研磨パッドおよびその製造方法
【課題】裏面までスラリーが浸潤し難く、かつ、十分な研磨力を有する研磨パッドを提供する。
【解決手段】研磨パッド1の製造方法は、研磨面11に溝12が形成された研磨パッド1を製造するための方法であり、パッド素材となるシート状の人工皮革10を研磨面11と垂直な方向に均一にプレスする第1プレス工程と、人工皮革10の研磨面11を、形成したい溝12に応じた形状のフレームからなる溝形成用金型51によってプレスする第2プレス工程との2段階のプレス工程を含んでいる。この製造方法によれば、溝12が溝形成用金型51を用いたプレス加工によって形成され、溝12周辺の材料が圧縮されて密度が高くなっているために、研磨パッド1の裏面までスラリーが浸潤し難くなっている。また、研磨面11の研磨部位13も第1プレス工程で圧縮されて剛性が高められているので、十分な研磨力を有している。
【解決手段】研磨パッド1の製造方法は、研磨面11に溝12が形成された研磨パッド1を製造するための方法であり、パッド素材となるシート状の人工皮革10を研磨面11と垂直な方向に均一にプレスする第1プレス工程と、人工皮革10の研磨面11を、形成したい溝12に応じた形状のフレームからなる溝形成用金型51によってプレスする第2プレス工程との2段階のプレス工程を含んでいる。この製造方法によれば、溝12が溝形成用金型51を用いたプレス加工によって形成され、溝12周辺の材料が圧縮されて密度が高くなっているために、研磨パッド1の裏面までスラリーが浸潤し難くなっている。また、研磨面11の研磨部位13も第1プレス工程で圧縮されて剛性が高められているので、十分な研磨力を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに関するものであり、特に、研磨面に溝が形成された研磨パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の表面を平坦化するために、化学機械研磨が用いられている。化学機械研磨は、基板などのワークと研磨パッドとの間に研削性微粒子であるスラリーを供給し、研磨パッドをワークに対して摺動させることによって行われる。研磨パッドがワークに対して摺動することにより、それらの間に供給されたスラリーは、ワーク表面に化学反応を起こさせるとともに、化学反応を起こしたワーク表層を研削する。従って、スラリーが研磨パッドの表面に均一に分布していないと、ワークの研磨に偏りが生じるおそれがある。特に、大面積のワーク表面を短時間で研磨するために研磨パッドの研磨面を大きくする場合には、いかにしてスラリーを研磨面の全体に均一に行き渡らせ、保持させるかが重要になってくる。
【0003】
特許文献1,2には、研磨パッドの研磨面にスラリーを均一に分布させるために、研磨面に所定のパターンの溝が形成された研磨パッドが開示されている。これらの技術によれば、スラリーが研磨パッドの研磨面に形成された溝に保持されるため、研磨対象の基板を均一に研磨することができる。
【0004】
このような研磨パッドを作製する方法としては、以下の2通りの方法が一般的に用いられている。図7は、研磨面に溝が形成された研磨パッドを作製するための第1の方法を示す模式図である。この方法では、まず、人工皮革などのパッド素材100を検品した後、図7に示すように、パッド素材100の研磨面101を平坦なプレス面を有するプレス部材110を備えたプレス機により均一にプレスする。その結果、パッド素材100は、研磨面101と垂直な方向に50%程度に圧縮される。そして、パッド素材100の厚みを検査する。
【0005】
次に、溝幅と等しい厚みを有するダイヤモンドホイールを用いて、圧縮したパッド素材100の研磨面101に切溝加工を施す。この切溝加工は、研磨面101に形成したい溝の本数分だけ行われる。最後に、溝幅をマイクロスコープによって検査する。以上により、研磨パッド105が完成する。この研磨パッド105の溝102にはスラリーが溜まり、溝102以外の研磨部位103によってワークを研磨する。
【0006】
一方、図8は、研磨面に溝が形成された研磨パッドを作製するための第2の方法を示す説明図である。この方法では、格子状(升目状)のフレームを有する溝形成用金型を使用する。まず、パッド素材100および溝形成用金型111を検品した後、図8に示すように、溝形成用金型111によってパッド素材100の研磨面101をプレスする。これにより、パッド素材100の研磨面101のうち、金型111のフレーム部分が圧接される領域に溝102が形成される。また、金型111のフレーム部分が圧接されない領域は、研磨部位103となる。そして最後に、溝幅をマイクロスコープによって検査する。以上により、研磨パッド105が完成する。
【0007】
