説明

研磨テープ、研磨テープの製造方法およびバーニッシュ加工方法

【課題】砥粒の破砕粒による磁気ディスクの汚染を抑えつつ、磁気ディスクの表面を平滑化することができる研磨テープ、研磨テープの製造方法およびバーニッシュ加工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の研磨テープの製造方法によって製造される研磨テープ1は、磁気ディスクのバーニッシュ加工に用いられるものであり、砥粒5と結合剤6とを混練分散してスラリーを調製する工程と、スラリーを、支持体2上に塗布することによって塗膜を形成する工程と、塗膜を硬化することによって砥粒層3を形成する工程と、砥粒層3の表面に、コーティング層4を形成する工程とによって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハードディスク装置に用いられる磁気ディスクを表面研磨仕上げするのに用いられる研磨テープ、研磨テープの製造方法およびバーニッシュ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置に用いられる磁気ディスクの記録密度はますます高まり、磁気記録面上を浮上走行するヘッドの低浮上化に対応できるよう、磁気ディスクの表面には高い平坦度が求められる。そのため、磁気ディスクの製造工程においては、非磁性基板に磁性層や保護層を形成した後、その表面に形成または付着した突起物を除去するため、その表面を、研磨テープを用いて研磨するバーニッシュ工程が設けられている。
【0003】
このようなバーニッシュ工程は、例えば、アルミナ砥粒を塗布した研磨テープ等を用いて行なわれ、この研磨テープをゴム製のコンタクトロールによって媒体表面に押し当てることにより、媒体表面を軽く研磨する工程である。このような処理を行うことにより、媒体表面の異常突起等が除去されるので、磁気ディスクが用いられるハードディスク装置等において、磁気ヘッドの浮上量をより小さくすることが可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
バーニッシュ工程に用いられる研磨テープ(バーニッシュテープ)としては、通常ポリエステル製のベースフィルム上に研磨材層を形成してなるテープを使用する。そして、この研磨材層が磁気ディスクの磁性層側の面と接触して摺動することによって、磁気ディスクの表面に付着した微小な塵埃が除去されると共に、その表面に存在する異常突起等が研磨・除去されて、その表面が平滑化される。研磨材としては、平均粒子径が0.05μm〜50μm程度の、酸化クロム、α−アルミナ、炭化珪素、非磁性酸化鉄、ダイヤモンド、γ−アルミナ、α,γ−アルミナ、熔融アルミナ、コランダム、人造ダイヤモンド等が用いられる(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、このような研磨テープを用いる磁気ディスクのバーニッシュ加工は、具体的には、磁気ディスクを回転させつつ、この磁気ディスクの磁性層側の面に、研磨テープの砥粒面を押し当てることにより行われる。これにより、磁気ディスク表面の突起が研磨除去され表面平滑化する。ここで、研磨テープは、供給リールと巻取りリールとの間に掛け渡されており、供給リールから順次供給され、巻取りリールに巻き取られる。そして、この供給リール側から巻取りリール側に走行する途中で、研磨テープは、砥粒面と反対側の面(裏面)がゴム等のバッキングロールまたはフェルト等により押圧され、研磨テープの研磨面が磁気ディスクの表面に押し当てられる。
【特許文献1】特開平11−277339号公報
【特許文献2】特開平09−054943号公報
【特許文献3】特開2001−079774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、磁気ディスクの記録密度はますます高まり、その要求に応えるため磁気ヘッドと磁気ディスクとの距離が狭くなっている。そのため、上記のバーニッシュ工程での磁気ディスク表面の汚染が問題となってきている。
本発明者の検討によると、磁気ディスク表面の汚染物質の中にはアルミナ粒子が含まれ、このアルミナ粒子がバーニッシュ加工工程の、研磨テープの砥粒の脱粒によるもの、あるいは砥粒の破壊物もしくは破砕粒の脱落物であることが明らかになった。すなわち、磁気ディスク表面の突起をバーニッシュ工程によって研磨除去するに際し、研磨テープに固着された砥粒が脱粒し、また砥粒の表面がわずかに破砕(劈開)し、その脱粒物や破砕した砥粒粉が磁気ディスク表面に付着し、磁気ディスク表面を汚染させていることが明らかになった。
特に最近は、研磨テープに用いられる砥粒として、破砕粒ではなく析出粒(結晶成長粒)を用いる場合が多い。これは、バーニッシュ工程に求められる加工精度が高まり、被バーニッシュ加工面にほんのわずかなスクラッチが発生することを防ぐため、粒径や、砥粒表面形状のバラツキを低減するためである。しかしながら、破砕粒に比べて析出粒は、その表面が平滑でまた球形に近いため、研磨テープの支持体への安定保持が難しい。そのため、磁気ディスク表面のバーニッシュ加工中に、研磨テープから砥粒の脱粒が発生しやすくなっているのではないかと考えられる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、砥粒の破砕粒による磁気ディスクの汚染を抑えつつ、磁気ディスクの表面を平滑化することができる研磨テープ、研磨テープの製造方法およびバーニッシュ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意努力検討した結果、磁気ディスクのバーニッシュ工程に使用する研磨テープにおいて、砥粒層の表面を、厚さが0.5μm〜10μmの範囲内の固体の樹脂層(コーティング層)で被覆すること、さらには、この樹脂層の表面を、液体の潤滑剤層で覆うことにより、砥粒層中の砥粒の破砕や破砕粒の脱落が抑えられ、研磨テープによる磁気ディスク表面の汚染を少なくできることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
