説明

着色用組成物

【課題】作業性に問題がなく、着色布の品質(風合い等)にも優れた、顔料による着色法を提供すること。
【解決手段】(A)平均粒子径が0.1〜0.5μmの顔料、疎水基とイオン性基を必須成分とする高分子型分散剤及び水性媒体からなる顔料分散体と(B)架橋剤を配合した着色用組成物であって、該組成物は、着色時に、該高分子型分散剤と架橋剤との間で架橋反応が生起して、顔料を繊維上に固着させるという特性を有する着色用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維の着色用に用いる着色剤には染料と顔料のいずれかがある。染料による着色は、繊維種により構造の異なる染料(着色剤)、即ち、綿、麻などのセルロース繊維には反応性染料又は直接性染料、ウールやシルクなどの動物性繊維には酸性染料、ナイロン繊維には酸性染料又は分散染料、ポリエステル繊維には分散染料、アクリル繊維にはカチオン染料等が使用される。
繊維種に応じて、これらの染料を選択し、様々な染色法により染色されている。例えば、液流染色機、ウィンス染色機などによる吸尽染色を行う浸染染色方法、水に溶解させた染料液に繊維を浸漬するパディング染色方法、水溶性糊料に染料液を配合して繊維上にスクリーン捺染する染色方法、コンマコーターなどによるコーティング方法などがある。
しかし、染料による染色は、浸染染色方法(長時間水中で加熱処理を行い、その後、水洗する)を除き、染色後、染料を固着するために着色した繊維をスチーム加熱(蒸し)して、その後、余剰の染料を水洗ソーピングなどの工程により洗浄する。このように、染料による繊維の着色は、工程が複雑で装置と手間がかかる問題を有し、且つ、大量の水を必要とし、排水などの環境問題も有する。しかし反面、染料で染色された着色布は、風合いが柔軟であり、衣料品としては品質的に好まれている。
【0003】
一方、顔料による着色は、着色剤としての顔料と分散剤としての親水基と親油基を持つ水可溶性の陰イオン性又は非イオン性の界面活性剤を水中で混合した後、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ、ステンレス球などと共にアトライターやミル機で微分散したものが着色剤として用いられている。
この水分散した着色剤を、顔料固着用のエマルジョン樹脂を配合したレジューサーにより希釈し、着色顔料インクとして、繊維上にパディング、コーティング、又はスクリーン版により捺染し顔料を固着させ、その後、必要に応じ乾熱処理を行い、着色布を得る方法である。
よって、顔料による着色方法は、染料による着色方法と異なり、繊維種による着色剤の選定を必要とせず、また、加工方法も、複雑なスチーム加熱(蒸し)工程や水洗工程が不要であり、極めて簡略的に繊維に着色し顔料を固着することができる加工方法である。
しかしながら、顔料による着色方法は、着色布の洗濯堅牢性、摩擦堅牢性などの堅牢性を保持するために固着剤として大量のエマルジョン樹脂を用いなければならないため、着色布の風合いが堅くなり、衣料品としての品質は染料で染色された着色布に劣るものである。
又、着色加工中の作業性の面においても、エマルジョン樹脂が水分の揮発により乾燥してしまい、パディング中に機械を汚す、コーティング中に乾燥膜の混入や機械を汚す、スクリーン捺染中に版の目詰まりや膜張りが起こる、又は着色顔料インクが増粘するなどの問題を有している。
このような顔料による着色に関するものとしては、例えば、平均粒子径200nm以下の顔料粒子と、バインダーポリマー粒子を含む着色剤組成物からなるものが知られている(特許文献1)。
上記の公知方法は、微細化した顔料粒子及びバインダーポリマー粒子を用いてることにより、着色被覆層を薄くし、繊維構造体の風合いを維持、向上し、被覆層の空隙を抑制して、堅牢度を高めることを目的とするものであるが、この方法は、顔料粒子として微細なものを用いるため、着色加工時等の再凝集の防止や微細化手段等に工夫を加える必要がある等の点で、簡便な方法とは言い難い。
以上のように、染料による着色は、着色布の品質(風合い、堅牢性)は優れているが、繊維種による染料の選定が必要であり、工程効率や設備、資源消費などに問題がある。
一方、顔料による着色は、繊維種による染料の選定が不要で工程も簡便なものであるが、作業性等に問題を有しており、着色布の品質(風合い)に劣るものが多いという問題を抱えている。
よって、作業性に問題がなく、着色布の品質(風合い)にも優れた、顔料による着色法の開発が待たれている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−299018
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、作業性に問題がなく、着色布の品質(風合い等)にも優れた、顔料による着色法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題を解決するため鋭意研究を重ねたところ、顔料による繊維の着色において、顔料分散液中の高分子型分散剤を着色時に架橋剤で架橋して、顔料を繊維上に固着させると、優れた品質の着色布が得られることを知り、更に研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下の発明から構成されるものである。
1.(A)平均粒子径が0.1〜0.5μmの顔料、疎水基とイオン性基を必須成分とする高分子型分散剤及び水性媒体からなる顔料分散体と(B)架橋剤を配合した着色用組成物であって、該組成物は、着色時に、該高分子型分散剤と架橋剤との間で架橋反応が生起して、顔料を繊維上に固着させるという特性を有する着色用組成物。
2.顔料と高分子型分散剤の配合割合(重量)が1.0:0.1〜2.0である上記1記載の着色用組成物。
3.イオン性基が、陰イオン性基又は陽イオン性基である上記1又は2記載の着色用組成物。
4.陰イオン性基が、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、又はリン酸基である上記3記載の着色用組成物。
5.陽イオン性基が、1級から3級のアミノ基又は4級アンモニウム塩基である上記3記載の着色用組成物。
6.疎水基及びイオン性基を必須成分とする高分子型分散剤の重量平均分子量が、2,000〜50,000である上記1、2、3、4又は5記載の着色用組成物。
7.架橋剤が、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ樹脂化合物、エチレン尿素化合物、エチレンイミン化合物、メラミン系化合物、有機酸ジヒドラジド化合物、ジアセトンアクリルアミド化合物、カルボジイミド化合物、シランカップリング化合物からなる架橋基を含有するものである上記1、2、3、4、5又は6記載の着色用組成物。
