説明

着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナとその製造方法およびそれを用いた送電鉄塔

【課題】高耐久性で且つ厳冬期の着氷着雪防止効果が極めて高い碍子及び電線、アンテナを提供する。
【解決手段】少なくとも基材表面に微粒子融着用の被膜を形成する工程と、前記被膜を溶解させない溶媒に微粒子を分散した微粒子液を塗布、乾燥する工程と、焼成する工程と、前期被膜に融着しなかった微粒子を洗浄除去する工程と、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含む着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法、あるいは少なくとも基材表面に溶媒に微粒子を分散した微粒子液を塗布、乾燥する工程と、焼成する工程と、前期被膜に融着しなかった微粒子を洗浄除去する工程と、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含む着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐久性で且つ撥水撥油防汚性の被膜が表面に形成された着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナに関するものである。さらに、それを用いた送電鉄塔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にフッ化炭素基含有クロロシラン系の吸着剤と非水系の有機溶媒よりなる化学吸着液を用い、液相で化学吸着して単分子膜状の撥水撥油防汚性化学吸着膜を形成できることはすでによく知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような溶液中での化学吸着単分子膜の製造原理は、基材表面の水酸基などの活性水素とクロロシラン系の吸着剤のクロロシリル基との脱塩酸反応を用いて単分子膜を形成することにある。
【特許文献1】特開平02−258032号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の化学吸着膜は吸着剤と平坦な基材表面との化学結合のみを用いているため、水滴接触角は高々120度程度止まりであり、蓮の葉のように水滴や汚れが自然に除去されるためには、撥水撥油防汚性や離水性、さらに着氷着雪防止性能が乏しいという課題があった。また、耐摩耗性や耐候性等の耐久性も乏しいという課題があった。
【0005】
本発明は、前記現状に鑑み、高耐久性で且つ高着氷着雪防止機能が要求される碍子及び電線、アンテナおよびそれらを用いた送電鉄塔において、表面エネルギーが2mN/m以下の表面を実現し、厳冬期の着氷着雪防止効果が極めて高い碍子及び電線、アンテナを提供することを目的とする。
なお、このような物性値を実現できれば、雨量計を含む各種気象観測機器の着氷着雪防止、液体窒素タンクや液体酸素タンクの取り出しの部の着氷防止、あるいはスペースシャトルの外部燃料タンクの着氷防止等にも適用可能となり、着氷が原因で起こる事項の防止には効果絶大である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として提供される第1の発明は、基材表面が直接あるいは微粒子融着用の被膜を介して融着した撥水撥油防汚性微粒子と撥水撥油防汚性被膜で覆われていることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナである。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、融着された撥水撥油防汚性微粒子の一部分の表面が撥水撥油防汚性の被膜で被われており、且つ他の部分が基材表面に直接あるいは微粒子融着用の被膜を介して融着固定されていることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナである。
【0008】
第3の発明は、第1の発明において、撥水撥油防汚性微粒子として、粒径の異なる微粒子が混合して用いられていることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナである。
【0009】
第4の発明は、第1〜3の発明において、少なくとも撥水撥油防汚性の被膜が微粒子および基材あるいは微粒子と微粒子融着用の被膜の露出部に共有結合していることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナである。
【0010】
第5の発明は、第4の発明において、撥水撥油防汚性の被膜が−CF基を含むことを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナである。
【0011】
第6の発明は、第1〜5の発明において、微粒子が基材あるいは微粒子融着用の被膜より軟化温度が高い樹脂、金属、あるいはセラミクスであることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナである。
【0012】
第7の発明は、第1〜6の発明において、表面の水に対する接触角が130度以上に制御されていることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナである。
【0013】
第8の発明は、第1〜7の発明において、微粒子融着用の被膜が樹脂膜、シリカ系ガラス膜、または釉膜であることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナである。
【0014】
第9の発明は、第1〜8の発明において、基材がセラミック、または銅、アルミニウムであことを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナである。
【0015】
