説明

石英ガラス製バーナ

【課題】火炎加工の火力を、可燃性ガスの流量を無駄に増やすことなく向上させることができ、かつ多孔質ガラス母材の堆積効率を向上させることのできる石英ガラス製バーナを提供する。
【解決手段】バーナ中心軸に対して、同心円状に一列もしくは複数列に配置された小口径助燃性ガス噴出ポート1と、該小口径助燃性ガス噴出ポート1を内包する可燃性ガス噴出ポート2から構成される石英ガラス製バーナであって、該可燃性ガス噴出ポート2の先端内側が、前記小口径助燃性ガス噴出ポート1の最外周列の形状に合わせた形状を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、助燃性ガスを噴出する複数の小口径助燃性ガス噴出ポート(以下、単に小口径ガス噴出ノズルと称する)と、これらを包み込むように設けられた可燃性ガスを噴出する外管(可燃性ガス噴出ポート)からなる石英ガラス製バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
石英ガラス製バーナは、小口径ガス噴出ノズルから助燃性ガスを流し、それらを内包する外管から可燃性ガスを流し、燃焼させることで、様々な火炎加工に利用されている。また、バーナ中心管からガラス原料ガスを流し、小口径ガス噴出ノズルから助燃性ガスを流し、それらを内包する外管から燃焼ガスを流して、火炎加水分解反応で生じるガラス微粒子を堆積させて得られる多孔質ガラス母材の堆積に利用される。
【0003】
従来、この種の石英ガラス製バーナは、火炎加工時の火力向上、あるいは多孔質ガラス母材堆積時の堆積効率向上を目指して、助燃性ガスを流すノズルの数や配置について検討されている。
特許文献1は、ノズルの配置と数を規定し、特許文献2では、ノズルの径と線速が規定されている。
しかしながら、火炎加工効率の向上や堆積効率の向上には、ノズルから供給される助燃性ガスの最適化だけではなく、外管から供給される可燃性ガスの適正化も重要である。
【0004】
小口径ガス噴出ノズルは、外管内に同心円状に一列もしくは複数列配置されているが、一般的に、最外周列の小口径ガス噴出ノズルより外から噴出される可燃性ガスは、助燃性ガスと反応することなく、周囲雰囲気へ拡散して燃焼する。そのため、最外周列の小口径ガス噴出ノズルより外側の可燃性ガス噴出領域が広いほど、投入した可燃性ガスに対して、対象物の加熱に寄与する可燃性ガスの割合は小さくなり、加熱効率が低下する。
【0005】
さらに、火力を向上させようと小口径ガス噴出ノズル数を増やした場合には、それらを内包する可燃性ガス噴出ポートも大型化せざるを得ない。このように、可燃性ガス噴出ポートの径が大きくなるにつれて、最外周列の小口径ガス噴出ノズルから外側の流路面積の割合がさらに大きくなる。その結果、対象物の加熱に有効に寄与する可燃性ガスの割合が小さくなるため、助燃性ガスを増量した以上に可燃性ガスを増量させないと、火力の向上は望めない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-206154号公報
【特許文献2】特開2003-165737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、火炎加工の火力を、可燃性ガスの流量を無駄に増やすことなく向上させることができ、かつ多孔質ガラス母材堆積時の堆積効率を向上させることのできる石英ガラス製バーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の石英ガラス製バーナは、バーナ中心軸に対して、同心円状に一列もしくは複数列に配置された小口径ガス噴出ノズルと、該小口径ガス噴出ノズルを内包する可燃性ガス噴出ポートから構成される石英ガラス製バーナであって、該可燃性ガス噴出ポートの先端内側の形状が、前記小口径ガス噴出ノズルの最外周列の形状に合わせた形状を有することを特徴としている。
前記可燃性ガス噴出ポートの先端内側の形状は、前記小口径ガス噴出ノズルの最外周列に沿って一定の間隔を有するように形成されている。なお、前記間隔は1mm以下とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の石英ガラス製バーナによれば、可燃性ガス噴出ポートの先端内側の形状を、小口径ガス噴出ノズルの最外周列の形状に合わせた形状とすることにより、可燃性ガス噴出ポートの流路面積、特に最外周列の助燃性ガス噴出ポートより外側の可燃性ガスの流路面積の拡大を極力抑えることができ、可燃性ガスの流量を無駄に増やすことなく、火炎加工の火力向上、あるいは多孔質ガラス母材堆積時の堆積効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の石英ガラス製バーナの一例を示す概略正面図である。
【図2】図1に示したバーナの概略縦断面図である。
【図3】従来の石英ガラス製バーナの概略正面図である。
【図4】図3に示したバーナの概略縦断面図である。
【図5】本発明の石英ガラス製バーナの一例を示す概略正面図である。
【図6】従来の石英ガラス製バーナの概略正面図である。
【発明の実施の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明に係る石英ガラス加工用の石英ガラス製バーナの実施の形態の一例を示す概略正面図であり、図2はその縦断面図である。なお、図1、図3において符号Aで示す一点鎖線は、それぞれ図2、図4の断面位置を示している。
この石英ガラス製バーナは、合成石英ガラスの火炎加工に使用するもので、中心管の周囲に3列で計31本の小口径ガス噴出ノズル1が配置され、これらの小口径ガス噴出ノズル1を内包する外管すなわち可燃性ガス噴出ポート2が配置されている。さらに、外管の先端には、図1の斜線部で示した石英板3が、3列目の小口径ガス噴出ノズル1の外周列に沿って該ノズル1とのクリアランスが0.5mmとなるように取り付けられ、可燃性ガス噴出ポート2の外縁よりの空隙を塞いでいる。なお、小口径ガス噴出ノズル1には、外径4.0mm、内径0.9mmの石英ガラス管を使用した。
図3,4に示したバーナは、従来のものであり、図3は概略正面図、図4はその縦断面図である。
【0012】
〔実施例1〕
図1,2に示した、最外周列の小口径ガス噴出ノズル1と外管との空隙を、可燃性ガス噴出ポート2の先端に取り付けられた石英板で塞がれた本発明の石英ガラス製バーナと、図3,4に示した可燃性ガス噴出ポート先端を従来の円形とした石英ガラス製バーナの2種類のバーナを用いて、可燃性ガス流量250L/min、助燃性ガス流量100L/minで、直径60mmφの石英ガラスダミー棒を加熱し、最高温度を記録した。
測定結果を表1に示した。
その結果は、本発明のバーナは、最外周列よりも内側に可燃性ガスが集中して供給されたため、ダミー棒の加熱に対して有効に働き、表1に示すように最高温度が2170℃で、従来のバーナより70℃上昇した。
【表1】

