説明

石灰砂レンガを製造するための組成物及び方法

本発明は、石灰、砂、水、及び少なくとも1種の可塑剤を含む石灰砂レンガを製造するための組成物、特にエステル基又はエーテル基を介して主鎖に結合された側鎖を有する櫛形ポリマーKPに関する。更に、本発明は、石灰砂レンガを製造するための組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石灰砂レンガを製造する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
石灰、砂、及び水の混合物から、いわゆる石灰砂レンガを製造することは知られてきた。前記石灰砂レンガは、特に建築物を建設する際に有効であることが証明され、この分野では受け入れられてきた。これらの石灰砂レンガの特徴は、高密度、そしてそれに起因する、それらの高い蓄熱容量、静的強度及びそれらの良好な遮音性である。この方法では、砂、石灰、及び水からなる依然として成形可能な原料は、高圧下、液圧プレスでプレスして、素地レンガを作製し、次いで、飽和蒸気圧下、160℃〜220℃の温度で、蒸気養生オートクレーブにおいて養生する。この方法では、熱蒸気雰囲気によって、その結果として砂岩岩体の強いインタロックを生じさせる石灰砂レンガ内における化学プロセスが始まる。
【0003】
現在の最高水準の技術によると、素地石灰砂レンガに作用する成形圧力は増大され、且つ/又は骨材の粒度分布は最適化され、且つ/又は、製品品質、特に、試験嵩密度と、圧縮強度を向上させるために、重量骨材、典型的には玄武岩が加えられる。
【0004】
しかしながら、適用される成形圧力により、プレス用ツールの摩耗が増加し、且つエネルギー消費が増大する。粒度分布の最適化は、適当な砂を更に購入し且つ輸送することによってのみ達成できるが、それは、かなり経済的には不利である。なぜならば、大部分の石灰砂レンガ製造者は会社所有の砂採取場を持っているからである。玄武岩のような重量骨材は、しばしば更に購入しなければならず、且つ高価であるという点で不利である。
【0005】
更に、一定の高さを超える石灰砂レンガの場合、液圧プレスの成形圧力は、素地レンガの途中で充分なプレスを提供するにはもはや不充分であり、最終石灰砂レンガの試験嵩密度、及び圧縮強度に関して負の効果を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに基づいて、本発明の目的は、プレスするためのエネルギーがより低くく、且つ、従来技術を超えるより高い製品品質をもたらす石灰砂レンガを提供することにある。
【0007】
驚くべきことに、石灰、砂、水、及び少なくとも一種の可塑剤を含む石灰砂レンガを製造するための組成物は、未硬化状態での組成物の加工性が向上することを見出した。可塑剤は、含水率35〜60重量%のバインダーを有するセメント質組成物において典型的に使用されるので、典型的にはわずか1〜10重量%、一時的には最高25重量%の含水率を有する石灰砂レンガを製造するための組成物における加工性の向上は、驚くべきことである。
【0008】
本発明の組成物は、プレスサイクルがより少ない石灰砂レンガの製造において所望の試験嵩密度を達成することができ、その結果として、所要のエネルギー、製造時間、及びプレスツールの摩耗に関して有益な効果が得られる。更に、所要の成形圧力を減らすと、強力でない、従ってより安価なプレス機及びプレス金型を使用できる。
【0009】
更に、驚くべきことに、本発明による組成物の可塑性を増大させると、結合精度が向上し、素地プレス品のより複雑な形態が可能になる、ことを見出した。
【0010】
更に、本発明による組成物では、石灰の量を減らすことができ、そしてその結果として、圧縮強度と、試験嵩密度が増す。
【0011】
本明細書において、用語「試験嵩密度(bulk density being tested)」とは、プレス及び熱水処理の後における素地石灰砂レンガの密度と理解される。
【0012】
更に、本発明による組成物から作られた非常に大きな成形体でさえも、より高度な圧密化を有しており、従って、従来の組成物に比べて、プレス後に、より高度の圧縮強度を有することが見出された。
【0013】
更に、驚くべきことに、界面活性剤を追加で使用すると、所要のプレスサイクルが減少し、その結果として、石灰砂レンガの製品品質、すなわち、試験嵩密度と、圧縮強度とが更に向上することを見出した。
【0014】
