説明

着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法ならびに着色中空容器

【課題】色相のバラツキがなく、更に、耐熱性および耐加水分解性も良好な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】以下の成分(a)〜(c)から成り、成分(a)100重量部に対する、成分(b)の割合が0.00001〜0.05重量部、成分(c)の割合が0.0001〜0.5重量部である着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法であって、成分(b)を成分(c)に分散させた後、溶融状態の成分(a)に添加する。(a)粘度平均分子量が16,000以上であり、かつ、特定の構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(b)フタロシアニン系化合物、アンスラキノン系化合物および群青の群から選ばれる少なくとも1種以上の着色剤(c)数平均分子量が62〜4,000であり、かつ、特定のポリアルキレングリコール類

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法ならびに着色中空容器に関し、詳しくは、色相に優れ、更に、耐熱性および耐加水分解性が改良された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法ならびに着色中空容器に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐衝撃性などの機械的特性、寸法安定性に優れている上、透明性にも優れた樹脂であり、例えば、光ディスク、OA機器、医療用部品、食品容器などの幅広い分野で利用されている。特に、食品容器などでは、通常より多い量の顔料や染料などで着色して使用される。この着色の際、着色剤の分散が悪いと、着色容器の色にバラツキが生じる。
【0003】
顔料や染料の分散性を高めるため、押出機での混練を強化した場合は、芳香族ポリカーボネート樹脂の一部が熱分解して着色し、分子量が低下して目標とする溶融粘性が得られないという問題がある。しかも、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性、耐加水分解性の点でも問題がある。特に、ブロー成形による食品容器、異形押出品やツインウオールシート又はマルチウオールシート成形品の場合は、分子量の高い又は分岐量の多い芳香族ポリカーボネート樹脂、すなわち、溶融張力の高い芳香族ポリカーボネート樹脂を必要とするため、上記の問題は顕著である。
【0004】
上記の問題点を解決するため、着色ポリカーボネート樹脂組成物として、芳香族ポリカーボネート樹脂に対し、アンスラキノン系染料と共に、RCOO−(CH−CHR−O)m−R(Rは水素原子または低級アルキル基を示し、Rは炭素数1〜30のアルキル基または0〜2個の低級アルキル基で置換されたフェニル基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜30のアシル基を示す。mは1〜1000の整数である。)で表されるポリアルキレングリコール誘導体を添加する方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、上記のポリアルキレングリコール誘導体は、分子量が低い又は分岐量が少ない芳香族ポリカーボネート樹脂を使用する場合には、ある程度の発色促進効果が認められるものの、分子量の高い又は分岐量の多い芳香族ポリカーボネート樹脂(溶融張力の高い芳香族ポリカーボネート樹脂)を使用する場合には不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−117516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、溶融張力の高い芳香族ポリカーボネート樹脂を使用した着色樹脂組成物であって、色相のバラツキがなく、更に、耐熱性および耐加水分解性も良好な着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法ならびに着色中空容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記のポリアルキレングリコール誘導体とは異なる構造の他のポリアルキレングリコール誘導体を使用することにより、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の要旨は、以下の成分(a)〜(c)から成り、成分(a)100重量部に対する、成分(b)の割合が0.00001〜0.05重量部、成分(c)の割合が0.0001〜0.5重量部であることを特徴とする着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に存する。
【0010】
(a)粘度平均分子量が16,000以上であり、かつ、一般式(1)で示される構造単位に対する分岐構造単位の割合が0.3〜0.95mol%である芳香族ポリカーボネート樹脂
【0011】
【化1】

【0012】
(b)フタロシアニン系化合物、アンスラキノン系化合物および群青の群から選ばれる少なくとも1種以上の着色剤
【0013】
(c)数平均分子量が62〜4,000であり、かつ、一般式(2)で示されるポリアルキレングリコール類
【0014】
【化2】

