瞳孔検出方法及びシステム
異なる波長の光を放射する単一の広帯域な光源又は複数の光源(104、106)により、検出対象の物体(300)を照射する。ハイブリッドフィルタによってカバーされた光検出センサ(700)を含むイメージャ(102)により、光をキャプチャする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティアプリケーション用の瞳孔検出方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の検出又は画像化を対象としたアプリケーションには、多数のものが存在している。アプリケーションに応じて、昼の明かり及び/又は暗闇において物体を画像化又は検出することができる。このようなアプリケーションの例には、個人の安全及びセキュリティが含まれる(但し、これに限定されない)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
セキュリティアプリケーションは、通常、十分に重い又は温かい塊がそのレンジ内において移動した際に、動作検知器を使用することにより、アラーム、明るい投光器、又はビデオカメラをトリガしている。動作検知器は、例えば、ホームセキュリティシステム及び商用セキュリティ環境において使用されている。残念ながら、動作検知器は、人間、動物、及び無生命物体を常に弁別するわけではない。従って、動作検知器のそばを移動する犬やトラックなどの大きな物体を検出し、アラーム、投光器、又はビデオカメラをトリガすることによって偽陽性(false positive)を不必要に生成する可能性がある。偽陽性は、すべてのトリガされたイベントに対して対応することを個人、法人、及び警察に要求し、結果的に余分なコストをもたらすことになる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、瞳孔(pupil:瞳)検出方法及びシステムが提供される。異なる波長の光を放射する単一の広帯域光源又は複数の光源により、画像化及び検出対象の物体を照射する。光検出センサ及びハイブリッドフィルタを含む受光モジュールにより、光を受光する。ハイブリッドフィルタは、マルチバンド狭帯域フィルタ及びパターン化フィルタレイヤを含んでいる。センサによってキャプチャした1つ又は複数の画像を分析し、1つ又は両方の瞳孔が検出されるかどうかを判定する。1つ又は複数の瞳孔が検出された際に、警戒信号を生成する。警戒信号は、例えば、アラームシステム、投光器、又はビデオカメラをトリガすることができる。瞳孔の検出は、独立的に、或いは、例えば、動作検知器などのセキュリティシステム内のその他の機能と組み合わせて使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、添付図面との関連において、本発明による実施例に関する以下の詳細な説明を参照することにより、十分に理解することができよう。
【0006】
以下の説明は、当業者が本発明を実施及び使用できるように提示するものであり、特許出願及びその要件の文脈において提供されている。当業者には、開示される実施例に対する様々な変更が容易に明らかであり、本明細書の一般的な原理は、その他の実施例にも適用可能である。従って、本発明は、示されている実施例に限定されるものではなく、本発明に対しては、添付の請求項及び本明細書に記述されている原理及び特徴と合致した最も広い範囲が付与されるべきである。この説明において参照されている図面は、正確な縮尺によって描かれていないことを理解されたい。
【0007】
本明細書に記述されている本発明による実施例は、セキュリティアプリケーション用の波長に依存した画像化(wavelength-dependent imaging for security applications)を利用している。波長依存画像化は、物体を検出するための一技法であり、通常は、物体から反射された1つ又は複数の特定の波長を検出することを伴っている。いくつかのアプリケーションにおいては、太陽又は周辺光のみを必要としており、その他のアプリケーションにおいては、その他の又は追加の光を必要としている。
【0008】
次に、添付の図面、特に図1を参照すれば、本発明による一実施例における瞳孔検出システムのブロックダイアグラムが示されている。システム100は、イメージャ102と2つの光源104、106を含んでいる。この瞳孔検出の実施例においては、イメージャ102を使用することにより、対象物の顔及び/又は目(図示されていない)の2つの画像をキャプチャする。光源104を使用して画像の1つを取得し、光源106を使用して第2の画像を取得する。図1の実施例においては、光源104、106は、イメージャ102の反対側に示されているが、本発明によるその他の実施例においては、イメージャ102の同一の側に光源104、106を配置することも可能である。
【0009】
本発明によるこの実施例においては、光源104、106は、実質的に等しい画像強度(輝度)を生成する異なる波長の光を放射する。この実施例においては、光源104、106は、赤外線又は近赤外線波長を具備した発光ダイオード(Light−Emitting Diode:LED)又はマルチモード半導体レーザーとして実装されており、それぞれの光源104、106は、1つ又は複数の供給源として実装可能である。本発明によるその他の実施例においては、例えば、太陽などの複数の異なる波長の光を放射する単一の広帯域光源によって光源104、106を置換することも可能である。
【0010】
イメージャ102は、対象物(図示されていない)の1つ又は複数の目から反射された光を受光するべく配置されている。光源104、106は、任意の波長であってよいが、図1の実施例において選択されている波長は、光が対象物から反れることがなく、且つ、光に応答して目の虹彩が収縮しないように、選択されている。選択される波長は、通常、イメージャ102が検出可能なレンジ内のものになっている。
【0011】
システム100は、コントローラ108を更に含んでおり、このコントローラは、システム100に専用のものであってもよく、或いは、共有装置であってもよい。イメージャ102によって複数フレームの画像情報を生成した後に、これをコントローラ108によって処理及び分析することにより、イメージャ102の視野内のその他の特徴から1つ又は複数の瞳孔を弁別する。コントローラ108は、タイマ110に接続されている。タイマ110は、コントローラ108による時間に基づいた判定の実行を実現する任意の既知の装置又は技法を表している。
【0012】
制御対象装置112は、コントローラ108から警戒信号を受信する。警戒信号は、コントローラ108が対象物の1つ又は複数の瞳孔を検出した際に生成される。制御対象装置112は、例えば、アラーム、或いは、1つ又は複数の投光器、或いは、ビデオカメラとして実装可能である。
【0013】
入力装置114を使用することにより、コントローラ108と関連した様々なパラメータを入力又は変更することができる。例えば、ユーザーは、特定の期間内における特定数の画像のキャプチャまたは警戒信号の生成前における瞳孔検出の検証をシステム100に望む場合がある。入力装置114は、例えば、セキュリティプログラムに従って動作するコンピュータ又は制御パネルとして実装可能である。
【0014】
図2は、本発明による一実施例における瞳孔検出方法のフローチャートである。まず、ブロック200に示されているように、光源が視野内に光を放射する。次いで、1つ又は複数の画像をキャプチャし、この1つ又は複数の画像を分析する(ブロック202、204)。本発明によるこの実施例においては、分析は、差分画像を生成することを含む。この差分画像については、図3、図4、及び図5との関連において、更に詳細に説明することとする。
【0015】
ブロック206において、1つ又は複数の瞳孔が検出されたかどうかに関する判定を行う。瞳孔が検出されていない場合には、次いで、ブロック208において、特定の期間が満了しているかどうかに関する判定を行う。本発明によるいくつかの実施例においては、1つ又は複数の画像を連続的にキャプチャ及び分析することができる。本発明によるその他の実施例においては、1つ又は複数の画像を規則的なインターバルにおいてキャプチャ及び分析することができる。
【0016】
指定の期間が満了している際には、タイマをリセットし(ブロック210)、本プロセスは、ブロック202に戻る。本方法は、ブロック206で1つ又は複数の瞳孔が検出されるまで、ブロック202〜210において継続される。瞳孔が検出された際には、ブロック212において、瞳孔検出を検証する必要があるかどうかに関する判定を行う。その必要がない場合には、ブロック214において、警戒信号を生成し、本プロセスは終了する。
【0017】
瞳孔検出を検証する必要がある場合には、指定の期間が満了しているかどうかに関する判定を行う。指定の期間が満了している場合には、本プロセスは、ブロック210に続き、タイマをリセットする。次いで、本方法は、ブロック202に戻り、警戒信号が生成されるまで継続することになる。
【0018】
警戒信号は、例えば、アラームシステム、投光器、又はビデオカメラをトリガすることができる。1つ又は複数のビデオカメラは、セキュリティ要員が対象物に合焦し、これにより、ユーザーが対象物を明瞭に識別できるように、パン、チルト、及びズーム機能を包含することができる。瞳孔の検出は、独立的に、或いは、例えば、動作検知器などのセキュリティシステム内のその他の特徴との組み合わせておいて使用可能である。
【0019】
