説明

着色感光性樹脂組成物、これを用いて製造されたカラーフィルタ及び液晶表示装置

【課題】露光量の低い画素形成条件下でも高感度特性を示して、ムラのような表面不良が発生しない着色感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】着色感光性樹脂組成物、これを用いて製造されたカラーフィルタ及び液晶表示装置に関し、この着色感光性樹脂組成物は、(A)着色剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)光重合性化合物、(D)光重合開始剤、(E)溶剤及び(F)フッ素系反応性添加剤を含む。これによって、着色感光性樹脂組成物は、カラーフィルタ製造の際に、現像工程後にも高い接触角と低い表面エネルギーを維持してムラの発生しない優れた工程性を示し、カラーフィルタ及び液晶表示装置に有効に適用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色感光性樹脂組成物、これを用いて製造されたカラーフィルタ及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタ(color filter)は、相補型金属酸化膜半導体(complementary metal oxide semiconductor、CMOS)、電荷結合素子(charge coupled device、CCD)などのようなイメージセンサのカラー撮像装置内に内蔵されて、実際にカラー画像を得るために用いられることができ、その他にも撮像素子、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置(LCD)、電界放出ディスプレイ(FED)、発光ディスプレイ(LED)などへの用途に、その応用範囲が急速に拡がっている。特に、近年LCDへの用途がさらに拡大されており、これによってLCDの色調を再現する際にカラーフィルタは最も重要な部品の一つとして認識されている。
【0003】
かかるカラーフィルタは、着色剤を含む着色感光性樹脂組成物を用いて所望の着色パターンを形成する方法で製造される。具体的に、基板上に着色感光性樹脂組成物からなるコーティング層を形成し、形成されたコーティング層にパターンを形成して露光及び現像し、加熱して熱硬化する一連の過程を繰り返すことで製造される。
【0004】
最近のLCD製造工程の生産性及び収率の向上のために、カラーフィルタの製造の際に露光量の低い条件下で画素を形成してカラーフィルタを製造しており、これによって露光量の低い条件下でも高感度の特性を示す着色感光性樹脂組成物を使用している。しかし、従来の着色感光性樹脂組成物は、高感度特性を有すると知られているにもかかわらず、露光量の低い条件下で画素を形成する場合、現像ムラのような表面不良が発生する欠点を有している。
【0005】
したがって、工程性が優れて、露光量の低い画素形成条件下でもカラーフィルタの製造への適用時に表面不良を防止し、LCD製造工程の生産性及び収率を向上させるための着色感光性樹脂組成物の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、露光量の低い画素形成条件下でも高感度特性を示して、ムラのような表面不良が発生しない着色感光性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、画素部に現像ムラのような表面不良が発生しないカラーフィルタを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、前記カラーフィルタを具備した液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明は、(A)着色剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)光重合性化合物、(D)光重合開始剤、(E)溶剤及び下記の化学式(1)で表される(F)フッ素系反応性添加剤を含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物を提供する。
【0010】
【化1】


(式中、Rは独立にエチレン、(イソ)プロピレン、ブチレン、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコールであり、Rは水素またはメチルであり、Rfはフッ素系ポリオールであって、下記の化学式(2)で表される。)
【0011】
【化2】


(式中、Rはメチレンまたは(ポリ)エチレングリコール構造で互いに対称であり、Rは炭素またはCFO‐(CFCFO)‐(CFO)‐OCFであり、aとbはそれぞれ0または1以上の整数であって、a+bは1〜20の整数であり、Rはそれぞれ互いに独立に水素、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはCH‐O‐CH‐C2P+1であり、Pは1〜10の整数であり、nは1〜20の整数である。)
【0012】
(F)フッ素系反応性添加剤は、(メタ)アクリルイソシアネートとフッ素系ポリオールの反応で得られた化合物であることが好ましい。
【0013】
このとき、(メタ)アクリルイソシアネートは、(メタ)アクリルアミンをホスゲン化反応させて製造されるか、ヒドロキシ官能基を有する(メタ)アクリレートと過量のジイソシアネートを反応させて製造されたことが好ましい。さらに、フッ素系ポリオールは、分子構造内にフッ素の含有量が10〜90重量%であり、少なくとも一つのエーテル結合を含むことが好ましい。
【0014】
(F)フッ素系反応性添加剤の含有量は、着色感光性樹脂組成物中の固形分含有量に対して質量分率で0.001〜14質量%であってもよい。
【0015】
本発明の別の目的を達成するために、本発明は、基板上部に、前記着色感光性樹脂組成物を塗布し、所定のパターンに露光、現像して形成される着色層を含むことを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【0016】
本発明のさらに別の目的を達成するために、本発明は、前記カラーフィルタが具備されたことを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明による着色感光性樹脂組成物は、露光量の低い画素形成条件下でも高感度特性を示す。それによって、本発明による着色感光性樹脂組成物をカラーフィルタの製造に適用する場合、工程性が優れて、画素部に現像ムラのような表面不良が発生しないカラーフィルタを製造することができる。また、少量の露光量を使用することで、工程上の生産性と収率を向上させる効果がある。このような特性によって、本発明の着色感光性樹脂組成物は、各種の高品質のカラーフィルタの製造に有効に使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態によって着色感光性樹脂組成物を用いてカラーフィルタを製造する工程を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の着色感光性樹脂組成物は、(A)着色剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)光重合性化合物、(D)光重合開始剤、(E)溶剤及び(F)フッ素系反応性添加剤を含む。着色感光性樹脂組成物は、光重合開始助剤、顔料分散剤またはその他の添加剤などを選択的にさらに含んでもよい。
【0020】
以下、本発明の着色感光性樹脂組成物に含まれる各成分についてより詳細に説明する。
【0021】
<(A)着色剤>
(A)着色剤は、色調が限定されず、カラーフィルタの用途によって色調を選択することができる。具体的に(A)着色剤は、顔料、染料または天然色素のうち何れか一つまたは二つ以上を組み合わせて使用してよい。顔料としては、カラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists出版)からピグメント(pigment)に分類されている化合物である有機顔料、または金属酸化物、金属錯塩、硫酸バリウムの無機塩である無機顔料を使用してよく、耐熱性及び発色性が優れていることから有機顔料を使用することが好ましい。
【0022】
