瞳補正を有する反射屈折投影対物系
【課題】異なる視野点における結像収差の補正が容易なマイクロリソグラフィのための反射屈折投影対物系を提供すること。
【解決手段】反射屈折投影対物系は、物体面に配置された軸外物体視野を投影対物系の像面に配置された軸外像視野上に結像するように配置された複数の光学要素を含む。光学要素は、物体面から到来する放射線から第1の中間像を発生させ、かつ第1の瞳面を含む第1の屈折対物系部分と、第1の中間像を第2の中間像へと結像する少なくとも1つの凹面ミラーを含み、かつ第1の瞳面と光学的に共役な第2の瞳面を含む第2の対物系部分と、第2の中間像を像面上に結像し、かつ第1及び第2の瞳面と光学的に共役な第3の瞳面を含む第3の屈折対物系部分とを形成する。物体面と第1の瞳面の間に配置された光学要素は、第1の瞳面に光学的に近く配置された負のレンズ群を含むフーリエレンズ群を形成する。
【解決手段】反射屈折投影対物系は、物体面に配置された軸外物体視野を投影対物系の像面に配置された軸外像視野上に結像するように配置された複数の光学要素を含む。光学要素は、物体面から到来する放射線から第1の中間像を発生させ、かつ第1の瞳面を含む第1の屈折対物系部分と、第1の中間像を第2の中間像へと結像する少なくとも1つの凹面ミラーを含み、かつ第1の瞳面と光学的に共役な第2の瞳面を含む第2の対物系部分と、第2の中間像を像面上に結像し、かつ第1及び第2の瞳面と光学的に共役な第3の瞳面を含む第3の屈折対物系部分とを形成する。物体面と第1の瞳面の間に配置された光学要素は、第1の瞳面に光学的に近く配置された負のレンズ群を含むフーリエレンズ群を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影対物系の物体面に配置された軸外物体視野を投影対物系の像面に配置された軸外像視野上に結像するように配置された複数の光学要素を含む反射屈折投影対物系に関する。
【背景技術】
【0002】
反射屈折投影対物系は、例えば、半導体素子及び他の種類のマイクロデバイスを加工するのに用いられる投影露光システム、特にウェーハスキャナ又はウェーハステッパに用いられ、以下に一般的に「マスク」又は「レチクル」と呼ぶフォトマスク又はレチクル上のパターンを感光コーティングを有する物体上に縮小スケールで超高分解能で投影するように機能する。
【0003】
更に微細な構造を作り出すために、投影対物系の像側開口数(NA)を高めること、及びより短い波長、好ましくは、約260nmより短い波長を有する紫外線を用いることの両方が求められている。しかし、光学要素を加工するのに利用可能なこの波長領域で十分に透明な非常に少ない材料、特に合成石英ガラス及びフッ化物結晶があるだけである。利用可能なこれらの材料のアッベ数は、互いに比較的近くに位置するので、十分良好に色補正された(色収差が補正された)純屈折システムを提供することは困難である。
【0004】
光学リソグラフィでは、比較的大きくて事実上平面の照明視野に対して、高い分解能及び良好な補正状態を得なければならない。あらゆる光学設計に対して問われる可能性がある最も困難な要件は、その光学設計が、特に全屈折設計であった場合に、平坦な像を有することであると指摘されている。平坦な像を達成することは、より強力なレンズ、より長いシステム長、システムのより大きいガラス質量、及びより強いレンズ曲率から生じるより大きく、より高次の像収差をもたらす反対のレンズ屈折力を必要とする。
【0005】
色補正及び像の平坦化の問題を解決するのに役立てるために、従来から凹面ミラーが用いられている。凹面ミラーは、正のレンズと同じく正の屈折力を有するが、反対の符号のペッツヴァル曲率を有する。また凹面ミラーは、色の問題を招かない。従って、上述の種類の高分解能投影対物系を構成するのに、屈折要素と反射要素を組み合わせ、特にレンズと少なくとも1つの凹面ミラーとを組み合わせる反射屈折システムが主に用いられている。
【0006】
残念ながら凹面ミラーは、放射線をちょうどそれが到来した方向に送り返すので、光学設計内に統合することが困難である。機械的問題又はビーム口径食又は瞳掩蔽(pupil obscuration)に起因する問題を引き起こさずに凹面ミラーを統合する知的設計が望ましい。
【0007】
また、DUV(深紫外)及びVUV(真空紫外)用途のための投影対物系において一般的に用いられるフッ化カルシウム及び他の光学材料は、固有の複屈折を提供し、これらの材料に印加される機械的応力に応じた応力複屈折に起因して偏光効果を引き起こす恐れもあるから、一般的に、光学システムを通過する放射線の偏光状態を制御するのは困難である。
【0008】
高い像側開口数NA、及び良好な補正状態を可能にする反射屈折投影対物系の一部の概念は、3つのカスケード(又は連結)結像対物系部分、及び厳密に2つの中間像を含む。第1の屈折対物系部分(略記号「R」)は、物体の第1の実中間像を発生させる。少なくとも1つの凹面ミラーを含む第2の反射屈折又は反射結像対物系部分(略記号「C」)は、第1の中間像から第2の実中間像を発生させる。第3の屈折対物系部分は、第2の中間像を像平面内に結像する。3つの光学的に共役な瞳面が存在するように、各結像対物系部分内に瞳面が形成される。一般的に第1の屈折対物系部分は、その後の結像段階に向けて第1の中間像のサイズ、位置、及び補正状態を適正に定める「中継」システムとして機能する。一般的に第2の対物系部分は、主な像視野曲率量を補正し(ペッツヴァル補正)、設計に依存して色補正への寄与がもたらされる。一般的に第3の対物系部分は、望ましい像側NAを得るために、高密に束ねられたレンズを有する合焦群として最適化される。
【0009】
これらの連結システムのうちの1つの部類は、第2の対物系部分の瞳面に又はそれに光学的に近く位置決めされた単一の凹面ミラーを軸上色収差(CHL)及びペッツヴァル和を補正するためにこの凹面ミラーの前に配置された1つ又はそれよりも多くの負のレンズとの組合せに用いる。物体面と凹面ミラーの間、及び凹面ミラーと像面の間の光線の偏向は、多くの場合に、互いに対して直角に向きが定められた2つの平面折り返しミラーを有する偏向システムによって達成され、これら両方の折り返しミラーは、中間像に光学的に近く位置決めされる。それによって物体面と像面との平行な向きが得られる。入射放射線に対して傾斜して向きが定められた平面折り返しミラーは、回避又は補償することが困難な偏向放射線の偏光状態の変化を招く傾向を有する。平面折り返しミラーを単一の凹面ミラーとの組合せに用いる折り返し反射屈折投影対物系の代表例は、例えば、US2003/0234912A1、US2004/0233405A1、又はWO2005/111689A2に開示されている。
【0010】
本出願人の特許出願US2005/0190435A1又はWO2006/005547A1は、全ての光学要素に対して共通の真っ直ぐな光軸を有する折り返しのない反射屈折投影対物系の様々な例を示している。第2の対物系部分は、互いに対面する2つの凹面ミラーを含んでミラー間空間を形成し、このミラー間空間の内側に少なくとも第1の中間像が位置する。両方の凹面ミラーは、瞳面から光学的に遠隔に位置し、すなわち、それぞれ第1の中間像及び第2の中間像に対して光学的により近い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US2003/0234912A1
【特許文献2】US2004/0233405A1
【特許文献3】WO2005/111689A2
【特許文献4】US2005/0190435A1
【特許文献5】WO2006/005547A1
【特許文献6】US6,995,833B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、異なる視野点における結像収差の補正が容易で真空紫外(VUV)範囲における使用に適するマイクロリソグラフィのための反射屈折投影対物系を提供することである。別の目的は、結像収差の補正に際して視野依存変化を大幅に回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記及び他の目的に対する解決法として、本発明は、1つの考案に従って、物体面に配置された軸外物体視野を投影対物系の像面に配置された軸外像視野上に結像するように配置された複数の光学要素を含む反射屈折投影対物系を提供し、光学要素は、物体面から到来する放射線から第1の中間像を発生させ、かつ第1の瞳面を含む第1の屈折対物系部分と、第1の中間像を第2の中間像へと結像する少なくとも1つの凹面ミラーを含み、かつ第1の瞳面と光学的に共役な第2の瞳面を含む第2の対物系部分と、第2の中間像を像面上に結像し、かつ第1及び第2の瞳面と光学的に共役な第3の瞳面を含む第3の対物系部分とを形成し、物体面と第1の瞳面の間に配置された光学要素は、第1の瞳面に光学的に近く配置された負のレンズ群を含むフーリエレンズ群を形成する。
【0014】
本発明のこの態様によると、第1の瞳面の補正状態は標的的に(in a target manner)影響を受け、同等の従来技術のシステムよりもかなり弱い面曲率しか持たない(曲率半径がかなり大きい)第1の瞳面をもたらす。補正された瞳像は、瞳位置に位置決めされた補正要素によって誘起される補正効果の視野変動を回避することが望ましい。視野曲率は、入射瞳の第1の瞳面への結像の主な収差である。瞳像を補正するためには、視野曲率を補正するための手段を対物系部分内の瞳面の上流に位置決めすべきである。
【0015】
フーリエレンズ群内では屈折力の特定の分配がもたらされ、投影対物系の入射瞳を第1の瞳面内に結像する瞳結像に影響を及ぼす。比較的大きい物体側開口数を有する放射線を第1の瞳面を通過するビームへと集光するには、フーリエレンズ群に全体的な正の屈折力が必要である。それによって像曲率に関して第1の瞳面の補正不足が生じる。第1の瞳面に光学的に近く負のレンズ群を設けることにより、フーリエレンズ群の第1の瞳面の曲率に対する全体的な効果を少なくとも部分的に相殺することができ、第1の瞳面の曲率に対する「平坦化効果」がもたらされる。
【0016】
全ての視野点に対して基本的に一定の収差の補正を行うことが望ましい場合には、1つ又はそれよりも多くの補正要素を瞳面に又は該瞳面に対して光学的に近くに配置することができる。視野にわたる補正効果の変化は、異なる視野点からの光線束の瞳面の近くの経路にも依存する。大きい差の場合には、瞳面に又はその近くに配置された補正要素は、視野依存補正効果を有することができる。瞳面の補正状態が比較的良好な場合であっても、瞳面における異なる光線の入射角から異なる視野点への依存性が依然として存在する。瞳面の補正状態を改善することが望ましい。特に本発明のこの態様は、第1の瞳面の曲率を低減するための手段を提供する。
【0017】
負のレンズ群と瞳面の間に少なくとも1つの(弱い)正のレンズを設けることは可能であるが、平坦化効果は、負のレンズ群と瞳面の間に正のレンズが配置されないように、負のレンズ群が第1の瞳面の直ぐ上流に配置される場合に改善することができる。
【0018】
好ましくは、負のレンズ群の少なくとも1つの負のレンズは、第1の瞳面に非常に近くに又は該瞳面に配置される。負の屈折力が第1の瞳面に対して非常に近くに又は該瞳面に設けられた場合には、フーリエレンズ群の屈折力に対するこの負の屈折力の全体的な影響は比較的小さいが(主光線高さCRHにおける小さい値に起因して)、それと同時に瞳結像の像視野曲率の補正に対する影響は比較的強いものとすることができ、第1の瞳面の曲率に対して平坦化効果が生じる。一部の実施形態では、負のレンズ群は、光線高さ比RHR=CRH/MRHにおいて条件|RHR|<0.2が満たされるように、周辺光線高さMRHが主光線高さCRHよりも実質的に大きい領域に配置された少なくとも1つの負のレンズを含む。好ましくは、条件|RHR|<0.1が成り立つ。
【0019】
一部の実施形態では、負のレンズ群は、単一の負のレンズによって形成され、それによって負の屈折力を第1の瞳面に近い軸上の幅狭な空間内に生成することができる。他の実施形態では、負のレンズ群は、少なくとも1つの負のレンズを含む2つ又はそれよりも多くのレンズによって形成することができ、レンズは組合せで負の屈折力を有する。
【0020】
一部の実施形態では、負のレンズ群は、第1の瞳面の直ぐ上流に負の両凹レンズを含み、好ましくは、この負の両凹レンズが負のレンズ群の唯一のレンズであるように、その上流に正のレンズが、この負の両凹レンズの前に置かれる。それによって第1の瞳面の近くに負の屈折力の標的的な集中(targeted concentration)が得られる。
【0021】
一部の実施形態では、フーリエレンズ群は、第1の瞳面におけるペッツヴァル半径RPが、同等の物体側開口数を有する従来技術のシステムと比較して比較的大きい条件|RP|>150mmに従うように構成される。本明細書に用いるペッツヴァル半径は、第1の瞳面の曲率半径に対応する。ペッツヴァル半径は、フーリエレンズ群のペッツヴァル和1/RPの逆数に比例する。ペッツヴァル半径は、上記よりも有意に大きくし、例えば、200mmよりも大きくし、及び/又は250mmよりも大きくすることができる。
【0022】
一部の実施形態では、開口絞りが第1の瞳面に位置決めされる。開口絞りは、利用される像側開口数NAを調節することを可能にする可変直径を有することができる。開口絞りの直径が、比較的平坦な第1の瞳面において変更された時には、テレセントリック性に対する有意な影響は僅かであるか又は全く発生しないことになるので、可変開口絞りを平面開口絞りとして設計することができる。
【0023】
