説明

着座検知装置

【課題】検知領域が広範であり、安価かつ構造が平面的な着座検知装置を提供する。
【解決手段】スイッチ用フィルム部材10とコネクタ用フィルム部材20を帯状に夫々作成し、一対のスイッチ用フィルム部材と一つのコネクタ用フィルム部材が例えばY字状となるように、かつ各フィルム部材端部において各スイッチ配線13,14とコネクタ配線21,22とが電気的に接続するように配置し、配置した各フィルム部材端部を導電性接着剤Bで電気的・機械的に接合すると共に可撓性を有するシート部材30で覆った構成としている。これにより検知領域が広範で突出部の無い平面的な構造の着座検知装置1とすることができ、車両シートに着座した乗員は異物感による不快さを感じ難くなり、車両シートに対する配置自由度を高められる。部品点数の増加によるコスト増や重量増を抑えられる。そして、接合した各フィルム部材端部をシート部材で覆っているため該部位の機械的強度を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員が着座するときの着座面の圧力変化により乗員を検知する着座検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の着座検知装置としては、例えば特許文献1及び2に開示されている。特許文献1には、対の帯状のセンサ部(スイッチ用フィルム部材)と、これらのセンサ部の一端で電気的に接続された帯状のコネクタ部(コネクタ用フィルム部材)と、その接続部に配置されたブロックとを備えたY字状の着座検知装置が開示されている。センサ部は、対のフィルム部材の面に導電線(スイッチ配線)と電極(感圧スイッチ)を印刷し、これらのフィルム部材間をスペーサとなるフィルム部材を介在させて接着した構成となっており、コネクタ部は、対のフィルム部材の面にセンサ部の導電線と接続された導電線(コネクタ配線)を印刷し、これらのフィルム部材間を接着した構成となっている。
【0003】
このようなセンサ部とコネクタ部を構成するフィルム部材は、1枚のフィルムシートを打ち抜くことにより形成されるが、このときコネクタ部を対のセンサ部の間に延在させたE字状の形状で打ち抜いているため、歩留まりを向上させることができる。そして、着座検知装置を車両シートに取り付けるときは、センサ部をシート上面に延在させ、コネクタ部をブロックを介して180度反転させてシート後面からシート裏面へ延在させる。これにより、乗員が車両シートに着座するときの着座面の圧力変化により乗員を検知することができる。
【0004】
また、特許文献2には、直線状の導通部(スイッチ配線、コネクタ配線)の先端部及び中央部にセンサセル(感圧スイッチ)が配置されたI字状(帯状)の荷重センサ(着座検知装置)が開示されている。この荷重センサも特許文献1に記載の着座検知装置と同様のフィルム部材で形成されており、E字状よりも更にシンプルなI字状の形状で打ち抜いているため、歩留まりを更に向上させることができる。そして、荷重センサを車両シートに取り付けるときは、導通部をシート上面からシート後面を通ってシート裏面へ延在させる。これにより、乗員が車両シートに着座するときの着座面の圧力変化により乗員を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−133340号公報(段落0008〜0011、図1,2)
【特許文献2】特開2008−157941号公報(段落0021,0022、図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の着座検知装置では、フィルム部材でなるセンサ部及びコネクタ部と、コネクタ部を反転させるためのブロックとを備えている。このような着座検知装置を車両シートに取り付けたとき、センサ部及びコネクタ部は平面的な構造であるためシート面から突出しないが、ブロックは直方体状に形成されているためシート面から突出することになり、乗員が車両シートに着座したときにブロックに接触すると異物感があって不快に感じるおそれがある。よって、この着座検知装置の車両シートに対する配置は限定されたものとなっている。さらに、センサ部及びコネクタ部の他にブロックが余分に必要となるため、部品点数増によるコスト増や重量増を招く。
【0007】
特許文献2に記載の荷重センサでは、フィルム部材でなる導通部のみで構成されているため上記問題は解消される。しかし、特許文献1に記載の着座検知装置はY字状に形成されているため着座面を広範囲にわたって検知領域とすることができたが、特許文献2に記載の荷重センサは単純なI字状に形成されているため着座面において検知領域を十分に確保することができず、乗員が車両シートに着座するときの状態によっては乗員を検知することができない場合が生じる。
【0008】
本発明は、検知領域が広範であり、安価かつ構造が平面的な着座検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、車両シートの着座面に配置して乗員の着座を検知する複数の感圧スイッチ及び該感圧スイッチを並列に接続するスイッチ配線が長手方向に形成された一対の帯状のスイッチ用フィルム部材と、一端が前記各スイッチ配線の端部と接続し、他端がコネクタと接続するコネクタ配線が長手方向に形成された帯状のコネクタ用フィルム部材とを備え、前記各スイッチ配線と前記コネクタ配線との接続部位における前記一対のスイッチ用フィルム部材の端部と前記コネクタ用フィルム部材の端部とは導電性接着剤により電気的・機械的に接合され、さらに当該接合部位が可撓性を有するシート部材により覆われていることである。
【0010】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記シート部材は、可撓性を有する樹脂フィルム又はホットメルトモールディングであることである。
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記接合部位における一対の前記スイッチ用フィルム部材のうち一方の前記スイッチ配線の形成面に対し、他方の前記スイッチ配線の形成面と前記コネクタ配線の形成面とを対向させ、かつ並べて接合したことである。