本発明の他の態様は、追加の独立クレームの主題である。本発明の特に好ましい実施態様は、従属クレームの主題である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、石灰、砂、水及び少なくとも1種の可塑剤を含む石灰砂レンガを製造するための組成物に関する。
【0016】
本明細書では、用語「石灰砂レンガ」は、飽和蒸気圧下、典型的には160〜220℃の温度で、4〜12時間、圧縮し、成形し、そして硬化させる(水熱硬化させる)ことによって、石灰と砂との混合物から作られた成形体と理解される。
【0017】
本明細書では、用語「石灰」は、酸化カルシウム(生石灰、CaO)と水との発熱反応によって典型的に得られる水酸化カルシウム(消石灰、Ca(OH))と理解される。
【0018】
本明細書では、用語「砂」は、機械的及び化学的崩壊中に元の粒子構造から分離され、そしてそれらの堆積ポイントへと運搬された、主として0.06〜4 mmの直径を有する丸い又は角ばった小さな粒体のゆるい凝集体(ゆるい堆積物)である鉱物性砕屑堆積物(砕屑岩)と理解され、前記堆積物は、50重量%を超える、特に75重量%を超える、特に好ましくは85重量%を超えるSiO含量を有する。
【0019】
典型的には、適当な砂は、85重量%を超える、特に90重量%を超える水晶から成るケイ砂である。
【0020】
本明細書では、用語「可塑剤」は、鉱物組成物、特に、石灰砂レンガを製造するための組成物の加工性及び流動性を向上させるか、又は所要の含水率を減らす添加剤と理解される。
【0021】
適当な可塑剤は、リグニンスルホネート、スルホン化メラミンホルムアルデヒド縮合物、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物、及びエステル基又はエーテル基を介して主鎖に結合された側鎖を有する櫛形ポリマーKPから成るリストから選択される可塑剤である。
【0022】
好ましくは、少なくとも1種の可塑剤は、エステル基又はエーテル基を介して主鎖に結合された側鎖を有する櫛形ポリマーKPである。
【0023】
櫛形ポリマーは、エステル基又はエーテル基を介して結合された側鎖を有する線状ポリマー鎖(=主鎖)から成る。
比喩的に言えば、側鎖は、「櫛」の「歯」を形成する。
【0024】
適当な櫛形ポリマーKPは、一方では、エーテル基を介して線状ポリマー主鎖に結合された側鎖を有する櫛形ポリマーである。
【0025】
エーテル基を介して鎖状ポリマー主鎖に結合された側鎖は、ビニルエーテル又はアリルエーテルを重合させることによって導入できる。
【0026】
前記櫛形ポリマーは、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO 2006/133933A2号で開示されている。ビニルエーテル又はアリルエーテルは、特に、下式(II)を有する。
【化1】

【0027】
上記式中、R’は、H、又は1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素部分又は5〜8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素部分又は6〜14個の炭素原子を有する任意に置換されたアリール部分である。R”は、H又はメチル基であり、そしてR'''は、非置換又は置換アリール部分、特にフェニル部分である。
【0028】
更に、pは0又は1であり;m及びnは、それぞれ互いに独立に、2、3又は4であり;そして、x及びy及びzは、互いに独立に、0〜350である。
【0029】
式(II)におけるs5、s6及びs7と明示している部分構造要素の配列は、交互にブロックのように又はランダムに分布させることができる。
【0030】
特に、この種の櫛形ポリマーは、ビニルエーテル又はアリルエーテルと、無水マレイン酸、マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸とのコポリマーである。
【0031】
適当な櫛形ポリマーKPは、一方では、エステル基を介して線状ポリマー主鎖に結合された側鎖を有する櫛形ポリマーである。この種の櫛形ポリマーKPは、エーテル基を介して線状ポリマー主鎖に結合された側鎖を有する櫛形ポリマーよりも好ましい。
【0032】
特に好ましい櫛形ポリマーKPは、式(I)のコポリマーである。
【化2】

