説明

着香料放散組成物、装置、及びそれらとの包装食品

食品の配合に直接添加するのではなく、例えば、少なくとも1つの着香料を含む着香料放散組成物を、安定化剤(例えば吸着剤又は吸収剤)と組み合わせて、かつ支持体から該着香料を容易に放出させることによって包装内の密閉環境を介して該食品に間接的に添加する。装置、例えば該組成物を含む多孔質の小袋が、食品包装の密閉環境に入れられると、例えば、一定の新鮮な香り及び/又は味が、消費者受容を高めるための製品の新鮮さを保持かつ維持するために、包装された食品の密閉環境に送達され、かつ食品そのものの上に堆積される。包装された製品の代表例を数例挙げると、例えば、バーベキューチップス、ポテトチップスなどのスナック食品、ベーカリー製品がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、製品に着香料を付与するための改良された組成物、該着香料の包装、該組成物の製造方法、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の包装品、特に食品は、より良い消費者受容のために、フレーバー特性を高める又は変えることが求められている。これは、食品に味、フレーバー香気、食感などの着香料を付加することによって達成できる。更に消費者は、特定の包装食品において、現在入手できるものよりもより芳醇な香り又はフレーバーを所望することが多い。着香料を送達する現在の方法は、より芳醇な又は増強されたフレーバーを送達するのに完全には有効でないことが判明している。更に、従来の風味付けの方法が困難である特定の包装品(例えばスナック食品、及び特にベーカリー製品)もある。
【0003】
ベーキングに関して、着香料を付加する従来の方法では、ベーキングの前に製造業者が所望の着香料を混合物に単に直接配合するだけである。しかし、ベーキングが完了するずっと前に、着香料担体が着香料のかなりの部分を放出する傾向がある。更に、より頻繁に、実際の着香料分子が、ベーキング時間中、ベーキング過程の高熱に耐えられないことがよくある。着香料は分解し、特に柑橘類又はベリーなどのフルーツフレーバーの場合、着香料の効果がなくなる可能性がある。この課題を克服するために、配合における理論上の使用量よりも2倍〜3倍の量の着香料を適用することが製造者の業務の慣例であった。この方法は所望のフレーバー効果を有する製品の製造に効果的であり得るが、着香料の効率的利用ではなく、より大きな無駄になることが多い。
【0004】
食品加工業者及び食品製造業者は、例えば、ベーキング/調理工程の後にスプレー式の着香料を使用する。これによって、着香料を分解させる可能性があるベーキング工程に着香料が曝露されないため、所望のフレーバーを食品に導入する場合に着香料を効果的に使用することができる。しかし、添加された着香料の有効性は、一時的であり得る。時間とともに、着香料は分解又は蒸発によって劣化しかつ効力を失う。更に、着香料は、直接適用されている(例えば、噴霧されている)ので、包装、取扱い、及び輸送の間に、着香料が払い落されるか又は消散する傾向にある。概して、直接的適用法についてのある重要な欠点は、食品に加えられる着香料の量であり、着香料が消散した場合、その損失を補うために利用できる更なる着香料はない。
【0005】
ある製造業者は、味の着香料を無視し、包装品にフレーバー香気を加えるだけである。これは、米国特許6,045,833;7,005,152及び米国特許出願公報2004/0028779に包括的に開示されている。この方法は、吸収によりポリマー内に嗅覚的匂い物質を取り込み、次いでそれを包装及び包装材料成分の製造の際に使用することを含む。該ポリマーは時間とともにブルーミング(blooming)によって香りを放出し、その結果、消費者は包装品を最初に開封し、かつ消費するときに新鮮な香りを体験する。香りは味覚の処理に必須のものであるが、味を感じること(tasting)は、舌上の受容体との特異的な化学的相互作用を更に必要とし、これは確実には起こらない。更に、米国特許6,045,833;7,005,152及び米国特許出願公開番号第2004/0028779号によって開示される方法は、周囲温度で過飽和プラスチック配合物を生成し、時間とともに該プラスチックから着香料を誘発(例えば、ブルーミング)させる。更に、ある製造業者は、成形する前にプラスチック溶融体と着香料とを配合するが、該溶融体が高温であるため、着香料の分解及び揮発が起こることが多い。
【0006】
特定の製造品及び包装製品、例えばベーカリー製品、ポテトチップス、及び他のスナックタイプの食物の保存寿命は、数日から数週間に限られる。包装食品は、製造から販売時及び消費時までに、時間の経過とともに味及び香りを失いやすい。この種の損失は、消費者受容を損なう。
【0007】
従って、食品及び非食品などを含めた包装品に、実質的に時間の経過による劣化がない経済的かつ効率的な方法でフレーバーを送達し、その結果、包装品の味、香り、又は感覚要素(例えば、渋み)の自然消散とそれを補うものとが平衡に保たれる、製法及び方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明の1つの主要な目的は、安定化された形態の(例えば、ゲル化された、固形化された、又は固体担体上に堆積された)少なくとも1つの着香料放散組成物を含む、新規の安定化された着香料放散組成物を提供することにある。該安定化剤は、着香料を固形化又はカプセル化させることができる収着剤、樹脂、親水コロイド、又はその他の適当な高分子であってもよい。当該組成物は、少なくとも1つの着香料と組み合わせた安定化剤又はその混合物を含み、これは、ヒトのフレーバー感覚を刺激するものとして、更に具体的には、嗅覚、味覚及び知覚、口と鼻との両方、並びにそれらを組み合わせたものを刺激するものとして作用する。本発明の着香料放散組成物のその他の注目すべき特性には、その取扱特性があり、ここでは、粒状の安定化された形態は、自由流動性であってもよく、易動性;効率的にコーティング、成型、又は堆積可能な樹脂又は親水コロイドで安定化された組成物ペースト或いは半固体;によって特徴付けることができ、後に述べるその他の特性(例えば、接着性)を有することができる。
【0009】
本発明の更なる主要な目的としては、フレーバー放散組成物のための送達装置があり、ここでは、該装置は、支持体上に堆積され、例えば、食物の周囲の環境への着香料の放出を最適化するように構成された送達装置の中に包装された少なくとも1つの安定化された着香料組成物を含む。本発明は、様々な用途及び最終用途のために利用できる、少なくとも部分的に多孔質である表面(1つ又は複数)(例えば、多孔質の表面シート)を有する送達装置の様々な実施態様を目的とする。該装置の例を挙げると、自己接着性装置、シート、コーティング、キャニスター、トレイ、成型トレイ、錠剤、小袋、及び成型された錠剤又は形態があるが、これらには限定されない。更に、本発明の更なる目的は、少なくとも1つの本発明着香料装置を含む包装された食品を提供することにある。
【0010】
また更なる目的は、本明細書中に開示される特定の最終用途に適用するための送達を最適化する着香料放散組成物を作製及び包装する方法を提供することにある。例えば、本発明は、下記工程を含む着香料放散装置を製造する方法を含む: (i) 着香料放散組成物を作製するために、安定化剤と少なくとも1つの着香料とを組み込む工程、及び (ii) 前記着香料放散組成物を、少なくとも部分的に多孔質の収納装置で包装する工程である。いくつかの実施態様では、前記着香料放散組成物を、少なくとも部分的に多孔質の収納装置で包装する工程は下記を更に含む: 基層を形成するために、基材シート上に前記着香料放散組成物を堆積させること、前記基層を表面シートで覆うこと、及び前記表面シートを前記基材シートに密着させることである。更に、本発明は、下記工程を含む着香料放散組成物を製造する方法を更に含む: 包装された食品に吸収される少なくとも1つの着香料を選択する工程; 固体形態又は半固体形態を形成するために、前記着香料と組み合わせることとなる安定化剤を選択する工程;及び前記選択された少なくとも1つの着香料と前記選択された安定化剤とを組み合わせて、前記着香料放散組成物を得る工程である。
【0011】
本発明のこれらの、またその他の目的、特徴及び利点は、図面及び特許請求の範囲にかんがみて以下の発明の詳細な説明の記述を一読すれば、当業者にとってより容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の性質及び態様は、添付の図面とともに下記の発明の詳細な説明において更に詳しく記載されている:
【図1】着香料放散組成物の製造方法の概略図である;
【図2】着香料放散組成物を放出するための収納容器としての、自己接着性パケットのシートの平面図である;
【図3】着香料放散組成物を収納する、自己接着性パケットの平面図である;
【図4】図3に示す収納自己接着性パケットの側面図である;
【図5】図3の線5−5に沿った、収納自己接着性パケットの断面図である;
【図6】本発明の着香料放散組成物を含み、容易に分離するための切り取り線を有する、複数の自己接着性パケットのシートの平面図である;