【0015】
本発明の第2の要旨は、上記の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物をブロー成形して成ることを特徴とする着色中空容器に存する。
【0016】
そして、本発明の第3の要旨は、フタロシアニン系化合物、アンスラキノン系化合物および群青の群から選ばれる少なくとも1種以上の着色剤(b)を、数平均分子量が62〜4,000であり、かつ、一般式(2)で示されるポリアルキレングリコール類(c)中に分散させた後、溶融状態の芳香族ポリカーボネート樹脂(a)に添加することを特徴とする上記の着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に存する。
【0017】
【化3】

【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、溶融張力の高い芳香族ポリカーボネート樹脂を使用した着色樹脂組成物であって、色相のバラツキがなく、更に、耐熱性および耐加水分解性も良好な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法ならびに着色中空容器が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。以下、芳香族ポリカーボネート樹脂を単に「PC樹脂」と略記する。
【0020】
本発明で使用するPC樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させる界面法、または、芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとを反応させるエステル交換法(溶融法)によって得られる。
【0021】
本発明で使用する芳香族ジヒドロキシ化合物は、分子内に芳香族性水酸基を2個有する化合物であり、好ましくは、次の一般式(7)で示される化合物である。
【0022】
【化4】

【0023】
一般式(7)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が例示されるが、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と略す)である。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、2種以上を併用してもよい。
【0024】
界面法によるPC樹脂の製造は、具体的には次の様に行われる。すなわち、塩化メチレン、1,2−ジクロルメタン等の不活性溶媒存在下、一種または二種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物に酸受容体としてアルカリ水溶液またはピリジン等を入れ、ホスゲンを導入しながら反応させる。酸受容体としてアルカリ水溶液を使用する場合は、触媒として、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン、または、テトラブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム化合物を使用すると反応速度が増大する。また、必要に応じ、分子量調節剤として、フェノール、p−ターシャリーブチルフェノール等一価のフェノールを共存させる。反応温度は通常0〜100℃である。触媒は最初から使用してもよいし、オリゴマーを製造した後に使用して高分子量化してもよい。
【0025】
更に、分岐したPC樹脂を得るには、フロログリシン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、1,3,5−トリ(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、α,α',α"−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼンなどで例示されるポリヒドロキシ化合物、及び3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロモイサチン等を分岐剤として使用する。
【0026】
また、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを反応させるエステル交換法では、使用される炭酸ジエステルとしては、通常、次の一般式(8)で表される。
【0027】
【化5】