第10の発明は、第1〜9の発明において、請求項1乃至請求項9記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナを装着したことを特徴とする送電鉄塔である。
【0016】
第11の発明は、少なくとも基材表面に微粒子融着用の被膜を形成する工程と、前記被膜を溶解させない溶媒に微粒子を分散した微粒子液を塗布、乾燥する工程と、焼成する工程と、前期被膜に融着しなかった微粒子を洗浄除去する工程と、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含むことを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法である。
【0017】
第12の発明は、第11の発明において、微粒子融着用の被膜を形成する工程において、ゾルゲル法を用いることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法である。
【0018】
第13の発明は、第11および12の発明において、焼成する雰囲気として酸素を含む雰囲気を用い、焼成温度が基材と微粒子の両方の軟化温度未満であることを特徴とする記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法である。
【0019】
第14の発明は、第11〜13の発明において、被膜を溶解させない溶媒が有機溶媒を含ことを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法である。
【0020】
第15の発明は、第11〜14の発明において、基材として、セラミック、または銅、アルミニウム、微粒子融着用の被膜として樹脂膜またはシリカ系ガラス膜を用い、加熱して前記微粒子と前期樹脂膜またはシリカ系ガラス膜表面を融着することを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法である。
【0021】
第16の発明は、第11〜15の発明において、加熱または酸素を含む雰囲気中で焼成して前記微粒子と前期樹脂膜、シリカ系ガラス膜、または釉膜表面を融着することを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法である。
【0022】
第17の発明は、少なくとも基材表面に溶媒に微粒子を分散した微粒子液を塗布、乾燥する工程と、焼成する工程と、前期被膜に融着しなかった微粒子を洗浄除去する工程と、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含むことを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法である。
【0023】
第18の発明は、第17の発明において、焼成する工程における加熱温度が基材軟化温度以上で且つ微粒子の軟化温度未満であることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法である。
【0024】
第19の発明は、第11〜18の発明において、塗布時の微粒子の表面が有機薄膜で被われていることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法である。
【0025】
第20の発明は、第11〜19の発明において、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程において、フッ化炭素基とトリクロロシリル基を含むクロロシラン系化合物と非水系の有機溶媒を混合するか、フッ化炭素基とイソシアネート基を含むイソシアネート系化合物と非水系の有機溶媒を混合するか、あるいはフッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン系化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合するかして作成した化学吸着液と表面に微粒子を融着させた着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナを接触させて撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含むことを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法である。
【0026】
第21の発明は、第11〜20の発明において、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程において、接触後、余分な化学吸着液を洗浄除去する工程を含むことを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法である。
【0027】
第22の発明は、第11〜21の発明において、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、金属酸化物、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とするに記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法である。
【0028】
さらに詳しくは、本発明は、少なくとも基材表面に微粒子融着用の被膜を形成する工程と、前記被膜を溶解させない溶媒に微粒子を分散した微粒子液を塗布、乾燥する工程と、焼成する工程と、前期被膜に融着しなかった微粒子を洗浄除去する工程と、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程により、基材表面が直接あるいは微粒子融着用の被膜を介して融着した撥水撥油防汚性微粒子と撥水撥油防汚性被膜で覆われていることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナを提供するものである。