【図7】本発明の着香料放散組成物用の収納放出自己接着性パケットの細長片の平面図である;
【図8】図7に示す自己接着性パケットのロールの側面図である;
【図9】着香料放散組成物を送達するキャニスター型の収納容器の斜視図である。
【図10】図9に示すキャニスターの平面図である;
【図11】図9に示すキャニスターの端面図である;
【図12】図9に示すキャニスターの背面図である;
【図13】図10の線13−13に沿った、キャニスター型収納容器の側断面図である;
【図14】本発明の着香料放散組成物用の小袋型収納/放出包装の斜視図である。
【図15】図14に示す小袋の平面図である;
【図16】図14に示す小袋の底面図である;
【図17】図14に示す小袋の側面図である;
【図18】図15の線18−18に沿った小袋の断面図である;
【図19】端と端とがつながった、破って切り離される小袋の細長片の平面図である;
【図20】本発明の着香料放散組成物が充填された自己接着性パケットを含有する、食物用袋の外側の図である;
【図21】図20に示す食物用袋の部分断面図である;
【図22】内部に自己接着性着香料パケット及び小袋を伴う、食物用トレイの側断面図である;
【図23】本発明の着香料放散組成物用の錠剤型の収納/放出包装の斜視図である;かつ
【図24】図23の線24−24に沿った、錠剤型の収納/放出包装の側断面図である。
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明の目的では、本明細書及び特許請求の範囲に記載する以下の用語及び表現は、下記の意味を有することが意図される:
【0014】
(着香料)
用語「着香料(flavorant)」は、天然及び人工の種を意味することが意図される。この用語には、米国連邦規制基準の21章に定義される下記の「天然着香料」:すなわち、精油、オレオレジン、エッセンス若しくはエキス、タンパク質加水分解物、留出物、又は任意の焙煎製品、加熱製品、酵素分解製品が含まれることが意図され、香辛料、果物若しくは果汁、野菜若しくは野菜汁、食用酵母、ハーブ、樹皮、芽、根、葉、若しくは任意のその他の植物の可食部、肉、海産物、家禽、卵、酪農製品又はその発酵製品に由来する風味付け成分を含有し、食品におけるこれらの主要な役割は、栄養的であるというよりも、むしろ風味付けをすることにある(21 CFR 101.22.21)。
【0015】
また、着香料(1種又は複数)は、「人工着香料」、特に、先に述べた、本明細書に必ずしも適合するわけではない天然着香料の化学的合成品を含むことも意図する。人工着香料は、「天然着香料」に見出される化合物を含むことができる。
【0016】
本発明の目的では、先に述べた「着香料」の定義に加えて、用語「着香料」は、3つの態様:味、フレーバー香気、感覚的要素(feeling factor)を付与する物質も意味する一般用語であることを意図する。味とは舌上の受容体を介して処理される感覚であり、一般に塩味、甘味、及び酸味が含まれる。フレーバー香気は、食物を噛む、咀嚼する、飲む、また飲み込むときに放散されるフレーバー揮発物であり、嗅覚受容体によって感じられるものである。フレーバーの用語では、感覚要素は、口内で、舌上で、又は鼻腔(若しくは口/鼻孔のあらゆる場所)において感知される感覚を表す。これらの感覚は別個のもので、味(塩味、甘味、酸味、及び苦味)とは、また嗅覚によって感じられる無数のフレーバー香気とは異なる。これらの感覚をもたらす化合物は揮発性が異なるが、多くは気相転移の影響を受けやすい。これらの感覚要素は、「スモーク」フレーバーの刺激感、果物の渋み感、ミントの清涼感、又はトウガラシの辛味感を含む。より具体的には、着香料は、製品の味若しくは香り、又は味と香りとの両方を、強化するか或いは変化させることができる。この変化によって、所望される味やフレーバーを強化するか、又は所望されない味や香りをマスキングすることができる。着香料は、大部分の用途において、非毒性であり、かつ摂取可能なものであることを理解されたい。
【0017】
また、いくつかの着香料は関連性のある匂い特性を有する、又は芳香剤(例えば数例を挙げると、特定の精油、フルーツの、ハーブ若しくは花の、木の実の、又は甘さの特性、麝香)として有用性があり、包装された製品の臭いをマスキングする、隠す、又はごまかすために使用され得るが、本発明の目的では、本明細書及び特許明細書の範囲に記載されている用語「着香料」及び「フレーバー」は、例えば、米国特許出願公報、US 2005/0096220に開示されるような、フレグランス、芳香剤、香水原料、又はPRMとして一般に認識されている化合物又は組成物、或いは製品にもっぱら匂い/香りを付与する、又は臭いをマスキングすることに有用な物質は含むことを意図しない。
【0018】
同様に、着香料はフレーバー香気を含むことができるが、着香料の数種の成分は嗅覚を刺激する特性を有しないことを理解されたい。例えば、人工甘味料を含めた風味付け調味料及び香辛料などの調味料は、臭覚を刺激する特性に欠けるが、本発明を実施するには有用な着香料である。包装スナック食品(代表例を挙げると、ポテトチップス、コーンチップ、バーベキュー・チップ、チーズ・クラッカなど)を風味付けするための特定の香辛料又は香辛料の混合物は、スパイシーバーベキューフレーバーなどの、固形状又は粒子性の香辛料及び調味料の同一種の組み合わせ又は異種の組み合わせで味付けされている。それらは、着香料(味覚)強化特性を有し、従って製造過程における風味付け剤として一般的に食品に添加されるその他の香辛料とともに、有用な着香料である。
【0019】
下記のものが包括的なリストではなく、ある種の一般的な味覚着香料、加えてある種の感覚をもたらす着香料の代表例にすぎないことを理解されたい。味覚及び感覚をもたらす着香料の例を挙げると、人工甘味料、グルタミン酸塩、グリシン塩、グアニル酸塩、イノシン酸塩、リボヌクレオチド塩、及び有機酸(酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ポリフェノールなど)がある。
【0020】
下記のものが包括的なリストではなく、一般的なフレーバー香気の例にすぎないことを理解されたい。特定の所望のフレーバーを作るために組み合わせる又は独立して用いられる数千の分子化合物がある。一般的なフレーバー香気の代表例数種を挙げると、酢酸イソアミル(バナナ)、シンナムアルデヒド(シナモン)、プロピオン酸エチル(フルーツ様)、リモネン(オレンジ)、エチル-(E,Z)-2,4-デカジエン酸(西洋ナシ)、ヘキサン酸アリル(パイナップル)、エチルマルトール(糖、綿菓子)、サリチル酸メチル(ヒメコウジ)、及びそれらの混合物がある。
【0021】
(放散)
本発明の目的では、明細書及び特許請求の範囲に記載する用語「放散(emitting)」は、揮発を意味することが意図される。放散とは、支持体からの分子の放出である。放散は、着香料分子等の蒸気圧と比例している。本発明に従って使用される好ましい着香料は、気相フレーバーを転移させるのに十分に揮発性でなければならない。着香料が放散される速度は、安定形からの揮発性物質の拡散率により決定される。従って、安定化剤が収納装置に入れられる吸着剤である場合、拡散率は収納装置の表面の多孔度により調節される。多孔度を増加させることによって、より大きな拡散が達成され、これによってフレーバー放散の速度が増加する。安定化剤が、樹脂、親水コロイド若しくはその他の複合糖質、又は該フレーバーを取り込むことができるタンパク質である場合、同じ原理が適用できる。
【0022】
着香料の放散速度に影響を及ぼしている更なる要因には、安定形での着香料全体の濃度、及び安定化剤によって改変されるものとしての着香料の蒸気圧がある。濃度に関しては、周囲環境と安定形との間で、濃度勾配が高い場合ほど、着香料が安定化剤から揮発して、周囲に拡散する可能性が高くなる。着香料の蒸気圧は、使用される着香料の固有の特性であるが、それは安定化剤によって改変される。安定化剤が、着香料にある程度の親和性を示すので、これによって、その非安定形と比べて、周囲環境への着香料の揮発の程度は低下する。
【0023】
(安定化)
安定化とは、熱、又はその他の方法(着香料を変化させる若しくは分解する、又は着香料の強度を減弱させるような方法)を使わずに、液体着香料を固定化、固形化、カプセル化させるか、或いはさもなければ固体形態、若しくは半固体形態に変化させることを意味する。本発明の主要な目的は、本来の着香料が密閉環境(例えば、密閉包装の上にできた空間)に、化学的に変化せずに十分な量で送達され、また、本来の着香料が密閉された製品(例えば、トルティーヤチップ、ポテトチップス及びポテトフライ、ケーキ、クッキー、焼成食品、揚げ物などの食物)によって吸着されるような方式での着香料の「安定化」である。従って、本発明による「安定化」によって、着香料は容易に揮発し、かつ密閉環境及びその中に入れられた製品へ転移できるはずである。本発明による安定化の好ましい方法には、こうした方式で着香料をカプセル化/安定化させるのに適した物質が含まれるので、包装食品に導入する場合、これを使用前に固定化し、例えば、特に消費者が包装食品を最初に開封する時の、包装食品の天然の香り(匂い)及び味(フレーバー)を強化するために、安定化剤のマトリックスから、実質的にその組成を変えずに着香料を揮発させることも可能である。本発明の「安定化」着香料の利点の1つは、該着香料が、固体ペースト、ブロック、顆粒又は被膜として取り扱いできることを理解されたい。該着香料が365日以上の期間にわたって放出かつ吸着される、該着香料が好ましくは約1日から約30日の期間にわたって放出かつ吸着されることを理解されたい。