【0028】
一般式(8)で表される炭酸ジエステルは、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が挙げられる。これらの中では、ジフェニルカーボネート又は置換ジフェニルカーボネートが好ましく、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。これらの炭酸ジエステルは2種以上を併用してもよい。
【0029】
エステル交換法によるPC樹脂の製造においては、通常、原料として、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートが使用される。ジフェニルカーボネートの使用量は、ビスフェノールA1モルに対し、通常1.01〜1.30モル、好ましくは1.02〜1.20である。上記のモル比が1.01より小さい場合は、製造されるPC樹脂の末端OH基が増加してポリマーの熱安定性が悪化し、また、上記のモル比が1.30より大きい場合は、エステル交換反応の速度が低下して所望の分子量を有するPC樹脂の製造が困難となる。
【0030】
エステル交換法においてはエステル交換触媒が使用される。触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物が挙げられる。これらの中では、取り扱い性および得られる樹脂の物性の観点から、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物が好ましい。
【0031】
エステル交換触媒の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対し、通常1×10−8〜5×10−6モル、好ましくは1×10−7〜3×10−6モル、更に好ましくは2×10−7〜3×10−6モルである。触媒の使用量が上記の範囲より少ない場合は、所定の分子量、末端ヒドロキシ基量のPC樹脂を製造するのに必要な重合活性が得られない傾向があり、触媒の使用量が上記の範囲より多い場合は、ポリマー色相が悪化し、更に、熱安定性や耐加水分解性が損なわれる傾向がある。
【0032】
アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩などが挙げられる。
【0033】
アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0034】
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素などのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩などが挙げられる。
【0035】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、四級ホスホニウム塩などが挙げられる。
【0036】
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0037】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
【0038】
一般に、エステル交換反応は二段階以上の多段工程で行われる。具体的には、第1段目の反応は、減圧下、通常120〜260℃、好ましくは180〜240℃の温度で、通常0.1〜5時間、好ましくは0.1〜3時間反応させる。次いで、反応系の減圧度を上げながら反応温度を高め、最終的には133Pa以下の減圧下、240〜320℃の温度で重縮合反応を行う。反応の形式は、バッチ式、連続式、バッチ式と連続式の組み合わせの何れでもよい。使用する装置は、槽型、管型、塔型の何れの形式であってもよい。
【0039】
本発明で使用するPC樹脂(a)の粘度平均分子量は、16,000以上であるが、好ましくは20,000以上である。粘度平均分子量が16,000未満のPCは、耐衝撃性などの機械的強度が低下する傾向にある。
【0040】
粘度平均分子量16,000以上の場合、PC樹脂(a)の溶融粘度が上昇し、着色剤の分散が悪くなる傾向にあるが、本発明に従って、後述の特定のポリアルキレングリコール類を特定量で添加することにより、着色剤の分散が良好になる。
【0041】
本発明で使用するPC樹脂(a)の末端OH基量は、製品の熱安定性、耐加水分解性、色相などの点で実用的な物性を維持せるため、通常100〜1,500ppm、好ましくは150〜1,200ppm、更に好ましくは200〜1,000ppmである。
【0042】
本発明で使用するPC樹脂(a)は、分岐化構造単位を有している。そして、一般式(1)で示される構造単位に対する分岐構造単位の割合は、0.3〜0.95mol%、好ましくは0.3〜0.90mol%、更に好ましくは0.3〜0.80mol%である。上記の条件を満足することにより、溶融張力が高く、ブロー成形や押出成形が良好となる。分岐構造単位の割合が上記の範囲より大きい場合は、溶融張力が大き過ぎて流動性が劣り、目標とする溶融特性が得られない傾向にある。
【0043】
上記の様に、PC樹脂が分岐化構造単位を有している場合は溶融粘度が上昇し、着色剤の分散が悪くなる傾向にあるが、本発明に従って、後述の特定のポリアルキレングリコール類を特定量で添加することにより、着色剤の分散が良好になる。
【0044】
上記の分岐構造単位としては、典型的には次の一般式(3)〜(6)で表される構造が挙げられる。
【0045】
【化6】

【0046】
一般式(3)及び(4)の分岐構造単位は、一般式(7)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を使用した溶融法(エステル交換法)によるPC樹脂の製造方法において、重合反応系中で転位反応を併発することにより生成することが従来より知られている(例えばEncyclopedia of Polymer Science and Technology,vol.10,p.723(1969)。一方、一般式(5)及び(6)の分岐構造単位は、本発明者によって見出されたものであり、特定の反応条件で溶融法によりPCを製造した場合に生成し、以下の様な経路を経て生成すると推定される。
【0047】
【化7】

【0048】
一般式(5)及び(6)の構造単位は、一般式(3)及び(4)の構造単位を経由して生成すると考えられるため、一般式(3)及び(4)の構造単位より量的に少ない。しかしながら、目標とする溶融特性の優れた分岐化PCを製造する際の重要な要素となっている。
【0049】
上記の各々の分岐構造単位の量は、製造されたPC樹脂をアルカリ加水分解後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)等により容易に求められる。例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを使用した場合には、アルカリ加水分解後の、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等では、それぞれ、次の式(9)〜(13)の化合物として検知されるため、各化合物の標準物質の吸光係数から各化合物を定量することが出来る。具体的には、各化合物の標準物質を使用し、濃度とピーク面積の検量線を作成し、各々の含有量を定量することが出来る。
【0050】
【化8】