【0029】
ここで、融着された撥水撥油防汚性微粒子の一部分の表面が撥水撥油防汚性の被膜で被われており、且つ他の部分が基材表面に直接あるいは微粒子融着用の被膜を介して融着固定されていると耐久性に優れた着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナを提供する上で都合がよい。
また、撥水撥油防汚性微粒子として、粒径の異なる微粒子が混合して用いられていると、着氷着雪防止効果を高める上で都合がよい。
【0030】
さらに、少なくとも撥水撥油防汚性の被膜が微粒子および基材あるいは微粒子と微粒子融着用の被膜の露出部に共有結合していると、耐久性に優れた着氷 着雪防止碍子及び電線、アンテナを提供する上で都合がよい。
また、撥水撥油防汚性の被膜が−CF基を含むと、着氷着雪防止効果を高める上で都合がよい。
【0031】
さらにまた、微粒子が基材あるいは微粒子融着用の被膜より軟化温度が高い樹脂、金属、セラミクスであると、加熱工程で微粒子の形状を損なうことがないので製造上都合がよい。
また、表面の水に対する接触角が130度以上に制御されていると、着氷着雪防止効果に優れた碍子及び電線、アンテナを提供できて都合がよい。
また、微粒子融着用の被膜が樹脂膜、シリカ系ガラス膜、または釉膜であると、微粒子を固定する上で都合がよい。
また、基材がセラミック、または銅、アルミニウムであと、碍子あるいは電線、アンテナとして都合がよい。
【0032】
さらに、前記着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナを送電鉄塔に装着すると雪害を低減できて都合がよい。
一方、このとき、微粒子融着用の被膜を形成する工程において、ゾルゲル法を用いると、微粒子を固定する上で都合がよい。
また、焼成する雰囲気として酸素を含む雰囲気を用い、焼成温度が基材と微粒子の両方の軟化温度未満であると、耐久性の高い着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナを製造できて都合がよい。
また、被膜を溶解させない溶媒が有機溶媒を含むと、工程を簡略化する上で都合がよい。
【0033】
さらに、基材として、セラミック、または銅、アルミニウム、微粒子融着用の被膜として樹脂膜またはシリカ系ガラス膜を用い、加熱して前記微粒子と前期樹脂膜またはシリカ系ガラス膜表面を融着すると、耐久性の高い被膜を形成できて都合がよい。
また、加熱または酸素を含む雰囲気中で焼成して前記微粒子と前期樹脂膜、シリカ系ガラス膜、または釉膜表面を融着すると耐久性の高い被膜を形成する上で都合がよい。
また、少なくとも基材表面に溶媒に微粒子を分散した微粒子液を塗布、乾燥する工程と、焼成する工程と、前期被膜に融着しなかった微粒子を洗浄除去する工程と、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含むと、着氷着雪防止効果の高い碍子及び電線、アンテナを製造する上で都合がよい。
また、焼成する工程における加熱温度が基材軟化温度以上で且つ微粒子の軟化温度未満であると、耐久性の高い被膜を形成する上で都合がよい。
【0034】
さらにまた、塗布時の微粒子の表面が有機薄膜で被われていると、微粒子の分酸性を向上できて都合がよい。
また、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程において、フッ化炭素基とトリクロロシリル基を含むクロロシラン系化合物と非水系の有機溶媒を混合するか、フッ化炭素基とイソシアネート基を含むイソシアネート系化合物と非水系の有機溶媒を混合するか、あるいはフッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン系化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合するかして作成した化学吸着液と表面に微粒子を融着させた着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナを接触させて撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含むと、着氷着雪防止単分子膜を形成する上で都合がよい。
【0035】
また、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程において、接触後、余分な化学吸着液を洗浄除去する工程を含むと、着氷着雪防止効果の高い碍子及び電線、アンテナを製造する上で都合がよい。
また、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、金属酸化物、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いると、製膜時間を短縮する上で都合がよい。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したとおり、本発明によれば、撥水撥油防汚性能、離水性能、着氷着雪防止性能が高い着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナおよびそれを用いた雪害に強い送電鉄塔を提供できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明は、少なくとも基材表面に微粒子融着用の被膜を形成する工程と、前記被膜を溶解させない溶媒に微粒子を分散した微粒子液を塗布、乾燥する工程と、焼成する工程と、前期被膜に融着しなかった微粒子を洗浄除去する工程と、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程により、基材表面が直接あるいは微粒子融着用の被膜を介して融着した撥水撥油防汚性微粒子と撥水撥油防汚性被膜で覆われていることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナを提供するものである。