【0024】
本発明による好ましい代表的な安定化剤を挙げると、ゲル及びゴムなどの親水コロイド(例えば、カラゲナン);ローカストビーンガム、ガーゴム;ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVOH)、アクリル樹脂などの樹脂(例えば、アクリル酸及びメタクリル酸メチル、エチル及びブチルなどのアクリル酸及びメタクリル酸エステルのポリマー);エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、アルギン酸塩、又はアルギン酸塩ゴムなどのセルロースのエーテル化生成物に基づくセルロースエーテル類;及びシリカゲル、シリカヒドロゲル、粘土、炭素、珪藻土、パーライト、ゼオライトなどの収着剤がある。その他の適当な安定化剤は、着香料/着臭剤をこうした方式でカプセル化/安定化させることができる、任意のゲル−ペースト様高分子物質を含み、その結果、これは、保管中に固定化させることができるが、該安定化剤は、例えば、食品に包装されている場合には、使用中に、安定化剤-担体収着剤マトリックスから容易に揮発しないであろう。ゲル及びペーストが好ましいが、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む硬化したマトリックスはあまり好ましくない。
【0025】
安定化剤についての適切な選択は、その最終容器又は運搬面に分割及び分配することができることである。粒状安定化剤は、自由流動性が望ましい。樹脂ベースの安定化剤は、所望の運搬面上に容易に堆積されるか又は被膜されることが望ましい。しかし、ゴムベースの安定化された着香料は分割されるか、又は形成、押し出し、シート化、ロール化、若しくは切り分けされて最終の形になり、それを入れる容器の中に又は材料運搬表面上に堆積されることが望ましい。
【0026】
粒状安定化剤を選択する場合、着香料は液体形態であることが多いので、粒状吸着剤が互いに付着する傾向があるであろう。しかし、十分な量の平衡時間(通常は24時間より長い時間)の後では、吸着された組成物は、もはや粘着性ではなく、自由流動性であることが望ましい。次いで、それを容易に扱うことが可能になり、従来の手段によってそれを入れる小袋又はその他の運搬容器に挿入することができる。
【0027】
このようにして安定化かつ含有された着香料は、揮発して、密閉環境にフレーバーを付与することができ、密閉環境において、該着香料は、食品のナチュラルフレーバーを強化するのに十分な濃度で、密閉環境中の食品によって吸収される。これは、着香料が、食品の製造中に添加される、又は製造の後に直接的に製品に添加される現状の技術とは異なる。
【0028】
また、本発明の着香料組成物は、酸化による着香料又は食品自体の分解を防ぐ、並びに、例えば、食品をしっとり又は柔らかく保つために、酸素を吸収する水分/湿度調節特性を有する。同様に、該着香料組成物は、食品の安全性を強化し、かつ腐敗を遅らせるための、揮発性の抗菌の成分を有することができる。更に、先に記載した成分の各々はそれぞれ別々に機能することができるであろう。すなわち、抗菌の成分は、着香料が存在しなくても、着香料と同様の様式で安定化され得る。
【0029】
また、着香料を成分部分に分割することなく、安定化着香料組成物を、着香料の揮発又は放散を促進するのに十分多孔質である収納装置上へ被膜させる、又は堆積させることもできる。包装内では、多孔質の安定化された着香料収納容器から、香気着香料は容易に揮発し、その結果、該香気着香料は食物の周囲の空間に入り、包装された食物の保管中、該空間から吸収される。すなわち、食品包装内に保管されている(例えば、収納容器/袋の内部に適用されている)包装された安定化された着香料は、例えば、包装の上部にできた空間に放出されたときに、同時に、該着香料を複数の成分に分割することなく、フレーバーを放出することができる。
【0030】
本発明の着香料組成物は、担体/収着剤において十分な濃度の着香料を含有することが望ましく、その結果、標的となる支持体(例えば、食品及び該食品の周囲の空間)は、密閉された食物包装内で揮発/放散中の所望のフレーバーを吸収することとなる。
【0031】
本発明による安定化剤の選択は、該フレーバー組成物が分割されることなく、かつ保存期間中に、包装された食物によって吸収されるのに十分な量で、容易に揮発できるという要件に従ってなされるのが望ましい。すなわち、着香料が分割することなく、包装された食物によって吸収されるように、着香料包装の内部への、また最終的には外部環境への着香料の気相転移を、安定化剤が阻害しないことが好ましい。典型的には、着香料が複数の異なる分子成分から成り、一種以上の該成分が収着剤担体に付着されている、又は分解する場合に、分割が起こる。このような事象はフレーバーの特徴を変化させ、その結果、分割したフレーバーが食物に吸収される場合に、所望されない異臭が生じる。本発明の方法は、着香料が化学的に分割することなく、着香料が揮発/放散するという点で、従来の方法に対して特徴付けられる。従って、本発明の生成物及び方法は、放出/揮発/放散の過程において、着香料の組成が変化するのを避け、その結果、本来の着香料組成は損なわれない、すなわち本来の着香料組成物の関連成分は除去、破壊、かつ化学的に改変されない、という追加の利点を有する。
【0032】
本発明の主要な目的は、本来の着香料が、密閉包装環境(例えば、密閉食品包装の上にできた空間)において、化学的にかつ物質的に改変されずに十分な濃度で送達され、密閉された製品(例えば、トルティーヤチップ、ポテトチップス及びポテトフライ、ケーキ、クッキー、その他の焼成食品、揚げ物などの食物)によって吸着されるような方式での、着香料の安定化である。従って、本発明による「安定化」によって、着香料は固形化されるが、着香料は安定化した組成物から容易に揮発し、かつ密閉環境及びその中に収容されている製品に転移できることが望ましい。換言すれば、「安定化」とは、着香料を固形化、閉じ込め、粘性調節、吸着、吸収させることによって、着香料を液体以外の形態で取り扱う又は容易に転移させることができる固体又は半固体の状態に変化することを意味する。
【0033】
本発明による安定化の好ましい方法には、こうした方式で着香料をカプセル化/安定化させるのに適した物質が含まれるので、包装食品に導入する場合、これを使用前に固定化し、例えば、包装食品の天然の味、フレーバー、及び食感を増強するために、安定化剤のマトリックスから着香料を揮発させることも可能である。
【0034】
好ましくは、粒子性又は樹脂性の安定化剤は、微孔性であり(マイクロスケールの多孔質表面を有する)、例えば、MicroPore Plastics社から入手可能な、焼結ポリマー又は発泡ポリマー;BASF Styropor BFL 327として公知の発泡ポリスチレンビーズ;また、セルロース繊維;多孔質シリカゲル、分子篩、活性炭、粘土及び珪藻土である。最も好ましくはシリカゲルであって、特に粒径が約0.01ミリメートル(mm)〜約2.0mmであり、平均孔径サイズが約285オングストローム(Å)〜約315Åであり、数種の製造業者から商業的通常ルートを介して容易に入手できるシリカゲルである。シリカゲルは、有意な量の着香料を保持し、かつ放出する。更に、シリカゲルは湿気に対して大きな親和性があるので、水分が吸着されるにつれて、フレーバーは周囲の環境へと脱着される。先に述べた孔径サイズのシリカゲルは、Type B Wide Pore 300Å Silica Gelとしても公知であり、所望の量の着香料を保持するので、該シリカゲルは分子篩と同様に好ましく、約1:1の割合で比較的大きなサイズの着香料分子を吸収する一方、湿気が吸着されると着香料を直ちに放出する。より小さい孔径サイズは、あまり多くの着香料を吸着しないが、効率的に使用できることが見出された。吸着剤/安定化剤の選択は、使用される着香料組成物によっても決定される。
【0035】
先に示したように着香料は何千もの種類の様々な化合物を含む。従って、前もってすべての場合において必要とされる収着の正確なレベルを決定するのは幾分不確実である。人によって、味および香りの感覚の能力は変わり得るという特性と合わせて、着香料の多様性から、適当な吸着又は放散レベルを絶対的な確実性をもって決定するのは幾分難しくなる。本発明の組成物の調製では、食品フレーバーを強化する量の着香料及び/又は着香料の組み合わせが、本発明の安定化剤に通常的に導入され、それらは放出のためにその中に組み込まれる。着香料/着臭剤の吸着剤への最適な充填も、試行錯誤によって決定され、かつ関連生成物の官能分析によって確認され得る。
【0036】
