説明

睡眠薬の放出制御医薬組成物及びその製造方法

【課題】患者を速やかに睡眠状態に誘導する機能を持つと同時に、薬物の放出時間を延長し、その薬効作用時間も延長させることができる放出制御医薬組成物を提供すること。
【解決手段】速放性処方剤と徐放性処方剤の組合わせからなり、該速放性処方剤は睡眠薬及び熱溶解性成分を含み、該徐放性処方剤は睡眠薬、熱溶解性成分及び徐放性成分を含む睡眠薬の放出制御医薬組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速放性処方剤と徐放性処方剤を組合わせた睡眠薬の放出制御医薬組成物及び該医薬組成物の製造方法に関するものであり、詳細には睡眠薬のザレプロン(Zaleplon)の放出制御医薬組成物及び該医薬組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
睡眠薬は不眠症の治療に良く使われる有効な薬物であり、販売されている大部分の睡眠薬は速放性経口剤であるが、その薬効開始時期及び作用時間は満足するまでに至っていなかった。
例えば、睡眠薬のザレプロンは、不眠症の治療に用いられる薬物であり、その化学名はN−〔3−(3−シアノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル)フエニル〕−N−エチルアセタミド(N-[3-(3-cyanopyrazolo[1,5-a]pyrimidin-7-yl)phenyl]-N-ethylacetamide)、分子式がC17155Oで、分子量が305.34(特許文献1参照)である化合物であり、ザレプロンは経口カプセルの剤形で販売〔ソナタ(Sonata):商標〕され、その成分含量は5mg及び10mgである。
薬物動力学のデータから、ザレプロンは経口投与された後、薬物の最高血中濃度到達時間(Tmax)は1時間であるので、患者は速やかに睡眠状態に入ることができると同時に、血液中での半減期も1時間であることから、薬物の血液中での濃度は速やかに消失するので、翌日に頭痛などの副作用は起こらない。
しかし、このザレプロンのカプセル剤はその薬効作用時間は短く、僅か約4時間であるので、一部の患者は短時間後に目覚める場合もある。
現在、既に販売されているザレプロンのカプセル剤は、ザレプロンを、例えば、微晶セルロース、プリゲル化澱粉、二酸化珪素、ラウリル硫酸ナトリウム等の賦形剤及び他の色素とを混合して得られるカプセル剤である。
経口投与された後、該カプセル剤からザレプロンは迅速に放出され、ザレプロンの薬効を生じる。
該カプセル剤の薬効開始時間は短く、更に薬効作用時間も短縮されるので、患者を睡眠状態に誘導することが可能であるが、睡眠時間を伸ばして、長時間睡眠状態を維持すべき患者に対しては顕著な効果を果たすことはできなかった。
【0003】
経鼻吸入する睡眠薬(例えば、ザレプロン)のエアゾールが開示されている(特許文献2参照)
また、所謂、睡眠改善薬(ザレプロンを含む)を放出する医薬組成物が開示されている(特許文献3参照)
しかしながら、特許文献3の医薬組成物の薬効作用時間は5時間としても、特許文献2及び3の二種の剤形から生じた薬効作用時間はやはり不足している。
更に、速効性睡眠薬(ザレプロンを含む)の放出制御医薬組成物が開示されている(特許文献4参照)。
該医薬組成物は少なくとも1種の放出阻害剤(release retardant)とザレプロンを組合わせて、パルス型(ダブルピーク)に類似した薬物放出の延長効果を持つ医薬組成物である。
その放出阻害剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリ(アクリル酸エチル−メチルアクリル酸メチル)、メチルアクリル酸共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー(Carbomer:カルボキシビニルポリマー)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、コーンスターチ等の一般製剤に使用されている賦形剤である。
しかしながら、特許文献4には、本発明の速放性処方剤及び徐放性処方剤を組合わせた睡眠薬の放出制御医薬組成物に関しては全く開示乃至示唆はされていない。
【0004】
【特許文献1】米国特許第4626538号明細書
【特許文献2】米国特許第6716415号明細書
【特許文献3】米国特許第6638535号明細書
【特許文献4】米国特許第6485746号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、速放性処方剤と徐放性処方剤の組合わせからなり、該速放性処方剤は睡眠薬及び熱溶解性成分を含み、該徐放性処方剤は睡眠薬、熱溶解性成分及び徐放性成分を含む睡眠薬の放出制御医薬組成物及び該医薬組成物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、速放性処方剤と徐放性処方剤を組合わせた睡眠薬の放出制御医薬組成物により、その目的を達成し得ることを見出した。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
1.速放性処方剤と徐放性処方剤の組合わせからなり、該速放性処方剤は睡眠薬及び熱溶解性成分を含み、該徐放性処方剤は睡眠薬、熱溶解性成分及び徐放性成分を含むことを特徴とする睡眠薬の放出制御医薬組成物、
2.睡眠薬が、N−〔3−(3−シアノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル)フエニル〕−N−エチルアセタミド(一般名:ザレプロン)である上記に記載の睡眠薬の放出制御医薬組成物、
3.放出制御医薬組成物が、カプセル剤形である上記1又は2に記載の睡眠薬の放出制御医薬組成物、
4.熱溶解性成分が、ビタミンE−TPGS(d−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩)、ポリエチレングリコール1500(PEG1500)、グリセロール及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステル混合物〔Gelucire(商標)50/13〕及びワックスから選ばれる上記1〜3のいずれかに記載の睡眠薬の放出制御医薬組成物、
5.徐放性成分が、アルギン酸ナトリウム及びメチルアクリル酸ジメチルアミンエチル−メチルアクリル酸メチル共重合体〔Eudragit(商標)〕から選ばれる上記1〜3のいずれかに記載の睡眠薬の放出制御医薬組成物、