(1)本発明の研磨テープは、磁気ディスクのバーニッシュ加工に用いられる研磨テープであって、支持体と、該支持体上に設けられ、砥粒を含有する砥粒層と、該砥粒層の表面を被覆するコーティング層とを有し、前記コーティング層は、樹脂を主成分とする固体の層であり、厚さが0.5μm〜10μmの範囲内であることを特徴とする。
(2)本発明の研磨テープにおいて前記個体の層を構成する樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂のいずれかであることを特徴とする。
(3)本発明の研磨テープにおいて前記固体の層の上にパーフルオロポリエーテル構造を有する化合物を含む液体潤滑層が形成されてなることを特徴とする。
【0010】
(4)本発明の製造方法は、磁気ディスクのバーニッシュ加工に用いられる研磨テープの製造方法であって、砥粒と結合剤とを混練分散してスラリーを調製する工程と、前記スラリーを、支持体上に塗布することによって塗膜を形成する工程と、前記塗膜を硬化することによって砥粒層を形成する工程と、前記砥粒層の表面に、コーティング層を形成する工程とを有することを特徴とする。
(5)本発明の製造方法において、前記コーティング層は、樹脂を主成分とする固体の層であることを特徴とする。
(6)本発明の製造方法において、前記コーティング層を形成する工程の後に、前記コーティング層の表面に、液体潤滑層を設ける工程を有することを特徴とする。
(7)本発明の製造方法において、前記コーティング層の厚さが、0.5μm〜10μmの範囲内であることを特徴とする。
(8)本発明の製造方法において、前記コーティング層は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも何れかを含むことを特徴とする。
(9)本発明の製造方法において、前記液体潤滑層は、パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物を含むことを特徴とする。
(10)本発明のバーニッシュ加工方法は、回転している磁気ディスクの表面に、研磨テープの砥粒面を押し当て摺動させることにより、前記磁気ディスクの表面を研磨する磁気ディスクのバーニッシュ加工方法において、前記研磨テープとして、前記(1)〜(3)の何れか1項に記載の研磨テープを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の研磨テープによれば、磁気ディスクのバーニッシュ加工を行うに際して、砥粒層に含まれる砥粒の破砕や破砕粒の脱落を固体の樹脂層で抑えることができ、砥粒の破砕粒による磁気ディスクの汚染を抑えつつ、磁気ディスクの表面を平滑化することができる。
また、本発明の研磨テープの製造方法によれば、このような優れた研磨テープを容易かつ確実に製造することができる。
また、本発明のバーニッシュ加工方法によれば、研磨テープの砥粒層に含まれる砥粒の破砕や破砕粒の脱落を固体の樹脂層でもって抑えることができ、砥粒の破砕粒による磁気ディスクの汚染を抑えつつ、磁気ディスクの表面を平滑化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の研磨テープ、研磨テープの製造方法およびバーニッシュ加工方法について説明する。
(研磨テープ)
まず、本発明の研磨テープの実施形態について説明する。
図1は、本発明の研磨テープの実施形態を示す縦断面図である。
本発明の研磨テープ1は、その研磨面S(コーティング層の表面)を磁気ディスク10の表面に対して摺動させることにより、磁気ディスク10の表面に存在する異常突起を研磨して除去し、表面を平滑化するものである。
この研磨テープ1は、支持体2と、該支持体2上に設けられた砥粒層3と、該砥粒層3の表面を被覆するコーティング層4とを有している。
支持体2を構成する材料としては、特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート等の各種樹脂が用いられる。
【0013】
砥粒層3は、砥粒5と結合剤6とを含有し、その表面に砥粒5の粒子形状を反映した凹凸を有している。
砥粒5としては、例えば、酸化クロム、α−アルミナ、炭化珪素、非磁性酸化鉄、ダイヤモンド、γ−アルミナ、α,γ−アルミナ、熔融アルミナ、コランダム、人造ダイヤモンド等よりなる粒子が挙げられ、これらを1種または2種以上、適宜組み合わせて用いることもできる。
【0014】
結合剤6は、砥粒5と支持体2および砥粒5同士を結着する機能を有する。このような結合剤としては、特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂等がいずれも使用可能である。
熱硬化性樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ブタジエンスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリルゴム系MBS樹脂等が挙げられる。
感光性樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
これら樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いても構わない。
【0015】
本発明の研磨テープ1では、この砥粒層3の表面が、コーティング層4によって被覆されているところに特徴がある。
コーティング層4は、樹脂を主成分とし、厚さが0.5μm〜10μmの固体の層である。そして、コーティング層4は、砥粒層3の表面に沿って設けられ、その表面に、砥粒層3表面の凹凸形状を反映した凹凸が形成されている。この研磨テープ1は、この凹凸による研磨作用により、磁気ディスク10の表面に存在する異常突起を研磨・除去する。なお、以下の説明では、このコーティング層4の表面、もしくは、コーティングの表面に後述する液体潤滑剤層を設けた場合にはその表面を、「研磨面S」と称する場合がある。