次に図3を参照すれば、本発明による一実施例における瞳孔検出を使用した第1のアプリケーションの図が示されている。このアプリケーションは、例えば、家庭内の廊下や入口を監視するホームセキュリティシステムを包含することができる。本システムは、イメージャ102及び光源104、106を含んでいる。光源104、106が対象物300の顔及び/又は目に向かって光を放射する。1つ又は複数の目が光を反射し、これをイメージャ102によってキャプチャする。この瞳孔検出の実施例においては、イメージャ102を使用して対象物300の顔及び/又は目(図示されてはいない)の2つの画像をキャプチャする。光源104を使用して画像の1つを取得するが、この光源は、イメージャ102の軸302上又はこの近傍に位置している(「軸上光」)。イメージャ102の軸302から離れた相対的に大きな角度に配置されている光源106を使用して第2画像を取得する(「非軸上光」)。対象物300の目が開いている場合には、これらの画像の差分は、目の瞳孔を強調表示することになる。この理由は、網膜からの鏡面反射が軸上光画像内においてのみ検出されるためである。その他の顔及び環境的な特徴からの拡散反射は、そのほとんどが相殺され、差分画像には、瞳孔が、支配的な特徴として残ることになる。
【0020】
対象物300の網膜からの差分反射率は、光源104とイメージャ102の軸302の間の角度304と、光源106と軸302の間の角度306によって左右される。一般に、角度304を小さくすると、網膜リターンが増加することになる。尚、本明細書に使用されている「網膜リターン」とは、対象物300の目から反射され、イメージャ102において検出される光を意味している。又、「網膜リターン」は、目の後部における(網膜以外の、並びに、これに加えた)その他の組織からの反射をも包含するべく使用されている。従って、角度304は、光源104が軸302上又はこの近傍に位置するように、選択されている。本発明によるこの実施例においては、角度304は、通常、約0〜2度の範囲内にある。
【0021】
一般に、角度306の大きさは、イメージャ102において光源106からの小さな網膜リターンのみが検出されるように、選択されている。瞳孔を取り囲む虹彩がこの信号を妨害しており、従って、角度306の大きさを選択する際には、様々な照明条件下における瞳孔の大きさを考慮する必要がある。本発明によるこの実施例においては、角度306は、通常、約3〜15度の範囲内にある。本発明によるその他の実施例においては、角度304、306の大きさは、異なるものであってよい。例えば、監視対象の視野、瞳孔の検出を要する距離、及び特定の対象物の特性により、角度304、306の大きさを決定してもよい。
【0022】
イメージャ102によってキャプチャされた画像を、コントローラ108によって処理及び分析する。対象物300の1つ又は両方の瞳孔が検出された際に、コントローラ108は、警戒信号を生成し、次いで、この信号が制御対象装置(図示されていない)に伝送される。
【0023】
本発明によるこの実施例においては、光源104、106を検出器102と同一のハウジング内に構築している。本発明による別の実施例においては、光源104及び検出器102とは別個のハウジング内に光源106を配置してもよい。本発明による更に別の実施例においては、検出器102と物体の間にビームスプリッタを配置することにより、検出器102とは別個のハウジング内に光源104を配置することができ、この場合には、相対的に小さい有効な軸に対する照明の角度(smaller effective on-axis angle of illumination)が実現するという利点を具備している。
【0024】
図4は、本発明による一実施例における瞳孔検出を使用した第2のアプリケーションの図である。本システムは、2つの検出器102a、102b、2つの軸上光源104a、104b、2つの非軸上光源106a、106b、及び2つのコントローラ108a、108bを含んでいる。本システムは、2つの図3のシステムをエピポーラステレオ構成( epipolar stereo configuration)において使用することにより、対象物300の1つ又は複数の目の三次元画像を生成している。この実施例においては、それぞれの検出器102a、102b内のピクセルの対応する行が同一プレーン内に位置している。本発明によるその他の実施例においては、ピクセルの対応する行は、同一プレーン内に位置しておらず、この行構成を補償するべく調節値を生成している。
【0025】
それぞれのコントローラ108a、108bは、独立した分析を実行することにより、対象物300の1つ又は複数の目を2次元で検出している。ステレオコントローラ400は、両方のコントローラ108a、108bによって生成されたデータを使用して、対象物300の1つ又は複数の目の三次元画像を生成する。軸上光源104a、104b及び非軸上光源106a、106bは、任意の所望の構成において配置可能である。本発明によるいくつかの実施例においては、軸上光源(例えば、104b)を反対のシステムの非軸上光源(例えば、106a)として使用することも可能である。
【0026】
図5aは、図3の実施例による軸上光源104によって生成された画像を示している。画像500は、開いた目を示している。目は、軸上光源104によって生成された強力な網膜のリターンに起因して、明るい瞳孔を具備している。
【0027】
図5bは、図3の実施例による非軸上光源106によって生成された画像を示している。図5bの画像502は、画像500と同時に取得することも可能であり、或いは、画像500と交互のフレームにおいて(連続的又は不連続的に)取得することも可能である。画像502は、正常な暗い瞳孔を示している。
【0028】
図5cは、図5aの画像と図5bの画像の差分から結果的に得られる画像504を示している。目が開かれている際には、画像500、502の差分を取得することにより、相対的に暗い背景508の中に相対的に明るいスポット506が残ることになる。背景508内に目のその他の特徴の痕跡が残る可能性も存在している。しかしながら、通常は、背景508との比較において、明るいスポット506が傑出することになる。目が閉じられている(又は、略閉じられている)際には、差分画像内に明るいスポット506は存在しない。
【0029】
図5a〜図5cは、対象物の1つの目を示している。当業者であれば、両方の目を同様に監視し得ることを理解するであろう。又、画像が対象物のその他の特徴(例えば、顔のその他の特徴)、並びに、対象物の環境の特徴を含んでいる場合にも、同様の効果が得られることについて理解されたい。これらの特徴は、先程説明したものと同様に、ほとんど相殺されることになる。
【0030】
次に図6を参照すれば、本発明による一実施例における瞳孔検出を利用した第3のアプリケーションの図が示されている。この実施例においては、建物600の所有者は、人物が、通り602から建物の入口(図示されてはいない)に接近した際に警告されることを所望している。1つ又は複数のイメージャ604を使用することにより、光を検出し、1つ又は複数のコントローラ(図示されてはいない)によって処理及び分析する対象の画像を生成する。いくつかの光源606が、所望の視野608に対して光を放射する。当業者であれば、視野608、イメージャ604の数及びタイプ、及び光源606の数及びタイプが、アプリケーションによって決定されることを理解するであろう。イメージャが最初に瞳孔を検出し得る距離も、イメージャ604及び光源606の数及びタイプに影響を与えることになる。相対的に高い分解能のイメージャと、大きなアパーチャを有する望遠鏡は、システムが最初に1つ又は複数の瞳孔を検出する距離を増大させるべく使用可能な2つの技法の例である。
【0031】
人物が建物600に接近すると、コントローラ(図示されてはいない)が、1つ又は両方の瞳孔を検出し、これに応答して警戒信号を生成する。警戒信号は、例えば、アラーム、投光器、又は1つ又は複数のビデオカメラをトリガすることができる。1つ又は複数のビデオカメラは、セキュリティ要員が対象物に合焦し、これにより、ユーザーが対象物を明瞭に識別できるように、パン、チルト、及びズーム機能を包含することができる。例えば、セキュリティ要員は、対象物による建物600への進入を許容する前に、対象物の身元の確認を必要とする場合がある。
【0032】
図7は、本発明による一実施例におけるセンサを示している。この実施例においては、センサ700は、イメージャ102(図1)内に内蔵されており、CMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)画像化センサとして構成されている。本発明によるその他の実施例においては、センサ700は、例えば、CCD(Charge−Coupled Device)イメージャなどのその他のタイプの画像化装置によって実装可能である。
【0033】
チェッカーボードパターンに成形された異なるフィルタ材料を使用することにより、センサ700上にパターン化フィルタレイヤ702が形成されている。これらの2つのフィルタは、光源104、106によって使用されている波長によって決定される。例えば、本発明によるこの実施例においては、パターン化フィルタレイヤ702は、光源104によって使用されている波長を選択するフィルタ材料を含む領域(1と識別されているもの)を含んでおり、その他の領域(2と識別されているもの)は、光源106によって使用されている波長を選択するフィルタ材料を含んでいる。
【0034】
図7の実施例においては、パターン化フィルタレイヤ702は、例えば、ウエハの形態において従来の堆積及びフォトリソグラフィープロセスを使用することにより、基礎となっているレイヤの上部にセンサ700の別個のレイヤとして堆積されている。本発明による別の実施例においては、センサ700と入射光の間の別個の要素として、パターン化フィルタレイヤ702を生成することができる。更には、フィルタ材料のパターンをチェッカーボードパターン以外のパターンに構成することも可能である。例えば、パターン化フィルタレイヤ702は、組み合わせられたストライプ又は非対称の構成(例えば、3ピクセルx2ピクセルの形状)に形成可能である。又、パターン化フィルタレイヤ702をカラーイメージャなどのその他の機能と統合することも可能である。
