することが開示されている。硬化したこのスピンキャスト製品の後面は、その後、旋盤で切断され、望む厚さとレンズ後面を有するコンタクト・レンズにされる。レンズの表面を旋盤で切断した後にさらに加工操作(例えばエッジ仕上げ操作)を行なってもよい。
【0101】
望む最終形状を持つレンズを製造した後、エッジ仕上げ操作の前にレンズから残った溶媒を除去することが望ましい。それは、一般に、モノマー混合物の重合によって生じる重合生成物の相分離を最少にするとともに、反応するポリマー混合物のガラス転移温度をより低くすることで、より効率的な硬化プロセスを可能にし、最終的により一様な重合生成物を得ることを目的として、有機希釈剤が最初のモノマー混合物に含まれているからである。最初のモノマー混合物と重合生成物が十分に一様であることは、シリコーン・ヒドロゲルにとって特に重要である。その主な理由は、シリコーン含有モノマーが含まれていると親水性コモノマーから分離する傾向があるからである。適切な有機希釈剤として、例えば、1価アルコール(例えばC6〜C10直鎖脂肪族1価アルコールであるn-ヘキサノールやn-ノナノール);ジオール(例えばエチレングリコール);ポリオール(例えばグリセリン);エーテル(例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル);ケトン(例えばメチルエチルケトン);エステル(例えばエナント酸メチル);炭化水素(例えばトルエン)などがある。有機希釈剤は、硬化した製品から大気圧または大気圧に近い圧力で蒸発によって除去するのが容易であるよう、十分に揮発性であることが好ましい。一般に、希釈剤は、モノマー混合物の約5〜約60質量%の割合で含まれる。この割合は、約10〜約50質量%であることが特に好ましい。
【0102】
次に、硬化したレンズから溶媒を除去する。それは、大気圧またはそれに近い圧力での蒸発、または真空下での蒸発によって実現できる。高温にすると希釈剤を蒸発させるのに必要な時間を短縮することができる。溶媒除去ステップの時間、温度、圧力の条件は、希釈剤の揮発性、個々のモノマー成分などの因子によって異なるであろうが、当業者であれば容易に決定することができる。好ましい一実施態様によれば、除去ステップで利用する温度は、少なくとも約50℃であり、例えば約60℃〜約80℃であることが好ましい。不活性ガス下または真空下の直線炉での一連の加熱サイクルを利用し、溶媒を除去する効率を最適化することができる。硬化した製品は、希釈剤を除去するステップの後、希釈剤の含有量が20質量%以下でなければならない。この値は、約5質量%以下であることが好ましい。
【0103】
有機希釈剤を除去した後、レンズを鋳型から外してオプションの加工操作を実施することができる。加工ステップには、例えばレンズのエッジおよび/または表面をこすったり磨いたりする操作が含まれる。一般に、このような加工プロセスは、製品を鋳型部から外す前、または外した後に実施できる。レンズは、真空ピンセットを用いてレンズを鋳型から持ち上げることによって鋳型から乾燥状態で外した後、レンズを機械式ピンセットで第2の真空式ピンセットへと移して回転面に接触させて配置し、表面またはエッジを滑らかにすることが好ましい。次にレンズを裏返して反対側を加工する。
【0104】
以下の実施例は、当業者が本発明を実施できるようにするために提示されており、本発明の単なる例示である。これら実施例が請求項に規定されている本発明の範囲を制限すると見なしてはならない。
【0105】
実施例では、以下の略号を用いる。
V2 D25:ペンタコンタメチル-α,ω-ビス(4-ビニルオキシカルボニルオキシブチル)ペンタコサシロキサン(Mwの範囲は2〜4k)
TRISVC:3-[トリス(トリ-メチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート
NVP:N-ビニル-2-ピロリドン
D1173:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(Darocur 1173開始剤として入手可能)
IMVT:1,4-ビス(4-(2-メタクリルオキシエチル)フェニルアミノ)アントラキノン
【実施例1】
【0106】
シリコーン・ヒドロゲル製レンズの製造
【0107】
以下の表1に列挙した諸成分(単位は質量部)を混合してモノマー混合物を作った。
【0108】
【表1】

【0109】
2つのポリプロピレン製鋳型区画(前部鋳型区画はコンタクト・レンズの前面を形成するための鋳型面を持ち、後部鋳型区画はコンタクト・レンズの後面を形成するための鋳型面を持つ)からなる鋳型組立体の中に得られたモノマー混合物を導入することにより、そのモノマー混合物を成形してコンタクト・レンズにした。次に、鋳型区画とモノマー混合物に紫外光を照射してフリー・ラジカル重合を誘導することによってモノマー混合物を硬化させ、コンタクト・レンズを形成した。得られたコンタクト・レンズを鋳型組立体から取り出し、60℃の炉に1時間にわたって入れた後、乾燥したレンズを鋳型から離した。
【実施例2】
【0110】