以上のようにして溝102が形成された研磨パッド105について、図9に示すように、研磨面101と反対側の裏面に両面テープ115を貼着し、この両面テープ115によって研磨パッド105を化学機械研磨装置の所定の取付位置に固定する。
【特許文献1】特開2000−354952号公報(平成12年12月26日公開)
【特許文献2】特開2006−196907号公報(平成18年7月27日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、研磨面に溝が形成された従来の研磨パッド105は、短寿命であったり、研磨力が十分でなかったりするなどの問題を抱えている。
【0009】
上述した第1の方法では、パッド素材100を切り取ることにより溝102を形成するため、切り取り時のダメージにより、研磨中に研磨パッド105が破れてしまうことがある。また、研磨パッド105のうち溝102が形成されている部分は、材料が除去されて少なくなっているので、図10に示すように、溝102から研磨パッド105に染み込んだスラリーが両面テープ115の裏面まで達し易くなっている。それゆえ、両面テープ115と研磨パッド105との間にスラリーが入り込み、研磨パッド105が両面テープ115から剥がれてしまうことがある。図11は、未使用の研磨パッド105の裏面の様子を示す図であり、図12は、剥がれた研磨パッド105の裏面の様子を示した図である。図12から、剥がれた研磨パッドでは、両面テープと研磨パッドとの間にスラリーが入り込んでいたことが分かる。
【0010】
一方、上述した第2の方法では、1度のプレスによってパッド素材100の圧縮と溝102の形成との双方を行っているため、研磨パッド105のうち、ワークを摺擦する研磨部位103を十分に圧縮することができない。具体的には、第1の方法によって作成された研磨パッド105では、上述したように研磨部位103が約50%の厚みになるように圧縮されるのに対し、第2の方法では、研磨部位103が70%から80%程度の厚みにしか圧縮されない。それゆえ、第2の方法で作製した研磨パッド105は、研磨部位103の剛性が不足し、十分な研磨力を得ることができないという問題を抱えている。
【0011】
さらに、第2の方法の場合、溝102に対応する領域と研磨部位103に対応する領域との双方を同時にプレスするために、溝102に対応する領域に押し圧が十分にかからず、形成された溝102が浅くなってしまうという問題もある。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、裏面までスラリーが浸潤し難く、かつ、十分な研磨力を有する研磨パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る研磨パッドの製造方法は、研磨面に溝が形成された研磨パッドの製造方法であって、上記研磨パッドのパッド素材を研磨面と垂直な方向に均一にプレスする圧縮工程と、上記パッド素材の研磨面にプレス加工により溝を形成する溝形成工程とを含んでいることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、溝形成工程においてプレス加工によって溝が形成されるため、溝周辺の材料は、圧縮されて密度が高くなる。それゆえ、切溝加工の場合とは異なり、スラリーが研磨パッドの裏面まで浸潤し難くなる。さらに、上記の構成によれば、溝形成工程とは別に研磨パッドのパッド素材を均一にプレスする圧縮工程が含まれているため、研磨面のうち、溝が形成されておらずワークを摺擦する研磨部位についても、十分に圧縮を行い、剛性を高めることができる。それゆえ、得られた研磨パッドが十分な研磨力を有するようになる。
【0015】
さらに、溝形成工程では、研磨面のうち、研磨部位に対応する領域をプレスする必要がないため、溝に対応する領域に十分な大きさのプレス圧が伝わる。それゆえ、十分な深さの溝を容易に形成することができる。
【0016】
なお、上記圧縮工程では、プレス後のパッド素材の厚みが、上記圧縮工程および溝形成工程を施す前のパッド素材の厚みの30%よりも大きくかつ70%よりも小さくなるように、パッド素材をプレスすることが好ましい。
【0017】
従来の第2の方法によれば、研磨部位は、最大でも70から80%程度の厚みにしか圧縮されないため、研磨部位が十分な剛性を得ることができない。これに対して、本発明の上記構成によれば、パッド素材を圧縮する圧縮工程が溝形成工程とは別に含まれているため、研磨部位を70%未満の厚みになるように圧縮することができる。このように、圧縮工程でのパッド素材の圧縮率を高めれば、研磨部位の剛性が高くなり、研磨パッドの研磨力が向上する。なお、30%を大きく下回るような厚みにパッド素材を圧縮するのは困難であるが、30%以上の厚みになるように圧縮するのは十分に可能である。
【0018】