【0016】
砥粒層3の表面に、コーティング層4が設けられていると、砥粒層3に含まれる砥粒5がコーティング層4によって保護される。このため、研磨テープ1を用いて磁気ディスク10のバーニッシュ加工を行った際に、砥粒層3に含まれる砥粒5の破砕やその破砕粒の脱落が抑えられ、砥粒5の破砕粒による磁気ディスク10の汚染を抑えつつ、磁気ディスク10の表面を平滑化することができる。
【0017】
コーティング層4を構成する樹脂としては、特に限定されないが、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも何れかを含むことが好ましい。これらの樹脂は、前述の砥粒層3に含まれる各種砥粒5との濡れ性が高いため、砥粒5が破砕したときに、その破砕粒を効果的に研磨テープ1に保持することが可能となる。
【0018】
また、コーティング層4の厚さは、研磨テープに用いる砥粒の粒径にもよるが、磁気ディスクのバーニッシュ加工に用いられる0.1μm〜40μmの砥粒に対して、0.5μm〜10μmの範囲内、より好ましくは1μm〜5μmの範囲内とし、砥粒の粒径の5倍から1/4程度の膜厚とするのが、砥粒の脱粒や破砕を防ぐ上で好ましい。なお、砥粒の粒径が細かい場合はコーティング層の厚さを粒径に対して厚くし、砥粒の粒径が粗い場合は砥粒の粒径に対して薄くすることが好ましい。
コーティング層4がこのような厚さで設けられていることにより、磁気ディスク10のバーニッシュ加工を行った際に、砥粒5の破砕により発生した、ほんのわずかな破砕粒の飛散を確実に防止することが可能となる。その結果、磁気ディスク10の表面に、磁気ヘッドの浮上走行の障害となる汚染物質(砥粒の破砕粒)が付着するのを確実に防止することが可能となる。
前記コーティング層4の厚さが0.5μmより薄くなると、砥粒5の破砕や破砕粒の脱落を防止する効果が不十分となる。また、コーティング層4の厚さが10μmより厚くなると、砥粒5の破砕および破砕粒の脱落は確実に防止されるが、砥粒5の表面を樹脂等の層が厚く覆いすぎ、研磨テープとしての機能が不十分となる。
【0019】
本発明の研磨テープ1では、コーティング層4の表面を更に液体潤滑層によって覆っていることが好ましい。液体潤滑層は、砥粒の破砕によって生じた破砕粒を研磨テープに保持する効果に加えて、バーニッシュ加工工程において、磁気ディスク10表面と研磨テープ1表面との間に生ずる剪断力(動摩擦係数)を安定化し、砥粒5の破砕をより抑制する効果を有する。
【0020】
液体潤滑層に用いる液体潤滑剤としては、特に限定されないが、パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物を含有しているのが好ましい。コーティング層4の表面を液体潤滑剤で覆った場合、バーニッシュ加工工程で、液体潤滑剤が磁気ディスク10に転写される場合がある。ここで、パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物は、磁気ディスク10表面に塗布する潤滑剤として一般的に用いられるため、仮に研磨テープ1の液体潤滑剤が磁気ディスク10に転写されても問題が生じないという利点がある。
【0021】
(研磨テープの製造方法)
次に、本発明の研磨テープの製造方法について説明する。
本発明の研磨テープの製造方法は、(1)砥粒と結合剤とを混練分散してスラリーを調製する工程と、(2)このスラリーを、支持体上に塗布することによって塗膜を形成する工程と、(3)塗膜を硬化することによって砥粒層を形成する工程と、(4)砥粒層の表面に、コーティング層を形成する工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0022】
(1)スラリー調製工程
まず、砥粒5と結合剤6とを混練分散してスラリーを調製する。
なお、結合剤6として前述の樹脂を用いる場合、その前駆体の状態で、砥粒と混練分散してもよい。ここで、樹脂の前駆体とは、この製造工程で行われる各種処理によって反応し、目的とする樹脂となるものであり、モノマーやオリゴマー等が挙げられる。
また、スラリーは、溶媒を含有していてもよい。これにより、スラリーを、後述する塗布工程に好適な粘度に調整することができる。
【0023】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0024】
スラリーにおける砥粒5の含有量は、結合剤6またはその前駆体に対して100〜400質量部であるのが好ましく、200〜400重量部であるのがより好ましい。砥粒5の含有量が400質量部より多いと、得られる砥粒層3において砥粒5が脱落し易くなる。また、砥粒5の含有量が100質量部より少ないと、砥粒5が結合剤6中に埋没してしまい、砥粒層3の表面に、砥粒5の粒子形状による凹凸を表出させるのが困難になる。混練機としては、この種の研磨テープの製造方法において通常用いられているものがいずれも使用可能である。
【0025】
(2)塗膜形成工程
次に、スラリーを、支持体2上に塗布して塗膜を形成する。
スラリーの塗布方法としては、この種の研磨テープの製造方法において通常用いられているものがいずれも使用可能であり、例えば、ロールコーター法、塗布法等が挙げられる。
【0026】
(3)塗膜硬化工程
次に、支持体2上に形成された塗膜を硬化することによって砥粒層3を形成する。
硬化の方法としては、加熱処理、紫外線照射等、塗膜に含まれる結合剤の種類に応じて適宜選択される。
以上の工程により、その表面に砥粒の粒子形状を反映した凹凸を有する砥粒層3が形成される。
【0027】
(4)コーティング層形成工程
次に、砥粒層3上に、コーティング層4を形成する。
コーティング層4は、樹脂またはその前駆体を砥粒層3上に塗布し、必要に応じて後処理(硬化処理)等を施すことによって形成することができる。
