説明

着床状態判定装置及び着床状態判定方法

【課題】ベッドフレームのゆがみに基づく着床状態の判定精度を改善しようとするものである。
【解決手段】低倍率増幅器21L、21R及びローパスフィルタ22L、22Rを用いて左側検出器3L及び右側検出器3Rから得られるひずみ検出信号S1L、S1Rに含まれている挙動検出信号S13L、S13Rを得ると共に、低倍率増幅器21L、21Rの低倍率増幅出力信号S11L、S11Rを高倍率増幅器31L、31R、バンドパスフィルタ32L、32Rを用いてひずみ検出信号S1L、S1Rに含まれる心拍検出信号S24L、S24Rを得、さらに、心拍検出信号S24L、S24Rと基準しきい値SVとの偏差信号S31L、S31Rを利得制御信号S32L、S32Rに変換して低倍率増幅器21L、21Rの増幅率をフィードバック制御するようにしたことにより、ベッド2に寝起きする被験者の着床状態を安全かつ高い精度で観察することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着床状態判定装置及び着床状態判定方法に関し、特にベッドで寝起きする人の状態を観察する場合に適用するものである。
【背景技術】
【0002】
病院や、介護施設などでベッドで寝起きする人(以下これを被験者と言う)を安全に観察する手法として、ベッドのフレームのゆがみ状態を検出することにより、被験者がベッドに乗った在床状態若しくは乗る動作をした状態や、ベッドから下りた不在床状態若しくは降りる動作をした状態や、ベッド上を移動した状態や、睡眠した状態若しくは覚醒した状態などの被験者のベッド上における状態(これを着床状態と言う)を判定する手法が従来から提案されている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開番号WO2004/043249A1公報
【特許文献2】特開2009−118935公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の着床状態判定装置において、被験者の安全を確認するためには、基本的に、被験者がベッドの中央に着床しているか、又は左側又は右側の一方にずれた位置に着床しているかを検出するようにするため、ベッドの左右両側にゆがみ検出器を設けることが必要である。
【0005】
ところが、左及び右側検出器の検出信号の信号レベルに、偏差があると、着床状態の判定結果に誤差が生ずるおそれがある。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、左及び右側検出器が被験者の心拍拍動検出信号に基づいて平衡な検出動作出力を得ることができるようにすることにより、一段と精度良く、着床状態の判定結果を得ることができるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、ベッドフレーム2Aに設けられ、当該ベッドフレーム2Aのゆがみに基づいたひずみ検出信号S1L、S1Rを得る左側検出器3L及び右側検出器3Rと、左側検出器3L及び右側検出器3Rの一対のひずみ検出信号S1L、S1Rを低倍率増幅器21L、21R、ローパスフィルタ22L、22R及びレベル検出回路23L、23Rによって信号処理して一対の挙動検出信号S13L、S13Rを得る挙動信号処理部4Aと、挙動信号処理部4Aの低倍率増幅器21L、21Rにおいて得られる一対の低倍率増幅出力信号S11L、S11Rを、それぞれ高倍率増幅器31L、31R、バンドバスフィルタ32L、32R、積分回路34L、34R及びレベル検出回路35L、35Rによって信号処理して一対の心拍検出信号S24L、S24Rを得る心拍信号処理部4Bと、挙動検出信号S13L、S13R及び心拍検出信号S24L、S24Rに基づいて、ベッドフレーム2Aに対する着床状態を判定して判定結果信号S2を送出する判定結果出力回路4Cと、心拍信号処理部4Bのレベル検出回路35L、35Rから得られる一対の心拍検出信号S24L、S24Rをそれぞれ比較回路41L、41Rにおいて共通の基準しきい値SVと比較して、当該一対の偏差信号S31L、S31Rをそれぞれ利得制御回路42L、42Rにおいて利得制御信号S32L、S32Rに変換してそれぞれ挙動信号処理部4Aの低倍率増幅器21L、21Rに与えることにより、一対の挙動検出信号S13L、S13Rの信号レベルを揃えるレベル調整処理部4Dとを設ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低倍率増幅器及びローパスフィルタを用いて左側検出器及び右側検出器から得られるひずみ検出信号に含まれている挙動検出信号を得ると共に、低倍率増幅器の低倍率増幅出力信号を高倍率増幅器、バンドパスフィルタを用いてひずみ検出信号に含まれる心拍検出信号を得、さらに、心拍検出信号と基準しきい値との偏差信号を利得制御信号に変換して低倍率増幅器の増幅率をフィードバック制御するようにしたことにより、ベッドに寝起きする被験者の着床状態を安全かつ高い精度で観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による着床状態判定装置の一実施の形態を示す略線的斜視図である。
【図2】図1の着床状態判定部4の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】図1の左側及び右側検出器3L及び3Rの詳細構成を示す平面図及び縦断面図である。
【図4】不在時のバンドパスフィルタ出力信号を示す信号波形図である。
【図5】正常心拍時のバンドパスフィルタ出力信号を示す信号波形図である。
【図6】ベッド上面から加わる心拍信号を示す信号波形図である。
【図7】心拍信号の周波数成分の分布を示す信号波形図である。
【図8】キャリブレーション処理を行わない場合の不揃いなバンドパスフィルタ出力信号S22L及びS22Rを示す信号波形図である。
【図9】キャリブレーションを行った場合の揃ったバンドパスフィルタ出力信号S22L及びS22Rを示す信号波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0011】
図1において、1は全体として着床状態判定装置を示し、ベッド2のベッドフレーム2Aに設置された左側検出器3L及び右側検出器3Rから得られる一対のひずみ検出信号S1L及びS1Rを着床状態判定部4に入力すると共に、その判定結果信号S2をナースセンタ5に設けられた表示部6に供給するようになされている。
【0012】
左側検出器3L及び右側検出器3Rは、図3に示すように、肉厚の円筒状金属ケース部11の下面を薄肉なゆがみ検出板部12によって閉塞した筐体13を有する。
【0013】
ゆがみ検出板部12の内面には、金属板材14上にユニモルフ圧電素子15を貼り着けてなるゆがみ検出ユニット16が貼り着けられており、かくしてゆがみ検出板部12にゆがみが生じたとき、金属板材14及びユニモルフ圧電素子15間に与えられたひずみに対応する大きさのひずみ電圧が発生し、これがリード線17A及び17Bを通じて円筒状金属ケース部11の上面を閉塞するように設けられたプリント基板18に導出される。
【0014】
プリント基板18はリード線17A及び17Bから導出されたひずみ電圧をインピーダンス変換素子19を介して出力端子20A及び20Bに導出し、これによりゆがみ検出ユニット16から得られたアナログ信号でなるインピーダンス整合が取れたひずみ電圧信号を、出力端子20A及び20Bから左側検出器3L及び右側検出器3Rのひずみ検出信号S1L及びS1Rとして出力する。
【0015】
この実施の形態の場合、左側検出器3L及び右側検出器3Rは、ベッド2の4本の脚2Bによって床面に対して支持されている長方形状のベッドフレーム2Aのうち、当該ベッド2上に被験者が寝たとき腰が触れる位置に対応する左及び右縁部にゆがみ検出板部12を貼り着けることにより、ベッドフレーム2Aの左側及び右側位置に設けられる。
【0016】
かかる構成において、ベッドフレーム2Aに加わる全荷重は4本の脚2Bによって支えられるように構成されているため、各脚2Bに加わる荷重が均等ではなく、ベッドフレーム2Aは左右の部分において異なるねじれ応力が発生することを回避できず、原理的に左右対称のひずみを生じることはない。