実施例1のレンズをNVPとメタクリル酸ジメチルアミノエチルのコポリマーで事後処理し、オールドリッチ・ケミカル社(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から入手した硫酸ジエチルの20%水溶液を用いて四級化した。
【0111】
実施例1のレンズをアンモニア・ガスでプラズマ処理した後、イソプロパノールで2時間にわたって抽出し、脱イオン水の中で水和し、次いでホウ酸緩衝化生理食塩水の中でオートクレーブ(121℃)することによって対照のレンズを製造した(対照レンズ)。実施例1のレンズをアンモニア・ガスでプラズマ処理した後、脱イオン水(70ml)、アクリル酸(13.12g)、NaOH(8.526g)、イソプロパノール(350ml)の混合物から作った溶液の中で一晩にわたって抽出し、NVPとメタクリル酸ジメチルアミノエチルのコポリマーを30ppm含む脱イオン水の中で水和し、硫酸ジエチル(オールドリッチ・ケミカル社)を用いて一晩にわたって四級化し、ホウ酸緩衝化生理食塩水の中に保管し、次いでオートクレーブ(121℃)することによって本発明による試験用レンズを製造した(試験用レンズ)。
【0112】
試験:
【0113】
実施例2の対照レンズと試験用レンズの特徴を接触角の測定とXPSによって明らかにした。
【0114】
I.接触角の測定
【0115】
実施例2で製造した対照レンズと試験用レンズの接触角の測定を以下のようにして実施した。
【0116】
HPLCグレードの水を入れたポリスチレン製ペトリ皿の中にレンズを15分間浸した。清潔な外科用メスを用いてレンズを四分割した。その四分割したレンズを清潔なガラス・スライドに取り付け、窒素ドライ-ボックスの中で一晩乾燥させた。四分割した脱水レンズのそれぞれについて2点で接触角を測定した。
【0117】
測定に用いた装置は、ASTプロダクツ・ビデオ接触角システム(VCA)2500XEであった。この装置には、水滴の鮮明な画像を生成させる低電力の顕微鏡が用いられていて、その画像がコンピュータのスクリーンに直ちに表示される。HPLC水をVCAシステムのミクロシリンジの中に吸引し、0.6μlの液滴をそのミクロシリンジからサンプルに垂らした。液滴の周囲に沿って3〜5個のマーカーを配置することによって接触角を計算した後、その接触角を記録する。それぞれの測定について右の角度と左の角度の両方を調べ、平均を計算して記録する。この試験の結果を以下の表2に示す。
【0118】
【表2】

【0119】
接触角の鋭い低下は、カチオン性NVPコポリマーで処理した後にレンズの表面が非常に濡れやすくなったことを示していた。
【0120】
II.XPS分析
【0121】
X線光電子分光器(XPS)によって実施例2の対照レンズと試験用レンズの原子濃度を分析した。この研究で用いたXPSは、フィジカル・エレクトロニクス[PHI]モデル5600であった。この装置では、300ワット、15kV、27ミリアンペアで動作するアルミニウム製アノードを使用した。ドーナツ形レンズ・システムを利用して励起源を単色化した。ポリマーを分析するのに7mmのフィラメントを用いた。なぜならサンプルのダメージが少なく、光イオン化の中性化が容易だからである。この装置の基本圧力は2.0×10-10トルであるのに対し、動作中の圧力は1.0×10-9トルであった。この装置では、半球形のエネルギー分析器を用いた。炭素に関してサンプリング角が45°でのこの装置のサンプリング深度の実際的な指標は約74オングストロームであった。炭素のCHxのピークの結合エネルギーが285電子ボルト(eV)となるようにすべての元素の電荷を補正した。
【0122】
低解像度探査スペクトル(0〜1100eV)を利用して各サンプルを分析し、サンプルの表面に存在する元素を同定した。低解像度走査で検出された元素について高解像度スペクトルを取得した。その高解像度スペクトルから元素組成を明らかにした。光電子のピークよりも下の面積を増感させた後、その面積から装置の伝達関数と興味の対象である軌道の原子断面積を用いて原子組成を計算した。XPSでは水素またはヘリウムの存在は検出されないため、これらの元素は原子の割合の計算に含まれない。当業者であればわかるように、原子の割合は、装置の設計すなわち伝達関数が異なると変化する可能性があることにも注意されたい。そこで正確に再現されるようにするため、本願における原子の割合の数値は、特定の設計の装置に関するものである。
【0123】
未処理のレンズの表面でテイクオフ角度45°にて取得した低解像度XPS探査スペクトルは、炭素、窒素、酸素、ホウ素、ナトリウムのピークを含んでいた。レンズ材料の分析は、変更されていないマトリックス(対照)を調べることから始まる。以下の表3に、サンプルのXPSデータが含まれている。このデータは、表面から74オングストロームまでの(炭素1s電子に関する)原子組成を反映している。実施例2のレンズに関するXPSの結果を以下の表3に示す。
【0124】
【表3】

【0125】