【0013】
〔実施例2〕
図3,4に示した従来のバーナと最高温度が同じ2060℃となるように、本発明のバーナに供給するガス流量を調整したところ、可燃性ガスを14%削減することができた。
【0014】
〔実施例3〕
図5は、本発明に係る多孔質ガラス母材堆積用の石英ガラス製バーナの実施の形態の一例を示す概略正面図である。
この石英ガラス製バーナは、多孔質ガラス母材の堆積に使用するもので、中心管は同芯の二重管からなり、内側はガラス原料ガス噴出ポート4であり、その外側には、シールガス噴出ポート5が配置されている。この中心二重管の周囲に2列で計16本の小口径ガス噴出ノズル1が配置され、さらにその外側に、これらの小口径ガス噴出ノズル1を内包する外管すなわち可燃性ガス噴出ポート2が配置されている。
外管の先端には、図5の斜線部で示した石英板3が、2列目の小口径ガス噴出ノズル1の外周列に沿って、該ノズル1とのクリアランスが0.5mmとなるように取り付けられ、可燃性ガス噴出ポート2の内縁よりの空隙を塞いでいる。なお、小口径ガス噴出ノズル1には、外径3.0mm、内径1.5mmの石英ガラス管を使用した。
なお、図6に示したバーナは、可燃性ガス噴出ポートの先端内縁を円形とした従来の石英ガラス製バーナである。
【0015】
図5に示した、最外周列の小口径ガス噴出ノズル1と外管との空隙を、可燃性ガス噴出ポート2の先端に取り付けられた石英板で塞がれた本発明の石英ガラス製バーナと、図6に示した、可燃性ガス噴出ポートの先端内縁を円形とした従来の石英ガラス製バーナの2種類のバーナを用いて、ガラス微粒子の堆積を行った。
中心管には、ガラス原料ガス15L/minと助燃性ガス15L/min、第2管目には、シールガスを4L/min、小口径ガス噴出ノズルには、助燃性ガス25L/min、それらを内包する可燃性ガス噴出ポートには、可燃性ガス250L/minを供給し、直径50mmφ長さ1000mmの石英ガラス製ダミー棒上に、50kgになるまでガラス微粒子を堆積させた。
堆積結果を表2に示した。
その結果は、本発明のバーナは、最外周列よりも内側に可燃性ガスが集中して供給されたため、効率よく反応に使われるとともに、線速が大きくなるため、火炎が拡散し乱れることなく、表2に示すように堆積効率が69%で、従来のバーナより4%向上した。
【表2】

【0016】
〔実施例4〕
図6に示した従来のバーナと堆積効率が同じとなるように、本発明のバーナに供給するガス流量を調整したところ、可燃性ガスを16%削減することができた。
【符号の説明】
【0017】
1 助燃性ガス噴出ポート
2 可燃線ガス噴出ポート
3 石英板
4 ガラス原料ガス噴出ポート
5 シールガス噴出ポート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナ中心軸に対して、同心円状に一列もしくは複数列に配置された小口径助燃性ガス噴出ポートと、該小口径助燃性ガス噴出ポートを内包する可燃性ガス噴出ポートから構成される石英ガラス製バーナであって、該可燃性ガス噴出ポートの先端内側の形状が、前記小口径助燃性ガス噴出ポートの最外周列の形状に合わせた形状を有することを特徴とする石英ガラス製バーナ。
【請求項2】
前記可燃性ガス噴出ポートの先端内側の形状が、前記小口径助燃性ガス噴出ポートの最外周列に沿って一定の間隔を有するように形成されている請求項1に記載の石英ガラス製バーナ。
【請求項3】
前記間隔が1mm以下である請求項2に記載の石英ガラス製バーナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−66971(P2012−66971A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213648(P2010−213648)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】