カラーインデックスでピグメントに分類されている化合物の具体的な例としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、128、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173、180、185、194、214などの黄色顔料;
C.I.ピグメントオレンジ13、31、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、71、73などのオレンジ色顔料;
C.I.ピグメントレッド9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、209、215、216、224、242、254、255、264、265などの赤色顔料;
C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、21、28、64、60、76などの青色顔料;
C.I.ピグメントバイオレット14、19、23、29、32、33、36、37、38などのバイオレット色顔料;
C.I.ピグメントグリーン7、10、15、25、36、47、58などの緑色顔料;
C.I.ピグメントブラウン23、25、28などのブラウン色顔料;または
C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7などの黒色顔料などが挙げられる。
【0023】
(A)着色剤としては、例示された化合物のうちC.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36及びC.I.ピグメントグリーン58からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0024】
有機顔料及び無機顔料は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。具体的な例として、赤色画素を形成するためにはC.I.ピグメントレッド254及びC.I.ピグメントレッド177の組合せ、緑色画素を形成するためにはC.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントイエロー150またはC.I.ピグメントイエロー138の組合せ、青色画素を形成するためにはC.I.ピグメントブルー15:6及びC.I.ピグメントバイオレット23の組合せを含むことが好ましい。
【0025】
(A)着色剤の含有量は、本発明の着色感光性樹脂組成物中の固形分含量に対して質量分率で5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%であってもよい。(A)着色剤の含有量がこのような基準で5〜60質量%である場合は、薄膜を形成しても画素の色濃度が十分であり、現像時に非画素部の抜け性が低下しないため、残渣が発生しにくいので好ましい。
【0026】
ここで、着色感光性樹脂組成物中の固形分の総含有量は、着色感光性樹脂組成物から溶剤を除いた残り成分の総含有量を意味する。
【0027】
(A)着色剤として顔料を使用する場合は、その粒径が均一なものを使用することが好ましい。顔料の粒径を均一にする方法としては、顔料分散剤を含有させて分散処理を行う方法などが挙げられ、この方法によれば、顔料が溶液中に均一に分散した状態の顔料分散液を得ることができる。
【0028】
顔料分散剤としては、例えば、陽イオン系、陰イオン系、非イオン系、両性系などの界面活性剤などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の商品名としては、メガファック(大日本インキ化学工業(株)製)、BYK、Disperbyk(ビックケミージャパン(株)製)、ソルスパース(ゼネカ(株)製)などが挙げられる。
【0029】
顔料分散剤の使用量は、(A)着色剤の1質量部に対して、通常1質量部以下であり、0.05〜0.5質量部であることが好ましい。顔料分散剤の含有量がこのような範囲にある場合、均一な粒径の分散した顔料を得ることができるので好ましい。
【0030】
<(B)アルカリ可溶性樹脂>
(B)アルカリ可溶性樹脂は、本発明の溶剤に溶解されることができ、(A)着色剤に対する結着樹脂の機能を有し且つアルカリ性現像液に溶解可能な樹脂であれば、その種類を特に制限せず使用してもよい。
【0031】
好ましくは、(B)アルカリ可溶性樹脂として、カルボン酸基と不飽和結合を有する重合単量体(b1)及びその(b1)と共重合可能な不飽和結合を有する重合単量体(b2)の共重合体(B‐1)または共重合体(B‐1)にさらに不飽和結合とエポキシ基を有する化合物(b3)を反応させて得られた光重合性不飽和結合を含む重合体(B‐2)を使用してもよい。
【0032】
カルボン酸基と不飽和結合を有する重合単量体(b1)の具体的な例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸類が好ましく、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びこれら不飽和ジカルボン酸の無水物などがある。(b1)として例示した重合単量体は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、α‐(ヒドロキシメチル)アクリル酸などの同一分子中にヒドロキシ基及びカルボキシル基を含有する単量体を併用してもよい。
【0033】
(b1)と共重合可能な不飽和結合を有する重合単量体(b2)の具体的な例としては、スチレン、ビニルトルエン、α‐メチルスチレン、p‐クロロスチレン、o‐メトキシスチレン、m‐メトキシスチレン、p‐メトキシスチレン、o‐ビニルベンジルメチルエーテル、m‐ビニルベンジルメチルエーテル、p‐ビニルベンジルメチルエーテル、o‐ビニルベンジルグリシジルエーテル、m‐ビニルベンジルグリシジルエーテル、p‐ビニルベンジルグリシジルエーテルなどの芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、i‐プロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、i‐ブチル(メタ)アクリレート、sec‐ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2‐メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン‐8‐イル(メタ)アクリレート、2‐ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの指環式(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート類;2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;N‐シクロヘキシルマレイミド、N‐ベンジルマレイミド、N‐フェニルマレイミド、N‐フェニルマレイミド、N‐o‐ヒドロキシフェニルマレイミド、N‐m‐ヒドロキシフェニルマレイミド、N‐p‐ヒドロキシフェニルマレイミド、N‐o‐メチルフェニルマレイミド、N‐m‐メチルフェニルマレイミド、N‐p‐メチルフェニルマレイミド、N‐o‐メトキシフェニルマレイミド、N‐m‐メトキシフェニルマレイミド、N‐p‐メトキシフェニルマレイミドなどのN‐置換マレイミド系化合物;(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド化合物;3‐(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3‐(メタクリロイルオキシメチル)‐3‐エチルオキセタン、3‐(メタクリロイルオキシメチル)‐2‐トリフルオロメチルオキセタン、3‐(メタクリロイルオキシメチル)‐2‐フェニルオキセタン、2‐(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、2‐(メタクリロイルオキシメチル)‐4‐トリフルオロメチルオキセタンなどの不飽和オキセタン化合物などがある。(b2)として例示した重合単量体は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