なお、樹脂またはその前駆体は、溶媒に溶解して樹脂液材とし、これを砥粒層3上に塗布するようにしてもよい。これにより、塗布に供される樹脂塗料を、好適な粘度に調整することができる。
【0028】
溶媒としては、上記工程(1)と同様のものを挙げることができる。
また、塗布方法としては、上記工程(2)と同様の方法を挙げることができる。
これにより、砥粒層3表面の凹凸形状を反映した表面形状を有するコーティング層4が得られる。
【0029】
(5)液体潤滑層形成工程
次に、コーティング層4上に、液体潤滑層を形成する。
液体潤滑層は、コーティング層4上に、液体潤滑剤または潤滑剤を溶剤に溶解した潤滑剤溶液を塗布することにより形成することができる。
塗布方法としては、上記工程(2)と同様の方法を挙げることができる。
なお、本工程は必要に応じて行われるものであり、砥粒5の破砕や破砕粒の脱落がコーティング層4のみで十分に抑えられる場合には、省略しても構わない。液体潤滑層としての厚さは、0.0001μm〜10μmの範囲とすることが好ましい。
【0030】
ここで、従来は、前述の(1)〜(4)の工程の内、(1)〜(3)の工程で研磨テープを製造するのが一般的である。従来の製造方法においても(1)の工程で砥粒を結合剤で混練するため、砥粒の表面が結合剤で覆われる。この混練物を、支持体上に塗布し、硬化させると、図5に示すように、砥粒150の表面が薄っすらと結合剤160により被覆された砥粒層130が得られる。しかしながら、この結合剤160の被覆層は大変薄く、本発明者の解析によると、その被覆膜厚は0.5μmより薄い。このように砥粒150の上部表面を覆う結合剤160の厚さが薄くなるのは、混練物を塗布した直後には砥粒150の上部表面を結合剤160が覆っているが、この結合剤160が、硬化時に自重によって支持体120側に降下してしまうからである。すなわち、最終的に得られる研磨テープでは、結合剤160が支持体120表面付近に偏在してしまい、砥粒150の上部表面での結合剤160の膜厚は極度に薄くなってしまう。
【0031】
このような砥粒層130を有する研磨テープを、磁気ディスクのバーニッシュ加工に用いた場合、結合剤160の厚さが薄いために、砥粒層130に含まれる砥粒150が脱粒あるいは破砕し易く、その破砕した破砕粒が研磨テープから容易に脱離し、磁気ディスク表面を汚染してしまう。例えば、図6に示すように、研磨テープに含まれる砥粒150が脱粒して脱粒痕60となるか、または破砕砥粒70となり、それらの脱粒または破砕した砥粒物は研磨テープから脱離し、バーニッシュ加工中の磁気ディスク表面を汚染させる。
これに対して、本発明の製造方法は、(1)〜(3)工程で形成した砥粒層3の表面に、さらに、固体のコーティング層4を設ける工程(4)を有する。このようにして製造された研磨テープ1は、砥粒層3に含まれる砥粒5がコーティング層4によって保護される。このため、研磨テープ1を用いて磁気ディスク10のバーニッシュ加工を行うに際して、砥粒層3に含まれる砥粒5の破砕や破砕粒の脱落が確実に抑えられ、砥粒5の破砕粒による磁気ディスク10の汚染を抑えつつ、磁気ディスク10の表面を平滑化することができる。
【0032】
(バーニッシュ加工方法)
次に、本発明のバーニッシュ加工方法について説明する。
図2は、本発明のバーニッシュ加工方法で用いられるバーニッシュ加工装置の一例を示す模式図、図3は、本発明のバーニッシュ加工方法によって加工が行われる磁気ディスクの一例を示す縦断面図である。
本発明のバーニッシュ加工方法では、磁気ディスク10の表面に、研磨テープ1の研磨面S(コーティング層の表面(液体潤滑剤層を設けた場合にはその表面))を押し当て、摺動させることによって、磁気ディスク10表面の異常突起物を研磨除去する。
まず、本発明のバーニッシュ加工方法が適用される磁気ディスクの一例について、図3を参照しながら説明する。
図3に示す磁気ディスク10は、非磁性基板11の両方の主面に、下地層12、中間層13、磁性層14、保護層15が順次積層され、最上層に潤滑剤層16が設けられて概略構成されている。
【0033】
非磁性基板11の材料としては、通常、磁気ディスク10の基板に用いられる非磁性のアルミ合金材料、ガラス材料等を何ら制限無く用いることができる。例えば、ガラス材料としては、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、非結晶ガラス類等が挙げられる。また、アルミ合金材料としては、Alを主成分としたAl−Mg合金等が挙げられる。これ以外に、非磁性基板11の材料には、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂材料等、非磁性材料であれば任意のものを用いることが可能である。
さらに、非磁性基板11は、アルミ材料またはガラス材料等からなる基体と、この基体表面にNiP、NiP合金、又は他の合金から選ばれる1種以上からなる膜を、メッキ、スパッタ法等の方法により蒸着させて形成した表面層とから構成されたものであっても良い。
【0034】
下地層12の材料としては、Ti,Mo,Al,Ta,W,Ni,B,Si,Mn及びVの群から選ばれる1種又は2種以上とCrとからなるCr合金か、或いはCrを用いることができる。
また、下地層12を多層構造の非磁性下地層とする場合には、非磁性下地層を構成する層の内、少なくとも1層を上記Cr合金又はCrで構成することができる。
また、非磁性下地層は、NiAl系合金、RuAl系合金、又はCr合金(Ti,Mo,Al,Ta,W,Ni,B,Si及びVの群から選ばれる1種もしくは2種以上とCrとからなる合金)で構成することもできる。
また、非磁性下地層を多層構造とする場合には、非磁性下地層を構成する各層の内、少なくとも1層をNiAl系合金、RuAl系合金、又は上記Cr合金で構成することができる。
【0035】