【0017】
従って左側検出器3L及び右側検出器3Rから得られるひずみ検出信号S1L及びS1Rも、当該ベッドフレーム2Aにおいて生ずる非対称的なゆがみを含んだ信号を生ずることになる。
【0018】
これに加えて、ベッドフレーム2Aには、当該ベッドフレーム2Aに乗った被験者の挙動、すなわちベッド2への乗り降り、ベッド2上での体重の移動や寝返り、睡眠や覚醒動作に応じたゆがみが与えられる。
【0019】
さらにこれに加えて、ベッドフレーム2Aには、ベッド2に乗った被験者の生体的な動きとして、呼吸や心拍による生体的なゆがみが与えられる。
【0020】
その結果、ひずみ検出信号S1L及びS1Rには被験者の挙動に基づく挙動信号成分や、生体的な動きに基づく生体的信号成分が含まれる。
【0021】
着床状態判定部4は、図2に示すように、これらの信号成分を含んで左側検出器3L及び右側検出器3Rから送出されるひずみ検出信号S1L及びS1Rを挙動信号処理部4Aに受けると共に、当該挙動信号処理部4Aを介して心拍信号処理部4Bに受けるような構成を有する。
【0022】
挙動信号処理部4Aは、左側検出器3L及び右側検出器3Rのひずみ検出信号S1L及びS1Rを低倍率増幅器21L及び21Rにおいて低倍率増幅をした後、当該一対の低倍率増幅出力信号S11L及びS11Rをそれぞれ2〔Hz〕のローパスフィルタ22L及び22Rにおいてローパスフィルタ処理をし、当該ローパスフィルタ出力信号S12L及びS12Rの信号レベルの変化をレベル検出回路23L及び23Rにおいて検出して一対の挙動検出信号S13L及びS13Rとして判定結果出力回路4Cに与える。
【0023】
低倍率増幅器21L及び21Rの低倍率増幅出力信号S11L及びS11Rは、心拍信号処理部4Bの高倍率増幅器31L及び31Rに与えられ、当該一対の高倍率増幅出力信号S21L及びS21Rが4〜12〔Hz〕のバンドパスフィルタ32L及び32Rにおいてバンドパスフィルタ処理される。
【0024】
この実施の形態の場合、高倍率増幅器31L及び31Rの倍率W2は、低倍率増幅器21L及び21Rの倍率W1に対して、W2=100×W1のように、100倍の高倍率に選定されている。
【0025】
バンドパスフィルタ32L及び32Rの一対のバンドパスフィルタ出力信号S22L及びS22Rは全波整流回路構成の絶対値化回路33L及び33Rにおいて絶対値演算をされた後、積分回路34L及び34Rにおいて積分演算される。
【0026】
かくして、バンドパスフィルタ32L及び32Rにおいて抽出された心拍拍動成分は、絶対値化回路33L及び33Rと、積分回路34L及び34Rとで構成された絶対値積分回路によって積分して得られる一対の心拍拍動信号S23L及びS23Rに変換され、当該心拍拍動信号S23L及びS23Rの変化をレベル検出回路35L及び35Rにおいて検出して一対の心拍検出信号S24L及びS24Rとして判定結果出力回路4Cに与えられる。
【0027】
図2の挙動信号処理部4A及び心拍信号処理部4Bは、ベッド2を使用する被験者の着床状態に応じて以下のような応動動作をする。
【0028】
(1−1)不在時
ベッド2に被験者が不在であるとき、ベッドフレーム2Aには被験者に起するゆがみが生じないので、左側検出器3L及び右側検出器3Rには微弱な心拍拍動信号すら検出することがなく、心拍信号処理部4Bから得られる心拍検出信号S24L及びS24Rはほぼ0になり、図4に示すように、バンドパスフィルタ出力信号S22L及びS22Rには、建物の揺れなどに起因するノイズとして微細振動が生ずる。
【0029】
この微細振動が得られたとき、判定結果出力回路4Cは被験者がベッド上に不在であることを表す判定結果信号S2をナースセンタ5の表示部6に送出する。
【0030】
(1−2)中央着床時
ベッド2の中央位置に被験者が寝ている中央着床時には、ベッドフレーム2Aに左右にほぼ均等なゆがみが生ずるが、そのゆがみは被験者の体重に基づいて大きいから、挙動信号処理部4Aの挙動検出信号S13L及びS13Rの信号レベルが共に大きくなる。
【0031】