不飽和結合とエポキシ基を有する化合物(b3)の具体的な例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4‐エポキシブチル(メタ)アクリレート、2,3‐エポキシシクロペンチル(メタ)アクリレート、3,4‐エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、6,7‐エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4‐エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン‐9‐イル(メタ)アクリレートなどがある。(b3)として例示した化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明による(B)アルカリ可溶性樹脂が、前述したように(b1)及び(b2)を共重合して得られる共重合体(B‐1)、または(b1)及び(b2)を共重合して得られる共重合体(B‐1)に(b3)を反応させて得られた光重合性不飽和結合を含有する重合体(B‐2)である場合、(b1)及び(b2)を共重合して得られる共重合体で(b1)及び(b2)それぞれから誘導される構成成分の比率は、その共重合体を構成する構成成分の合計モル数に対してモル分率で以下の範囲にあることが好ましい。このとき、共重合体は(b1)及び(b2)の他に別の単量体がさらに含有されて共重合されてもよい。
【0036】
(b1)及び(b2)それぞれから誘導される構成成分の比率は、共重合体を構成する構成成分の合計モル数に対してモル分率で、
(b1)から誘導される構成単位:2〜95モル%、
(b2)から誘導される構成単位:2〜70モル%であり、
特に、(b1)及び(b2)それぞれから誘導される構成成分の比率は、共重合体を構成する構成成分の合計モル数に対してモル分率で、
(b1)から誘導される構成単位:2〜70モル%、
(b2)から誘導される構成単位:2〜50モル%であることがさらに好ましい。
【0037】
上記のように(b1)及び(b2)それぞれから誘導される構成成分の比率が上記の範囲にあると、現像性、可溶性及び基板との密着性が優れて、好ましい共重合体を得ることができる。
【0038】
(b3)は、(b1)から誘導される構成単位の総モル数に対して2〜80モル%で反応させることが好ましく、特に2〜50モル%が好ましい。(b3)化合物が上記の範囲内にあると、架橋密度が増加して感度及び現像性が優れて好ましい。
【0039】
(B)アルカリ可溶性樹脂が、(b1)及び(b2)を共重合して得られる共重合体、または(b1)及び(b2)を共重合して得られる共重合体に(b3)をさらに反応させて得られる共重合体である場合、製造方法の一例は下記の通りである。
【0040】
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたフラスコに、(b1)及び(b2)の合計量に対して質量基準で0.5〜20倍の溶媒を導入し、フラスコ内雰囲気を空気から窒素に置換する。その後、溶媒の温度を40〜140℃に上昇させた後、(b1)及び(b2)の所定量、(b1)及び(b2)の合計量に対して質量基準で0.5〜20倍の溶媒及びアゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイルなどの重合開始剤を(b1)及び(b2)の合計モル数に対して0.1〜10モル%添加した溶液(室温または加熱下で攪拌溶解)を滴下ロートで0.1〜8時間にわたって上記のフラスコに滴下し、40〜140℃で1〜10時間さらに攪拌する。
【0041】
上記の工程で分子量を剤御するために、α‐メチルスチレン二量体またはメルカプト化合物を連鎖移動剤として使用してもよい。α‐メチルスチレン二量体またはメルカプト化合物の使用量は、(b1)及び(b2)の合計量に対して質量基準で0.005〜5質量%である。また、このような重合条件は、製造設備や重合による発熱量などを考慮して、投入方法や反応温度を適切に調整してもよい。
【0042】
このようにすることで、(b1)及び(b2)化合物を共重合して得られる共重合体を製造する。
【0043】
続いて、フラスコ内雰囲気を窒素から空気に置換し、(b1)及び(b2)を共重合して得られる共重合体中の(b1)から誘導される構成単位に対してモル分率で2〜80モル%の(b3)、カルボキシル基とエポキシ基の反応触媒として、例えばトリスジメチルアミノメチルフェノールを(b1)〜(b3)の合計量に対して質量基準で0.01〜5質量%、及び重合禁止剤として、例えばヒドロキノンを(b1)〜(b3)の合計量に対して質量基準で0.001〜5質量%をフラスコ内に入れて、60〜130℃で1〜10時間反応させる。
【0044】
このとき、前述した共重合条件と同様に製造設備や重合による発熱量などを考慮して、投入方法や反応温度を適切に調整してもよい。
【0045】
これで、(b1)及び(b2)を共重合して得られる共重合体(B‐1)、(b1)及び(b2)を共重合して得られる共重合体(B‐1)に(b3)を反応させて得られた光重合性不飽和結合を含む重合体(B‐2)である(B)アルカリ可溶性樹脂を製造することができる。
【0046】
本発明では、(B)アルカリ可溶性樹脂は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000〜100,000の範囲にあることが好ましく、5,000〜50,000の範囲にあることがより好ましい。(B)アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量が3,000〜100,000の範囲にあると、現像の際に膜減少が防止されて、パターン部分の抜け性が良好になるので好ましい。
【0047】
(B)アルカリ可溶性樹脂の酸価は50〜150(KOH mg/g)であり、好ましくは60〜140であり、より好ましくは80〜135であり、最も好ましくは80〜130である。(B)アルカリ可溶性樹脂の酸価が50〜150である場合は、現像液に対する溶解性が向上し、残膜率が向上するので好ましい。ここで酸価は、アクリル系重合体1gを中和するに必要な水酸化カリウムの量(mg)として測定される値であり、通常は水酸化カリウム水溶液を用いて適定することで求められることができる。
【0048】
(B)アルカリ可溶性樹脂の含有量は、感光性樹脂組成物中の固形分に対して質量分率で5〜85質量%、好ましくは10〜70質量%の範囲にある。(B)アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記の基準で5〜85質量%であると、現像液への溶解性が十分であるのでパターンの形成が容易であり、現像の際に露光部の画素部分の膜減少が防止されて、非画素部分の抜け性が良好になるので好ましい。
【0049】
<(C)光重合性化合物>
(C)光重合性化合物は、光の照射によって(D)光重合開始剤から発生する活性ラジカルや酸などによって重合できる化合物であれば特に限定されるものではなく、単官能光重合性化合物、二官能光重合性化合物と三官能以上の多官能光重合性化合物などが挙げられる。
【0050】
単官能光重合性化合物の具体的な例としては、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピルアクリレート、2‐エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、N‐ビニルピロリドンなどが挙げられ、市販品としてはアロニックスM‐101(東亜合成)、KAYARAD TC‐110S(日本化薬)、ビスコート158(大阪有機化学工業)などが挙げられる。
【0051】
二官能光重合性化合物の具体的な例としては、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイルオキシエチル)エーテル、3‐メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシレートネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピルオキシレートネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられ、市販品としてはアロニックスM‐210、M‐1100、1200(東亜合成)、KAYARAD HDDA(日本化薬)、ビスコート260(大阪有機化学工業)、AH‐600、AT‐600、UA‐306H(共栄社化学)などが挙げられる。
【0052】