さらに、上記圧縮工程では、プレス後のパッド素材の厚みが、上記圧縮工程および溝形成工程を施す前のパッド素材の厚みの45%以上55%以下になるように、パッド素材をプレスすることがより好ましい。
【0019】
上記構成によれば、圧縮工程でのパッド素材の圧縮率をさらに高めることにより、研磨パッドの研磨力を一層向上させることができる。また、溝形成工程ではプレス加工によってパッド素材に溝を形成するため、溝部においてはさらに高い圧縮率でパッド素材を圧縮する必要がある。ここで、圧縮工程でのパッド素材の厚みを45%以上に留めておくことにより、溝形成工程において十分な深さの溝をプレス加工により形成することができる。
【0020】
なお、本発明に係る研磨パッドの製造方法では、上記溝形成工程、上記圧縮工程のいずれを先に行ってもよいが、上記溝形成工程を上記圧縮工程の後に行うことが好ましい。
【0021】
溝形成工程を圧縮工程の前に行う場合、プレス加工による溝の形成の際に、溝周辺の材料が溝へと引き込まれることにより、研磨部位の表面形状が山形となる。このように一度研磨部位の表面形状が山形になると、その後に研磨部位を均一にプレスしたとしても、研磨部位を平坦に戻すことができない。これに対して溝形成工程を圧縮工程の後に行う場合、まず、パッド素材の圧縮が行われることにより、パッド素材全体の剛性が高くなる。それゆえ、次のプレス加工による溝の形成の際に、溝周辺の材料が溝へと引き込まれにくくなり、結果として、研磨部位の表面を平坦にすることができる。従って、研磨力の均一な研磨パッドを得ることができる。
【0022】
また、上記溝形成工程でのプレス温度は、上記圧縮工程でのプレス温度よりも低いことが好ましい。
【0023】
溝形成工程でのプレス温度が圧縮工程でのプレス温度よりも高い場合、プレス加工による溝の形成の際に、溝周辺の材料が溝へと引き込まれ易くなり、研磨部位の表面形状が山形となる傾向にある。しかしながら、本発明の上記構成によれば、溝形成工程でのプレス温度が圧縮工程でのプレス温度よりも低いために、プレス加工による溝の形成の際に、溝周辺の材料が溝へと引き込まれにくくなる。それゆえ、研磨部位の表面が平坦で、研磨力の均一な研磨パッドを得ることができる。
【0024】
なお、本発明に係る研磨パッドの製造方法では、上記パッド素材が人工皮革であることが好ましい。上記構成によれば、安価に入手できる人工皮革を用いることにより、機能性の高い研磨パッドを安価に製造することができる。
【0025】
この場合、上記溝形成工程でのプレス温度は、120℃よりも高く160℃よりも低いことが好ましい。上記構成によれば、後述する実施例に示すように、十分な深さの溝と平坦な研磨部位とを有する研磨パッドを得ることができる。
【0026】
また、本発明に係る研磨パッドは、研磨面を有し、パッド素材を成形してなる研磨パッドであって、プレス加工によって形成された溝を上記研磨面に有し、上記研磨面のうちの上記溝を除く研磨部位は、該研磨部位における研磨パッドの厚みが成形前の上記パッド素材の厚みの30%よりも大きくかつ70%未満になるように、研磨面と垂直な方向に圧縮されていることを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、研磨パッドは、プレス加工によって形成された溝を有しているため、溝周辺の材料が圧縮され、密度が高くなっている。それゆえ、切溝加工によって形成された溝とは異なり、スラリーが研磨パッドの裏面まで浸潤し難くなっている。さらに、研磨対象となるワークを摺擦する研磨部位では、パッド素材が成形前の厚みの70%未満になるように圧縮されているため、研磨部位の剛性が向上している。それゆえ、研磨パッドは十分な研磨力を有している。なお、30%を大きく下回るような厚みにパッド素材を圧縮するのは困難であるが、30%以上の厚みになるように圧縮するのは十分に可能である。
【0028】
さらに、上記研磨部位は、該研磨部位における研磨パッドの厚みが成形前の上記パッド素材の厚みの45%以上55%以下になるように、研磨面と垂直な方向に圧縮されていることが好ましい。
【0029】
上記構成によれば、研磨部位の圧縮率がさらに高くなっていることにより、研磨パッドの研磨力を一層向上させることができる。また、研磨面の溝はプレス加工によって形成されているため、溝部の圧縮率は研磨部位よりも高くなっている。ここで、研磨部位の厚みを当初のパッド素材の45%以上にすることにより、十分な深さの溝を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明に係る研磨パッドの製造方法は、研磨パッドのパッド素材を研磨面と垂直な方向に均一にプレスする圧縮工程と、パッド素材の研磨面にプレス加工により溝を形成する溝形成工程とを含んだ構成となっている。
【0031】