8.上記1、2、3、4、5、6又は7記載の着色用組成物における顔料分散体と架橋剤の配合が、レジューサーの存在下に行われたものである着色インキ。
9.上記8記載の顔料分散体と架橋剤の配合が、湿潤剤、柔軟化剤、又は固着剤からなる添加剤の一種以上の存在下に行われたものである請求項8記載の着色インキ。
10.上記8又は9記載の着色インキで着色した着色繊維。
11.上記10記載の着色繊維が、着色後、ワックス、金属石ケン、シリコーン、又はエマルジョン樹脂により全面にパディングする後処理を行ったものである請求項10記載の着色繊維。
【0008】
本発明は、以下の知見に基づいてなされたものである。
1)従来の顔料を着色剤として用いる方法の問題点
従来の顔料による繊維の着色は、非イオン性界面活性剤又は陰イオン性界面活性剤を分散剤として用い顔料を水分散したものを着色剤とし、それをレジューサーとエマルジョン樹脂により適量希釈配合して着色インクとし、繊維上に吸尽、パディング、コーティング、スクリーン・ローラー捺染で着色し、乾燥させ、必要に応じて、熱処理を行うことで着色布とすることができる。
しかし、下記に記す問題点を有していた。
(問題点1)
従来の顔料分散剤は、非イオン性界面活性剤、或いは、陰イオン性界面活性剤が通常使用されており、これらの界面活性剤は、着色時には繊維との親和性の悪さから顔料の固着を阻害し、又繊維布に残った界面活性剤はその水溶性のために繊維布の洗濯堅牢性、摩擦堅牢性などを悪化させている。
(問題点2)
従来の顔料分散体を用いた着色インクは、顔料を固着するためのエマルジョン樹脂を大量に用いることで繊維布の洗濯堅牢性、摩擦堅牢性などを確保している。
しかし、大量のエマルジョン樹脂を用いることで、繊維布の風合いが硬くなり、品質を低下させている。
(問題点3)
着色インク中の大量のエマルジョン樹脂は、加工中にインク中の水分が蒸発してエマルジョン樹脂が固化(水不溶化)し、パディングやコーティングでは機械を汚す、膜が張る、固化した異物が着色布に付着して品質を低下させる等の問題が生じる。また、スクリーン捺染やローラー捺染では、版の目詰まり、或いは、インクの増粘等の問題が生じ作業性が悪くなる欠点を有している。
(問題点4)
問題点3の大量のエマルジョン樹脂による作業性の問題の改善として、従来、湿潤剤を着色インク中に配合することで乾燥速度を遅らせていたが、作業性の問題を払拭する程の多量の湿潤剤の添加は着色布の堅牢性を大きく低下させるため、問題解決には至っていない。
【0009】
2)解決法
上記の問題は、以下の方法により、解決することが分かった。
(解決法1)
顔料分散剤として疎水基とイオン性基をもつ高分子型分散剤を使用し、顔料の固着(着色)時に架橋剤により高分子型分散剤のイオン性基を架橋させることにより、親水性であったイオン性基を封鎖する。このことにより、分散剤は非水溶性となり、従来の界面活性剤を用いた分散剤のように繊維布の洗濯堅牢性、摩擦堅牢性などを悪化させることはなくなった。
(解決法2)
架橋剤を用いて高分子型分散剤のイオン性基を架橋させることにより、分散剤が非水溶性となり、更に樹脂化して大きな高分子体となることで、顔料の固着剤としての機能を有することとなる。このことより、従来の顔料分散体を用いた着色インクのように、大量のエマルジョン樹脂を用いることなく、繊維布の洗濯堅牢性、摩擦堅牢性などを確保できる。
また、大量のエマルジョン樹脂を用いないので、繊維布の風合いが硬くなることもなく、通気性があるものとなり、染料で着色された着色布と遜色ない優れた品質の着色布を得ることができる。
(解決法3)
従来の顔料分散体を用いた着色インクに用いていた大量のエマルジョン樹脂は、着色加工中に固化し、作業性に様々な悪影響を与えていた。本発明は大量のエマルジョン樹脂を用いることなく加工できるため、着色加工中に樹脂が固化することもなく、作業性が大幅に改善された。
(解決法4)
本発明は、大量のエマルジョン樹脂を用いることなく加工できるため、エマルジョン樹脂の乾燥速度を遅らせるための湿潤剤は必要ないか、又は少量で良くなるため、着色布の堅牢性に悪影響を与えることもなくなった。
【0010】
以上の解決法に基づいた、本発明の着色性組成物は、顔料、疎水基並びにイオン性基を必須成分とする高分子型分散剤及び水性媒体から構成される顔料分散体と架橋剤を配合してなるものであって、着色時に、高分子型分散剤のイオン性基を架橋剤で架橋して、非水溶性にするとともに、更なる高分子化により固着性を高めて、顔料を繊維上に固着させるという特性を有する点に特徴を有するものである。
本発明の着色用組成物から製造した着色繊維製品は、風合い、洗濯堅牢性、摩擦堅牢性、捺染作業性の何れにおいても優れているという特段の効果を奏する。
本発明の着色性組成物は、顔料分散剤として用いた高分子型分散剤を架橋剤で架橋させて、顔料固着成分としても使用する、即ち、高分子型分散剤に対して2つの機能を発揮させるという、今までにない合理的な手段を採用することにより、上記のような高品質の着色繊維製品の製造を可能としたものである。
このように、本発明の優れた効果は、疎水基とイオン性基を必須成分とする高分子型分散剤と架橋剤の併用による相乗効果によりもたらされたものであり、両者の何れが欠けても、本発明の目的は達成し得ないことからみて、本発明の構成の選択には格別の意義があることが分かる。
【0011】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の着色用組成物は、顔料、疎水基とイオン性基を必須成分とする高分子型分散剤及び水性媒体から構成される顔料分散体と架橋剤を配合した着色用組成物であって、該組成物は、着色時に、高分子型分散剤のイオン性基と架橋剤との間で架橋反応が生起して、顔料を繊維上に固着させるという特性を有する点に特徴を有するものであり、該着色用組成物を用いて、高品質の着色繊維を製造することができる。
本発明の着色組成物は、顔料分散体と架橋剤を配合したものであるが、該配合をレジューサーの存在下に行うことにより、着色インキを調製した後、繊維を着色インキで着色して着色繊維を効率よく製造することができる。
【0012】
1.着色用組成物
本発明の着色用組成物は、以下の(A)顔料及び高分子型分散剤を有効成分とする顔料分散体と(B)架橋剤を配合したものである点に特徴を有する。
顔料分散体の有効成分である、顔料と高分子型分散剤の配合割合(重量)は、1.0:0.1〜2.0とするのがよい。
また、顔料分散体と架橋剤の配合割合(重量)は、1:0.5以上とするのがよい。
【0013】
(A)顔料分散体
本顔料分散体は、以下の、(1)顔料、(2)高分子型分散剤、及び(3)水性媒体から製造される。
(1)顔料
