説明

知識作成支援装置

【課題】 検査を行なうのに有効・最適な測定条件を簡単に見つけることができる知識作成支援装置を提供すること
【解決手段】 測定条件を変えて取得した複数の波形データに対し、特徴量とパラメータの所定の組み合わせについて求めたそれぞれの特徴量値の集合であるプロファイルを求めるプロファイル演算部15と、そのプロファイル演算手段で求めた各測定条件ごとのプロファイルを複数同時に表示するプロファイル一括表示部19と、を備えた。プロファイル一括表示部は、個々の測定条件に基づくプロファイルについては特徴量の軸とパラメータの軸からなる2軸の直交座標系で表示するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査対象から取得した波形データに対し、その波形データの特徴を表す特徴量を演算して得られた特徴量演算結果に基づいて良否判定を行なう検査装置に設定するための、その良否判定に有効な波形データを取得するための測定条件を決定する際の情報を提供する知識作成支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や家電製品などには、モータが組み込まれた回転機器が非常に多く用いられている。例えば自動車を例にとってみると、エンジン,パワーステアリング,パワーシート,ミッションその他の至る所に回転機器が実装されている。また、家電製品は、冷蔵庫,エアコン,洗濯機その他各種の製品がある。係る回転機器が実際に稼働した場合、モータ等の回転に伴って音が発生する。
【0003】
係る音は、正常な動作に伴い必然的に発生するものもあれば、不良に伴い発生する音もある。不良に伴う異常音の発生原因は、ベアリングの異常,内部の異常接触,アンバランス,異物混入などがある。例えば、ギヤ1回転について1度の頻度で異常音が発生する原因は、ギヤの欠け,異物のかみ込み,スポット傷,モータ内部の回転部と固定部が回転中の一瞬だけこすれ合うことなどがある。また、人が不快と感じる音は、例えば人間の可聴範囲である20Hzから20kHzの中で様々な音がある。不快と感じる音の周波数の一例としては、例えば約15kHz程度のものがある。従って、係る所定の周波数成分の音が発生している場合も異常音となる。もちろん、異常音はこの周波数(15kHz)に限らない。
【0004】
係る不良に伴う音は、不快であるばかりでなく、さらなる故障を発生させるおそれもある。そこで、それら各製品に対する品質保証を目的とし、生産工場においては、通常検査員による聴覚や触覚などの五感に頼った「官能検査」を行ない、異常音の有無の判断を行なっている。具体的には、耳で聞いたり、手で触って振動を確認したりすることによって行なっている。ここで官能検査とは、人間の感覚器官が感知できる属性を人間の感覚器官そのものによっておこなう検査のことである。
【0005】
ところで、数年前から自動車に対する音品質の要求が急速に高くなってきている。すなわち、自動車業界では、エンジン,ミッション,パワーシートなどの車載駆動パーツの検査を定量的に自動検査するニーズが高まっており、従来から行なわれている検査員による上記の官能検査のように定性的で曖昧な検査ではそのニーズに応える品質を得ることができなくなってきている。
【0006】
そこで、係る問題を解決するため、定量的かつ明確な基準による安定した検査を目的とした異音検査装置が開発されている。この異音検査装置は、「官能検査」工程の自動化を目的とした装置であり、マイクロフォンで取得した音データから特徴量を抽出し、抽出した特徴量から異常の有無やその原因などを求めるものである。
【0007】
上記の異音検査装置は、検査を実行する際に使用する最適な特徴量の選択および特徴量演算用の諸パラメータの選択を行なう必要がある。その特徴量の選択などの知識を作成するための支援装置として、特許文献1に開示された装置がある。
【0008】
この特許文献1に開示された支援装置は、検査対象から取得した波形データに対し、設定された特徴量とパラメータの所定の組み合わせについて特徴量を演算して求められた演算結果を取得する。ついで、その取得した演算結果に基づき、設定された特徴量およびパラメータをそれぞれ縦軸と横軸にとったプロファイルを表示する。このとき表示されるプロファイルの各マスの領域は、縦軸,横軸の組み合わせ毎の演算結果に対応した濃度で示される。このように、特徴量値を濃度で示すことで、ユーザはより濃度の濃い領域を簡単に見つけることができ、その領域に対応する特徴量、パラメータの組み合わせを見ることにより、検査対象から取得した波形データにとって最適な特徴量およびパラメータの組み合わせを得る。