それゆえ、上述したように、裏面までスラリーが浸潤し難く、かつ、十分な研磨力を有する研磨パッドを得ることができる。
【0032】
また、本発明に係る研磨パッドは、プレスによって形成された溝を研磨面に有し、研磨面のうちの溝を除く研磨部位は、該研磨部位における研磨パッドの厚みが成形前のパッド素材の厚みの30%よりも大きくかつ70%よりも小さくなるように、研磨面と垂直な方向に圧縮された構成となっている。
【0033】
それゆえ、上述したように、裏面までスラリーが浸潤し難く、かつ、十分な研磨力を有する研磨パッドを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
〔実施形態〕
本発明の一実施形態について図1から図6に基づいて説明すると以下の通りである。図2は、本発明の一実施形態を示すものであり、研磨パッドの構造を示す図である。なお、図2の上側の図は研磨パッド1の平面図であり、下側の図は、上側の図の一点鎖線の位置において鉛直方向に研磨パッド1を切断したときの研磨パッド1の縦断面図である。
【0035】
本実施形態の研磨パッド1は、パッド素材を成形してなるものであり、化学機械研磨装置に好適に使用することができる。研磨パッド1のパッド素材としては、ウレタン樹脂などからなるシート状の公知の各種人工皮革10を使用することができる。具体的には、ナイロン繊維不織布のウレタン湿式発泡により製作したベロアタイプの人工皮革などが好適であるが、特に限定されない。そして、この人工皮革10の、ワークと対向する研磨面11には、図2に示すように、全面に渡って溝12が設けられている。これにより、人工皮革10の研磨面11は、溝12とワークを摺擦する研磨部位13とから構成される。
【0036】
本実施形態の研磨パッド1では、上述した従来の研磨パッドと同様、研磨面11全体に渡って形成された溝12によって、酸化セリウムなどを含むスラリーが好適に保持され、基板などのワークを均一に研磨することができるようになっている。なお、図2では、個々の研磨部位13の形状が正方形となっているが、本発明はこの形状に限定されず、研磨用途に適した形状にすることができる。個々の研磨部位13の大きさとしては、例えば8mm四方や30mm四方など、様々な大きさに設定することができる。同様に、溝12の幅も例えば2mmなど、様々に設定することができる。
【0037】
本実施形態の研磨パッド1の溝12は、切溝加工ではなく、人工皮革10の研磨面11を溝形成用金型により厚み方向(研磨面11と垂直な方向)にプレスするプレス加工によって形成されている。さらに、研磨パッド1の研磨面11のうち、溝12以外の研磨部位13も、厚み方向に圧縮されている。この圧縮は、完成した研磨パッド1の研磨部位13の厚みが成形前のパッド素材(ここでは人工皮革10)の厚みの30%よりも大きくかつ70%よりも小さくになるように行われていることが好ましく、45%以上55%以下になるように行われていることがより好ましい。なお、研磨パッド1における研磨部位13がどの程度圧縮されているかは、研磨部位13の密度を測定したり、断面を観察したりすることによって知ることができる。
【0038】
次に、上述した研磨パッド1の製造方法について説明する。図1は本実施形態の研磨パッドの製造方法の概要を示す模式図であり、図4は本実施形態の研磨パッドの詳細な製造方法を示すフロー図である。本実施形態の研磨パッドの製造方法は、図1に示すように、パッド素材である人工皮革10の研磨面11全体を均一にプレスすることによりパッド素材を圧縮する第1プレス工程(圧縮工程)と、人工皮革10の研磨面11を溝形成用金型51でプレスすることにより人工皮革10の研磨面11に溝12を形成する第2プレス工程(溝形成工程)との2段階のプレス工程を含んでいる点が特徴的である。
【0039】
研磨パッド1の製造にあたって、図4に示すように、まず、研磨パッド1の素材となるシート状の人工皮革10を検品し、人工皮革10の表面に傷などがないかを確認する(S1)。次に、後続の第1プレス工程のために、プレス機に対し、第1プレス時のプレス温度および圧力を設定する(S3)。第1プレス時のプレス温度および圧力は、研磨パッド1の材質や用途に応じて適宜設定することができる。
【0040】
続いて、ステップS1において検品した人工皮革10をプレス機のプレス台に載置した後(S5)、ステップS3で設定したプレス温度および圧力で人工皮革10の研磨面11を所定の時間だけ均一にプレスする(S7;第1プレス工程)。このステップでは、図4に示すように、金属などからなり平坦なプレス面を有するプレス部材50によって、人工皮革10の研磨面11を厚み方向(研磨面11と垂直な方向)に均一にプレスする。これにより、人工皮革10全体が厚み方向に圧縮される。
【0041】