本発明の顔料は、平均粒子径が0.1〜0.5μmのものを用いることが必要であり、該範囲を逸脱すると、所期の目的を達成することができない。
本発明の顔料分散体に用いる顔料としては、有機顔料、無機顔料を問わず、繊維製品の着色剤として用いることのできる顔料であれば、何れも使用することができる。
例えば、黒色顔料としてのカーボンブラック、酸化鉄黒顔料など、赤色顔料としてのキナクリドン系顔料、クロムフタール系顔料、アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラキノン系顔料など、黄色顔料としてのアゾ系顔料、イミダゾロン系顔料、チタン黄色顔料など、オレンジ顔料としてのインダンスレン系顔料、アゾ系顔料など、青色系顔料としてのフタロシアニン系顔料、群青、紺青など、緑色顔料としてのフタロシアニン系顔料など、紫色顔料としてのジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料など、白色顔料としての酸化チタン、アルミニウムシリケート、酸化ケイ素などを用いることができるが、必ずしもこれ等に限定されるものではない。
【0014】
(2)高分子型分散剤
本発明に用いる高分子型分散剤は、疎水基とイオン性基を必須成分とする高分子型分散剤であり、以下の特性を有する。
1)分散性
顔料分散体時に顔料表面に吸着し水となじませ(濡れさせる)、機械的作用により摩砕させた顔料微粒子を静電反発(斥力)や立体反発により微粒子の再凝集を防止し、沈降生成の抑制の機能を有する。
2)架橋性
着色時には、架橋剤の作用により架橋し、固着剤としての機能を有するものである。
3)分子量
高分子型分散剤は、顔料に対して、分散効果の最適な分子量があり、その分子量を超えて大きくなると顔料と顔料の間での橋渡しを引き起こし顔料の凝集を招く。
一方、最適な分子量よりも小さいと顔料からの脱着が起こりやすく分散剤としての効果が小さくなる。又、分子量が小さくなると架橋させた後の固着剤としての効果が弱くなる。
従って、本高分子型分散剤としては、重量平均分子量が2,000〜50,000のものを用いるのがよい。
4)構造(形態)
本発明の高分子型分散剤は、必須成分として、疎水基(電気的に中性の非極性物質で水と親和性が低い)とイオン性基(電気的にイオン性の極性物質で、水との親和性が高い)からなり、その構造は、直鎖又は分岐したものいずれでもよく、ランダム、交互、周期、ブロックのいずれの構造でもよく、幹と枝の構造がデザインされたグラフトポリマーであってもよい。
高分子型分散剤は、水性媒体に配合した状態が、水溶液、ディスパージョン、エマルジョンのいずれのものでも用いることができる。
本発明は、イオン性基を架橋剤により架橋させることに特徴があるが、必須成分の疎水基とイオン性基の他に含有している基をイオン性基と併せて架橋させてもよい。
5)形成法
本発明の高分子型分散剤は、疎水基含有単量体とイオン性基含有単量体とを共重合させることにより製造できる。尚、それぞれの単量体は一種類のみでも、又は二種類以上用いてもよい。
上記の疎水基含有単量体及びイオン性基含有単量体としては、以下のものがある。
(疎水基含有単量体)
疎水基含有単量体としては、例えば、スチレン系単量体、フェニル基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、アルキルビニルエーテル類、(メタ)アクリロニトリル等のビニル単量体;ポリイソシアネートとポリオール又はポリアミン等から形成されるウレタン基含有ビニル単量体;エピクロルヒドリンとビスフェノール等から形成されるエポキシ基含有ビニル単量体;多価カルボン酸とポリアルコール等を単量体から形成されるエステル基含有ビニル単量体;オルガノポリシロキサン等から形成されるシリコーン基含有ビニル単量体などが挙げられる。
次に、イオン性基には、陰イオン性基と陽イオン性基があるが、これらのイオン性基を与える単量体としては、以下のものがある。
(陰イオン性基含有単量体)
陰イオン性基含有単量体として、以下の不飽和カルボン酸単量体、不飽和スルホン酸単量体、不飽和リン酸単量体、又はこれらの無水物や塩等を用いることができる。
不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル等またはそれらの無水物及び塩などが挙げられる。
不飽和スルホン酸単量体としては、例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシアルキルの硫酸エステル等、又はそれらの塩等が挙げられる。
不飽和リン酸単量体としては、例えば、ビニルホスホン酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)の燐酸エステル、(メタ)アクリル酸アルキルホスホン酸類等が挙げられる。
(陽イオン性基含有単量体)
陽イオン性基含有単量体として、以下の、不飽和アミン含有単量体、不飽和アンモニウム塩含有単量体等を用いることができる。
不飽和アミン含有単量体としては、例えば,ビニルアミン、アリルアミン、ビニルピリジン、メチルビニルピリジン、N,N−ジアルキルアミノスチレン、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノエチルビニルエーテル等が挙げられる。
不飽和アンモニウム塩含有単量体としては、上記不飽和3級アミン含有単量体を4級化剤で4級化させたもの等が挙げられる。
(その他)
高分子型分散剤の形成法としては、上記の共重合法によるもの以外に、例えば、イオン性基を予め導入したウレタン形成基含有単量体をウレタン重合、又はイオン性基を予め導入したエポキシ形成基含有単量体をエポキシ重合するなどの方法も採用することができる。
また、基幹の高分子を重合形成した後、目的のイオン性基を導入することで、本発明の高分子分散剤と得ることもできる。
なお、本発明の高分子型分散剤は、必須成分の疎水基とイオン性基の外に、その他の成分を含有していてもよく、例えば、イオン性を伴わない、ヒドロキシル基やアミド基を持つポリエチレンオキサイド、ポリオールやヒドロキシアルキルエステル類含有単量体、アクリルアミド、ヒドロキシアルキルアクリレート、酢酸ビニル、ビニルアルコール、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン等を単量体として共重合させることができる。
【0015】
(3)水性媒体
本水性媒体としては、水や水溶性有機溶剤等を用いることができる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、t−ブタノール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオ−ル、チオグルコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,5−ペンタンジオ−ル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0016】