このとき判定結果出力回路4Cは、挙動検出信号S13L及びS13Rが同程度の大きさであることに基づいて、被験者が中央位置に着床していることを表す判定結果信号S2をナースセンタ5の表示部6に送出する。
【0032】
(1−3)寝返り時
被験者が中央着床状態から左側又は右側に寝返ったとき、ベッドフレーム2Aは被験者が寝返った側の部分のゆがみが大きくなるのに対して、反射側の部分のゆがみが小さくなる。
【0033】
従って判定結果出力回路4Cは、挙動信号処理部4Aの左側又は右側の挙動検出信号S13L又はS13Rのいずれか一方の信号レベルが他方の信号レベルより大きくなったことに基づいて、被験者が左側又は右側に寝返ったことを表す判定結果信号S2をナースセンタ5の表示部6に送出する。
【0034】
(1−4)降りる動作時
被験者がベッド2の中央位置に着床している状態において、被験者が左側又は右側からベッド2を降りる動作をしたとき、ベッドフレーム2Aは当該降りようとした側に大きなゆがみが生じた後、当該ゆがみがなくなるので、挙動信号処理部4Aの左側又は右側の挙動検出信号S13L又はS13Rが降りようとする側に極端に変化し、これに応じて、判定結果出力回路4Cは、被験者がベッド2から左側又は右側に降りる動作をしたことを表す判定結果信号S2をナースセンタ5の表示部6に送出する。
【0035】
(1−5)正常心拍時
被験者がベッド2に着床している状態において、被験者の心臓が正常な心拍拍動動作をしていると、当該拍動動作に基づくゆがみがベッドフレーム2Aに生じ、当該拍動信号が低倍率増幅出力信号S11L及びS11Rに含まれる信号成分として低倍率増幅器21L及び21Rから送出される。
【0036】
この心拍信号は、被験者が上述の中央着床状態になったり、降りる動作をしたりするような挙動動作をするときに低倍率増幅出力信号S11L及びS11Rに生ずる信号レベルの変化と比較して、非常に微弱である。
【0037】
従って心拍信号は、挙動検出信号S13L及びS13Rの変化としては生じず、高倍率増幅器31L及び31Rにおいて高倍率で増幅された高倍率増幅出力信号S21L及びS21Rの変化として生ずる。
【0038】
この心拍拍動について、ベッド2に着床している被験者の握りこぶしの大きさの心臓は、毎分約70回で、約80〔cc〕の血液を送り出しているもので、この血液の送り出しは安静時で最大流速約1〔m/sec〕で頭部側に送出される。
【0039】
そして脊椎に沿った大動脈が血液の送り出しごとに膨張し、血液の送り出しが終了すると心臓の大動脈弁が閉まって脊椎に沿った大動脈は時定数を伴って収縮する。
【0040】
これらの心拍拍動によって被験者の全身には振動が発生し、この振動はベッドフレーム2Aのゆがみとして左側検出器3L及び右側検出器3Rによって、図7に示すように、4〜12〔Hz〕の周波数帯域の振動成分として観察される。
【0041】
ベッド上面から加わる心拍信号は、図6のような波形としてひずみ検出信号S1L及びS1Rとして得られ、この心拍信号には、図7に示すように、4.7〔Hz〕、6.3〔Hz〕、7.9〔Hz〕、9.4〔Hz〕及び10.9〔Hz〕の周波数成分が含まれていることを確認できる。
【0042】
心拍信号処理部4Bは、この周波数成分を4〜12〔Hz〕の通過帯域を有するバンドパスフィルタ32L及び32Rにおいて抽出してバンドパスフィルタ出力信号S22L及びS22Rとして取り出し、これを絶対値化回路33L及び33Rによって絶対値化処理した後、積分回路34L及び34Rにおいて積分した結果心拍拍動信号S23L及びS23Rを得、これをレベル検出回路35L及び35Rを介して心拍検出信号S24L及びS24Rとして判定結果出力回路4Cに与える。
【0043】
このとき判定結果出力回路4Cは、図5に示すようなバンドパスフィルタ出力信号S22L及びS22Rでは心拍検出信号S24L及びS24Rの信号レベルの変化が小さいので、当該被験者の心拍は正常であることを表す判定結果信号S2をナースセンタ5の表示部6に送出する。
【0044】
(1−6)死亡