三官能以上の多官能光重合性化合物の具体的な例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリルプロピルオキシレートトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシレートジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピルオキシレートジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピルオキシレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどがあり、市販品としてはKAYARAD TMPTA、KAYARAD DPHA(日本化薬)などがある。
【0053】
(C)光重合性化合物は例示した化合物のうち二官能以上の光重合性化合物が好ましく使用されてもよく、特に三官能以上の多官能光重合性化合物が好ましく使用されてもよい。
【0054】
(C)光重合性化合物の含有量は、着色感光性樹脂組成物中の固形分含有量に対して質量分率で5〜50質量%であることが好ましく、特に7〜45質量%であることがより好ましい。(C)光重合性化合物の含有量が上記の基準で5〜50質量%である場合は、画素部の強度や平滑性が良好になるので好ましい。
【0055】
<(D)光重合開始剤>
(D)光重合開始剤は、(B)アルカリ可溶性樹脂及び(C)光重合性化合物を重合できるものであればその種類を特に制限せずに使用してもよい。特に、重合特性、開始効率、吸収波長、入手性、価格などの観点から、トリアジン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物及びオキシム化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を使用することが好ましい。
【0056】
トリアジン系化合物としては、例えば2,4‐ビス(トリクロロメチル)‐6‐(4‐メトキシフェニル)‐1,3,5‐トリアジン、2,4‐ビス(トリクロロメチル)‐6‐(4‐メトキシナフチル)‐1,3,5‐トリアジン、2,4‐ビス(トリクロロメチル)‐6‐ピペロニル‐1,3,5‐トリアジン、2,4‐ビス(トリクロロメチル)‐6‐(4‐メトキシスチリル)‐1,3,5‐トリアジン、2,4‐ビス(トリクロロメチル)‐6‐[2‐(5‐メチルフラン‐2‐イル)エテニル]‐1,3,5‐トリアジン、2,4‐ビス(トリクロロメチル)‐6‐[2‐(フラン‐2‐イル)エテニル]‐1,3,5‐トリアジン、2,4‐ビス(トリクロロメチル)‐6‐[2‐(4‐ジエチルアミノ‐2‐メチルフェニル)エテニル]‐1,3,5‐トリアジン、2,4‐ビス(トリクロロメチル)‐6‐[2‐(3,4‐ジメトキシフェニル)エテニル]‐1,3,5‐トリアジンなどが挙げられる。
【0057】
アセトフェノン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン、ベンジルジメチルケタール、2‐ヒドロキシ‐1‐[4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル]‐2‐メチルプロパン‐1‐オン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2‐メチル‐1‐(4‐メチルチオフェニル)‐2‐モルホリノプロパン‐1‐オン、2‐ベンジル‐2‐ジメチルアミノ‐1‐(4‐モルホリノフェニル)ブタン‐1‐オン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐[4‐(1‐メチルビニル)フェニル]プロパン‐1‐オン、2‐(4‐メチルベンジル)‐2‐(ジメチルアミノ)‐1‐(4‐モルホリノフェニル)ブタン‐1‐オンなどが挙げられる。
【0058】
ビイミダゾール化合物としては、例えば2,2’‐ビス(2‐クロロフェニル)‐4,4’,5,5’‐テトラフェニルビイミダゾール、2,2’‐ビス(2,3‐ジクロロフェニル)‐4,4’,5,5’‐テトラフェニルビイミダゾール、2,2’‐ビス(2‐クロロフェニル)‐4,4’,5,5’‐テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’‐ビス(2‐クロロフェニル)‐4,4’,5,5’‐テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2‐ビス(2,6‐ジクロロフェニル)‐4,4’5,5’‐テトラフェニル‐1,2’‐ビイミダゾールまたは4,4’,5,5’位置のフェニル基がカルボアルコキシ基によって置換されているイミダゾール化合物などが挙げられる。これらのうち、2,2’‐ビス(2‐クロロフェニル)‐4,4’,5,5’‐テトラフェニルビイミダゾール、2,2’‐ビス(2,3‐ジクロロフェニル)‐4,4’,5,5’‐テトラフェニルビイミダゾール、2,2‐ビス(2,6‐ジクロロフェニル)‐4,4’5,5’‐テトラフェニル‐1,2’‐ビイミダゾールが好ましく使用される。
【0059】
オキシム化合物としては、例えばo‐エトキシカルボニル‐α‐オキシイミノ‐1‐フェニルプロパン‐1‐オンと下記の化学式(3)〜(5)で表される化合物などが挙げられる。
【0060】
【化3】

【0061】
【化4】

【0062】
【化5】

【0063】
前述した光重合開始剤の他に本発明の効果を損なわない程度であれば当分野で通常使用されている他の光重合開始剤などをさらに併用してもよい。その他の光重合開始剤としては、例えばベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アントラセン系化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
ベンゾイン系化合物は、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0065】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えばベンゾフェノン、0‐ベンゾイル安息香酸メチル、4‐フェニルベンゾフェノン、4‐ベンゾイル‐4’‐メチルジフェニルスルフィド、3,3’,4,4’‐テトラ(tert‐ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6‐トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0066】
チオキサントン系化合物としては、例えば2‐イソプロピルチオキサントン、2,4‐ジエチルチオキサントン、2,4‐ジクロロチオキサントン、1‐クロロ‐4‐プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0067】
アントラセン系化合物としては、例えば9,10‐ジメトキシアントラセン、2‐エチル‐9,10‐ジメトキシアントラセン、9,10‐ジエトキシアントラセン、2‐エチル‐9,10‐ジエトキシアントラセンなどが挙げられる。
【0068】
その他の光重合開始剤としては、例えば2,4,6‐トリメチルベンゾイルジフェニルポスフィンオキシド、10‐ブチル‐2‐クロロアクリドン、2‐エチルアントラキノン、ベンジル、9,10‐フェナントレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物などが挙げられる。
【0069】
(D)光重合開始剤は、光重合開始助剤(D‐1)を組み合わせて使用してもよい。(D)光重合開始剤に光重合開始助剤(D‐1)を併用すれば、これらを含有する着色感光性樹脂組成物はさらに高感度になって、生産性を向上させるので好ましい。
光重合開始助剤(D‐1)は、例えばアミン化合物、カルボン酸化合物、チオール基を有する有機硫黄化合物からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく使用されてもよい。
【0070】