【0011】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜3の何れか一項において、前記スイッチ配線の端部もしくは前記コネクタ配線の端部と接続する延長用配線が長手方向に形成されており、当該接続部位における前記スイッチ用フィルム部材の端部もしくは前記コネクタ用フィルム部材の端部を前記導電性接着剤により電気的・機械的に接合し、さらに当該接合部位を前記シート部材により覆うことにより前記スイッチ用フィルム部材もしくは前記コネクタ用フィルム部材を延長する帯状の延長用フィルム部材を備え、対となっている前記スイッチ配線の端部もしくは前記コネクタ配線の端部の一方を突出形成すると共に、対となっている前記延長用配線の端部のうち、突出形成した前記スイッチ配線の端部もしくは前記コネクタ配線の端部とは逆側となる端部を突出形成し、突出形成した端部と突出形成していない端部とを接続するようにしたことである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、スイッチ用フィルム部材とコネクタ用フィルム部材を帯状(I字状)に夫々作成し、一対のスイッチ用フィルム部材と一つのコネクタ用フィルム部材が例えばY字状となるように、かつ各フィルム部材端部において各スイッチ配線とコネクタ配線とが電気的に接続するように配置し、配置した各フィルム部材端部を導電性接着剤で電気的・機械的に接合すると共にシート部材で覆った構成としている。このようにI字状の各フィルム部材の端部を導電性接着剤で電気的・機械的に接合してY字状の着座検知装置を作成しているため、従来のE字状のフィルム部材からY字状の着座検知装置を作成するためのブロックが不要となる。よって、本発明の着座検知装置は検知領域が広範で突出部の無い平面的な構造となっているため、この着座検知装置を取り付けた車両シートに着座した乗員は異物感による不快さを感じ難くなると共に、この着座検知装置の車両シートに対する配置自由度を高めることができる。さらに、従来の着座検知装置のブロックが不要となるので、部品点数の増加によるコスト増や重量増を抑えることができる。
【0013】
そして、接合した各フィルム部材端部を可撓性を有するシート部材で覆っており、着座検知装置が取り付けられた車両シートに乗員が着座したときは各フィルム部材端部と共にシート部材も撓むため、乗員は異物感による不快さを殆ど感じなくなると共に、着座検知装置の車両シートに対する配置自由度をさらに高めることができる。そして、着座検知装置はY字状に形成されているため、着座面を広範囲にわたって検知領域とすることができ、乗員が車両シートに着座するときの状態に拘わらず乗員を的確に検知することができる。また、各フィルム部材はフィルムシートをI字状の形状で打ち抜くことにより形成されるため、歩留まりを向上させることができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、シート部材を可撓性を有する樹脂フィルム又はホットメルトモールディングで形成しているので、各フィルム部材端部の接合部位の機械的強度を向上させることができ、乗員が車両シートに着座するときの着座面の圧力変化が繰り返されても、接合した各フィルム部材端部の剥離を防止することができる。さらに、該接合部位は可撓性を有する樹脂フィルム又はホットメルトモールディングでなるシート部材で覆われるのでシール性も向上するため、例えば水分等の浸入を防止することができる。
請求項3に係る発明によれば、接合部位における一対のスイッチ用フィルム部材のうち一方のスイッチ配線の形成面に対し、他方のスイッチ配線の形成面とコネクタ配線の形成面とを対向させ、かつ並べて接合しているので、接合部位におけるフィルム重ね合わせ枚数は2枚となる。よって、接合部位を薄型化することができ、乗員は異物感による不快さを殆ど感じなくなると共に、着座検知装置の車両シートに対する配置自由度をさらに高めることができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、スイッチ用フィルム部材もしくはコネクタ用フィルム部材に延長用フィルム部材を接合して延長する場合、対となっているスイッチ配線の端部もしくはコネクタ配線の端部の一方を突出形成すると共に、対となっている延長用配線の端部のうち、突出形成したスイッチ配線の端部もしくはコネクタ配線の端部とは逆側となる端部を突出形成し、突出形成した端部と突出形成していない端部とを接続するようにしている。このため、該接続部位におけるフィルム重ね合わせ枚数は2枚となるので接続部位を薄型化することができ、乗員は異物感による不快さを殆ど感じなくなると共に、着座検知装置の車両シートに対する配置自由度をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る着座検知装置の平面図である。
【図2】(A)及び(B)は本発明の実施の形態に係る着座検知装置が配設された車両シートの斜視図及びA−A線断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る着座検知装置の概要を示す回路図である。
【図4】(A),(B),(C)は本発明の実施の形態に係る着座検知装置のスイッチ用フィルム部材の第1実施例の分解斜視図である。
【図5】(A),(B)は本発明の実施の形態に係る着座検知装置のコネクタ用フィルム部材の第1実施例の分解斜視図である。
【図6】第1実施例のスイッチ用フィルム部材とコネクタ用フィルム部材の接合前を示す平面図である。
【図7】(A),(B)は第1実施例のスイッチ用フィルム部材とコネクタ用フィルム部材の接合後を示す平面図及びA−A線断面図である。
【図8】(A),(B)は第1実施例のスイッチ用フィルム部材の感圧スイッチの作動前と作動後の状態を示す断面図である。
【図9】(A),(B),(C)は本発明の実施の形態に係る着座検知装置のスイッチ用フィルム部材の第2実施例の分解斜視図である。
【図10】(A),(B)は本発明の実施の形態に係る着座検知装置のコネクタ用フィルム部材の第2実施例の分解斜視図である。
【図11】(A),(B)は第2実施例のスイッチ用フィルム部材とコネクタ用フィルム部材の接合前を示す平面図及び接合後を示す平面図である。
【図12】(A),(B)は第2実施例のスイッチ用フィルム部材と第1実施例のコネクタ用フィルム部材の接合前を示す平面図及び接合後を示す平面図である。
【図13】(A),(B)は第1実施例のコネクタ用フィルム部材と延長用フィルム部材の接合前を示す平面図及び接合後を示す平面図である。
【図14】(A),(B)は第2実施例のコネクタ用フィルム部材と延長用フィルム部材の接合前を示す平面図及び接合後を示す平面図である。