6.(1)熱溶状態下で、睡眠薬及び熱溶解性成分の混合物を用意し、その混合物を冷却して、速放性処方剤を得る、
(2)熱溶状態で、睡眠薬、熱溶解性成分及び徐放性成分の混合物を用意し、その混合物を冷却して、徐放性処方剤を得る、
(3)工程(1)で製造された速放性処方剤又は工程(2)で製造された徐放性処方剤を加熱溶融して液体とした後、剤形中に充填し、
(4)工程(3)の剤形中の速放性処方剤又は徐放性処方剤を冷却した後、別途に用意された工程(2)で製造された徐放性処方剤又は工程(1)で製造された速放性処方剤を加熱溶融して、その得られた液体を上記の冷却された剤形中の速放性処方剤又は徐放性処方剤の上に充填し、
(5)工程(4)で剤形中に充填された徐放性処方剤又は速放性処方剤を冷却する工程を含む、或いは、
(6)工程(1)で製造された速放性処方剤又は工程(2)で製造された徐放性処方剤を冷却せずに、溶融液状態で剤形に直接充填して冷却後、別途に用意された工程(2)で製造された徐放性処方剤又は工程(1)で製造された速放性処方剤も冷却せずに、溶融状態で上記冷却された剤形中の速放性処方剤又は徐放性処方剤の上に直接充填して冷却する工程を含むことを特徴とする上記1〜5に記載の睡眠薬の放出制御医薬組成物の製造方法
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の睡眠薬の放出制御医薬組成物は、患者を速やかに睡眠状態に誘導する機能を持つと同時に、薬物の放出時間を延長し、その薬効作用時間も延長させることができるので、患者の睡眠時間を延長することができ、その睡眠薬の優れた効果を充分に発揮することができる。
例えば、睡眠薬がザレプロンの場合、患者を速やかに睡眠状態に誘導する機能を持つと同時に、薬物の放出時間を延長し、その薬効作用時間を約6〜8時間まで延長させることができるので、患者の睡眠時間を延長することができ、夜中の目覚めを避けることによって、ザレプロンの優れた効果を充分に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明は、N−〔3−(3−シアノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル)フエニル〕−N−エチルアセタミド(一般名:ザレプロン)、該塩、該溶媒和物及び該水和物のような睡眠薬の薬効時間を延長するために、速放性処方剤及び徐放性処方剤を組合わせた睡眠薬(特に、ザレプロン)を含む放出制御医薬組成物に関するものである。
該二種類の処方剤を各々熱溶状態で剤形中に充填して、室温下で該二種の処方剤を固化体に硬化させる。
更に、本発明の医薬組成物は経口投与されると、速放性処方剤からの薬物は胃液の酸性環境に放出され、徐放性処方剤からの薬物は胃液では放出されず、腸管に入ってからアルカリ性の腸液によって溶解され、更に薬物が放出される。
速放性処方剤は、薬物及びビタミンE−TPGS(d−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩)、ポリエチレングリコール1500(PEG1500)、グリセロール及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステル混合物〔Gelucire(商標)50/13〕、ワックス及びその誘導体のような酸性条件下(pH<5)で溶解し得る熱溶解性成分を含む。
熱溶解性成分は、通常35〜80℃で溶解する。
速放性処方剤中の睡眠薬の配合量としては、例えば1〜40質量%である。
熱溶解性成分がビタミンE−TPGSの場合、室温下では水溶性固体であり、その融点は約40℃であるので、胃液中で、該ビタミンE−TPGSは速やかに溶解して薬物を放出する。
また、徐放性処方剤は、薬物、熱溶解性成分及びpH≧5の条件下で溶解し得る徐放性成分を含み、該徐放性成分は、アルギン酸ナトリウム、メチルアクリル酸ジメチルアミンエチル−メチルアクリル酸メチル共重合体[Eudragit(商標)]及びその誘導体を含む。
徐放性処方剤中の睡眠薬の配合量としては、例えば1〜40質量%である。
徐放性成分がアルギン酸ナトリウムの場合、アルギン酸ナトリウムは胃液中で水不溶性のアルギン酸皮膜になり、その保護膜は薬物の放出を薬物が腸管に入るまで阻害し、腸管に入った後、アルギン酸がアルカリ性の腸液に溶解されて、第二段目の薬物放出を引き起こす。
【0010】
本発明の睡眠薬を含む放出制御医薬組成物の製造方法は以下の通りである。
(1)熱溶状態下で、睡眠薬及び熱溶解性成分の混合物を用意し、その混合物を冷却して、速放性処方剤を得る、
(2)熱溶状態で、睡眠薬、熱溶解性成分及び徐放性成分の混合物を用意し、その混合物を冷却して、徐放性処方剤を得る、
(3)工程(1)で製造された速放性処方剤又は工程(2)で製造された徐放性処方剤を加熱溶融して液体とした後、剤形中に充填し、
(4)工程(3)の剤形中の速放性処方剤又は徐放性処方剤を冷却した後、別途に用意された工程(2)で製造された徐放性処方剤又は工程(1)で製造された速放性処方剤を加熱溶融して、その得られた液体を上記の冷却された剤形中の速放性処方剤又は徐放性処方剤の上に充填し、
(5)工程(4)で剤形中に充填された徐放性処方剤又は速放性処方剤を冷却する睡眠薬の放出制御医薬組成物の製造方法、或いは、
(6)工程(1)で製造された速放性処方剤又は工程(2)で製造された徐放性処方剤を冷却せずに、溶融液状態で剤形に直接充填して冷却後、別途に用意された工程(2)で製造された徐放性処方剤又は工程(1)で製造された速放性処方剤も冷却せずに、溶融状態で上記冷却された剤形中の速放性処方剤又は徐放性処方剤の上に直接充填して冷却する工程を含む睡眠薬の放出制御医薬組成物の製造方法である。
【0011】
速放性処方剤及び徐放性処方剤は加熱状態では両方とも流動性液体又は懸濁液である。
放出制御医薬組成物のカプセルの剤形としては、この流動性液体又は懸濁液はそれぞれ定量的にハードカプセル中に充填する。
例えば、最初に徐放性処方剤はカプセルの底部に充填され、この処方剤が冷却された後に、速放性処方剤を徐放性処方剤の上部に充填し、次にカプセルの蓋を着ける。
更に、該複合処方剤を冷却した後に、カプセル剤が得られる。
また、最初に速放性処方剤をカプセルに充填し、その後に徐放性処方剤を充填することもできる。
【実施例】
【0012】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0013】
実施例1
〔処方1〕
徐放性処方剤:
成分 質量%
ザレプロン 6%
Gelucire50/13 54%
アルギン酸ナトリウム 40%

