説明

研削異常監視方法および研削異常監視装置

【課題】砥石車の外径が変化することにより研削負荷が変化したとしても、より高精度に研削異常を判定することができる研削異常監視方法および研削異常監視装置を提供する。
【解決手段】研削負荷についての上限閾値Th1および下限閾値Th2の少なくとも一方を設定する閾値設定工程と、研削負荷が上限閾値Th1および下限閾値Th2の少なくとも一方を超えた場合に研削異常であると判定する研削異常判定工程と、砥石車43の外径を取得する砥石車径取得工程と、取得した砥石車43の外径に応じて上限閾値Th1および下限閾値Th2の少なくとも一方を変更する閾値変更工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物の研削において研削異常の監視を行う方法および研削異常の監視を行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特開平4−176541号公報(特許文献1)には、工作物の加工において異常を判定する方法として、工具の送りモータの電流値が所定の閾値を超えたときに異常と判定することが記載されている。つまり、加工抵抗が所定値より大きくなった場合に、異常であると判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−176541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工作物を研削する場合に砥石車の外径が変化すると、研削負荷が変化する。そして、従来の異常判定方法では、砥石車の外径に関わりなく、一定の閾値を設定していた。そのため、砥石車の形状変化に伴うばらつきを考慮して、許容幅を大きくするような閾値を設定していた。これでは、高精度な異常判定ができないおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、砥石車の外径が変化することにより研削負荷が変化したとしても、より高精度に研削異常を判定することができる研削異常監視方法および研削異常監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(研削異常監視方法)
(請求項1)本発明の研削異常監視方法は、工作物と砥石車とを相対移動させることにより前記工作物を研削する研削盤を用いて、研削異常を監視する研削異常監視方法において、研削負荷についての上限閾値および下限閾値の少なくとも一方を設定する閾値設定工程と、前記研削負荷が前記上限閾値および前記下限閾値の少なくとも一方を超えた場合に研削異常であると判定する研削異常判定工程と、前記砥石車の外径を取得する砥石車径取得工程と、取得した前記砥石車の外径に応じて前記上限閾値および前記下限閾値の少なくとも一方を変更する閾値変更工程とを備える。
【0007】
(請求項2)前記研削異常監視方法は、前記上限閾値および前記下限閾値の少なくとも一方を超えた異常領域について研削異常種類に応じた複数の異常種別領域を設定する異常種別領域設定工程と、取得した前記砥石車の外径に応じてそれぞれの前記異常種別領域を変更する閾値変更工程と、を備え、前記研削異常判定工程は、前記研削異常であると判定された場合に、複数の前記異常種別領域に基づいて前記研削異常種類を判定するようにしてもよい。
【0008】
(請求項3)前記研削異常監視方法は、同種の前記工作物を複数個研削する際における前記研削異常を監視する研削異常監視方法であり、前記上限閾値および前記下限閾値の少なくとも一方は、研削開始からの経過時間または前記工作物と前記砥石車との相対位置に応じて異なる閾値としてもよい。
【0009】
(請求項4)また、前記工作物の複数の研削部位を同時に研削する研削盤に適用され、複数の変位センサまたは温度センサにより前記工作物の複数の研削部位のそれぞれのたわみ変位量または温度を検出し、それぞれの前記たわみ変位量または温度に基づいて研削負荷算出部にて前記研削負荷を算出し、それぞれの前記研削負荷に基づいてそれぞれの前記研削部位の研削異常を監視するようにしてもよい。
【0010】
(研削異常監視装置)
(請求項5)本発明の研削異常監視装置は、工作物と砥石車とを相対移動させることにより前記工作物を研削する研削盤を用いて、同種の前記工作物を複数個研削する際における研削異常を監視する研削異常監視装置において、前記研削負荷についての閾値を設定する閾値設定手段と、研削負荷が前記閾値を超えた場合に研削異常であると判定する研削異常判定手段と、前記砥石車の外径を取得する砥石車径取得手段と、取得した前記砥石車の外径に応じて前記閾値を変更する閾値変更手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
(請求項1)砥石車の外径が大きいほど、クーラントによる動圧が大きくなる。そこで、本発明の研削異常監視方法のように、砥石車の外径に応じて閾値を変更する。具体的には、研削を継続するにつれて砥石車の外径が小さくなると、砥石車の外径の縮径量に応じて、上限閾値および下限閾値を小さくする。また、砥石車を交換すると、砥石車の外径が大きなものとなるため、上限閾値および下限閾値を大きくする。これにより、より高精度に研削異常を判定することができる。
【0012】