中間層13の材料としては、Co合金のエピタキシャル成長を助長する目的から、Coを主原料としたCo合金であってhcp構造を有する非磁性材料を用いることが好ましい。そのようなCo合金としては、例えば、Co−Cr系、Co−Cr−Ru系、Co−Cr−Ta系、Co−Cr−Zr系の合金等が挙げられ、中間層13は、これらCo合金からから選ばれる何れか1種を含むことが好ましい。
【0036】
磁性層14の材料としては、Coを主原料としたCo合金であって、hcp構造を有する材料を用いることが好ましい。そのようなCo合金としては、例えば、Co−Cr−Ta系、Co−Cr−Pt系、Co−Cr−Pt−Ta系、Co−Cr−Pt−B系、Co−Cr−Pt−B−Cu系の合金等が挙げられ、磁性層14は、これらCo合金から選ばれる何れか1種を含むことが好ましい。
なお、本実施形態の磁気ディスクでは、さらに、磁性層を2種以上の層よりなる積層構造としてもよい。
【0037】
保護層15としては、プラズマCVD法によって形成されるCVDカーボン、非晶質カーボン、含水素カーボン、含窒素カーボン、含フッ素カーボンなどのカーボン系材料、シリカ、ジルコニア等のセラミック系材料を適宜選択して用いることができる。なかでも、硬く緻密なCVDカーボンが、耐久性の面のみならず、経済性、生産性等の面から好適に用いられる。保護層15の膜厚は、薄すぎると耐久性が低下し、厚すぎると記録再生時の損失が大きくなるため、10〜150Å(1〜15nm)、好ましくは20〜60Å(2〜6nm)に設定することが好ましい。
【0038】
最上層である潤滑剤層16の材料としては、重合性不飽和基含有パーフロロポリエーテル化合物の重合物が好適である。重合性不飽和基含有パーフロロポリエーテル化合物としては、例えば、主鎖であるパーフロロポリエーテルの少なくとも一端に、重合性を有する不飽和結合を持つ有機基が結合されてなる化合物等を挙げることができる。
【0039】
なお、本発明のバーニッシュ加工方法によって加工が行われる磁気ディスクは、面内磁気ディスク、垂直磁気ディスクのいずれでも良い。
次に、本発明のバーニッシュ加工方法に用いられるバーニッシュ加工装置の一例について、図2を参照しながら説明する。
【0040】
図2に示すバーニッシュ加工装置20は、磁気ディスク回転駆動機構21と、研磨テープ1a、1bと、研磨テープ走行系22と、研磨テープ押圧手段23とを有している。
磁気ディスク回転駆動機構21は、図示しないスピンドルモータによって回転駆動されるスピンドル24と、スピンドル24の中心に取り付けられた磁気ディスク保持機構25とを有している。磁気ディスク保持機構25には、磁気ディスク10の中心が装着され、磁気ディスク10が保持される。磁気ディスク保持機構25に磁気ディスク10が保持された状態で、スピンドル24が回転駆動されると、磁気ディスク10がスピンドル24の回転方向および回転数に応じて回転操作される。
【0041】
なお、この磁気ディスク回転駆動機構21は、回転している磁気ディスク10のトラックの走査方向が、後述する第1のガイドロール26と第2のガイドロール27との間を走行する第1の研磨テープ1aの走行方向(図2中矢印Ra方向)、および、第5のガイドロール30と第6のガイドロール31との間を走行する第2の研磨テープ1bの走行方向(図2中矢印Rb方向)と逆方向となるような回転方向(図2中矢印r方向)で、磁気ディスク10を回転操作するように構成されている。
【0042】
研磨テープ1a、1bは、前述の研磨テープの製造方法によって製造された長尺状のものである。
このバーニッシュ加工装置20は、その研磨面Sが、磁気ディスク10の一方の主面10aと対向するように走行する第1の研磨テープ1aと、その研磨面Sが、磁気ディスク10の他方の主面10bと対向するように走行する第2の研磨テープ1bとを有している。
研磨テープ走行系22は、磁気ディスク10を挟んで、一方の側に配設された第1の研磨テープ走行系22aと他方の側に配設された第2の研磨テープ走行系22bとを有している。第1の研磨テープ走行系22aは、図示しない供給ロールおよび巻取りロールと、供給ロールおよび巻取りロールより下方に配設された第1のガイドロール26〜第4のガイドロール29とを有している。
第1のガイドロール26〜第4のガイドロール29は、各回転軸が磁気ディスク10の一方の主面10aと略平行に、且つ、回転軸同士が互いに略平行となるように配設されている。そして、第1のガイドロール26および第2のガイドロール27は、磁気ディスク10の一方の主面10aとの距離が略等しくなるように配設され、第3のガイドロール28および第4のガイドロール29は、第1のガイドロール26および第2のガイドロール27よりも磁気ディスク10から離れた位置で、磁気ディスク10の一方の主面10aからの距離が略等しくなるように配設されている。
【0043】
このように構成された第1の研磨テープ走行系22aでは、供給ロールから長尺状の第1の研磨テープ1aが順次送り出される。供給ロールから送り出された第1の研磨テープ1aは、第1のガイドロール26〜第4のガイドロール29にガイドされつつ、略コ字状の走行路を辿って走行した後、巻取りロールに巻き取られる。ここで、第1の研磨テープ1aは、第1のガイドロール26と第2のガイドロール27との間を走行する際、その研磨面Sが、磁気ディスク10の一方の主面10aと対向した状態となる。
【0044】
一方、第2の研磨テープ走行系22bは、図示しない供給ロールおよび巻取りロールと、第5のガイドロール30〜第8のガイドロール33とを有している。
第5のガイドロール30〜第8のガイドロール33は、それぞれ、磁気ディスク10を挟んで、第1のガイドロール26〜第4のガイドロール29と左右対称となるように配設されている。
このように構成された第2の研磨テープ走行系22bでは、供給ロールから長尺状の第2の研磨テープ1bが順次送り出される。供給ロールから送り出された第2の研磨テープ1bは、第5のガイドロール30〜第8のガイドロール33にガイドされつつ、略コ字状の走行路を辿って走行した後、巻取りロールに巻き取られる。ここで、第2の研磨テープ1bは、第5のガイドロール30と第6のガイドロール31との間を走行する際、その研磨面Sが、磁気ディスク10の他方の主面10aと対向した状態となる。