このとき、人工皮革10の厚みがプレス前の70%未満になるようにプレスを行うことが好ましく、55%以下になるようにプレスを行うことがより好ましい。ここで圧縮率を高くすればするほど、研磨部位の剛性が上がり、研磨力の高い研磨パッドを得ることができる。また、人工皮革10は、通常、厚みが30%を大きく下回るように圧縮するのは困難である。従って、このステップでは、人工皮革10の厚みがプレス前の30%よりも大きくなるようにプレスを行うことが好ましい。また、後の第2プレス工程では、溝を形成するために人工皮革10をさらに圧縮する必要があるため、このステップでは、人工皮革10の厚みが45%以上になるようにプレスを行うことがより好ましい。
【0042】
そして、第1プレス後の人工皮革10の厚みをダイヤルゲージにより0.01mm単位で測定し、人工皮革10の厚みが適切な厚みになっているかを検査する(S9)。
【0043】
次に、後続の第2プレス工程で用いる溝形成用金型51を検品する(S11)。図3は、本発明の一実施形態を示すものであり、溝形成用金型51の構造を示す図である。なお、図3の上側の図は溝形成金型51の平面図であり、下側の図は、上側の図の一点鎖線の位置において鉛直方向に溝形成金型51を切断したときの溝形成金型51の縦断面図である。図3に示すように、溝形成金型51は、格子状(升目状)のフレームを有している。溝形成金型51のフレーム部分は、四角柱形状で、研磨パッド1に形成したい溝12と合致する形状となっている。なお、溝形成金型51のフレームの形状は、研磨パッド1の研磨面11に形成したい溝の形状に応じて様々に変更することができ、図3の形状に限定されない。本ステップでは、この溝形成用金型51に傷などがないかを確認する。
【0044】
続いて、後続の第2プレス工程のために、プレス機に対し、第2プレス時のプレス温度および圧力を設定する(S13)。第2プレス時のプレス温度および圧力も、第1プレス時の場合と同様に、研磨パッド1の材質や用途に応じて適宜設定することができる。ただし、後述する実施例に示すように、第2プレス時のプレス温度は、第1プレス時のプレス温度よりも低いことが好ましい。
【0045】
続いて、第1プレス後の人工皮革10およびステップS11において検品した溝形成用金型51をプレス機にセットし(S15)、ステップS13で設定したプレス温度および圧力で人工皮革10の研磨面を所定の時間だけ溝形成用金型51でプレスする(S17;第2プレス工程)。これにより、人工皮革10の研磨面11に、溝形成用金型51のフレーム部分に対応する溝12が形成される。一方、人工皮革10の研磨面のうち、溝形成用金型51のフレーム部分が圧接されない領域については圧縮がなされず、その結果、溝12よりも突出した研磨部位13が形成される。以上のようにして研磨パッド1が完成する。
【0046】
以上のように、本実施形態の研磨パッドの製造方法では、溝形成用金型51を用いたプレス加工によって溝12を形成する。それゆえ、得られた研磨パッド1の溝12の周辺は、材料が圧縮されて密度が高くなっている。従って、切溝加工を施したときと異なり、スラリーが研磨パッド1の溝12から裏面へと浸潤し難くなっている。
【0047】
そして、研磨パッド1の研磨部位13も、第1プレスによって厚みが70%未満、好ましくは55%以下になるように厚み方向に圧縮されているため、研磨部位13は十分な剛性を有している。それゆえ、従来の研磨パッドと異なり、十分な研磨能力を有している。以上のように、本実施形態では、第1プレスおよび第2プレスの2段階のプレスを行うことにより、裏面までスラリーが浸潤し難く、かつ、十分な研磨力を有する研磨パッド1を実現している。
【0048】
さらに、第2プレス工程では、研磨パッド1の研磨面101のうち、研磨部位13に対応する領域の圧縮を行う必要がないため、溝12に対応する領域にプレス圧が十分に伝わり、研磨面101に十分な深さの溝12を形成することができるという利点もある。
【0049】
また、ダイヤモンドホイールにより手作業で切溝加工を行う場合には、溝の形状が直線形状に制限されたり、溝の形成に時間がかかったりするが、本実施形態では、溝形成用金型51を用いたプレス加工によって溝12を形成するため、溝12の形状を自由自在に設計することができるとともに、溝のパターンが複雑な場合であっても短時間で溝を形成することができる。
【0050】
なお、人工皮革10を均一に圧縮する第1プレスと研磨面11に溝12を形成する第2プレスとはどちらを先に行ってもよいが、研磨部位13の平坦性を確保する観点からは、上述した実施形態に示したように、第1プレス、第2プレスの順にプレスを行うことが好ましい。その理由について以下に説明する。図5は、人工皮革10に対して第2プレス、第1プレスの順にプレスを行った場合の研磨パッド1の構造を示す説明図であり、図6は、人工皮革10に対して第1プレス、第2プレスの順にプレスを行った場合の研磨パッド1の構造を示す説明図である。