(請求項2)研削異常には、種々の要因があるのが一般的である。そこで、研削異常と判定された場合に、設定された異常種別領域に基づいて研削異常種類を判定することで、どのような研削異常種類であるかを把握できる。研削異常種類としては、研削過負荷異常(例えば、研削焼け)の発生、工作物の前加工における形状ばらつきによる異常、砥石車の表面異常、研削後における工作物の表面粗さ不良などがある。形状ばらつきによる異常は、例えば、軸受の外輪の内周面の軌道面である溝を研削する場合に、前加工における溝位置や溝深さなどのばらつきによる異常である。また、砥石車の表面異常は、砥石車のドレス不良(例えばドレス取代異常、ドレッサーの切れ味不足など)による砥粒平坦化、研削負荷が大きいことによる砥粒脱落、砥粒摩滅による砥石車の切れ味低下、または、研削負荷が大きいことおよびクーラントが少ないことによる砥石車表面への切屑の溶着などである。
【0013】
そして、これらの異常種別領域も、上限閾値および下限閾値と同様に、砥石車の外径に応じて異なる。そこで、異常種別領域を、砥石車の外径に応じて変更するようにしている。従って、研削を継続することにより砥石車の外径が変化したとしても、研削異常種類の判定をより高精度にできる。
(請求項3)これにより、より適切にかつ高精度に異常判定ができる。
(請求項4)これにより、工作物の複数の研削部位を同時に研削する場合に、それぞれの研削部位の研削異常を判定することができる。
【0014】
(請求項5)本発明の研削異常監視装置によれば、上述した研削異常監視方法における効果と同様の効果を奏する。また、研削異常監視方法における他の特徴部分について、本発明の研削異常監視装置に同様に適用できる。そして、同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】研削盤の平面図である。
【図2】形状ばらつきによる研削異常種類を示し、(a)は砥石車43の軸方向中心と軸受外輪の内周軌道面の軸方向位置とにずれがある場合を示し、(b)は軸受外輪の内周軌道面である溝の深さが所望深さからずれている場合を示す。
【図3】研削異常監視装置の機能ブロック図である。
【図4】砥石車の外径に応じた閾値パターンを示す図である。
【図5】研削開始からの経過時間に対する研削負荷を示す図であり、閾値パターン1における、正常範囲の上限閾値および下限閾値、ならびに異常種別領域を示す。
【図6】研削開始からの経過時間に対する研削負荷を示す図であり、閾値パターン2における、正常範囲の上限閾値および下限閾値、ならびに異常種別領域を示す。
【図7】異常監視プログラムのフローチャートである。
【図8】異常監視プログラムのうち閾値変更処理のフローチャートである。
【図9】表示装置の画面の履歴表示状態を示す。
【図10】第二実施形態:砥石車と工作物とのX方向の相対位置に対する研削負荷を示す図であり、正常範囲の上限閾値および下限閾値、異常領域における異常種別領域を示す。
【図11】第三実施形態における第一例を示す図である。
【図12】第三実施形態における第二例を示す図である。
【図13】第三実施形態における第三例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1.研削盤の機械構成)
研削盤1の一例として、主軸台トラバース型内面研削盤を例に挙げ、図1を参照して説明する。そして、当該研削盤1の加工対象の工作物Wを軸受の外輪とし、当該研削盤1を用いて当該軸受の外輪の内周軌道面を研削する場合を例に挙げて説明する。そして、ここでは、同種の工作物Wを複数個研削する場合、すなわち量産製品としての工作物Wを製造する場合を対象として説明する。
【0017】
図1に示すように、研削盤1は、ベッド10と、テーブル20と、主軸台30と、砥石支持装置40と、近接スイッチ50と、接触検知センサ80と、砥石車成形装置(図示せず)と、制御装置60とから構成される。
【0018】
ベッド10は、ほぼ矩形状からなり、床上に配置される。ただし、ベッド10の形状は矩形状に限定されるものではない。このベッド10の上面には、一対のZ軸ガイドレール11a,11bが、図1の左右方向(Z軸方向)に延びるように、且つ、相互に平行に形成されている。一対のZ軸ガイドレール11a,11bは、テーブル20が摺動可能なレールである。さらに、ベッド10には、一対のZ軸ガイドレール11a,11bの間に、テーブル20を図1の左右方向に駆動するための、Z軸ボールねじ11cが配置され、このZ軸ボールねじ11cを回転駆動するZ軸モータ11dが配置されている。
【0019】
さらに、ベッド10の上面には、砥石台42が摺動可能な一対のX軸ガイドレール12a,12bが、図1の上下方向(X軸方向)に延びるように、且つ、相互に平行に形成されている。さらに、ベッド10には、一対のX軸ガイドレール12a,12bの間に、砥石台42を図1の上下方向に駆動するための、X軸ボールねじ12cが配置され、このX軸ボールねじ12cを回転駆動するX軸モータ12dが配置されている。
【0020】
テーブル20は、長手矩形の平板状に形成されており、ベッド10の上面のうち、一対のZ軸ガイドレール11a,11b上を摺動可能に配置されている。テーブル20は、Z軸ボールねじ11cのナット部材に連結されており、Z軸モータ11dの駆動により一対のZ軸ガイドレール11a,11bに沿って移動する。このZ軸モータ11dはエンコーダを有しており、エンコーダによりZ軸モータ11dの回転角を検出することができる。