【特許文献1】特開2006−3345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の装置を用いることで、ユーザは、知識作成に際して着目すべき特徴量とパラメータの組み合わせである特性指標を知ることかできる。ところで、新規に異音検査を立ち上げる場合、測定位置(センサ位置)や検査対象の動作モード等の測定条件の最適なものを選択する必要がある。測定位置ならば、検査対象物の上部,検査対象物の側部,検査対象物の下部等がある。また、動作モードならば、例えばエンジンの回転数(500rpm,750rpm,1000rpmなど)やトランスミッションのギア(1st,2nd,3rd,4th,R,Nなど)がある。
【0010】
係る測定条件を決定するに際し、従来は試行錯誤の繰り返しを行なっている。しかし、試行錯誤による選択では、測定位置×動作モードを全て確認する必要があるが、数が多すぎてコスト並びに時間がかかりすぎる。
【0011】
試行錯誤を行なうためには、波形に表れる異常の特徴および特徴量数値化アルゴリズム、検査対象物の構造、異音に対する深い知識が必要であり、誰もが簡単に行なうことができない。また、試行錯誤で選択された条件は、必ずしも候補の中で最適であるとは限らない。
【0012】
この発明は、検査を行なうのに有効・最適な測定条件を簡単に見つけることができる知識作成支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)この発明による知識作成支援装置は、検査対象から取得した波形データに対し、その波形データの特徴を表す特徴量を演算して得られた特徴量演算結果に基づいて良否判定を行なう検査装置に設定する、前記良否判定に有効な波形データを取得するための測定条件を決定するのを支援する知識支援装置であって、測定条件を変えて取得した複数の波形データに対し、特徴量とパラメータの所定の組み合わせについて求めたそれぞれの特徴量値の集合であるプロファイルを求めるプロファイル演算手段と、そのプロファイル演算手段で求めた各測定条件ごとのプロファイルを複数同時に表示するプロファイル一括表示手段と、を備え、プロファイル一括表示手段は、個々の測定条件に基づくプロファイルについては特徴量の軸とパラメータの軸からなる2軸の座標系で表示するように構成した。
【0014】
(2)プロファイル一括表示手段は、個々のプロファイルをマトリクス状(N×Mの行列)に配置して表示するとよい。(3)測定条件は、検査対象に対するセンサの設置位置と、検査対象の動作モードとの組み合わせとするとよい。もちろん、他の組み合わせでも良いし、組み合わせる個数は任意である。(4)各測定条件ごとのプロファイルは、特徴量値に対応した濃度、色、高さ、大きさのいずれかにより表現されるようにするとよい。
【0015】
本発明では、異なる測定条件のプロファイルを複数同時に表示することで、どの測定条件のプロファイルが、さらには、どの測定条件のどの特徴量とパラメータとの組み合わせが最適かが一目で認識できる。よって、ユーザは、最適な条件を短時間かつ低コストで選択できる。
【0016】
本発明において、「パラメータ」とは、与えられた波形データの特徴量の演算結果に影響を与えうる演算処理上の設定項目である。このパラメータは、特徴量との関係において、以下に示す2種類がある。1つ目は、特徴量を演算する前に計測波形に対して実施する前処理のためのパラメータである。このパラメータを変更した場合、計測波形が同じでも特徴量演算を行なう処理部に入力する波形が変化する。この前処理のパラメータとしては、フィルタの定数等がある。つまり、周波数フィルタの上下限値などを変えることで、そのフィルタを通過する周波数成分が異なるため、特徴量を演算する演算処理部に入力する波形が異なる。また、この前処理のパラメータとしては、フィルタの定数以外にも、波形変換処理における包絡線処理の平滑化データ個数など各種のものがある。
【0017】
2つ目は、特徴量演算そのもののパラメータである。つまり、特徴量演算の実行に必要なパラメータで、これにより特徴量演算を行なう処理部に入力される波形が同じでも、特徴量の演算結果が変化する。例えば、特徴量の対象周波数範囲指定や、特徴量と比較するしきい値等のパラメータがある。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、官能検査を行なうのに有効・最適な測定条件を簡単に見つけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、本発明の実施形態で、官能検査をする際に使用する特徴量およびパラメータ並びに判定閾値を含む知識ファイルを設定する対象となる検査装置を簡単に説明する。異音検査装置は、振動センサやマイクロフォンなどのセンサで取得した波形データに対し前処理を行なった後、1または複数の特徴量を演算し、求めた特徴量値と判定用の閾値とを比較し、良品/不良品の判断を行なうことを基本構成としている。