上記式中、Mは、互いに独立に、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価又は三価金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基である。本明細書では、用語「互いに独立に」とは、いずれの場合においても、同じ分子において、置換基が、様々な利用可能な意味を有し得ることを意味している。而して、例えば、式(I)のコポリマーは、同時にカルボン酸基及びカルボン酸ナトリウム基を包含することができ、そして、この場合では、Mは、互いに独立に、H及びNaを表していることを意味している。
【0033】
一方では、前記コポリマーは、イオンMが結合されるカルボキシレートであり、そして他方では、多価イオンMの電荷は対イオンによって補償されなければならない、ことは当業者には明らかである。
【0034】
更に、置換基Rは、互いに独立に、水素又はメチル基である。
【0035】
更に、置換基Rは、互いに独立に、−[AO]q−Rである。置換基Rは、互いに独立に、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、又は−[AO]q―Rである。両方の場合において、置換基Aは、互いに独立に、C〜Cアルキレン基であり、Rは、C〜C20アルキル基、シクロヘキシル基又はアルキルアリール基であり、そしてqは、2〜250、特に8〜200、特に好ましくは11〜150の値を有する。
【0036】
更に、置換基Rは、互いに独立に、−NH、―NR、―ORNRである。前記式中、R及びRは、互いに独立に、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基又はアルキルアリール基又はアリール基又はヒドロキシアルキル基又はアセトキシエチル(CH―CO―O―CH―CH)又はヒドロキシイソプロピル―(HO―CH(CH)―CH)又はアセトキシイソプロピル基(CH―CO―O―CH(CH)―CH−);又は、R及びRは、一緒になって環を形成し、その環においては、窒素は、モルフォリン又はイミダゾリン環を形成する1つのメンバーである。
【0037】
置換基Rは、C―Cアルキレン基である。
【0038】
更に、置換基R及びRは、互いに独立に、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、アリール基又はヒドロキシアルキル基である。
【0039】
式(I)におけるs1、s2、s3及びs4と明示されている部分構造要素の配列は、交互にブロックのように又はランダムに分布させることができる。
【0040】
最後に、添字a、b、c及びdは、構造単位s1、s2、s3及びs4のモル比である。これらの構造要素は、互いに以下の比率を有する:
a/b/c/d =(0.1 − 0.9) / (0.1 − 0.9) / (0 − 0.8) / (0 − 0.3),
特に
a/b/c/d =(0.1 − 0.9) / (0.1 − 0.9) / (0 − 0.5) / (0 − 0.1),
好ましくは
a/b/c/d = (0.1 − 0.9) / (0.1 − 0.9) / (0 − 0.3) / (0 − 0.06)
但し、a + b + c + d = 1である。c+dの合計は好ましくは0を超える。
【0041】
式(I)の櫛形ポリマーKPは、一方では、構造単位s1、s2、s3及びs4を生成する下式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)及び(IIId)
【化3】

の対応モノマーのフリーラジカル重合によって製造できるか、
又は、他方では、下式(IV)
【化4】

のポリカルボン酸のいわゆるポリマー類似反応によって製造できる。
【0042】
ポリマー類似反応では、式(IV)のポリカルボン酸は、対応するアルコール又はアミンによってエステル化又はアミド化され、次いで最終的には、(部分Mのタイプに従って、例えば、金属水酸化物又はアンモニアによって)中和又は部分的に中和される。ポリマー類似反応の詳細は、例えば、欧州特許第EP 1,138,697 B1号7ページ20行目から8ページ50行目、及び実施例、又は欧州特許第EP 1,061,089 B1号4ページ、54行目から5ページ38行目及び実施例で開示されている。欧州特許第EP 1,348,729 A1号3ページから5ページ及び実施例に記載されているその改良では、式(I)の櫛形ポリマーKPは、固体状態で製造できる。上記特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0043】
