説明

眼鏡枠形状測定装置

【課題】高カーブフレームの精度の良い測定を可能にし、型板測定においても型板トレースの精度の向上を図ることが可能な眼鏡枠形状測定装置を提供する。
【解決手段】測定子281が取り付けられた測定子軸282を傾斜可能に保持する保持ユニット250と、測定子軸の傾斜角度を検知する手段と、XY移動手段と、Z方向の軸を中心に回転する回転手段265と、を有する測定ユニットを備え、型板測定モード時に、測定子軸の背面を型板のエッジに接触させるように回転手段及びXY移動手段を制御する制御手段と、保持ユニットのXY方向の位置情報、回転手段の回転情報及び傾斜角の検知情報とに基づいて型板の動径情報を求める演算手段と、を備え、制御手段は、型板の測定途中では、測定済み情報に基づき、測定子軸の背面が型板のエッジに接触したときに測定子軸の傾斜が垂直を維持するように、回転手段及びXY移動手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡フレームのリムの形状を測定する眼鏡枠形状測定装置であって、型板(デモレンズの場合も含む)の形状の測定にも好適な眼鏡枠形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡フレームを所期する状態に保持する眼鏡フレーム保持機構と、眼鏡フレームのリム(レンズ枠)の溝に挿入した測定子をリムの溝に沿って移動させ、測定子の移動を検知することによりリムの三次元形状を得る測定機構と、を備える眼鏡枠形状測定装置が知られている。近年、リムの反りの大きな高カーブフレームが増加してきた。高カーブフレームのリムを精度良く測定するために、リムの反り(垂直方向)の高さに応じて測定子の先端(測定子軸)を傾斜自在にして、リムをトレースする眼鏡枠形状測定装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−174252号公報
【特許文献2】特開2011−122898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の眼鏡枠形状測定装置においては、型板(デモレンズ)をも測定可能にされている。型板の測定機構において、リム測定用の測定子軸を型板のエッジに接触させる測定子軸として兼用すると有利である。しかし、測定子軸が傾斜自在にされた特許文献2においては、その測定子軸の傾斜が発生しない側面を型板に接触させる構成であり、型板トレースの追従性の精度をより向上するためには、装置の機構が複雑になり、大型化せざるを得ず、また、測定圧の制御も複雑になる。型板トレース用の測定軸を専用に設ける構成は、装置が複雑になり、コスト高となる。
【0005】
本件発明は、上記従来装置に鑑み、高カーブフレームの精度の良い測定を可能にしつつ、型板測定においても、構成の複雑化及び高コスト化にならずに、型板トレースの精度の向上を図ることができる眼鏡枠形状測定装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 眼鏡フレームのリムの溝に挿入された測定子の移動位置を検知してリムの動径方向(XY方向)及び動径方向に対する垂直方向(Z方向)の位置を検知してリムの三次元形状を得る測定ユニットであって、前記測定子が上部に取り付けられた測定子軸を持ち、該測定子軸を前記測定子の先端方向に傾斜可能に保持する測定子保持ユニットと、前記測定子軸の傾斜角度を検知する傾斜角検知手段と、前記測定子保持ユニットをXY方向に2次元的に移動するXY移動手段と、Z方向の軸を中心に前記測定子保持ユニットを回転する回転手段と、を有する測定ユニットを備える眼鏡枠形状測定装置において、
型板測定モード時に、前記測定子とは反対側に位置する前記測定子軸の背面を前記型板のエッジに接触させるように前記回転手段及びXY移動手段を制御する制御手段と、
前記測定子保持ユニットのXY方向の位置情報、前記回転手段の回転情報及び傾斜角検知手段の検知情報とに基づいて型板の動径情報を求める演算手段と、を備え、
前記制御手段は、型板の測定途中では、測定済み情報に基づき、前記測定子軸の背面が型板のエッジに接触したときに前記測定子軸の傾斜が垂直を維持するように、前記回転手段及びXY移動手段を制御することを特徴とする。