データからわかるように、カチオン性NVPコポリマーで覆われたレンズの表面は、ケイ素原子の含有量が鋭く低下し、窒素含有量が増加した。これは、レンズの表面が処理後に大きな極性を持つようになったため、より湿りやすく、脂質様堆積物がより少なく、装着してより快適になったことを示している。
【実施例3】
【0126】
3-メタクリロイルアミノプロピル-ジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロクロリド(MAPSA)とメタクリル酸グリセリル(GM)のコポリマーの調製
【0127】
MAPSA(0.925g、3.163ミリモル、オールドリッチ・ケミカル社から入手)を50mlの脱イオン水に溶かした。撹拌棒を備えていて凝縮器が接続された250mlの三つ首フラスコに脱イオン水(150ml)とGM(4.963g、31.02ミリモル)を注射器を通じて添加するとともに、MAPSA溶液とアゾビスイソブチルニトリル(AIBN、0.050g)を添加した。凝縮器は油バブラーに接続した。この反応混合物を撹拌しながら窒素の泡を20分間にわたって強く吹き込んだ後、窒素流をより少なくした。この反応混合物を油浴で70℃に加熱し、窒素を一定の割合でパージしながらこの温度を48時間にわたって維持した。生成物を脱イオン水の中に保管した。
【実施例4】
【0128】
コンタクト・レンズの表面処理
【0129】
実施例3のコポリマーを1%部含むホウ酸緩衝化生理食塩溶液を調製する。このホウ酸緩衝化生理食塩溶液をブリスター・パックに満たし、負に帯電したシリコーン・ヒドロゲル製コンタクト・レンズ(ボシュ&ロム社から商品名Pure Vision(登録商標)で販売されているもの)を溶液の中に入れる。次にこのブリスター・パックを密封し、1サイクルの間(例えば121℃で)オートクレーブする。
【実施例5】
【0130】
2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリンとN-ビニル-2-ピロリドン(NVP)のコポリマーの調製
【0131】
この実施例のコポリマーは、以下の諸成分を用いて実施例3の手続きに従って調製することができる。用いるのは、脱イオン水(100ml)、NVP(11.1g;100ミリモル)、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン(4.4g)、アゾビス-イソブチルニトリル(AIBN)(0.092g;0.56ミリモル)である。
【実施例6】
【0132】
2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリンとGMのコポリマーの調製
【0133】
この実施例のコポリマーは、以下の諸成分を用いて実施例3の手続きに従って調製することができる。用いるのは、脱イオン水(100ml)、GM(16g;100ミリモル)、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン(4.4g)、AIBN(0.092g;0.56ミリモル)である。
【実施例7】
【0134】
(3-メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリドとGMのコポリマーの調製
【0135】
この実施例のコポリマーは、以下の諸成分を用いて実施例3の手続きに従って調製することができる。用いるのは、脱イオン水(100ml)、GM(16g;100ミリモル)、(3-メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド(4.4g、2ミリモル)、AIBN(0.092g;0.56ミリモル)である。
【実施例8】
【0136】
脱水試験
【0137】
実施例2で製造した対照レンズと試験用レンズで脱水試験を行なった。脱水試験の手続きを以下に記す。
【0138】
対照レンズと試験用レンズから生理食塩水を除去し、脱イオン水の中に入れた後、脱水状態を評価する。脱水試験は、TA装置Q50という熱重量分析装置(“TGA”)を用いて実施した。直径約7mmの円板をレンズの中心から繰り抜いた。この円板をKimwipes(登録商標)でこすって表面のあらゆる水分を除去した後、TGA天秤の上に載せた。この天秤は、純粋な乾燥窒素(流速60ml/分)下でチェンバーの中に閉じ込められている。サンプルを50℃/分の割合で37℃まで加熱し、等温状態に維持した。時間経過による質量の減少をモニタし、質量の減少速度(単位は%/分)が0.05未満になったときに試験を終わらせた。脱水速度は、60%と20%の間で1分ごとに質量が減少する速度として計算し、mg/分として記録した。実施例2の処理済レンズ(試験用レンズ)は、未処理のレンズ(対照レンズ)と比べて水の減少速度が小さいことが見いだされた。これは、処理済レンズがより多くの水を保持できることを示している。このように、処理済レンズは湿潤性がより優れており、しかもより潤滑性があった。その結果、ドライ・アイに関係する問題がより少なくなるであろう。
【0139】