【図15】(A),(B)は補強した第1実施例のコネクタ用フィルム部材と延長用フィルム部材の接合前を示す平面図及び接合後を示す平面図である。
【図16】(A),(B)は本発明の別の実施の形態に係る着座検知装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る着座検知装置1は、Y字状に接合された一対の帯状のスイッチ用フィルム部材10,10及び帯状のコネクタ用フィルム部材20と、該接合部位を覆うシート部材30と、コネクタ用フィルム部材20に接続されたコネクタ40とを備えている。この着座検知装置1は、例えば図2に示すように、車両シート2のシートクッション3内であって、着座面4にあるシート表皮5とクッション6との間に配設されており、乗員が着座するときの着座面4の圧力変化により乗員を検知する。なお、シートクッション3以外にもシートバック8内やヘッドレスト9等のシート表皮5とクッション6との間にも着座検知装置1を配設することで、よりきめ細かな乗員検知を行うことができる。
【0018】
スイッチ用フィルム部材10には、複数(この例では3つ)の感圧スイッチ11及び断線検出用抵抗12と、各感圧スイッチ11及び断線検出用抵抗12を並列接続する第1、第2スイッチ配線13,14と、空気穴15が形成されている。コネクタ用フィルム部材20には、一対のスイッチ用フィルム部材10の第1、第2スイッチ配線13,14とコネクタ40との間を電気的に接続する第1、第2コネクタ配線21,22が形成されている。
【0019】
各感圧スイッチ11は、独立に厚み方向に外部から加わる圧力が所定値以上になったときにオン状態になるスイッチとして作用する。各感圧スイッチ11は、図3に示すように、電気的に並列に接続されているため、いずれかの感圧スイッチ11がオン状態になれば、着座検知装置1全体としてオン状態になる。コネクタ40に接続されている判定手段41は、着座検知装置1がオン状態またはオフ状態のいずれの状態になっているかを判定し、その結果を必要とする図略の機器(例えば、シートベルトを制御するECUやエアバッグを制御するECU)に出力する。なお、この例では全ての感圧スイッチ11の特性及び構成は同一であるものとして説明を行っているが、各感圧スイッチ11が配置される部位に応じて適正な検知特性が得られるように、夫々の部位毎に異なる構成を採用しても良い。
【0020】
スイッチ用フィルム部材10は、図4に示すように、厚み方向に並設される第1フィルムシート16及び第2フィルムシート17と、それらのフィルムシート16及び17の間に介設される中間フィルムシート18とを有している。第1フィルムシート16と中間フィルムシート18との間、及び、第2フィルムシート17と中間フィルムシート18との間は夫々外部から水分等が侵入しないように粘着剤により接着もしくは以下の方法により溶着されている。
例えば、重ね合わせた各フィルムシート16,17,18に対して外側から、超音波を照射しながら加圧するいわゆる超音波溶着と称される方法、もしくはレーザ光を照射して加熱するいわゆるレーザ溶着と称される方法、もしくは加熱した部材等を押し付けて溶着する方法、または各フィルムシート16,17,18の合わせ面に加熱した部材等を押し当てて直接加熱して溶融させた後に貼り合わせる方法、等が挙げられる。特に超音波溶着を採用することで簡単に溶着を行うことができる。
【0021】
第1フィルムシート16には、一面側(図では下面側)の感圧スイッチ11となる部分に、半月状の第1電極11a及び第2電極11bが印刷等により所定間隔で形成され、さらに第1電極11a同士を電気的に接続する第1スイッチ配線13及び第2電極11b同士を電気的に接続する第2スイッチ配線14が印刷等により平行に形成されている。
第2フィルムシート17には、一面側(図では上面側)の感圧スイッチ11となる部分、即ち第1フィルムシート16を中間フィルムシート18を介して重ね合わせたときの第1電極11a及び第2電極11bと対向する部分に、円形状の第3電極11cが印刷等により形成されている。
【0022】
中間フィルムシート18には、感圧スイッチ11となる部分、即ち第1フィルムシート16と第2フィルムシート17を両側に重ね合わせたときの第1電極11a及び第2電極11bと第3電極11cとに対応する部分に、厚み方向に貫通する円形状の開口部18aが設けられ、さらに各開口部18aを連通し、かつ厚み方向に貫通するスリット部18bが設けられている。
開口部18aは、第1電極11a及び第2電極11bと第3電極11cとを接触・離間させるための空間を形成している。即ち、感圧スイッチ11に外側から圧力が加わったときは、第1フィルムシート16及び第2フィルムシート17は開口部18aの内部に撓むことになる。このとき、中間フィルムシート18の厚さ分だけ離間していた第1電極11a及び第2電極11bと第3電極11cとは開口部18a内で接触するので、第1電極11aと第2電極11bとの間は第3電極11cにて短絡され、感圧スイッチ11はオン状態となる。感圧スイッチ11から上記圧力が除去されたときは、第1フィルムシート16及び第2フィルムシート17は弾性力により復元することになる。このとき、接触していた第1電極11a及び第2電極11bと第3電極11cとは開口部18a内で中間フィルムシート18の厚さ分だけ離間するので、感圧スイッチ11はオフ状態となる。
【0023】
なお、この開口部18aの大きさ、第1フィルムシート16、第2フィルムシート17及び中間フィルムシート18の厚さや材質等を制御することで、感圧スイッチ11の検知特性が制御できる。例えば、開口部18aを小さくする、第1フィルムシート16、第2フィルムシート17及び中間フィルムシート18の厚さを厚くする、第1フィルムシート16及び第2フィルムシート17の材質を撓み難いものにする、ことで、より高い圧力にてオン状態に移行する検知特性を有する感圧スイッチ11とすることができる。
【0024】
スリット部18bは、第1フィルムシート16及び第2フィルムシート17の一方もしくは両方に穿孔されている空気穴15(図1参照)に連通している。感圧スイッチ11に外部から圧力が加わったときは、開口部18a内の空気はスリット部18bを通って空気穴15から外部に流出する。感圧スイッチ11から上記圧力が除去されたときは、外部の空気が空気穴15からスリット部18bを通って開口部18a内に流入する。これにより、開口部18a内の圧力を大気圧に常時保つことができるので、安定した検知特性を有する感圧スイッチ11とすることができる。また、開口部18a内が加圧されたままの状態であるときに発生するおそれがある各フィルムシート16,17,18間の剥離を防止することができる。また、開口部18a内が減圧されたままの状態であるときに発生するおそれがある第1電極11a及び第2電極11bと第3電極11cとの短絡を防止することができる。