アミン化合物の具体的な例としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの脂肪族アミン化合物、4‐ジメチルアミノ安息香酸メチル、4‐ジメチルアミノ安息香酸エチル、4‐ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4‐ジメチルアミノ安息香酸2‐エチルヘキシル、安息香酸2‐ジメチルアミノエチル、N,N‐ジメチルパラトルイジン、4,4’‐ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(通称、ミヒラーズケトン)、4,4’‐ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの芳香族アミン化合物が挙げられる。その中でもアミン化合物としては、芳香族アミン化合物が好ましく使用される。
【0071】
カルボン酸化合物の具体的な例としては、フェニルチオ酢酸、メチルフェニルチオ酢酸、エチルフェニルチオ酢酸、メチルエチルフェニルチオ酢酸、ジメチルフェニルチオ酢酸、メトキシフェニルチオ酢酸、ジメトキシフェニルチオ酢酸、クロロフェニルチオ酢酸、ジクロロフェニルチオ酢酸、N‐フェニルグリシン、フェノキシ酢酸、ナフチルチオ酢酸、N‐ナフチルグリシン、ナフトキシ酢酸などの芳香族ヘテロ酢酸類が挙げられる。
【0072】
チオール基を有する有機硫黄化合物の具体的な例としては、2‐メルカプトベンゾチアゾール、1,4‐ビス(3‐メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5‐トリス(3‐メルカプトブチルオキシエチル)‐1,3,5‐トリアジン‐2,4,6(1H,3H,5H)‐トリオン、トリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3‐メルカプトプロピオネート、テトラエチレングリコールビス(3‐メルカプトプロピオネート)などがある。
【0073】
(D)光重合開始剤の使用量は、固形分を基準で(B)アルカリ可溶性樹脂及び(C)光重合性化合物の合計量100質量部に対して0.1〜40質量部、好ましくは1〜30質量部である。(D)光重合開始剤の使用量が上記の基準で上記の範囲にあると、着色感光性樹脂組成物が高感度化して露光時間が短縮されるので、生産性が向上し且つ高い解像度を維持できるので好ましく、この組成物を用いて形成した画素部の強度、またはこの画素部の表面での平滑性が良好になるので好ましい。
【0074】
光重合開始助剤(D‐1)の使用量は、固形分を基準で(B)アルカリ可溶性樹脂及び(C)光重合性化合物の合計量100質量部に対して0.1〜50質量部、好ましくは1〜40質量部である。光重合開始助剤(D‐1)の使用量が上記の範囲にあると、着色感光性樹脂組成物の感度がさらに高くなり、この組成物を用いて形成されるカラーフィルタの生産性が向上するので好ましい。
【0075】
<(E)溶剤>
(E)溶剤は、着色感光性樹脂組成物に含有される他の成分を分散または溶解させるに効果的なものであれば、その種類を特に制限せずに使用してもよく、特にエーテル類、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エステル類またはアミド類などが好ましい。
【0076】
(E)溶剤の具体的な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート及びメトキシペンチルアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、3‐エトキシプロピオン酸エチル、3‐メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、γ‐ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。
【0077】
(E)溶剤のうち、塗布性、乾燥性の側面から好ましくは沸点が100℃〜200℃の有機溶剤を用いてもよく、より好ましくはアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、3‐エトキシプロピオン酸エチルや、3‐メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類を用いてもよく、さらに好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、3‐エトキシプロピオン酸エチル、3‐メトキシプロピオン酸メチルなどを用いてもよい。
【0078】
例示した(E)溶剤は、それぞれ単独でまたは2種類以上混合して使用してもよい。
【0079】
本発明の着色感光性樹脂組成物中の(E)溶剤の含有量は、それを含有する着色感光性樹脂組成物の全体量に対して質量分率で、60〜90質量%、好ましくは70〜85質量%である。(E)溶剤の含有量が上記の基準で60〜90質量%の範囲にあると、ロールコーター、スピンコーター、スリットスピンコーター、スリットコーター(ダイコーターとする場合もある)、インクジェットなどの塗布装置で塗布したとき塗布性が良好になるので好ましい。
【0080】
<(F)フッ素系反応性添加剤>
(F)フッ素系反応性添加剤は、光を照射することで(D)光重合開始剤から発生する活性ラジカルまたは酸などによって重合できる化合物であって、前述した(B)アルカリ可溶性樹脂または(C)光重合性化合物との反応性が優れて、現像後にも高い接触角と低い表面エネルギーを維持してムラを発生させないので、着色感光性樹脂組成物の感度と工程性を向上させる。
【0081】
本発明による(F)フッ素系反応性添加剤は下記の化学式(1)で表される。
【0082】
【化6】


(式中、Rは独立にエチレン、(イソ)プロピレン、ブチレン、(ポリ)エチレングリコールまたは(ポリ)プロピレングリコールであり、Rは水素またはメチルであり、Rfはフッ素系ポリオールであり、下記の化学式(2)で表される。)
【0083】
【化7】


(式中、Rはメチレンまたは(ポリ)エチレングリコール構造で互いに対称であり、Rは炭素またはCFO‐(CFCFO)‐(CFO)‐OCFであり、aとbはそれぞれ0または1以上の整数であって、a+bは1〜20の整数であり、Rはそれぞれ互いに独立に水素、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはCH‐O‐CH‐CPF2P+1であって、Pは1〜10の整数であり、nは1〜20の整数である。)
【0084】
化学式(1)で表される(F)フッ素系反応性添加剤は、フッ素系ポリオールと(メタ)アクリルイソシアネートを反応させて得ることができる。
【0085】
フッ素系ポリオールは、分子構造内にフッ素と少なくとも一つのエーテル結合を含有し、フッ素はポリオール主鎖に含まれるか側鎖に含まれることができる。また、フッ素系ポリオールは、分子構造内にフッ素の含有量が10〜90重量%であり、40〜70重量%であることが好ましい。分子構造内フッ素の含有量が10重量%未満である場合、表面エネルギーの上昇が困難であり、90重量%を超過する場合、組成物との相溶性が低下して表面に噴火口現象、ピンホール固まり現象が発生し、表面浮上力が低下して密着力の低下をもたらし得る。
【0086】
(メタ)アクリルイソシアネートは、商用されている製品を用いてもよく、ヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリル単量体とジイソシアネートを反応させて製造してもよい。ここで、ジイソシアネートのモル比を過量にしてイソシアネートを末端に残すと、(メタ)アクリルイソシアネートになる。ヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリル単量体としては、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド添加ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド添加ヒドロキシ(メタ)アクリレートなどを使用してもよい。ジイソシアネートとしては、1,6‐ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4‐トルエンジイソシアネート、4,4‐メチレンジイソシアネートなどの市販されているジイソシアネートを使用してもよい。また、上記の反応で触媒を用いてもよい。触媒としては、ウレタン反応に一般に公知されている触媒として、3次アミン系、錫系などを選択的に用いてもよい。
【0087】