速放性処方剤:
成分 質量%
ザレプロン 4%
ビタミンE−TPGS 96%

〔処方1の製造方法〕
工程1−徐放性処方剤の調製:
(1)27gのGelucire50/13及び20gのアルギン酸ナトリウムを容器中で混合し、その混合温度を70℃に保持する。
(2)該二種成分を均一な状態になるまで、充分に混合する。
(3)3gのザレプロンを容器中に添加し、均一になるまで混合し懸濁液とする。
(4)100mgの該均一な懸濁液を70℃でハードカプセルの底部に充填する。
(5)該処方剤を室温まで冷却放置する。

工程2−速放性処方剤の調製:
(6)48gのビタミンE−TPGSを容器に入れ、加熱溶解した後、60℃の温度に維持する。
(7)2gのザレプロンを容器中に添加し、温度を60℃に維持した上でザレプロンを溶解するように撹拌して、均一な懸濁液とする。
(8)100mgの該均一な懸濁液を60℃で、上記のハードカプセル中の徐放性処方剤の上に充填した後、カプセルの蓋をする。
(9)該複合処方剤を室温まで冷却放置した後、処方1のカプセル剤が得られる。
上記カプセルには10mgのザレプロンが含まれている。
【0014】
実施例2
〔処方2〕
徐放性処方剤:
成分 質量%
ザレプロン 6%
PEG1500 84%
Eudragit 10%