一部の実施形態では、フーリエレンズ群は、物体面の直後の第1の正のレンズ群(P)、第1の正のレンズ群の直後の第1の負のレンズ群(N)、第1の負のレンズ群の直後の第2の正のレンズ群、及び第2の正のレンズ群の直後にあって第1の瞳面に光学的に近く配置された第2の負のレンズ群から成る。従って、そのようなフーリエレンズ群は、2つの連続するP−N型のレンズ組合せを含む。第1の瞳面の球面収差、非点収差、及び視野曲率のような異なる収差に対する補正効果の有利な分配をこの構造において得ることができる。
【0024】
一部の実施形態では、フーリエレンズ群が、RHR>|0.5|である物体面に対して光学的に近いところに少なくとも1つの非球面表面を含み、更に|RHR|<0.2である第1の瞳面に対して光学的に近いところに少なくとも1つの非球面表面を含むことをもたらすことにより、フーリエレンズ群は、レンズ材料の消耗及び補正効果に関して改善されている。好ましくは、少なくとも1つの非球面表面は、物体面と第1の瞳面の間の中間領域で条件0.2<|RHR|<|0.5|が当て嵌まる領域内に設けられる。視野面(物体面)及び第1の瞳面に近い非球面表面に加えて、中間領域内の非球面表面を設けることができる。
【0025】
一部の実施形態では、高像側開口数を生じる上で大きな要因である第3の対物系部分は、結像過程の球面収差及びコマ収差の補正への有意な寄与を提供する。好ましくは、純屈折のものである第3の対物系部分は、第3の瞳面と像面の間に、正の前側レンズ群と、少なくとも光軸の周囲の周辺帯域内に負の屈折力を有する帯域レンズと、像面の直ぐ上流に投影対物系の最後の光学要素を含む正の後側レンズ群とをこの順序で含むことができる。
【0026】
帯域レンズは、光軸の周囲の中心帯域内に正の屈折力を有することができる。帯域レンズは、負の帯域レンズの中心帯域から周辺帯域へと高まる負の屈折効果を生じるように構成された非球面レンズとして設計される。一部の実施形態では、帯域レンズは、物体面に対面する凹表面を有するメニスカスレンズである。帯域レンズは、最後の光学要素の直ぐ上流に配置することができる。
【0027】
第3のレンズ群のこれらの特徴は、最終中間像を像面上に結像する最終結像部分システムを有する異なる投影対物系において、光学設計の種類及び第1のレンズ群とは関係なく有益である場合がある。
【0028】
本発明は、異なる種類の投影対物系内に組み込むことができる。一部の実施形態では、反射屈折投影対物系は、直列システムとして、すなわち、投影対物系の全ての光学要素に対して共通する1つの真っ直ぐな(折り返しのない)光軸を有する反射屈折投影対物系として設計される。光学的な観点からは、直列システムは、平面折り返しミラーを利用することによって引き起こされる偏光効果のような光学的問題を大幅に回避することができるので好ましいものとすることができる。また製造の観点からも、直列システムは、光学要素のための従来の装着技術を利用することができ、それによって投影対物系の機械的安定性が改善されるように設計することができる。
【0029】
一部の実施形態では、第2の対物系部分は、物体面から到来する放射線を受光するための物体側ミラー群入口と、出現する放射線を像面に向って射出するための像側ミラー群出口とを有するミラー群を有し、このミラー群は、偶数個の凹面ミラーを含む。一部の実施形態では、第2の対物系部分は、厳密に2つの凹面ミラーを有する。第2の対物系部分は、反射屈折のもの(少なくとも1つの凹面ミラーに加えて少なくとも1つの透明なレンズを含む)又は反射結像のもの(ミラーのみを有する)とすることができる。口径食なしに非常に高い像側開口数NA>1で掩蔽のない結像を生成することができる一部の実施形態では、ミラー群の全ての凹面ミラーは、瞳面から光学的に遠隔に位置する。
【0030】
他の実施形態では、第2の対物系部分は、軸上色収差(CHL)を補正してペッツヴァル和補正(シュプマンの原理)に寄与するために、第2の対物系部分の瞳面に又は該瞳面に対して光学的に近く位置決めされた厳密に1つの凹面ミラーを有し、更に凹面ミラーの前の比較的高い周辺光線高さの領域に配置された1つ又はそれよりも多くの負のレンズを有する。投影対物系は、光学面から到来する放射線を凹面ミラーに向けて偏向し、又は凹面ミラーから到来する放射線を像面に向けて偏向するように光軸に対して傾斜された第1の平面折り返しミラー(偏向ミラー)を含むことができる。物体面と像面の平行な向きを可能にするために、第1の平面折り返しミラーの光学的下流に第2の平面折り返しミラーを設け、第1の折り返しミラーに対して直角に向きを定めることができる。平面折り返しミラーを単一の凹面ミラーとの組合せに用いる折り返し反射屈折投影対物系の代表例は、例えば、US2003/0234912A1、US2004/0233405A1、WO2005/111689A2、又はUS6、995、833B2に開示されている。これらのシステムの一般的なレイアウトに関するこれらの文献の開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。
【0031】
以上及び他の特性は、特許請求の範囲においてのみならず、本明細書及び図面においても見ることができ、個々の特徴は、本発明の実施形態として及び他の分野において単独又は部分的組合せのいずれで用いることができ、個々に有利で特許取得可能な実施形態を表すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による投影対物系の第1の実施形態の子午断面図である。
【図2】基準投影対物系の子午断面図である。
【図3A】図2の基準システムの第1の瞳面の補正状態を示す図である。
【図3B】図2の基準システムの第1の瞳面の補正状態を示す図である。
【図3C】図2の基準システムの第1の瞳面の補正状態を示す図である。
【図4A】図2に示す基準システムの第3の瞳面の補正状態を示す図である。
【図4B】図2に示す基準システムの第3の瞳面の補正状態を示す図である。
【図4C】図2に示す基準システムの第3の瞳面の補正状態を示す図である。
【図5A】図1に示す第1の実施形態の第1の瞳面の補正状態を示す図である。
【図5B】図1に示す第1の実施形態の第1の瞳面の補正状態を示す図である。
【図5C】図1に示す第1の実施形態の第1の瞳面の補正状態を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による投影対物系の子午断面図である。
【図7】図6の投影対物系のフーリエレンズ群LG1の拡大詳細図である。
【図8】図6の投影対物系のRMSスポットサイズの視野変動を表す図である。
【図9】図6の実施形態におけるタンジェンシャルシェル及びサジタルシェルの視野変動を示す図である。
【図10】図6における帯域レンズL3−11に対する正規化瞳高さPHからの光線偏向角RDAの依存性の図である。
【図11】反射屈折投影対物系の別の実施形態の子午断面図である。
【図12】図11の実施形態のフーリエレンズ群LG1の拡大詳細図である。
【図13】図11の投影対物系のRMSスポットサイズの視野変動を表す図である。
【図14】図11の実施形態におけるタンジェンシャルシェル及びサジタルシェルの視野変動を示す図である。
【図15】瞳面において単一の凹面ミラーを有する本発明の実施形態による別の投影対物系の子午断面図である。
【図16】図15の実施形態におけるフーリエレンズ群の拡大詳細図である。
【図17】図15の投影対物系のRMSスポットサイズの視野変動を表す図である。
【図18】図15の実施形態におけるタンジェンシャルシェル及びサジタルシェルの視野変動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の好ましい実施形態の説明では、「光軸」という用語は、光学要素の曲率中心を通過する直線又は一連の直線セグメントを意味する。光軸は、折り返しミラー(偏向ミラー)によって折り返すことができる。本明細書で提供する例の場合では、物体は、集積回路の層のパターン、又はいずれか他のパターン、例えば、格子パターンを保持するマスク(レチクル)である。物体の像は、フォトレジスト層で被覆した基板として機能するウェーハ上に投影されるが、液晶ディスプレイの構成要素又は光学格子のための基板のような他の種類の基板を利用することもできる。
【0034】
図内に示している設計の仕様を開示するために表を提供している場合には、単一の表又は複数の表をそれぞれの図と同じ番号で示している。理解を容易にするために、複数の図において対応する特徴を同様の又は等しい参照識別記号で示している。レンズを指している場合に、識別記号L3−2は、第3の対物系部分内の第2のレンズを表している(光の伝播方向に見た時の)。
【0035】
図1は、約λ≒193nmのUV作動波長に向けて設計された反射屈折投影対物系100の第1の実施形態を示している。反射屈折投影対物系100は、平面の物体面OS(対物面)に配置されたレチクル上のパターン像を平面の像面IS(像平面)内に、厳密に2つの実中間像IMI1、IMI2を作成しながら縮小スケール、例えば、4:1で投影するように設計される。有効な物体視野OF及び像視野IFは軸外にあり、すなわち、光軸AXから完全に外れている。第1の屈折対物系部分OP1は、物体面内のパターンを第1の中間像IMI1へと拡大スケールで結像するように設計される。第2の反射結像(純反射)対物系部分OP2は、第1の中間像IMI1を第2の中間像IMI2へと1:1に近い倍率で結像する。第3の屈折対物系部分OP3は、第2の中間像IMI2を像面IS上に高い縮小比で結像する。
【0036】
図1では、投影ビームのビーム経路を辿るのを容易にするために、軸外物体視野OFの外側視野点の主光線CRの経路を太線で示している。本出願の目的では、「主光線」という用語(「プリンシパル・レイ」としても知られている)は、有効に用いられる物体視野OFの最外側視野点(光軸から最も離れた)から入射瞳の中心へと延びる光線を表している。システムの回転対称性に起因して、主光線は、例証目的で図内に示している子午平面内の同等の視野点から選択することができる。基本的に物体側でテレセントリックな投影対物系では、主光線は、光軸に対して平行又は極めて小さい角度で物体面から射出する。結像過程は、周辺光線の軌道によって更に特徴付けられる。本明細書に用いる「周辺光線(marginal ray)」は、軸上物体視野点(光軸上の視野点)から開口絞りの縁部に延びる光線である。周辺光線は、軸外の有効物体視野が用いられる時には、口径食に起因して像形成に寄与することができない。主光線及び周辺光線は、投影対物系の光学特性を特徴付けるように選択される。そのような選択された光線と所定の軸上位置における光軸との間の半径方向距離をそれぞれ「主光線高さ」(CRH)及び「周辺光線高さ」(MRH)で表している。
【0037】
3つの互いに共役な瞳面P1、P2、及びP3が、主光線CRが光軸と交差する位置に形成される。第1の瞳面P1は、第1の対物系部分内で物体面と第1の中間像の間に形成され、第2の瞳面P2は、第2の対物系部分内で第1の中間像と第2の中間像の間に形成され、第3の瞳面P3は、第3の対物系部分内で第2の中間像と像面ISの間に形成される。
【0038】
第2の対物系部分OP2は、物体側に対面する凹ミラー表面を有する第1の凹面ミラーCM1、及び像側に対面する凹ミラー表面を有する凹面ミラーCM2を含む。ミラー表面は、両方とも連続し、又は分断されておらず、すなわち、これらのミラー表面は、反射に用いられる区域内に孔又は内腔を持たない。互いに対面するミラー表面は、反射屈折空洞を形成し、これをミラー間空間とも表し、ミラー間空間は、凹面ミラーによって形成される曲率面によって囲まれる。中間像IMI1、IMI2は、両方とも反射屈折空洞内でミラー表面から十分に離れて位置する。
【0039】
対物系100は回転対称であり、全ての屈折及び反射光学構成要素に共通の1つの真っ直ぐな光軸AXを有する(直列システム)。折り返しミラーは存在しない。偶数回の反射が発生する。物体面と像面とは平行である。像反転はない。凹面ミラーは小さい直径を有し、これらの凹面ミラーを互いに近接させ、これらの凹面ミラーの間に位置する中間像に比較的近接させることを可能にする。凹面ミラーは、両方とも軸対称面の軸外区画として構成されて照らされる。光ビームは、光軸に対面する凹面ミラーの縁部を口径食なしに通過する。両方の凹面ミラーは、瞳面から光学的に遠隔して位置決めされ、その次の中間像に比較的近く位置決めされる。この対物系は、光軸を中心とする掩蔽のない円形の瞳を有し、従って、マイクロリソグラフィのための投影対物系としての使用を可能にする。
【0040】
投影対物系100は、対物系の射出面と像面の間の高屈折率液浸流体と併用される時には、λ=193nmにおいて像側開口数NA=1.55を有する液浸対物系として設計される。この投影対物系は、矩形の26mm×5.5mm像視野に向けて設計され、物体視野半径(物体高さ)63.7mmを有する設計物体視野に向けて補正される。
【0041】
この設計における仕様を表1に要約している。最も左の列は、屈折、反射、又はそうでなければ指定の面の番号を列記し、第2の列は、その面の曲率半径r[mm]を列記し、第3の列は、非球面表面「AS」を示している。4番目の列は、「厚み」と記しているパラメータである、面と次の面の間の距離d[mm]を列記し、5番目の列は、光学要素を加工するのに用いられる材料を列記し、更に6番目の列は、この光学要素の加工に用いられる材料の屈折率を列記している。7番目の列は、光学構成要素の光学的に利用可能で透明な半直径[mm](光学的利用可能半径)を列記している。表における曲率半径r=0は、平面の面を意味している(無限半径を有する)。
【0042】
いくつかの面は、非球面表面である(ASと示している)。表1Aは、非球面表面に関連するデータを列記しており、これらのデータから、次式を用いて非球面表面の表面形態のサジッタ又は立ち上がり高さp(h)を高さhの関数として計算することができる。