(F)フッ素系反応性添加剤の含有量は、本発明の着色感光性樹脂組成物中の固形分含有量に対して質量分率で0.001〜14質量%であることが好ましく、特に0.05〜10質量%であることがより好ましい。(F)フッ素系反応性添加剤の含有量が上記の基準で0.001〜14質量%である場合は、露光量の低い画素形成条件下でも現像ムラのような表面不良を発生させない着色感光性樹脂組成物の製造が可能である。
【0088】
<(G)添加剤>
本発明の着色感光性樹脂組成物には、必要によって性能の向上のために、充填剤、他の高分子化合物、硬化剤、界面活性剤、密着増進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの添加剤を並行することも可能である。添加剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。添加剤の含有量は、本発明による着色感光性樹脂組成物の物性を損なわず添加剤の目的を果たすことができる程度の範囲内で制限なしに添加してもよい。好ましくは、着色感光性樹脂組成物中の固形分含有量に対して質量分率で0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。
【0089】
充填剤の具体的な例としては、ガラス、シリカ、アルミナなどが挙げられる。
【0090】
他の高分子化合物の具体的な例としては、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂などの硬化性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリフルオロアルキルアクリレート、ポリエステル、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0091】
硬化剤は、深部硬化及び機械的強度の向上のために用いられ、硬化剤の具体的な例としては、エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。エポキシ化合物の具体的な例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、その他の芳香族系エポキシ樹脂、指環族系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系樹脂、またはこのようなエポキシ樹脂の臭化誘導体、エポキシ樹脂及びその臭化誘導体以外の脂肪族、指環族または芳香族エポキシ化合物、ブタジエン(共)重合体エポキシ化合物、イソプレン(共)重合体エポキシ化合物、グリシジル(メタ)アクリレート(共)重合体、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。オキセタン化合物の具体的な例としては、カーボネートビスオキセタン、キシレンビスオキセタン、アジペートビスオキセタン、テレフタレートビスオキセタン、シクロヘキサンジカルボン酸ビスオキセタンなどが挙げられる。
【0092】
硬化剤は、硬化剤とともにエポキシ化合物のエポキシ基、オキセタン化合物のオキセタン骨格を開環重合させることができる硬化補助化合物を併用してもよい。硬化補助化合物としては、例えば多価カルボン酸類、多価カルボン酸無水物類、酸発生剤などが挙げられる。カルボン酸無水物類としては、エポキシ樹脂硬化剤として市販されるものを用いてもよい。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、商品名「アデカハードナーEH‐700(旭電化工業(株)製)」、商品名「リカシッドHH(新日本理化(株)製)」、商品名「MH‐700(新日本理化製)」などが挙げられる。ここで例示した硬化剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。
【0093】
界面活性剤は、感光性樹脂組成物の被膜形成性をより向上させるために用いてもよく、通常、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素原子を含むシリコーン系界面活性剤がある。
【0094】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、トーレシリコーン社のDC3PA、DC7PA、SH11PA、SH21PA、SH8400などがあり、GE東芝シリコーン社のTSF‐4440、TSF‐4300、TSF‐4445、TSF‐4446、TSF‐4460、TSF‐4452などがあり、フッ素系界面活性剤の市販品としては、大日本インキ化学工業社のメガファックF‐470、F‐471、F‐475、F‐482、F‐489などが挙げられる。フッ素原子を含むシリコーン系界面活性剤の市販品としては、シロキサン結合及びフルオロカーボン鎖を有する界面活性剤が挙げられる。具体的には、大日本インク化学工業社のメガファックR08、メガファックBL20、メガファックF275、メガファックF475、メガファックF477、メガファックF443などが挙げられる。
【0095】
例示した界面活性剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0096】
密着増進剤の具体的な例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2‐メトキシエトキシ)シラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3‐クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3‐クロロプロピルトリメトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3‐イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3‐イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。ここで例示した密着増進剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0097】
酸化防止剤の具体的な例としては、2,2’‐チオビス(4‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)、2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐メチルフェノールなどが挙げられる。
【0098】
紫外線吸収剤の具体的な例としては、2‐(3‐tert‐ブチル‐2‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0099】
凝集防止剤の具体的な例としては、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0100】
本発明の着色感光性樹脂組成物は、例えば以下のような方法によって製造することができる。しかし、本発明で着色感光性樹脂組成物の製造方法を限定するものではない。
【0101】
(A)着色剤を予め溶剤と混合して(A)着色剤の平均粒径が約0.2um以下になるまでビーズミルなどを用いて分散させる。このとき、必要によって顔料分散剤が用いられ、また(B)アルカリ可溶性樹脂の一部または全部が配合される場合もある。得られた分散液(以下、「ミルベース」という場合もある)に(B)アルカリ可溶性樹脂の残り、(C)光重合性化合物、(D)光重合開始剤及び(F)フッ素系反応性添加剤と、必要によって用いられるその他の成分、必要によって別の溶剤を所定の濃度になるようにさらに添加すると、目的の着色感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0102】
本発明の着色感光性樹脂組成物は、カラーフィルタの製造に適用されることができる。以下、本発明のカラーフィルタとこれの製造方法について説明する。
【0103】
本発明のカラーフィルタは、基板及び基板上に本発明による着色感光性樹脂組成物を使用して形成された着色層を含む。
【0104】
基板は、カラーフィルタ自体の基板であってもよく、またはディスプレイ装置などにカラーフィルタが位置した部位であってもよく、特に制限されるものではない。
【0105】
基板は、ガラス板、シリコンウェハ及びポリエーテルスルホン(polyethersulfone、PES)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)などのプラスチック基材の板などであってもよい。すなわち、基板は、シリコン(Si)、シリコン酸化物(SiOx)、ガラス板素材の基板またはプラスチック基材の高分子基板であってもよい。