この明細書に開示した実施態様に対してさまざまな変更が可能であることが理解されよう。したがって上記の説明は、本発明を制限すると見なしてはならず、好ましい実施態様の単なる例示と見なさねばならない。例えば上に説明し、本発明を実施するための最良の態様として実現した機能は、単なる例示を目的としている。当業者であれば、本発明の範囲と精神から逸脱することなく、他の構成や方法を実現できよう。さらに、当業者であれば、この明細書に記載した特徴と利点の範囲と精神の中で他の変更を考えることができよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用装置を保管するための包装システムであって、(a)常に正電荷である中心を有するモノマーと(b)非イオン性エチレン型不飽和モノマーとを含むモノマー混合物から得られた重合生成物を含むパッケージング水溶液に浸された未使用の1つ以上の眼科用装置が収容される密封された容器を備えていて、上記水溶液は、浸透圧が少なくとも約200mOsm/kgであり、pHが約4〜約9であり、加熱殺菌されている包装システム。
【請求項2】
常に正電荷である中心を有する上記モノマーがカチオン性モノマーである、請求項1に記載の包装システム。
【請求項3】
常に正電荷である中心を有する上記モノマーが両性イオン性モノマーである、請求項1に記載の包装システム。
【請求項4】
常に正電荷である中心を有する上記モノマーが、一般式(I):
Y-B-X (I)
を持つ(ただし、Bは、結合、置換された直鎖アルキレン、置換された分岐鎖アルキレン、置換されていない直鎖アルキレン、置換されていない分岐鎖アルキレン、置換された直鎖オキサアルキレン、置換された分岐鎖オキサアルキレン、置換されていない直鎖オキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オキサアルキレン、置換された直鎖オリゴオキサアルキレン、置換された分岐鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない直鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オリゴオキサアルキレンのいずれかであり;Xは、常に正電荷である中心を有する基であり;Yは、重合可能なエチレン型不飽和基である)、請求項1に記載の包装システム。
【請求項5】
常に正電荷である中心を有する上記モノマーが、一般式(III)または(IV):
【化1】

を持つ(ただし、R9は、水素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基、フルオロアルキル基のいずれかであり;Aは、-O-または-NR10-であり(ただしR10は、水素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基のいずれかであるか、R10は-B-Xであり(ただしBは、結合、置換された直鎖アルキレン、置換された分岐鎖アルキレン、置換されていない直鎖アルキレン、置換されていない分岐鎖アルキレン、置換された直鎖オキサアルキレン、置換された分岐鎖オキサアルキレン、置換されていない直鎖オキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オキサアルキレン、置換された直鎖オリゴオキサアルキレン、置換された分岐鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない直鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オリゴオキサアルキレンのいずれかであり、Xは、常に正電荷である中心を有する基である)、Kは、一般式-(CH2)iCO(O)-、-(CH2)iC(O)O-、-(CH2)iCOC(O)O-、-(CH2)iCNR11-、-(CH2)iNR11C(O)-、-(CH2)iC(O)NR11-、-(CH2)iNR11C(O)O-、-(CH2)iOC(O)NR11-、-(CH2)iNR11C(O)NR11-、-(CH2)iO-、-(CH2)iSO3-いずれかの基であるか、場合によってはBと組み合わさって原子価結合となることができ、iは1〜12であり、R11は同じでも異なっていてもよく、水素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基のいずれかである)、請求項1に記載の包装システム。
【請求項6】
上記カチオン性モノマーが第四級アンモニウム部分を含む、請求項2に記載の包装システム。
【請求項7】
上記両性イオン性モノマーが、第四級アンモニウム部分とリン酸塩部分を含む、請求項3に記載の包装システム。
【請求項8】
常に正電荷である中心を有する上記モノマーの選択が、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン、1(4(4'-ビニルベンジルオキシブタン)-2'(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート、[3-(メタクリルロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウム水酸化物塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、硫酸ジエチル、ならびにこれらの混合物からなるグループの中からなされる、請求項1に記載の包装システム。