判定結果出力回路4Cは、挙動信号処理部4Aについて被験者が着床状態にあることを挙動検出信号S13L及びS13Rの信号レベルによって確認できている状態において、心拍信号処理部4Bについて心拍検出信号S24L及びS24Rの信号レベルが0であるとき、被験者が死亡していることを表す判定結果信号S2をナースセンタ5に送信する。
【0045】
(1−7)呼吸信号
一方、被験者の生体的な動きとして呼吸があり、その影響によってベッドフレーム2Aがゆがむことにより、呼吸信号成分が左側検出器3L及び右側検出器3Rのひずみ検出信号S1L及びS1Rに含まれる。
【0046】
この呼吸運動は腹部から胸部にかけてのゆっくりとした「ぜん動」運動で、毎分12回の正弦波動作であり、その結果呼吸信号は周波数は約0.2〔Hz〕である。
【0047】
従ってこの実施の形態の場合、被験者の呼吸動作に基づく呼吸信号は心拍信号処理部4Bのバンドパスフィルタ32L及び32R(通過帯域4〜12〔Hz〕)を通過できずに除去される。
【0048】
またこの呼吸運動に基づく検出信号成分は微弱であるので、挙動信号処理部4Aの挙動検出信号S13L及びS13Rの信号成分として検出されることもない。
【0049】
着床状態判定部4は、上述の(1−1)〜(1−7)の挙動動作に対応する挙動信号処理部4A及び心拍信号処理部4Bに加えて、レベル調整処理部4Dを有する。
【0050】
レベル調整処理部4Dは、心拍信号処理部4Bのレベル検出回路35L及び35Rから得られる一対の心拍検出信号S24L及びS24Rを取り出して比較回路41L及び41Rにおいて、共通の基準しきい値SVと比較し、その偏差信号S31L及びS31Rを利得制御回路42L及び42Rに与える。
【0051】
利得制御回路42L及び42Rは、当該一対の利得制御信号S32L及びS32Rを挙動信号処理部4Aの低倍率増幅器21L及び21Rにその倍率を変更制御する信号として与える。
【0052】
かくして低倍率増幅器21L及び21Rは、心拍信号処理部4Bのレベル検出回路35L及び35Rにおいて得られる心拍検出信号S24L及びS24Rの値が比較回路41L及び41Rに供給されている基準しきい値SVの値と一致したとき、偏差信号S31L及びS31Rの値が0になるように、フィードバック制御する。
【0053】
この結果レベル調整処理部4Dの偏差信号S31L及びS31Rの値が0になったとき、この状態は左側検出器3L及び右側検出器3Rのひずみ検出信号S1L及びS1Rがベッド2の固体差や、被験者の体重差や、当該左側検出器3L及び右側検出器3Rの感度差に基づいて、不平衡であるとき、これを挙動信号処理部4A及び心拍信号処理部4Bにおいて処理して挙動検出信号S13L及びS13R並びに心拍検出信号S24L及びS24Rを得る際に、ひずみ検出信号S1L及びS1Rの偏差分を校正することによりキャリブレーションしたことを意味する。
【0054】
従って、例え、ベッド2の固体差や、被験者の体重差や、左側検出器3L及び右側検出器3Rの感度差があったとしても、判定結果信号S2を得る際に誤差信号を含ませないように自動的なキャリブレーションを実現できる。
【0055】
以上の構成によれば、レベル調整処理部4Dによって、被験者の着床状態における心臓の拍動に基づくベッドフレーム2Aのゆがみから得られる電気的な検出信号だけを用いて、ベッド2上の着床状態の観察を精度良く行うことができる。
【0056】
かくするにつき、被験者に何ら苦痛を与えることなく適正なキャリブレーション処理を実現できる。
【0057】
実験によれば、キャリブレーション処理を行わない場合にバンドパスフィルタ出力信号S22L及びS22Rは、図8(A)及び(B)に示すように、信号レベルが不揃いであるのに対して、レベル調整処理部4Dによってキャリブレーション処理を行った場合のバンドパスフィルタ出力信号S22L及びS22Rの信号レベルは、図9(A)及び(B)に示すように、互いに揃うことになる。
【0058】
従って判定結果出力回路4Cは、当該互いに揃った信号レベルを有する挙動検出信号S13L及びS13Rに基づいて、上述の(1−1)〜(1−7)の被験者の挙動動作についての判定を行うことができることにより、挙動検出信号S13L及びS13Rに相対的に生ずる変化に応じて、一段と高い精度の判定結果を得ることができる。