【0035】
本発明によるその他の実施例においては、パターン化フィルタレイヤ702は、センサ700の選択されたエリアをフィルタ材料によってカバーしていない空白の領域(例えば、領域1)を包含することができる。この結果、センサ700のカバーされていない領域は、両方の光源104、106からの光を受光することになる。カバーされている領域は、1つの光源からの光のみを通過させ、もう1つの光源からの光を遮断するため、利得係数を算出し、カバーされている領域を通過する光に対して適用する。この利得係数により、フィルタ材料によって吸収される光と、2つの波長間におけるセンサ感度の差と、を補償する。
【0036】
パターン化フィルタレイヤ702内においては、様々なタイプのフィルタ材料が使用可能である。本発明によるこの実施例においては、フィルタ材料は、顔料又は染料がドーピングされたポリマーを含んでいる。本発明によるその他の実施例においては、フィルタ材料は、半導体、その他の無機材料、又は有機材料から製造された干渉フィルタ、反射フィルタ、及び吸収フィルタを包含し得る。
【0037】
図8は、本発明による一実施例におけるイメージャの断面図である。この図には、イメージャ102の一部のみが示されている。イメージャ102は、ピクセル800、802、804、806からなるセンサ700、2つの交互に変化するフィルタ領域810、812を含むパターン化フィルタレイヤ808、ガラスカバー814、及びデュアルバンド狭帯域フィルタ816を含んでいる。本発明によるこの実施例においては、センサ700は、CMOSイメージャとして構成されており、パターン化フィルタレイヤ808は、顔料又は染料がドーピングされた2つのポリマー810、812として構成されている。パターン化フィルタレイヤ808のそれぞれの領域(例えば、チェッカーボードパターン内の正方形)は、CMOSイメージャ内の1つのピクセル上に位置している。
【0038】
本発明のこの実施例においては、狭帯域フィルタ816及びパターン化フィルタレイヤ808は、ハイブリッドフィルタを形成している。光が狭帯域フィルタ816に入射すると、光源104(λ1)及び光源106(λ2)の波長以外の波長の光は、フィルタリングによって除去される(即ち、狭帯域フィルタ816の通過を遮断される)。従って、この実施例においては、可視波長λVIS及び波長(λn)の光がフィルタリングによって除去され、波長λ1及びλ2又はこの近傍の光が狭帯域フィルタ816を透過する。この結果、波長λ1及びλ2又はこの近傍の光のみがガラスカバー814を通過することになる。その後、ポリマー810が、波長λ1の光を伝達し、波長λ2の光を遮断する。この結果、ピクセル800及び804は、波長λ1の光のみを受光し、これにより、軸上光源104によって取得された画像を生成する。
【0039】
ポリマー812は、波長λ2の光を伝達すると共に波長λ1の光を遮断し、これにより、ピクセル802及び806は、波長λ2の光のみを受光する。この結果、非軸上光源106によって取得された画像が生成されることになる。本発明によるこの実施例においては、相対的に短い波長λ1は、軸上光源104と関連付けられており、相対的に長い波長λ2は、非軸上光源106と関連付けられている。しかしながら、本発明のその他の実施例においては、相対的に短い波長λ1を非軸上光源106と関連付け、相対的に長い波長λ2を軸上光源104と関連付けることが可能である。
【0040】
本発明によるこの実施例においては、狭帯域フィルタ816は、誘電体スタックフィルタ(Dielectric stack filters:誘電体多層膜フィルタ)である。誘電体スタックフィルタは、特定のスペクトル特性を具備するように設計されている。本発明によるこの実施例においては、誘電体スタックフィルタは、デュアルバンド狭帯域フィルタとして形成されている。狭帯域フィルタ816は、1つのピークをλ1に、そして、別のピークをλ2に具備するべく設計されている。従って、波長λ1及びλ2又はこの近傍の波長の光のみがパターン化フィルタレイヤ808内のポリマーフィルタ810、812に入射する。そして、パターン化フィルタレイヤ808を使用することにより、λ1とλ2を弁別している。波長λ1は、フィルタ810を透過し(但し、フィルタ812を透過しない)、波長λ2は、フィルタ812を透過する(但し、フィルタ810を透過しない)。
【0041】
当業者であれば、パターン化フィルタレイヤ808が、ピクセル空間分解能におけるチャネルを選択するメカニズムを提供していることを理解するであろう。本発明によるこの実施例においては、チャネル1は、軸上画像と関連付けられており、チャネル2は、非軸上画像と関連付けられている。本発明によるその他の実施例においては、チャネル1を非軸上画像と関連付け、チャネル2を軸上画像と関連付けることが可能である。
【0042】
本発明によるこの実施例においては、センサ700は、キャリア(図示されてはいない)内に位置している。ガラスカバー814が、通常、損傷及び(例えば、ほこりなどの)粒子汚染からセンサ700を保護している。この実施例においては、ガラスカバー814は、有色のガラスフィルタとして形成されており、誘電体スタックフィルタ(即ち、狭帯域フィルタ816)の基板として含まれている。この有色のガラスフィルタは、特定のスペクトル特性を具備するように設計されており、顔料又は染料がドーピングされている。ドイツのMainzに所在するSchott Optical Glass Inc.社が、有色のガラスフィルタに使用可能な有色ガラスを製造している企業の1つである。
【0043】
次に図9を参照すれば、本発明による一実施例におけるデュアルバンド狭帯域フィルタを製造する第1の方法が示されている。図8の実施例と関連して説明したように、狭帯域フィルタ816は、デュアルバンド狭帯域フィルタとして形成された誘電体スタックフィルタである。誘電体スタックフィルタは、フィルタタイプの任意の組み合わせを包含し得る。完成した誘電体スタックフィルタの望ましいスペクトル特性により、スタックのレイヤ内に包含されるフィルタのタイプが決定される。
【0044】
例えば、2つのフィルタ900、902を組み合わせることによってフィルタを製造することができる。バンド遮断フィルタ900は、波長λ1及びλ2の周辺の領域間の波長の光をフィルタリングによって除去し、帯域通過フィルタ902は、波長λ1及びλ2の近傍及びこの間の光を透過する。フィルタ900、902の組み合わせは、ハッチングされているエリア内の光を透過し、その他のすべての波長の光を遮断する。図10は、図9のデュアルバンド狭帯域フィルタのスペクトルを示している。図示されているように、光は、対象波長であるλ1(スペクトル1000)とλ2(スペクトル1002)及びこの近傍においてのみ、組み合わせられたフィルタを透過している。
【0045】
デュアルバンド狭帯域フィルタは、互いに上下に結合空洞共振器(coupled-cavity resonators)をスタックすることによって製造することも可能であり、この場合に、それぞれの結合空洞共振器は、2つのファブリーペロー共振器によって形成されている。図11は、本発明による一実施例においてデュアルバンド狭帯域フィルタを製造する第2の方法に使用されるファブリーペロー(Fabry−Perot:FP)共振器を示している。共振器1100は、上部分布ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector:DBR)1102レイヤと下部DBRレイヤ1104を含んでいる。DBRレイヤを形成する材料は、1/4波長(mλ/4)厚の低屈折率材料と1/4波長(nλ/4)厚の高屈折率材料のN個のペアを含んでおり、この場合に、変数Nは整数であり、変数m及びnは奇数の整数である。波長は、レイヤ内における光の波長として定義されており、これは、自由空間波長をレイヤの屈折率で除算したものに等しい。
【0046】
空洞1106が2つのDBRレイヤ1102、1104を分離している。空洞1106は、1/2波長(pλ/2)厚の空洞として構成されており、この場合に、pは整数である。空洞1106の厚さとDBRレイヤ1102、1104の材料により、FP共振器1100の透過ピークが決定される。図12は、図11のファブリーペロー共振器のスペクトルを示している。FP共振器1100は、単一の透過ピーク1200を具備している。
【0047】
デュアルバンド狭帯域フィルタを製造するこの第2の方法においては、2つのFP共振器1100を1つにスタックして結合空洞共振器を生成している。図13は、本発明による一実施例においてデュアルバンド狭帯域フィルタを製造する第2の方法に使用する結合空洞共振器を示している。結合空洞共振器1300は、上部DBRレイヤ1302、空洞1304、強い結合DBR1306、空洞1308、及び下部DBRレイヤ1310を含んでいる。強い結合DBR1306は、上部FP共振器の下部DBRレイヤ(即ち、レイヤ1104)が下部FP共振器の上部DBRレイヤ(即ち、レイヤ1102)とマージした際に形成される。
【0048】
2つのFP共振器を1つにスタックすることにより、図12の単一の透過ピーク1200が、図14に示されているように、2つのピークに分割される。強い結合DBR1306内の1/4波長厚の屈折率材料のペアの数により、空洞1304、1308間の結合強度が決定される。そして、空洞1304、1308間の結合強度により、ピーク1400とピーク1402の間の間隔が制御される。