c+d>0、特にd>0である式(I)の櫛形ポリマーKPは、特に好ましい実施態様であることを見出した。特に、―NH―CH―CH―OHが、特に有利なR部分であることを見出した。
【0044】
Sika Schweiz AGから、商標名シリーズViscoCrete(登録商標)で市販されている櫛形ポリマーKPは、特に適していることが分かった。
【0045】
更に、前記組成物が更に少なくとも1種の界面活性剤を含むならば有益である。
【0046】
本明細書では、「界面活性剤」という用語は、表面張力を低下させる物質と理解される。しかしながら、「界面活性剤」という用語は、上記の可塑剤を包含していない。
【0047】
典型的には、界面活性剤は、親水性分子部分のタイプ及び電荷に従って分類される。4種の親水基を区別することができる:すなわち、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤である。
【0048】
アニオン界面活性剤は、水中で解離して究極的に界面活性特性の原因となるアニオンを形成する1つ又は複数の官能性アニオン活性基を典型的に有する。典型的な界面活性基の例は:石鹸を生成する−COONa、―SONa、−OSONaであり、そして、最も重要なアニオン界面活性剤は、アルキルアレーンスルホネート(例えば、ドデシルベンゼンスルホネート)及びアルカンスルホネート、α−オレフィンスルホネート及びアルキルスルフェート、及びアルキルスルフェートである。
【0049】
適当なアニオン界面活性剤は、高級アルコール硫酸エステル塩、例えばラウリルスルフェート又はラウリルミリスチルスルフェート;エーテルスルフェート;オレフィン/パラフィンスルホネート;アルキルスルホネート;アルキルベンゼンスルホネート;スルホスクシネート、例えばジオクチルスルホスクシネート、ジラウレススルホスクシネート又はC12〜C14アルコールポリグリコールエーテルスルホスクシネート;及びリン酸エステルから成る群より選択される。
【0050】
カチオン界面活性剤は、第四アンモニウム基の存在によってほとんど排他的に特徴づけられる。窒素基が、2つの長いアルキル部分及び2つの短いアルキル部分によって置換されているカチオン界面活性剤、例えばジメチルジステアリルアンモニウムクロリドは、特に重要である。
【0051】
通常は、非イオン界面活性剤は、活性水素原子を有する化合物をエトキシ化することによって製造され;それらのうちでは、エチレンオキシドと、脂肪族アルコール又はオキソアルコールとの付加生成物が、最も重要である。更に、アルキルフェノールのエトキシレート、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック重合体(EO/POブロック重合体)、及びアルキルグリコシドが、一般的である。
【0052】
適当な非イオン界面活性剤は、例えばBerol(登録商標)260又は Berol(登録商標)840という商標で市販されているアルコールエトキシレート;ポリアルキレングリコールエーテル(脂肪族アルコールエトキシレートとも呼ばれる)、例えばポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル又はポリオキシエチレンセチルエーテル、そのうちのいくつかは、Brij(登録商標)、Genapol(登録商標)又はLutensol(登録商標)という商標で市販されている;脂肪族アルコールプロポキシレート;EO/POブロックポリマー、例えばJeffox(登録商標)WL―600;ポリプロピレングリコール、例えばPluriol(登録商標)Pのメンバー;ポリエチレングリコール;アルキルグルコシド、例えばTween(登録商標)20;アルキルポリグリコシド;オクチルフェノールエトキシレート、例えばTriton X−100;及びノニルフェノールエトキシレート、例えばNonoxinol−9から成る群より選択される。
【0053】
好ましい非イオン界面活性剤は、脂肪族アルコールエトキシレート及びEO/POブロックポリマーから成る群より選択される非イオン界面活性剤である。
【0054】
特に好ましくは、少なくとも1種の界面活性剤は、非イオン界面活性剤である。
【0055】
更に、少なくとも1種の界面活性剤は、好ましくは、高度の湿潤作用を有する低起泡性界面活性剤である。オートクレーブの冷却水によって廃水中に放出される際に、起泡性界面活性剤は、例えば水体において泡を生じさせるので、廃水処理後でも、環境公害の重大な原因となり得る。
【0056】