(4)顔料分散体の調製
上記の(1)顔料、(2)高分子型分散剤、(3)水性媒体を混合し、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズなどを用いてミル分散機で処理することで顔料分散体が得られ、平均粒径0.1〜0.5μmとするのが着色濃度、鮮明性、堅牢性に優れ好ましい。平均粒径0.1μm未満のものは分散に長時間を要し、顔料の凝集による作業上の問題や着色濃度が低下する問題が生じる恐れがあり、平均粒径0.5μm以上のものは着色濃度に乏しく、不鮮明の着色剤となり、また、着色布の堅牢性が悪く好ましくない。
また、これ等顔料分散体には、必要に応じ湿潤剤としてのグリコール溶剤、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどや、尿素、ヒアルロン酸、ショ糖などを添加することができる。
その他に、分散助剤としての非イオン性界面活性剤や陰イオン界面活性剤を添加することができるが、これ等の、界面活性剤は、本発明の顔料分散体としての性能を低下させるため、多量に配合することは好ましくない。
【0017】
(B)架橋剤
本発明の架橋剤は、顔料分散剤として疎水基とイオン性基をもつ高分子型分散剤のイオン性基を架橋させることにより、親水性であるイオン性基を封鎖し、高分子型分散剤を非水溶性の大きな樹脂様高分子体とすることで、顔料の固着剤としての機能を生じさせるものである。
上記のように、分散剤の親水性であるイオン性基を架橋により疎水性としたため、耐水性が向上して、従来の界面活性剤を用いた分散剤のように繊維布の洗濯堅牢性、摩擦堅牢性などを悪化させることはなくなり、分散剤が固着剤の機能を有するために、従来の顔料分散体を用いた着色インクのように、大量のエマルジョン樹脂を用いることなく顔料の固着が可能となり、繊維布の洗濯堅牢性、摩擦堅牢性などを確保できる。
従って、大量のエマルジョン樹脂を用いないことで、繊維布の風合いが硬くなることもなく、通気性があるものとなり高品位の着色布が得られることになる。
架橋剤としては、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ樹脂化合物、エチレン尿素化合物、エチレンイミン化合物、メラミン系化合物、有機酸ジヒドラジド化合物、ジアセトンアクリルアミド、カルボジイミド、シランカップリング剤からなる架橋基を含有する化合物であれば、特に限定されない。これらの架橋剤は複数併用して用いることもできる。
なお、架橋剤は、その反応性のため、着色インク中で徐々に硬化が進行する、いわゆるポットライフが生じるため、着色加工の直前に配合される。ただし、官能基をブロックやプロテクトされている架橋剤は、インク中で硬化が進行することがないため、下記で述べるレジューサー中に予め配合して用いることもできる。
【0018】
2.着色インク
着色インクは、繊維を着色するためのインクであり、上記の着色組成物を、以下のレジューサーに配合することにより得ることができる。
(1)レジューサー
本発明の着色組成物を用いて、そのまま繊維に着色することは顔料濃度や粘度の関係でできない。そのため、着色組成物を加工方法に応じた粘度のレジューサーにより任意に希釈して加工方法に適した顔料濃度をもつ着色インクとして用いる。
本発明中のレジューサーとは、水性の希釈剤のことを指し、ターペンを含むターペンレジューサー、又はターペンを含まないターペンレスレジューサーの何れも使用することができる。
ターペンレジューサーは、水とターペンを非イオン界面活性剤により乳化し、糊状としたものであり、非イオン界面活性剤の種類を変えること、及び、水とターペンの比率を変えることで、加工方法に応じた様々な粘性と粘度のレジューサーが得られる。
また、ターペンレスレジューサーは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、アルギンなどの水溶性糊料を水に溶解させたもの、又は、アルカリ可溶型の架橋されたアクリル樹脂、アルカリ増粘型のアクリル酸ポリマー等を水で任意に希釈し糊状としたものを用いることができ、その種類や濃度により様々な粘性と粘度のレジューサーが得られる。ターペンレスレジューサーには着色布の堅牢性の点から水溶性糊料ではなく樹脂型の増粘剤を用いることが好ましい。
【0019】
(2)着色インクの調製
着色インクの粘度、粘性は、加工方法に準じた調整が必要であり、概ねパディング法では、100〜1,000mPa/s、ローラー捺染では、1,000〜5,000mPa/s、スクリーン捺染では、3,000〜100,000mPa/s、ナイフコーティングでは、1,000〜5,000mPa/sに調整したインキを用いる。通常、この粘度は、予めレジューサーの粘度を調整しておくことによりもたらされる。
また、着色インクに占める着色組成物の量は、着色組成物の顔料濃度や必要とするインク濃度により異なるが、0.1〜20重量%の配合がよい。
着色インクには、下記の添加剤等を適時配合することができる。その場合の配合は、予めレジューサーに混合していてもよく、着色インクに後から添加してもよい。
1)固着剤
固着剤として樹脂エマルジョンを少量配合することにより、堅牢度をより向上させる事ができる。
顔料は、本発明の分散剤の架橋により固着されているため、従来の顔料インクのように大量の樹脂エマルジョンを配合する必要はなく、又、着色布の品質や作業性の観点からも着色インクに対して10重量%以上の配合は好ましくなく、堅牢度が保たれる最小の量に留めるのがよい。
固着剤として配合する樹脂エマルジョンとしては、特に限定するものではないが、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、EVA樹脂エマルジョン、シリコーン/アクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョンなどを用いることができ、着色布の風合いを柔らかくするために、これ等の樹脂エマルジョンのガラス転移点が0℃以下であることが好ましい。
2)湿潤剤
着色時の作業性改善のために、必要に応じ、湿潤剤として、親水性溶剤又は尿素を配合することで、インクの乾燥を遅らすことができる。
親水性溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
本発明の着色インクは、固着剤として、大量の樹脂エマルジョンが必要ではないので、湿潤剤は、従来の顔料インクに比べ、少量で目的を達することができる。
3)可塑剤