本発明の着香料組成物は、任意の通常の方法、例えばスクリーン刻印、スロットヘッドコーティング、連続流れ、ホットメルト方法などによって堆積されてもよい。該着香料は、密封、被膜、積層、硬化、サイズにカットする工程を含めた本発明の方法に従って、運搬表面上又は運搬表面において直接堆積され、かつ包装されてもよい。
【0037】
着香料放散組成物用の収納装置の多孔度によって、放散組成物の拡散の制御が可能であり、それによって揮発速度を制御できる。着香料充填速度が速くなると、材料は少なく、かつ製造過程において収量が多くなる。好ましくは、該着香料は、可能な限り高い濃度で安定化剤に添加される。従って、好ましい充填レベルは、着香料と吸着剤との連続製造工程のための繰り返しが可能である特定の組み合わせで決定される。
【0038】
食品産業が本発明の着香料放散組成物及び装置の主要な産業ではあるが、本発明の着香料放散組成物は、薬剤、化粧品、リップコーティング、歯磨き剤などのその他の用途において使用できることを理解されたい。
【0039】
着香料は本来、他の着香料と簡単に混合できる液体形態又は液体媒体であって、着香料と吸着剤とを混合させるのに好ましい形態で作用するタイプであることが好ましい。公知の任意の液体媒体を使用することができるが、着香料には、油ベースの媒体、アルコール若しくはポリオール媒体、又は水性媒体が好ましい。
【0040】
先に述べたように、着香料は、およそ任意の割合で収着剤/担体上に吸着可能であるが、好ましい割合は少なくとも重量比約1:1である。充填をより高くすることは可能であるが、吸着できる着香料の上限があり、それは安定化剤の全体容量によって制限される。
【0041】
粒状又は粒子状の安定化剤を用いる場合、それを自由流動性にすることが好ましい。自由流動性であることが好ましいのは、それによってオーガー式供給装置、重力送り装置、又は類似の機械式生産装置を介して該組成物を堆積させることができる現行の生産及び生産ラインに容易に組み込むことが可能になるからである。組成物がその自由流動特性を失うと、追加の着香料は吸着されないことが示される。このような兆しは、試行錯誤実験において特定の着香料及び吸着剤を用いると見られ得る。
【0042】
好ましい安定化剤300Åシリカゲルを使用する場合、吸着される着香料の最大量は、安定化された着香料のタイプによって変化する。例えば、ライムフレーバーの場合、シリカゲルは最高68重量%の着香料を吸着でき、ピーチフレーバーの場合、シリカゲルは最高73重量%の着香料を吸着することができる。吸着の下限は、シリカゲルの孔径範囲により決定される。先に述べたように、孔径範囲が小さくなると、一般に着香料の充填が減少し、包装された食物への着香料の転移が少なくなった。
【0043】
以下の開示に従って、図1に示すように、フローチャート100は好ましい安定化剤を使用する工程を詳述している。シリカゲル/着香料組成物は、シリカゲル(すなわち、吸着剤/安定化剤)と着香料とを組み込むことにより調製される。好ましくは、着香料は、適当な吸着を可能にするような液体媒体(例えば、油、アルコール又は水性マトリックス)である。該着香料は、最大充填率(好ましくは少なくとも約50重量%であるか、或いは、1:1の重量比)で該シリカゲルに添加される。次いで、該組成物は、比率、及び自由流動特性を達成するために使用される着香料の性質によって決まる時間をかけて平衡化する。通常、これは少なくとも4時間である。好ましくは、該組成物は12時間平衡化するが、最も良い結果が達成されるのは、24時間の平衡の後である。バッチサイズ、安定化剤、及び/又は着香料に応じて、最高48時間の平衡が必要であることを理解されたい。好ましくは、平衡が完了した後、該組成物は自由流動性になる。自由流動特性の現れを、平衡工程が完了したことを示す「マーカー」として用いることができる。
【0044】
一旦該組成物が平衡化すると、該組成物を送達装置の上又はその中に堆積させることができる。送達装置は、そのための収納容器として機能することもできる多くの包装装置のうちの1つである。例えば、米国特許5,686,161(Cullenらの文献)などに開示されている自己接着性装置を使用することができ、該装置は本明細書中に参照として組み込まれている。類似の自己接着性装置14を、図2〜8に示す。
【0045】
図2は、自己接着性装置シート10(複数の自己接着性装置14のシート)の平面図を示し、その他にも、シート12に着脱自在に添付される着香料放散組成物(図2に示さず、図5に示す)を含有する自己接着性アイテムを記載している。図3は、自己接着性装置14の平面図を示す。図4は、表面シート16及び基材シート18を含む自己接着性装置14の正面図である。図5は自己接着性装置14の側断面図であり、着香料放散組成物20を示す。
【0046】
着香料放散組成物20は、任意に、湿度制御装置又は保湿剤を更に含むことができる。上記のCullenらの文献によって開示されるように、湿度制御装置及び保湿剤は従来技術において公知である。Cullenらの文献は、例えば、シリカゲルが湿度制御装置として如何に使用されるかを開示している。本発明のいくつかの実施態様において、着香料放散組成物20は、その他の機能、例えば、揮発された着香料を着香料放散装置の空間に存在する水蒸気に置き換えるなどの機能を果たすことができる。或いは、ある用途では、Cullenらの文献に開示されるように、ヒドロゲルなどの湿気を供給するものが必要である。これらの用途において、該着香料放散組成物が、第1の吸着剤とは異なる特性を有する第2の吸着剤を更に含むことが望ましい。例えば、第1の吸着剤よりも小さい平均孔径サイズを有する第2のシリカゲル吸着剤は、より湿気を吸着するのに望ましい。
【0047】
表面シート16は、該装置から該着香料組成物が揮発されるように、少なくとも部分的に多孔質である。表面シート16は、好ましくはスパンボンドオレフィン(例えば、Tyvek(登録商標)(E.I. DuPontの商標))であって、これは様々な寸法のロールが、通常ルートで商業的に入手可能なものである。実質的に、ポリオレフィン系繊維、スパンボンド繊維、微孔性の包装材料、及びそれらの様々な組み合わせを含めた、任意の多孔質材料が使用可能であることを理解されたい。スパンボンド繊維は、下記のものを含むことができるが、これらに限定されない:ポリエチレン、ポリプロピレン、綿、ポリ乳酸、エンドウタンパク繊維、セルロース、エステル、樹脂繊維、オレフィン、ポリエステル、ナイロン、繊維に形成することができるその他の任意のポリマー、織られたシート又は不織シートに形成することができる天然繊維、及びそれらの組み合わせであり、一方微孔性の包装材料は、下記のものを含むことができるが、これらに限定されない:エステル、オレフィン、ナイロン、ポリマーフィルム、金属シート、金属化フィルム、塗工紙、非塗工紙、ポリマー、不織布、天然材料(綿及びフェルト)、及びそれらの組み合わせである。その他のポリマー(ポリ乳酸(PLA)及びその他の生体高分子ポリマーなど)が使用可能であることを理解されたい。任意の周知の手段(例えば、ピン、レーザー、コロナ放電、静電気放電)によって、微孔性の包装材料が穿孔されることを理解されたい。更に、好ましい実施態様において、表面シート16の多孔度が、約0秒/平方インチ/立方センチメートル〜約5,000秒/平方インチ/立方センチメートル(すなわち、ガーレー透気度(Gurley Permeability)として公知の多孔度の尺度)の範囲であることが見出されている。
【0048】
好ましくは、基材シート18は、接着性の裏張りを含む。図2に示すように、基材シート18は、保持シート12から容易に剥離できる。多孔質表面シート16及び基材シート18は、着香料放散組成物20を含む自己接着性装置14の周辺部分で合わせて密着される。好ましくは、多孔質表面シート16を基材シート18に係合させる周囲シール19は、加熱密閉によるものであるが、従来技術において公知の任意のタイプの密閉手段(例えば、エンボシング又は接着剤など)によって密着される。
【0049】
先に開示したように、本発明の好ましい実施態様には、フレーバーが十分に吸収された(すなわち安定化された)後に、場合によっては粒状かつ自由流動性である安定化剤の適切な選択が含まれる。しかし、本発明は、安定化剤が、自由流動性の特徴を有するのではなく、固有の付着性、接着性、接着性(adhesive−like)、粘着性(tacky)、粘着性(gummy)、ゲル又はペースト特性を有する、実施態様も意図する。これらの実施態様では、例えば、着香料放散組成物を、着香料放散装置の形成の前又は間に、支持体に付着させてもよく、着香料放散組成物は連続層を形成してもしなくてもよい。樹脂安定化フレーバーは個々の形態に成型することができるか、又は別の方法として、表面上に被膜される。被膜可能である樹脂安定化着香料は、被膜層が接着特性を有しても有しなくてもよい連続被膜層である。この種の樹脂安定化着香料組成物は、従来の被膜、焼き付け、刻印の技術を用いて包装材料などの任意の支持体に適用されてもよい。適合する樹脂が、このような過程に適するであろうが、アクリル又はヒドロキシプロピルセルロースなどの樹脂が好ましい。同様に、フレーバーは、ゴム類又はゲル類(一般的には炭水化物)によって安定化されるが、タンパク質及び数種類の樹脂(例えばポリアクリレート)もゲル様安定化剤に適する。更に、いくつかの樹脂及びゴム安定化剤が接着特性を有し、それによって片面又は両面積層構造の成分を形成することができる。両面積層構造を、図5a及び5bに示す。このような場合、安定化着香料16の接着特性を介して、表面シート20は基材シート18に付着している。或いは、表面シート20を取り除くことができ、それによって、安定化着香料16及び基材シート18が含まれる片面積層構造が作られる。両方の例において、実施態様は、図4及び図5に存在する密封された端部を省略する。開放面があるために、着香料が、表面シート16及び/又は基材シート18のいずれかを介してではなく、開放端部から放散されることに留意することが重要である。これは、図4及び図5において好ましく、表面シート16及び/又は基材シート18が穿孔できない場合に有益であるだろう。