【0021】
主軸台30は、テーブル20の上面に設けられ、工作物Wを回転可能に支持する。具体的には、主軸台30は、主軸台本体31と、マグネットチャック32と、シュー33と、主軸モータ34とを備えている。主軸台本体31は、テーブル20の上面のうち、図1の左側に固定されている。この主軸台本体31には、Z軸周りに回転可能にマグネットチャック32が設けられている。マグネットチャック32は、工作物Wである軸受を磁力により吸着して保持する。シュー33、マグネットチャック32は、主軸台30に設けられ、シュー33によって工作物Wの側面を支持することにより、工作物Wの位置決めを行う。そして、マグネットチャック32は、主軸モータ34により主軸台本体31に対して回転駆動される。この主軸モータ34はエンコーダを有しており、エンコーダにより主軸モータ34の回転角を検出することができる。
【0022】
砥石支持装置40は、砥石台41と、砥石車駆動用モータ42と、砥石車43とを備えている。砥石台41は、ベッド10の上面のうち、一対のX軸ガイドレール12a,12b上を摺動可能に配置されている。そして、砥石台41は、X軸ボールねじ12cのナット部材に連結されており、X軸モータ12dの駆動により一対のX軸ガイドレール12a,12bに沿って移動する。
【0023】
そして、この砥石台41のうち主軸台30側のX軸方向端面には、砥石車駆動用モータ42が固定されている。この砥石車駆動用モータ42の先端には、工作物Wである軸受外輪の内周軌道面を研削する砥石車43が設けられている。つまり、砥石車43は、砥石台41に対して、Z軸周りに回転可能に取り付けられている。
【0024】
近接スイッチ50は、ベッド10の上面に設けられ、砥石車43により工作物Wである軸受外輪の研削サイクル開始および研削サイクル終了を検出するスイッチである。つまり、近接スイッチ50は、近接スイッチ50に砥石台41が接近して、近接スイッチ50と砥石台41とのZ軸方向離間距離が設定値以下になると研削サイクル開始と判断する。一方、近接スイッチ50は、近接スイッチ50から砥石台41が遠ざかり、近接スイッチ50と砥石台41とのZ軸方向離間距離が設定値を超えた場合に研削サイクル終了と判断する。
【0025】
接触検知センサ80は、主軸台本体31の側面に設けられ、砥石車43により工作物Wである軸受外輪の研削開始を検出するセンサである。つまり、接触検知センサ80は、工作物Wに砥石車43が接触すると該接触を検知して研削開始と判断する。接触検知センサ80としては、例えばAEセンサが用いられる。なお、接触検知センサ80は、本実施形態において、研削負荷データの収集開始および収集終了の判定に用いている。接触検知センサ80に代えて、砥石台41のX軸位置およびテーブル20のZ軸位置に基づいて研削負荷データの収集開始および収集終了の判定を行うこともできる。
【0026】
砥石車成形装置(図示せず)は、例えば主軸台30やベッド10に設けられ、砥石車43の外周面を成形するドレッサーである。この砥石車成形装置によりドレッシングされた砥石車43は、切れ味の良好な状態となり、かつ、所望形状に形成される。
【0027】
制御装置60は、各モータを制御して、工作物WをZ軸周りに回転させ、砥石車43を回転させ、且つ、工作物Wと砥石車43とをZ軸方向およびX軸方向の相対移動することにより工作物Wである軸受外輪の内周軌道面の研削を行う。詳細は後述する。また、制御装置60は、工作物Wの研削における研削異常を監視する研削異常監視装置70を備えている。ただし、研削異常監視装置70は、制御装置60の内部に備えるものに限られず、外部装置として適用することもできる。
【0028】
(2.研削異常種類の説明)
次に、研削異常監視装置70により監視する研削異常種類について説明する。研削異常種類としては、(A)研削過負荷異常の発生、(B)工作物Wの前加工における形状ばらつきによる異常、(C)砥石車43の表面異常、(D)研削後における工作物Wの表面粗さ不良などがある。
【0029】
ここで、(B)工作物Wの前加工における形状ばらつきによる異常について、図2(a)(b)を参照して説明する。図2(a)に示すように、例えば、砥石車43により工作物Wである軸受外輪の内周軌道面である溝を研削する場合において、前加工における溝の軸方向位置(Z軸方向位置)に所望位置からずれていることがある。このような場合には、砥石車43の軸方向中心と軸受外輪の内周軌道面の軸方向位置とにずれが生じる。そうすると、砥石車43により内周軌道面を研削する際に、局所的な肩当たりが生じ、局所的に研削負荷が増大する。そうすると、砥石車43の砥粒の局所的な脱落や欠けが生じ、その後にずれのない工作物Wを研削する場合に、所望形状に研削できないおそれがある。
【0030】
また、図2(b)に示すように、前加工における内周軌道面である溝の深さが所望深さからずれていることがある。その結果、研削取代にばらつきが生じる。特に、溝の深さが所望深さよりも深い場合、研削によって削り残しとなる。これにより、表面粗さが不良となるおそれがある。
【0031】