【0051】
そして、前記の一般式(1)で示される構造単位に対する前記の一般式(5)で表される分岐構造単位の割合は、通常0.0002〜0.15mol%、好ましくは0.0003〜0.12mol%である。また、前記の一般式(1)で示される構造単位に対する前記の一般式(6)で表される分岐構造単位の割合は、通常0.0002〜0.15mol%、好ましくは0.0003〜0.12mol%である。
【0052】
本発明で使用するPC(a)において、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、通常2.8〜4.0、好ましくは2.8〜3.8、更に好ましくは2.8〜3.6である。上記の比(Mw/Mn)が2.8〜4.0のPCは、分子量分布が比較的ブロードであり、成形性が良好である。
【0053】
本発明で使用する着色剤(b)は、フタロシアニン系化合物、アンスラキノン系化合物および群青の群から選ばれる少なくとも1種以上である。
【0054】
フタロシアニン系化合物としては、フタロシアニンブルーとして「Pigment Blue15:3」(C.I.GenericName)が挙げられる。アントラキノン系染料としては、ブルー又はバイオレット染料が好ましく、「Solvent Blue97」、「Solvent Violet 36」、「Solvent Violet 13」(各々C.I.GenericName)が挙げられる。
【0055】
本発明で使用するポリアルキレングリコール類(c)は、数平均分子量が62〜4,000であり、かつ、一般式(2)で表される両末端基が水酸基の化合物である。
【0056】
【化9】