【0038】
したがって、本発明には、着氷着雪防止機能が要求される優れた着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナを提供できる作用がある。また、それを用いた送電鉄塔を提供できる作用がある。
【0039】
以下、本願発明の詳細を実施例を用いて説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0040】
なお、本発明に関する着氷着雪防止の用途には、碍子及び電線、アンテナがあるが、代表例として以下セラミック製の碍子を取り上げて説明する。
【実施例1】
【0041】
あらかじめ、一端にフッ化炭素基(−CF)を含み他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、CF(CF27(CH22Si(OCH)3で示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナートを1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に1重量%程度の濃度(好ましい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)に溶かして化学吸着液を作成した。
【0042】
一方、大きさが5μm程度の透明シリカ微粒子1(アルミナやジルコニアの微粒子でも良い。また、着氷着雪効果を高めるためには、大きさは、可視光波長(380〜700nm)より大きい方がよく、着氷着雪防止効果を高くするには小さい方がいいので、好ましくは、粒径が100〜1μm、より好ましくは10〜1μmであった。なお、形状は、球形でも異形でも問題はなかった。)を用意して、よく乾燥した後、前記化学吸着液に混ぜ込み、普通の空気中(相対湿度45%)で撹拌しながら1時間程度反応させた。このとき、前記シリカ微粒子1の表面には水酸基2が多数含まれているの(図1(a))で、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基2がシラノール縮合触媒の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記化学式(化2)に示したような結合を形成し、シリカ微粒子1の表面全面に亘り下記式(化1)で示されるフッ化炭素基を含む化学吸着単分子膜3が表面と化学結合し状態で約1ナノメートル程度の膜厚で形成される。
【0043】
その後、クロロホルム等の塩素系溶媒で余分な未反応の吸着液を洗浄除去すると、表面全面に亘り表面と化学結合したフッ化炭素基を含む化学吸着単分子膜で被われた表面が撥油性のシリカ微粒子を製造できた(図1(b))。
【0044】
【化1】

【0045】
そこで、この微粒子を有機溶媒であるキシレン中に重量比で1%分散して微粒子液を作成した。
【0046】
一方、焼成するとシリカ系ガラスになるアルコキシシリル基を含む薬剤として、例えば、テトラメトキシシラン(Si(OCH))と、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナートをそれぞれモル比で99:1となるよう秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に合計で2重量%程度の濃度(好ましい濃度は、0.5〜3%程度)で溶かして調整してシリカ塗布液を作成した。前記塗布液の代わりに、アルコール溶媒のシリカゾル液で微粒子融着用の被膜を形成できる市販の薬液を用いても良い。また、リンやボロンを含む低融点型も市販されている。
【0047】
その後、碍子5(銅やアルミニウム繊でも同様であった。)表面に塗布し溶剤を蒸発させると、テトラメトキシシランが加水分解し脱アルコール反応して膜厚500nm程度の多量の水酸基を含むシリカ系微粒子融着用の被膜6が形成された(図2)。
【0048】
次に、この基板表面に前記微粒子液を塗布し、溶媒を蒸発させると多数の単分子膜被覆微粒子4が乗った碍子が製造できた(図3(a))。
【0049】
次に、この碍子を酸素を含む空気中で500℃で30分焼成した後、純水で洗浄すると、微粒子表面のフッ化炭素基を含む化学吸着単分子膜は分解除去され、シリカ系ガラス膜6に融着しなかったシリカ微粒子1は除去され、強固に融着結合したシリカ微粒子1’のみが単層状で碍子表面に残った(図3(b))。
【0050】
なお、ここで、焼成温度を250〜350℃で行うと、単なるシリカ系ガラス膜の焼成焼きしめで終わるが、400℃を超えると前述のように単分子膜を完全に分解除去でき、微粒子は融着した。
【0051】
また、酸素を含む雰囲気中での焼成温度は、250℃以上乃至基材の軟化温度未満であれば高いほど微粒子を強固に基材表面に融着できるが、あまり高すぎるとシリカ系微粒子融着用の被膜中、あるいは基材中にシリカ微粒子がとけ込み埋没してしまった。
【0052】
一方、このとき、微粒子表面のフッ化炭素基を含む化学吸着単分子膜は、シリカ微粒子の表面エネルギーを小さくする作用があり、微粒子液内での凝集を押さえ、分散性を向上できる効果があった。微粒子表面のフッ化炭素基を含む化学吸着単分子膜を形成してない場合でも、大きな支障はなかったが、融着したシリカ微粒子1’膜の欠陥密度はやや大きかった。
【0053】
また、微粒子液の溶媒がキシレンのような有機系溶媒ではなくて、アルコール系あるいは水系の場合には、微粒子表面に撥水撥油防汚性の単分子膜として、例えば、下記式(化2)で示したような親油性ではあるが撥水撥油防汚性の被膜を形成しておいても、同様の機能を発現できた。
【0054】
【化2】

【0055】
さらにまた、あらかじめバインダー層となるシリカ系微粒子融着用の被膜6を省略しても、加熱温度を基材の軟化温度以上、例えば、釉薬で被われた碍子の場合は、そのまま微粒子を塗布し、空気中で650℃30分の加熱を行えば、シリカ微粒子を基材表面に融着固定できた。