【0025】
コネクタ用フィルム部材20は、図5に示すように、厚み方向に並設される第1フィルムシート23及び第2フィルムシート24を有している。第1フィルムシート23と第2フィルムシート24との間は外部から水分等が侵入しないように粘着剤により接着もしくは上述した方法により溶着されている。第1フィルムシート23には、一面側(図では下面側)に第1、第2コネクタ配線21,22が印刷等により平行に形成されている。第2フィルムシート24には、何も形成されていない。
【0026】
以上のような構成の一対のスイッチ用フィルム部材10,10とコネクタ用フィルム部材20とにより着座検知装置1を作成するときは、先ず、図6に示すように、一方(この場合は左側)のスイッチ用フィルム部材10を第2フィルムシート17側が表となるように配置し、その第1、第2スイッチ配線13,14が延在する側(断線検出用抵抗12側とは逆側)の端部10aの第2フィルムシート17及び中間フィルムシート18を矩形状に剥離する。他方(この場合は右側)のスイッチ用フィルム部材10を第1フィルムシート16側が表となるように配置し、その第1、第2スイッチ配線13,14が延在する側(断線検出用抵抗12側とは逆側)の端部10aの第2フィルムシート17及び中間フィルムシート18を先に剥離した矩形面積の約半分となる矩形状に剥離する。そして、コネクタ用フィルム部材20を第1フィルムシート23が表となるように配置し、その第1、第2コネクタ配線21,22が延在する側(コネクタ40側とは逆側)の端部20aの第2フィルムシート24を最初に剥離した矩形面積の約半分となる矩形状に剥離する。
【0027】
次に、図7に示すように、左側のスイッチ用フィルム部材10の端部10a全面に異方性を有する導電性接着剤B(図7(A)の斜線で示す部分及び図7(B)の黒筋の部分)を塗布し、該端部10aの上部に右側のスイッチ用フィルム部材10の端部10aを配置し、該端部10aの下部にコネクタ用フィルム部材20の端部20aを配置してY字状にする。そして、左側のスイッチ用フィルム部材10の端部10aにおいて露出している第1スイッチ配線13及び第2スイッチ配線14と、右側のスイッチ用フィルム部材10の端部10aにおいて露出している第1スイッチ配線13及び第2スイッチ配線14と、コネクタ用フィルム部材20の端部20aにおいて露出している第1コネクタ配線21及び第2コネクタ配線22とが電気的に夫々接続するように組み合わせ、各端部10a,10a,20aを接合する。なお、異方性を有しない導電性接着剤で各端部10a,10a,20aを電気的・機械的に接合する場合は、左側のスイッチ用フィルム部材10の端部10aにおいて露出している第1スイッチ配線13及び第2スイッチ配線14に沿って導電性接着剤を塗布し、夫々の導電性接着剤が接触して短絡しないようにする。
【0028】
このようにI字状の各フィルム部材10,10,20の端部10a,10a,20aを導電性接着剤Bで電気的・機械的に接合してY字状の着座検知装置1を作成している。よって、車両シート2には着座検知装置1がY字状に取り付けられるため着座面4を広範囲にわたって検知領域とすることができ、乗員が車両シート2に着座するときの状態に拘わらず乗員を的確に検知することができる。また、各フィルム部材10,10,20はフィルムシートをI字状の形状で打ち抜くことにより形成されるため、歩留まりを向上させることができる。また、従来のE字状のフィルム部材からY字状の着座検知装置を作成するためのブロックが不要となる。このため、本実施形態の着座検知装置1は突出部の無い平面的な構造となるので、この着座検知装置1を取り付けた車両シート2に着座した乗員は異物感による不快さを感じ難くなると共に、この着座検知装置1の車両シート2に対する配置自由度を高めることができる。さらに、部品点数の増加によるコスト増や重量増を抑えることができる。
【0029】
また、上記接合部位において左側のスイッチ用フィルム部材10の端部10aの第1フィルムシート16に対し、右側のスイッチ用フィルム部材10の端部10aの第1フィルムシート16と、コネクタ用フィルム部材20の端部20aの第1フィルムシート23とを対向させ、かつ並べて接合している。よって、上記接合部位におけるフィルムシート重ね合わせ枚数はスイッチ用フィルム部材10の第1フィルムシート16とコネクタ用フィルム部材20の第1フィルムシート23の2枚となるため、該接合部位を薄型化することができ、乗員は異物感による不快さを殆ど感じなくなると共に、着座検知装置1の車両シート2に対する配置自由度をさらに高めることができる。
【0030】
最後に、可撓性を有する樹脂フィルムで矩形状に形成された2枚のシート部材30により上記接合部位を厚み方向の両側から挟み込み、粘着剤、加熱圧着により接着性を発する接着剤により接着もしくは前述した方法により溶着する。これにより、該接合部位はシート部材30で覆われるので機械的強度が向上し、乗員が車両シート2に着座するときの着座面4の圧力変化が繰り返されても、該接合部位における一対のスイッチ用フィルム部材10とコネクタ用フィルム部材20の剥離を防止することができる。さらに、該接合部位はシート部材30で覆われるのでシール性も向上するため、例えば水分等の浸入を防止することができる。さらに、着座検知装置1が取り付けられた車両シート2に乗員が着座したときは各フィルム部材10,10,20の端部10a,10a,20aと共にシート部材30も撓むため、乗員は異物感による不快さを殆ど感じなくなると共に、着座検知装置1の車両シート2に対する配置自由度をさらに高めることができる。
【0031】
以下に着座検知装置1の作動について説明する。
車両シート2に乗員が着座していない状態では、シートクッション3の着座面4に圧力が加わっていないので、着座検知装置1の感圧スイッチ11部分の第1フィルムシート16及び第2フィルムシート17が変形せずに、形成された第1電極11a及び第2電極11bと第3電極11cとが接続されず、非導通状態になっている。なお、第1フィルムシート16と中間フィルムシート18と第2フィルムシート17の間には、粘着剤19が介在している(図8(A))。