着色布の風合いの柔らかさをより得るために、可塑剤を添加することができる。
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、シリコーンオイル、芳香族エステル類、脂肪族エステル類、鉱油、植物油、動物油、パラフィンなどを用いることができる。 従来の顔料着色では、固着剤として、大量の樹脂エマルジョンを配合しているため風合いが硬く、それを柔軟化するため、着色インクに可塑剤を大量に配合していた。
これに対して、本発明の着色は、固着剤として、大量の樹脂エマルジョンが必要ではないので、風合いは柔らかいものであるが、より一層の柔軟性を得るため、可塑剤を少量配合することで、染料による着色に劣らない品質の着色布が得られる。
4)その他
通常、着色インクに用いられる公知慣用の各種添加剤を添加してもよく、例えば、スベリ性の向上させるためのワックス類や金属石鹸類、シリコーンオイル、耐光性を向上させるための紫外線吸収剤や酸化防止剤、PH調整のためのアンモニア水、アミン類、有機酸、無機酸、繊維への浸透性を向上させるための浸透剤、硬化を促進させるための硬化触媒などを添加することもできる。
【0020】
3.着色加工
(1)着色方法
繊維を着色するための着色方法としては、着色インクに繊維を浸漬しマングル等で絞り乾燥固着させるパディング法、凹版を用いて着色インクを繊維上に着色し乾燥固着させるローラー捺染法、スクリーン版で着色インクを繊維上にプリント捺染し乾燥固着させるスクリーン捺染法等がある。
なお、スクリーン捺染法には、加工機種として、オートスクリーン捺染機、ハンドスクリーン捺染機、ロータリー捺染機、円形自動捺染機、楕円形自動捺染機等がある。
また、着色インクを繊維上に全面コーティングし乾燥固着するコーティング法があり、コーティング機械としては、ナイフコーター、ワイヤーコーター、コンマコーターなどがある。
また、セルロース繊維をカチオン化剤により予め前処理し、その後、本発明の顔料分散体をイオン吸着させる吸尽染色法があり、染色機械としては、パドル型染色機、ドラム型染色機、ウィンス型染色機、液流染色機などを用いることができる。
なお、着色方法は、例示した方法に限定されるものではなく、本発明の着色組成物を用いた繊維の着色が可能な方法であれば、何れの方法も適用できる。
【0021】
(2)熱処理
着色インクを用いて繊維を着色した着色布は、着色組成物の高分子型分散剤を架橋剤により架橋硬化させる。着色布は乾燥の後、室温においても架橋反応は徐々に進行するが、より架橋硬化を促進させるため熱処理を行うことが好ましく、通常100℃〜180℃で3〜10分間の熱処理を行うことで目的を達する。
【0022】
(3)後処理
着色布に後処理剤を全面にパディング処理することで、風合いの柔軟性や堅牢性(特に摩擦堅牢性)が向上した着色布を得ることができる。
柔軟化を目的とした後処理剤としては、カチオン系・アニオン系・非イオン系界面活性剤、ジメチルシリコーンオイル、アミノシリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、ヒドロキシ変性シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸アマイド、鉱物油、植物油、動物油、可塑剤などが挙げられる。
また、着色繊維表面のスベリ性を向上させる目的の後処理剤としては、金属石鹸、パラフィンワックス、カルナバワックス、マイクロスタリンワックス、ジメチルシリコーンオイル、アミノシリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、ヒドロキシ変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
パディング処理は、これ等後処理剤を水溶媒にミキサー攪拌により乳化、熱乳化、又は分散したものに、着色布を浸漬しマングル等で絞り乾燥、熱処理を加えて処理する。
また、後処理剤中に固着剤として樹脂エマルジョンを少量配合することにより、着色布の摩擦堅牢性を向上させることができる。後処理剤に対しての配合量は5%未満が好ましく、5%以上配合すると着色布の風合いの柔らかさが損なわれるため好ましくない。
後処理剤に固着剤として配合する樹脂エマルジョンとしては、特に限定するものではないが、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、EVA樹脂エマルジョン、シリコーン/アクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョンなどを用いることができ、着色布の風合いを柔らかくするために、これ等の樹脂エマルジョンのガラス転移点が0℃以下であることが好ましい。
【0023】
4.繊維製品
本発明の着色組成物(インキ)が適用し得る繊維製品としては、以下のものがある。
生地布帛(繊維種)としては、ナイロン、ポリエステル、アクリロニトリル等の合成繊維、アセテート、レーヨン等の半合成繊維、綿、絹、毛等の天然繊維、及びこれらの混合繊維、織物、編み物、不織布等が挙げられる。
衣料品としては、Tシャツ、トレーナー、ジャージ、パンツ、スウェットスーツ、ワンピース、寝具、ハンカチ、ブラウス等が挙げられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の着色用組成物から製造した着色繊維製品は、風合い、洗濯堅牢性、摩擦堅牢性、捺染作業性の何れの特性においても、優れた効果を奏するので、本発明の着色用組成物には高い価値がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらのものに限定されない。なお、実施例等にいう「部」は、特に断らない限り、「重量部」を意味する。
(実施例1)
<顔料分散体の調整>
アゾ系赤色有機顔料(C.I.ピグメントレッド150)25部、イオン性基としてカルボキシル基、疎水基としてフェニル基を持つ重量平均分子量8,500の高分子型分散剤(ジョンクリル62:BASFジャパン(株)製)25部、プロピレングリコール 5部、水 45部を混合し、アトライター(0.6mm径のガラスビーズ、バッチ式分散機)にて48時間分散し、0.285μmの赤色顔料分散体1を得た。
<レジューサーの調整>
水 95部とポリアクリル樹脂系増粘剤(アルコプリントPTF:チバスペシャリティケミカル(株)製)2.5部を均一に攪拌混合させて、ターペンレスレジューサー(レジューサー1)を得た。
<着色インクの調整>
上記の赤色顔料分散体1 5部、上記のレジューサー1 95部、ブロックイソシアネート系架橋剤(フィクサーN:(株)松井色素化学工業所製)3部を配合して、スクリーン捺染用着色インク1を得た。
<着色方法>