本組成物は、追加の成分を含み得る。好ましくは、本組成物は、組成物の総重量を基準として典型的には5〜50重量%で、骨材、特に玄武岩を更に含み得る。追加の成分の例は、石灰砂レンガ技術において公知の溶媒又は添加剤、特に防腐剤、熱及び光安定剤、着色剤及び消泡剤である。
【0057】
好ましい組成物においては、組成物の総重量を基準として:砂の量は、60〜96.5、特に80〜94重量%であり;石灰の量は、3〜15、特に4〜10重量%であり;水の量は、0.485〜25、特に1〜15、好ましくは1〜10重量%であり;可塑剤の量は、0.015〜0.5、好ましくは0.018〜0.2重量%であり;そして、存在する場合、界面活性剤の量は0.00003〜0.1、特に0.0003〜0.015、好ましくは0.0003〜0.009重量%である。
【0058】
別の態様では、本発明は、以下の工程:
i)適当で好ましい組成物である上記組成物を提供する工程;
ii)少なくとも1つのプレス装置に組成物を供給して、プレスする工程;
iii)組成物を硬化させる工程
を含む石灰砂レンガを製造する方法に関する。
【0059】
典型的には、工程i)の組成物は、砂、CaO、水、可塑剤、及び、使用する場合は、界面活性剤を混合することによって、提供する。
【0060】
前記成分は、水平ミキサー中で好ましく混合し、その混合物を典型的には貯蔵タンクに短時間貯蔵し、大部分のCaOをCa(OH)へと変換させる。その後、そのようにして得られた組成物は、プレスすることができる。
【0061】
好ましくは、工程i)では、均等に分散された形態で、砂、石灰、水、可塑剤、及び存在する場合は界面活性剤を含む易流動性物質が得られる。
【0062】
圧密化及び/又は成形のために、典型的には、液圧プレスのために一般的に使用される装置は、工程ii)でのプレスに使用できる。
【0063】
好ましくは、適用される成形圧力は、10〜25N/mm、特に好ましくは15〜20N/mmである。
【0064】
所望ならば、組成物は、任意の幾何学的形状の成形体へと、特に、ブロック、レンガ、天井縁型枠(ceiling edge shuttering)用のL字型天井縁ブロック、U字型開口ブロック、又はいわゆる縦穴あきレンガへと加工できる。更に、レンガは、DIN V 106によると1DF〜20DFの通常のフォーマットのうちの1つを典型的に有する。好ましくは、5〜50cm(長さ)x5〜50cm(幅)×5〜100cm(高さ)の寸法を有する成形体が、製造される。
【0065】
好ましくは、工程ii)では、それらの形状を喪失したり又は崩したりせずに、工程ii)の直後に輸送又は積み上げることができる成形体が得られる。
【0066】
工程iii)の硬化は、好ましくは、飽和蒸気圧下で、160〜220℃、特に180〜200℃の温度で行われる水熱処理である。硬化には、典型的には4〜12時間、特に7〜9時間かかる。
【0067】
本明細書では、用語「飽和蒸気圧」とは、液体と水蒸気相とが平衡状態にある閉じた系における水蒸気相の圧力と理解される。硬化している間、飽和蒸気圧は、典型的には10〜16barである。工程iii)では、DIN V 106による圧縮強度が12.5〜35N/mmである成形体が好ましく得られる。
【0068】
典型的には、前記方法は、次の順序;すなわち、工程i)、次いで工程ii)、次いで工程iii)の順序で行う。
【0069】
−組成物の提供される成分は、少なくとも1つの計量装置を介して混合装置に供給され、混合される;
−その混合成分は、少なくとも1つのプレス装置に供給され、プレスされる;
−プレスされた組成物は、飽和蒸気圧下、160〜220℃の温度で硬化される
という方法が適当な実施態様である。
【0070】
本発明による方法は、エネルギー及び時間並びにプレスツールの摩耗を劇的に減らすことができ、また、得られる石灰砂レンガの製品品質、特に試験嵩密度及び圧縮強度を向上させることができる。
【0071】
別の態様では、本発明は、上記方法によって得ることができる固化組成物、特に成形体に関する。更に、別の態様では、本発明は、石灰砂レンガを製造するための上記組成物の使用に関する。
【0072】
実施例
使用した添加剤
【表A】

【表1】

【0073】
比較実施例V1〜V6及び本発明による組成物Z1〜Z8を、砂(及び任意には重量骨材として玄武岩)とCa(OH)を、60秒間、ホバートミキサーで乾燥混合することによって、提供した。練り混ぜ水を、15秒以内で砂/Ca(OH)に加え、そしてその混合物を120秒間混合した。添加剤(ZM)を加える場合、添加剤を練り混ぜ水と120秒間混合してから、その練り混ぜ水を、砂/Ca(OH)混合物へ加える。その後で、その混合物をプレスした。