速放性処方剤:
成分 質量%
ザレプロン 4%
ビタミンE−TPGS 96%

〔処方2の製造方法〕
工程1−徐放性処方剤の調製:
(1)42gのPEG1500及び5gのEudragitを容器中で混合し、その混合温度を70℃に保持する。
(3)該二種の成分を均一な状態まで、充分に混合する。
(3)3gのザレプロンを該容器に添加し、均一になるまで混合し懸濁液とする。
(4)100mgの該均一な懸濁液を70℃下でハードカプセルの底部に充填し、
(5)該処方剤を室温まで冷却放置する。

工程2−速放性処方剤の調製:
(6)48gのビタミンE−TPGSを容器に入れて、加熱溶解した後、60℃の温度に維持する。
(7)2gのザレプロンを容器に添加し、温度を60℃に維持した上でザレプロンを溶解するように撹拌して、均一な懸濁液とする。
(8)100mgの該均一な懸濁液を60℃で、上記のハードカプセル中の徐放性処方剤の上に充填した後、カプセルに蓋をする。
(9)該複合処方剤を室温まで冷却放置した後、処方2のカプセル剤を得る。
上記カプセルには10mgのザレプロンが含まれている。
【0015】
実施例3
〔処方3〕
徐放性処方剤:
成分 質量%
ザレプロン 3.3%
Gelucire50/13 44.7%
アルギン酸ナトリウム 40.7%
PEG1500 11.3%

速放性処方剤:
成分 質量%
ザレプロン 3.3%
PEG1500 96.7%

〔処方3の製造方法〕
工程1−徐放性処方剤の調製:
(1)44.7gのGelucire50/13及び11.3gのPEG1500を容器中で混合し、その混合温度を75℃に保持する。
(2)40.7gのアルギン酸ナトリウムを容器に添加し、均一な状態になるように各成分を充分に混合する。
(3)3.3gのザレプロンを容器中に添加し、均一になるまで混合し懸濁液とする。
(4)150mgの該均一な懸濁液を75℃でハードカプセルの底部に充填し、
(5)該処方剤を室温まで冷却放置する。

工程2−速放性処方剤の調製:
(6)96.7gのPEG1500を容器に入れて、加熱溶解した後、45℃の温度に維持する。
(7)3.3gのザレプロンを容器に添加し、温度を45℃に維持した上でザレプロンを溶解するように撹拌し、均一な懸濁液とする。
(8)150mgの該均一な懸濁液を45℃において、上記のハードカプセル中の徐放性処方剤の上に充填した後、カプセルの蓋をする。
(9)該複合処方剤を室温まで冷却放置した後、処方3のカプセル剤を得る。
上記カプセルには10mgのザレプロンが含まれている。