【0057】
上記のポリアルキレングリコール類(c)は、PC樹脂(a)に対する着色剤(b)の分散剤として機能する。ポリアルキレングリコール類(c)に分散剤としての機能が発現される理由は、必ずしも明らかではないが、PC(a)とポリアルキレングリコール類(c)との親和性が極めて良好であることが関係しているものと推定される。ポリアルキレングリコール類(c)の数平均分子量は、62〜4,000であるが、好ましくは100〜3,000、更に好ましくは200〜3,000である。数平均分子量が4,000を超える場合は、着色剤(c)の分散剤としての機能が十分に発現されない。
【0058】
上記のポリアルキレングリコール類(c)の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの中では、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールが特に好ましい。上記のポリアルキレングリコール類(c)は2種以上を併用してもよい。
【0059】
本発明の着色PC樹脂組成物は、前述のPC樹脂(a)と着色剤(b)とポリアルキレングリコール類(c)とを必須成分とし、その好ましい態様として熱安定剤(d)を含有する。
【0060】
熱安定剤(d)は、例えば射出成形時おいて、PC樹脂組成物に熱安定性を付与する目的で使用される。熱安定剤(d)としては、特に制限されないが、リン化合物が好ましい。リン化合物としては、亜リン酸エステル中の少なくとも一つのエステルがフェノール及び/又は炭素数1〜25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールで置換された亜リン酸エステル誘導体またはホスホナイトが好適である。
【0061】
上記の亜リン酸エステル誘導体としては、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリスノニルフェニルホスファイト、ジノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フッ化ホスファイト、2,2’−メチレ−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、モノノニルフェノール及びジノニルフェノールから成る亜リン酸エステル等が挙げられる。また、ホスホナイトとしては、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト等が挙げられる。これらの中では、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレ−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイトが好ましい。
【0062】
本発明の着色PC樹脂組成物において、PC樹脂(a)100重量部に対する上記の各成分の割合は次の通りである。
【0063】
着色剤(b)の割合は、0.00001〜0.05重量部、好ましくは0.00005〜0.01重量部である。着色剤(b)の割合が0.00001重量部未満の場合は着色が不十分であり、0.05重量部を超える場合は経済的でない。
【0064】
ポリアルキレングリコール類(c)の割合は、0.0001〜0.5重量部、好ましくは0.01〜0.3重量部、更に好ましくは0.01〜0.1重量部である。ポリアルキレングリコール類(c)の割合が0.0001重量部未満の場合は着色剤(b)の分散効果が不十分であり、0.5重量部を超える場合は耐加水分解が悪化する。
【0065】
熱安定剤(d)の割合は、通常0.0001〜0.5重量部、好ましくは0.0001〜0.4重量部である。熱安定剤(d)の割合が0.0001重量部未満の場合は熱安定性効果が十分に発現されず、0.5重量部を超える場合は耐加水分解性が悪化する等の問題がある。
【0066】
なお、本発明の着色香族ポリカーボネート樹脂組成物には、その物性を損なわない限り、樹脂の混合時、成形時に他の樹脂、添加剤、例えば、離型剤、UV吸収剤、強化剤、充填剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、滑剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良剤などを添加することが出来る。
【0067】
次に、本発明に係る着色PC樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、フタロシアニン系化合物、アンスラキノン系化合物および群青の群から選ばれる少なくとも1種以上の着色剤(b)を、数平均分子量が62〜4,000であり、かつ、前記の一般式(2)で示されるポリアルキレングリコール類(c)中に分散させた後、溶融状態のPC樹脂(a)に添加することを特徴とする。
【0068】
溶融状態のPC樹脂(a)に添加するとは、ペレット化する前であって、(1)重合反応の途中、(2)重合反応終了時、(3)重合反応に使用した触媒の失活後(失活剤の添加後)の何れかの段階で添加することを意味する。上記の本発明の製造方法によれば、着色剤が良好に分散され、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱分解(着色)が抑制され、その結果、色のバラツキやくすみが抑制された着色芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることが出来る。なお、熱安定剤(d)や他の添加剤の添加方法は、特に制限されないが、着色剤(b)と共にポリアルキレングリコール類(c)中に分散させた添加方法が簡便である。
【0069】
次に、本発明の着色中空容器について説明する。本発明の着色中空容器は、着色PC樹脂組成物をブロー成形して成ることを特徴とする。
【0070】
ブロー成形法としては、ダイレクトブロー、インジェクションブロー、インジェクションストレッチブロー等が挙げられる。例えば、ダイレクトブローの場合、シリンダー設定温度240〜270℃の単軸また二軸押出機に着色PC樹脂組成物のペレットを供給し、スクリュー剪断下で溶融・混連し、ノズルを通してチューブ状の溶融パリソンを押し出し、その後、所定の形状を有し且つ20〜110℃に設定した金型内に挟み込み、空気または不活性ガスをブローすることにより、中空容器(食品容器)が形成される。例えば、乳製品ボトル、清涼飲料水ボトル又は水ボトルの場合は、特開平6−122145号公報などに開示されている二軸延伸ブロー成形法を採用することも出来る。また、ガスバリヤー性の改良の観点から、ポリエチレンテレフタレートやポリアミドとの多層ブロー成形も可能である。
【0071】
本発明の着色中空容器の肉厚は、特に制限されないが、中空容器の強度および形状保持の観点から、通常0.1〜7mm、好ましくは0.2〜5mm、更に好ましくは0.3〜3mmである。本発明の着色中空容器は、多種多様の用途に利用できるが、特に、乳製品ボトル、清涼飲料ボトル、水ボトルとして好適である。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例において、PC樹脂組成物の物性測定および評価は以下の様にして測定した。
【0073】
(1)粘度平均分子量(Mv):
ウベローデ粘度計を使用し、6g/lの塩化メチレン溶液の固有粘度を測定し、次式により粘度平均分子量を求めた。
【0074】
【数1】