【0050】
図6に示すように、自己接着性装置シート10は、切取り線13で分割し、分離させて図7に示すような細長片15にすることができる。次いで細長片15は、図8に示すように、自己接着性装置の包装及び出荷のために、巻かれてロール11にすることができる。
【0051】
記載する自己接着性装置の変形例は、自己接着性基材シートをより堅いものに換えるものであるが、それは自己接着性要素を欠いている。この構造体は単にドロップインとしてパッケージに挿入することができ、又は、より好ましくは、例えば、クッキー、ブラウニ、軽食ケーキなどの、単品で若しくは少量で供給するための用途に用いる構造要素として2つの役目を果たすこともできる。また、自己接着性装置の更なる変形例は、単に自己接着設計の特徴を欠いているだけの類似の装置である。
【0052】
図9〜13に示すように、着香料放散組成物20は、キャニスター型収納装置30に入れることもできる。キャニスター30は、外表面32、裏面33及び前面34を有する任意の閉じられた収納装置の例である。本実施態様において、前面34は少なくとも部分的に多孔質であるが、キャニスター30の任意の表面が少なくとも部分的に多孔質であってもよいことを理解されたい。図13は、着香料放散組成物20を含むキャニスター30の断面図を示す。安定化されたフレーバーは押圧されてもよく、或いはそうでなければ、包装物若しくは密閉空間に挿入されて、そこからフレーバーが揮発できるような形状に成形されてもよいことを理解されたい。また、成形された形状は、適当な透過性材料で被膜されてもよく、或いは所望により被膜されなくてもよい。この点に関して、本発明は、医薬業界で一般に用いられている公知の方法によって作製された圧縮錠剤、或いは成型された錠剤、又はコーティングされていない剤形、或いはコーティング剤形などの、圧縮及び/又は成型された安定化着香料送達システムも含む。圧縮錠剤は、例えば、本明細書中に記載する別の包装手段(例えば、表面シート16及び基材シート18の各々、小袋、パケットなど)を必要としない。本発明のこれらの実施態様の実施において、適当な結合剤及び賦形剤は、着香料組成物及び安定化剤組成物に組み込まれ、更には、複合構造(例えば、錠剤、ピル、食塊など)に圧縮され得る。更に、所与の密閉包装又は食品包装が独自の形状或いは空間を有する場合には、圧縮形状が望ましいが、ここでは、該錠剤は、その形状にぴったり適合しなければならない。代表的な結合剤には、経口投与医薬錠剤及び同様の剤形(例えば、スクロースシロップ剤、ゼラチン、アカシア粘液、エチルビニルアルコール(EVOH)及びポリビニルピロリドン(PVP)など)に共通して使用されるものが含まれるであろう。該安定化剤が結合剤(例えば、EVOH、PVP、セルロースエーテル、及びアクリル)としての役目をすることも可能である。更に、触媒的に硬化される又はUV硬化型のポリマー、例えばアクリル又はウレタンポリマーを用いることが可能である。更に、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリエチレン及びエチレン酢酸ビニルも、適格の結合剤である。
【0053】
或いは、図14〜19に示すように、本発明の着香料組成物を覆う、又は該組成物が揮発されるような適切な材料を用いた小袋に包装することができる。すなわち本明細書及び特許請求の範囲内で使用されているように、小袋は着香料放散組成物を含有する小さい袋、ケース又はパッドを意味することを理解されたい。小袋40は、適当な材料42を備え、密封46によって閉じられている。図16においては密封44を示す。密封44及び密封46は好ましくは加熱密閉である。しかし、使用される具体的な小袋の材料に応じて、公知技術のその他の手段、例えば、接着密封、(超音波)超音波溶接などによって密封されることが可能であることを理解されたい。
【0054】
小袋の材料42は好ましくはスパンボンドオレフィンである。ポリオレフィン系繊維、スパンボンドオレフィン、穿孔ポリエステル、穿孔された金属シート、及びそれらの組み合わせを含めた、任意の多孔質材料が使用できることを理解されたい。該材料を巻出し、かつ該材料の端から端まで適当な断片に切り分けることによって、この種の材料を用いた製造を容易に行うことができる。次いで、該材料を半分に折り、長手方向に密封すると複数の空洞ポケットにすることができる。一般的に、これらのポケットは4つの辺を有し、そのうちの1つは折られた端部であるため密封を必要とはせず、密封されるのは対向する2つの辺である。残りの開かれた辺は、着香料放散組成物を注入によって添加させるのに使用できる。ひとたび注入すれば、この最後の辺は密封してもよい。
【0055】
或いは、小袋40は、材料を巻出し、かつ該材料の端から端まで適当な断片に切り分けることによって、製造されてもよい。次いで、該材料が折られ、かつその長さの端から端まで密封され、長い管状シェルを作製することができる。材料から成る管の一端が密封され、着香料放散組成物20で空洞全体が充填される。次いで、材料から成る管は予め定められた横方向の位置で密閉され、小袋48の列を作ることができる。次いで、該小袋は、容易に分けられ、かつ個別に取り外されるように、切り取り線49で分割することができる。
【0056】
更なる実施態様は、図19に示すような小袋48の列であって、次いでこれは製造ラインにおいて容易に分離できるように切取り線49で切り離すことができる。或いは図14に示すように、該小袋は別個に配給できるように互いを切り離すことができる。
【0057】
図20は、食物袋50の外側の図を示し、図21に明瞭に示すように、該食物袋50は着香料自己接着性装置14を含む。バッグ50は任意の食物(例えば、ポテトチップス又は任意のその他のスナック食品など)を含むことができ、決して図面に示す特定の品目に制限されないことを理解されたい。更にまた、自己接着性装置14が必ずしも着香料放散装置として使用されなくても、本発明による着香料放散装置の実施態様が使用できることを理解されたい。しかし、着香料自己接着性装置14は、包装された着香料組成物;及び消費者受容をより良くするための包装食物の香り/フレーバーを維持する/強化するために、包装食品50に添加されたフレーバーを付与する方法の好ましい一実施態様である。
【0058】
更に本発明の別の実施例において、図22に示すように、着香料は、熱形成トレイ52又はその他の類似の収納装置に添加されてもよい。熱及び圧力(又は真空)を使用して金型表面(図示せず)に熱可塑性シートが押し付けられる熱成形は、当業者には周知の方法である。トレイ52は、硬質である熱形成された基部54を備える。該基部54は、任意の分離壁58で区分化され、それによって、区画59を設けることができる。カバーシート56を用いてトレイの基部54を密封することができる。いくつかの実施態様では、分離壁58は、接触部分57においてカバーシート56を用いて加熱密封され、それによって、別々の、かつ個別の区画59を作ることができる。別々の、かつ個別の区画59を有することによって、所望されない着香料の組み合わせ(例えば、区画におけるブルーベリーパイ含有ブルーベリー着香料と、区画におけるスペアリブ含有バーベキュ着香料との組み合わせ)がされることなく、複数の着香料組成物がトレイ52内に添加される。これに反して、他の実施態様では、分離壁58は、カバーシート56で加熱密封されず、ただ異なる食物の間の区分を保つためだけに存在する。それらの実施態様において、着香料は、区画間で転移することができる。本明細書中に開示される着香料装置はいずれも、トレイ内面及び/又はトレイカバー(例えば、接着性パッチ60、小袋62、又は粘着性のない挿入物)に適用又は導入されてもよい。更に、先に記載した、成型された錠剤又は形状は、トレイ52内の利用可能空間(例えば、区画59の基部内)に応じ、かつ適合するようにデザインされてもよい。先に記載するように、本発明の安定化着香料は、支持体に被膜されてもよい。従って、本発明の更なる実施態様はコーティングカバーシート56を含み、その結果、該カバーシートの下に含まれる食品が該安定化着香料に曝露される。先に記載した実施態様と同様に、カバーシート56は1つの安定化着香料又は複数の着香料で被膜されてもよく、各々はトレイ52の特定の区画に対応する。トレイ52内に含有される食品は従来の方法(例えば、電子レンジ、沸騰、又は従来の又は標準のオーブンでのベーキング)によって加熱されてもよく、このような加熱は着香料の揮発を強化し、更に着香料の転移を促進することができる。