p(h)=[((1/r)h2)/(1+SQRT(1−(1+K)(1/r)2h2))]+C1・h4+C2・h6+…
ここで、半径の逆数値(1/r)は、問題とする面の面頂点における曲率であり、hは、この面上の点の光軸からの距離である。従って、サジッタ又は立ち上がり高さp(h)は、z方向、すなわち、光軸に沿って測定した問題とする面の頂点からのその点の距離を表している。定数K、C1、C2等は、表1Aに列記されている。
【0043】
(矩形の)有効物体視野OFを第1の中間像IMI1へと結像する第1の対物系部分OP1は、物体面と第1の瞳面P1との間で全体的に正の屈折力を有する第1のレンズ群LG1と、第1の瞳面P1と第1の中間像IMI1との間で全体的に正の屈折力を有する第2のレンズ群LG2とに再分割することができる。第1のレンズ群LG1は、投影対物系のテレセントリックな入射瞳を第1の瞳面P1内に結像し、それによって単一のフーリエ変換を実施するフーリエレンズ群方式で作用するように設計される。
【0044】
第1のレンズ群は、物体側に非球面凸表面を有する正のメニスカスレンズL1−1、物体側に非球面凹表面を有する正のメニスカスレンズL1−2、像側に非球面凹表面を有する肉厚の正のメニスカスレンズL1−3、及び第1の瞳面の直ぐ上流の射出面において非球面である負の両凹レンズL1−4を物体面からこの順序で含む。
【0045】
負のレンズL1−4は、第1の瞳面P1に光学的に近くて光線高さ比RHR=CRH/MRHにおいて条件RHR<0.2が当て嵌まる位置に位置決めされた負のレンズ群を形成する。
【0046】
任意的に、透明な平行平面プレートPPを第1の瞳面P1の近くに位置決めすることができる。平行平面プレートPPには、補正要素として作用する1つ又は2つの非球面表面を設けることができる。瞳面に近い位置に起因して、この平行平面プレートPPのあらゆる補正効果は、異なる視野点から発する全ての光線束に対して基本的に同じ影響を有し、それによって補正効果の視野変動が僅かしか又は全く得られない(基本的に視野一定の補正効果)。
【0047】
好ましくは、補正要素は、投影露光システムから対物系を取り外さずに交換することができ、収差を補正するように構成された別の形態を有する別の補正要素と交換することができるように装着される。代替的又は追加的に、補正要素は、最も近い瞳位置又は光学システム内の他のレンズに対して移動又は傾斜し、補正機能を高めるように構成することができる。
【0048】
第2のレンズ群LG2は、第1の瞳面の直ぐ下流に非球面射出凸表面を有する正のメニスカスレンズL1−5、像側に凹表面を有する肉薄の正のメニスカスレンズL1−6、並びに物体側に凹表面を有し、第1の中間像の直ぐ上流に非球面射出表面レンズを有する肉薄の正のメニスカスレンズL1−7を含む。
【0049】
この実施形態では単一の負の両凹レンズL1−4によって形成される負のレンズ群は、レンズL1−4の上流の正のレンズL1−1からL1−3によって生じる像視野曲率に対する効果を相殺し、それによって第1の瞳面P1を平坦化するのに有効であり、それと同時に一方では、フーリエレンズ群LG1の全体的な屈折力には僅かしか寄与しない。従って、負のレンズの負の屈折力を相殺するためにフーリエレンズ群内で付加的な正の屈折力を必要とすることなく、瞳面を平坦化することができる。これは、肉薄のレンズのシステム(フーリエレンズ群LG1を表す)を考えることによって理解することができる。このシステムの全体的な屈折力は、次式で表すことができる。
φ=Σωiφi
ここで、φは、全体的な屈折力であり、φiは、屈折率iの単一のレンズの屈折力であり、ωiは、MRHiがレンズiにおける周辺光線高さであり、MRH1が第1の瞳面における周辺光線高さである時の比MRHi/MRH1である。
【0050】
像視野曲率は、ペッツヴァル和によって表すことができる。
PTZ=Σφi/ni=0
ここで、値PTZ=0は、完全に平坦な(平面)面を表している。
【0051】
像視野曲率を補正するためには、これらの条件に従ってシステム内の負の屈折力は、正の屈折力を補償すべきである。システムの正の全体的屈折力を得るためには、単一の負のレンズ又は複数の負のレンズの位置における周辺光線高さMRHiが、正のレンズにおけるそれぞれの値よりも小さいことが必要である。これらの条件により、一般的に、低い周辺光線高さのところにある負のレンズは、より高い周辺光線高さのところにおける正の屈折力によって達成される像曲率を補償することになる。屈折投影対物系の典型的な「膨らみ−くびれ」構造は、これらの条件から生じる典型的な結果である。結像システムの物体面又は像面の近くに配置された負のレンズ群は、像視野曲率を低減するのに用いることができる。ここで、例えば、投影対物系の入射瞳を第1の瞳面内に結像する瞳結像を考えられたい。この瞳結像では、物体(入射瞳)は、テレセントリックシステムにあって一般的に接近不可能であり、これは物体(入射瞳)が、ほぼ無限遠に位置することによる。しかし、瞳結像における入射瞳の像は、主光線が光軸と交差する光学システムに配置された第1の瞳面である。この第1の瞳面の上流のその近くに負のレンズ群を設けることは、瞳結像の視野曲率を低減するのに用いることができ、すなわち、第1の瞳面を平坦化するのに用いることができる。
【0052】
ここで、図1に示している第1の実施形態の一部の関連する特性を負のレンズ群を持たない図2に示している基準システムREFの対応する特性と比較することにより、フーリエレンズ群内で第1の瞳面に光学的に近く設けられた負のレンズ群の一部の有益な効果を説明する。基準システムREF1では、図1の実施形態のそれぞれの特徴及び特徴群に対応する特徴及び特徴群を同じ参照識別記号で示している。基準システムREFの仕様が表2、表2Aにおいて与えられる。
【0053】
投影対物系内の様々な位置における投影対物系の補正状態を示すために、「視野曲線図」及び「スポットダイヤグラム」を用いることにする。視野曲線図は、近軸タンジェンシャル像位置又は近軸サジタル像位置と各視野高さにおける像平面との間の距離を表示する図である。スポットダイヤグラムは、ある一定の視野点から出現する光線束の像平面との交差点を表示する図である。スポットダイヤグラムでは、幾何学的「RMS R」サイズが次式で与えられる。
RMS R=SQRT(ΣR2i)/k=SQRT(Σ(Xi−X0)2+(Yi−Y0)2)/k
ここで、Xi、Yiは、光線iの像平面におけるx及びy座標であり、kは、光線数であり、X0、Y0は、像面内の光線座標の平均位置である。
【0054】
図3は、図2A及び図2Bのスポットダイヤグラム、並びに図2Cの視野曲線を用いて図2の基準システムREFの第1の瞳面P1の補正状態を示している。有意な像視野曲率が明らかである。第3の瞳面P3(第3の対物系部分OP3内の)の補正状態をスポットダイヤグラム(図4A、図4B)及び視野曲線図(図4C)を用いて示している。図4の図は、有意な程度の非点収差を示している。第1の瞳P1の補正状態と第3の瞳P3の補正状態との大きな差が、図3と図4との比較から同じく明らかである。
【0055】
入射瞳の第1の瞳面上への結像を実施する第1のレンズ群LG1(フーリエレンズ群)のペッツヴァル半径RPは、RP=−139mmである。第3の瞳の結像の像視野曲率は、実質的に過補正され、ペッツヴァル半径RP=+110mmを有する。第3の瞳P3と像面ISの間の最後の正のレンズ群は、主に、必要な像側開口数NAを生じるように機能する。従って、このレンズ群は、強い正の屈折力を有する。基準システムでは、このレンズ群によって生じる像視野曲率寄与は補償することが困難である。図4Cから明らかであるように、タンジェンシャルシェルを平坦化することによって補正の妥協点(compromise)が得られる。
【0056】
以下では、3次の収差は、瞳像の収差を意味する。瞳像の物体は入射瞳であり、これは、物体空間内で無限遠に存在すると仮定する。
【0057】
ザイデル収差の誤差和SA3(3次の球面収差)、CMA3(3次のコマ収差)、AST3(3次の非点収差)、PTZ3(3次のペッツヴァル和)、及びDIS3(3次の歪曲)によって表される3次の収差は、以下の通りである:SA3=−3.279689mm、CMA3=−0.693865mm、AST3=−0.811623mm、PTZ3=−5.011397mm、及びDIS3=−6.331224mm。
【0058】
第1の瞳面の直ぐ上流に負のレンズ群L1−4を含む図1の実施形態では、有意な改善が得られる。第1の瞳面P1の補正状態が、図5A及び図5Bのスポットダイヤグラム、並びに図5Cの視野曲線において与えられる。ザイデル収差和は以下の通りである:SA3=1.087472、CMA3=0.083425、AST3=1.342253、PTZ3=−2.642283、及びDIS3=−2.242963。
【0059】
スポットサイズは、基準システムにおけるものよりも有意に小さいことが明らかである(図3A、3Bと図5A、5Bとの間でスケールが10倍異なることに注意されたい)。更に、タンジェンシャル及びサジタルシェルは、実質的に改善される(図3Cと図5Cとの間でスケールは20倍異なる)。これらのデータは、有意に改善された補正状態を示している。第1の瞳面のペッツヴァル半径RPは、RP=−290mmであり、これは、基準システム(RP=−139mm)と比較した場合に有意な改善である。
【0060】
図6は、対物系の射出面と像面の間の高屈折率液浸流体と併用される時に、λ=248nmにおいて像側開口数NA=1.47を有するように設計された反射屈折投影対物系600の第2の実施形態を示している。この投影対物系は、矩形の26mm×5.5mm像視野に向けて設計される。NA=1.47では、光軸に対して最大の傾きを有する光線の伝播方向と光軸との間で測定される液浸液内の最大光線角度は、72.65°である。
【0061】
対物系部分及びレンズ群の順序は、図1と同じであり、これを同じ参照識別記号を用いて示している。物体面OSと第1の瞳面P1との間でフーリエ変換を実施する第1のレンズ群LG1を図7に詳細に示している。これらの仕様が表6、表6Aにおいて与えられる。
【0062】
第1のレンズ群LG1は、強く湾曲した入射表面及びほぼ平坦な射出表面を有する正の両凸レンズL1−1、物体面に対面する入射凹表面を有する負のメニスカスレンズL1−2、正の両凸レンズL1−3、光軸の周囲に正の屈折力を生じ、レンズの外縁に近い部分内で負の屈折力を生じる強非球面射出表面を有する肉薄の正のレンズL1−4、及び第1の瞳面P1の直ぐ上流のそれに非常に近い単一の負の両凹レンズL1−5によって形成された負の群を物体面OSから第1の瞳面P1へのこの順番で含む。このレンズ群の構造は、2つのP−N型のレンズ組合せを含み、ここで、Pは正の屈折力を表し、Nは負の屈折力を表している。レンズL1−1とL1−2とによって形成される第1のレンズ組合せは、瞳球面収差(PSA)の補正への強い寄与を生じる。負のレンズL1−5は、3次の瞳球面収差(PSA3)及びコマ収差(CMA3)の補正に寄与する。正のレンズL1−3及びL1−4と、負のレンズL1−5とによって形成される第2のP−N組合せは、非点収差(AST3)及び像視野曲率(PTZ3)の補正を保証する。3次のザイデル収差への個々のレンズの寄与を表Aに要約している。
【0063】
(表A)
【0064】
入射瞳の第1の瞳面P1上への結像が良好な補正状態を有することは明らかである。これは、第1の瞳面内の物体高さ分率FBYの関数としてのRMSスポットサイズ(mmでの)の変化の図を示している図8からも明らかである。最良の焦点面は、指定された瞳位置から−0.346mmのところにある。この平面は、図1に関連して解説した非球面平行平面プレートPPのような補正要素に対して好ましい位置を与える。図9の図は、タンジェンシャルシェル及びサジタルシェルの視野変動が、基準システムREFと比較した時に有意に改善される(すなわち、低減する)ことを示している。第1の瞳面は、ペッツヴァル半径RP=−291mmによって表される僅かな曲率しか持たない。
【0065】
図6の実施形態では、第3の対物系部分は、物体結像(物体面OSと、それに対して光学的に共役な像面ISとの間の結像)の球面収差及びコマ収差の補正への有意な寄与を生じる。第3の対物系部分は、第3の瞳面と像面ISの間に、正の前側レンズとして機能する正の両凸レンズL3−10、光軸から離れた周辺帯域内で負の屈折力を有し、光軸を含む中心領域内で正の屈折力を有する帯域レンズL3−11、及び像面の直ぐ上流に正の後側レンズを形成する平凸レンズL3−12をこの順序で含む。帯域レンズL3−11は、回転対称非球面射出表面を有する。帯域レンズL3−11の光学効果を例証するために、図10の図は、横座標上に光線偏向角RDA(度で)を、縦軸上に正規化瞳高さPHを示している。光軸から発する光線束に対して、光線偏向が明らかにされている。光軸(PH=0)の周囲の中央領域と約PH=0.95における瞳縁部(PH=1)との間で偏向の向きは符号を変化させることが明らかである。このレンズは、物体結像の球面収差及びコマ収差に対して強い補正効果を有する。
【0066】
図1又は図6に示している一般的なレイアウトを有する更に別の実施形態を図11に示している。この仕様が表11、図11Aにおいて与えられる。液浸型投影対物系1100は、作動波長λ=193nmに向けて設計され、サイズ26mm×4mmの矩形視野において像側NA=1.43を有する。全てのレンズは、同じ材料、溶融石英(SiO2)から作られる。第1のレンズ群LG1(フーリエレンズ群)の構造を図12に詳細に示している。第1の群は、4つのレンズのみ、すなわち、正の両凸レンズL1−1、正の両凸レンズL1−2、像側に凹表面を有する正のメニスカスレンズL1−3、及び第1の瞳面P1の直ぐ上流に負のレンズ群を形成する負の両凹レンズL1−4を含む。「X」で印している非球面表面は、視野依存及び開口依存の収差の補正を助けるために用いられる。物体面の直後の第1のレンズL1−1の入射側の非球面表面は、特に、歪曲のような視野依存収差の補正に寄与する。瞳面の直ぐ上流の負のレンズL1−4の射出側の非球面表面は、主に瞳収差を基本的に視野依存収差に影響を及ぼすことなく補正するのに有効である。両凸レンズL1−2の射出側の中間非球面は、視野依存収差及び開口依存収差の両方に影響を及ぼす。