【0059】
因に、当該左側検出器3L及び右側検出器3Rのひずみ検出信号S1L及びS1Rのキャリブレーションを行うにつき、心拍検出信号に代えて、呼吸運動に基づく検出信号を用いることも考えられるが、上述したように、呼吸運動は腹部から胸部にかけてのゆっくりとした「ぜん動」運動であるところ、当該「ぜん動」運動は、個人差が大きく、被験者の緊張によっても安定なリズムが得られない問題がある。
【0060】
さらに、呼吸運動は毎分約12回の正弦波状であり、周波数は約0.2〔Hz〕である。
【0061】
従って一定時間の間に採取できる波形数は、心拍拍動信号の約20分の1であるため、上述の実施の形態のように心拍信号を用いる場合と比較してキャリブレーションに要する時間が約20倍かかる問題がある。
【0062】
かくして、上述の実施の形態によれば、呼吸信号はむしろノイズとして誤差を生む要因でもあると考えられるのに対して、これを4〜12〔Hz〕の通過帯域を有するバンドパスフィルタ32L及び32Rによって簡単に除去して、精度良く、しかも短時間の間に、キャリブレーション処理を行うことができる。
【0063】
(2)他の実施の形態
(2−1)上述の実施の形態においては、左側検出器3L及び右側検出器3Rとしてユニモルフでなるひずみ検出器を用いたが、これに代え、バイモルフを用いるようにしも良い。
【0064】
(2−2)上述の実施の形態においては、ベッド2のベッドフレーム2Aとしてベッド2の4本の脚2Bに固着した矩形形状のベッドフレームを用いた場合について述べたが、ベッド2のベッドフレーム2Aの構成としては、これに限らず、例えば被験者の上半身部分、腰の部分及び脚の部分について、それぞれ起こしたり、倒したりすることができる構造のベッド2についても、本発明を適用し得る。
【0065】
この場合、左側検出器3L及び右側検出器3Rを腰の部分に対応するベッドフレーム部分に設けたり、左側検出器3L及び右側検出器3Rの組合せ対数を増やしたりするようにしても、上述の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0066】
(2−3)上述の実施の形態においては、本発明による着床状態判定装置を病院におけるベッドに適用した場合の実施の形態として述べたが、病院以外に、例えば介護保養所や、自宅介護に用いられるベッドにも同様に適用し得る。
【0067】
(2−4)上述の実施の形態においては、着床状態判定部4における信号処理をアナログ信号について行うようにしたが、左側検出器3L及び3Rのひずみ検出信号S1L及びS1Rの入力時にディジタル変換することにより、ディジタル信号として処理するようにしても良い。
【0068】
(2−5)上述の実施の形態においては、常時、レベル調整処理部4Dの利得制御回路42L及び42Rから利得制御信号S32L及びS32Rを得て、挙動信号処理部4Aの低倍率増幅器21L及び21Rの信号を自動的にフィードバック制御するようにしたが、これに代え、ベッド2と、左及び右側検出器3L及び3Rと、被験者との組合せが変るごとに、利得制御回路42L及び42Rから利得制御信号S32L及びS32Rを得て、これを記憶手段に記憶しておき、当該記憶手段の記憶信号によって低倍率増幅器21L及び21Rの倍率をキャリブレーション制御するようにしても良い。
【0069】
因に、当該キャリブレーション制御は、ベッド2の固体差や、被験者の体重差や、左及び右側検出器3L及び3Rの感度差の組合せに基づいてひずみ検出信号S1L及びS1Rに不平衡が生じたとき、この不平衡を校正するものであるので、当該組合せが変るごとに利得制御信号S32L及びS32Rを設定すれば、上述の実施の形態による場合と同様のキャリブレーション効果を実現できる。
【0070】
(2−6)上述の実施の形態においては、絶対値化回路33L及び33Rとして全波整流回路構成のものを用いたが、これに代え、半波整流回路構成のものを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は被験者がベッドに寝起きするような場合に利用できる。