【0059】
図23は本発明の着香料放散組成物の錠剤型収納/放出包装の透視図を示し、図24は、図23の線24−24に沿った錠剤型収納/放出包装の側断面図を示す。一般的なピラミッドの形状を有する錠剤64が示されているが、錠剤64は、例えば、円筒状、球状などの任意の成型可能な形状が可能であり、この種の変形は、本発明の精神及び特許請求の範囲内であることを理解されたい。図23及び24に示す実施態様では、先に記載するように、錠剤64はコーティング66によって被覆されている。従って、着香料放散組成物68はコーティング66で密閉され、それによって、例えば、着香料放散組成物68の散布が防がれ、かつ/又は着香料放散組成物68の揮発が制御される。コーティング66は、錠剤64と、錠剤64が包装されている製品との間の適合性を高めることもできる。錠剤64はコーティングされていても又はコーティングされていなくてもよく、この種の変形は、本発明の特許請求の範囲内であることを理解されたい。更に、着香料及び/又は安定化剤成分が結合剤として作用することができるので、着香料放散組成物68には、錠剤64の構造的完全性の維持を助ける別の結合剤物質が含まれても又は含まれていなくてもよい。
【0060】
先に記載したいくつかの実施態様は、小児科用の薬剤(例えばビタミン、抗生物質など)の味を、苦味を少なくすることによってマスキングする着香料源として特に有用であり、従って、患者により容易に受け入れられることを理解されたい。例えば、着香料を放散している小袋又は自己接着性パケットを薬瓶内に収めることができ、それによって、所望されるフレーバーを、その中に収納されたビタミン又は薬物に付与することができる。
【0061】
以下の本発明の最良の形態に従って、本発明を更に実施する。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
ライム着香料放散組成物を以下のプロトコルに従って調製した。平均孔径サイズ約300Åの多孔質表面を有するシリカゲル10グラムを、ねじぶた式のガラス瓶内に入れて、それにライムエッセンス(International Flavors and Fragrances, Inc.(IFF)(New York, NY)製)10グラムを1:1の重量比で加え、48時間放置した。該シリカゲルは、「B」型として公知であり、Kaltron、Bensenville、IL又はTranso-Pharm, Blue Bell, PAから入手可能である。該シリカゲルは直径0.1〜0.5mmを有する微粒子であった。該瓶をきつく閉め、着香料が該シリカゲルとともに均等に分散するように見えるまで、約5分間ハンドシェークした。該瓶を開け、へらを用いて更に着香料の分散を増加させた。着香料が均等に分散し、該シリカゲルが湿気を含んでいるように見えると、該組成物を48時間放置して、該シリカゲルに着香料を吸収させ、それによって着香料を安定化させることができた。これによって、着香料放散組成物0.61グラム/ccを得た。本実施例を更に繰り返し行い、ライム着香料の最大充填量が68重量%であり、依然として自由流動性を維持している結果を得た。
【0063】
(実施例2)
実施例1の組成物を、下記の通りスケールアップした:平均孔径サイズ約300Åの多孔質表面を有するシリカゲル1250gを、標準型Kitchen Aid(登録商標)ブランドの調理用ミキサーのボウルに加えた。次いで、IFF製のライム着香料1250gを該ボウルに加えた。該ミキサーのヘッドをボウルに降ろし、粉末がシリカゲルから分散しないような速度でミキサーを作動させた。約5分後に該ミキサーを停止し、フレーバーの分散について該ゲルを詳しく調べた。該着香料が十分に混合され、シリカゲルが湿気を含んでいるように見えると、該混合物を適当な容器に移して、48時間平衡化させた。これによって、該ゲル及び着香料が平衡化し、ゲルにライム着香料を吸収させることができた。これによって、実施例1と類似の組成物を得た。
【0064】
(実施例3)
トゥッティフルッティ着香料放散組成物を以下のプロトコルに従って調製した:平均孔径サイズ約300Åの多孔質表面を有するシリカゲル10グラムを、ねじぶた付きガラス瓶に入れて、それにトゥッティフルッティエッセンス(International Flavors and Fragrances, Inc.製)10グラムを加えた。該シリカゲルは、「B」型であって、Kaltron又はTranso-Pharmから入手可能であった。該シリカゲルは直径0.1〜0.5mmを有する微粒子であった。該瓶を閉め、該着香料が該シリカゲルとともに均等に分散するように見えるまで、約5分間ハンドシェークした。該瓶の蓋を取り外し、へらを用いて更に該着香料の分散を増加させた。該着香料が均等に分散し、該シリカゲルが湿気を含んでいるように見えると、該組成物を48時間放置して、該シリカゲルに着香料を吸収させ、それによって着香料を安定化させることができた。これによって、着香料放散組成物0.60グラム/ccを得た。
【0065】
(実施例4)
実施例3の組成物を、下記の通りスケールアップした:平均孔径サイズ約300Åの多孔質表面を有するシリカゲル1250gを、標準型Kitchen Aid(登録商標)ブランドの調理用ミキサーのボウルに加えた。次いで、IFF製のトゥッティフルッティ着香料1250gを該ボウルに加えた。該ミキサーのヘッドを該ボウルに降ろし、粉末がシリカゲルから分散しないような速度でミキサーを作動させた。約5分後に該ミキサーを停止し、フレーバーの分散についてゲルを詳しく調べた。該着香料が十分に混合され、該ゲルが湿気を含んでいるように見えると、該混合物を適切な容器に移して、48時間平衡化させ、それによって、該ゲル及び着香料が平衡化し、該ゲルに着香料を吸収させることができた。これによって、実施例3の組成物と類似の組成物を得た。
【0066】
(実施例5)
コリアンダ着香料放散組成物を以下の通り調製した。平均孔径サイズ約300Åの多孔質表面を有するシリカゲル10グラムを、ねじぶた付きガラス瓶に入れて、それにコリアンダーエッセンス(International Flavors and Fragrances, Inc.製)10グラムを加えた。該シリカゲルは、「B」型であって、Kaltron又はTranso-Pharm製であった。該シリカゲルは直径0.1〜0.5mmを有する微粒子であった。次いで該瓶をきつく閉めて、着香料が該シリカゲルとともに均等に分散するように見えるまで、約5分間ハンドシェークした。次いで該ガラス瓶の蓋を取り外し、へらを用いて更に着香料の分散を増加させた。該着香料が均等に分散し、該シリカゲルが湿気を含んでいるように見えると、該組成物を48時間放置して、該シリカゲルに着香料を吸収させ、それによって着香料を安定化させた。これによって、着香料放散組成物0.60グラム/ccを得た。本実施例の方法を繰り返し行い、結果として最大充填量が51重量%であり、依然として自由流動性を維持しているコリアンダ着香料を得た。
【0067】
(実施例6)
実施例3のコリアンダ着香料放散組成物0.3グラムを用いて着香料放散パッチを作成した。該組成物を構造層、接着剤層、はく離ライナーから成る積層基材シート構造体上に堆積させた。次いで、堆積物を有するこのウェブを、基材シート構造体に加熱密封させた穿孔表面シートで覆った。次いで、はく離ライナーを切らずに表面シート及び基材シートを切断するような方法で、該複合ウェブを小さな断片に切り分けた。次いで、余分な材料を該ウェブから取り除き、個々の接着性パッチのウェブを残した。次いで最終的に、該パッチが連続した細長片になるように該ライナーを分割し、その結果、該パッチは、自動供給に適するものになった。次いで、いくつかのパッチを試験した。時間の経過とともに、収着パッチによって、揮発された着香料は表面シートを通過し、周囲に送出された。
【0068】
(実施例7)
数種の着香料放散パッチは、レモン、ハッカ及びティー着香料を含む着香料放散組成物0.3グラムを用いて調製した。平均孔径サイズ約300Åの多孔質表面を有するシリカゲル各10グラムの3セットを、別々のねじぶた付きガラス瓶に入れて、それにレモン、ハッカ及びティーエッセンス(International Flavors and Fragrances, Inc.製)10グラムを加えた。該シリカゲルは、「B」型であった。該シリカゲルは直径0.1〜0.5mmを有する微粒子の形態であった。次いで、該瓶をきつく閉め、着香料が該シリカゲルとともに均等に分散するように見えるまで、約5分間ハンドシェークした。次いで、各瓶から蓋を取り除き、へらを用いて更に着香料の分散を増加させた。相互汚染を避けるために、該へらを使用の間に洗浄した。該着香料が均等に分散し、該シリカゲルが湿気を含んでいるように見えると、該組成物を48時間放置して該シリカゲルに着香料を吸収させ、それによって着香料を安定化させた。該組成物を、実施例6に記載されているものと類似の基材シートの個別片上に堆積させた。次いでこれらを、個別の数枚の被膜したTyvek(登録商標)表面シートで覆い、その被膜した側を標準型卓上インパルス加熱シーラーで基材シートに加熱密封した。余分な材料はすべて削り落とした。該収着パッチは、すべて1.75インチX 1.5インチの長方形であって、1/16インチの密封をした。