また、(C)砥石車の表面異常は、砥石車43のドレス不良(例えばドレス取代異常、ドレッサーの切れ味不足など)による砥粒平坦化、研削負荷が大きいことによる砥粒脱落、砥粒摩滅による砥石車43の切れ味低下、または、研削負荷が大きいことおよびクーラントが少ないことによる砥石車43の表面への切屑の溶着などである。
【0032】
(3.研削異常監視装置の構成)
次に、研削異常監視装置70について、図3の機能ブロック図を参照して説明する。ここで研削異常監視装置70を説明するに当たり、図3には、上述した研削盤1の一部構成についても記載する。ここで、図3において、図1の研削盤1の構成と同一構成については、同一符号を付す。そして、砥石車駆動用モータ42には、当該砥石車駆動用モータ42の駆動電力を計測するモータ電力計42aが取り付けられている。なお、モータ電力計42aに代えて、砥石車駆動用モータ42のモータアンプにより直接電力値を収集してもよい。
【0033】
研削異常監視装置70は、研削負荷算出部71と、閾値設定部72と、異常判定部73と、出力部74と、砥石車外径取得部75と、閾値変更部76とを備えて構成される。研削負荷算出部71は、モータ電力計42aから取り込んだ砥石車駆動用モータ42の駆動電力に基づいて、工作物Wを砥石車43により研削することにより発生する研削負荷を算出する。研削負荷は、砥石車駆動用モータ42の駆動電力が大きくなれば大きくなる関係を有している。
【0034】
なお、研削負荷の算出方法として、本実施形態においては、砥石車駆動用モータ42の駆動電力を用いるが、この他に以下により研削負荷を算出することもできる。例えば、研削負荷は、砥石車駆動用モータ42の電流値、砥石車43と工作物Wとの相対移動を行うX軸モータ12dの電流値、電力値、工作物Wを回転可能に駆動する主軸モータ34の電流値、電力値、砥石車43または工作物Wの支持部分のたわみ変形量などにより算出できる。
【0035】
また、研削負荷は、工作物Wにおける研削部位の変形量、すなわち砥石車43に押し付けられることにより生じる工作物Wのたわみ変位量に基づいて算出できる。当該たわみ変位量は、研削負荷に応じたものとなるためである。工作物Wにおける研削部位のたわみ変位量は、例えば、変位センサにより計測する。
【0036】
また、研削負荷は、工作物Wの研削部位の温度により算出できる。当該温度は、研削負荷に応じたものとなるためである。ただし、工作物Wにおける砥石車43に接触している点、すなわち研削点の温度を計測することは容易でない。そこで、工作物Wの研削部位(内周面または外周面)のうち研削点(砥石車43との接触点)からずれた位相の部位の温度を計測する。工作物Wの研削部位の温度は、研削点と研削点からずれた位相では異なるが、研削点からずれた位相の温度は、研削点の温度に応じた値となる。従って、研削点からずれた位相であっても十分に計測できる。そして、工作物Wの研削部位のうち研削点からずれた位相の温度の計測は、当該部位に接触させる接触式温度センサまたは当該部位に非接触とする非接触式温度センサにより計測する。
【0037】
閾値設定部72は、作業者によって設定された正常領域の上限閾値Th1と正常範囲の下限閾値Th2とを記憶する。上限閾値Th1および下限閾値Th2は、研削負荷に対する閾値であって、工作物Wの研削開始からの経過時間Tに応じて設定される。さらに、閾値設定部72は、上限閾値Th1および下限閾値Th2を超えた異常領域について、研削異常種類に応じた複数の異常種別領域を設定し記憶する。この研削異常種類は、上述したように、(A)研削過負荷異常の発生、(B)工作物Wの前加工における形状ばらつきによる異常、(C)砥石車43の表面異常、(D)研削後における工作物Wの表面粗さ不良などがある。なお、上限閾値Th1および下限閾値Th2、ならびに異常種別領域の詳細については、後述する。また、上限閾値Th1と下限閾値Th2は、両者を設定することが望ましいが、何れか一方のみでもよい。
【0038】
異常判定部73は、研削負荷算出部71により算出される実際の研削負荷が研削開始からの経過時間に応じた上限閾値Th1および下限閾値Th2を超えた場合に、研削異常であると判定する。さらに、異常判定部73は、研削異常であると判定された場合に、実際の研削負荷が異常種別領域のいずれに達したかにより当該研削異常が何の研削異常種類であるかを判定する。
【0039】
出力部74は、研削異常であると判定された場合に、研削異常に関する情報について、表示装置81の画面への表示処理、印刷装置82による印字処理、記憶装置83への記憶処理、または通信装置84により外部装置への通信出力などを行う。出力の選択は、作業者により行われる。これにより、研削異常に関する情報について、作業者によって選択された出力形態により、作業者は確実に研削異常を把握することができる。
【0040】
砥石車外径取得部75は、砥石車43の外径を取得する。砥石車43の外径は、例えば、センサにより砥石車43の外径を直接計測してもよい。この他に、砥石車43の外径は、砥石車成形装置50により砥石車43のドレッシング回数により、現在の砥石車43の外径を推定することもできる。また、検知ピンを用いて、砥石車43を検知ピンに接触させたときの砥石台41の位置に基づいて砥石車43の外径を算出することもできる。
【0041】