【0032】
車両シート2に乗員が着座している状態では、シートクッション3の着座面4に圧力が加わっているので、着座検知装置1の感圧スイッチ11部分の第1フィルムシート16及び第2フィルムシート17がシート表皮5を介して押圧される。すると、反対側に配設されているクッション6に感圧スイッチ11が押し付けられて、感圧スイッチ11部分の第1フィルムシート16及び第2フィルムシート17がシート表皮5とクッション6とにより挟持される結果、第1フィルムシート16及び第2フィルムシート17が変形し、その部分に形成された第1電極11a及び第2電極11bと第3電極11cとが接続され、導通状態になる(図8(B))。
【0033】
上述したスイッチ用フィルム部材10及びコネクタ用フィルム部材20は、第1フィルムシート16,23に第1、第2スイッチ配線13,14及び第1、第2コネクタ配線21,22を形成(以下、第1実施例という)するようにしたが、これらの配線を第1フィルムシートと第2フィルムシートに分けて形成(以下、第2実施例という)しても良く、以下に図を参照して説明する。なお、配線を第1フィルムシートと第2フィルムシートに分けたときに形成される着座検知装置は図1に示す装置と同様の構成となるので、同一構成部材は同一番号を使用して詳細な説明は省略する。
【0034】
スイッチ用フィルム部材50は、図9に示すように、厚み方向に並設される第1フィルムシート56及び第2フィルムシート57と、それらのフィルムシート56及び57の間に介設される中間フィルムシート58とを有している。第1フィルムシート56と中間フィルムシート58との間、及び、第2フィルムシート57と中間フィルムシート58との間は夫々外部から水分等が侵入しないように粘着剤により接着もしくは前述した方法により溶着されている。
【0035】
第1フィルムシート56には、一面側(図では下面側)の感圧スイッチ51となる部分に円形状の第1電極51aが印刷等により所定間隔で形成され、さらに第1電極51a同士を電気的に接続する第1スイッチ配線53が印刷等により形成されている。
第2フィルムシート57には、一面側(図では上面側)の感圧スイッチ51となる部分、即ち第1フィルムシート56を中間フィルムシート58を介して重ね合わせたときの第1電極51aと対向する部分に円形状の第2電極51bが印刷等により形成され、さらに第2電極51b同士を電気的に接続する第2スイッチ配線54が印刷等により形成されている。
【0036】
中間フィルムシート58には、感圧スイッチ51となる部分、即ち第1フィルムシート56と第2フィルムシート57を両側に重ね合わせたときの第1電極51aと第2電極51bとに対応する部分に、厚み方向に貫通する円形状の開口部58aが設けられ、さらに各開口部58aを連通し、かつ厚み方向に貫通するスリット部58bが設けられている。
開口部58aは、第1電極51aと第2電極51bとを接触・離間させるための空間を形成している。即ち、感圧スイッチ51に外側から圧力が加わったときは、第1フィルムシート56及び第2フィルムシート57は開口部58aの内部に撓むことになる。このとき、中間フィルムシート58の厚さ分だけ離間していた第1電極51aと第2電極51bとは開口部58a内で接触するので、第1電極51aと第2電極51bとの間は短絡され、感圧スイッチ51はオン状態となる。感圧スイッチ51から上記圧力が除去されたときは、第1フィルムシート56及び第2フィルムシート57は弾性力により復元することになる。このとき、接触していた第1電極51aと第2電極51bとは開口部58a内で中間フィルムシート58の厚さ分だけ離間するので、感圧スイッチ51はオフ状態となる。
なお、図4を参照して説明した第1実施例と同様に、この開口部58aの大きさ等を制御することで、感圧スイッチ51の検知特性が制御できる。また、スリット部58bも空気穴15(図1参照)に連通しており、図4を参照して説明した第1実施例と同様の作用効果を奏する。
【0037】
コネクタ用フィルム部材60は、図10に示すように、厚み方向に並設される第1フィルムシート63及び第2フィルムシート64を有している。第1フィルムシート63と第2フィルムシート64との間は外部から水分等が侵入しないように粘着剤により接着もしくは前述した方法により溶着されている。第1フィルムシート63には、一面側(図では下面側)に第1コネクタ配線61が印刷等により形成されている。第2フィルムシート64には、一面側(図では上面側)に第1フィルムシート63を重ね合わされたときに第1コネクタ配線61と一定の間隔をもち平行になるように第2コネクタ配線61が印刷等により形成されている。
【0038】
以上のような構成の一対のスイッチ用フィルム部材50,50とコネクタ用フィルム部材60とにより着座検知装置1を作成するときは、先ず、図11(A)に示すように、一方(この場合は左側)のスイッチ用フィルム部材50を第1フィルムシート56側が表となるように配置する。そして、その第1、第2スイッチ配線53,54が延在する側(断線検出用抵抗12側とは逆側)の端部50aにおいて、第1スイッチ配線53が露出するように第2フィルムシート57及び中間フィルムシート58を矩形状に剥離すると共に、第2スイッチ配線54が露出するように第1フィルムシート56及び中間フィルムシート58を矩形状に剥離する。このとき、第2スイッチ配線54は第1スイッチ配線53よりも若干長くなるように形成する。
【0039】
他方(この場合は右側)のスイッチ用フィルム部材50を第2フィルムシート57側が表となるように配置する。そして、その第1、第2スイッチ配線53,54が延在する側(断線検出用抵抗12側とは逆側)の端部50aにおいて、第1スイッチ配線53が露出するように第2フィルムシート57及び中間フィルムシート58を矩形状に剥離すると共に、第2スイッチ配線54が露出するように第1フィルムシート56及び中間フィルムシート58を矩形状に剥離する。このとき、第1スイッチ配線53と第2スイッチ配線54は略同一の長さとなるように形成し、また第1スイッチ配線53と第2スイッチ配線54との間は切り欠いておく。
【0040】