【0069】
また、類似の収着パッチを、ファヒータ、ペパローニ、焼成ピザ、チーズピザ着香料(International Flavors and Fragrances社製)を含む、着香料放散組成物0.250グラムを用いて調製した。また、各々のこれらの組成物及び接着性パッチは、先に開示されたものと同じ方法を用いて調製された。
【0070】
(実施例8)
ストロベリー放散フレーバー組成物を下記の通りに生成した。非イオン性セルロースエーテル、具体的には、International Fiber (North Tonawanda, NY)から入手した、ヒドロキシプロピルセルロースをビーカーに加えて、約12%(W/W)樹脂で水に分散させた。その後、15重量%のストロベリー着香料(International Flavors and Fragrances製)を該ビーカーに加えた。よく混合するまで、該内容物を撹拌スティックでしっかり撹拌した。結果として生じた混合物を、24時間放置した。検査をすると、相分離はなく、樹脂混合物放散ストロベリー着香料が周囲環境に存在した。結果として生じたフレーバー/樹脂組成物を、ストロベリーフレーバーが放出された基膜に刻印した。
【0071】
(実施例9)
先に示したシリカゲルに着香料を調製し、5lbsの安定化着香料を生成する。該組成物が平衡化した後に、それをSigma型混合器内に入れて、そのまま約10分間混合する。次いで、約1.6lbs又は25重量%のPVPを該混合器に加え、かつ該2つの成分を約2時間混合させる。次いで、結果として生じた混合物を卓上成形機に収納し、ここで、該調製剤はスプーンを用いて空洞に入れられ、かつ約1秒間、10lbsの圧力で圧縮され(時間及び圧力は用いられる成形機によって異なる)、結果として圧縮形態になる。やがて、これが放出着香料の要素になる。標準コーティング技術を用いる標準パンコーティング機を介して、該圧縮形態を食品用のコーティングで被覆する、更なる工程を行ってもよい。
【0072】
(実施例10)
先に示したシリカゲルに着香料を調製し、5lbsの安定化着香料を生成する。該組成物が平衡化した後に、それをSigma型混合器内に入れて、そのまま約10分間混合する。次いで、5lbs又は10重量%のEVAを該混合器に加え、かつ該2つの成分を約10分間混合する。次いで、結果として生じた混合物を卓上成形機に収納し、ここで、該調製剤はスプーンを用いて空洞に入れられ、かつ約1秒間、10lbsの圧力で圧縮され(時間及び圧力は用いられる成形機によって異なる)、結果として圧縮形態になる。やがて、これが放散着香料の要素になる。標準コーティング技術を用いる標準パンコーティング機を介して、該圧縮形態を食品用のコーティングで被覆する、更なる工程を行ってもよい。
【0073】
(実施例11)
75gの蒸留水をビーカーに加え、次いでProClin 300 Preservative(Sigma Aldrich 社製(St. Louis))0.06グラムを加えた。これらをすべて30秒間手動で混合した。混合後、カラゲナン(Ingredient Solutions社製(Waldo、Maine))9グラムを加え、該溶液を更に30秒間手動で混合した。最後に、ライム着香料(International Flavors and Fragrances製)9グラムを加え、60秒間一緒に混合した。結果として生じた組成物は、半透明の黄色を有し、かつそれ自体はゴム様硬度を有する、軽く柔らかな塊であった。更なる実験では、該水又は着香料の単なる増加により、該混合物が希釈されペーストになることを示した。
【0074】
(実施例12)
本発明により製造される生成物の着香料放散特性を示すために一連の試験を行った。
【0075】
試験用サンプルを、下記の名前で利用可能な着香料を用いて調製した;ブルーベリークリーム(Blueberry Cream);レモネード(Lemonade); 焼成パン(Baked Bread);蜂蜜クローバ及び蜂蜜(Honey Clover and Honey)である。試験片サンプルを調製し、ここで各々は、平均孔径サイズ約300Åの多孔質表面を有するシリカゲル0.25グラムの上に含浸させた、先に記載した着香料0.25グラムを含有した。着香料とシリカゲルとを1:1の割合で混合し、かつ各着香料サンプルを平衡化させるために24時間放置させることによって、シリカゲルの試験サンプルを該着香料に含浸させた。
【0076】
着香料-吸着試験片を1.75インチX 1.5インチサイズの収着パッチで各々を包装した。ここで、該パッチの基材シートは、ポリエステル上にポリエチレン押出コーティングを有するポリエステルフィルムであった。各パッチの表面シートは、スパンボンド不織フィルム(DuPont Tyvek(登録商標))から成り、それを通る該片から着香料を発することができる。該パッチは、ヒートシールコーティング層によって密封した。
【0077】
試験パッチをIsotemp Vacuum Oven Model 282Aに入れて、該真空機を作動させて、23℃、0.1〜0.5インチHgで保持した。該サンプルを、Mettler Toledo AG245 4位化学てんびん(Mettler Toledo AG245 4 place analytical balance)を用いて、オーブンに入れる前、かつそれらの重量が一定になるまでのかなりの日数の後ごとに計量した。
【0078】
該試験データ及び結論は、下記の通りである。
【表1】





【0079】
着香料放散速度は、試験される着香料の特定の化学組成物によって変化したが、試験結果は、好ましく制御された放出特性、すなわち数時間〜数週間の間、着香料を放出し続けることを一般に示した。例えば、焼成パンフレーバーは、試験パッチから揮発する最も速いものの中の1つであって、該着香料の66.4%は最初の8時間で放出され、その後の更なる着香料の送達はなかった。しかし、蜂蜜フレーバーは、比較的遅い揮発速度を示し、かつパッチ装置からの放出が比較的遅く、該着香料のわずか10%が10日(255時間)より後に送達され、その後の更なる着香料の送達はなかった。その他の注目すべき結果の例を挙げると、ブルーベリークリームフレーバーの継続的で持続した放出があり、着香料の70%が、24日(591時間)を超える持続期間に渡って放出された。その他の類似結果が、蜂蜜クローバ着香料の場合に示され、該着香料の約50%が24日よりも長い期間に渡って送達された。平均すると、着香料の全てに関して、フレーバーの大部分は、試験実施の最初の2〜3日で送達された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化剤と組み合わせて少なくとも1つの着香料を含む着香料放散組成物であって、前記少なくとも1つの着香料は、加工中に安定化し、かつ密閉された環境にある場合に前記組成物から放出される、前記着香料放散組成物。
【請求項2】
粒状性、自由流動性、成型可能性、刻印可能性、被膜可能性、付着性及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの特性によって特徴付けられる、請求項1記載の着香料放散組成物。
【請求項3】
前記安定化剤が、吸着剤、吸収剤、又はそれらの組み合わせである、請求項1記載の着香料放散組成物。
【請求項4】
前記安定化剤が、親水コロイド、ゲル、樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリル酸ブチル、メタクリレート、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギナートゴム、収着剤、シリカゲル、シリカヒドロゲル、活性炭、ケイ藻土、パーライト、ゼオライト、分子篩、粘土、微孔性ポリマー、発泡ポリスチレンビーズ、ゴム、ペースト、セルロース繊維、アクリル樹脂、セルロースエーテル、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びそれらの混合物からなる群から選択される一員である、請求項1記載の着香料放散組成物。
【請求項5】
前記安定化剤がシリカゲルである、請求項3記載の着香料放散組成物。
【請求項6】
前記シリカゲルの孔径サイズが、約285Å〜約315Åの範囲を含む、請求項5記載の着香料放散組成物。
【請求項7】
前記シリカゲルの平均孔径サイズが、約300Åを含む、請求項5記載の着香料放散組成物。
【請求項8】
前記シリカゲルが、粒状であって、かつ約0.01mm〜約2.0mmの粒径サイズ範囲を含む、請求項5記載の着香料放散組成物。
【請求項9】
請求項1記載の組成物を含む着香料放散装置。
【請求項10】
請求項2記載の組成物を含む着香料放散装置。
【請求項11】
請求項3記載の組成物を含む着香料放散装置。
【請求項12】
請求項4記載の組成物を含む着香料放散装置。
【請求項13】
請求項5記載の組成物を含む着香料放散装置。
【請求項14】
請求項6記載の組成物を含む着香料放散装置。
【請求項15】
請求項7記載の組成物を含む着香料放散装置。