なお、このときも、シリカ微粒子表面の化学吸着単分子膜は完全に分解除去されたが、シリカ微粒子そのものは、融点が700℃より遙かに高いため、互いに融着することはなかった。
また、シリカ塗布液の調整時、リン酸または硼酸をそれぞれ数パーセント添加しておくとリンシリケートガラス(PSG)や(ボロンシリケートガラスBSG)になるため焼成温度を最低で350℃まで低減しても強度を損なうことなく同様の表面粗さの着氷着雪防止碍子を製造できた。
【0056】
最後に、前記凸凹基材表面に前記微粒子の場合と同様のフッ化炭素系の化学吸着液を塗布し2時間程度反応させた後、クロロホルム等の塩素系溶媒で余分な未反応の吸着液を洗浄除去すると、凸凹基材表面全面に亘り、表面と化学結合したフッ化炭素基を含む化学吸着単分子膜8を形成でき、融着された撥水撥油防汚性微粒子とフッ化炭素基を含む撥水撥油防汚性被膜で覆われた水滴接触角がおよそ140度の着氷着雪防止効果の高い碍子10を製造できた。(図3(c))。
【0057】
このとき、大きさが異なる100〜1μm程度の微粒子を混合して用いると、さらに撥水撥油防汚性能と着氷着雪防止性能が高い碍子が得られた。着氷着雪効果を高めるためには、微粒子の大きさは、可視光波長(380〜700nm)より大きい方がよく、防汚効果を高くするには小さい方がいいので、好ましくは、粒径が100〜1μm、より好ましくは10〜1μmであった。なお、形状は、球形でも異形でも問題はなかった。
【0058】
なお、ここで、碍子5表面のシリカ微粒子1’は、シリカ系ガラス膜6を介して碍子表面に融着固定されており、前記融着されシリカ系微粒子の露出した表面およびシリカ系微粒子融着用の被膜の露出した表面は、全面フッ化炭素基を含む撥水撥油防汚性の被膜8で被われている。また、表面のシリカ微粒子1の大きさは、ミクロンレベルであり、フッ化炭素基を含む化学吸着単分子膜8は1nm程度の膜厚であるため、前記凸凹基板の凸凹を損なうことは全くなく、蓮の葉効果により水滴接触角がおよそ140度の超撥水を実現できた。
【実施例2】
【0059】
一方、大きさの異なる微粒子、例えば5μm程度の微粒子と50nmの微粒子を1:10程度に混合して用い、前述と同様の方法で着氷着雪防止碍子及び電線を製造すると、表面がフラクタル構造の撥水撥油防汚膜となり、水滴接触角がおよそ155度のより着氷着雪防止効果が高い碍子11を製造できた(図4)。
このように、粒径が100〜1μmの微粒子に、500〜10nm程度の微粒子を混合(例えば、1:10〜50の混合比で)して用いておけば、理想的なフラクタル構造の表面粗さを実現でき、着氷着雪防止効果をより一層向上できた。添加する微粒子の大きさが1000〜10nmの微粒子であれば、形状はどのようなものでも効果があり、さらに撥水撥油防汚性に優れた着氷着雪防止碍子が得られた。
【0060】
なお、上記実施例1および2では、撥油性の単分子膜形成用の薬剤として、フッ化炭素系化学吸着剤であるCF3(CF(CHSi(OCHを用いたが、上記のもの以外にも、下記(1)〜(12)に示した物質が利用できた。
【0061】
(1) CF3CH2O(CH2)15Si(OCH)3
(2) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15Si(OCH)3
(3) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH)3
(4) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH)3
(5) CF3COO(CH2)15Si(OCH)3
(6) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH)3
(7) CF3CH2O(CH2)15Si(OC)3
(8) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15Si(OC)3
(9) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC)3
(10) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC)3
(11) CF3COO(CH2)15Si(OC)3
(12) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC)3
【0062】
また、微粒子の分酸性を向上する目的で使用する親油性ではあるがシリカ膜に比べて表面エネルギーを低減できる薬剤として、炭化水素系化学吸着剤であるCH3(CHSi(OCHを利用できたが、前記以外にも、下記(21)〜(32)に示した物質が利用できた。
【0063】
(21) CH3CH2O(CH2)15Si(OCH)3
(22) CH3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15Si(OCH)3
(23) CH3(CH2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH)3
(24) CH3(CH2)Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH)3
(25) CH3COO(CH2)15Si(OCH)3
(26) CH3(CH2)Si(OCH)3
(27) CH3CH2O(CH2)15Si(OC)3
(28) CH3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15Si(OC)3
(29) CH3(CH2)Si(CH3)2(CH2)9Si(OC)3
(30) CH3(CH2)Si(CH3)2(CH2)9Si(OC)3
(31) CH3COO(CH2)15Si(OC)3
(32) CH3(CH2)Si(OC)3
【0064】