【0067】
第1の瞳面P1の補正状態を視野にわたるスポットRMSの変化を示す図13の図によって表しており、タンジェンシャル及びサジタルシェルが図14において与えられる。
【0068】
λ=193nmのUV作動波長に向けて設計された更に別の実施形態の反射屈折投影対物系1500を図15に示している。投影対物系の射出面と像面との間で液浸流体を用いる液浸作動に用いられる時に、矩形の26mm×5mm像視野において像側開口数NA=1.5が得られる。この仕様を表15、表15Aに提供している。
【0069】
折り返し投影対物系1500は、平面の物体面OS(対物面)に配置されたレチクル上のパターン像を平面の像面IS(像平面)上に厳密に2つの実中間像IMI1、IMI2を作成しながら、縮小スケール、例えば、4:1で投影するように設計される。矩形の有効物体視野OF及び像視野IFは軸外であり、すなわち、光軸AXから完全に外れている。第1の屈折対物系部分OP1は、物体面内のパターンを第1の中間像IMI1へと結像するように設計される。第2の反射屈折(屈折/反射)対物系部分OP2は、第1の中間像IMI1を第2の中間像IMI2へと1:(−1)に近い倍率で結像する。第3の屈折対物系部分OP3は、第2の中間像IMI2を像面IS上に強い縮小比で結像する。
【0070】
主光線CRが光軸と交差する位置に、3つの互いに共役な瞳面P1、P2、及びP3が形成される。第1の瞳面P1は、第1の対物系部分内で物体面と第1の中間像の間に形成され、第2の瞳面P2は、第2の対物系部分で第1の中間像と第2の中間像の間に形成され、第3の瞳面P3は、第3の対物系部分内で第2の中間像と像面ISの間に形成される。
【0071】
第2の対物系部分OP2は、単一の凹面ミラーCMを含む。第1の平面折り返しミラーFM1は、物体面から到来する放射線を凹面ミラーCMの方向に反射するように、第1の中間像IMI1に光学的に近く光軸に対して45°の角度で配置される。第1の折り返しミラーの平面ミラー表面に対して直角に位置合わせられた平面ミラー表面を有する第2の折り返しミラーFM2は、凹面ミラーCMから到来する放射線を物体面に対して平行な像面の方向に反射する。
【0072】
折り返しミラーFM1、FM2の各々は、エタンデュ(幾何学的光束)が小さく保たれるように中間像に光学的に近く位置する。中間像は、好ましくは、平面ミラー表面上に位置せず、それによって中間像と光学的に最も近いミラー表面との間に有限の最小距離が生じる。それによってスクラッチ又は不純物のようなミラー表面内のいずれの欠陥も、像面上に鮮明に結像されないことを保証する。
【0073】
第1の対物系部分OP1は、各々が第1の瞳面P1の両側で正の屈折力を有する2つのレンズ群LG1、LG2を含む。第1のレンズ群LG1は、投影対物系のテレセントリックな入射瞳を第1の瞳面P1上に結像し、それによって単一のフーリエ変換を実施するフーリエレンズ群方式で作用するように設計される。
【0074】
図16は、物体面を第1の瞳面P1上に結像する第1のレンズ群LG1(フーリエレンズ群)の拡大詳細図を示している。第1のレンズ群は、物体面に隣接する平行平面プレートPP、肉薄の正のメニスカスレンズL1−1、肉厚の正のメニスカスレンズL1−2、非球面の像側凹表面を有する肉薄の強非球面メニスカスレンズL1−3、肉厚の正のメニスカスレンズL1−4、及び第1の瞳面P1の直ぐ上流のそれに光学的に近い単一の負の両凹レンズL1−5によって形成された負の群を含む。瞳面に向って凹面を成す正のメニスカスレンズは、光線束に対して強い収束効果を生じる強い正の屈折力を有するが、入射表面及び射出表面の同様の半径に起因して、像視野曲率への寄与が僅かしかない。
【0075】
第1の瞳面P1の補正状態を視野にわたるスポットRMSの変化を示す図17の図によって表しており、タンジェンシャル及びサジタルシェルを図18に提供している。
【0076】
好ましい実施形態の上述の説明は、一例として提供したものである。提供した開示内容から、当業者は、本発明及びそれに伴う利点を理解するだけでなく、開示した構造及び方法への明らかで様々な変更及び修正を見出すであろう。従って、全ての変更及び修正は、特許請求の範囲によって定められる本発明及びその均等物の精神及び範囲に収まるように含めることを求めるものである。
【0077】
全ての特許請求の範囲の内容は、引用によって本明細書の一部とする。
【0078】
(表1)
【0079】
(表1A)
【0080】
(表2(基準))
【0081】
(表2A)
【0082】
(表6)
【0083】
(表6A)
【0084】
(表11)
【0085】
(表11A)
【0086】
(表15)
【0087】
(表15A)
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影対物系の物体面に配置された軸外物体視野を投影対物系の像面に配置された軸外像視野上に結像するように配置された複数の光学要素を含む反射屈折投影対物系に関する。
【背景技術】
【0002】
反射屈折投影対物系は、例えば、半導体素子及び他の種類のマイクロデバイスを加工するのに用いられる投影露光システム、特にウェーハスキャナ又はウェーハステッパに用いられ、以下に一般的に「マスク」又は「レチクル」と呼ぶフォトマスク又はレチクル上のパターンを感光コーティングを有する物体上に縮小スケールで超高分解能で投影するように機能する。
【0003】
更に微細な構造を作り出すために、投影対物系の像側開口数(NA)を高めること、及びより短い波長、好ましくは、約260nmより短い波長を有する紫外線を用いることの両方が求められている。しかし、光学要素を加工するのに利用可能なこの波長領域で十分に透明な非常に少ない材料、特に合成石英ガラス及びフッ化物結晶があるだけである。利用可能なこれらの材料のアッベ数は、互いに比較的近くに位置するので、十分良好に色補正された(色収差が補正された)純屈折システムを提供することは困難である。
【0004】
光学リソグラフィでは、比較的大きくて事実上平面の照明視野に対して、高い分解能及び良好な補正状態を得なければならない。あらゆる光学設計に対して問われる可能性がある最も困難な要件は、その光学設計が、特に全屈折設計であった場合に、平坦な像を有することであると指摘されている。平坦な像を達成することは、より強力なレンズ、より長いシステム長、システムのより大きいガラス質量、及びより強いレンズ曲率から生じるより大きく、より高次の像収差をもたらす反対のレンズ屈折力を必要とする。
【0005】
色補正及び像の平坦化の問題を解決するのに役立てるために、従来から凹面ミラーが用いられている。凹面ミラーは、正のレンズと同じく正の屈折力を有するが、反対の符号のペッツヴァル曲率を有する。また凹面ミラーは、色の問題を招かない。従って、上述の種類の高分解能投影対物系を構成するのに、屈折要素と反射要素を組み合わせ、特にレンズと少なくとも1つの凹面ミラーとを組み合わせる反射屈折システムが主に用いられている。
【0006】
残念ながら凹面ミラーは、放射線をちょうどそれが到来した方向に送り返すので、光学設計内に統合することが困難である。機械的問題又はビーム口径食又は瞳掩蔽(pupil obscuration)に起因する問題を引き起こさずに凹面ミラーを統合する知的設計が望ましい。
【0007】
また、DUV(深紫外)及びVUV(真空紫外)用途のための投影対物系において一般的に用いられるフッ化カルシウム及び他の光学材料は、固有の複屈折を提供し、これらの材料に印加される機械的応力に応じた応力複屈折に起因して偏光効果を引き起こす恐れもあるから、一般的に、光学システムを通過する放射線の偏光状態を制御するのは困難である。
【0008】
高い像側開口数NA、及び良好な補正状態を可能にする反射屈折投影対物系の一部の概念は、3つのカスケード(又は連結)結像対物系部分、及び厳密に2つの中間像を含む。第1の屈折対物系部分(略記号「R」)は、物体の第1の実中間像を発生させる。少なくとも1つの凹面ミラーを含む第2の反射屈折又は反射結像対物系部分(略記号「C」)は、第1の中間像から第2の実中間像を発生させる。第3の屈折対物系部分は、第2の中間像を像平面内に結像する。3つの光学的に共役な瞳面が存在するように、各結像対物系部分内に瞳面が形成される。一般的に第1の屈折対物系部分は、その後の結像段階に向けて第1の中間像のサイズ、位置、及び補正状態を適正に定める「中継」システムとして機能する。一般的に第2の対物系部分は、主な像視野曲率量を補正し(ペッツヴァル補正)、設計に依存して色補正への寄与がもたらされる。一般的に第3の対物系部分は、望ましい像側NAを得るために、高密に束ねられたレンズを有する合焦群として最適化される。
【0009】
これらの連結システムのうちの1つの部類は、第2の対物系部分の瞳面に又はそれに光学的に近く位置決めされた単一の凹面ミラーを軸上色収差(CHL)及びペッツヴァル和を補正するためにこの凹面ミラーの前に配置された1つ又はそれよりも多くの負のレンズとの組合せに用いる。物体面と凹面ミラーの間、及び凹面ミラーと像面の間の光線の偏向は、多くの場合に、互いに対して直角に向きが定められた2つの平面折り返しミラーを有する偏向システムによって達成され、これら両方の折り返しミラーは、中間像に光学的に近く位置決めされる。それによって物体面と像面との平行な向きが得られる。入射放射線に対して傾斜して向きが定められた平面折り返しミラーは、回避又は補償することが困難な偏向放射線の偏光状態の変化を招く傾向を有する。平面折り返しミラーを単一の凹面ミラーとの組合せに用いる折り返し反射屈折投影対物系の代表例は、例えば、US2003/0234912A1、US2004/0233405A1、又はWO2005/111689A2に開示されている。
【0010】
本出願人の特許出願US2005/0190435A1又はWO2006/005547A1は、全ての光学要素に対して共通の真っ直ぐな光軸を有する折り返しのない反射屈折投影対物系の様々な例を示している。第2の対物系部分は、互いに対面する2つの凹面ミラーを含んでミラー間空間を形成し、このミラー間空間の内側に少なくとも第1の中間像が位置する。両方の凹面ミラーは、瞳面から光学的に遠隔に位置し、すなわち、それぞれ第1の中間像及び第2の中間像に対して光学的により近い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US2003/0234912A1
【特許文献2】US2004/0233405A1
【特許文献3】WO2005/111689A2
【特許文献4】US2005/0190435A1
【特許文献5】WO2006/005547A1
【特許文献6】US6,995,833B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、異なる視野点における結像収差の補正が容易で真空紫外(VUV)範囲における使用に適するマイクロリソグラフィのための反射屈折投影対物系を提供することである。別の目的は、結像収差の補正に際して視野依存変化を大幅に回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記及び他の目的に対する解決法として、本発明は、1つの考案に従って、物体面に配置された軸外物体視野を投影対物系の像面に配置された軸外像視野上に結像するように配置された複数の光学要素を含む反射屈折投影対物系を提供し、光学要素は、物体面から到来する放射線から第1の中間像を発生させ、かつ第1の瞳面を含む第1の屈折対物系部分と、第1の中間像を第2の中間像へと結像する少なくとも1つの凹面ミラーを含み、かつ第1の瞳面と光学的に共役な第2の瞳面を含む第2の対物系部分と、第2の中間像を像面上に結像し、かつ第1及び第2の瞳面と光学的に共役な第3の瞳面を含む第3の対物系部分とを形成し、物体面と第1の瞳面の間に配置された光学要素は、第1の瞳面に光学的に近く配置された負のレンズ群を含むフーリエレンズ群を形成する。
【0014】
本発明のこの態様によると、第1の瞳面の補正状態は標的的に(in a target manner)影響を受け、同等の従来技術のシステムよりもかなり弱い面曲率しか持たない(曲率半径がかなり大きい)第1の瞳面をもたらす。補正された瞳像は、瞳位置に位置決めされた補正要素によって誘起される補正効果の視野変動を回避することが望ましい。視野曲率は、入射瞳の第1の瞳面への結像の主な収差である。瞳像を補正するためには、視野曲率を補正するための手段を対物系部分内の瞳面の上流に位置決めすべきである。
【0015】
フーリエレンズ群内では屈折力の特定の分配がもたらされ、投影対物系の入射瞳を第1の瞳面内に結像する瞳結像に影響を及ぼす。比較的大きい物体側開口数を有する放射線を第1の瞳面を通過するビームへと集光するには、フーリエレンズ群に全体的な正の屈折力が必要である。それによって像曲率に関して第1の瞳面の補正不足が生じる。第1の瞳面に光学的に近く負のレンズ群を設けることにより、フーリエレンズ群の第1の瞳面の曲率に対する全体的な効果を少なくとも部分的に相殺することができ、第1の瞳面の曲率に対する「平坦化効果」がもたらされる。
【0016】