上記スクリーン捺染用着色インクを100メッシュの水玉柄のスクリーン型を用いて綿ニット上にハンドプリントし、乾燥機にて100℃で乾燥した後、130℃で3分間の熱処理を行って、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0026】
(実施例2)
<顔料分散体の調整>
アゾ系赤色有機顔料(C.I.ピグメントレッド150)25部、イオン性基としてカルボキル基、疎水基としてフェニル基を持つ重量平均分子量16,500の高分子型分散剤(ジョンクリルHPD96:BASFジャパン(株)製)25部、プロピレングリコール 5部、水 45部を混合し、ビーズミル(0.3mm径のジルコニアビーズ、連続式分散機)にて3時間分散し、0.238μmの赤色顔料分散体2を得た。
<着色インクの調整>
実施例1の赤色顔料分散体1を上記で得た赤色顔料分散体2に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク2を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク2に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0027】
(実施例3)
<顔料分散体の調整>
実施例1の顔料分散体1の調整において、アトライターによる分散時間を24時間に短くし、次いでビーズミル(0.1mm径のジルコニアビーズ、連続式分散機)にて2時間分散した以外は、全て実施例1と同様にして、0.185μmの赤色顔料分散体3を得た。
<着色インクの調整>
実施例1の赤色顔料分散体1を上記で得た赤色顔料分散体3に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク3を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク3に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0028】
(実施例4)
<顔料分散体の調整>
アゾ系赤色有機顔料(C.I.ピグメントレッド150)25部、イオン性基としてカルボキル基、疎水基としてフェニル基を持つ重量平均分子量8,500の高分子型分散剤(ジョンクリル62:BASFジャパン(株)製)10部、イオン性基としてカルボキル基、疎水基として飽和ポリエステル基を持つ重量平均分子量10,000の高分子型分散剤(ペスレジンA−210:(株)高松油脂製)15部、プロピレングリコール 5部、水 45部を混合し、アトライター(0.6mm径のガラスビーズ、バッチ式分散機)にて48時間分散し、0.296μmの赤色顔料分散体4を得た。
<着色インクの調整>
実施例1の赤色顔料分散体1を上記で得た赤色顔料分散体4に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク4を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク4に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0029】
(実施例5)
<顔料分散体の調整>
アゾ系赤色有機顔料(C.I.ピグメントレッド150)25部、イオン性基としてカルボキル基、疎水基としてフェニル基を持つ重量平均分子量8,500の高分子型分散剤(ジョンクリル62:BASFジャパン(株)製)10部、イオン性基としてカルボキル基、疎水基としてウレタン基を持つ重量平均分子量5,500の高分子型分散剤(フレックス300:(株)第一工業製薬製)15部、プロピレングリコール 5部、水 45部を混合し、アトライター(0.5mm径のガラスビーズ、バッチ式分散機)にて48時間分散し、0.256μmの赤色顔料分散体5を得た。
<着色インクの調整>
実施例1の赤色顔料分散体1を上記で得た赤色顔料分散体5に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク4を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク5に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0030】
(実施例6)
<レジューサーの調整>
水 95部とポリアクリル樹脂系増粘剤(アルコプリントPTF:チバスペシャリティケミカル(株)製)2.5部、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC:クエン酸系可塑剤)3部を均一に攪拌混合させて、ターペンレスレジューサー(レジューサー2)を得た。
<着色インクの調整>
実施例1のレジューサー1を上記で得たレジューサー2に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク6を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク6に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0031】
(実施例7)
<着色インクの調整>
実施例1のレジューサー1を実施例6で得たレジューサー2に、実施例1の架橋剤のフィクサーNをエチレンイミン系架橋剤(フィクサーF:(株)松井色素化学工業所製)にそれぞれ代えた以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク7を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク7に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0032】
(実施例8)
<着色インクの調整>
実施例1のレジューサー1 95部を92部に減量して、固着剤としてのアクリル樹脂エマルジョン(マツミンゾールMR50:(株)松井色素化学工業所製)3部を配合した以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク8を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク8に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0033】
(実施例9)
<着色インクの調整>
実施例1のレジューサー1を実施例6で得たレジューサー2に代え、固着剤としてのマツミンゾールMR50 3部を配合した以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク9を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク9に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0034】