【0106】
着色層は、(A)着色剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)光重合性化合物、(D)光重合開始剤、(E)溶剤及び(F)フッ素系反応性添加剤を含む、本発明による着色感光性樹脂組成物を使用して形成された層であって、基板上にその着色感光性樹脂組成物を塗布して所定のパターンに露光及び現像して形成された層であり得る。
【0107】
このような基板及び着色層を含むカラーフィルタは、各着色パターンの間に形成された隔壁をさらに含んでもよく、ブラックマトリックスをさらに含んでもよい。また、カラーフィルタの着色層上部に形成された保護膜をさらに含んでもよい。
【0108】
以下、カラーフィルタを製造する過程について、添付図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0109】
図1(a)〜図1(c)は、本発明の一実施形態によって着色感光性樹脂組成物を使用してカラーフィルタを製造する工程を概略的に示す図である。
【0110】
本発明では、先ず本発明の着色感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、図1(a)に示すように、基板10の上部に着色感光性樹脂組成物からなる着色層11を形成する。このためには、例えば、溶剤によって希釈された着色感光性樹脂組成物を、スピン、スリット後スピン、スリット、ロール、スプレー、インクジェット方式などのコーティング法によって基板上部に塗布した後、溶剤などの揮発性成分を揮発させる。これによって、着色感光性樹脂組成物からなる着色層11が形成される。ここで、形成された着色層は、着色感光性樹脂組成物の固形成分からなり、揮発性成分を殆ど含有しない。着色層の厚さは、着色感光性樹脂組成物の粘度、固形分の濃度、塗布速度などの塗布条件によって定まり、本発明の着色感光性樹脂組成物を使用する場合は、厚さ0.5〜5umの着色層11を形成することができる。
【0111】
次に、図1(b)に示すように、形成された着色層11を光30に露出させる。露光は、例えば着色層11をフォトマスク20を通して所定のパターンに光30に露出させることで行われてもよい。光30としては、通常、紫外線のg線(波長:436nm)、h線、i線(波長:365nm)などを用いる。フォトマスク20は、ガラス板の表面上に所定のパターンに光30を遮蔽する遮光層と、光30を透過する投光部とを含む。投光部のパターンに対応して着色層11が露光される。光30の照射量は、使用された着色感光性樹脂組成物によって適切に選択される。光30が照射された部分は、着色感光性樹脂組成物の光硬化が急速に進行されるによって、光30が照射されない部分に比べて溶解度が非常に小さくなって、両方の溶解度差が極大化される。
【0112】
露光後には現像を行って、図1(c)に示すように、着色パターン11Rを形成する。現像のためには、例えば露光後の着色感光性樹脂組成物層を現像液に浸漬させる。現像液としては、アルカリ化合物、具体的に炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの水溶液を使用する。現像によって、着色感光性樹脂組成物から形成された層の光線未照射領域は除去される。一方、光線が照射された領域は残って着色パターン11Rを構成する。
【0113】
現像が完了した後は、現像された層を大体水で洗浄し、乾燥させて所定の着色パターンを得る。また、乾燥後には加熱処理を行ってもよい。加熱処理によって形成された着色パターン11Rが熱硬化され、これによって機械的強度が向上する。このように着色パターン11Rの機械的強度が加熱処理によって向上することができるので、硬化剤を含有する着色感光性組成物を使用することが好ましい。このとき、加熱温度は、通常、180℃以上、好ましくは200〜250℃である。
【0114】
本発明の液晶表示装置は、基板及び着色層を含む本発明のカラーフィルタを備える。
【0115】
カラーフィルタは、前述したように、基板及び基板上部に形成された着色層を含み、この着色層は、基板の上部に(A)着色剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)光重合性化合物、(D)光重合開始剤、(E)溶剤及び(F)フッ素系反応性添加剤を含む着色感光性樹脂組成物を塗布し、所定のパターンに露光及び現像して形成される。
【0116】
本発明による液晶表示装置は、このようなカラーフィルタを備えたことを除いて本発明の技術分野で当業者に公知の構成を含む。
【実施例】
【0117】
以下、本発明の理解を明確にするために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属するものである。
【0118】
以下の実施例及び比較例において、含量を示す「%」及び「部」は特に別の言及のない限り質量基準であり、添加量は全体着色感光性樹脂組成物に対する比率である。
【0119】
<合成例1(フッ素系反応性添加剤の合成)>
フッ素系ポリオールPolyFoxTMPF‐656(OMNOVA社)83.8質量部、アクリルイソシアネートAOI(昭和電工)15質量部、触媒としてジブチルチンラウレート0.8質量部、安定剤としてメトキシヒドロキノン0.4質量部、希薄剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部を3口500mL反応器に投入し、コンデンサ、機械式攪拌機、温度計、加熱マントルが構成された反応装置で攪拌した。初期60℃まで自己発熱進行されて徐々に温度が下がると、温度を70℃に維持しながら5時間反応させ、FT‐IRを測定して、イソシアネートの特性ピークである2260cm‐1が完全に消滅すると、反応を終結した。全体反応式は、下記の反応式(1)で表された通りである。
【0120】
【化8】

【0121】
<合成例2(フッ素系反応性添加剤の合成)>
フッ素系ポリオールFluorolink E10‐H(ソルベイ社)83.8質量部、アクリルイソシアネートAOI(昭和電工)15質量部、触媒としてジブチルチンラウレート0.8質量部、安定剤としてメトキシヒドロキノン0.4質量部、希薄剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部を3口500mL反応器に投入し、コンデンサ、機械式攪拌機、温度計、加熱マントルが構成された反応装置で攪拌した。初期60℃まで自己発熱進行されて徐々に温度が下がると、温度を70℃に維持しながら5時間反応させ、FT‐IRを測定して、イソシアネートの特性ピークである2260cm‐1が完全に消滅すると反応を終結した。全体反応式は、下記の反応式(2)で表された通りである。
【0122】
【化9】

【0123】
<合成例3(フッ素系反応性添加剤の合成)>
2‐ヒドロキシエチルアクリレート10.6質量部、イソホロンジイソシアネート20.6質量部、ジブチルチンジラウレート0.1質量部、メトキシヒドロキノン0.1質量部を3口500mL反応器に投入し、コンデンサ、機械式攪拌機、温度計、加熱マントルが構成された反応装置で攪拌した。常温で自己発熱したら温度が80℃まで発熱し、冷却して反応温度70℃で3時間反応を進行させた。このとき、湿式分析によるNCO%は12.4%であった。
【0124】
反応器温度を常温に冷却し、フッ素系ポリオールFluorolink E10‐H(ソルベイ社)68.9質量部、ジブチルチンラウレート0.1質量部、安定剤としてメトキシヒドロキノン0.1質量部、希薄剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部を投入し、温度を70℃に維持しながら5時間反応させ、FT‐IRを測定して、イソシアネートの特性ピークである2260cm‐1が完全に消滅すると反応を終結した。全体反応式は、下記の反応式(3)で表された通りである。
【0125】
【化10】

【0126】
実施例1(着色感光性樹脂組成物の製造)