全ての視野点に対して基本的に一定の収差の補正を行うことが望ましい場合には、1つ又はそれよりも多くの補正要素を瞳面に又は該瞳面に対して光学的に近くに配置することができる。視野にわたる補正効果の変化は、異なる視野点からの光線束の瞳面の近くの経路にも依存する。大きい差の場合には、瞳面に又はその近くに配置された補正要素は、視野依存補正効果を有することができる。瞳面の補正状態が比較的良好な場合であっても、瞳面における異なる光線の入射角から異なる視野点への依存性が依然として存在する。瞳面の補正状態を改善することが望ましい。特に本発明のこの態様は、第1の瞳面の曲率を低減するための手段を提供する。
【0017】
負のレンズ群と瞳面の間に少なくとも1つの(弱い)正のレンズを設けることは可能であるが、平坦化効果は、負のレンズ群と瞳面の間に正のレンズが配置されないように、負のレンズ群が第1の瞳面の直ぐ上流に配置される場合に改善することができる。
【0018】
好ましくは、負のレンズ群の少なくとも1つの負のレンズは、第1の瞳面に非常に近くに又は該瞳面に配置される。負の屈折力が第1の瞳面に対して非常に近くに又は該瞳面に設けられた場合には、フーリエレンズ群の屈折力に対するこの負の屈折力の全体的な影響は比較的小さいが(主光線高さCRHにおける小さい値に起因して)、それと同時に瞳結像の像視野曲率の補正に対する影響は比較的強いものとすることができ、第1の瞳面の曲率に対して平坦化効果が生じる。一部の実施形態では、負のレンズ群は、光線高さ比RHR=CRH/MRHにおいて条件|RHR|<0.2が満たされるように、周辺光線高さMRHが主光線高さCRHよりも実質的に大きい領域に配置された少なくとも1つの負のレンズを含む。好ましくは、条件|RHR|<0.1が成り立つ。
【0019】
一部の実施形態では、負のレンズ群は、単一の負のレンズによって形成され、それによって負の屈折力を第1の瞳面に近い軸上の幅狭な空間内に生成することができる。他の実施形態では、負のレンズ群は、少なくとも1つの負のレンズを含む2つ又はそれよりも多くのレンズによって形成することができ、レンズは組合せで負の屈折力を有する。
【0020】
一部の実施形態では、負のレンズ群は、第1の瞳面の直ぐ上流に負の両凹レンズを含み、好ましくは、この負の両凹レンズが負のレンズ群の唯一のレンズであるように、その上流に正のレンズが、この負の両凹レンズの前に置かれる。それによって第1の瞳面の近くに負の屈折力の標的的な集中(targeted concentration)が得られる。
【0021】
一部の実施形態では、フーリエレンズ群は、第1の瞳面におけるペッツヴァル半径RPが、同等の物体側開口数を有する従来技術のシステムと比較して比較的大きい条件|RP|>150mmに従うように構成される。本明細書に用いるペッツヴァル半径は、第1の瞳面の曲率半径に対応する。ペッツヴァル半径は、フーリエレンズ群のペッツヴァル和1/RPの逆数に比例する。ペッツヴァル半径は、上記よりも有意に大きくし、例えば、200mmよりも大きくし、及び/又は250mmよりも大きくすることができる。
【0022】
一部の実施形態では、開口絞りが第1の瞳面に位置決めされる。開口絞りは、利用される像側開口数NAを調節することを可能にする可変直径を有することができる。開口絞りの直径が、比較的平坦な第1の瞳面において変更された時には、テレセントリック性に対する有意な影響は僅かであるか又は全く発生しないことになるので、可変開口絞りを平面開口絞りとして設計することができる。
【0023】
一部の実施形態では、フーリエレンズ群は、物体面の直後の第1の正のレンズ群(P)、第1の正のレンズ群の直後の第1の負のレンズ群(N)、第1の負のレンズ群の直後の第2の正のレンズ群、及び第2の正のレンズ群の直後にあって第1の瞳面に光学的に近く配置された第2の負のレンズ群から成る。従って、そのようなフーリエレンズ群は、2つの連続するP−N型のレンズ組合せを含む。第1の瞳面の球面収差、非点収差、及び視野曲率のような異なる収差に対する補正効果の有利な分配をこの構造において得ることができる。
【0024】
一部の実施形態では、フーリエレンズ群が、RHR>|0.5|である物体面に対して光学的に近いところに少なくとも1つの非球面表面を含み、更に|RHR|<0.2である第1の瞳面に対して光学的に近いところに少なくとも1つの非球面表面を含むことをもたらすことにより、フーリエレンズ群は、レンズ材料の消耗及び補正効果に関して改善されている。好ましくは、少なくとも1つの非球面表面は、物体面と第1の瞳面の間の中間領域で条件0.2<|RHR|<|0.5|が当て嵌まる領域内に設けられる。視野面(物体面)及び第1の瞳面に近い非球面表面に加えて、中間領域内の非球面表面を設けることができる。
【0025】
一部の実施形態では、高像側開口数を生じる上で大きな要因である第3の対物系部分は、結像過程の球面収差及びコマ収差の補正への有意な寄与を提供する。好ましくは、純屈折のものである第3の対物系部分は、第3の瞳面と像面の間に、正の前側レンズ群と、少なくとも光軸の周囲の周辺帯域内に負の屈折力を有する帯域レンズと、像面の直ぐ上流に投影対物系の最後の光学要素を含む正の後側レンズ群とをこの順序で含むことができる。
【0026】
帯域レンズは、光軸の周囲の中心帯域内に正の屈折力を有することができる。帯域レンズは、負の帯域レンズの中心帯域から周辺帯域へと高まる負の屈折効果を生じるように構成された非球面レンズとして設計される。一部の実施形態では、帯域レンズは、物体面に対面する凹表面を有するメニスカスレンズである。帯域レンズは、最後の光学要素の直ぐ上流に配置することができる。
【0027】
第3のレンズ群のこれらの特徴は、最終中間像を像面上に結像する最終結像部分システムを有する異なる投影対物系において、光学設計の種類及び第1のレンズ群とは関係なく有益である場合がある。
【0028】
本発明は、異なる種類の投影対物系内に組み込むことができる。一部の実施形態では、反射屈折投影対物系は、直列システムとして、すなわち、投影対物系の全ての光学要素に対して共通する1つの真っ直ぐな(折り返しのない)光軸を有する反射屈折投影対物系として設計される。光学的な観点からは、直列システムは、平面折り返しミラーを利用することによって引き起こされる偏光効果のような光学的問題を大幅に回避することができるので好ましいものとすることができる。また製造の観点からも、直列システムは、光学要素のための従来の装着技術を利用することができ、それによって投影対物系の機械的安定性が改善されるように設計することができる。
【0029】
一部の実施形態では、第2の対物系部分は、物体面から到来する放射線を受光するための物体側ミラー群入口と、出現する放射線を像面に向って射出するための像側ミラー群出口とを有するミラー群を有し、このミラー群は、偶数個の凹面ミラーを含む。一部の実施形態では、第2の対物系部分は、厳密に2つの凹面ミラーを有する。第2の対物系部分は、反射屈折のもの(少なくとも1つの凹面ミラーに加えて少なくとも1つの透明なレンズを含む)又は反射結像のもの(ミラーのみを有する)とすることができる。口径食なしに非常に高い像側開口数NA>1で掩蔽のない結像を生成することができる一部の実施形態では、ミラー群の全ての凹面ミラーは、瞳面から光学的に遠隔に位置する。
【0030】
他の実施形態では、第2の対物系部分は、軸上色収差(CHL)を補正してペッツヴァル和補正(シュプマンの原理)に寄与するために、第2の対物系部分の瞳面に又は該瞳面に対して光学的に近く位置決めされた厳密に1つの凹面ミラーを有し、更に凹面ミラーの前の比較的高い周辺光線高さの領域に配置された1つ又はそれよりも多くの負のレンズを有する。投影対物系は、光学面から到来する放射線を凹面ミラーに向けて偏向し、又は凹面ミラーから到来する放射線を像面に向けて偏向するように光軸に対して傾斜された第1の平面折り返しミラー(偏向ミラー)を含むことができる。物体面と像面の平行な向きを可能にするために、第1の平面折り返しミラーの光学的下流に第2の平面折り返しミラーを設け、第1の折り返しミラーに対して直角に向きを定めることができる。平面折り返しミラーを単一の凹面ミラーとの組合せに用いる折り返し反射屈折投影対物系の代表例は、例えば、US2003/0234912A1、US2004/0233405A1、WO2005/111689A2、又はUS6、995、833B2に開示されている。これらのシステムの一般的なレイアウトに関するこれらの文献の開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。
【0031】
以上及び他の特性は、特許請求の範囲においてのみならず、本明細書及び図面においても見ることができ、個々の特徴は、本発明の実施形態として及び他の分野において単独又は部分的組合せのいずれで用いることができ、個々に有利で特許取得可能な実施形態を表すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による投影対物系の第1の実施形態の子午断面図である。
【図2】基準投影対物系の子午断面図である。
【図3A】図2の基準システムの第1の瞳面の補正状態を示す図である。
【図3B】図2の基準システムの第1の瞳面の補正状態を示す図である。
【図3C】図2の基準システムの第1の瞳面の補正状態を示す図である。
【図4A】図2に示す基準システムの第3の瞳面の補正状態を示す図である。
【図4B】図2に示す基準システムの第3の瞳面の補正状態を示す図である。
【図4C】図2に示す基準システムの第3の瞳面の補正状態を示す図である。
【図5A】図1に示す第1の実施形態の第1の瞳面の補正状態を示す図である。
【図5B】図1に示す第1の実施形態の第1の瞳面の補正状態を示す図である。
【図5C】図1に示す第1の実施形態の第1の瞳面の補正状態を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による投影対物系の子午断面図である。
【図7】図6の投影対物系のフーリエレンズ群LG1の拡大詳細図である。
【図8】図6の投影対物系のRMSスポットサイズの視野変動を表す図である。
【図9】図6の実施形態におけるタンジェンシャルシェル及びサジタルシェルの視野変動を示す図である。
【図10】図6における帯域レンズL3−11に対する正規化瞳高さPHからの光線偏向角RDAの依存性の図である。
【図11】反射屈折投影対物系の別の実施形態の子午断面図である。
【図12】図11の実施形態のフーリエレンズ群LG1の拡大詳細図である。
【図13】図11の投影対物系のRMSスポットサイズの視野変動を表す図である。
【図14】図11の実施形態におけるタンジェンシャルシェル及びサジタルシェルの視野変動を示す図である。
【図15】瞳面において単一の凹面ミラーを有する本発明の実施形態による別の投影対物系の子午断面図である。
【図16】図15の実施形態におけるフーリエレンズ群の拡大詳細図である。
【図17】図15の投影対物系のRMSスポットサイズの視野変動を表す図である。
【図18】図15の実施形態におけるタンジェンシャルシェル及びサジタルシェルの視野変動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の好ましい実施形態の説明では、「光軸」という用語は、光学要素の曲率中心を通過する直線又は一連の直線セグメントを意味する。光軸は、折り返しミラー(偏向ミラー)によって折り返すことができる。本明細書で提供する例の場合では、物体は、集積回路の層のパターン、又はいずれか他のパターン、例えば、格子パターンを保持するマスク(レチクル)である。物体の像は、フォトレジスト層で被覆した基板として機能するウェーハ上に投影されるが、液晶ディスプレイの構成要素又は光学格子のための基板のような他の種類の基板を利用することもできる。
【0034】
図内に示している設計の仕様を開示するために表を提供している場合には、単一の表又は複数の表をそれぞれの図と同じ番号で示している。理解を容易にするために、複数の図において対応する特徴を同様の又は等しい参照識別記号で示している。レンズを指している場合に、識別記号L3−2は、第3の対物系部分内の第2のレンズを表している(光の伝播方向に見た時の)。
【0035】
図1は、約λ≒193nmのUV作動波長に向けて設計された反射屈折投影対物系100の第1の実施形態を示している。反射屈折投影対物系100は、平面の物体面OS(対物面)に配置されたレチクル上のパターン像を平面の像面IS(像平面)内に、厳密に2つの実中間像IMI1、IMI2を作成しながら縮小スケール、例えば、4:1で投影するように設計される。有効な物体視野OF及び像視野IFは軸外にあり、すなわち、光軸AXから完全に外れている。第1の屈折対物系部分OP1は、物体面内のパターンを第1の中間像IMI1へと拡大スケールで結像するように設計される。第2の反射結像(純反射)対物系部分OP2は、第1の中間像IMI1を第2の中間像IMI2へと1:1に近い倍率で結像する。第3の屈折対物系部分OP3は、第2の中間像IMI2を像面IS上に高い縮小比で結像する。
【0036】
図1では、投影ビームのビーム経路を辿るのを容易にするために、軸外物体視野OFの外側視野点の主光線CRの経路を太線で示している。本出願の目的では、「主光線」という用語(「プリンシパル・レイ」としても知られている)は、有効に用いられる物体視野OFの最外側視野点(光軸から最も離れた)から入射瞳の中心へと延びる光線を表している。システムの回転対称性に起因して、主光線は、例証目的で図内に示している子午平面内の同等の視野点から選択することができる。基本的に物体側でテレセントリックな投影対物系では、主光線は、光軸に対して平行又は極めて小さい角度で物体面から射出する。結像過程は、周辺光線の軌道によって更に特徴付けられる。本明細書に用いる「周辺光線(marginal ray)」は、軸上物体視野点(光軸上の視野点)から開口絞りの縁部に延びる光線である。周辺光線は、軸外の有効物体視野が用いられる時には、口径食に起因して像形成に寄与することができない。主光線及び周辺光線は、投影対物系の光学特性を特徴付けるように選択される。そのような選択された光線と所定の軸上位置における光軸との間の半径方向距離をそれぞれ「主光線高さ」(CRH)及び「周辺光線高さ」(MRH)で表している。