閾値変更部76は、砥石車外径取得部75により取得した砥石車43の外径に応じて、閾値設定部72に記憶されている上限閾値Th1および下限閾値Th2を変更する。具体的には、砥石車43の外径が大きいほど、上限閾値Th1および下限閾値Th2が大きくなるように設定する。これは、砥石車43の外径が大きいほど、クーラントによる動圧が大きくなるためである。さらに、閾値変更部76は、閾値設定部72に記憶されている異常種別領域についても同様に、砥石車43の外径に応じた異常種別領域に変更する。
【0042】
(4.閾値パターン)
次に、砥石車43の外径に応じた閾値パターンについて、図4〜図6を参照して説明する。図4に示すように、閾値パターンは、砥石車43の外径Dに応じて異なるように設定されている。具体的には、砥石車43の外径を複数範囲に区分して、それぞれの範囲毎に閾値パターンを設定する。例えば、砥石車43の外径DがD2以上D1未満の場合には、図5に示すような閾値パターン1となる。
【0043】
閾値パターン1は、図5に示すように、正常範囲としての上限閾値Th1および下限閾値Th2、および、異常種別領域としての(A1)研削過負荷異常の発生、(B1)工作物Wの前加工における形状ばらつきによる異常、(C1)砥石車43の表面異常、(D1)研削後における工作物Wの表面粗さ不良が設定されている。上限閾値Th1および下限閾値Th2は、研削開始からの経過時間に応じて異なるように設定されている。つまり、上限閾値Th1および下限閾値Th2は、どちらも、研削負荷の挙動Dataに沿うように設定されている。ここで、上限閾値Th1の最大値は、F1である。
【0044】
例えば、研削開始直後において研削負荷が増大している状態と、研削負荷が一定の状態とでは、個体毎の研削負荷のばらつきが異なる場合がある。研削開始直後において研削負荷が増大している状態の方が、研削負荷が一定の状態に比べると、個体毎の研削負荷のばらつきが大きい。そこで、例えば、研削負荷が増大している状態における上限閾値Th1と下限閾値Th2との幅(許容幅)は、研削負荷が一定の状態における上限閾値Th1と下限閾値Th2との幅よりも大きく設定する。従って、より高精度に研削異常の判定を行うことができる。
【0045】
また、砥石車43の外径DがD3以上D2未満の場合には、図6に示すような閾値パターン2となる。閾値パターン2は、図6に示すように、正常範囲としての上限閾値Th1および下限閾値Th2、および、異常種別領域としての(A1)研削過負荷異常の発生、(B1)工作物Wの前加工における形状ばらつきによる異常、(C1)砥石車43の表面異常、(D1)研削後における工作物Wの表面粗さ不良が設定されている。この閾値パターン2における上限閾値Th1の最大値は、F1より小さなF2である。
【0046】
(5.研削異常監視装置による処理)
次に、研削異常監視装置70による処理について、図7および図8を参照して説明する。研削異常監視装置70による異常監視プログラムの実行について、図7を参照して説明する。異常監視プログラムは、現在の研削負荷と予め設定された各閾値Th1,Th2とに基づいて、研削異常が発生したか否かを判定する。さらに、研削異常である場合には、各異常種別領域(A1)〜(D1)に基づいて、研削異常種類を判定する。以下に詳細に説明する。
【0047】
図7に示すように、まず閾値設定プログラムを実行して、閾値パターンの設定を行う(ステップS1)。つまり、閾値Th1,Th2および異常種別領域(A1)〜(D1)の設定を行う。
【0048】
続いて、近接スイッチ50がON状態に変化すると、研削サイクルを開始する(ステップS2)。研削サイクルが開始されることで、図3に示すように、制御装置60が各モータを駆動し、砥石車43により工作物Wである軸受外輪の内周軌道面を研削し始める。より詳細には、研削サイクルが開始されると、図1に示すように、砥石車43が工作物Wである軸受外輪の径方向内側に進入可能となる位置に向かって、砥石台41を基準位置(図示せず)からX軸方向へ移動させる。その後、テーブル20をZ軸方向に移動させることにより、砥石車43が工作物Wである軸受外輪の径方向内側に進入する。そして、砥石車43が工作物Wである軸受外輪の内周軌道面に向かってX軸方向に移動し、研削を開始する。工作物Wの研削は、粗研削を行った後に、仕上研削を連続して行う。研削が終了すると、研削開始までとは逆の順序で動作し、基準位置に戻り、研削サイクルを終了する。
【0049】
研削サイクルが開始された後には、接触検知センサ80により砥石車43と工作物Wとの接触を検知したか否かを判定する(ステップS3)。そして、接触を検知するまで待機する(ステップS3:No)。
【0050】
そして、接触を検知すると(ステップS3:Yes)、研削負荷データの収集を開始する(ステップS4)。つまり、砥石車43と工作物Wとが接触すると、研削負荷データの収集を開始する。具体的には、図3に示す研削負荷算出部71がモータ電力計から砥石車駆動用モータ42の電力値を取得し、研削負荷を算出する。なお、砥石車駆動用モータ42の電力値は、研削負荷にほぼ比例すると考えられるため、モータ電力値そのものを研削負荷に置換して用いても良い。
【0051】