【0075】
(2)分岐化度:
前記の一般式(1)で表される構造単位1モルに対する前記の一般式(3)〜(6)で表される分岐構造単位の合計モル数の比(mol%)で表される。具体的には、各々の構造単位の含有量は下記の様にして求め、前記の式(9)で表される構造単位1モルに対するそれぞれ前記の式(10)〜(13)で表される構造単位の合計モル数の比(mol%)より算出した。
【0076】
塩化メチレン100mlにPC樹脂(試料)1gを溶解した後、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液18ml及びメタノール80mlを加え、更に純水25mlを添加した後、室温で2時間攪拌して完全に加水分解した。その後、1規定塩酸を加えて中和し、塩化メチレン層を分離して加水分解物を得た。
【0077】
アセトニトリル10mlに加水分解物0.05gを溶解し、逆相の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用し測定を行った。逆相液体クロマトグラフィーは、溶離液としてアセトニトリルと10mM酢酸アンモニウム水溶液とから成る混合溶媒を使用し、アセトニトリル/10mM酢酸アンモニウム水溶液比率を20/80からスタートし80/20までグラジュエントする条件下、カラム温度40℃で測定を行った。検出は波長280nmのUV検出器((株)島津製作所製、SPD−6A)で行なった。
【0078】
前記の一般式(1)及び(3)〜(6)で表される構造単位は、前記の式(9)〜(13)の化合物として検知されるため、Agilent(株)製「LC−MS(Agilent−1100)」及び日本電子製「NMR(AL−400)」で同定した。また、各構造単位の含有量は、各化合物の標準物質を使用し、濃度とピーク面積の検量線を作成し、各々の含有量を定量した。
【0079】
(3)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びMw/Mn:
分析装置には東ソー(株)製「HLC−8020」を使用した。カラムには、充填剤として、それぞれ、東ソー(株)製の「TSK 5000HLX」、「4000HLX、3000HLX」及び「2000HLX」を充填した4本のカラム(直径7.8mm、長さ300mm)を接続して使用した。溶離液にはテトラヒドロフランを使用した。
【0080】
検量線は、(株)ケムコ製の標準ポリスチレン(分子量;761(Mw/Mn≦1.14)、2,000(Mw/Mn≦1.20)、4,000(Mw/Mn≦1.06)、9,000(Mw/Mn≦1.04)、17,500(Mw/Mn≦1.03)、50,000(Mw/Mn≦1.03)、233,000(Mw/Mn≦1.05)、600,000(Mw/Mn≦1.05)及び900,000(Mw/Mn≦1.05)を使用して作成した。
【0081】
測定は、屈折率により検出したチャートから、ポリスチレン換算でMw及びMnを求め、Mw/Mnを算出した。
【0082】
(4)色相(YI):
先ず、120℃で5時間乾燥した着色PC樹脂組成物を280℃(シリンダー設定温度)で射出成形し、100mm×100mm×3mm厚のプレスシートを得た。次いで、カラーテスター(スガ試験機株式会社製「SC−1−CH」)を使用し、上記のプレスシートについて、色の絶対値である三刺激値XYZを測定し、次の関係式により黄色度の指標であるYI値を計算した。このYI値が大きいほど着色していることを示す。
【0083】
【数2】