【0037】
3つの互いに共役な瞳面P1、P2、及びP3が、主光線CRが光軸と交差する位置に形成される。第1の瞳面P1は、第1の対物系部分内で物体面と第1の中間像の間に形成され、第2の瞳面P2は、第2の対物系部分内で第1の中間像と第2の中間像の間に形成され、第3の瞳面P3は、第3の対物系部分内で第2の中間像と像面ISの間に形成される。
【0038】
第2の対物系部分OP2は、物体側に対面する凹ミラー表面を有する第1の凹面ミラーCM1、及び像側に対面する凹ミラー表面を有する凹面ミラーCM2を含む。ミラー表面は、両方とも連続し、又は分断されておらず、すなわち、これらのミラー表面は、反射に用いられる区域内に孔又は内腔を持たない。互いに対面するミラー表面は、反射屈折空洞を形成し、これをミラー間空間とも表し、ミラー間空間は、凹面ミラーによって形成される曲率面によって囲まれる。中間像IMI1、IMI2は、両方とも反射屈折空洞内でミラー表面から十分に離れて位置する。
【0039】
対物系100は回転対称であり、全ての屈折及び反射光学構成要素に共通の1つの真っ直ぐな光軸AXを有する(直列システム)。折り返しミラーは存在しない。偶数回の反射が発生する。物体面と像面とは平行である。像反転はない。凹面ミラーは小さい直径を有し、これらの凹面ミラーを互いに近接させ、これらの凹面ミラーの間に位置する中間像に比較的近接させることを可能にする。凹面ミラーは、両方とも軸対称面の軸外区画として構成されて照らされる。光ビームは、光軸に対面する凹面ミラーの縁部を口径食なしに通過する。両方の凹面ミラーは、瞳面から光学的に遠隔して位置決めされ、その次の中間像に比較的近く位置決めされる。この対物系は、光軸を中心とする掩蔽のない円形の瞳を有し、従って、マイクロリソグラフィのための投影対物系としての使用を可能にする。
【0040】
投影対物系100は、対物系の射出面と像面の間の高屈折率液浸流体と併用される時には、λ=193nmにおいて像側開口数NA=1.55を有する液浸対物系として設計される。この投影対物系は、矩形の26mm×5.5mm像視野に向けて設計され、物体視野半径(物体高さ)63.7mmを有する設計物体視野に向けて補正される。
【0041】
この設計における仕様を表1に要約している。最も左の列は、屈折、反射、又はそうでなければ指定の面の番号を列記し、第2の列は、その面の曲率半径r[mm]を列記し、第3の列は、非球面表面「AS」を示している。4番目の列は、「厚み」と記しているパラメータである、面と次の面の間の距離d[mm]を列記し、5番目の列は、光学要素を加工するのに用いられる材料を列記し、更に6番目の列は、この光学要素の加工に用いられる材料の屈折率を列記している。7番目の列は、光学構成要素の光学的に利用可能で透明な半直径[mm](光学的利用可能半径)を列記している。表における曲率半径r=0は、平面の面を意味している(無限半径を有する)。
【0042】
いくつかの面は、非球面表面である(ASと示している)。表1Aは、非球面表面に関連するデータを列記しており、これらのデータから、次式を用いて非球面表面の表面形態のサジッタ又は立ち上がり高さp(h)を高さhの関数として計算することができる。
p(h)=[((1/r)h2)/(1+SQRT(1−(1+K)(1/r)2h2))]+C1・h4+C2・h6+…
ここで、半径の逆数値(1/r)は、問題とする面の面頂点における曲率であり、hは、この面上の点の光軸からの距離である。従って、サジッタ又は立ち上がり高さp(h)は、z方向、すなわち、光軸に沿って測定した問題とする面の頂点からのその点の距離を表している。定数K、C1、C2等は、表1Aに列記されている。
【0043】
(矩形の)有効物体視野OFを第1の中間像IMI1へと結像する第1の対物系部分OP1は、物体面と第1の瞳面P1との間で全体的に正の屈折力を有する第1のレンズ群LG1と、第1の瞳面P1と第1の中間像IMI1との間で全体的に正の屈折力を有する第2のレンズ群LG2とに再分割することができる。第1のレンズ群LG1は、投影対物系のテレセントリックな入射瞳を第1の瞳面P1内に結像し、それによって単一のフーリエ変換を実施するフーリエレンズ群方式で作用するように設計される。
【0044】
第1のレンズ群は、物体側に非球面凸表面を有する正のメニスカスレンズL1−1、物体側に非球面凹表面を有する正のメニスカスレンズL1−2、像側に非球面凹表面を有する肉厚の正のメニスカスレンズL1−3、及び第1の瞳面の直ぐ上流の射出面において非球面である負の両凹レンズL1−4を物体面からこの順序で含む。
【0045】
負のレンズL1−4は、第1の瞳面P1に光学的に近くて光線高さ比RHR=CRH/MRHにおいて条件RHR<0.2が当て嵌まる位置に位置決めされた負のレンズ群を形成する。
【0046】
任意的に、透明な平行平面プレートPPを第1の瞳面P1の近くに位置決めすることができる。平行平面プレートPPには、補正要素として作用する1つ又は2つの非球面表面を設けることができる。瞳面に近い位置に起因して、この平行平面プレートPPのあらゆる補正効果は、異なる視野点から発する全ての光線束に対して基本的に同じ影響を有し、それによって補正効果の視野変動が僅かしか又は全く得られない(基本的に視野一定の補正効果)。
【0047】
好ましくは、補正要素は、投影露光システムから対物系を取り外さずに交換することができ、収差を補正するように構成された別の形態を有する別の補正要素と交換することができるように装着される。代替的又は追加的に、補正要素は、最も近い瞳位置又は光学システム内の他のレンズに対して移動又は傾斜し、補正機能を高めるように構成することができる。
【0048】
第2のレンズ群LG2は、第1の瞳面の直ぐ下流に非球面射出凸表面を有する正のメニスカスレンズL1−5、像側に凹表面を有する肉薄の正のメニスカスレンズL1−6、並びに物体側に凹表面を有し、第1の中間像の直ぐ上流に非球面射出表面レンズを有する肉薄の正のメニスカスレンズL1−7を含む。
【0049】
この実施形態では単一の負の両凹レンズL1−4によって形成される負のレンズ群は、レンズL1−4の上流の正のレンズL1−1からL1−3によって生じる像視野曲率に対する効果を相殺し、それによって第1の瞳面P1を平坦化するのに有効であり、それと同時に一方では、フーリエレンズ群LG1の全体的な屈折力には僅かしか寄与しない。従って、負のレンズの負の屈折力を相殺するためにフーリエレンズ群内で付加的な正の屈折力を必要とすることなく、瞳面を平坦化することができる。これは、肉薄のレンズのシステム(フーリエレンズ群LG1を表す)を考えることによって理解することができる。このシステムの全体的な屈折力は、次式で表すことができる。
φ=Σωiφi
ここで、φは、全体的な屈折力であり、φiは、屈折率iの単一のレンズの屈折力であり、ωiは、MRHiがレンズiにおける周辺光線高さであり、MRH1が第1の瞳面における周辺光線高さである時の比MRHi/MRH1である。
【0050】
像視野曲率は、ペッツヴァル和によって表すことができる。
PTZ=Σφi/ni=0
ここで、値PTZ=0は、完全に平坦な(平面)面を表している。
【0051】
像視野曲率を補正するためには、これらの条件に従ってシステム内の負の屈折力は、正の屈折力を補償すべきである。システムの正の全体的屈折力を得るためには、単一の負のレンズ又は複数の負のレンズの位置における周辺光線高さMRHiが、正のレンズにおけるそれぞれの値よりも小さいことが必要である。これらの条件により、一般的に、低い周辺光線高さのところにある負のレンズは、より高い周辺光線高さのところにおける正の屈折力によって達成される像曲率を補償することになる。屈折投影対物系の典型的な「膨らみ−くびれ」構造は、これらの条件から生じる典型的な結果である。結像システムの物体面又は像面の近くに配置された負のレンズ群は、像視野曲率を低減するのに用いることができる。ここで、例えば、投影対物系の入射瞳を第1の瞳面内に結像する瞳結像を考えられたい。この瞳結像では、物体(入射瞳)は、テレセントリックシステムにあって一般的に接近不可能であり、これは物体(入射瞳)が、ほぼ無限遠に位置することによる。しかし、瞳結像における入射瞳の像は、主光線が光軸と交差する光学システムに配置された第1の瞳面である。この第1の瞳面の上流のその近くに負のレンズ群を設けることは、瞳結像の視野曲率を低減するのに用いることができ、すなわち、第1の瞳面を平坦化するのに用いることができる。
【0052】
ここで、図1に示している第1の実施形態の一部の関連する特性を負のレンズ群を持たない図2に示している基準システムREFの対応する特性と比較することにより、フーリエレンズ群内で第1の瞳面に光学的に近く設けられた負のレンズ群の一部の有益な効果を説明する。基準システムREF1では、図1の実施形態のそれぞれの特徴及び特徴群に対応する特徴及び特徴群を同じ参照識別記号で示している。基準システムREFの仕様が表2、表2Aにおいて与えられる。
【0053】
投影対物系内の様々な位置における投影対物系の補正状態を示すために、「視野曲線図」及び「スポットダイヤグラム」を用いることにする。視野曲線図は、近軸タンジェンシャル像位置又は近軸サジタル像位置と各視野高さにおける像平面との間の距離を表示する図である。スポットダイヤグラムは、ある一定の視野点から出現する光線束の像平面との交差点を表示する図である。スポットダイヤグラムでは、幾何学的「RMS R」サイズが次式で与えられる。
RMS R=SQRT(ΣR2i)/k=SQRT(Σ(Xi−X0)2+(Yi−Y0)2)/k
ここで、Xi、Yiは、光線iの像平面におけるx及びy座標であり、kは、光線数であり、X0、Y0は、像面内の光線座標の平均位置である。
【0054】
図3は、図2A及び図2Bのスポットダイヤグラム、並びに図2Cの視野曲線を用いて図2の基準システムREFの第1の瞳面P1の補正状態を示している。有意な像視野曲率が明らかである。第3の瞳面P3(第3の対物系部分OP3内の)の補正状態をスポットダイヤグラム(図4A、図4B)及び視野曲線図(図4C)を用いて示している。図4の図は、有意な程度の非点収差を示している。第1の瞳P1の補正状態と第3の瞳P3の補正状態との大きな差が、図3と図4との比較から同じく明らかである。
【0055】
入射瞳の第1の瞳面上への結像を実施する第1のレンズ群LG1(フーリエレンズ群)のペッツヴァル半径RPは、RP=−139mmである。第3の瞳の結像の像視野曲率は、実質的に過補正され、ペッツヴァル半径RP=+110mmを有する。第3の瞳P3と像面ISの間の最後の正のレンズ群は、主に、必要な像側開口数NAを生じるように機能する。従って、このレンズ群は、強い正の屈折力を有する。基準システムでは、このレンズ群によって生じる像視野曲率寄与は補償することが困難である。図4Cから明らかであるように、タンジェンシャルシェルを平坦化することによって補正の妥協点(compromise)が得られる。
【0056】
以下では、3次の収差は、瞳像の収差を意味する。瞳像の物体は入射瞳であり、これは、物体空間内で無限遠に存在すると仮定する。
【0057】
ザイデル収差の誤差和SA3(3次の球面収差)、CMA3(3次のコマ収差)、AST3(3次の非点収差)、PTZ3(3次のペッツヴァル和)、及びDIS3(3次の歪曲)によって表される3次の収差は、以下の通りである:SA3=−3.279689mm、CMA3=−0.693865mm、AST3=−0.811623mm、PTZ3=−5.011397mm、及びDIS3=−6.331224mm。
【0058】
第1の瞳面の直ぐ上流に負のレンズ群L1−4を含む図1の実施形態では、有意な改善が得られる。第1の瞳面P1の補正状態が、図5A及び図5Bのスポットダイヤグラム、並びに図5Cの視野曲線において与えられる。ザイデル収差和は以下の通りである:SA3=1.087472、CMA3=0.083425、AST3=1.342253、PTZ3=−2.642283、及びDIS3=−2.242963。
【0059】
スポットサイズは、基準システムにおけるものよりも有意に小さいことが明らかである(図3A、3Bと図5A、5Bとの間でスケールが10倍異なることに注意されたい)。更に、タンジェンシャル及びサジタルシェルは、実質的に改善される(図3Cと図5Cとの間でスケールは20倍異なる)。これらのデータは、有意に改善された補正状態を示している。第1の瞳面のペッツヴァル半径RPは、RP=−290mmであり、これは、基準システム(RP=−139mm)と比較した場合に有意な改善である。
【0060】
図6は、対物系の射出面と像面の間の高屈折率液浸流体と併用される時に、λ=248nmにおいて像側開口数NA=1.47を有するように設計された反射屈折投影対物系600の第2の実施形態を示している。この投影対物系は、矩形の26mm×5.5mm像視野に向けて設計される。NA=1.47では、光軸に対して最大の傾きを有する光線の伝播方向と光軸との間で測定される液浸液内の最大光線角度は、72.65°である。
【0061】
対物系部分及びレンズ群の順序は、図1と同じであり、これを同じ参照識別記号を用いて示している。物体面OSと第1の瞳面P1との間でフーリエ変換を実施する第1のレンズ群LG1を図7に詳細に示している。これらの仕様が表6、表6Aにおいて与えられる。
【0062】