【符号の説明】
【0072】
1……着床状態判定装置、2……ベッド、2A……ベッドフレーム、2B……脚、3L、3R……左側、右側検出器、4……着床状態判定部、4A……挙動信号処理部、4B……心拍信号処理部、4C……判定結果出力回路、4D……レベル調整処理部、5……ナースセンタ、6……表示部、11……円筒状金属ケース部、12……ゆがみ検出板部、13……筐体、14……金属板材、15……ユニモルフ圧電素子、16……ゆがみ検出ユニット、17A、17B……リード線、18……プリント基板、19……インピーダンス変換素子、20A、20B……出力端子、21L、21R……低倍率増幅器、22L、22R……ローパスフィルタ、23L、23R……レベル検出回路、31L、31R……高倍率増幅器、32L、32R……バンドパスフィルタ、33L、33R……絶対値化回路、34L、34R……積分回路、35L、35R……レベル検出回路、41L、41R……比較回路、42L、42R……利得制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドフレームに設けられ、当該ベッドフレームのゆがみに基づいたひずみ検出信号を得る左側検出器及び右側検出器と、
上記左側検出器及び右側検出器の一対のひずみ検出信号をそれぞれ低倍率増幅器、ローパスフィルタ及びレベル検出回路によって信号処理して一対の挙動検出信号を得る挙動信号処理部と、
上記挙動信号処理部の上記低倍率増幅器において得られる一対の低倍率増幅出力信号を、それぞれ高倍率増幅器、バンドバスフィルタ、積分回路及びレベル検出回路によって信号処理して一対の心拍検出信号を得る心拍信号処理部と、
上記挙動検出信号及び心拍検出信号に基づいて、上記ベッドフレームに対する着床状態を判定して判定結果信号を送出する判定結果出力回路と、
上記心拍信号処理部のレベル検出回路から得られる一対の心拍検出信号をそれぞれ比較回路において共通の基準しきい値と比較して、当該一対の偏差信号をそれぞれ利得制御回路において利得制御信号に変換してそれぞれ上記挙動信号処理部の上記低倍率増幅器に与えることにより、上記一対の挙動検出信号の信号レベルを揃えるレベル調整処理部と
を有する着床状態判定装置。
【請求項2】
上記ローパスフィルタは、2〔Hz〕以下の通過帯域を有すると共に、上記バンドパスフィルタは、4〜12〔Hz〕の通過帯域を有する
請求項1に記載の着床状態判定装置。
【請求項3】
ベッドフレームに設けられた左側検出器及び右側検出器によって、当該ベッドフレームのゆがみに基づいたひずみ検出信号を得るステップと、
上記左側検出器及び右側検出器の一対のひずみ検出信号をそれぞれ挙動信号処理部の低倍率増幅器、ローパスフィルタ及びレベル検出回路によって信号処理して一対の挙動検出信号を得るステップと、
上記挙動信号処理部の上記低倍率増幅器において得られる一対の低倍率増幅出力信号を、それぞれ心拍信号処理部のバンドパスフィルタ、積分回路及びレベル検出回路によって信号処理して一対の心拍検出信号を得るステップと、
判定結果出力回路において、上記挙動検出信号及び心拍検出信号に基づいて、上記ベッドフレームに対する着床状態を判定して判定結果信号を送出するステップと、
レベル調整処理部において、上記心拍信号処理部のレベル検出回路から得られる一対の心拍検出信号をそれぞれ比較回路において共通の基準しきい値と比較して、当該一対の偏差信号をそれぞれ利得制御回路において利得制御信号に変換してそれぞれ上記挙動信号処理部の上記低倍率増幅器に与えることにより、上記一対の挙動検出信号の信号レベルを揃えるステップと
を有する着床状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−147603(P2011−147603A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11222(P2010−11222)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(500114254)株式会社エム・アイ・ラボ (11)
【Fターム(参考)】