【0051】
従来の第2の方法のように、未圧縮の人工皮革10に対して溝形成用金型51を用いて溝12を形成する場合、研磨部位13のうち、溝12と隣接する領域は、溝12の底部へと引きずり込まれることにより、高さが低くなる傾向にある。その一方で、研磨部位13の中央付近は、溝12に引き込まれることがないため、高さが殆ど変化しない。その結果、研磨部位13の形状が図5に示すように山形となり、平坦さが失われてしまう。一旦このようになると、後から研磨部位13を均一にプレスしても、研磨部位13が平坦にならない。
【0052】
これに対して第1プレスの後に第2プレスを行う場合、第2プレスの前に、人工皮革10が第1プレスによって圧縮されるため、人工皮革10全体の剛性が高くなる。それゆえ、第2プレスによって溝12を形成する際に、研磨部位13のうち、溝12と隣接する領域が溝12の底部へ引き込まれにくくなる。その結果、図6に示すように、研磨部位13の平坦性が確保されるのである。
【0053】
〔実施例〕
以下では、上述した製造方法による研磨パッドの製造例について説明する。
【0054】
(実施例1)
本実施例では、研磨パッド1のパッド素材として、ナイロン繊維不織布のウレタン湿式発泡により製作したベロアタイプの人工皮革を用いた。なお、この人工皮革は、繊維とウレタンとの比率が50:50となっている。そして、上述したステップS5において、第1プレス時のプレス温度を170℃、圧力を8Kgf/cm2(≒0.78MPa)に設定した。そして、ステップS7において第1プレスを3分間行い、人工皮革の厚みがプレス前の50%になるように人工皮革10を圧縮した。
【0055】
また、上述したステップS13において、第2プレス時のプレス温度を140℃、圧力を10Kgf/cm2(≒0.98MPa)に設定した。そして、ステップS9において、第2プレスを5分間行い、人工皮革10の研磨面11に溝12を形成した。形成された溝12部分の厚みは初期(第1プレス前)の約30%であった。
【0056】
以上の条件で研磨パッド1を製造したところ、研磨面11に溝12が形成された研磨パッド1を得ることができた。この研磨パッド1の研磨部位13は、上述したように厚みが50%になるまで圧縮されているため、十分な剛性を有し、研磨性に優れていた。また、溝12の深さおよび研磨部位13の平坦性も良好であった。
【0057】
(実施例2)
本実施例では、上述したステップS13において、第2プレス時のプレス温度を120℃に設定した。それ以外は実施例1と同じ条件とした。
【0058】
この条件で研磨パッド1を製造したところ、基本的に実施例1の研磨パッドと同様の性能が得られたが、研磨面11に形成された溝12が浅くなる傾向にあった。これは、第2プレス時のプレス温度が低いために、人工皮革10の研磨面11に十分に目がつかなかったためと考えられる。
【0059】
(実施例3)
本実施例では、上述したステップS13において、第2プレス時のプレス温度を160℃に設定した。それ以外は実施例1と同じ条件とした。
【0060】
この条件で研磨パッド1を製造したところ、基本的に実施例1の研磨パッドと同様の性能が得られ、研磨面11に十分な深さの溝12が形成されたものの、溝12周辺の研磨部位13が溝に引き込まれ、研磨部位13の平坦性が低下する傾向にあった。
【0061】
(まとめ)
実施例1の結果などから、研磨部位13を十分に圧縮するためには、第1プレス時のプレス温度を170℃近辺(具体的には160℃以上180℃以下)にすることが好ましいといえる。また、実施例3の結果から、研磨部位13の平坦性を確保するためには、第2プレス時のプレス温度を少なくとも第1プレス時のプレス温度よりも低くすることが好ましく、具体的には、第2プレス時のプレス温度を160℃未満にすることがより好ましいことが分かった。
【0062】
一方、実施例2の結果から、研磨面11に十分な深さの溝12を形成するためには、第2プレス時のプレス温度を120℃以上にすることが好ましいことが分かった。そして、実施例1の結果から、第2プレス時のプレス温度を140℃近辺(具体的には130℃以上150℃以下)にすれば、研磨面11の平坦性を確保し、かつ、十分な深さの溝12を形成することができることが分かった。
【0063】
従って、第2プレス時の温度は、120℃よりも高くかつ160℃よりも低いことが好ましく、140℃であることが特に好ましいといえる。
【0064】
本発明は上述した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