【0049】
図15は、本発明による一実施例においてデュアルバンド狭帯域フィルタを形成する3つの結合空洞共振器のスタックを示している。デュアルバンド狭帯域フィルタ1500は、上部DBRレイヤ1502、空洞1504、強い結合DBR1506、空洞1508、弱い結合DBR1510、空洞1512、強い結合DBR1514、空洞1516、弱い結合DBR1518、空洞1520、強い結合DBR1522、空洞1524、及び下部DBRレイヤ1526を含んでいる。
【0050】
3つの結合空洞共振器を1つにスタックすることにより、2つのピーク1400、1402のそれぞれが、3つ組のピーク1600、1602それぞれに分割される。図16は、図15のデュアルバンド狭帯域フィルタのスペクトルを示している。弱い結合DBR1510、1518内における結合強度は、結合DBR1510、1518内のミラーペアの数を増大させることによって減少する。減少した結合強度により、それぞれ3つ組のピーク1600、1602が、単一の広くて幾分フラットな透過帯域にマージされる。弱い結合DBR1510、1518内の1/4波長厚の屈折率材料のペア数を変化させることにより、3つ組のピーク1600、1602内の間隔が変化する。
【0051】
以上、2つの波長λ1及びλ2の光の検出を参照してハイブリッドフィルタについて説明したが、本発明によるその他の実施例においては、ハイブリッドフィルタを使用することにより、2つを上回る数の対象波長を検出することができる。図17は、本発明による一実施例におけるポリマーフィルタ及び3バンド狭帯域フィルタのスペクトルを示している。この実施例におけるハイブリッドフィルタは、3つの対象波長λ1、λ2、及びλ3の光を検出する。波長λ1及びλ3のスペクトル1700及び1702は、それぞれ、画像化システムによって利用されている2つの信号を表している。波長λ2において検出される光(スペクトル1704)を使用することにより、2つの対象波長外において画像化システムが受光する光の量を判定している。波長λ2において検出される光の量を、画像化システムが検出可能な光の基準量として使用可能である。
【0052】
本発明のこの実施例においては、3バンド狭帯域フィルタは、対象波長(λ1、λ2、及びλ3)又はこの近傍の光を透過し、その他のすべての波長の光の透過を遮断する。次いで、パターン化フィルタレイヤ内のポリマーフィルタにより、波長λ1、λ2、及びλ3において受光された光を弁別している。
【0053】
図18は、図17に示されている実施例によるセンサを示している。3つの異なるフィルタを使用することにより、センサ1802上にパターン化フィルタレイヤ1800を形成している。この実施例においては、パターン化フィルタレイヤ内の1つの領域(例えば、領域1)は、波長λ1の光を透過し、波長λ2及びλ3の光を遮断する(図17のスペクトル1706を参照されたい)。パターン化フィルタレイヤ内の別の領域(例えば、領域3)は、波長λ3の光を透過し、波長λ1及びλ2の光を遮断する(図17のスペクトル1708を参照されたい)。第3領域は、波長λ2の光を透過し、λ1及びλ3の光を遮断する(図17のスペクトル1710を参照されたい)。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による一実施例における瞳孔検出システムのブロックダイアグラムである。
【図2】本発明による一実施例における瞳孔検出方法のフローチャートである。
【図3】本発明による一実施例における瞳孔検出を使用した第1アプリケーションの図である。
【図4】本発明による一実施例における瞳孔検出を使用した第2アプリケーションの図である。
【図5a】図3の実施例による軸上光源によって生成される画像を示している。
【図5b】図3の実施例による非軸上光源によって生成される画像を示している。
【図5c】図5aの画像と図5bの画像の差分から結果的に得られる画像を示している。
【図6】本発明による一実施例における瞳孔検出を利用した第3アプリケーションの図である。
【図7】本発明による一実施例におけるセンサを示している。
【図8】本発明による一実施例におけるイメージャの断面図である。
【図9】本発明による一実施例におけるデュアルバンド狭帯域フィルタを製造する第1の方法を示している。
【図10】図9のデュアルバンド狭帯域フィルタのスペクトルを示している。
【図11】本発明による一実施例におけるデュアルバンド狭帯域フィルタを製造する第2の方法に使用されるファブリーペロー(Fabry−Perot:FP)共振器を示している。
【図12】図11のファブリーペロー共振器のスペクトルを示している。
【図13】本発明による一実施例におけるデュアルバンド狭帯域フィルタを製造する第2の方法に使用される結合空洞共振器を示している。
【図14】図13の結合空洞共振器のスペクトルを示している。
【図15】本発明による一実施例におけるデュアルバンド狭帯域フィルタを形成する3つの結合空洞共振器のスタックを示している。
【図16】図14のデュアルバンド狭帯域フィルタのスペクトルを示している。
【図17】本発明による一実施例におけるポリマーフィルタ及び3バンド狭帯域フィルタのスペクトルを示している。
【図18】図17に示されている実施例によるセンサを示している。
【符号の説明】
【0055】
102a 第1イメージャ
102b 第2イメージャ
104 第1光源
106 第2光源
108a 第1コントローラ
108b 第2コントローラ
110 タイマ
112 制御対象装置
114 入力装置
300 物体
302 軸
304 第1角度
306 第2角度
400 ステレオコントローラ
816 誘電体スタックフィルタ
1300 結合空洞共振器
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティアプリケーション用の瞳孔検出方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の検出又は画像化を対象としたアプリケーションには、多数のものが存在している。アプリケーションに応じて、昼の明かり及び/又は暗闇において物体を画像化又は検出することができる。このようなアプリケーションの例には、個人の安全及びセキュリティが含まれる(但し、これに限定されない)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
セキュリティアプリケーションは、通常、十分に重い又は温かい塊がそのレンジ内において移動した際に、動作検知器を使用することにより、アラーム、明るい投光器、又はビデオカメラをトリガしている。動作検知器は、例えば、ホームセキュリティシステム及び商用セキュリティ環境において使用されている。残念ながら、動作検知器は、人間、動物、及び無生命物体を常に弁別するわけではない。従って、動作検知器のそばを移動する犬やトラックなどの大きな物体を検出し、アラーム、投光器、又はビデオカメラをトリガすることによって偽陽性(false positive)を不必要に生成する可能性がある。偽陽性は、すべてのトリガされたイベントに対して対応することを個人、法人、及び警察に要求し、結果的に余分なコストをもたらすことになる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、瞳孔(pupil:瞳)検出方法及びシステムが提供される。異なる波長の光を放射する単一の広帯域光源又は複数の光源により、画像化及び検出対象の物体を照射する。光検出センサ及びハイブリッドフィルタを含む受光モジュールにより、光を受光する。ハイブリッドフィルタは、マルチバンド狭帯域フィルタ及びパターン化フィルタレイヤを含んでいる。センサによってキャプチャした1つ又は複数の画像を分析し、1つ又は両方の瞳孔が検出されるかどうかを判定する。1つ又は複数の瞳孔が検出された際に、警戒信号を生成する。警戒信号は、例えば、アラームシステム、投光器、又はビデオカメラをトリガすることができる。瞳孔の検出は、独立的に、或いは、例えば、動作検知器などのセキュリティシステム内のその他の機能と組み合わせて使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、添付図面との関連において、本発明による実施例に関する以下の詳細な説明を参照することにより、十分に理解することができよう。
【0006】
以下の説明は、当業者が本発明を実施及び使用できるように提示するものであり、特許出願及びその要件の文脈において提供されている。当業者には、開示される実施例に対する様々な変更が容易に明らかであり、本明細書の一般的な原理は、その他の実施例にも適用可能である。従って、本発明は、示されている実施例に限定されるものではなく、本発明に対しては、添付の請求項及び本明細書に記述されている原理及び特徴と合致した最も広い範囲が付与されるべきである。この説明において参照されている図面は、正確な縮尺によって描かれていないことを理解されたい。
【0007】
本明細書に記述されている本発明による実施例は、セキュリティアプリケーション用の波長に依存した画像化(wavelength-dependent imaging for security applications)を利用している。波長依存画像化は、物体を検出するための一技法であり、通常は、物体から反射された1つ又は複数の特定の波長を検出することを伴っている。いくつかのアプリケーションにおいては、太陽又は周辺光のみを必要としており、その他のアプリケーションにおいては、その他の又は追加の光を必要としている。
【0008】