【請求項16】
請求項8記載の組成物を含む着香料放散装置。
【請求項17】
自己接着性装置、キャニスター、トレイ、錠剤、シート、被膜、及び小袋からなる群から選択される一員である、請求項9記載の着香料放散装置。
【請求項18】
自己接着性装置、キャニスター、トレイ、錠剤、シート、被膜、及び小袋からなる群から選択される一員である、請求項10記載の着香料放散装置。
【請求項19】
自己接着性装置、キャニスター、トレイ、錠剤、シート、被膜、及び小袋からなる群から選択される一員である、請求項11記載の着香料放散装置。
【請求項20】
自己接着性装置、キャニスター、トレイ、錠剤、シート、被膜、及び小袋からなる群から選択される一員である、請求項12記載の着香料放散装置。
【請求項21】
自己接着性装置、キャニスター、トレイ、錠剤、シート、被膜、及び小袋からなる群から選択される一員である、請求項13記載の着香料放散装置。
【請求項22】
自己接着性装置、キャニスター、トレイ、錠剤、シート、被膜、及び小袋からなる群から選択される一員である、請求項14記載の着香料放散装置。
【請求項23】
自己接着性装置、キャニスター、トレイ、錠剤、シート、被膜、及び小袋からなる群から選択される一員である、請求項15記載の着香料放散装置。
【請求項24】
自己接着性装置、キャニスター、トレイ、錠剤、シート、被膜、及び小袋からなる群から選択される一員である、請求項16記載の着香料放散装置。
【請求項25】
接着性基材シート及び多孔質表面シートを含む自己接着性装置であって、該装置の端々が密閉されている、請求項9記載の着香料放散装置。
【請求項26】
前記多孔質表面シートが、ポリオレフィン系繊維、スパンボンド繊維、微孔性包装材料及びそれらの組み合わせからなる群から選択される一員を含む、請求項25記載の着香料放散装置。
【請求項27】
前記スパンボンド繊維が、ポリエチレン、ポリプロピレン、綿、ポリ乳酸、エンドウタンパク繊維、セルロース、エステル、樹脂繊維、オレフィン、ポリエステル、ナイロン、繊維に形成され得る他の任意のポリマー、織られたシート又は不織のシートに形成され得る天然繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される繊維を含む、請求項26記載の着香料放散装置。
【請求項28】
前記微孔性包装材料が、エステル、オレフィン、ナイロン、ポリマーフィルム、金属シート、金属化フィルム、塗工紙、非塗工紙、ポリマー、不織布、天然材料、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項26記載の着香料放散装置。
【請求項29】
粘着性基材シート及び多孔質表面シートを含む自己接着性装置であって、該装置の端々が密閉されていない、請求項9記載の着香料放散装置。
【請求項30】
成形トレイの中に挿入されている、請求項9記載の着香料放散装置。
【請求項31】
請求項1記載の着香料組成物を含む圧縮された又は成型された錠剤。
【請求項32】
請求項2記載の着香料組成物を含む圧縮された又は成型された錠剤。
【請求項33】
請求項3記載の着香料組成物を含む圧縮された又は成型された錠剤。
【請求項34】
請求項4記載の着香料組成物を含む圧縮された又は成型された錠剤。
【請求項35】
請求項5記載の着香料組成物を含む圧縮された又は成型された錠剤。
【請求項36】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項9記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項37】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項10記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項38】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項11記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項39】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項12記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項40】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項13記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項41】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項14記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項42】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項15記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項43】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項16記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項44】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項17記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項45】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項18記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項46】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項19記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項47】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項20記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項48】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項21記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項49】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項22記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項50】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項23記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項51】
前記少なくとも1つの着香料が、包装された食品によって吸収される、請求項24記載の着香料装置を含む包装された食品。
【請求項52】
着香料放散装置を製造する方法であって:
(i)着香料放散組成物を作製するために、安定化剤と少なくとも1つの着香料とを組み込む工程;及び
(ii)前記着香料放散組成物を、少なくとも部分的に多孔質の収納装置で包装する工程
を含む、前記製造方法。
【請求項53】
前記着香料放散組成物を、少なくとも部分的に多孔質の収納装置で包装する工程が下記を更に含む、請求項52記載の方法:
基層を形成するために、基材シート上に前記着香料放散組成物を堆積させること;
前記基層を表面シートで覆うこと;及び
前記表面シートを前記基材シートに密着させること。
【請求項54】
着香料放散組成物を製造する方法であって:
包装された食品に吸収される少なくとも1つの着香料を選択する工程;
固体形態又は半固体形態を形成するために、前記着香料と組み合わせる安定化剤を選択する工程;及び
前記選択された安定化剤と前記選択された少なくとも1つの着香料とを組み合わせて、前記着香料放散組成物を得る工程
を含む、前記製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2010−536369(P2010−536369A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521862(P2010−521862)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/009875
【国際公開番号】WO2009/029184
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(503264031)マルチソーブ テクノロジーズ インコーポレイティド (12)
【Fターム(参考)】