また、実施例1および2に置いて、シラノール縮合触媒には、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート類が利用可能である。さらに具体的には、酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタン酸第1錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄、ジオクチル錫ビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチル錫マレイン酸エステル塩、ジブチル錫マレイン酸塩ポリマー、ジメチル錫メルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチル錫ビスアセチルアセテート、ジオクチル錫ビスアセチルラウレート、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート及びビス(アセチルアセトニル)ジープロピルチタネートを用いることが可能であった。
【0065】
なお、実施例1および2に於いて、シラノール縮合触媒を用いない場合には、下記(41)〜(52)に示した物質が利用できた。
【0066】
(41) CF3CH2O(CH2)15SiCl3
(42) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15SiCl3
(43) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(44) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(45) CF3COO(CH2)15SiCl3
(46) CF3(CF2)5(CH2)2Si(NCO)3
(47) CF3CH2O(CH2)15Si(NCO)3
(48) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15Si(NCO)3
(49) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(NCO)3
(50) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(NCO)3
(51) CF3COO(CH2)15Si(NCO)3
(52) CF3(CF2)5(CH2)2Si(NCO)3
【0067】
また、膜形成溶液の溶媒としては、化学吸着剤がアルコキシシラン系、クロロシラン系何れの場合も、水を含まない有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、あるいはフッ化炭素系溶媒やシリコーン系溶媒、あるいはそれら混合物を用いることが可能であった。なお、洗浄を行わず、溶媒を蒸発させて粒子濃度を上げようとする場合には、溶媒の沸点は50〜250℃程度がよい。
【0068】
具体的に使用可能な溶媒は、クロロシラン系の場合は、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0069】
さらに、吸着剤がアルコキシシラン系の場合で且つ溶媒を蒸発させて有機被膜を形成する場合には、前記溶媒に加え、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれら混合物が使用できた。
【0070】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0071】
一方、上述のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物又は有機酸、TiO等の金属酸化物、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いた場合、同じ濃度でも処理時間を半分〜2/3程度まで短縮できた。
【0072】
さらに、シラノール縮合触媒とケチミン化合物、又は有機酸、TiO等の金属酸化物、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を混合(1:9〜9:1範囲で使用可能だが、通常1:1前後が好ましい。)して用いると、処理時間をさらに数倍早くでき、製膜時間を数分の一まで短縮できる。
【0073】
例えば、シラノール触媒であるジブチル錫オキサイドをケチミン化合ものであるジャパンエポキシレジン社のH3に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を1時間程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0074】
さらに、シラノール触媒を、ケチミン化合ものであるジャパンエポキシレジン社のH3と、シラノール触媒であるジブチル錫ビスアセチルアセトネートの混合物(混合比は1:1)に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を20分程度に短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0075】
したがって、以上の結果から、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物がシラノール縮合触媒より活性が高いことが明らかとなった。
【0076】
さらにまた、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物の内の1つとシラノール縮合触媒を混合して用いると、さらに活性が高くなることが確認された。
【0077】
なお、ここで、利用できるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等がある。
【0078】
また、利用できる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、ラク酸、マロン酸等があり、ほぼ同様の効果があった。