(2) (1)の眼鏡枠形状測定装置において、前記演算手段は、前記傾斜角検知手段によって検知される前記測定子軸の垂直方向に対する傾斜角に基づき、前記測定子保持ユニットのXY方向の位置情報を補正して型板の動径情報を求めることを特徴とする。
(3) (1)又は(2)の眼鏡枠形状測定装置は、リムの測定時に前記測定子軸が前記測定子の先端方向に傾斜するように測定圧を付与する第1測定圧付与機構と、型板の測定時に前記測定子軸の背面が型板側に傾斜するように測定圧を付与する第2測定圧付与機構と、第1測定圧付与機構と第2測定圧付与機構とを切換える切換え手段と、を備えることを特徴とする。
(4) (1)〜(3)の何れかの眼鏡枠形状測定装置において、前記制御手段は、前記傾斜角検知手段によって検知される前記測定子軸の垂直方向に対する傾斜角が所定の範囲を超えている場合には、型板の測定動作を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本件発明によれば、高カーブフレームの精度の良い測定を可能にしつつ、型板測定においても、構成の複雑化及び高コスト化にならずに、型板トレースの精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、眼鏡枠形状測定装置の外観略図である。眼鏡枠形状測定装置1は、眼鏡フレームFを所期する状態に保持するフレーム保持ユニット100と、フレーム保持ユニット100に保持された眼鏡フレームのリムの溝に測定子を挿入し、測定子の移動を検出することによりリム(玉型)の三次元形状を測定する測定ユニット200と、を備える。測定装置1のカバーは開口窓2を有し、開口窓2の下にフレーム保持ユニット100が配置されている。また、型板TP(又は眼鏡フレームに取り付けられていたデモレンズの場合も含む)を測定する際に使用される型板ホルダー310を着脱自在に取り付けるための取り付け部300が、装置1の左右中央の後方に配置されている。測定ユニット200は、型板ホルダー310に取り付けられた測定対象物TPの型板測定ユニットとして兼用される。
【0009】
装置1の筐体の前側には測定開始用のスイッチ等を持つスイッチ部4が配置されている。装置1の筐体の後側には、タッチパネル式のディスプレイを持つパネル部3が配置されている。レンズの周縁加工に際し、パネル部3により玉型データに対するレンズのレイアウトデータ、レンズの加工条件等が入力される。装置1で得られたリムの三次元形状データ及びパネル部3で入力されたデータは、眼鏡レンズ周縁加工装置に送信される。なお、装置1は、特開2000−314617号公報等と同じく、眼鏡レンズ周縁加工装置に組み込まれる構成としてもよい。
【0010】
図2は、眼鏡フレームFが保持された状態のフレーム保持ユニット100の上面図である。図2上の左右方向をX方向とし、縦方向をY方向とする。眼鏡フレームFのリムの動径方向はXY方向とされる。XY方向に直交する垂直方向をZ方向とする。以下では、装置1の上下方向とは、垂直方向(Z方向)とされる。図3は、型板ホルダー310が取付け部300に取り付けられた状態のフレーム保持ユニット100の斜視図である。
【0011】
フレーム保持ユニット100の下側には、測定ユニット200が備えられている。保持部ベース101上には眼鏡フレームFを略水平に保持するための第1スライダー102及び第2スライダー103が載置されている。第1スライダー102は、フレームFの左リムRIL及び右リムRIRの縦方向の上側に当接する第1面1021を持つ。第2スライダー103は、左リムRIL及び右リムRIRの縦方向の下側に当接する第2面1031を持つ。第1面1021と第2面1031は、互いに対向している。
【0012】
第1スライダー102の第1面1021及び第2スライダー103の第2面1031は、両者の間隔が開閉される方向(両者の間隔が広げられる方向と両者の間隔が狭められる方向)に、開閉移動機構110によって移動可能に保持されている。開閉移動機構110は、保持部ベース101の左右に配置されてY方向に延びる2つのガイドレール1101と、図2上の左側でY方向に配置された2つのプーリー1105及びプーリー1107と、2つのプーリー1105、1107とに掛け渡されたワイヤー1109と、第1スライダー102及び第2スライダー103の間隔を閉じる方向に常時付勢するバネ1110(図3参照)と、を備える。図2上で、ワイヤーの左側に第1スライダ102の右端部102Eが取り付けられ、ワイヤーの右側に第2スライダ103の右端部103Eが取り付けられている。これらの構成を持つ開閉移動機構110により、第1スライダー102及び第2スライダー103は、両者の間の中心線FXを中心に、両者の間隔が広がる方向と、両者の間隔が狭められる方向と、に移動可能に保持されている。第1スライダー102及び第2スライダー103の一方が移動されると、他方も連動して移動される。