そして、研削負荷データの収集の開始直後から、研削異常判定を行う(ステップS5)。つまり、現時点における研削負荷に基づいて、研削異常の判定を行う。具体的には、現時点における研削負荷が、研削開始からの経過時間に応じた上限閾値Th1および下限閾値Th2を超えたか否かを判定する。さらに、現時点における研削負荷が研削異常と判定された場合に、研削異常種類を判定する。具体的には、現時点における研削負荷が、図5および図6における各種異常種別領域(A1)〜(D1)のいずれに位置するかにより、研削異常種類を判定する。
【0052】
続いて、接触検知センサ80により接触非検知になったか否かを判定する(ステップS6)。接触非検知でない場合、すなわち接触検知している間、研削負荷データの収集および判定を継続する(ステップS6:No)。そして、接触非検知になると、研削負荷データの収集を終了する(ステップS7)。研削負荷データの収集を終了すると、同時に研削異常判定も終了する。続いて、近接スイッチ50がOFF状態になるか否かによって、研削サイクルを終了したか否かを判定する(ステップS8)。
【0053】
続いて、研削サイクルが終了すると(ステップS8:Yes)、研削異常判定の結果が正常であるか否かを判定する(ステップS9)。正常であれば、次の工作物Wが有るか否かを判定し(ステップS10)、次の工作物Wが有れば、閾値更新処理を行った後に、ステップS2から処理を繰り返す。一方、次の工作物Wがなければ、異常監視プログラムを終了する。
【0054】
一方、ステップS9にて研削異常判定の結果が研削異常と判定された場合には、図3の出力部74により、表示装置81に異常内容を表示する(ステップS12)。さらに、出力部74により、記憶装置83に異常内容を記憶する(ステップS13)。ここで、本実施形態においては、同種の工作物Wを多数研削するため、過去の工作物Wに対して研削異常と判定された場合には、そのときの異常内容が記憶装置83に記憶されている。つまり、過去の研削異常についての履歴が記憶装置83に記憶される。
【0055】
そして、ステップS13にて異常内容を記憶した後には、研削異常種類が注意領域であるか否かを判定する(ステップS14)。研削異常種類が、(B1)形状ばらつき、(C1)砥石車43の表面異常、(D1)工作物Wの表面粗さ不良であれば、注意領域の異常となる。そして、研削異常種類が注意領域であれば、ステップS10に移行し、次の工作物Wがあれば、閾値更新処理を行った後に、ステップS2から繰り返す。
【0056】
また、ステップS14にて研削異常種類が注意領域でない場合、すなわち研削異常種類が警告領域である場合には、制御装置60に対して研削を停止させて、異常監視プログラムを終了する。つまり、警告領域となる研削異常が発生すると、研削盤1による研削を停止する(ステップS15)。
【0057】
次に、図7のステップS11における閾値更新処理について、図8を参照して説明する。図8に示すように、砥石車43に対してドレッシングが実行されたか否かを判定する(ステップS21)。ドレッシングが実行されていなければ、処理を終了する。一方、ドレッシングが実行されていれば、その回数に基づいて砥石車43の外径を取得する(ステップS23)。そして、取得した砥石車43の外径に応じて、図4に示す閾値パターンの中から該当する閾値パターンを選択して、閾値設定部72に記憶されている閾値パターンを更新する。そして、処理を終了する。
【0058】
また、図示しないが、砥石車43が交換された場合には、交換された砥石車43の外径を入力することにより、閾値設定部72に記憶されている閾値パターンが当該砥石車43の外径に応じた閾値パターンに更新される。
【0059】
(6.表示装置の画面の履歴表示状態)
次に、図9を参照して、表示装置81の画面の履歴表示状態について説明する。図7の研削異常監視プログラムの実行により、研削異常が発生した場合には(図7のステップS9)、異常内容が記憶装置83に記憶される(図7のステップS13)。なお、記憶装置83には、異常内容の他、正常内容についても記憶しても良い。そして、研削異常監視プログラムを実行する間、多数の工作物Wの研削が行われる。つまり、記憶装置83には、過去の異常履歴が記憶される。また、研削異常として記憶されていない工作物Wは、正常であることが分かる。また、記憶装置83に正常内容が記憶されている場合には、直接的に正常である工作物Wを把握できる。
【0060】
そうすると、図9に示すように、表示装置81の画面には、全ての工作物Wについて、正常であるか研削異常であるかが表示され、かつ、研削異常の場合には研削異常種類および異常発生時刻が表示される。このように、研削異常に関する情報の過去の履歴を記憶することで、研削異常の傾向を把握できると共に、研削異常の発生のメカニズムを追求できる。そこで、研削異常の傾向および研削異常の発生のメカニズムを用いることで、今後の研削を行う際に、研削異常の発生の前兆を予測できる。その結果、今後の研削について、適切な対策を決定できる。
【0061】
以上説明したように、砥石車43の外径に応じて閾値パターンを更新しているため、ドレッシングによる砥石車43の外径の縮径量に応じて、上限閾値Th1および下限閾値Th2を小さくする。また、砥石車43を交換すると、砥石車43の外径が大きなものとなるため、上限閾値Th1および下限閾値Th2を大きくする。これにより、より高精度に研削異常を判定することができる。さらに、異常種別領域についても、上限閾値Th1および下限閾値Th1と同様に、砥石車43の外径に応じて異なる。そして、異常種別領域を、砥石車43の外径に応じて変更するようにしている。従って、研削を継続することにより砥石車43の外径が変化したとしても、研削異常種類の判定をより高精度にできる。