次に、添付の図面、特に図1を参照すれば、本発明による一実施例における瞳孔検出システムのブロックダイアグラムが示されている。システム100は、イメージャ102と2つの光源104、106を含んでいる。この瞳孔検出の実施例においては、イメージャ102を使用することにより、対象物の顔及び/又は目(図示されていない)の2つの画像をキャプチャする。光源104を使用して画像の1つを取得し、光源106を使用して第2の画像を取得する。図1の実施例においては、光源104、106は、イメージャ102の反対側に示されているが、本発明によるその他の実施例においては、イメージャ102の同一の側に光源104、106を配置することも可能である。
【0009】
本発明によるこの実施例においては、光源104、106は、実質的に等しい画像強度(輝度)を生成する異なる波長の光を放射する。この実施例においては、光源104、106は、赤外線又は近赤外線波長を具備した発光ダイオード(Light−Emitting Diode:LED)又はマルチモード半導体レーザーとして実装されており、それぞれの光源104、106は、1つ又は複数の供給源として実装可能である。本発明によるその他の実施例においては、例えば、太陽などの複数の異なる波長の光を放射する単一の広帯域光源によって光源104、106を置換することも可能である。
【0010】
イメージャ102は、対象物(図示されていない)の1つ又は複数の目から反射された光を受光するべく配置されている。光源104、106は、任意の波長であってよいが、図1の実施例において選択されている波長は、光が対象物から反れることがなく、且つ、光に応答して目の虹彩が収縮しないように、選択されている。選択される波長は、通常、イメージャ102が検出可能なレンジ内のものになっている。
【0011】
システム100は、コントローラ108を更に含んでおり、このコントローラは、システム100に専用のものであってもよく、或いは、共有装置であってもよい。イメージャ102によって複数フレームの画像情報を生成した後に、これをコントローラ108によって処理及び分析することにより、イメージャ102の視野内のその他の特徴から1つ又は複数の瞳孔を弁別する。コントローラ108は、タイマ110に接続されている。タイマ110は、コントローラ108による時間に基づいた判定の実行を実現する任意の既知の装置又は技法を表している。
【0012】
制御対象装置112は、コントローラ108から警戒信号を受信する。警戒信号は、コントローラ108が対象物の1つ又は複数の瞳孔を検出した際に生成される。制御対象装置112は、例えば、アラーム、或いは、1つ又は複数の投光器、或いは、ビデオカメラとして実装可能である。
【0013】
入力装置114を使用することにより、コントローラ108と関連した様々なパラメータを入力又は変更することができる。例えば、ユーザーは、特定の期間内における特定数の画像のキャプチャまたは警戒信号の生成前における瞳孔検出の検証をシステム100に望む場合がある。入力装置114は、例えば、セキュリティプログラムに従って動作するコンピュータ又は制御パネルとして実装可能である。
【0014】
図2は、本発明による一実施例における瞳孔検出方法のフローチャートである。まず、ブロック200に示されているように、光源が視野内に光を放射する。次いで、1つ又は複数の画像をキャプチャし、この1つ又は複数の画像を分析する(ブロック202、204)。本発明によるこの実施例においては、分析は、差分画像を生成することを含む。この差分画像については、図3、図4、及び図5との関連において、更に詳細に説明することとする。
【0015】
ブロック206において、1つ又は複数の瞳孔が検出されたかどうかに関する判定を行う。瞳孔が検出されていない場合には、次いで、ブロック208において、特定の期間が満了しているかどうかに関する判定を行う。本発明によるいくつかの実施例においては、1つ又は複数の画像を連続的にキャプチャ及び分析することができる。本発明によるその他の実施例においては、1つ又は複数の画像を規則的なインターバルにおいてキャプチャ及び分析することができる。
【0016】
指定の期間が満了している際には、タイマをリセットし(ブロック210)、本プロセスは、ブロック202に戻る。本方法は、ブロック206で1つ又は複数の瞳孔が検出されるまで、ブロック202〜210において継続される。瞳孔が検出された際には、ブロック212において、瞳孔検出を検証する必要があるかどうかに関する判定を行う。その必要がない場合には、ブロック214において、警戒信号を生成し、本プロセスは終了する。
【0017】
瞳孔検出を検証する必要がある場合には、指定の期間が満了しているかどうかに関する判定を行う。指定の期間が満了している場合には、本プロセスは、ブロック210に続き、タイマをリセットする。次いで、本方法は、ブロック202に戻り、警戒信号が生成されるまで継続することになる。
【0018】
警戒信号は、例えば、アラームシステム、投光器、又はビデオカメラをトリガすることができる。1つ又は複数のビデオカメラは、セキュリティ要員が対象物に合焦し、これにより、ユーザーが対象物を明瞭に識別できるように、パン、チルト、及びズーム機能を包含することができる。瞳孔の検出は、独立的に、或いは、例えば、動作検知器などのセキュリティシステム内のその他の特徴との組み合わせておいて使用可能である。
【0019】
次に図3を参照すれば、本発明による一実施例における瞳孔検出を使用した第1のアプリケーションの図が示されている。このアプリケーションは、例えば、家庭内の廊下や入口を監視するホームセキュリティシステムを包含することができる。本システムは、イメージャ102及び光源104、106を含んでいる。光源104、106が対象物300の顔及び/又は目に向かって光を放射する。1つ又は複数の目が光を反射し、これをイメージャ102によってキャプチャする。この瞳孔検出の実施例においては、イメージャ102を使用して対象物300の顔及び/又は目(図示されてはいない)の2つの画像をキャプチャする。光源104を使用して画像の1つを取得するが、この光源は、イメージャ102の軸302上又はこの近傍に位置している(「軸上光」)。イメージャ102の軸302から離れた相対的に大きな角度に配置されている光源106を使用して第2画像を取得する(「非軸上光」)。対象物300の目が開いている場合には、これらの画像の差分は、目の瞳孔を強調表示することになる。この理由は、網膜からの鏡面反射が軸上光画像内においてのみ検出されるためである。その他の顔及び環境的な特徴からの拡散反射は、そのほとんどが相殺され、差分画像には、瞳孔が、支配的な特徴として残ることになる。
【0020】
対象物300の網膜からの差分反射率は、光源104とイメージャ102の軸302の間の角度304と、光源106と軸302の間の角度306によって左右される。一般に、角度304を小さくすると、網膜リターンが増加することになる。尚、本明細書に使用されている「網膜リターン」とは、対象物300の目から反射され、イメージャ102において検出される光を意味している。又、「網膜リターン」は、目の後部における(網膜以外の、並びに、これに加えた)その他の組織からの反射をも包含するべく使用されている。従って、角度304は、光源104が軸302上又はこの近傍に位置するように、選択されている。本発明によるこの実施例においては、角度304は、通常、約0〜2度の範囲内にある。
【0021】
一般に、角度306の大きさは、イメージャ102において光源106からの小さな網膜リターンのみが検出されるように、選択されている。瞳孔を取り囲む虹彩がこの信号を妨害しており、従って、角度306の大きさを選択する際には、様々な照明条件下における瞳孔の大きさを考慮する必要がある。本発明によるこの実施例においては、角度306は、通常、約3〜15度の範囲内にある。本発明によるその他の実施例においては、角度304、306の大きさは、異なるものであってよい。例えば、監視対象の視野、瞳孔の検出を要する距離、及び特定の対象物の特性により、角度304、306の大きさを決定してもよい。
【0022】
イメージャ102によってキャプチャされた画像を、コントローラ108によって処理及び分析する。対象物300の1つ又は両方の瞳孔が検出された際に、コントローラ108は、警戒信号を生成し、次いで、この信号が制御対象装置(図示されていない)に伝送される。
【0023】
本発明によるこの実施例においては、光源104、106を検出器102と同一のハウジング内に構築している。本発明による別の実施例においては、光源104及び検出器102とは別個のハウジング内に光源106を配置してもよい。本発明による更に別の実施例においては、検出器102と物体の間にビームスプリッタを配置することにより、検出器102とは別個のハウジング内に光源104を配置することができ、この場合には、相対的に小さい有効な軸に対する照明の角度(smaller effective on-axis angle of illumination)が実現するという利点を具備している。
【0024】
図4は、本発明による一実施例における瞳孔検出を使用した第2のアプリケーションの図である。本システムは、2つの検出器102a、102b、2つの軸上光源104a、104b、2つの非軸上光源106a、106b、及び2つのコントローラ108a、108bを含んでいる。本システムは、2つの図3のシステムをエピポーラステレオ構成( epipolar stereo configuration)において使用することにより、対象物300の1つ又は複数の目の三次元画像を生成している。この実施例においては、それぞれの検出器102a、102b内のピクセルの対応する行が同一プレーン内に位置している。本発明によるその他の実施例においては、ピクセルの対応する行は、同一プレーン内に位置しておらず、この行構成を補償するべく調節値を生成している。
【0025】