【0084】
(5)耐熱性試験:
着色PC樹脂組成物を120℃で5時間乾燥した後、100mm×100mm×3mm厚の360℃、10分間滞留で10ショット目の条件で成形し、該プレスシートをカラーテスター(スガ試験機株式会社製SC−1−CH)で、色の絶対値である三刺激値XYZを測定し、上記関係式により黄色度の指標であるYI値を計算した。
【0085】
(6)耐加水分解性試験:
試料として、上記(4)で得られたプレスシートを使用した。120℃、100%RHの条件に調節されたオートクレーブ内に試料を100時間放置し、放置前後の粘度平均分子量変化(Δ)を測定した。
【0086】
(7)ブロー成形性およびボトル落下試験:
原料として、130℃で5時間乾燥した着色PC樹脂組成物のペレットを使用した。成形装置として、日本製鋼所(株)製の「B−30」を使用し、バレル温度240〜270℃、金型温度70℃の条件下、ガロンボトルのブロー成形を行ない、成形性を評価した。また、室温で十分に冷却したボトルに水を充填し、1.8mの高さから鉄板上に落下させ、割れの有無を確認した。
【0087】
実施例1:
窒素ガス雰囲気下、ジフェニルカーボネート(DPC)とビスフェノールA(BPA)とを一定のモル比(DPC/BPA=1.040)に混合して原料溶融液を調製した。この原料溶融液を、96.7kg/時の流量で、原料導入管を介して、220℃、1.33×10Paに制御した容量200Lの第1竪型撹拌重合槽内に連続供給し、平均滞留時間が60分になる様に、槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。また、原料溶融液の供給を開始すると同時に、触媒として、ビスフェノールA1モルに対し、1.0×10−6モルの割合で炭酸セシウム水溶液を連続供給した。
【0088】
槽底より排出された重合液は、引き続き、第2、第3の竪型攪拌重合槽(容量200L)及び第4の横型攪拌重合槽(容量250L)に逐次連続供給され、第4の横型攪拌重合槽底部のポリマー排出口から抜き出された。第2〜第4重合槽での反応条件は、夫々、第2重合槽(240℃、2.00×10Pa、75rpm)、第3重合槽(270℃、67Pa、75rpm)、第4重合槽(285℃、67Pa、5rpm)とし、反応の進行と共に、高温、高真空、低攪拌速度に条件設定した。また、反応の間は、第2〜第4重合槽の平均滞留時間が60分となる様に液面レベルの制御を行い、また、同時に副生するフェノールの留去も行った。
【0089】
次に、得られたポリマーを溶融状態のままで2軸押出機に送入し、2軸押出機の各加剤供給口から後述の成分を添加し、連続して混練し、ダイを通してストランド状とし、カッターで切断してペレットを得た。
【0090】
第1添加剤供給口からは、p−トルエンスルホン酸ブチル(触媒として使用した炭酸セシウムに対して4倍モル量)を添加した。
【0091】
第2添加剤供給口からは、PC樹脂100重量部に対して、ポリエチレングリコール0.02重量部(三洋化成(株)社製「#400」:数平均分子量400)に分散したフタロシアニンブルー0.001重量部(住化カラー(株)社製「SumitoneCyanine BlueLBGN−2(Pigment Blue15:3)」)を添加した。
【0092】
第3添加剤供給口からは、PC樹脂100重量部に対して、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)社製「AS2112」)0.01重量部を添加した。
【0093】
粘度平均分子量が安定してから100時間継続した。100時間後の着色PC樹脂組成物は、粘度平均分子量が22,300であった。100時間内での色相(YI)の振れを測定した。また、100時間後の着色PC樹脂組成物の物性測定および評価を行なった。PC樹脂組成物の製造条件および上記の測定・評価結果を表1及び3に示す。
【0094】
実施例2〜3:
実施例1において、表1示す製造条件に変更した他は、実施例1と同様に着色PC樹脂組成物を得、実施例1と同様に物性測定および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0095】
実施例4:
実施例1において、ポリエチレングリコールの使用量を0.04重量部に変更した他は、実施例1と同様に着色PC樹脂組成物を得、実施例1と同様に物性測定および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0096】
実施例5:
実施例1において、ポリエチレングリコールの代わりにポリプロピレングリコール(日本油脂(株)社製「ユニオールD−2000」)を使用した他は、実施例1と同様に着色PC樹脂組成物を得、実施例1と同様に物性測定および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0097】
実施例6:
実施例1において、フタロシアニンブルーの代わりにアンスラキノン染料(BAYER社製「MACROLEX VIOLEX 3R」)を使用した他は、実施例1と同様に着色PC樹脂組成物を得、実施例1と同様に物性測定および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0098】
実施例7:
実施例1において、フタロシアニンブルー0.001重量部の代わりに群青(第一化成工業(株)製「No3000」:シリコーン処理品)0.02重量部を使用した他は、実施例1と同様に着色PC樹脂組成物を得、実施例1と同様に物性測定および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0099】
実施例8:
実施例1において、第2添加剤供給口からは、PC樹脂100重量部に対して、ポリエチレングリコール0.02重量部(三洋化成(株)社製「#400」:数平均分子量400)を添加し、第3添加剤供給口からは、PC樹脂100重量部に対して、フタロシアニンブルー0.001重量部(住化カラー(株)社製「SumitoneCyanine BlueLBGN−2(Pigment Blue15:3)」)と、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)社製「AS2112」)0.01重量部を添加した他は、実施例1と同様に着色PC樹脂組成物を得、実施例1と同様に物性測定および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0100】
比較例1:
実施例1において、ポリエチレングリコールの代わりにグリセリン(日本油脂(株)社製)を使用した他は、実施例1と同様に着色PC樹脂組成物を得、実施例1と同様に物性測定および評価を行なった。結果を表2に示す。
【0101】
比較例2:
実施例1において、ポリエチレングリコールの代わりに蒸留水を使用した他は、実施例1と同様に着色PC樹脂組成物を得、実施例1と同様に物性測定および評価を行なった。結果を表2に示す。
【0102】
比較例3:
実施例2において、ポリエチレングリコールの代わりにポリプロピレングリコールジステアレート(旭電化工業(株)製:数平均分子量2,000)を使用した他は、実施例2と同様に着色PC樹脂組成物を得、実施例2と同様に物性測定および評価を行なった。結果を表2に示す。
【0103】
比較例4:
実施例1において、表2示す製造条件に変更した他は、実施例1と同様に着色PC樹脂組成物を得、実施例1と同様に物性測定および評価を行なった。結果を表2に示す。
【0104】
比較例5:
実施例1において、ポリエチレングリコールの代わりに粉末状PC樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバレックス7022PJ」)0.1重量部を使用した他は、実施例1と同様に着色PC樹脂組成物を得、実施例2と同様に物性測定および評価を行なった。結果を表2に示す。
【0105】
比較例6及び7:
実施例1において、表2示す製造条件に変更した他は、実施例1と同様に着色PC樹脂組成物を得、実施例1と同様に物性測定および評価を行なった。結果を表2に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(a)〜(c)から成り、成分(a)100重量部に対する、成分(b)の割合が0.00001〜0.05重量部、成分(c)の割合が0.0001〜0.5重量部である着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法であって、成分(b)を成分(c)に分散させた後、溶融状態の成分(a)に添加することを特徴とする着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
(a)粘度平均分子量が16,000以上であり、かつ、一般式(1)で示される構造単位に対する分岐構造単位の割合が0.3〜0.95mol%である芳香族ポリカーボネート樹脂
【化1】

(b)フタロシアニン系化合物、アンスラキノン系化合物および群青の群から選ばれる少なくとも1種以上の着色剤
(c)数平均分子量が62〜4,000であり、かつ、一般式(2)で示されるポリアルキレングリコール類
【化2】

【請求項2】
芳香族ポリカーボネート樹脂(a)における分岐構造単位が一般式(3)〜(6)で示される単位の何れかである請求項1に記載の着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【化3】

【請求項3】
芳香族ポリカーボネート樹脂(a)がエステル交換法で得られたものである請求項1又は2に記載の着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
芳香族ポリカーボネート樹脂(a)のゲルパーミエイションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.8〜4.0である請求項1〜3の何れか1項に記載の着色芳香族ポリカ
ーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
熱安定剤(d)として、リン化合物を、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対して0.0001〜0.5重量部含む請求項1〜4の何れか1項に記載の着色芳
香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の製造方法で得られた着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物をブロー成形して成ることを特徴とする中空容器。
【請求項7】
乳製品、清涼飲料水または水用に使用される請求項6に記載の中空容器。

【公開番号】特開2012−25961(P2012−25961A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200446(P2011−200446)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【分割の表示】特願2005−195685(P2005−195685)の分割
【原出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】