コネクタ用フィルム部材60を第1フィルムシート63が表となるように配置する。そして、その第1、第2コネクタ配線61,62が延在する側(コネクタ40側とは逆側)の端部60aにおいて、第1コネクタ配線61が露出するように第2フィルムシート64を矩形状に剥離すると共に、第2コネクタ配線62が露出するように第1フィルムシート63を矩形状に剥離する。このとき、第1コネクタ配線61は第2コネクタ配線62よりも若干長くなるように形成する。
【0041】
次に、右側のスイッチ用フィルム部材50の端部50aにおいて露出している第1スイッチ配線53及び第2スイッチ配線54に異方性を有する導電性接着剤B(斜線で示す部分)を塗布する。そして、図11(B)に示すように、右側のスイッチ用フィルム部材50の第1スイッチ配線53の上に、左側のスイッチ用フィルム部材50の第1スイッチ配線53とコネクタ用フィルム部材60の第1コネクタ配線61をずらして配置して接合する。さらに、ずれて配置されている左側のスイッチ用フィルム部材50の第2スイッチ配線54の上及びコネクタ用フィルム部材60の第2コネクタ配線62の上に、右側のスイッチ用フィルム部材50の第2スイッチ配線54を切り込みを跨がせて配置して接合してY字状にする。なお、異方性を有しない導電性接着剤で各端部50a,50a,60aを電気的・機械的に接合することもできる。最後に、可撓性を有する樹脂フィルムで矩形状に形成された2枚のシート部材30により上記接合部位を厚み方向の両側から挟み込み、粘着剤、加熱圧着により接着性を発する接着剤により接着もしくは前述した方法により溶着する。このような構成の着座検知装置1においても、図6,7を参照して説明した第1実施例と同様の作用効果を奏する。
【0042】
以上説明した接合は第2実施例のスイッチ用フィルム部材50及びコネクタ用フィルム部材60を用いた場合であるが、同様の接合を第2実施例のスイッチ用フィルム部材50及び第1実施例のコネクタ用フィルム部材20を用いても可能であって同様の効果を得ることができ、以下に図を参照して説明する。
先ず、図12(A)に示すように、一方(この場合は左側)のスイッチ用フィルム部材50を第1フィルムシート56側が表となるように配置する。そして、その第1、第2スイッチ配線53,54が延在する側(断線検出用抵抗12側とは逆側)の端部50aにおいて、第1スイッチ配線53が露出するように第2フィルムシート57及び中間フィルムシート58を矩形状に剥離すると共に、第2スイッチ配線54が露出するように第1フィルムシート56及び中間フィルムシート58を矩形状に剥離する。このとき、第2スイッチ配線54は第1スイッチ配線53よりも若干長くなるように形成する。
【0043】
他方(この場合は右側)のスイッチ用フィルム部材50を第2フィルムシート57側が表となるように配置する。そして、その第1、第2スイッチ配線53,54が延在する側(断線検出用抵抗12側とは逆側)の端部50aにおいて、第1スイッチ配線53が露出するように第2フィルムシート57及び中間フィルムシート58を矩形状に剥離すると共に、第2スイッチ配線54が露出するように第1フィルムシート56及び中間フィルムシート58を矩形状に剥離する。このとき、第1スイッチ配線53が第2スイッチ配線54よりも若干長くなるように形成し、また第1スイッチ配線53と第2スイッチ配線54との間は切り欠いておく。
コネクタ用フィルム部材20を第1フィルムシート23が表となるように配置する。そして、その第1、第2コネクタ配線21,22が延在する側(コネクタ40側とは逆側)の端部20aにおいて、第1、第2コネクタ配線21,22が露出するように第2フィルムシート24を矩形状に剥離する。
【0044】
次に、左側のスイッチ用フィルム部材50の端部50aにおいて露出している第2スイッチ配線54及び右側のスイッチ用フィルム部材50の端部50aにおいて露出している第1スイッチ配線53に異方性を有する導電性接着剤B(斜線で示す部分)を塗布する。そして、図12(B)に示すように、右側のスイッチ用フィルム部材50の第1スイッチ配線53の上に、左側のスイッチ用フィルム部材50の第1スイッチ配線53とコネクタ用フィルム部材20の第1コネクタ配線21をずらして配置して接合する。さらに、ずれて配置されている左側のスイッチ用フィルム部材50の第2スイッチ配線54の上に、コネクタ用フィルム部材20の第2コネクタ配線22と右側のスイッチ用フィルム部材50の第2スイッチ配線54を切り込みを跨がせて配置して接合してY字状にする。なお、異方性を有しない導電性接着剤で各端部50a,50a,20aを電気的・機械的に接着することもできる。最後に、可撓性を有する樹脂フィルムで矩形状に形成された2枚のシート部材30により上記接合部位を厚み方向の両側から挟み込み、粘着剤、加熱圧着により接着性を発する接着剤により接着もしくは前述した方法により溶着する。
【0045】
ここで、着座検知装置1の配置によってはスイッチ用フィルム部材10,50及びコネクタ用フィルム部材20,60を延長して使用したい場合がある。このような場合に使用する延長用フィルム部材の構成は、第1実施例のコネクタ用フィルム部材20もしくは第2実施例のコネクタ用フィルム部材60と同様である。以下に、延長用フィルム部材とコネクタ用フィルム部材20,60との接合方法について、図を参照して説明する。なお、延長用フィルム部材とスイッチ用フィルム部材10,50との接合方法は同様であるため説明を省略する。
【0046】
図13(A)に示すように、延長用フィルム部材70と第1実施例のコネクタ用フィルム部材20とを接合する場合は、先ず、コネクタ用フィルム部材20を第1フィルムシート23が表となるように配置し、端部20aの第1コネクタ配線21が第2コネクタ配線22よりも突出するように切断し、各端部20aの第2フィルムシート24を矩形状に剥離する。延長用フィルム部材70を第2フィルムシート74が表となるように配置し、端部70aの第2延長用配線72が第1延長用配線71よりも突出するように切断し、各端部70aの第2フィルムシート74を矩形状に剥離する。そして、コネクタ用フィルム部材20の端部20aにおいて露出している第1コネクタ配線21及び第2コネクタ配線22に異方性を有する導電性接着剤B(斜線で示す部分)を塗布する。
【0047】
次に、図13(B)に示すように、コネクタ用フィルム部材20の端部20aの第1コネクタ配線21及び第2コネクタ配線22の下に、延長用フィルム部材70の端部70aの第1延長用配線71及び第2延長用配線72を配置して接合する。なお、異方性を有しない導電性接着剤で各端部20a,70aを電気的・機械的に接合することもできる。最後に、可撓性を有する樹脂フィルムで矩形状に形成された2枚のシート部材30により上記接合部位を厚み方向の両側から挟み込み、粘着剤、加熱圧着により接着性を発する接着剤により接着もしくは前述した方法により溶着する。