【0074】
実施例を実行する際には、CaOからCa(OH)への変換を行わずに、CaOの代わりにCa(OH)を直接使用することにより、より容易に且つより速く処理できた。
【0075】
実施例1
比較実施例V1〜V3と本発明による組成物Z1〜Z5を、本発明による調製組成物又は比較実施例の総重量を基準として53.5重量%の砂、35.9重量%の玄武岩、9.4重量%のCa(OH)、及び1.2重量%の水を用いて調製した。使用した玄武岩は、2mmの最大粒径を有していた。組成物全体に添加剤(表2参照)を加える場合、添加剤のそれぞれの重量%は、砂から減じた。而して、使用した添加剤が0.3重量%の場合、53.5重量%の代わりに53.2重量%の砂を使用した。砂、Ca(OH)、水、及び任意の添加剤を、上記のように混合した。
【0076】
本発明による組成物の混合物及び比較実施例を、機械プレスでプレスして、24cm(長さ)x11.5cm(幅)×6cm(高さ)の試験サンプルを得た。その後、試験サンプルを、飽和蒸気圧下のオートクレーブで硬化させた。その後、試験サンプルを105℃で乾燥させ、試験嵩密度(kg/dm単位のPRD)を計算し、そして、2 1/2に積み重ねた各試験サンプルの圧縮強度(N/mm単位のDF)を決定した。
【0077】
表2は、本発明による組成物が、同じ試験嵩密度を有する比較実施例に比べて、有意に高い圧縮強度を達成していることを示しており、そして更にそれは、有意に良好で且つより均一な圧縮性を示唆している。
【表2】

【0078】
実施例2
比較実施例V4〜V6及び本発明による組成物Z8〜Z6を、本発明による調製組成物又は比較実施例の総重量を基準として、表3に示した重量%の量で、砂、Ca(OH)、水、及び任意の添加剤を使用することによって、調製した。砂は、使用した砂の総重量を基準として、1mmの最大粒径を有する20重量%の天然砂、3mmの最大粒径を有する40.5重量%の天然砂、及び2mmの最大粒径を有する39.5重量%の砕砂から成っていた。砂とCa(OH)と水との混合及び任意の添加剤の添加を、上記のようにして行った。
【表3】

【0079】
本発明による組成物の混合物及び比較実施例を、ジャイレトリーコンパクタ(フィンランドにあるInvelop Oyから市販されているGyratory Compactor ICT−100R)でプレスすると、100mmの直径を有する円筒状試験サンプルが得られた。
【0080】
混合される材料は、40mradの回転角及び4.5barの一定圧力を使用して圧縮し、圧密化した。この操作中、試験サンプルの高さを、各周期(サイクル)ごとに測定する。
【0081】
この圧密化操作は、一定の回転の後に、又は、一定のサンプル高さに達したら、停止できる。後者の場合、混合される材料の添加量及び高さを規定することによって、あらゆる嵩密度に調整できる。一定の回転数の場合、嵩密度(オートクレーブ処理前の嵩密度)は、達成されるサンプルの高さから計算される。混合物が、指定された標本の高さに達するのが速いほど、圧縮性はより良好である。
【0082】
その試験サンプルを、飽和蒸気圧下のオートクレーブで硬化させた。その後で、その試験サンプルを、20℃及び相対湿度65%で貯蔵し、そして、3.9kN/sの荷重率でDIN 18501(アンポリッシュ(unpolished))に従って圧縮強度を試験した。
【0083】
表4に示されているように、比較実施例V4及びV5と本発明による組成物Z6及びZ7の場合では、指定されたサンプルの高さに達したら、圧密操作を停止し、所要の回転を確認した。
【0084】
表4からは、本発明による組成物は、有意により少ないサイクルで指定の嵩密度に到達していることが認められる。
【表4】

【0085】
表5に示されているように、比較実施例V6及び本発明による組成物Z8の場合では、圧密操作は、指定の60回転数の後に止めた。
【0086】
表5からは、本発明による組成物は、同じサイクル数の後に、比較実施例に比べて、有意に高い試験嵩密度と圧縮強度とを有していることが認められる。
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