【0062】
なお、研削負荷データの収集開始および収集終了の判定は、上記実施形態において近接スイッチ50を用いたが、この近接スイッチ50を用いずに、砥石台41およびテーブル20が予め設定されたX軸位置およびZ軸位置に移動してきたことにより行うこともできる。
【0063】
<第二実施形態>
上述した実施形態において、研削負荷に関する情報の図として、横軸を研削開始からの経過時間としたが、砥石車43と工作物WとのX軸方向における相対位置とすることもできる。この場合の、上限閾値Th1、下限閾値Th2、各異常種別領域(A2)(B2)(C2)(D2)について、図10に示す。研削開始からの経過時間に対する研削負荷の挙動は、実質的に、当該X軸方向における相対位置に対する研削負荷の挙動と同じようになる。従って、この場合にも、上記と同様の効果を奏する。
【0064】
<第三実施形態>
次に、工作物Wの複数位置を同時に研削する場合には、以下のようにすることができる。つまり、それぞれの研削部位の研削負荷を算出し、それぞれの研削負荷を用いて、それぞれの研削部位における異常監視を行うようにすることもできる。第三実施形態について図11〜図13を参照して説明する。
【0065】
第一例は、図11に示す。第一例の工作物Wは、複数のフランジ部Wb,Wb、Wbを有する軸状に形成されている。そして、工作物Wのうち隣り合うフランジ部Wb,Wb,Wbの間に位置する小径軸部Wa,Waの外周面のそれぞれを砥石車43,43により研削する。そして、複数の変位センサ100,100により、工作物Wのそれぞれの小径軸部Wa,Waの外周面(研削部位)のうち砥石車43,43に研削される研削点から180°位相をずらした位置のたわみ変位量を検出する。
【0066】
それぞれの変位センサ100,100は、それぞれの研削部位の局所的なたわみ変位量を検出する。それぞれの変位センサ100,100は、工作物Wに接触するセンサでもよいし、非接触のセンサでもよい。例えば、非接触式センサとしては渦電流センサを適用できる。ここで、たわみ変位量は、各研削部位の局所的な研削負荷に応じた値となる。そして、研削負荷算出部71(図3に示す研削負荷算出部71に相当)が、変位センサ100,100により検出されたたわみ変位量に基づいて、各研削部位の研削負荷または研削負荷に応じた値を算出する。そして、上記実施形態と同様に、各研削部位が図3に示す異常検出部73にて研削異常であるか否かを判定する。このように、複数の研削部位のそれぞれについて、研削異常が発生しているか否かを判定できる。
【0067】
また、変位センサ100,100を温度センサ100,100に置換することができる。温度センサ100,100は、変位センサ100,100と同様に、工作物Wに接触するセンサでもよいし、非接触のセンサでもよい。それぞれの温度センサ100,100は、工作物Wの各研削部位の温度を検出する。温度センサ100,100は、工作物Wのそれぞれの小径軸部Wa,Waの外周面(研削部位)のうち砥石車43,43に研削される研削点から位相をずらした位置、例えば、90°や180°の位置の温度を検出する。ここで、研削負荷が大きいほど、研削部位の温度は高くなる。つまり、それぞれの温度センサ100,100により検出される研削部位の温度は、各研削部位の研削負荷に応じた値となる。そして、研削負荷算出部71が、各研削部位の温度に基づいて、各研削部位の研削負荷または研削負荷に応じた値を算出する。
【0068】
次に、第二例を説明する。図12に示すように、第二例の工作物Wは、軸方向に連設する大径軸部Wcおよび小径軸部Wdを有する。工作物Wの研削部位は、大径軸部Wcの外周面、小径軸部Wdの外周面、および、大径軸部Wcと小径軸部Wdとの段差端面である。これらを同時に総型の砥石車43により研削する。
【0069】
そして、変位センサ200,300は、大径軸部Wcの外周面および小径軸部Wdのそれぞれの径方向たわみ変位量を検出する。そして、研削負荷算出部71が、変位センサ200,300により検出されたそれぞれのたわみ変位量に基づいて、各研削部位の研削負荷または研削負荷に応じた値を算出する。そして、上記実施形態と同様に、各研削部位が図3に示す異常検出部73にて研削異常であるか否かを判定する。なお、この例においても、変位センサ200,300を温度センサに置換することができる。
【0070】
次に、第三例を説明する。図13に示すように、第三例の工作物Wは、軸部Weおよびフランジ部Wfを有する。工作物Wの研削部位は、軸部Weの外周面およびフランジ部Wfの端面である。これらを同時に砥石車43(アンギュラ砥石)の外周面によりアンギュラ研削を行う。ここで、アンギュラ研削とは、砥石車43の回転中心軸を工作物Wの回転中心軸に対して傾斜させた状態で、工作物Wの外周面および端面を研削する方法をいう。
【0071】