それぞれのコントローラ108a、108bは、独立した分析を実行することにより、対象物300の1つ又は複数の目を2次元で検出している。ステレオコントローラ400は、両方のコントローラ108a、108bによって生成されたデータを使用して、対象物300の1つ又は複数の目の三次元画像を生成する。軸上光源104a、104b及び非軸上光源106a、106bは、任意の所望の構成において配置可能である。本発明によるいくつかの実施例においては、軸上光源(例えば、104b)を反対のシステムの非軸上光源(例えば、106a)として使用することも可能である。
【0026】
図5aは、図3の実施例による軸上光源104によって生成された画像を示している。画像500は、開いた目を示している。目は、軸上光源104によって生成された強力な網膜のリターンに起因して、明るい瞳孔を具備している。
【0027】
図5bは、図3の実施例による非軸上光源106によって生成された画像を示している。図5bの画像502は、画像500と同時に取得することも可能であり、或いは、画像500と交互のフレームにおいて(連続的又は不連続的に)取得することも可能である。画像502は、正常な暗い瞳孔を示している。
【0028】
図5cは、図5aの画像と図5bの画像の差分から結果的に得られる画像504を示している。目が開かれている際には、画像500、502の差分を取得することにより、相対的に暗い背景508の中に相対的に明るいスポット506が残ることになる。背景508内に目のその他の特徴の痕跡が残る可能性も存在している。しかしながら、通常は、背景508との比較において、明るいスポット506が傑出することになる。目が閉じられている(又は、略閉じられている)際には、差分画像内に明るいスポット506は存在しない。
【0029】
図5a〜図5cは、対象物の1つの目を示している。当業者であれば、両方の目を同様に監視し得ることを理解するであろう。又、画像が対象物のその他の特徴(例えば、顔のその他の特徴)、並びに、対象物の環境の特徴を含んでいる場合にも、同様の効果が得られることについて理解されたい。これらの特徴は、先程説明したものと同様に、ほとんど相殺されることになる。
【0030】
次に図6を参照すれば、本発明による一実施例における瞳孔検出を利用した第3のアプリケーションの図が示されている。この実施例においては、建物600の所有者は、人物が、通り602から建物の入口(図示されてはいない)に接近した際に警告されることを所望している。1つ又は複数のイメージャ604を使用することにより、光を検出し、1つ又は複数のコントローラ(図示されてはいない)によって処理及び分析する対象の画像を生成する。いくつかの光源606が、所望の視野608に対して光を放射する。当業者であれば、視野608、イメージャ604の数及びタイプ、及び光源606の数及びタイプが、アプリケーションによって決定されることを理解するであろう。イメージャが最初に瞳孔を検出し得る距離も、イメージャ604及び光源606の数及びタイプに影響を与えることになる。相対的に高い分解能のイメージャと、大きなアパーチャを有する望遠鏡は、システムが最初に1つ又は複数の瞳孔を検出する距離を増大させるべく使用可能な2つの技法の例である。
【0031】
人物が建物600に接近すると、コントローラ(図示されてはいない)が、1つ又は両方の瞳孔を検出し、これに応答して警戒信号を生成する。警戒信号は、例えば、アラーム、投光器、又は1つ又は複数のビデオカメラをトリガすることができる。1つ又は複数のビデオカメラは、セキュリティ要員が対象物に合焦し、これにより、ユーザーが対象物を明瞭に識別できるように、パン、チルト、及びズーム機能を包含することができる。例えば、セキュリティ要員は、対象物による建物600への進入を許容する前に、対象物の身元の確認を必要とする場合がある。
【0032】
図7は、本発明による一実施例におけるセンサを示している。この実施例においては、センサ700は、イメージャ102(図1)内に内蔵されており、CMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)画像化センサとして構成されている。本発明によるその他の実施例においては、センサ700は、例えば、CCD(Charge−Coupled Device)イメージャなどのその他のタイプの画像化装置によって実装可能である。
【0033】
チェッカーボードパターンに成形された異なるフィルタ材料を使用することにより、センサ700上にパターン化フィルタレイヤ702が形成されている。これらの2つのフィルタは、光源104、106によって使用されている波長によって決定される。例えば、本発明によるこの実施例においては、パターン化フィルタレイヤ702は、光源104によって使用されている波長を選択するフィルタ材料を含む領域(1と識別されているもの)を含んでおり、その他の領域(2と識別されているもの)は、光源106によって使用されている波長を選択するフィルタ材料を含んでいる。
【0034】
図7の実施例においては、パターン化フィルタレイヤ702は、例えば、ウエハの形態において従来の堆積及びフォトリソグラフィープロセスを使用することにより、基礎となっているレイヤの上部にセンサ700の別個のレイヤとして堆積されている。本発明による別の実施例においては、センサ700と入射光の間の別個の要素として、パターン化フィルタレイヤ702を生成することができる。更には、フィルタ材料のパターンをチェッカーボードパターン以外のパターンに構成することも可能である。例えば、パターン化フィルタレイヤ702は、組み合わせられたストライプ又は非対称の構成(例えば、3ピクセルx2ピクセルの形状)に形成可能である。又、パターン化フィルタレイヤ702をカラーイメージャなどのその他の機能と統合することも可能である。
【0035】
本発明によるその他の実施例においては、パターン化フィルタレイヤ702は、センサ700の選択されたエリアをフィルタ材料によってカバーしていない空白の領域(例えば、領域1)を包含することができる。この結果、センサ700のカバーされていない領域は、両方の光源104、106からの光を受光することになる。カバーされている領域は、1つの光源からの光のみを通過させ、もう1つの光源からの光を遮断するため、利得係数を算出し、カバーされている領域を通過する光に対して適用する。この利得係数により、フィルタ材料によって吸収される光と、2つの波長間におけるセンサ感度の差と、を補償する。
【0036】
パターン化フィルタレイヤ702内においては、様々なタイプのフィルタ材料が使用可能である。本発明によるこの実施例においては、フィルタ材料は、顔料又は染料がドーピングされたポリマーを含んでいる。本発明によるその他の実施例においては、フィルタ材料は、半導体、その他の無機材料、又は有機材料から製造された干渉フィルタ、反射フィルタ、及び吸収フィルタを包含し得る。
【0037】
図8は、本発明による一実施例におけるイメージャの断面図である。この図には、イメージャ102の一部のみが示されている。イメージャ102は、ピクセル800、802、804、806からなるセンサ700、2つの交互に変化するフィルタ領域810、812を含むパターン化フィルタレイヤ808、ガラスカバー814、及びデュアルバンド狭帯域フィルタ816を含んでいる。本発明によるこの実施例においては、センサ700は、CMOSイメージャとして構成されており、パターン化フィルタレイヤ808は、顔料又は染料がドーピングされた2つのポリマー810、812として構成されている。パターン化フィルタレイヤ808のそれぞれの領域(例えば、チェッカーボードパターン内の正方形)は、CMOSイメージャ内の1つのピクセル上に位置している。
【0038】
本発明のこの実施例においては、狭帯域フィルタ816及びパターン化フィルタレイヤ808は、ハイブリッドフィルタを形成している。光が狭帯域フィルタ816に入射すると、光源104(λ1)及び光源106(λ2)の波長以外の波長の光は、フィルタリングによって除去される(即ち、狭帯域フィルタ816の通過を遮断される)。従って、この実施例においては、可視波長λVIS及び波長(λn)の光がフィルタリングによって除去され、波長λ1及びλ2又はこの近傍の光が狭帯域フィルタ816を透過する。この結果、波長λ1及びλ2又はこの近傍の光のみがガラスカバー814を通過することになる。その後、ポリマー810が、波長λ1の光を伝達し、波長λ2の光を遮断する。この結果、ピクセル800及び804は、波長λ1の光のみを受光し、これにより、軸上光源104によって取得された画像を生成する。
【0039】
ポリマー812は、波長λ2の光を伝達すると共に波長λ1の光を遮断し、これにより、ピクセル802及び806は、波長λ2の光のみを受光する。この結果、非軸上光源106によって取得された画像が生成されることになる。本発明によるこの実施例においては、相対的に短い波長λ1は、軸上光源104と関連付けられており、相対的に長い波長λ2は、非軸上光源106と関連付けられている。しかしながら、本発明のその他の実施例においては、相対的に短い波長λ1を非軸上光源106と関連付け、相対的に長い波長λ2を軸上光源104と関連付けることが可能である。
【0040】
本発明によるこの実施例においては、狭帯域フィルタ816は、誘電体スタックフィルタ(Dielectric stack filters:誘電体多層膜フィルタ)である。誘電体スタックフィルタは、特定のスペクトル特性を具備するように設計されている。本発明によるこの実施例においては、誘電体スタックフィルタは、デュアルバンド狭帯域フィルタとして形成されている。狭帯域フィルタ816は、1つのピークをλ1に、そして、別のピークをλ2に具備するべく設計されている。従って、波長λ1及びλ2又はこの近傍の波長の光のみがパターン化フィルタレイヤ808内のポリマーフィルタ810、812に入射する。そして、パターン化フィルタレイヤ808を使用することにより、λ1とλ2を弁別している。波長λ1は、フィルタ810を透過し(但し、フィルタ812を透過しない)、波長λ2は、フィルタ812を透過する(但し、フィルタ810を透過しない)。