【0013】
次に、測定ユニット200の構成を説明する。図4は、測定ユニット200が持つXYZ方向の移動機構の概略構成図である。測定ユニット200は、水平方向(XY方向)に伸展した方形状の枠を持つベース部211と、リムRIL,RIRの溝に挿入される測定子281が上端に取り付けられた測定子軸282を保持する測定子保持ユニット250と、測定子保持ユニット250をXYZ方向に移動させる移動ユニット210と、を備える。ベース部211は、フレーム保持ユニット100の下に配置されている。移動ユニット210は、測定子保持ユニット250をY方向に移動するY移動ユニット230と、Y移動ユニット230をX方向に移動するX移動ユニット240と、測定子保持ユニット250をZ方向に移動するZ移動ユニット220と、を有する。Y移動ユニット230は、Y方向に延びるガイドレールを備え、モータ235の駆動によりガイドレールに沿って測定子保持ユニット250をY方向に移動させる。X移動ユニット240は、X方向に延びるガイドレール241を備え、モータ245の駆動によってY移動ユニット230をX方向に移動させる。Z移動ユニット220は、Y移動ユニット230に取り付けられ、モータ225の駆動により、Z方向の延びるガイドレール221に沿って測定子保持ユニット250をZ方向に移動させる。
【0014】
測定子保持ユニット250の構成を、図5〜図7に基づいて説明する。測定子保持ユニット250は、測定子281が状態に取り付けられた垂直方向(Z方向)に移動可能に保持すると共に、測定子軸282の下方に設定された支点を中心にして、測定子軸282を測定子281の先端方向(以下、方向H)に傾斜可能に保持する垂直傾斜保持ユニット(以下、VHユニット)280と、VHユニット280をZ方向に延びる軸LOを中心に回転させる回転ユニット260と、を備える。測定子281は針状の先端形状を持つ。これにより、測定子281は、傾斜された場合にもリムの溝に挿入されやすくなる。
【0015】
図5は測定子保持ユニット250の全体斜視図である。回転ユニット260は、VHユニット280を保持する回転ベース261と、回転ベース261を回転するモータ265と、を備える。VHユニット280を保持する回転ベース261は、軸LOを中心に回転可能にZ移動支基222に保持されている。Z移動支基222は、図4に示されるガイドレール221にガイドされ、モータ225の駆動によりZ方向に移動される。回転ベース261は、モータ265の駆動により、ギヤ等の回転伝達機構を介して、軸LOを中心に回転される。回転ベース261の回転角は、モータ265の回転軸に取り付けられたエンコーダ266によって検知される。
【0016】
図6は、図7はVHユニット280の構成の説明図である。回転ベース261と一体的に形成されたフランジ262の下面に、Z方向に延びるガイド軸263が固定されている。VHユニット280のZ移動支基270は、ガイド軸263に通された筒状部材264に固定されている。VHユニット280は、Z移動支基270及び筒状部材264を介してガイド軸263に沿ってZ方向に移動可能に保持されている。また、VHユニット280は、その荷重を軽減又は荷重の平衡を取るために、フランジ262と筒状部材264との間にバネ(付勢部材)267が取り付けられている。VHユニット280のZ方向の移動位置(回転ベース261に対するZ方向の移動位置)は、位置検知器であるエンコーダ268よって検知される(図7(a)参照)。
【0017】