第1のレンズ群LG1は、強く湾曲した入射表面及びほぼ平坦な射出表面を有する正の両凸レンズL1−1、物体面に対面する入射凹表面を有する負のメニスカスレンズL1−2、正の両凸レンズL1−3、光軸の周囲に正の屈折力を生じ、レンズの外縁に近い部分内で負の屈折力を生じる強非球面射出表面を有する肉薄の正のレンズL1−4、及び第1の瞳面P1の直ぐ上流のそれに非常に近い単一の負の両凹レンズL1−5によって形成された負の群を物体面OSから第1の瞳面P1へのこの順番で含む。このレンズ群の構造は、2つのP−N型のレンズ組合せを含み、ここで、Pは正の屈折力を表し、Nは負の屈折力を表している。レンズL1−1とL1−2とによって形成される第1のレンズ組合せは、瞳球面収差(PSA)の補正への強い寄与を生じる。負のレンズL1−5は、3次の瞳球面収差(PSA3)及びコマ収差(CMA3)の補正に寄与する。正のレンズL1−3及びL1−4と、負のレンズL1−5とによって形成される第2のP−N組合せは、非点収差(AST3)及び像視野曲率(PTZ3)の補正を保証する。3次のザイデル収差への個々のレンズの寄与を表Aに要約している。
【0063】
(表A)
【0064】
入射瞳の第1の瞳面P1上への結像が良好な補正状態を有することは明らかである。これは、第1の瞳面内の物体高さ分率FBYの関数としてのRMSスポットサイズ(mmでの)の変化の図を示している図8からも明らかである。最良の焦点面は、指定された瞳位置から−0.346mmのところにある。この平面は、図1に関連して解説した非球面平行平面プレートPPのような補正要素に対して好ましい位置を与える。図9の図は、タンジェンシャルシェル及びサジタルシェルの視野変動が、基準システムREFと比較した時に有意に改善される(すなわち、低減する)ことを示している。第1の瞳面は、ペッツヴァル半径RP=−291mmによって表される僅かな曲率しか持たない。
【0065】
図6の実施形態では、第3の対物系部分は、物体結像(物体面OSと、それに対して光学的に共役な像面ISとの間の結像)の球面収差及びコマ収差の補正への有意な寄与を生じる。第3の対物系部分は、第3の瞳面と像面ISの間に、正の前側レンズとして機能する正の両凸レンズL3−10、光軸から離れた周辺帯域内で負の屈折力を有し、光軸を含む中心領域内で正の屈折力を有する帯域レンズL3−11、及び像面の直ぐ上流に正の後側レンズを形成する平凸レンズL3−12をこの順序で含む。帯域レンズL3−11は、回転対称非球面射出表面を有する。帯域レンズL3−11の光学効果を例証するために、図10の図は、横座標上に光線偏向角RDA(度で)を、縦軸上に正規化瞳高さPHを示している。光軸から発する光線束に対して、光線偏向が明らかにされている。光軸(PH=0)の周囲の中央領域と約PH=0.95における瞳縁部(PH=1)との間で偏向の向きは符号を変化させることが明らかである。このレンズは、物体結像の球面収差及びコマ収差に対して強い補正効果を有する。
【0066】
図1又は図6に示している一般的なレイアウトを有する更に別の実施形態を図11に示している。この仕様が表11、図11Aにおいて与えられる。液浸型投影対物系1100は、作動波長λ=193nmに向けて設計され、サイズ26mm×4mmの矩形視野において像側NA=1.43を有する。全てのレンズは、同じ材料、溶融石英(SiO2)から作られる。第1のレンズ群LG1(フーリエレンズ群)の構造を図12に詳細に示している。第1の群は、4つのレンズのみ、すなわち、正の両凸レンズL1−1、正の両凸レンズL1−2、像側に凹表面を有する正のメニスカスレンズL1−3、及び第1の瞳面P1の直ぐ上流に負のレンズ群を形成する負の両凹レンズL1−4を含む。「X」で印している非球面表面は、視野依存及び開口依存の収差の補正を助けるために用いられる。物体面の直後の第1のレンズL1−1の入射側の非球面表面は、特に、歪曲のような視野依存収差の補正に寄与する。瞳面の直ぐ上流の負のレンズL1−4の射出側の非球面表面は、主に瞳収差を基本的に視野依存収差に影響を及ぼすことなく補正するのに有効である。両凸レンズL1−2の射出側の中間非球面は、視野依存収差及び開口依存収差の両方に影響を及ぼす。
【0067】
第1の瞳面P1の補正状態を視野にわたるスポットRMSの変化を示す図13の図によって表しており、タンジェンシャル及びサジタルシェルが図14において与えられる。
【0068】
λ=193nmのUV作動波長に向けて設計された更に別の実施形態の反射屈折投影対物系1500を図15に示している。投影対物系の射出面と像面との間で液浸流体を用いる液浸作動に用いられる時に、矩形の26mm×5mm像視野において像側開口数NA=1.5が得られる。この仕様を表15、表15Aに提供している。
【0069】
折り返し投影対物系1500は、平面の物体面OS(対物面)に配置されたレチクル上のパターン像を平面の像面IS(像平面)上に厳密に2つの実中間像IMI1、IMI2を作成しながら、縮小スケール、例えば、4:1で投影するように設計される。矩形の有効物体視野OF及び像視野IFは軸外であり、すなわち、光軸AXから完全に外れている。第1の屈折対物系部分OP1は、物体面内のパターンを第1の中間像IMI1へと結像するように設計される。第2の反射屈折(屈折/反射)対物系部分OP2は、第1の中間像IMI1を第2の中間像IMI2へと1:(−1)に近い倍率で結像する。第3の屈折対物系部分OP3は、第2の中間像IMI2を像面IS上に強い縮小比で結像する。
【0070】
主光線CRが光軸と交差する位置に、3つの互いに共役な瞳面P1、P2、及びP3が形成される。第1の瞳面P1は、第1の対物系部分内で物体面と第1の中間像の間に形成され、第2の瞳面P2は、第2の対物系部分で第1の中間像と第2の中間像の間に形成され、第3の瞳面P3は、第3の対物系部分内で第2の中間像と像面ISの間に形成される。
【0071】
第2の対物系部分OP2は、単一の凹面ミラーCMを含む。第1の平面折り返しミラーFM1は、物体面から到来する放射線を凹面ミラーCMの方向に反射するように、第1の中間像IMI1に光学的に近く光軸に対して45°の角度で配置される。第1の折り返しミラーの平面ミラー表面に対して直角に位置合わせられた平面ミラー表面を有する第2の折り返しミラーFM2は、凹面ミラーCMから到来する放射線を物体面に対して平行な像面の方向に反射する。
【0072】
折り返しミラーFM1、FM2の各々は、エタンデュ(幾何学的光束)が小さく保たれるように中間像に光学的に近く位置する。中間像は、好ましくは、平面ミラー表面上に位置せず、それによって中間像と光学的に最も近いミラー表面との間に有限の最小距離が生じる。それによってスクラッチ又は不純物のようなミラー表面内のいずれの欠陥も、像面上に鮮明に結像されないことを保証する。
【0073】
第1の対物系部分OP1は、各々が第1の瞳面P1の両側で正の屈折力を有する2つのレンズ群LG1、LG2を含む。第1のレンズ群LG1は、投影対物系のテレセントリックな入射瞳を第1の瞳面P1上に結像し、それによって単一のフーリエ変換を実施するフーリエレンズ群方式で作用するように設計される。
【0074】
図16は、物体面を第1の瞳面P1上に結像する第1のレンズ群LG1(フーリエレンズ群)の拡大詳細図を示している。第1のレンズ群は、物体面に隣接する平行平面プレートPP、肉薄の正のメニスカスレンズL1−1、肉厚の正のメニスカスレンズL1−2、非球面の像側凹表面を有する肉薄の強非球面メニスカスレンズL1−3、肉厚の正のメニスカスレンズL1−4、及び第1の瞳面P1の直ぐ上流のそれに光学的に近い単一の負の両凹レンズL1−5によって形成された負の群を含む。瞳面に向って凹面を成す正のメニスカスレンズは、光線束に対して強い収束効果を生じる強い正の屈折力を有するが、入射表面及び射出表面の同様の半径に起因して、像視野曲率への寄与が僅かしかない。
【0075】
第1の瞳面P1の補正状態を視野にわたるスポットRMSの変化を示す図17の図によって表しており、タンジェンシャル及びサジタルシェルを図18に提供している。
【0076】
好ましい実施形態の上述の説明は、一例として提供したものである。提供した開示内容から、当業者は、本発明及びそれに伴う利点を理解するだけでなく、開示した構造及び方法への明らかで様々な変更及び修正を見出すであろう。従って、全ての変更及び修正は、特許請求の範囲によって定められる本発明及びその均等物の精神及び範囲に収まるように含めることを求めるものである。
【0077】
全ての特許請求の範囲の内容は、引用によって本明細書の一部とする。
【0078】
(表1)
【0079】
(表1A)
【0080】
(表2(基準))
【0081】
(表2A)
【0082】
(表6)
【0083】
(表6A)
【0084】
(表11)
【0085】
(表11A)
【0086】
(表15)
【0087】
(表15A)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体面に配置された軸外物体視野を投影対物系の像面に配置された軸外像視野上に結像するように配置された複数の光学要素、
を含み、
前記光学要素は、
前記物体面から到来する放射線から第1の中間像を発生させ、かつ第1の瞳面を含む第1の屈折対物系部分、
前記第1の中間像を第2の中間像へと結像する少なくとも1つの凹面ミラーを含み、かつ前記第1の瞳面と光学的に共役な第2の瞳面を含む第2の対物系部分、及び
前記第2の中間像を前記像面上に結像し、かつ前記第1及び第2の瞳面と光学的に共役な第3の瞳面を含む第3の対物系部分、
を形成し、
前記物体面と前記第1の瞳面との間に配置された光学要素が、該第1の瞳面に対して光学的に近くに配置された負のレンズ群を含むフーリエレンズ群を形成する、
ことを特徴とする反射屈折投影対物系。
【請求項2】
前記負のレンズ群は、正のレンズが該負のレンズ群の負のレンズと前記第1の瞳面との間に配置されないように、該第1の瞳面の直ぐ上流に配置されることを特徴とする請求項1に記載の投影対物系。
【請求項3】
前記負のレンズ群は、光線高さ比RHR=CRH/MRHに対して条件|RHR|<0.2が満たされるように周辺光線高さMRHが主光線高さCRHよりもかなり大きい領域に配置された少なくとも1つの負のレンズを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の投影対物系。
【請求項4】
前記負のレンズ群は、単一の負のレンズによって形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項5】
前記負のレンズ群は、前記第1の瞳面の直ぐ上流に負の両凹レンズを含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項6】
前記負のレンズ群は、正のレンズが前記負の両凹レンズと前記第1の瞳面との間に配置されないような該第1の瞳面の直ぐ上流に配置された単一の負の両凹レンズであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項7】
前記フーリエレンズ群は、前記第1の瞳面におけるペッツヴァル半径RPが条件:|RP|>150mmに従うように構成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項8】
前記フーリエレンズ群は、前記物体面の直ぐ下流の第1の正のレンズ群、該第1の正のレンズ群の直後の第1の負のレンズ群、該第1の負のレンズ群の直後の第2の正のレンズ群、及び該第2の正のレンズ群の直後にあって前記第1の瞳面に対して光学的に近くに配置された第2の負のレンズ群から成ることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項9】
前記第1の負のレンズ群は、前記光線高さ比RHRに対して条件|RHR|>0.5が成り立つ領域において前記物体面に対して光学的に近くに配置されることを特徴とする請求項8に記載の投影対物系。
【請求項10】
前記第1の負のレンズ群は、前記物体面に対面する凹面を有する負のメニスカスレンズを含むことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の投影対物系。
【請求項11】
前記フーリエレンズ群は、前記光線高さ比RHRに対して条件|RHR|>0.5が成り立つ前記物体面に光学的に近い少なくとも1つの非球面表面と、条件|RHR|<0.2が成り立つ前記第1の瞳面に光学的に近い少なくとも1つの非球面表面とを含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項12】
前記フーリエレンズ群は、前記光線高さ比RHRに対して条件0.2<|RHR|<0.5が成り立つ領域において、前記物体面と前記第1の瞳面との間の中間領域に少なくとも1つの非球面表面を含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項13】
開口絞りが、前記第1の瞳面に位置決めされることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項14】
前記第1の瞳面に挿入されるか、又は該第1の瞳面に光学的に近い瞳空間に挿入されるように構成された少なくとも1つの補正要素を含むことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項15】
前記補正要素は、少なくとも1つの非球面表面を有する平面プレートであることを特徴とする請求項14に記載の投影対物系。
【請求項16】
第1の形状を有する補正要素が、投影露光装置から投影対物系を取り外すことなく、該第1の形状とは異なる第2の形状を有する別の補正要素と交換されるように構成されることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の投影対物系。