また、本明細書で示した数値範囲以外であっても、本発明の趣旨に反しない合理的な範囲であれば、本発明に含まれることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば研磨面に溝が形成された研磨パッドが提供されるため、化学機械研磨装置の研磨パッドの製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、研磨パッドの製造方法の概要を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであり、研磨面に溝が形成された研磨パッドの構造を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すものであり、溝形成用金型の構造を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態を示すものであり、研磨パッドの詳細な製造方法を示すフロー図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示すものであり、第2プレス、第1プレスの順にプレスを行った場合の研磨部位の形状を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態を示すものであり、第1プレス、第2プレスの順にプレスを行った場合の研磨部位の形状を示す模式図である。
【図7】従来の技術を示すものであり、研磨面に溝が形成された研磨パッドを製造するための第1の方法を示す模式図である。
【図8】従来の技術を示すものであり、研磨面に溝が形成された研磨パッドを製造するための第2の方法を示す模式図である。
【図9】従来の技術を示すものであり、研磨パッドの裏面に両面テープが貼着された様子を示す断面図である。
【図10】従来の技術の問題点を示すものであり、スラリーが研磨パッドの研磨面に設けられた溝から入り込み、裏面へ到達する様子を示す模式図である。
【図11】未使用の研磨パッドの裏面の様子を示す図である。
【図12】剥がれた研磨パッド105の裏面の様子を示した図である。
【符号の説明】
【0068】
1 研磨パッド
10 人工皮革(パッド素材)
11 研磨面
12 溝
13 研磨部位
50 プレス部材
51 溝形成用金型
100 パッド素材
101 研磨面
102 溝
103 研磨部位
105 研磨パッド
110 プレス部材
111 金型
115 両面テープ
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに関するものであり、特に、研磨面に溝が形成された研磨パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の表面を平坦化するために、化学機械研磨が用いられている。化学機械研磨は、基板などのワークと研磨パッドとの間に研削性微粒子であるスラリーを供給し、研磨パッドをワークに対して摺動させることによって行われる。研磨パッドがワークに対して摺動することにより、それらの間に供給されたスラリーは、ワーク表面に化学反応を起こさせるとともに、化学反応を起こしたワーク表層を研削する。従って、スラリーが研磨パッドの表面に均一に分布していないと、ワークの研磨に偏りが生じるおそれがある。特に、大面積のワーク表面を短時間で研磨するために研磨パッドの研磨面を大きくする場合には、いかにしてスラリーを研磨面の全体に均一に行き渡らせ、保持させるかが重要になってくる。
【0003】
特許文献1,2には、研磨パッドの研磨面にスラリーを均一に分布させるために、研磨面に所定のパターンの溝が形成された研磨パッドが開示されている。これらの技術によれば、スラリーが研磨パッドの研磨面に形成された溝に保持されるため、研磨対象の基板を均一に研磨することができる。
【0004】
このような研磨パッドを作製する方法としては、以下の2通りの方法が一般的に用いられている。図7は、研磨面に溝が形成された研磨パッドを作製するための第1の方法を示す模式図である。この方法では、まず、人工皮革などのパッド素材100を検品した後、図7に示すように、パッド素材100の研磨面101を平坦なプレス面を有するプレス部材110を備えたプレス機により均一にプレスする。その結果、パッド素材100は、研磨面101と垂直な方向に50%程度に圧縮される。そして、パッド素材100の厚みを検査する。
【0005】
次に、溝幅と等しい厚みを有するダイヤモンドホイールを用いて、圧縮したパッド素材100の研磨面101に切溝加工を施す。この切溝加工は、研磨面101に形成したい溝の本数分だけ行われる。最後に、溝幅をマイクロスコープによって検査する。以上により、研磨パッド105が完成する。この研磨パッド105の溝102にはスラリーが溜まり、溝102以外の研磨部位103によってワークを研磨する。
【0006】