図7(a)は、回転ベース261及びフランジ262等を取り除いた状態のVHユニット280の説明図であり、図6に対して、紙面の裏側から見たVHユニット280の説明図である。図7(b)は、図7(a)に対して測定子軸282等を取り除いた状態のVHユニット280の説明図である。測定子軸282は、Z移動支基270の上部に保持された軸受け271を介して軸S1(支点)を中心にH方向に傾斜可能に保持されている。測定子軸282の下方に、取り付け部材284を介して回転角検出板283が取り付けられている。軸S1を中心にした測定子軸282のH方向の傾斜角(回転角)は、回転角検出板283を介して回転角検知器であるエンコーダ285によって検出される。
【0018】
また、測定子281の先端方向への傾斜を制限するために、図7(a)上で、取り付け部材284の左端に当接される制限部材291が、回転板292に取り付けられている。また、図6に示されるように、測定子281の先端方向に測定圧を付与するための第1測定圧付与機構としてのバネ(付勢部材)290が、取り付け板284と筒状部材264との間に配置されている。バネ290によって、測定子軸282が測定子281の先端方向Hfに傾斜するように常に付勢力(測定圧)が掛けられている。リムの測定時の初期状態では、取り付け部材284が制限部材291に当接することにより、測定子軸282の傾斜が図7(a)の状態で制限される。この初期状態は、垂直軸のZ軸に対して、測定子281の先端方向とは反対の方向Hfに所定角度(2度)だけ測定子軸282が傾斜している状態である。回転板292は、Z移動支基270の下方で支点292を中心に、図7(b)上で反時計回り(矢印C1方向に)回転可能に軸支されている。回転板292の時計回りの回転は、図示を略す制限部材により制限されている。そして、Z移動支基270と回転板292との間に配置された第2測定圧付与機構としてのバネ(付勢部材)293によって、回転板292は図7(b)上で常時時計回りの方向に回転するように付勢力(型板測定時の測定圧)が掛けられている。バネ293の付勢力は、バネ290の付勢力より大きくされている。これにより、リム及び型板TPの測定時の初期状態では、測定子軸282は図7(a)の状態を維持している。しかし、型板TPの測定時に、測定子軸282の背面282a(測定子281の先端方向に対する反対のHr方向に位置する面)が型板TPのエッジが接触し、さらに制御部50で制御される移動ユニット210によって、VHユニット280がHr方向に移動されることにより、測定子軸282は軸S1を支点としてHf方向に傾斜される。測定子軸282のHf方向の傾斜によって、測定子軸282の下方に位置する取り付け部材284は、制限部材291を押し込み、回転板292が矢印C1方向に回転される。このとき、測定子軸282の背面282aには、バネ293によってHr方向への測定圧が掛けられる。このような構成により、型板測定時には第1測定圧付与機構から第2測定圧付与機構に切換えられる。
【0019】
なお、測定子軸282(背面282a)は、型板TPのエッジに接触させる測定子軸として兼用される。このため、測定子軸282は、垂直方向(Z方向)に対して、Hf方向にさらに2〜5度まで傾斜可能に構成されている。
【0020】
図8は、装置1の制御ブロック図である。制御部50は、モータ225,235,245,265、エンコーダ268,288、パネル部3、スイッチ部4に接続されている。
【0021】
次に、上記の構成を持つ装置1の動作を説明する。始めに、フレームFのリムの測定動作について説明する。スイッチ部4に配置された測定モード選択スイッチ(測定モード選択手段)により、リム測定モードと型板測定モードとを選択できる。また、図3のように、第1スライダー102と第2スライダー103とが開いた状態で、型板ホルダー310が図3のように取り付け部300に取り付けられると、第1スライダー102が型板ホルダー310に接触して、第1スライダー102の手前側(操作者側)への移動が制限される。この状態が図示を略する検知器により検知されることにより、測定モードが自動的に型板測定モードに選択され、第1スライダー102と第2スライダー103とが、図3の状態よりも閉じられているときは、リム測定モードに自動的に選択される構成としても良い。
【0022】
リム測定モードにおいて、リムRIRの動径方向の測定時、制御部50は、測定済みのレンズ枠の動径情報に基づいて測定子保持ユニット250を移動させるXY位置を決定し、決定したXY位置に従って移動ユニット210の各モータの駆動を制御する。好ましくは、制御部50は、測定済みのレンズ枠の動径情報に基づいてレンズ枠の未測定部分の動径変化を予測し、未測定部分の動径変化に沿って測定子281の先端が移動するように測定子保持ユニット250を移動させるXY位置を決定する。