〔処方3の製剤の薬物放出〕
米国薬局方(US Pharmacopoeia)のXXIII、方法Iに基づいて、ザレプロンを含む処方3のカプセル剤の薬物放出の評価を行った(溶解試験)。
ザレプロンを含む処方3のカプセル剤を、37℃に維持され、0.1mol/Lの塩酸水溶液(仮胃液、pH1.0)900mlを満たしたバスケット容器(basket apparatus)中で、2時間、50rpmで攪拌した後、該塩酸水溶液を除去した。
37℃に予熱された模擬腸液(PH7.2)900mlを上記容器に添加し、試験を更に4時間続けた。
所定の時間ごとに試料を採集し、紫外線(UV)検出器付きの高速液体クロマトグラフィを用いて、採集された試料中のザレプロン濃度を分析した(図1参照)。
図1に示したように、処方3のカプセル剤は、初期にザレプロンの速やかな放出が見られ、その後、徐放性処方剤が模擬腸液に溶解し、第二段階の長期放出が観察された。
【0016】
実施例4
〔人体に対する薬物動力学実験〕
実施例3の処方3のカプセル剤及び市販のザレプロンの経口カプセル剤〔ソナタ(Sonata):商標〕について、人体に対する薬物動力学試験を行った。
この交差試験は健康な被験者を対象とし、試料を3種類に分けて、即ち、2錠のソナタ(Sonata)〔合計10mgのザレプロンを含む〕、1錠の実施例3の処方3(10mgのザレプロンを含む)及び2錠の実施例3の処方3(合計20mgのザレプロンを含む)について行った。
各被験者は所定の時間ごとに採血され、液体クロマトグラフィ/質量分析/質量分析(LC/MS/MS)系によってザレプロンの血液中の濃度を測定した。
それぞれ異なる処方剤での薬物動力学データを表1及び図2に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
max(時間):ザレプロンの最高血中濃度到達時間
1/2(時間):ザレプロンの血中濃度半減期
max(ng/mL):ザレプロンの最高血中濃度(血漿濃度)
AUC(ng・hr/mL):ザレプロンの血中濃度−時間曲線下面積
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の速放性処方剤と徐放性処方剤を組合わせた睡眠薬の放出制御医薬組成物は、例えば、1回の投与剤形として、速放性処方剤と徐放性処方剤が特定の割合で1つのカプセルに充填される。
該カプセル剤を投与した後、速放性処方剤は第一段階の薬物放出が生じ、薬物が胃部で速やかに放出され、更に速やかに吸収される。
そして、徐放性処方剤は酸性の胃液では僅かに少量放出されるか、若しくは、殆ど放出されない状態で、直接腸管に入り、その後、アルカリ性の腸液に溶解し、第二段階の薬物放出が生じ、腸管に吸収される。
このような放出制御医薬組成物は、不眠症の治療において睡眠状態に誘導する機能を持ち、睡眠薬の効果を速やかに、且つ充分に発揮させると共に、薬物の作用時間も延長することができる。
従って、本発明の医薬組成物は、睡眠薬として不眠症の治療における優れた効果を充分に発揮することができ、特に睡眠薬としてのザレプロン(Zaleplon)等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例3の処方3のカプセル剤における時間に対するザレプロンの放出濃度の関係を示す図である。
【図2】本発明の処方3のカプセル剤と市販のザレプロンの経口カプセル剤〔ソナタ(Sonata):商標〕についての、時間に対するザレプロンの血中濃度(血漿濃度)の関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
速放性処方剤と徐放性処方剤の組合わせからなり、該速放性処方剤は睡眠薬及び熱溶解性成分を含み、該徐放性処方剤は睡眠薬、熱溶解性成分及び徐放性成分を含むことを特徴とする睡眠薬の放出制御医薬組成物。
【請求項2】
睡眠薬が、N−〔3−(3−シアノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル)フエニル〕−N−エチルアセタミド(一般名:ザレプロン)である請求項1に記載の睡眠薬の放出制御医薬組成物。
【請求項3】
放出制御医薬組成物が、カプセル剤形である請求項1又は2に記載の睡眠薬の放出制御医薬組成物。
【請求項4】
熱溶解性成分が、ビタミンE−TPGS(d−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩)、ポリエチレングリコール1500(PEG1500)、グリセロール及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステル混合物〔Gelucire(商標)50/13〕及びワックスから選ばれる請求項1〜3のいずれかに記載の睡眠薬の放出制御医薬組成物。
【請求項5】
徐放性成分が、アルギン酸ナトリウム及びメチルアクリル酸ジメチルアミンエチル−メチルアクリル酸メチル共重合体〔Eudragit(商標)〕から選ばれる請求項1〜3のいずれかに記載の睡眠薬の放出制御医薬組成物。
【請求項6】
(1)熱溶状態下で、睡眠薬及び熱溶解性成分の混合物を用意し、その混合物を冷却して、速放性処方剤を得る、
(2)熱溶状態で、睡眠薬、熱溶解性成分及び徐放性成分の混合物を用意し、その混合物を冷却して、徐放性処方剤を得る、
(3)工程(1)で製造された速放性処方剤又は工程(2)で製造された徐放性処方剤を加熱溶融して液体とした後、剤形中に充填し、
(4)工程(3)の剤形中の速放性処方剤又は徐放性処方剤を冷却した後、別途に用意された工程(2)で製造された徐放性処方剤又は工程(1)で製造された速放性処方剤を加熱溶融して、その得られた液体を上記の冷却された剤形中の速放性処方剤又は徐放性処方剤の上に充填し、
(5)工程(4)で剤形中に充填された徐放性処方剤又は速放性処方剤を冷却する工程を含む、或いは、
(6)工程(1)で製造された速放性処方剤又は工程(2)で製造された徐放性処方剤を冷却せずに、溶融液状態で剤形に直接充填して冷却後、別途に用意された工程(2)で製造された徐放性処方剤又は工程(1)で製造された速放性処方剤も冷却せずに、溶融状態で上記冷却された剤形中の速放性処方剤又は徐放性処方剤の上に直接充填して冷却する工程を含むことを特徴とする請求項1〜5に記載の睡眠薬の放出制御医薬組成物の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−23043(P2007−23043A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198781(P2006−198781)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(506249864)友華生技医薬股▼組▲有限公司 (1)
【Fターム(参考)】