(実施例10)
<着色インクの調整>
実施例1のレジューサー1 95部を90部に減量して、湿潤剤としてのエチレングリコール 5部を配合した以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク10を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク10に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0035】
(実施例11)
<レジューサーの調整>
水 55部、非イオン性界面活性剤(エマルゲン905:(株)花王製)3部、非イオン性界面活性剤(エマコールR−600:(株)松井色素化学工業所製)2部、ターペン 45部を均一に攪拌混合させターペンレジューサー(レジューサー3)を得た。
<着色インクの調整>
実施例1のレジューサー1を上記で得たレジューサー3に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク11を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク11に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0036】
(実施例12)
<後処理剤の調整>
シリコーンエマルジョン(ワッカーフィニッシュCT−14:旭化成ワッカーシリコン(株))5部、水 95部を均一に攪拌混合させて、後処理剤1を得た。
<後処理>
実施例6と同様に着色インク6を調整し、加工(100メッシュの水玉柄のスクリーン型を用いて綿ニット上にハンドプリント)した後、上記の後処理剤1をパディングし、直ちにマングルを用いてピックアップ率70%で絞り、乾燥機にて100℃で乾燥した後、130℃で3分間の熱処理を行い、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0037】
(実施例13)
<後処理剤の調整>
ワッカーフィニッシュCT−14 5部、マツミンゾールMR50(固着剤) 3部、水 92部を均一に攪拌混合させて、後処理剤2を得た。
<着色インクの調整・スクリーン捺染方法による加工・後処理加工>
実施例7と同様に着色インク7を調整し、加工(100メッシュの水玉柄のスクリーン型を用いて綿ニット上にハンドプリント)した後、上記の後処理剤2をパディングし、直ちにマングルを用いてピックアップ率70%で絞り、乾燥機にて100℃で乾燥した後、130℃で3分間の熱処理を行い、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0038】
(実施例14)
実施例9と同様に着色インク9を調整し、加工(100メッシュの水玉柄のスクリーン型を用いて綿ニット上にハンドプリント)した後、実施例13に用いた後処理剤2をパディングし、直ちにマングルを用いてピックアップ率70%で絞り、乾燥機にて100℃で乾燥した後、130℃で3分間の熱処理を行い、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0039】
(比較例1)
<顔料分散体の調整>
アゾ系赤色有機顔料(C.I.ピグメントレッド150)25部、非イオン界面活性剤(エマルゲン911:(株)花王製)15部、プロピレングリコール 5部、水 55部を混合し、アトライター(0.6mm径のガラスビーズ、バッチ式分散機)にて48時間分散し、0.305μmの赤色顔料分散体6を得た。
<着色インクの調整>
実施例1の赤色顔料分散体1を上記で得た赤色顔料分散体6に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク12を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク12に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0040】
(比較例2)
<顔料分散体の調整>
アゾ系赤色有機顔料(C.I.ピグメントレッド150)25部、陰イオン界面活性剤(ハイテノールN−17:第一工業製薬(株)製)18部、プロピレングリコール 5部、水 52部を混合し、アトライター(0.6mm径のガラスビーズ、バッチ式分散機)にて48時間分散し、0.298μmの赤色顔料分散体7を得た。
<着色インクの調整>
実施例1の赤色顔料分散体1を上記で得た赤色顔料分散体7に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク13を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク13に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0041】
(比較例3)
<着色インクの調整>
実施例1のブロックイソシアネート系架橋剤(フィクサーN)3部を配合しないこと以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク14を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク14に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0042】
(比較例4)
<着色インクの調整>
比較例1のレジューサー1 95部を65部に減量して、固着剤としてのアクリル樹脂エマルジョン(マツミンゾールMR50)30部を配合した以外は、全て比較例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク15を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク15に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0043】
(比較例5)
<着色インクの調整>
比較例2の赤色顔料分散体7 5部、実施例6のレジューサー2 65部、固着剤としてのアクリル樹脂エマルジョン(マツミンゾールMR50)30部、ブロックイソシアネート系架橋剤(フィクサーN)3部を配合して、スクリーン捺染用着色インク16を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク16に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0044】