また、上記2つの実施例では、シリカ微粒子を例として説明したが、本発明は、表面に活性水素、すなわち水酸基の水素やアミノ基あるいはイミノ基の水素などを含んだ微粒子で有れば、どのような微粒子でも選択可能である。
【0079】
具体的には、基材がセラミックスや金属であれば、微粒子融着用の被膜に各種低融点樹脂やゾル−ゲル法を用いたシリカ系被膜を用い、微粒子には、前記微粒子融着用の被膜樹脂より融点が高い樹脂微粒子、ガラス微粒子、アルミナ微粒子やジルコニア微粒子、金属微粒子、マイカ微粒子が使用できた。
【0080】
例えば、表面が親水性の樹脂微粒子であるナイロン微粒子でも、微粒子融着用の被膜としてより融点が低い酢酸ビニル樹脂等を用い、溶剤系に基材や微粒子を溶解しないアルコールを用いれば、同様の着氷着雪防止碍子や電線を製造できた。
【0081】
また、基材が、金属、またはセラミックスであれば、微粒子融着用の被膜に各種低融点樹脂やゾル−ゲル法を用いたシリカ系被膜や釉膜を用い、微粒子には、前記微粒子融着用の被膜樹脂より融点が高い樹脂微粒子、ガラス微粒子、アルミナ微粒子やジルコニア微粒子、金属微粒子、マイカ微粒子が使用できた。
なお、雨量計のような気象観測機器のステンレス部品では、同様の処理で着氷着雪効果を大幅に向上できた。
【0082】
さらにまた、基材がガラス、金属、またはセラミックスであれば、微粒子融着用の被膜にゾル−ゲル法を用いたシリカ系被膜や釉膜を用い、顔料、金属微粒子、あるいはマイカ微粒子を混合しておくことで任意のパターンに着色できた。
【実施例3】
【0083】
実施例2で作成した着氷着雪防止碍子と同条件で作成した水滴接触角が150度程度(水滴接触角が高いほど防汚性は高いが、実用上、水滴接触角が130度以上であれば同様の効果が得られた。)の着氷着雪防止碍子及び電線を冷凍庫内で接し、着氷効果を確かめたが、大きな氷はほとんど付着しなかった。このことは、本発明の碍子及び電線を送電鉄塔に装着すれば、雪害を大幅に低減できることを示している。
なお、このような物性値を実現できれば、雨量計を含む各種気象観測機器の着氷着雪防止、液体窒素タンクや液体酸素タンクの取り出しの部の着氷防止、あるいはスペースシャトルの外部燃料タンクの着氷防止等にも適用可能となり、着氷が原因で起こる事項の防止には効果絶大である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施例1において分散性向上のためシリカ微粒子表面にフッ化炭素系単分子膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前のシリカ微粒子の断面図、(b)は、フッ化炭素基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【図2】碍子表面にシリカ系微粒子融着用の被膜を形成した状態を説明するための断面図。
【図3】本発明の実施例1において碍子表面に融着膜となるシリカ系ガラス膜を介してシリカ微粒子を融着し、さらに前記シリカ微粒子およびシリカ系ガラス膜の表面に撥水撥油防汚性のフッ化炭素系単分子膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)はシリカ系微粒子融着用の被膜が形成されたガラス基材表面にフッ化炭素系単分子膜で被覆されたシリカ微粒子が多数乗っている状態の図、(b)は、酸素を含む雰囲気中での焼成により、シリカ微粒子表面のフッ化炭素系単分子膜が分解除去され、さらに洗浄により余分なシリカ微粒子も除去され、融着したシリカ微粒子が1層のみ被着した状態の図、(c)は、再び全面にフッ化炭素系単分子膜が形成された図を示す
【図4】異なる微粒子を混合して用いて作成した表面がフラクタル構造の撥水撥油防汚膜が形成されている着氷着雪防止碍子の断面状態を示した概念図を示す。
【符号の説明】
【0085】
1 シリカ微粒子
1’ 融着したシリカ微粒子
2 水酸基
3 アミノ基
撥水撥油防汚性化学吸着単分子膜で被覆されたシリカ微粒子
5 碍子
6 シリカ系微粒子融着用の被膜
7 微粒子を融着した表面が凸凹な碍子
8 フッ化炭素基を含む化学吸着単分子膜
撥水撥油防汚性微粒子
10 着氷着雪防止効果が高い碍子
11 表面がフラクタル構造の着氷着雪防止効果が高い碍子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面が直接あるいは微粒子融着用の被膜を介して融着した撥水撥油防汚性微粒子と撥水撥油防汚性被膜で覆われていることを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナ。
【請求項2】
融着された撥水撥油防汚性微粒子の一部分の表面が撥水撥油防汚性の被膜で被われており、且つ他の部分が基材表面に直接あるいは微粒子融着用の被膜を介して融着固定されていることを特徴とする請求項1記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナ。
【請求項3】
撥水撥油防汚性微粒子として、粒径の異なる微粒子が混合して用いられていることを特徴とする請求項1記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナ。
【請求項4】
少なくとも撥水撥油防汚性の被膜が微粒子および基材あるいは微粒子と微粒子融着用の被膜の露出部に共有結合していることを特徴とする請求項1〜3記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナ。
【請求項5】
撥水撥油防汚性の被膜が−CF基を含むことを特徴とする請求項4記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナ。
【請求項6】
微粒子が基材あるいは微粒子融着用の被膜より軟化温度が高い樹脂、金属、あるいはセラミクスであることを特徴とする請求項1〜5記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナ。