【0045】
研磨テープ押圧手段23は、第1のガイドロール26と第2のガイドロール27との間を走行する第1の研磨テープ1aを、磁気ディスク10の一方の主面10a側に押圧して接触させる(押し当てる)第1の研磨テープ押圧手段23aと、第5のガイドロール30と第6のガイドロール31との間を走行する第2の研磨テープ1bを、磁気ディスク10の他方の主面10a側に押圧して接触させる(押し当てる)第2の研磨テープ押圧手段23bとを有する。
【0046】
磁気ディスク10が、磁気ディスク回転駆動機構21によって図2中矢印r方向に回転駆動された状態で、第1のガイドロール26と第2のガイドロール27との間を走行する第1の研磨テープ1aが、第1の研磨テープ押圧手段23aによって磁気ディスク10の一方の主面10aに押し当てられ、第5のガイドロール30と第6のガイドロール31との間を走行する第2の研磨テープ1bが、第2の研磨テープ押圧手段23bによって磁気ディスク10の他方の主面10a側に押し当てられると、磁気ディスク10の一方の主面10aおよび他方の主面10aが、それぞれ、第1の研磨テープ1aの研磨面Sおよび第2の研磨テープ1bの研磨面Sによって摺動される。これにより、磁気ディスク10の両主面に存在する異常突起物が、各研磨テープ1a、1bの研磨作用によって研磨除去され、両主面が平滑化される。ここで、本実施形態のバーニッシュ加工装置20では、未使用の研磨テープ1a、1bが順次供給ロールから送り出され、研磨処理に使用された後、巻取りロールに巻き取られるため、磁気ディスク10の各主面には常に未使用の研磨テープ1a、1bが供給される。このため、磁気ディスク10の各主面10a、10bを効率よく研磨することができる。
【0047】
第1の研磨テープ押圧手段23aおよび第2の研磨テープ押圧手段23bとしては、研磨テープ1a、1bと接触する部分が柔軟性を有する材料によって構成されているのが好ましい。これにより、研磨テープ1a、1bの研磨面Sを磁気ディスク10の表面に密着性よく押し当てることができ、磁気ディスク10の表面を効率よく研磨することができる。そのような第1の研磨テープ押圧手段23aおよび第2の研磨テープ押圧手段23bとしては、例えば、樹脂や織布等よりなるパッドや、ゴムローラ等の押圧部材を有し、これら押圧部材を研磨テープの裏面に当接させ、研磨テープ1a、1bを磁気ディスク10側に押圧するように構成されたもの等が挙げられる。
【0048】
本実施形態のバーニッシュ加工装置20では、第1の研磨テープ押圧手段23aおよび第2の研磨テープ押圧手段23bは、それぞれ、金属ブロック34、35と、金属ブロック34、35の一側面に取り付けられたパッド36、37と、金属ブロック34、35を水平方向(磁気ディスクの各主面に対して直交する方向、図中矢印F1方向およびF2方向)に往復移動操作する駆動手段(図示せず)とを有する。
【0049】
このような研磨テープ押圧手段23a、23bでは、図2(a)に示すように、パッド36、37が研磨テープ1a、1bから離間した状態(待機状態)で、駆動手段が、金属ブロック34、35を図中矢印F1方向に移動操作すると、パッド36、37が研磨テープ1a、1bの裏面に当接し、さらに、研磨テープ1a、1bを磁気ディスク10側に押圧する。その結果、図2(b)に示すように、研磨テープ1a、1bの研磨面Sが磁気ディスク10の主面に接触する。また、この状態で、駆動手段が、金属ブロック34、35を図中矢印F2方向に移動操作すると、研磨テープ1a、1bが磁気ディスク10から離間し、さらに、パッド36、37が研磨テープ1a、1bから離間して待機状態に復帰する。
【0050】
次に、バーニッシュ加工装置20の動作について説明する。
まず、第1の研磨テープ走行系22aおよび第2の研磨テープ走行系22bに、それぞれ、第1の研磨テープ1aおよび第2の研磨テープ1bを掛け渡す。
また、磁気ディスク10を、磁気ディスク保持機構25に装着し、保持させる。
なお、図4(a)に示すように、このバーニッシュ加工装置20では、初期状態では、第1の研磨テープ押圧手段23aおよび第2の研磨テープ押圧手段23bの各パッド36、37が、研磨テープ1a、1bから離れた位置(待機状態)となっている。
【0051】
次に、各部の動作をオンにすると、磁気ディスク回動駆動機構21は、磁気ディスク10を図中矢印r方向に回転駆動する。また、各供給ロールは、それぞれ、第1の研磨テープ1aおよび第2の研磨テープ1bを順次送り出す。送り出された第1の研磨テープ1aは、第1のガイドロール26〜第4のガイドロール29にガイドされつつ、略コ字状の走行路を辿って走行した後、巻取りロールに巻き取られる。また、送り出された第2の研磨テープ1bは、第1のガイドロール30〜第4のガイドロール33にガイドされつつ、略コ字状の走行路を辿って走行した後、巻取りロールに巻き取られる。
【0052】
このとき、第1のガイドロール26と第2のガイドロール27との間を走行する第1の研磨テープ1aは、その研磨面Sが、磁気ディスク10の一方の主面10aと対向し、磁気ディスク10のトラックの走査方向と逆方向に走行する。
また、第5のガイドロール30と第6のガイドロール31との間を走行する第2の研磨テープ1bは、その研磨面Sが、磁気ディスク10の他方の主面10aと対向し、磁気ディスク10のトラックの走査方向と逆方向に走行する。
【0053】
次に、第1の研磨テープ押圧手段23aは、第1のガイドロール26と第2のガイドロール27との間を走行する第1の研磨テープ1aを、磁気ディスク10の一方の主面10a側に押圧し、該研磨テープ1aの研磨面Sを接触させる(押し当てる)。また、第2の研磨テープ押圧手段23bは、第5のガイドロール30と第6のガイドロール31との間を走行する第2の研磨テープ1bを、磁気ディスク10の他方の主面10a側に押圧し、該研磨テープ1bの研磨面Sを接触させる(押し当てる)。