【0048】
また、図14(A)に示すように、延長用フィルム部材80と第2実施例のコネクタ用フィルム部材60とを接合する場合は、先ず、コネクタ用フィルム部材60を第1フィルムシート63が表となるように配置し、端部60aの第1コネクタ配線61が第2コネクタ配線62よりも突出するように切断し、各端部60aの第2フィルムシート64を矩形状に剥離する。延長用フィルム部材80を第2フィルムシート84が表となるように配置し、端部80aの第2延長用配線82が第1延長用配線81よりも突出するように切断し、各端部80aの第2フィルムシート84を矩形状に剥離する。そして、コネクタ用フィルム部材60の端部60aにおいて露出している第1コネクタ配線61及び第2コネクタ配線62に異方性を有する導電性接着剤B(斜線で示す部分)を塗布する。
【0049】
次に、図14(B)に示すように、延長用フィルム部材80の端部80aの第1延長用配線81の上にコネクタ用フィルム部材60の端部60aの第1コネクタ配線61を配置すると共に、コネクタ用フィルム部材60の端部60aの第2コネクタ配線62の上に延長用フィルム部材80の端部80aの第2延長用配線82を配置して接合する。なお、異方性を有しない導電性接着剤で各端部60a,80aを電気的・機械的に接合することもできる。最後に、可撓性を有する樹脂フィルムで矩形状に形成された2枚のシート部材30により上記接着部位を厚み方向の両側から挟み込み、粘着剤、加熱圧着により接着性を発する接着剤により接着もしくは前述した方法により溶着する。
【0050】
以上の方法により延長用フィルム部材70,80とコネクタ用フィルム部材20,60とを接合することができるが、さらに該接合部位を補強したい場合について、以下に図を参照して説明する。図15(A)に示すように、コネクタ用フィルム部材20(60)の端部20a(60a)の両側において、外側へ張り出る形状(この例では半円形状)の張出部29(69)を形成する。この張出部29(69)は、第1フィルムシート23(63)及び第2フィルムシート24(64)のいずれか一方もしくは両方に一体形成する。また、延長用フィルム部材70(80)の端部70a(80a)において、上記張出部29(69)が嵌め込み可能な形状の切欠部79(89)を形成する。そして、図15(B)に示すように、図13,14において説明した方法により延長用フィルム部材70(80)とコネクタ用フィルム部材20(60)とを接合するときに、張出部29(69)を切欠部79(89)に嵌め込む。これにより張出部29(69)は切欠部79(89)に対し抜け難くなるので、該接合部位を補強することができる。
【0051】
上述した実施形態の着座検知装置1は、一対のスイッチ用フィルム部材10,50及びコネクタ用フィルム部材20,60の組み合わせ、即ち3つのフィルム部材を組み合わせて作成したが、一対のスイッチ用フィルム部材10,50のみの組み合わせ、即ち2つのフィルム部材を組み合わせて作成することも可能である。例えば図16に示すように、一対のスイッチ用フィルム部材10(50)の一方のスイッチ用フィルム部材10(50)を長尺に形成してコネクタ用フィルム部材20(60)の機能も併せて持たせ、他方のスイッチ用フィルム部材10(50)を一方のスイッチ用フィルム部材10(50)の中間に前述した各方法によりY字状(図16(A))もしくはT字状(図16(B))に接合する。このようにして作成された着座検知装置1A,1Bであっても着座検知装置1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
以上のように、本実施形態の着座検知装置1によれば、スイッチ用フィルム部材10,50とコネクタ用フィルム部材20,60を帯状(I字状)に夫々作成し、一対のスイッチ用フィルム部材10,50と一つのコネクタ用フィルム部材20,60が例えばY字状となるように、かつ各フィルム部材端部10a,50a,20a,60aにおいて各スイッチ配線13,14,53,54と各コネクタ配線21,22,61,62とが電気的に接続するように配置し、配置した各フィルム部材端部10a,50a,20a,60aを導電性接着剤Bで電気的・機械的に接合すると共にシート部材30で覆った構成としている。
【0053】
このようにI字状の各フィルム部材端部10a,50a,20a,60aを導電性接着剤Bで電気的・機械的に接合してY字状の着座検知装置1を作成しているため、従来のE字状のフィルム部材からY字状の着座検知装置を作成するためのブロックが不要となる。よって、本実施形態の着座検知装置1は突出部の無い平面的な構造となっているため、この着座検知装置1を取り付けた車両シート2に着座した乗員は異物感による不快さを感じ難くなると共に、この着座検知装置1の車両シート2に対する配置自由度を高めることができる。さらに、従来の着座検知装置のブロックが不要となるので、部品点数の増加によるコスト増や重量増を抑えることができる。
【0054】
そして、接合した各フィルム部材端部10a,50a,20a,60aを可撓性を有するシート部材30で覆っており、着座検知装置1が取り付けられた車両シート2に乗員が着座したときは各フィルム部材端部10a,50a,20a,60aと共にシート部材30も撓むため、乗員は異物感による不快さを殆ど感じなくなると共に、着座検知装置1の車両シート2に対する配置自由度をさらに高めることができる。そして、着座検知装置1はY字状に形成されているため、着座面4を広範囲にわたって検知領域とすることができ、乗員が車両シート2に着座するときの状態に拘わらず乗員を的確に検知することができる。また、各フィルム部材10,50,20,60はフィルムシートをI字状の形状で打ち抜くことにより形成されるため、歩留まりを向上させることができる。
【0055】