【請求項17】
前記補正要素は、最も近い瞳位置に対して移動又は傾斜されるように構成されることを特徴とする請求項14、請求項15、又は請求項16に記載の投影対物系。
【請求項18】
前記第3の対物系部分は、前記第3の瞳面と前記像面の間に、
正の前側レンズ群、
少なくとも光軸の周囲の周辺帯域において負の屈折力を有する帯域レンズ、及び
前記像面の直ぐ上流に投影対物系の最後の光学要素を含む正の後側レンズ群、
をこの順序で含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項19】
前記帯域レンズは、正の屈折力を有する中心帯域を有することを特徴とする請求項18に記載の投影対物系。
【請求項20】
前記帯域レンズは、前記負の帯域レンズの中心帯域から周辺帯域へと高まる負の屈折効果をもたらすように構成された非球面レンズであることを特徴とする請求項18又は請求項19に記載の投影対物系。
【請求項21】
前記帯域レンズは、前記物体面に対面する凹表面を有するメニスカスレンズであることを特徴とする請求項18、請求項19、又は請求項20に記載の投影対物系。
【請求項22】
反射屈折投影対物系の全ての光学要素に共通する1つの真っ直ぐな光軸を有する直列システムとして設計されることを特徴とする請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項23】
前記第2の対物系部分は、厳密に2つの凹面ミラーを有することを特徴とする請求項22に記載の投影対物系。
【請求項24】
前記第2の対物系部分は、前記第2の瞳面に又は該第2の瞳面に対して光学的に近くに位置決めされた厳密に1つの凹面ミラーと、大きい周辺光線高さの領域で該凹面ミラーの前の配置された1つ又はそれよりも多くの負のレンズとを有することを特徴とする請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項25】
前記第3の対物系部分は、純屈折性であることを特徴とする請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項26】
最後の光学要素と前記像面との間の像側作動距離が、1よりもかなり大きい屈折率を有する液浸媒体で充填されるように、収差に関して適応させた液浸対物系として設計されることを特徴とする請求項1から請求項25のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項27】
液浸媒体と共に用いられる時に像側開口数NA>1.1を有することを特徴とする請求項1から請求項26のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項28】
像側開口数NA≧1.4を有することを特徴とする請求項27に記載の投影対物系。
【請求項29】
約120nmから約260nmに及ぶ波長範囲に収まる紫外線を用いる使用に向けて構成されることを特徴とする請求項1から請求項28のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項30】
照明システム及び反射屈折投影対物系を有するマイクロリソグラフィにおける使用のための投影露光システムであって、
投影対物系が、請求項1から請求項29のいずれか1項に従って構成される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項31】
半導体素子又は他の種類のマイクロデバイスを加工する方法であって、
パターンを有するマスクを準備する段階と、
規定の波長を有する紫外線で前記マスクを照明する段階と、
請求項1から請求項29のいずれか1項に記載の反射屈折投影対物系を用いて、前記パターンの像を投影対物系の像平面の近くに配置された感光基板上に投影する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
物体面に配置された軸外物体視野を投影対物系の像面に配置された軸外像視野上に結像するように配置された複数の光学要素、
を含み、
前記光学要素は、
前記物体面から到来する放射線から第1の中間像を発生させ、かつ第1の瞳面を含む第1の屈折対物系部分、
前記第1の中間像を第2の中間像へと結像する少なくとも1つの凹面ミラーを含み、かつ前記第1の瞳面と光学的に共役な第2の瞳面を含む第2の対物系部分、及び
前記第2の中間像を前記像面上に結像し、かつ前記第1及び第2の瞳面と光学的に共役な第3の瞳面を含む第3の対物系部分、
を形成し、
前記物体面と前記第1の瞳面との間に配置された光学要素が、該第1の瞳面に対して光学的に近くに配置された負のレンズ群を含むフーリエレンズ群を形成する、
ことを特徴とする反射屈折投影対物系。
【請求項2】
前記負のレンズ群は、正のレンズが該負のレンズ群の負のレンズと前記第1の瞳面との間に配置されないように、該第1の瞳面の直ぐ上流に配置されることを特徴とする請求項1に記載の投影対物系。
【請求項3】
前記負のレンズ群は、光線高さ比RHR=CRH/MRHに対して条件|RHR|<0.2が満たされるように周辺光線高さMRHが主光線高さCRHよりもかなり大きい領域に配置された少なくとも1つの負のレンズを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の投影対物系。
【請求項4】
前記負のレンズ群は、単一の負のレンズによって形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項5】
前記負のレンズ群は、前記第1の瞳面の直ぐ上流に負の両凹レンズを含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項6】
前記負のレンズ群は、正のレンズが前記負の両凹レンズと前記第1の瞳面との間に配置されないような該第1の瞳面の直ぐ上流に配置された単一の負の両凹レンズであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項7】
前記フーリエレンズ群は、前記第1の瞳面におけるペッツヴァル半径RPが条件:|RP|>150mmに従うように構成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項8】
前記フーリエレンズ群は、前記物体面の直ぐ下流の第1の正のレンズ群、該第1の正のレンズ群の直後の第1の負のレンズ群、該第1の負のレンズ群の直後の第2の正のレンズ群、及び該第2の正のレンズ群の直後にあって前記第1の瞳面に対して光学的に近くに配置された第2の負のレンズ群から成ることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項9】
前記第1の負のレンズ群は、前記光線高さ比RHRに対して条件|RHR|>0.5が成り立つ領域において前記物体面に対して光学的に近くに配置されることを特徴とする請求項8に記載の投影対物系。
【請求項10】
前記第1の負のレンズ群は、前記物体面に対面する凹面を有する負のメニスカスレンズを含むことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の投影対物系。
【請求項11】
前記フーリエレンズ群は、前記光線高さ比RHRに対して条件|RHR|>0.5が成り立つ前記物体面に光学的に近い少なくとも1つの非球面表面と、条件|RHR|<0.2が成り立つ前記第1の瞳面に光学的に近い少なくとも1つの非球面表面とを含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項12】
前記フーリエレンズ群は、前記光線高さ比RHRに対して条件0.2<|RHR|<0.5が成り立つ領域において、前記物体面と前記第1の瞳面との間の中間領域に少なくとも1つの非球面表面を含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項13】
開口絞りが、前記第1の瞳面に位置決めされることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項14】
前記第1の瞳面に挿入されるか、又は該第1の瞳面に光学的に近い瞳空間に挿入されるように構成された少なくとも1つの補正要素を含むことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項15】
前記補正要素は、少なくとも1つの非球面表面を有する平面プレートであることを特徴とする請求項14に記載の投影対物系。
【請求項16】
第1の形状を有する補正要素が、投影露光装置から投影対物系を取り外すことなく、該第1の形状とは異なる第2の形状を有する別の補正要素と交換されるように構成されることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の投影対物系。
【請求項17】
前記補正要素は、最も近い瞳位置に対して移動又は傾斜されるように構成されることを特徴とする請求項14、請求項15、又は請求項16に記載の投影対物系。
【請求項18】
前記第3の対物系部分は、前記第3の瞳面と前記像面の間に、
正の前側レンズ群、
少なくとも光軸の周囲の周辺帯域において負の屈折力を有する帯域レンズ、及び
前記像面の直ぐ上流に投影対物系の最後の光学要素を含む正の後側レンズ群、
をこの順序で含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項19】
前記帯域レンズは、正の屈折力を有する中心帯域を有することを特徴とする請求項18に記載の投影対物系。
【請求項20】
前記帯域レンズは、前記負の帯域レンズの中心帯域から周辺帯域へと高まる負の屈折効果をもたらすように構成された非球面レンズであることを特徴とする請求項18又は請求項19に記載の投影対物系。
【請求項21】
前記帯域レンズは、前記物体面に対面する凹表面を有するメニスカスレンズであることを特徴とする請求項18、請求項19、又は請求項20に記載の投影対物系。
【請求項22】
反射屈折投影対物系の全ての光学要素に共通する1つの真っ直ぐな光軸を有する直列システムとして設計されることを特徴とする請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項23】
前記第2の対物系部分は、厳密に2つの凹面ミラーを有することを特徴とする請求項22に記載の投影対物系。
【請求項24】
前記第2の対物系部分は、前記第2の瞳面に又は該第2の瞳面に対して光学的に近くに位置決めされた厳密に1つの凹面ミラーと、大きい周辺光線高さの領域で該凹面ミラーの前の配置された1つ又はそれよりも多くの負のレンズとを有することを特徴とする請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項25】
前記第3の対物系部分は、純屈折性であることを特徴とする請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項26】
最後の光学要素と前記像面との間の像側作動距離が、1よりもかなり大きい屈折率を有する液浸媒体で充填されるように、収差に関して適応させた液浸対物系として設計されることを特徴とする請求項1から請求項25のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項27】
液浸媒体と共に用いられる時に像側開口数NA>1.1を有することを特徴とする請求項1から請求項26のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項28】
像側開口数NA≧1.4を有することを特徴とする請求項27に記載の投影対物系。
【請求項29】
約120nmから約260nmに及ぶ波長範囲に収まる紫外線を用いる使用に向けて構成されることを特徴とする請求項1から請求項28のいずれか1項に記載の投影対物系。
【請求項30】
照明システム及び反射屈折投影対物系を有するマイクロリソグラフィにおける使用のための投影露光システムであって、
投影対物系が、請求項1から請求項29のいずれか1項に従って構成される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項31】
半導体素子又は他の種類のマイクロデバイスを加工する方法であって、
パターンを有するマスクを準備する段階と、
規定の波長を有する紫外線で前記マスクを照明する段階と、
請求項1から請求項29のいずれか1項に記載の反射屈折投影対物系を用いて、前記パターンの像を投影対物系の像平面の近くに配置された感光基板上に投影する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−33286(P2013−33286A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−240860(P2012−240860)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【分割の表示】特願2009−551916(P2009−551916)の分割
【原出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【分割の表示】特願2009−551916(P2009−551916)の分割
【原出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】
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