石灰、砂、水、及び少なくとも1種の可塑剤を含む石灰砂レンガを製造するための組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の可塑剤が、エステル基又はエーテル基を介して主鎖に結合された側鎖を有する櫛形ポリマーKPであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記櫛形ポリマーKPが、下式(I)
【化1】

(式中、
Mは、互いに独立に、H+、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価又は三価金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基であり;
各Rは、式(I)の他の部分Rとは独立に、水素、又はメチル基であり;
は、互いに独立に、−[AO]q―Rであり;
は、互いに独立に、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、又は−[AO]q―R(式中、AはC〜Cアルキレン基であり、そしてRはC〜C20アルキル基、シクロヘキシル基、又はアルキルアリール基であり;及びq=2〜250である)であり;
は、互いに独立に、―NH、―NR又は―ORNR(式中、R及びRは、互いに独立に、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、若しくはアルキルアリール基、若しくはアリール基であり;
若しくは、ヒドロキシアルキル基、若しくはアセトキシエチル(CH―CO―O―CH―CH)若しくはヒドロキシイソプロピル(HO―CH(CH)―CH)若しくはアセトキシイソプロピル基(CH―CO―O―CH(CH)―CH)であり、又はR及びRは、一緒になって、窒素がモルフォリン環若しくはイミダゾリン環を形成している1つのメンバーである環を形成している;
はC〜Cアルキレン基であり;
そして、置換基R及びRは、互いに独立に、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、アリール基若しくはヒドロキシアルキル基である)
そして、a、b、c及びdは、構造単位s1、s2、s3及びs4のモル比であり、
そして、a/b/c/d、=(0.1 ― 0.9)/(0.1 ― 0.9)/(0 ― 0.8)/(0 ― 0.3)であり、但しa+b+c+d=1である)のコポリマーであることを特徴とする請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、少なくとも1種の界面活性剤を更に含むこと特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の界面活性剤が、非イオン界面活性剤であることを特徴とする請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の総重量を基準として、
砂の量が60〜95.5重量%であり;
石灰の量が3〜15重量%であり;
水の量が0.485〜25重量%であり;
可塑剤の量が0.015〜0.5重量%であり;
そして、存在する場合、界面活性剤の量が0.00003 〜0.1重量%である ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
以下の工程:
i)請求項1〜6のいずれか一つに記載の組成物を提供する工程;
ii)少なくとも1つのプレス装置に前記組成物を供給してプレスする工程;
iii)前記組成物を硬化させる工程
を含む石灰砂レンガを製造する方法。
【請求項8】
前記硬化を、飽和蒸気圧下、160〜220℃の温度で行うことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項7又は8のいずれか一つに記載の方法によって得られる固化組成物。
【請求項10】
石灰砂レンガを製造するための、請求項1〜6のいずれか一つに記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2013−505186(P2013−505186A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529303(P2012−529303)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063904
【国際公開番号】WO2011/033125
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】