【0054】
磁気ディスク10が、図中矢印r方向に回転駆動された状態で、走行している第1の研磨テープ1aの研磨面Sが磁気ディスク10の一方の主面10aに押し当てられ、また、走行している第2の研磨テープ1bの研磨面Sが磁気ディスク10の他方の主面10aに押し当てられると、磁気ディスク10の一方の主面10aおよび他方の主面10aが、それぞれ、第1の研磨テープ1aの研磨面Sおよび第2の研磨テープ1bの研磨面Sによって摺動される。これにより、磁気ディスク10の両主面に存在する突起物が、各研磨テープ1a、1bの研磨作用が研磨除去され、平滑化される。
【0055】
ここで、本発明では、研磨テープ1に上述の構造のコーティング層4が設けられていることにより、砥粒層3に含まれる砥粒5の破砕や破砕粒の脱落が抑えられ、破砕粒による磁気ディスク10の汚染を抑えつつ、磁気ディスク10の表面を平滑化することができる。このため、加工が行われた磁気ディスク10は、磁気ヘッドの浮上量が微小な磁気記録再生装置(ハードディスク装置)に適用した場合でも、磁気ヘッドと磁気ディスク10との衝突が抑えられ、良好な動作特性を得ることができる。
【0056】
(磁気記録再生装置)
次に、本発明のバーニッシュ加工方法によって加工された磁気ディスクが適用される磁気記録再生装置の一例について説明する。
図4は、この磁気記録再生装置の一例を示す概略構成図である。
この磁気記録再生装置80は、本発明のバーニッシュ加工方法によって加工された磁気ディスク10と、磁気ディスク10を回転駆動する媒体駆動部81と、磁気ディスク10に情報を記録するとともに記録された情報を再生する磁気ヘッド82と、磁気ヘッド27を磁気記録媒体30に対して相対移動させるヘッド駆動部83と、記録再生信号処理系84とを備えている。記録再生信号処理系84は、入力されたデータを処理し、得られた記録信号を磁気ヘッド82に送出するとともに、磁気ヘッド82からの再生信号を処理し、得られたデータを出力するように構成されている。
【0057】
ここで、この磁気記録再生装置80では、磁気ディスク10が、本発明のバーニッシュ加工方法によって表面平滑化されていることにより、表面の平滑性が高く、また、表面の清浄性が高い。このため、磁気ヘッド82の浮上量が微小であっても、磁気ヘッド82と磁気ディスク10との衝突が抑えられ、高い記録密度および信頼性を得ることができる。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明を実証するための実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
「磁気ディスクの製造」
洗浄済みのガラス基板(HOYA社製、外形2.5インチ)を、DCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製 商品名C−3010)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気した。そして、このガラス基板上に、89Co−4Zr−7Nb(Co含有率89at%、Zr含有率4at%、Nb含有率7at%)のターゲットを用いて100℃以下の基板温度で、厚さ100nmの下地層をスパッタリングにより成膜した。
【0059】
次いで、ガラス基板を200℃に加熱して、下地層上に、65Co−30Cr−5Bターゲットを用いて厚さ5nmの中間層を形成した。続いて、61Co−20Cr−17Pt−2Bターゲットを用いて厚さ25nmの磁性層14を形成した。なお、このスパッタリング工程においては、成膜用のプロセスガスとしてアルゴンを用い、成膜チャンバ内の圧力を0.5Paとして成膜を行った。
次いで、プラズマCVD法により、磁性層上に、厚さ5nmの保護膜層を形成した。
次いで、ディッピング法により、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑剤層を形成した。
以上の工程により、ガラス基板上に各層が成膜された磁気ディスクを得た。
【0060】
「研磨テープの製造」
(実施例1)
まず、平均粒径0.5μmの結晶成長タイプのアルミナ粒子とエポキシ樹脂とを含有するスラリーを調製した。
このスラリーを、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に塗布し、硬化することによって、アルミナ粒子の単粒子層がフィルム上に固着してなる砥粒層を形成した。この砥粒層は、フィルム面からの厚さが約0.3μm、アルミナ粒子の上部表面に被覆されたエポキシ樹脂層の厚さが約0.2μmであった。
次に、砥粒層の表面に、ポリウレタン樹脂を含有する樹脂液材を塗布し、乾燥することによってコーティング層を形成した。コーティング層の厚さは、約1μmであった。
以上の工程により、研磨テープを得た。
【0061】
(実施例2)
コーティング層の表面に、パーフルオロポリエーテルを約0.01μmの厚さで塗布することによって液体潤滑層を形成した以外は、前記実施例1と同様にして研磨テープを得た。
【0062】
(比較例)
砥粒層の表面に、コーティング層を形成しない以外は前記実施例1と同様にして研磨テープを得た。
【0063】
「研磨テープの評価」
以上のようにして製造された各研磨テープを、図1に示すバーニッシュ加工装置にセットし、前述のようにして製造された磁気ディスク1000枚について、バーニッシュ加工を行った。ここで、磁気ディスクの回転数は300rpm、研磨テープの送り速度は10mm/秒、研磨テープを磁気ディスクに押し当てる際の押圧力は98mN、処理時間は5秒間とした。
そして、加工が行われた各磁気ディスクについて、テスター(表面試験装置)を用いて汚染状況を評価した。汚染状況は、アルミナ破砕粒(約0.5μm程度の大きさもの)の突き刺さりが観察されたディスクの枚数を計測することによって評価した。その結果を以下の表1に示す。
「表1」
アルミナ粉砕粒の突き刺さりを生じたディスク枚数