(A)着色剤であるC.I.ピグメントレッド254 5.25部、(B)アルカリ可溶性樹脂としてメタアクリル酸とベンジルメタアクリレートとの共重合体(メタアクリル酸単位とベンジルメタアクリレート単位のモル比は27:73、酸価は83、重量平均分子量は18,000)2.938部、(C)光重合性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2.938部、(D)光重合開始剤として2‐メチル‐2‐モルホリノ‐1‐(4‐メチルチオフェニル)プロパン‐1‐オン0.353部、光重合開始助剤として4,4’‐ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン0.176部、(F)フッ素系反応性添加剤として合成例1で合成したフッ素系反応性添加剤0.012部、(E)溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート85部、(G)添加剤として顔料分散剤Disperbyk‐2001(BYK社)2.625部、熱架橋剤としてエポキシ樹脂(SUMI‐EPOXY ESCN‐195XL)0.588部、密着増進剤としてメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.12部を混合し、分散させて、着色感光性樹脂組成物を製造した。
【0127】
実施例2(着色感光性樹脂組成物の製造)
実施例1での(F)フッ素系反応性添加剤を、合成例2で合成したフッ素系反応性添加剤0.012部に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法で実施した。
【0128】
実施例3(着色感光性樹脂組成物の製造)
実施例1での(F)フッ素系反応性添加剤を、合成例3で合成したフッ素系反応性添加剤0.012部に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法で実施した。
【0129】
比較例1(着色感光性樹脂組成物の製造)
実施例1での(F)フッ素系反応性添加剤を、非反応性フッ素系添加剤であるPolyFoxTMPF‐656(OMNOVA社)0.012部に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法で実施した。
【0130】
比較例2(着色感光性樹脂組成物の製造)
実施例1での(F)フッ素系反応性添加剤を、非反応性フッ素系添加剤であるFluorolink E10‐H(ソルベイ社)0.012部に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法で実施した。
【0131】
比較例3(着色感光性樹脂組成物製造)
実施例1での(F)フッ素系反応性添加剤を添加しなかったことを除いて、実施例1と同様の方法で実施した。
【0132】
(着色層の形成及び現像ムラの評価)
実施例1〜3及び比較例1〜3で製造された着色感光性樹脂組成物をガラス基板上部にスピンコーティング法で塗布した後、加熱板上で100℃の温度で3分間維持して着色層薄膜を形成した。続いて、着色層薄膜の上部に透過率1〜100%の範囲で階段状に変化するパターンを有する試験フォトマスクを位置させ、試験フォトマスクとの間隔を100umにして紫外線を照射した。このとき、紫外線光源はg、h、i線をすべて含む1kWの高圧水銀などを使用して、100mJ/cmの露光量で照射し、特別な光学フィルタは使用しなかった。紫外線が照射された着色層薄膜をpH10.5のKOH水溶液現像溶液に2分間浸漬させて現像した。現像された着色層薄膜が形成されているガラス基板を蒸留水を用いて洗浄した後、窒素ガス雰囲気下で乾燥させ、超純水に対する接触角を測定して現像ムラを確認し、その結果を下記の表1に示した。
【0133】
現像ムラの評価は、露光量が100、60及び40mJ/cmである条件下でそれぞれ測定し、評価基準は下記の通りである。
‐超純水に対する接触角が60゜以上であり、肉眼で確認のしたとき基板上にムラがない:○
‐超純水に対する接触角が50゜未満、40゜以上であるか、または肉眼で確認したとき基板上に現像ムラが少し存在する場合:△
‐超純水に対する接触角が40゜未満であるか、または肉眼で確認したとき基板上に現像ムラが多く存在する場合:×
【0134】
【表1】

【0135】
表1に示すように、本発明によって(F)フッ素系反応性添加剤を含む実施例1〜3の着色感光性樹脂組成物を用いて製造されたカラーフィルタは露光量が40mJ/cmのように低い現像条件下でも現像ムラが発生しなかった。
一方、比較例1〜3の着色感光性樹脂組成物を用いて製造されたカラーフィルタは、露光量が高い現像条件下では現像ムラが発生しなかったが、露光量が低くなると現像ムラが発生した。
【0136】
したがって、本発明の(F)フッ素系反応性添加剤を含む着色感光性樹脂組成物を適用して、現像後に発生し得る現像ムラまたは水汚れなどの表面不良を解決して、工程上の生産性及び収率を向上させ、現像ムラ及びパターン上の欠陥がない高品質のカラーフィルタパターンを形成することができる。
【符号の説明】
【0137】
10…基板、11…着色層、11R…着色層、20…フォトマスク、30…光線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)着色剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)光重合性化合物、(D)光重合開始剤、(E)溶剤及び下記の化学式(1)で表される(F)フッ素系反応性添加剤を含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは独立にエチレン、(イソ)プロピレン、ブチレン、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコールであり、Rは水素またはメチルであり、Rfはフッ素系ポリオールであって、下記の化学式(2)で表される。)
【化2】


(式中、Rはメチレンまたは(ポリ)エチレングリコール構造で互いに対称であり、Rは炭素またはCFO‐(CFCFO)‐(CFO)‐OCFであり、aとbはそれぞれ0または1以上の整数であって、a+bは1〜20の整数であり、Rはそれぞれ互いに独立に水素、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはCH‐O‐CH‐C2P+1であり、Pは1〜10の整数であり、nは1〜20の整数である。)
【請求項2】
前記(F)フッ素系反応性添加剤は、(メタ)アクリルイソシアネートとフッ素系ポリオールの反応で得られた化合物であることを特徴とする請求項1に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリルイソシアネートは、(メタ)アクリルアミンをホスゲン化反応させて製造されるか、ヒドロキシ官能基を有する(メタ)アクリレートと過量のジイソシアネートを反応させて製造されたことを特徴とする請求項2に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記フッ素系ポリオールは、分子構造内にフッ素の含有量が10〜90重量%であり、少なくとも一つのエーテル結合を含むことを特徴とする請求項2に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(F)フッ素系反応性添加剤の含有量は、着色感光性樹脂組成物中の固形分含有量に対して質量分率で0.001〜14質量%であることを特徴とする請求項1に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
基板上部に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の着色感光性樹脂組成物を塗布し、所定のパターンに露光、現像して形成される着色層を含むことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項7】
請求項6に記載のカラーフィルタが具備されたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−53674(P2011−53674A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182392(P2010−182392)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(503454506)東友ファインケム株式会社 (42)
【Fターム(参考)】