【0020】
その前処理としてのフィルタには、バンドパスフィルタ,ローパスフィルタ,ハイパスフィルタなど複数種類用意されるとともに、演算する特徴量も多数用意される。ここでは、前処理に用いるフィルタの種類(周波数)はパラメータとしている。
【0021】
検査装置の判定結果の正確さは、使用する特徴量やパラメータの組み合わせはもちろんのこと、判定用の閾値を適切に設定する必要がある。そこで、本実施形態の装置は、特徴量とパラメータの適した組み合わせを容易に見つけるとともに、その組み合わせにおける有効な閾値を設定するための情報を提供する機能を備えた。なお、ここでいう特徴量値は、特徴量演算をして得られた結果そのものはもちろんのこと、その特徴量演算結果を正規化した値も含む。
【0022】
図1は、本発明の知識作成支援装置の好適な一実施形態を示している。この知識作成支援装置10は、同一のサンプルに対して各種条件を替えて取得した複数の波形データから、検査時における測定位置(センサ位置)や検査対象の動作モード等の測定条件の最適なものを選択するための情報を提供するものである。この知識作成支援装置10は、波形ファイル保存部11,測定位置付加部12,動作モード付加部13,グループ情報付加部14,プロファイル演算部15,プロファイル保存部16,測定位置/動作モード解釈部17,表示プロファイル選択部18,プロファイル一括表示部19を備えている。知識作成支援装置10は、例えば、パーソナルコンピュータに以下の機能を備えたツールをインストールすることで実現される。もちろん、知識作成支援装置10は、専用のツール装置で構成しても良い。
【0023】
波形ファイル保存部11は、複数の波形データを記憶する。この複数の波形データは、同一の測定対象品について、異なる測定条件のもとで収集したものである。係る異なる測定条件により得られた波形データを、良品の測定対象品や不良品の測定対象品などの複数の測定対象品からそれぞれ取得したものを記憶保持する。
【0024】
測定位置付加部12,動作モード付加部13,グループ情報付加部14は、各種の測定条件を指定するためのもので、実際には、知識作成支援装置10の入力装置をユーザが操作して与えられたものを認識し、プロファイル演算部15に渡す。また、各付加部12,13,14は、それらの測定条件を入力するためのマンマシンインタフェースとして、知識作成支援装置10の表示装置に、所定の入力画面を表示する。この入力画面は、任意のテキストデータを入力するものでもよいし、予め測定条件をプルダウンメニュー方式等で用意しておき、所望のものをユーザに選択させるようにしてもよい。
【0025】
測定位置付加部12は、波形ファイルごとにそれがどの測定位置で測定されたものか情報を付加するものである。本実施形態では、測定位置は、検査対象物に対するセンサの取り付け位置としている。具体的には、図2に示すように、検査対象物1に対するセンサ2の取り付け位置として、検査対象物の上部(ch0),検査対象物の側部(ch1),検査対象物の下部(ch2)の3種類を用意した。そして、原則として、個々の検査対象物1からサンプルの波形データを取得するに際し、それら3箇所のセンサからの出力信号を得る。この測定位置付加部12は、例えば、測定時に波形ファイルに情報を付加する場合や、波形ファイル保存部11に格納された波形データを1つずつ読出し情報を付加する場合などに用いる。
【0026】
動作モード付加部13は、波形ファイルの中のどの部分が動作モードに対応するかの情報を付加する。動作モードは、検査対象物1がエンジンの場合には、回転数(500rpm,750rpm,1000rpmなど)があり、トランスミッションの場合には、ギア位置(1st,2nd,3rd,4th,R,Nなど)がある。本実施形態では、図3に示すように、500rpmの回転数をA,750rpmの回転数をB,1000rpmk回転数をCの3種類の動作モードを用意した。この動作モード付加部13は、例えば、測定位置付加部12と同様に、測定時に波形ファイルに付加する場合や、波形ファイル保存部11に格納された波形データを1つずつ付加する場合がある。
【0027】