そして、変位センサ400は、研削部位である軸部Weの外周面の径方向たわみ変位量を検出する。一方、変位センサ500は、もう一つの研削部位であるフランジ部Wfの端面の軸方向たわみ変位量を検出する。そして、研削負荷算出部71が、変位センサ400,500により検出されたそれぞれのたわみ変位量に基づいて、各研削部位の研削負荷または研削負荷に応じた値を算出する。そして、上記実施形態と同様に、各研削部位が図3に示す異常検出部73にて研削異常であるか否かを判定する。なお、この例においても、変位センサ400,500を温度センサに置換することができる。
【0072】
また、第一例から第三例において、複数の研削部位のそれぞれを変位センサまたは温度センサによる検出値を用いて、それぞれの研削部位の研削負荷を算出した。この他に、第一実施形態に示したように、砥石車駆動用モータ42の駆動電力などを併用することで、1つの変位センサまたは温度センサを減らすことができる。つまり、砥石車駆動用モータ42の駆動電力に基づいて工作物W全体に生じる研削負荷を算出し、変位センサまたは温度センサにより局所的な研削部位の研削負荷を算出する。そして、変位センサおよび温度センサを設けていない研削部位は、工作物W全体の研削負荷から局所的な研削負荷を減算することにより算出できる。
【0073】
<その他>
上記実施形態においては、粗研削から仕上研削へ移行する際には、研削開始からの経過時間、または、砥石車43と工作物WとのX軸方向における相対位置によって切り替えている。ここで、仕上研削の開始のタイミングは、定寸装置により工作物Wの研削径が設定値に到達した時とすることがある。この場合には、定寸装置または制御装置は、仕上研削を開始する際に開始信号を出力する。そこで、異常監視に際して、当該信号を取得するまでは、粗研削のときの閾値を適用し、当該信号を取得した後に仕上研削の閾値を適用することもできる。このように、粗研削の閾値と仕上研削の閾値との切替タイミングを、定寸装置または制御装置からの出力信号を用いて決定することもできる。
【符号の説明】
【0074】
1:研削盤、 10:ベッド、 30:主軸台、 40:砥石支持装置、 41:砥石台、 42:砥石車駆動用モータ、 42a:モータ電力計、 43:砥石車、 50:近接スイッチ、 60:制御装置、 100,200,300,400,500:変位センサまたは温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物と砥石車とを相対移動させることにより前記工作物を研削する研削盤を用いて、研削異常を監視する研削異常監視方法において、
研削負荷についての上限閾値および下限閾値の少なくとも一方を設定する閾値設定工程と、
前記研削負荷が前記上限閾値および前記下限閾値の少なくとも一方を超えた場合に研削異常であると判定する研削異常判定工程と、
前記砥石車の外径を取得する砥石車径取得工程と、
取得した前記砥石車の外径に応じて前記上限閾値および前記下限閾値の少なくとも一方を変更する閾値変更工程と、
を備える研削異常監視方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記研削異常監視方法は、
前記上限閾値および前記下限閾値の少なくとも一方を超えた異常領域について研削異常種類に応じた複数の異常種別領域を設定する異常種別領域設定工程と、
取得した前記砥石車の外径に応じてそれぞれの前記異常種別領域を変更する閾値変更工程と、
を備え、
前記研削異常判定工程は、前記研削異常であると判定された場合に、複数の前記異常種別領域に基づいて前記研削異常種類を判定する研削異常監視方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記研削異常監視方法は、同種の前記工作物を複数個研削する際における前記研削異常を監視する研削異常監視方法であり、
前記上限閾値および前記下限閾値の少なくとも一方は、研削開始からの経過時間または前記工作物と前記砥石車との相対位置に応じて異なる閾値である研削異常監視方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
前記工作物の複数の研削部位を同時に研削する研削盤に適用され、
複数の変位センサまたは温度センサにより前記工作物の複数の研削部位のそれぞれのたわみ変位量または温度を検出し、それぞれの前記たわみ変位量または温度に基づいて研削負荷算出部にて前記研削負荷を算出し、
それぞれの前記研削負荷に基づいてそれぞれの前記研削部位の研削異常を監視する研削異常監視方法。
【請求項5】
工作物と砥石車とを相対移動させることにより前記工作物を研削する研削盤を用いて、同種の前記工作物を複数個研削する際における研削異常を監視する研削異常監視装置において、
前記研削負荷についての閾値を設定する閾値設定手段と、
研削負荷が前記閾値を超えた場合に研削異常であると判定する研削異常判定手段と、
前記砥石車の外径を取得する砥石車径取得手段と、
取得した前記砥石車の外径に応じて前記閾値を変更する閾値変更手段と、
を備える研削異常監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−161905(P2012−161905A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280849(P2011−280849)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】