【請求項9】
上記非イオン性エチレン型不飽和モノマーの選択が、(アルク)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアクリルアミド、N-ビニルラクタム、(アルク)アクリル酸ポリヒドロキシル、ポリヒドロキシルアクリルアミド、ならびにこれらの混合物からなるグループの中からなされる、請求項1に記載の包装システム。
【請求項10】
上記重合生成物が上記水溶液中に約0.005%w/w〜約1%w/wの量で存在する、請求項1に記載の包装システム。
【請求項11】
上記水溶液が緩衝剤をさらに含む、請求項1に記載の包装システム。
【請求項12】
上記緩衝剤がホウ酸塩化合物またはリン酸塩化合物を含む、請求項11に記載の包装システム。
【請求項13】
パッケージが密封された後に加熱殺菌されている、請求項1に記載の包装システム。
【請求項14】
上記水溶液が、殺菌に有効な量の殺菌剤を含まない、請求項1に記載の包装システム。
【請求項15】
上記水溶液が殺菌化合物を含まない、請求項1に記載の包装システム。
【請求項16】
上記眼科用装置がコンタクト・レンズである、請求項1に記載の包装システム。
【請求項17】
上記眼科用装置がアニオン性コンタクト・レンズである、請求項1に記載の包装システム。
【請求項18】
生体医学装置を処理する方法であって、
(a)常に正電荷である中心を有するモノマーと(b)非イオン性エチレン型不飽和モノマーとを含むモノマー混合物から得られた重合生成物を含む溶液に生体医学装置を接触させる操作を含む方法。
【請求項19】
上記生体医学装置を上記溶液に浸し;
その生体医学装置をその溶液から取り出し;
その生体医学装置をパッケージング溶液の中に包装してその生体医学装置が微生物によって汚染されるのを防止し;
その包装された溶液と生体医学装置を殺菌する操作を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記生体医学装置を上記溶液に浸し;
上記生体医学装置を含む溶液をパッケージング溶液の中に包装してその生体医学装置が微生物によって汚染されるのを防止し;
その包装された溶液と生体医学装置を殺菌する操作を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
上記生体医学装置を上記溶液に浸し;
その溶液とその生体医学装置を包装してその生体医学装置が微生物によって汚染されるのを防止し;
その包装された溶液と生体医学装置を殺菌する操作を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
上記生体医学装置を上記溶液に浸し;
その生体医学装置をその溶液から取り出し;
その生体医学装置を目の中に直接配置する操作を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
上記生体医学装置が眼科用レンズである、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
上記生体医学装置がコンタクト・レンズである、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
常に正電荷である中心を有する上記モノマーが、一般式(I):
Y-B-X (I)
を持つ(ただし、Bは、結合、置換された直鎖アルキレン、置換された分岐鎖アルキレン、置換されていない直鎖アルキレン、置換されていない分岐鎖アルキレン、置換された直鎖オキサアルキレン、置換された分岐鎖オキサアルキレン、置換されていない直鎖オキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オキサアルキレン、置換された直鎖オリゴオキサアルキレン、置換された分岐鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない直鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オリゴオキサアルキレンのいずれかであり;Xは、常に正電荷である中心を有する基であり;Yは、重合可能なエチレン型不飽和基である)、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
上記モノマー混合物中の常に正電荷である中心を有するモノマーが、一般式(III)または(IV):
【化2】