グループ情報付加部14は、波形ファイルがどのグループに属するかのグループ情報を付加する。グループ情報は、良品から得た波形データの集合であるOKグループと、不良品から得た波形データの集合であるNGグループなどがある。また、NGグループは、不良品をひとまとめに扱っても良いし、その異常の種類に応じて複数のグループに分けても良い。付加のタイミングは、測定位置付加部12と同様である。
【0028】
プロファイル演算部15は、波形ファイル保存部11に格納された波形ファイルを読み込み、読み込んだ1または複数のサンプルの波形データに対し、予め設定した特徴量,パラメータの条件に基づき特徴量演算し、得られたそれぞれの特徴量値の集合を求める。また、このプロファイルは、1つの波形単位ごとに作成されたものでもよいし、同一グループを形成する複数の波形の特徴量値の平均等を求めた統計プロファイルでも良い。統計プロファイルは、良品の波形データに基づいて生成されたOKの統計プロファイルと、不良品の波形データに基づいて生成されたNGプロファイルとがある。さらに、OKの統計プロファイルとNGの統計プロファイルとの関係、たとえば、差分を求めたSN比のプロファイルもある。
【0029】
統計プロファイルを求める場合、測定位置、動作モード等の測定条件が同じ波形データごとに分けて行なう。これにより、統計プロファイルは、例えば、1chでAモードのOKグループの平均や、0chでBモードのNGグループのOKグループに対するSN比プロファイル等が作成される。このプロファイル演算の具体的な処理は、例えば特許文献1(特開2006−3345号公報)に開示されたアルゴリズムを用いて実現できる。
【0030】
また、SN比プロファイルの場合、異常種類が複数存在する場合、個々の異常種類のNGとOKとの対比により求めても良いし、複数の異常種類のNGを一つのグループとしてOKとの対比を行ない求めても良い。
【0031】
プロファイル保存部16は、プロファイル演算部15で演算したプロファイルを保存する。このとき、各付加部12,13,14で付加した情報を後で解釈できるように関連付けて保存する。
【0032】
測定位置/動作モード解釈部17は、プロファイル保存部16に保存されているプロファイルを読み出す時、そのプロファイルがどの測定位置、動作モードであるかを認識し、それぞれを分類する。この認識処理は、プロファイル保存部16に格納されたプロファイルと関連付けられた付加情報を参酌して行なう。測定位置/動作モード解釈部17は、この分類した情報とともに、読み出したプロファイルを表示プロファイル選択部18に送る。
【0033】
表示プロファイル選択部18は、ユーザが表示装置に表示するプロファイルを選択するためのマンマシンインタフェースである。例えば、波形プロファイル/統計プロファイルの選択並びにOK/NG/SNができる。この表示プロファイル選択部18は、選択されたプロファイルの情報をプロファイル一括表示部19に送る。
【0034】
プロファイル一括表示部19は、表示プロファイル選択部18で選択された条件に合致するプロファイルを一括で表示装置に表示する。
【0035】
すなわち、図4に示すように、プロファイル一括表示部19は、個々の測定条件についてのプロファイルをそれぞれ2軸の直交座標系上に表示するようにしている。プロファイル一括表示部19は、図4に示すように、異なる測定条件に基づくそれぞれのプロファイルを、測定位置×駆動モードの行列(マトリクス)のように一括して表示する。
【0036】
同一の測定条件で取得された波形データに基づく1つのプロファイルは、図示の例では、縦軸を特徴量とし、横軸をパラメータとしているが、この組み合わせはプロファイルにより決定される。図4では、パラメータとしてバンドパスフィルタ番号が記載されており、各バンドパスフィルタ番号に対応して、それぞれ異なる通過帯域が設定されている。同様に、特徴量番号(図では、1から5)ごとに、所定の特徴量が割り付けられている。
【0037】
個々のプロファイルにおける直交座標系の各交点のマスMは、対応する縦軸,横軸にそれぞれ割り付けられた条件で特徴量が演算され、算出された特徴量値の大きさに対応した濃淡で示される。図示の例では、特徴量値が大きいほど色が濃くなるように設定される。すなわち、特徴量値の最大から最小まで複数段階に分け、求めた特徴量値が最大の範囲に属する場合には、その領域は黒色となり、最小の範囲に属する場合には、その領域は白色となる。
【0038】
特徴量値の大小を濃淡で示しているため、ユーザは濃度の濃いマスMを簡単に見つけることができ、そのマスに対応するそれぞれの縦軸と横軸の値の組み合わせを見ることにより、対象の波形データにとって有効な特徴量・パラメータの組み合わせなどの条件を容易に見つけることができる。このように、マスMは、有効な特性の組み合わせ(特徴量×パラメータ)を見つけるための目印となる。