【請求項7】
表面の水に対する接触角が130度以上に制御されていることを特徴とする請求項1〜6記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナ。
【請求項8】
微粒子融着用の被膜が樹脂膜、シリカ系ガラス膜、または釉膜であることを特徴とする請求項1〜7記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナ。
【請求項9】
基材がセラミック、または銅、アルミニウムであことを特徴とする請求項1乃至請求項8記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナ。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナを装着したことを特徴とする送電鉄塔。
【請求項11】
少なくとも基材表面に微粒子融着用の被膜を形成する工程と、前記被膜を溶解させない溶媒に微粒子を分散した微粒子液を塗布、乾燥する工程と、焼成する工程と、前期被膜に融着しなかった微粒子を洗浄除去する工程と、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含むことを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。
【請求項12】
微粒子融着用の被膜を形成する工程において、ゾルゲル法を用いることを特徴とする請求項11記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。
【請求項13】
焼成する雰囲気として酸素を含む雰囲気を用い、焼成温度が基材と微粒子の両方の軟化温度未満であることを特徴とする請求項11および12記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。
【請求項14】
被膜を溶解させない溶媒が有機溶媒を含ことを特徴とする請求項11〜13記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。
【請求項15】
基材として、セラミック、または銅、アルミニウム、微粒子融着用の被膜として樹脂膜またはシリカ系ガラス膜を用い、加熱して前記微粒子と前期樹脂膜またはシリカ系ガラス膜表面を融着することを特徴とする請求項11〜14に記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。
【請求項16】
加熱または酸素を含む雰囲気中で焼成して前記微粒子と前期樹脂膜、シリカ系ガラス膜、または釉膜表面を融着することを特徴とする請求項11〜15に記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。
【請求項17】
少なくとも基材表面に溶媒に微粒子を分散した微粒子液を塗布、乾燥する工程と、焼成する工程と、前期被膜に融着しなかった微粒子を洗浄除去する工程と、撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含むことを特徴とする着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。
【請求項18】
焼成する工程における加熱温度が基材軟化温度以上で且つ微粒子の軟化温度未満であることを特徴とする請求項17記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。
【請求項19】
塗布時の微粒子の表面が有機薄膜で被われていることを特徴とする請求項11〜18記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。
【請求項20】
撥水撥油防汚性被膜を形成する工程において、フッ化炭素基とトリクロロシリル基を含むクロロシラン系化合物と非水系の有機溶媒を混合するか、フッ化炭素基とイソシアネート基を含むイソシアネート系化合物と非水系の有機溶媒を混合するか、あるいはフッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン系化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合するかして作成した化学吸着液と表面に微粒子を融着させた着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナを接触させて撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項11〜19記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。
【請求項21】
撥水撥油防汚性被膜を形成する工程において、接触後、余分な化学吸着液を洗浄除去する工程を含むことを特徴とする請求項11〜20記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。
【請求項22】
シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、金属酸化物、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする請求項11〜21に記載の着氷着雪防止碍子及び電線、アンテナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−282751(P2008−282751A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127573(P2007−127573)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(307011015)有限会社かがわ学生ベンチャー (7)
【Fターム(参考)】