(比較例6)
<顔料分散体の調整>
実施例1の顔料分散体1の調整において、アトライターによる分散時間を20時間に短くした以外は、全て実施例1と同様にして、0.623μmの赤色顔料分散体8を得た。
<着色インクの調整>
実施例1の赤色顔料分散体1を上記で得た赤色顔料分散体8に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、スクリーン捺染用着色インク17を得た。
<着色方法>
実施例1の着色インク1を、上記の着色インク17に代えた以外は、全て実施例1と同様にして、赤色の水玉模様の着色布を得た。
【0045】
(参考例1)
<着色インクの調整>
赤色反応性染料(C.I.リアクティブレッド120)5部、カルボキシメチルセルロース(ファインガムLV−2:(株)第一工業製薬製)5部、エチレングリコール5部、重炭酸ナトリウム 3部、水 82部を混合してスクリーン捺染用着色インク18とした。
<着色方法>
上記スクリーン捺染用着色インク18を100メッシュの水玉柄のスクリーン型を用いて綿ニット上にハンドプリントし、乾燥機にて100℃で乾燥した後、100℃で15分間のスチーム処理を行って、次いで、水洗、ソーピング処理を順に行って、赤色の水玉模様の着色布を得た。
以上の実施例、比較例及び参考例の評価は、以下の表1〜6に示す。
着色布の評価は、以下の方法で行った。
捺染作業性 :染料での捺染(参考例1)を100とした時の相対評価
風合い :手触りによる評価(未処理布を100とした時の相対評価
洗濯堅牢度 :JIS L−1029 103法5回の評価(5級法)
湿摩擦堅牢度 :JIS L−0829 学振型摩擦試験(5級法)
粒度 :粒度分布計(HORIBA LA−700)にて測定
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
【表4】











































【0050】
【表5】

【0051】
【表6】










































【0052】
なお、参考例1の結果は、以下のとおりである。

風合い :100
捺染作業性 :100
洗濯堅牢度 : 4
摩擦堅牢度(乾): 4
摩擦堅牢度(湿): 3

【0053】
以上の表1〜6の結果から、以下のことがいえる。
(1)顔料分散剤として、本発明の高分子型分散剤の代わりに、従来の低分子型界面活性剤を用いた場合には、風合いや捺染作業性は良いが、洗濯堅牢度や摩擦堅牢度は悪化する(比較例1、2)。
(2)上記の場合、固着剤として、通常の樹脂固着剤を通常量用いた場合には、洗濯堅牢度や摩擦堅牢度は向上するが、風合が硬くなり、作業性が悪化する(比較例4、5)。
(3)本発明の高分子型分散剤に、架橋剤を作用させない場合は、堅牢度が得られない(比較例3)。
(4)本発明の高分子型分散剤により分散された顔料の粒度が本発明の範囲外のものを用いると、捺染作業性や風合いはよいが、堅牢度が悪化する(比較例6)。
(5)本発明の高分子型分散剤により分散された着色顔料分散体を架橋剤により架橋させる技術により、染料により着色された着色布と遜色ない風合いの柔軟な繊維布が得られる。また、スクリーン捺染中にスクリーン紗の目詰まりやインクの増粘が起こることなく捺染作業性は良好であり、各堅牢度も優れた着色布が得られた。
(実施例1〜14、参考例1)
以上のことから、本発明の疎水基及びイオン性基を必須成分とする高分子型分散剤と架橋剤の併用には、格別の意義があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の着色用組成物により、優れた品質の着色繊維製品を製造することが可能となるので、その価値は大である。











【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒子径が0.1〜0.5μmの顔料、疎水基とイオン性基を必須成分とする高分子型分散剤及び水性媒体からなる顔料分散体と(B)架橋剤を配合した着色用組成物であって、該組成物は、着色時に、該高分子型分散剤と架橋剤との間で架橋反応が生起して、顔料を繊維上に固着させるという特性を有する着色用組成物。
【請求項2】
顔料と高分子型分散剤の配合割合(重量)が1.0:0.1〜2.0である請求項1記載の着色用組成物。
【請求項3】
イオン性基が、陰イオン性基又は陽イオン性基である請求項1又は2記載の着色用組成物。
【請求項4】
陰イオン性基が、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、又はリン酸基である請求項3記載の着色用組成物。
【請求項5】
陽イオン性基が、1級から3級のアミノ基又は4級アンモニウム塩基である請求項3記載の着色用組成物。
【請求項6】
疎水基及びイオン性基を必須成分とする高分子型分散剤の重量平均分子量が、2,000〜50,000である請求項1、2、3、4又は5記載の着色用組成物。
【請求項7】
架橋剤が、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ樹脂化合物、エチレン尿素化合物、エチレンイミン化合物、メラミン系化合物、有機酸ジヒドラジド化合物、ジアセトンアクリルアミド化合物、カルボジイミド化合物、シランカップリング化合物からなる架橋基を含有するものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の着色用組成物。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の着色用組成物における顔料分散体と架橋剤の配合が、レジューサーの存在下に行われたものである着色インキ。
【請求項9】
請求項8記載の顔料分散体と架橋剤の配合が、湿潤剤、柔軟化剤、又は固着剤からなる添加剤の一種以上の存在下に行われたものである請求項8記載の着色インキ。
【請求項10】
請求項8又は9記載の着色インキで着色した着色繊維。
【請求項11】
請求項10記載の着色繊維が、着色後、ワックス、金属石ケン、シリコーン、又はエマルジョン樹脂により全面にパディングする後処理を行ったものである請求項10記載の着色繊維。












【公開番号】特開2009−150010(P2009−150010A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328259(P2007−328259)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(390039583)株式会社松井色素化学工業所 (13)
【Fターム(参考)】