【0039】
なお、本発明は、上記のように特徴量値の大小を濃淡で表すものに限ることはなく、表示色を変えたり、パターン・模様を替えたりするなど、視覚的に相違がわかるものであればよい。
【0040】
このように、本実施形態では、測定条件の異なる個々のプロファイルを、網羅的に表示できるので、ユーザは、多数の測定条件(測定位置・動作モード),特徴量,パラメータの組み合わせの中で、最適なものを選択することができるとともに、条件選択方法に網羅性、客観性を持たすことができる。さらに、個々のプロファイルは、特徴量値を濃淡で表現しているため、ユーザは、どの組み合わせが有効であるかを視覚的に直感的に理解することができ、最適な条件を短時間かつ低コストで選択できる。さらに、ユーザは、波形に表れる異常の特徴、特徴量数値化アルゴリズム、検査対象物の構造、異音に対する深い知識がなくても条件選択が容易にできる。
【0041】
なお、上記の実施形態では、測定条件として測定位置と動作モードとしたが、本発明はこれに限ることはなく、例えば、詳細なセンシング条件(センサ取付角,防音室の有無,振動センサと検査対象物との間のゴムの有無など)その他各種のものについて設定し、確認できる。
【0042】
図5は、本実施形態の知識作成支援装置10を用いて最適な条件を決定するまでの処理フローを示している。まず、ユーザは、測定位置候補(ch0,ch1,ch2)にセンサ1を設定する(S1)。次いで、ユーザは、良品(OK)の検査対象物を複数用意し、それらを順次駆動し、センサ1から波形データ収集する(S2a)。この収集した波形データは、波形ファイル保存部11に保存される。知識作成支援装置10は、各付加部12〜14によってデータを測定条件ごとに分類する(S3a)。
【0043】
ユーザは、不良品(NG)の検査対象物を複数用意し、それらを順次駆動し、センサ1から波形データ収集する(S2b)。この収集した波形データは、波形ファイル保存部11に保存される。知識作成支援装置10は、各付加部12〜14によってデータを測定条件ごとに分類する(S3b)。
【0044】
プロファイル演算部15は、プロファイル保存部11に格納された波形データに基づき、特徴量演算をし、測定条件・グループごとにプロファイルを求め、プロファイル保存部16に保存する(S4)。次いで、プロファイル一括表示部19は、測定位置×駆動モードの行列のように一括で異なる測定条件の複数のプロファイルを表示する(S5)。
【0045】
ユーザは、表示されたプロファイルを見て、最適な条件を選択する(S6)。ユーザの作業は、処理ステップS1,S2a,S2b,S6となり、処理ステップS3a,3b,4,5は知識作成支援装置10が実行する。
【0046】
比較対象として、従来の処理手順を、図6に示すフローチャートを用いて説明する。まず、ユーザは、測定位置候補にセンサを設定する(S11)。次いで、ユーザは、良品(OK)の検査対象物を複数用意し、それらを順次駆動し、センサの検出出力から波形データ収集する(S12a)。この波形データは、例えばパソコンなどの記憶装置に格納される。ユーザは、収集したデータを、測定条件ごとに分類する(S13a)。
【0047】
ユーザは、不良品(NG)の検査対象物を複数用意し、それらを順次駆動し、センサの検出出力から波形データ収集する(S12b)。この波形データは、例えばパソコンなどの記憶装置に格納される。ユーザは、収集したデータを、測定条件ごとに分類する(S13b)。
【0048】
次いで、ユーザは、測定条件である測定位置i並びに動作モードjについて、0番目から順番に該当するデータを抽出し(S14,S15)、パラメータの一つであるフィルタをかける周波数帯を設定する(S16)。
【0049】
ツール装置は、処理ステップS14〜S16により選択された波形データに対し、フィルタリング処理をし、処理後の波形グラフを出力したり、音を再生したりする。そして、ユーザは、ツール装置の出力を見聞きし、OKとNGの差異が顕著になっているか否かを判断する(S17)。
【0050】
差異が顕著の場合、ユーザはその条件をメモ等に記録する(S18)。係る記録の後、或いは、差異が顕著でない場合、ユーザは周波数帯を十分に探索したか否かを判断し(S19)、十分でない場合には周波数帯を変え(S23)、処理ステップ16に戻る。これにより、ツール装置は、所定の測定条件の波形データについて、別の周波数帯によりフィルタリング処理をし、処理後の波形グラフを出力したり、音を再生したりするので、ユーザは、ツール装置の出力を見聞きし、OKとNGの差異が顕著になっているか否かを判断する(S16,S17)。