【0023】
制御部50は、スイッチ部4によって入力される測定開始信号に基づき、初期位置に位置する測定子保持ユニット250をXYZ方向に移動し、クランプピン230a,230bによって保持されたリムRIRの測定開始位置(第2スライダー103のクランプピン230a,230bによってクランクされた位置)の溝に測定子281の先端を挿入する。測定子281の先端がリムRIRの溝の挿入されたことは、測定子軸282がHr方向に5度傾斜したことを、エンコーダ285が検知することによって検出される。
【0024】
制御部50は測定開始時点では、リムRIRの動径がX方向に変化しているものとして、測定子保持ユニット250をX方向に移動する。測定子281の先端がリムの動径変化に追従して移動されるように、測定子軸282が傾斜される。測定子軸282の傾斜角がエンコーダ285によって検出されることにより、測定子保持ユニット250の基準位置に対する測定子281の先端のXY位置情報が得られる。このXY位置情報と、測定子保持ユニット250をXY移動させるモータ235,245の駆動情報と、によってリムの動径情報が得られる。
【0025】
制御部50は、測定開始から所定の測定ポイント数(例えば、全体を1000ポイント測定するとして、5ポイント数)の動径情報が得られたら、測定済みの動径情報に基づいて次の測定ポイント(未測定ポイント)の変化を予測し、その結果に基づいてリムRIRに測定子281が沿うように、測定子保持ユニット250をXY方向に移動する。また、制御部50は、モータ265の駆動を制御し、回転ベース261を回転することにより、軸LOを中心にVHユニット280を回転する。このときの回転角は、測定子281の先端方向が、予測したリムの動径変化に対して法線方向となるように決定される。あるいは、回転角は、リムの測定開始時の基準点(測定開始ポイントのY方向で、図2上の中心線FX上の点)を中心にした動径角として決定される。または、回転角は、測定開始時の基準点を中心にした動径角と、リムの動径変化に対する法線方向と、の間の角度として決定される。この動作を繰り返すことにより、リム全周の動径情報が測定される。
【0026】
また、リムの測定開始からZ方向の位置は、リムのZ方向への変化に追従して測定子281と共に測定子軸282がZ方向に移動される。測定子軸282のZ方向の移動位置がエンコーダ268によって検出されることにより、測定子保持ユニット250の基準位置に対する測定子軸282のZ位置情報が得られる。このZ位置情報と、測定子保持ユニット250をZ移動させるモータ225の駆動情報と、によってリムのZ位置情報が得られる。
【0027】
制御部50は、測定開始から所定の測定ポイント数(5ポイント数)のZ位置情報が得られたら、測定済みのZ位置情報に基づいて次の測定ポイント(未測定ポイント)のZ位置変化を予測し、その結果に基づいてリムに測定子281が沿うように、測定子保持ユニット250をZ方向に移動する。また、制御部50は、測定開始点からリムが上方向に反っている場合(未測定ポイントのZ位置が上方向に高くなっている場合)には、そのZ位置の高さに応じて、測定子軸282がHr方向に大きく傾斜するように、測定子保持ユニット250をXY移動する。これにより、測定子281の先端の向きが、リムRIRの傾斜に応じて傾斜するようになる。このため、高カーブフレームのリムの測定時にも、測定子281がリムから外れ難くなり、高カーブフレームを精度良く測定できる。この動作を繰り返すことにより、リム全体のZ位置情報が測定される。
【0028】
次に、型板TPの測定動作を説明する。操作者は、型板ホルダー310を取り付け部300に所定の状態で取り付けた後、スイッチ部4のスイチで型板測定モードを選択し(あるいは自動的に型板測定モードが選択される)、測定開始スイッチを押してパターン物TPの測定を開始する。制御部50は、中心線LX上(図2参照)の型板TPのエッジ位置を測定開始ポイントするように、初期位置に位置する測定子保持ユニット250をXY方向に移動する。また、測定開始ポイントでは、制御部50は、測定子281の先端とは反対方向(Hr方向)に位置する測定子軸282の背面282aが型板TPのエッジに向くように、回転ユニット260のモータ265の駆動を制御し、測定子保持ユニット250を回転させる。