【0041】
当業者であれば、パターン化フィルタレイヤ808が、ピクセル空間分解能におけるチャネルを選択するメカニズムを提供していることを理解するであろう。本発明によるこの実施例においては、チャネル1は、軸上画像と関連付けられており、チャネル2は、非軸上画像と関連付けられている。本発明によるその他の実施例においては、チャネル1を非軸上画像と関連付け、チャネル2を軸上画像と関連付けることが可能である。
【0042】
本発明によるこの実施例においては、センサ700は、キャリア(図示されてはいない)内に位置している。ガラスカバー814が、通常、損傷及び(例えば、ほこりなどの)粒子汚染からセンサ700を保護している。この実施例においては、ガラスカバー814は、有色のガラスフィルタとして形成されており、誘電体スタックフィルタ(即ち、狭帯域フィルタ816)の基板として含まれている。この有色のガラスフィルタは、特定のスペクトル特性を具備するように設計されており、顔料又は染料がドーピングされている。ドイツのMainzに所在するSchott Optical Glass Inc.社が、有色のガラスフィルタに使用可能な有色ガラスを製造している企業の1つである。
【0043】
次に図9を参照すれば、本発明による一実施例におけるデュアルバンド狭帯域フィルタを製造する第1の方法が示されている。図8の実施例と関連して説明したように、狭帯域フィルタ816は、デュアルバンド狭帯域フィルタとして形成された誘電体スタックフィルタである。誘電体スタックフィルタは、フィルタタイプの任意の組み合わせを包含し得る。完成した誘電体スタックフィルタの望ましいスペクトル特性により、スタックのレイヤ内に包含されるフィルタのタイプが決定される。
【0044】
例えば、2つのフィルタ900、902を組み合わせることによってフィルタを製造することができる。バンド遮断フィルタ900は、波長λ1及びλ2の周辺の領域間の波長の光をフィルタリングによって除去し、帯域通過フィルタ902は、波長λ1及びλ2の近傍及びこの間の光を透過する。フィルタ900、902の組み合わせは、ハッチングされているエリア内の光を透過し、その他のすべての波長の光を遮断する。図10は、図9のデュアルバンド狭帯域フィルタのスペクトルを示している。図示されているように、光は、対象波長であるλ1(スペクトル1000)とλ2(スペクトル1002)及びこの近傍においてのみ、組み合わせられたフィルタを透過している。
【0045】
デュアルバンド狭帯域フィルタは、互いに上下に結合空洞共振器(coupled-cavity resonators)をスタックすることによって製造することも可能であり、この場合に、それぞれの結合空洞共振器は、2つのファブリーペロー共振器によって形成されている。図11は、本発明による一実施例においてデュアルバンド狭帯域フィルタを製造する第2の方法に使用されるファブリーペロー(Fabry−Perot:FP)共振器を示している。共振器1100は、上部分布ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector:DBR)1102レイヤと下部DBRレイヤ1104を含んでいる。DBRレイヤを形成する材料は、1/4波長(mλ/4)厚の低屈折率材料と1/4波長(nλ/4)厚の高屈折率材料のN個のペアを含んでおり、この場合に、変数Nは整数であり、変数m及びnは奇数の整数である。波長は、レイヤ内における光の波長として定義されており、これは、自由空間波長をレイヤの屈折率で除算したものに等しい。
【0046】
空洞1106が2つのDBRレイヤ1102、1104を分離している。空洞1106は、1/2波長(pλ/2)厚の空洞として構成されており、この場合に、pは整数である。空洞1106の厚さとDBRレイヤ1102、1104の材料により、FP共振器1100の透過ピークが決定される。図12は、図11のファブリーペロー共振器のスペクトルを示している。FP共振器1100は、単一の透過ピーク1200を具備している。
【0047】
デュアルバンド狭帯域フィルタを製造するこの第2の方法においては、2つのFP共振器1100を1つにスタックして結合空洞共振器を生成している。図13は、本発明による一実施例においてデュアルバンド狭帯域フィルタを製造する第2の方法に使用する結合空洞共振器を示している。結合空洞共振器1300は、上部DBRレイヤ1302、空洞1304、強い結合DBR1306、空洞1308、及び下部DBRレイヤ1310を含んでいる。強い結合DBR1306は、上部FP共振器の下部DBRレイヤ(即ち、レイヤ1104)が下部FP共振器の上部DBRレイヤ(即ち、レイヤ1102)とマージした際に形成される。
【0048】
2つのFP共振器を1つにスタックすることにより、図12の単一の透過ピーク1200が、図14に示されているように、2つのピークに分割される。強い結合DBR1306内の1/4波長厚の屈折率材料のペアの数により、空洞1304、1308間の結合強度が決定される。そして、空洞1304、1308間の結合強度により、ピーク1400とピーク1402の間の間隔が制御される。
【0049】
図15は、本発明による一実施例においてデュアルバンド狭帯域フィルタを形成する3つの結合空洞共振器のスタックを示している。デュアルバンド狭帯域フィルタ1500は、上部DBRレイヤ1502、空洞1504、強い結合DBR1506、空洞1508、弱い結合DBR1510、空洞1512、強い結合DBR1514、空洞1516、弱い結合DBR1518、空洞1520、強い結合DBR1522、空洞1524、及び下部DBRレイヤ1526を含んでいる。
【0050】
3つの結合空洞共振器を1つにスタックすることにより、2つのピーク1400、1402のそれぞれが、3つ組のピーク1600、1602それぞれに分割される。図16は、図15のデュアルバンド狭帯域フィルタのスペクトルを示している。弱い結合DBR1510、1518内における結合強度は、結合DBR1510、1518内のミラーペアの数を増大させることによって減少する。減少した結合強度により、それぞれ3つ組のピーク1600、1602が、単一の広くて幾分フラットな透過帯域にマージされる。弱い結合DBR1510、1518内の1/4波長厚の屈折率材料のペア数を変化させることにより、3つ組のピーク1600、1602内の間隔が変化する。
【0051】
以上、2つの波長λ1及びλ2の光の検出を参照してハイブリッドフィルタについて説明したが、本発明によるその他の実施例においては、ハイブリッドフィルタを使用することにより、2つを上回る数の対象波長を検出することができる。図17は、本発明による一実施例におけるポリマーフィルタ及び3バンド狭帯域フィルタのスペクトルを示している。この実施例におけるハイブリッドフィルタは、3つの対象波長λ1、λ2、及びλ3の光を検出する。波長λ1及びλ3のスペクトル1700及び1702は、それぞれ、画像化システムによって利用されている2つの信号を表している。波長λ2において検出される光(スペクトル1704)を使用することにより、2つの対象波長外において画像化システムが受光する光の量を判定している。波長λ2において検出される光の量を、画像化システムが検出可能な光の基準量として使用可能である。
【0052】
本発明のこの実施例においては、3バンド狭帯域フィルタは、対象波長(λ1、λ2、及びλ3)又はこの近傍の光を透過し、その他のすべての波長の光の透過を遮断する。次いで、パターン化フィルタレイヤ内のポリマーフィルタにより、波長λ1、λ2、及びλ3において受光された光を弁別している。
【0053】
図18は、図17に示されている実施例によるセンサを示している。3つの異なるフィルタを使用することにより、センサ1802上にパターン化フィルタレイヤ1800を形成している。この実施例においては、パターン化フィルタレイヤ内の1つの領域(例えば、領域1)は、波長λ1の光を透過し、波長λ2及びλ3の光を遮断する(図17のスペクトル1706を参照されたい)。パターン化フィルタレイヤ内の別の領域(例えば、領域3)は、波長λ3の光を透過し、波長λ1及びλ2の光を遮断する(図17のスペクトル1708を参照されたい)。第3領域は、波長λ2の光を透過し、λ1及びλ3の光を遮断する(図17のスペクトル1710を参照されたい)。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による一実施例における瞳孔検出システムのブロックダイアグラムである。
【図2】本発明による一実施例における瞳孔検出方法のフローチャートである。
【図3】本発明による一実施例における瞳孔検出を使用した第1アプリケーションの図である。
【図4】本発明による一実施例における瞳孔検出を使用した第2アプリケーションの図である。
【図5a】図3の実施例による軸上光源によって生成される画像を示している。
【図5b】図3の実施例による非軸上光源によって生成される画像を示している。
【図5c】図5aの画像と図5bの画像の差分から結果的に得られる画像を示している。
【図6】本発明による一実施例における瞳孔検出を利用した第3アプリケーションの図である。
【図7】本発明による一実施例におけるセンサを示している。
【図8】本発明による一実施例におけるイメージャの断面図である。
【図9】本発明による一実施例におけるデュアルバンド狭帯域フィルタを製造する第1の方法を示している。