【0051】
周波数帯について十分に対策したならば(S19でYes)、ユーザは、動作モードを全て探索したか否かを判断する(S20)。つまり、現在のjの値が最大になっているか否かを判断し、最大でない場合には、jをインクリメントし(S24)、S15に進み、次の動作モードについて上記の処理を繰り返し行なう。
【0052】
さらに、動作モードについて十分に探索したならば(S20でYes)、ユーザは、測定位置を全て探索したか否かを判断する(S21)。つまり、現在のiの値が最大になっているか否かを判断し、最大でない場合には、iをインクリメントするとともにjを0にリセットし(S25)、次の測定位置について上記の処理を繰り返し行なう。
【0053】
このようにして、想定する全ての組み合わせについて、S17のONとNGの差異が顕著になるか否かの確認を行なったならば(S21でYes)、ユーザは、処理ステップS18にてメモした条件のものをピックアップし、その中から1番良いものを選択する。
【0054】
従来の手順では、ほとんどの処理を人手により行なっているため、時間がかかるばかりか、条件探索のループ作業が繁雑で、ある条件の組み合わせについて確認し忘れるおそれもあり、決定された測定条件についての確からしさが低下する。
【0055】
これに対し、本実施形態によれば、ツールが行うことが増えて正確性が高まるとともに、各測定条件のプロファイルを一括表示するため、条件探索のループが無くなり、さらに、同時に複数のプロファイルを見比べることで、最適な測定条件を見つけやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の好適な一実施形態を示す図である。
【図2】センサの設置位置を説明する図である。
【図3】動作モードを説明する図である。
【図4】プロファイル表示手段で表示されるプロファイルの一例を示す図である。
【図5】本実施形態の処理手順を説明するフローチャートである。
【図6】従来の処理手順を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
10 知識作成支援装置
11 波形ファイル保存部
12 測定位置付加部
13 動作モード付加部
14 グループ情報付加部
15 プロファイル演算部
16 プロファイル保存部
17 測定位置/動作モード解釈部
18 表示プロファイル選択部
19 プロファイル一括表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象から取得した波形データに対し、その波形データの特徴を表す特徴量を演算して得られた特徴量演算結果に基づいて良否判定を行なう検査装置に設定する、前記良否判定に有効な波形データを取得するための測定条件を決定するのを支援する知識支援装置であって、
測定条件を変えて取得した複数の波形データに対し、特徴量とパラメータの所定の組み合わせについて求めたそれぞれの特徴量値の集合であるプロファイルを求めるプロファイル演算手段と、
そのプロファイル演算手段で求めた各測定条件ごとのプロファイルを複数同時に表示するプロファイル一括表示手段と、
を備え、
前記プロファイル一括表示手段は、個々の測定条件に基づくプロファイルについては特徴量の軸とパラメータの軸からなる2軸の座標系で表示するように構成したことを特徴とする知識作成支援装置。
【請求項2】
前記プロファイル一括表示手段は、個々のプロファイルをマトリクス状に配置して表示することを特徴とする請求項1に記載の知識作成支援装置。
【請求項3】
前記測定条件は、検査対象に対するセンサの設置位置と、検査対象の動作モードとの組み合わせであることを特徴とする請求項1または2に記載の知識作成支援装置。
【請求項4】
前記各測定条件ごとのプロファイルは、特徴量値に対応した濃度、色、高さ、大きさのいずれかにより表現されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の知識作成支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−292188(P2008−292188A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135526(P2007−135526)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】