【0029】
なお、VHユニット280は初期状態では測定子保持ユニット250に対する最下点に位置し、VHユニット280のZ位置は、型板ホルダー231に保持される型板TPの中心高さと、測定子軸282の傾斜中心である軸S1の距離と、が所定距離(40mm)となるように設定されている。
【0030】
測定子保持ユニット250の型板TP側への移動により、測定子軸282の背面282aが型板TPのエッジに接触し、さらに型板TP側に測定子保持ユニット250が移動されると、バネ293の付勢力に抗して、測定子軸282がHf方向に傾斜される。測定子軸282がHf方向の傾斜角は、エンコーダ285によって検出される。測定子軸282が垂直方向になると(Z方向に一致すると)、制御部50は、測定子保持ユニット250の型板TP側への移動を停止し、この時点から測定を開始する。
【0031】
型板TPの測定時、制御部50は、型板TPの測定済みの動径情報に基づき、測定子軸282が垂直方向を位置するように、測定子保持ユニット250のXY位置及び回転ユニット260の回転角を決定し、移動ユニット210及び回転ユニット260の駆動を制御する。好ましくは、制御部50は、測定済みの型板TPの動径情報に基づいて型板TPの未測定部分の動径変化を予測し、未測定部分の動径変化に沿って測定子軸282が垂直を維持したまま移動するように、測定子保持ユニット250のXY位置及び回転ユニット260の回転角を決定する。
【0032】
制御部50は、測定開始時点では、型板TPの動径がY方向に変化しているものとして、測定子保持ユニット250をY方向に移動する。型板TPの動径が予定する方向(測定開始時点ではY方向)に対して、実際の型板TPの動径が変化していると、その変化に追従して測定子軸282はH方向(Hr又はHf方向)に傾斜され、垂直方向に対してずれてしまう。垂直方向に対する測定子軸282の傾斜角はエンコーダ285によって検出される。測定子軸282が垂直を維持している場合には、型板TPの動径情報は測定子保持ユニット250のXY位置情報として得られるが、測定子軸282が垂直方向に対して傾斜された場合は、その分を補正する。
【0033】
垂直方向に対する測定子軸282の傾斜角をαとし、型板の高さ中心から測定子軸282の傾斜中心(軸S1)までの距離とLとすると、動径の半径補正量ΔRは、
ΔR=L×sinα
によって求められる。この演算は制御部50によって行われる。制御部50は、この補正演算と、測定子保持ユニット250をXY移動させるモータ235,245の駆動情報と、に基づいて型板TPの動径情報を得る。
【0034】
なお、型板TPの厚みの違い(デモレンズのエッジの高さ位置の違い)に応じて、型板TPと測定子軸282の背面282aとが接触するポイントが若干ずれるが、これは型板測定における許容誤差内であり、実用的な精度は確保される。
【0035】
制御部50は、測定開始から所定の測定ポイント数(5ポイント数)の動径情報が得られたら、測定済みの動径情報に基づいて次の測定ポイント(未測定ポイント)の変化を予測し、その結果に基づき、測定子軸282が垂直を維持したまま型板TPのエッジに沿うように、測定子保持ユニット250をXY方向に移動する。また、制御部50は、モータ265の駆動を制御し、回転ベース261を回転してVHユニット280を回転する。このときの回転角は、測定子軸282の背面282aが型板TPの動径に対して法線方向となるように決定される。または、回転角は、型板ホルダー310の保持中心を基準にした動径角として決定される。または、回転角は、型板ホルダー310の保持中心を基準にした動径角と、リムの動径変化に対する法線方向と、の間の角度として決定される。この動作を繰り返すことにより、リムの全体の動径情報が測定される。こうした動作を繰り返すことにより、型板TPの全周の動径情報が測定される。
【0036】
なお、型板測定中に、制御部50は、エンコーダ285によって検知される測定子軸282の傾斜角が垂直方向に対して規定範囲(例えば、0.5度)から外れている場合には、トレースできない形状であると判定し、型板測定を停止し、その旨を警告器(ディスプレイ3)によって警告する。トレースできない形状とは、測定子軸282の半径より小さな径を持つ凹凸である。