を持つ(ただし、R9は、水素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基、フルオロアルキル基のいずれかであり;Aは、-O-または-NR10-であり(ただしR10は、水素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基のいずれかであるか、R10は-B-Xであり(ただしBは、結合、置換された直鎖アルキレン、置換された分岐鎖アルキレン、置換されていない直鎖アルキレン、置換されていない分岐鎖アルキレン、置換された直鎖オキサアルキレン、置換された分岐鎖オキサアルキレン、置換されていない直鎖オキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オキサアルキレン、置換された直鎖オリゴオキサアルキレン、置換された分岐鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない直鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オリゴオキサアルキレンのいずれかであり、Xは、常に正電荷である中心を有する基である)、Kは、一般式-(CH2)iCO(O)-、-(CH2)iC(O)O-、-(CH2)iCOC(O)O-、-(CH2)iCNR11-、-(CH2)iNR11C(O)-、-(CH2)iC(O)NR11-、-(CH2)iNR11C(O)O-、-(CH2)iOC(O)NR11-、-(CH2)iNR11C(O)NR11-、-(CH2)iO-、-(CH2)iSO3-いずれかの基であるか、場合によってはBと組み合わさって原子価結合となることができ、iは1〜12であり、R11は同じでも異なっていてもよく、水素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基のいずれかである)、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
上記モノマー混合物中の常に正電荷である中心を有する上記モノマーが、第四級アンモニウム部分を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
上記モノマー混合物中の常に正電荷である中心を有する上記モノマーが、第四級アンモニウム部分とリン酸塩部分を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
上記モノマー混合物中の常に正電荷である中心を有するモノマーの選択が、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン、1(4(4'-ビニルベンジルオキシブタン)-2'(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート、[3-(メタクリルロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウム水酸化物塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、硫酸ジエチル、ならびにこれらの混合物からなるグループの中からなされる、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
上記モノマー混合物中の非イオン性エチレン型不飽和モノマーの選択が、(アルク)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアクリルアミド、N-ビニルラクタム、(アルク)アクリル酸ポリヒドロキシル、ポリヒドロキシルアクリルアミド、ならびにこれらの混合物からなるグループの中からなされる、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
(a)(i)常に正電荷である中心を有するモノマーと(ii)非イオン性エチレン型不飽和モノマーとを含むモノマー混合物から得られた重合生成物と、(b)その重合生成物にとって眼科学的に許容可能な基剤とを含む眼科学的に許容可能な多目的溶液。
【請求項32】
浸透圧が少なくとも約200mOsm/kgであり、pHが約4〜約9である、請求項31に記載の眼科学的に許容可能な多目的溶液。
【請求項33】
常に正電荷である中心を有する上記モノマーが、一般式:
Y-B-X (I)
を持つ(ただし、Bは、結合、置換された直鎖アルキレン、置換された分岐鎖アルキレン、置換されていない直鎖アルキレン、置換されていない分岐鎖アルキレン、置換された直鎖オキサアルキレン、置換された分岐鎖オキサアルキレン、置換されていない直鎖オキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オキサアルキレン、置換された直鎖オリゴオキサアルキレン、置換された分岐鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない直鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オリゴオキサアルキレンのいずれかであり;Xは、常に正電荷である中心を有する基であり;Yは、重合可能なエチレン型不飽和基である)、請求項31に記載の眼科学的に許容可能な多目的溶液。
【請求項34】
常に正電荷である中心を有する上記モノマーが、一般式(III)または(IV):