また、シート部材30を可撓性を有する樹脂フィルムで形成しているので、各フィルム部材端部10a,50a,20a,60aの接合部位の機械的強度を向上させることができ、乗員が車両シート2に着座するときの着座面4の圧力変化が繰り返されても、接合した各フィルム部材端部10a,50a,20a,60aの剥離を防止することができる。さらに、該接合部位は可撓性を有する樹脂フィルムでなるシート部材30で覆われるのでシール性も向上するため、例えば水分等の浸入を防止することができる。また、上記接合部位における一対のスイッチ用フィルム部材10,10,50,50のうち一方のスイッチ配線13,14,53,54の形成面に対し、他方のスイッチ配線13,14,53,54の形成面と、コネクタ配線21,22,61,62の形成面とを対向させ、かつ並べて接合しているので、該接合部位におけるフィルム重ね合わせ枚数は2枚となる。よって、接合部位を薄型化することができ、乗員は異物感による不快さを殆ど感じなくなると共に、着座検知装置1の車両シート2に対する配置自由度をさらに高めることができる。
【0056】
また、スイッチ用フィルム部材10,50もしくはコネクタ用フィルム部材20,60に延長用フィルム部材70,80を接合して延長する場合、対となっているスイッチ配線13,14,53,54の端部もしくはコネクタ配線21,22,61,62の端部の一方を突出形成すると共に、対となっている延長用配線71,72,81,82の端部のうち、突出形成したスイッチ配線の端部もしくはコネクタ配線の端部とは逆側となる端部を突出形成し、突出形成した端部と突出形成していない端部とを接続するようにしている。このため、該接続部位におけるフィルム重ね合わせ枚数は2枚となるので接続部位を薄型化することができ、乗員は異物感による不快さを殆ど感じなくなると共に、着座検知装置の車両シートに対する配置自由度をさらに高めることができる。また、検知部を持たないコネクタ用フィルム部材20,60や延長用フィルム部材70,80は、フィルム2枚の貼り合わせ構造とすることができ、低コスト化が図れる。
【0057】
なお、上述した実施形態では、スイッチ用フィルム部材10,50とコネクタ用フィルム部材20,60との接合部位もしくはこれらのフィルム部材10,50,20,60と延長用フィルム部材70,80との接合部位の機械的強度を向上させるために、可撓性を有する樹脂フィルムでなるシート部材30で挟み込むようにしたが、布や紙等でなるシート部材で挟み込むようにしても良い。また、樹脂フィルムの代わりにホットメルトモールディングでも良い。また、該接合部位の機械的強度が粘着剤、加熱圧着により接着性を発する接着剤のみにより得られる場合は、該接合部位をシート部材30で挟み込まない構成としても良い。また、異なる種類のフィルム部材を組み合わせて用いることにより、検知範囲、検知感度等の要求に対応し易くなる。例えば、Y字の角度を小さくしたり大きくしたりすることで検知範囲を狭めたり広げたりすることができる。また、複数のフィルム部材を組み合わせるときの組み合わせ数は限定されず任意に選択することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B…着座検知装置、2…車両シート、10,50…スイッチ用フィルム部材、11,51…感圧スイッチ、11a,51a…第1電極、11b,51b…第2電極、11c…第3電極、13,53…第1スイッチ配線、14,54…第2スイッチ配線、16,56…第1フィルムシート、17,57…第2フィルムシート、18,58…中間フィルムシート、18a,58a…開口部、18b,58b…スリット部、20,60…コネクタ用フィルム部材、21,61…第1コネクタ配線、22,62…第2コネクタ配線、23,63…第1フィルムシート、24,64…第2フィルムシート、29,69…張出部、30…シート部材、40…コネクタ、70,80…延長用フィルム部材、71,81…第1延長用配線、72,82…第2延長用配線、73,83…第1フィルムシート、74,84…第2フィルムシート、79,89…切欠部、B…導電性接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両シートの着座面に配置して乗員の着座を検知する複数の感圧スイッチ及び該感圧スイッチを並列に接続するスイッチ配線が長手方向に形成された一対の帯状のスイッチ用フィルム部材と、
一端が前記各スイッチ配線の端部と接続し、他端がコネクタと接続するコネクタ配線が長手方向に形成された帯状のコネクタ用フィルム部材とを備え、
前記各スイッチ配線と前記コネクタ配線との接続部位における前記一対のスイッチ用フィルム部材の端部と前記コネクタ用フィルム部材の端部とは導電性接着剤により電気的・機械的に接合され、さらに当該接合部位が可撓性を有するシート部材により覆われていることを特徴とする着座検知装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記シート部材は、可撓性を有する樹脂フィルム又はホットメルトモールディングであることを特徴とする着座検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記接合部位における一対の前記スイッチ用フィルム部材のうち一方の前記スイッチ配線の形成面に対し、他方の前記スイッチ配線の形成面と前記コネクタ配線の形成面とを対向させ、かつ並べて接合したことを特徴とする着座検知装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
前記スイッチ配線の端部もしくは前記コネクタ配線の端部と接続する延長用配線が長手方向に形成されており、当該接続部位における前記スイッチ用フィルム部材の端部もしくは前記コネクタ用フィルム部材の端部を前記導電性接着剤により電気的・機械的に接合し、さらに当該接合部位を前記シート部材により覆うことにより前記スイッチ用フィルム部材もしくは前記コネクタ用フィルム部材を延長する帯状の延長用フィルム部材を備え、
対となっている前記スイッチ配線の端部もしくは前記コネクタ配線の端部の一方を突出形成すると共に、対となっている前記延長用配線の端部のうち、突出形成した前記スイッチ配線の端部もしくは前記コネクタ配線の端部とは逆側となる端部を突出形成し、突出形成した端部と突出形成していない端部とを接続するようにしたことを特徴とする着座検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−175312(P2010−175312A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16409(P2009−16409)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】