実施例1 3
実施例2 0
比較例 5
【0064】
表1に示すように、実施例1、2で製造された研磨テープによってバーニッシュ加工を行った磁気ディスクは、比較例1で製造された研磨テープによってバーニッシュ加工を行った磁気ディスクに比べてアルミナ破砕粒による汚染が抑えられていた。また、特に、液体潤滑剤層が設けられた研磨テープ(実施例2)によってバーニッシュ加工を行った磁気ディスクは、アルミナ破砕粒の突き刺さりが全く観察されず、汚染が確実に抑えられていた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の研磨テープによれば、砥粒の破砕粒による磁気ディスクの汚染を抑えつつ、磁気ディスクの表面を平滑化することができるので、特にヘッド浮上量が微小なハードディス装置に適用される磁気ディスクのバーニッシュ加工に用いる研磨テープとして好適である。
また、本発明の研磨テープの製造方法によれば、このような研磨テープを、簡易な工程で確実に製造することができるため、研磨性能に優れた研磨テープを生産性よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は本発明の研磨テープの一例を示す縦断面図である。
【図2】図2は図1に示す研磨テープを適用したバーニッシュ加工装置の一例を示す模式図である。
【図3】図3は図2に示すバーニッシュ加工装置によって加工が行われる磁気ディスクの一例を示す縦断面図である。
【図4】図4は図3に示す磁気ディスクが適用される磁気記録再生装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】図5は従来の製造方法によって製造された研磨テープの一例を示す縦断面図である。
【図6】図6は従来の研磨テープから砥粒が脱粒あるいは破砕した状態を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1…研磨テープ、1a…第1の研磨テープ、1b…第2の研磨テープ、2…支持体、3…砥粒層、4…コーティング層、5…砥粒、6…結合剤、10…磁気ディスク、10a…一方の主面、10b…他方の主面、21…磁気ディスク回転駆動機構、22…研磨テープ走行系、22a…第1の研磨テープ走行系、22b…第2の研磨テープ走行系、23…研磨テープ押圧手段、23a…第1の研磨テープ押圧手段、23b…第2の研磨テープ押圧手段、24…スピンドル、25…磁気ディスク保持機構、26…第1のガイドロール、27…第2のガイドロール、28…第3のガイドロール、29…第4のガイドロール、30…第5のガイドロール、31…第6のガイドロール、32…第7のガイドロール、33…第8のガイドロール、80…磁気記録再生装置、S…研磨面、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスクのバーニッシュ加工に用いられる研磨テープであって、
支持体と、
該支持体上に設けられ、砥粒を含有する砥粒層と、
該砥粒層の表面を被覆するコーティング層とを有し、
前記コーティング層は、樹脂を主成分とする固体の層であり、厚さが0.5μm〜10μmの範囲内であることを特徴とする研磨テープ。
【請求項2】
前記個体の層を構成する樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の研磨テープ。
【請求項3】
前記固体の層の上にパーフルオロポリエーテル構造を有する化合物を含む液体潤滑層が形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨テープ。
【請求項4】
磁気ディスクのバーニッシュ加工に用いられる研磨テープの製造方法であって、
砥粒と結合剤とを混練分散してスラリーを調製する工程と、
前記スラリーを、支持体上に塗布することによって塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化することによって砥粒層を形成する工程と、
前記砥粒層の表面に、コーティング層を形成する工程とを有することを特徴とする研磨テープの製造方法。
【請求項5】
前記コーティング層は、樹脂を主成分とする固体の層であることを特徴とする請求項4に記載の研磨テープの製造方法。
【請求項6】
前記コーティング層を形成する工程の後に、前記コーティング層の表面に、液体潤滑層を設ける工程を有することを特徴とする請求項4または5に記載の研磨テープの製造方法。
【請求項7】
前記コーティング層の厚さが、0.5μm〜10μmの範囲内であることを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の研磨テープの製造方法。
【請求項8】
前記コーティング層は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項4〜7の何れか1項に記載の研磨テープの製造方法。
【請求項9】
前記液体潤滑層は、パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物を含むことを特徴とする請求項4〜8の何れか1項に記載の研磨テープの製造方法。
【請求項10】
回転している磁気ディスクの表面に、研磨テープの砥粒面を押し当て摺動させることにより、前記磁気ディスクの表面を研磨する磁気ディスクのバーニッシュ加工方法において、
前記研磨テープとして、前記請求項1〜3の何れか1項に記載の研磨テープを用いることを特徴とするバーニッシュ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−12530(P2010−12530A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172597(P2008−172597)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】