【化3】

を持つ(ただし、R9は、水素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基、フルオロアルキル基のいずれかであり;Aは、-O-または-NR10-であり(ただしR10は、水素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基のいずれかであるか、R10は-B-Xであり(ただしBは、結合、置換された直鎖アルキレン、置換された分岐鎖アルキレン、置換されていない直鎖アルキレン、置換されていない分岐鎖アルキレン、置換された直鎖オキサアルキレン、置換された分岐鎖オキサアルキレン、置換されていない直鎖オキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オキサアルキレン、置換された直鎖オリゴオキサアルキレン、置換された分岐鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない直鎖オリゴオキサアルキレン、置換されていない分岐鎖オリゴオキサアルキレンのいずれかであり、Xは、常に正電荷である中心を有する基である)、Kは、一般式-(CH2)iCO(O)-、-(CH2)iC(O)O-、-(CH2)iCOC(O)O-、-(CH2)iCNR11-、-(CH2)iNR11C(O)-、-(CH2)iC(O)NR11-、-(CH2)iNR11C(O)O-、-(CH2)iOC(O)NR11-、-(CH2)iNR11C(O)NR11-、-(CH2)iO-、-(CH2)iSO3-いずれかの基であるか、場合によってはBと組み合わさって原子価結合となることができ、iは1〜12であり、R11は同じでも異なっていてもよく、水素、置換されたC1〜C4アルキル基、置換されていないC1〜C4アルキル基のいずれかである)、請求項31に記載の眼科学的に許容可能な多目的溶液。
【請求項35】
常に正電荷である中心を有する上記モノマーが第四級アンモニウム部分を含む、請求項31に記載の眼科学的に許容可能な多目的溶液。
【請求項36】
常に正電荷である中心を有する上記モノマーが、第四級アンモニウム部分とリン酸塩部分を含む、請求項31に記載の眼科学的に許容可能な多目的溶液。
【請求項37】
上記モノマー混合物中の常に正電荷である中心を有するモノマーの選択が、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン、1(4(4'-ビニルベンジルオキシブタン)-2'(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート、[3-(メタクリルロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウム水酸化物塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、硫酸ジエチル、ならびにこれらの混合物からなるグループの中からなされる、請求項31に記載の眼科学的に許容可能な多目的溶液。
【請求項38】
上記非イオン性エチレン型不飽和モノマーの選択が、(アルク)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアクリルアミド、N-ビニルラクタム、(アルク)アクリル酸ポリヒドロキシル、ポリヒドロキシルアクリルアミド、ならびにこれらの混合物からなるグループの中からなされる、請求項31に記載の眼科学的に許容可能な多目的溶液。
【請求項39】
上記重合生成物が上記水溶液中に約0.005%w/w〜約1%w/wの量で存在する、請求項31に記載の眼科学的に許容可能な多目的溶液。
【請求項40】
1種類以上の殺菌剤をさらに含む、請求項31に記載の眼科学的に許容可能な多目的溶液。
【請求項41】
眼科用装置を保管するための包装システムであって、陽電荷を持つ1つ以上の第1のモノマー区画と、非イオン性の1つ以上の第2のモノマー区画とを有するコポリマーを含んでいて、浸透圧が少なくとも約200mOsm/kgであり、pHが約4〜約9であり、加熱殺菌されているパッケージング水溶液に浸された状態で1つ以上の未使用の眼科用装置を収容する密封された容器を備える包装システム。
【請求項42】
(a)陽電荷を持つ1つ以上の第1のモノマー区画と、非イオン性の1つ以上の第2のモノマー区画とを有するコポリマーと;(b)そのコポリマーにとって眼科学的に許容可能な基剤とを含む眼科学的に許容可能な多目的溶液。

【公表番号】特表2010−531166(P2010−531166A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513330(P2010−513330)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/066470
【国際公開番号】WO2009/002703
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】