【図10】図9のデュアルバンド狭帯域フィルタのスペクトルを示している。
【図11】本発明による一実施例におけるデュアルバンド狭帯域フィルタを製造する第2の方法に使用されるファブリーペロー(Fabry−Perot:FP)共振器を示している。
【図12】図11のファブリーペロー共振器のスペクトルを示している。
【図13】本発明による一実施例におけるデュアルバンド狭帯域フィルタを製造する第2の方法に使用される結合空洞共振器を示している。
【図14】図13の結合空洞共振器のスペクトルを示している。
【図15】本発明による一実施例におけるデュアルバンド狭帯域フィルタを形成する3つの結合空洞共振器のスタックを示している。
【図16】図14のデュアルバンド狭帯域フィルタのスペクトルを示している。
【図17】本発明による一実施例におけるポリマーフィルタ及び3バンド狭帯域フィルタのスペクトルを示している。
【図18】図17に示されている実施例によるセンサを示している。
【符号の説明】
【0055】
102a 第1イメージャ
102b 第2イメージャ
104 第1光源
106 第2光源
108a 第1コントローラ
108b 第2コントローラ
110 タイマ
112 制御対象装置
114 入力装置
300 物体
302 軸
304 第1角度
306 第2角度
400 ステレオコントローラ
816 誘電体スタックフィルタ
1300 結合空洞共振器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(300)に向かって光を放射する光源と、
第1イメージャ(102a)と、
前記光源と前記第1イメージャ(102a)の間に配置された第1ハイブリッドフィルタと、
前記第1イメージャ(102a)に接続されており、瞳孔が検出された際に警戒信号を生成する第1コントローラ(108a)と、
を有する瞳孔検出システム。
【請求項2】
第2イメージャ(102b)と、
前記第2イメージャ(102b)と前記光源の間に配置された第2ハイブリッドフィルタと、
前記第2イメージャ(102b)に接続された第2コントローラ(108b)と、
前記第1及び第2コントローラ(108a、108b)に接続されており、少なくとも1つの三次元画像を生成するステレオコントローラ(400)と、
を更に有する請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記第1コントローラ(108a)に接続されたタイマ(110)と、
前記第1コントローラ(108a)に接続された制御対象装置(112)と、
前記第1コントローラ(108a)に接続された入力装置(114)と、
を更に有する請求項1又は2記載のシステム。
【請求項4】
前記第1ハイブリッドフィルタは、誘電体スタックフィルタ(816)を有する、請求項1から3のいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記誘電体スタックフィルタ(816)は、有色のガラスフィルタを有する、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記誘電体スタックフィルタ(816)は、1つにスタックされたN個の結合空洞共振器(1300)を有しており、Nは、整数である、請求項4記載のシステム。
【請求項7】
前記光源は、対象の複数の波長の光を放射する単一の広帯域光源を有する、請求項1から6のいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記光源は、第1波長の光を放射する第1光源(104)と、第2波長の光を放射する第2光源(106)と、を有し、
前記第1光源(104)は、前記第1イメージャ(102)の軸(302)に対して第1角度(304)で配置されており、
前記第2光源(106)は、前記第1イメージャ(102)の前記軸(302)に対して第2角度(306)で配置されており、
前記第2角度(306)は、前記第1角度(304)より大きい、請求項1から6のいずれか1項記載のイメージングシステム。
【請求項9】
波長に依存した検出のための方法であって、
物体(300)から光を受光することを含み、前記光は、対象の複数の波長において伝播する光を含んでおり、
前記対象の波長又はこの近傍において受光された光を弁別すると同時に、すべてのその他の波長において受光された光を遮断することと、
それぞれの対象の波長又はこの近傍において受光された光の量を検出し、前記対象の波長又はこの近傍において受光された前記光を使用して1つ又は複数の画像を生成することと、
前記1つ又は複数の画像の少なくとも1つが瞳孔を含んでいるかどうかを判定することと、
前記画像の中の少なくとも1つが瞳孔を含んでいる際に警戒信号を生成することと、
を含む方法。
【請求項10】
前記対象の波長のそれぞれにおいて受光された前記光の量の差を判定することを更に含む、請求項9記載の方法。
【請求項1】
物体(300)に向かって光を放射する光源と、
第1イメージャ(102a)と、
前記光源と前記第1イメージャ(102a)の間に配置された第1ハイブリッドフィルタと、
前記第1イメージャ(102a)に接続されており、瞳孔が検出された際に警戒信号を生成する第1コントローラ(108a)と、
を有する瞳孔検出システム。
【請求項2】
第2イメージャ(102b)と、
前記第2イメージャ(102b)と前記光源の間に配置された第2ハイブリッドフィルタと、
前記第2イメージャ(102b)に接続された第2コントローラ(108b)と、
前記第1及び第2コントローラ(108a、108b)に接続されており、少なくとも1つの三次元画像を生成するステレオコントローラ(400)と、
を更に有する請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記第1コントローラ(108a)に接続されたタイマ(110)と、
前記第1コントローラ(108a)に接続された制御対象装置(112)と、
前記第1コントローラ(108a)に接続された入力装置(114)と、
を更に有する請求項1又は2記載のシステム。
【請求項4】
前記第1ハイブリッドフィルタは、誘電体スタックフィルタ(816)を有する、請求項1から3のいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記誘電体スタックフィルタ(816)は、有色のガラスフィルタを有する、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記誘電体スタックフィルタ(816)は、1つにスタックされたN個の結合空洞共振器(1300)を有しており、Nは、整数である、請求項4記載のシステム。
【請求項7】
前記光源は、対象の複数の波長の光を放射する単一の広帯域光源を有する、請求項1から6のいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記光源は、第1波長の光を放射する第1光源(104)と、第2波長の光を放射する第2光源(106)と、を有し、
前記第1光源(104)は、前記第1イメージャ(102)の軸(302)に対して第1角度(304)で配置されており、
前記第2光源(106)は、前記第1イメージャ(102)の前記軸(302)に対して第2角度(306)で配置されており、
前記第2角度(306)は、前記第1角度(304)より大きい、請求項1から6のいずれか1項記載のイメージングシステム。
【請求項9】
波長に依存した検出のための方法であって、
物体(300)から光を受光することを含み、前記光は、対象の複数の波長において伝播する光を含んでおり、
前記対象の波長又はこの近傍において受光された光を弁別すると同時に、すべてのその他の波長において受光された光を遮断することと、
それぞれの対象の波長又はこの近傍において受光された光の量を検出し、前記対象の波長又はこの近傍において受光された前記光を使用して1つ又は複数の画像を生成することと、
前記1つ又は複数の画像の少なくとも1つが瞳孔を含んでいるかどうかを判定することと、
前記画像の中の少なくとも1つが瞳孔を含んでいる際に警戒信号を生成することと、
を含む方法。
【請求項10】
前記対象の波長のそれぞれにおいて受光された前記光の量の差を判定することを更に含む、請求項9記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−536064(P2007−536064A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513211(P2007−513211)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/015583
【国際公開番号】WO2005/114553
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506076606)アバゴ・テクノロジーズ・ジェネラル・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (129)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/015583
【国際公開番号】WO2005/114553
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506076606)アバゴ・テクノロジーズ・ジェネラル・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (129)
【Fターム(参考)】
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