【0037】
以上のように、高カーブフレームのリムRIR(RIL)を精度良く測定するために、測定子軸282をリムの高さに応じて傾斜される構成においても、測定子軸282の背面282a(測定子281の先端方向に対して反対側の面)を型板TPのエッジに接触させる測定面として使用する構成により、リム測定用の移動機構及び検知機構を共用し、型板トレースの精度の向上を図ることができる。また、型板トレース用の測定軸を専用に設けなくて済むので、構成の複雑化及び高コスト化を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】眼鏡枠形状測定装置の外観略図である。
【図2】フレーム保持ユニットの上面図である。
【図3】型板ホルダー310が取付け部に取り付けられた状態のフレーム保持ユニットの斜視図である。
【図4】XYZ方向の移動機構の概略構成図である。
【図5】測定子保持ユニットの全体斜視図である。
【図6】垂直傾斜保持ユニットの構成の説明図である。
【図7】垂直傾斜保持ユニットの構成の説明図である。
【図8】装置の制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
50 制御部
100 フレーム保持ユニット
200 測定ユニット
210 移動ユニット
250 測定子保持ユニット
260 回転ユニット
280 垂直傾斜保持ユニット
281 測定子
282 測定子軸
282a 背面
285 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡フレームのリムの溝に挿入された測定子の移動位置を検知してリムの動径方向(XY方向)及び動径方向に対する垂直方向(Z方向)の位置を検知してリムの三次元形状を得る測定ユニットであって、前記測定子が上部に取り付けられた測定子軸を持ち、該測定子軸を前記測定子の先端方向に傾斜可能に保持する測定子保持ユニットと、前記測定子軸の傾斜角度を検知する傾斜角検知手段と、前記測定子保持ユニットをXY方向に2次元的に移動するXY移動手段と、Z方向の軸を中心に前記測定子保持ユニットを回転する回転手段と、を有する測定ユニットを備える眼鏡枠形状測定装置において、
型板測定モード時に、前記測定子とは反対側に位置する前記測定子軸の背面を前記型板のエッジに接触させるように前記回転手段及びXY移動手段を制御する制御手段と、
前記測定子保持ユニットのXY方向の位置情報、前記回転手段の回転情報及び傾斜角検知手段の検知情報とに基づいて型板の動径情報を求める演算手段と、を備え、
前記制御手段は、型板の測定途中では、測定済み情報に基づき、前記測定子軸の背面が型板のエッジに接触したときに前記測定子軸の傾斜が垂直を維持するように、前記回転手段及びXY移動手段を制御することを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項2】
請求項1の眼鏡枠形状測定装置において、前記演算手段は、前記傾斜角検知手段によって検知される前記測定子軸の垂直方向に対する傾斜角に基づき、前記測定子保持ユニットのXY方向の位置情報を補正して型板の動径情報を求めることを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2の眼鏡枠形状測定装置は、リムの測定時に前記測定子軸が前記測定子の先端方向に傾斜するように測定圧を付与する第1測定圧付与機構と、型板の測定時に前記測定子軸の背面が型板側に傾斜するように測定圧を付与する第2測定圧付与機構と、第1測定圧付与機構と第2測定圧付与機構とを切換える切換え手段と、を備えることを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかの眼鏡枠形状測定装置において、前記制御手段は、前記傾斜角検知手段によって検知される前記測定子軸の垂直方向に対する傾斜角が所定の範囲を超えている場合には、型板の測定動作を停止することを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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