一方、図8は、研磨面に溝が形成された研磨パッドを作製するための第2の方法を示す説明図である。この方法では、格子状(升目状)のフレームを有する溝形成用金型を使用する。まず、パッド素材100および溝形成用金型111を検品した後、図8に示すように、溝形成用金型111によってパッド素材100の研磨面101をプレスする。これにより、パッド素材100の研磨面101のうち、金型111のフレーム部分が圧接される領域に溝102が形成される。また、金型111のフレーム部分が圧接されない領域は、研磨部位103となる。そして最後に、溝幅をマイクロスコープによって検査する。以上により、研磨パッド105が完成する。
【0007】
以上のようにして溝102が形成された研磨パッド105について、図9に示すように、研磨面101と反対側の裏面に両面テープ115を貼着し、この両面テープ115によって研磨パッド105を化学機械研磨装置の所定の取付位置に固定する。
【特許文献1】特開2000−354952号公報(平成12年12月26日公開)
【特許文献2】特開2006−196907号公報(平成18年7月27日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、研磨面に溝が形成された従来の研磨パッド105は、短寿命であったり、研磨力が十分でなかったりするなどの問題を抱えている。
【0009】
上述した第1の方法では、パッド素材100を切り取ることにより溝102を形成するため、切り取り時のダメージにより、研磨中に研磨パッド105が破れてしまうことがある。また、研磨パッド105のうち溝102が形成されている部分は、材料が除去されて少なくなっているので、図10に示すように、溝102から研磨パッド105に染み込んだスラリーが両面テープ115の裏面まで達し易くなっている。それゆえ、両面テープ115と研磨パッド105との間にスラリーが入り込み、研磨パッド105が両面テープ115から剥がれてしまうことがある。図11は、未使用の研磨パッド105の裏面の様子を示す図であり、図12は、剥がれた研磨パッド105の裏面の様子を示した図である。図12から、剥がれた研磨パッドでは、両面テープと研磨パッドとの間にスラリーが入り込んでいたことが分かる。
【0010】
一方、上述した第2の方法では、1度のプレスによってパッド素材100の圧縮と溝102の形成との双方を行っているため、研磨パッド105のうち、ワークを摺擦する研磨部位103を十分に圧縮することができない。具体的には、第1の方法によって作成された研磨パッド105では、上述したように研磨部位103が約50%の厚みになるように圧縮されるのに対し、第2の方法では、研磨部位103が70%から80%程度の厚みにしか圧縮されない。それゆえ、第2の方法で作製した研磨パッド105は、研磨部位103の剛性が不足し、十分な研磨力を得ることができないという問題を抱えている。
【0011】
さらに、第2の方法の場合、溝102に対応する領域と研磨部位103に対応する領域との双方を同時にプレスするために、溝102に対応する領域に押し圧が十分にかからず、形成された溝102が浅くなってしまうという問題もある。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、裏面までスラリーが浸潤し難く、かつ、十分な研磨力を有する研磨パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る研磨パッドの製造方法は、研磨面に溝が形成された研磨パッドの製造方法であって、上記研磨パッドのパッド素材を研磨面と垂直な方向に均一にプレスする圧縮工程と、上記パッド素材の研磨面にプレス加工により溝を形成する溝形成工程とを含んでいることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、溝形成工程においてプレス加工によって溝が形成されるため、溝周辺の材料は、圧縮されて密度が高くなる。それゆえ、切溝加工の場合とは異なり、スラリーが研磨パッドの裏面まで浸潤し難くなる。さらに、上記の構成によれば、溝形成工程とは別に研磨パッドのパッド素材を均一にプレスする圧縮工程が含まれているため、研磨面のうち、溝が形成されておらずワークを摺擦する研磨部位についても、十分に圧縮を行い、剛性を高めることができる。それゆえ、得られた研磨パッドが十分な研磨力を有するようになる。
【0015】
さらに、溝形成工程では、研磨面のうち、研磨部位に対応する領域をプレスする必要がないため、溝に対応する領域に十分な大きさのプレス圧が伝わる。それゆえ、十分な深さの溝を容易に形成することができる。
【0016】
なお、上記圧縮工程では、プレス後のパッド素材の厚みが、上記圧縮工程および溝形成工程を施す前のパッド素材の厚みの30%よりも大きくかつ70%よりも小さくなるように、パッド素材をプレスすることが好ましい。
【0017】
従来の第2の方法によれば、研磨部位は、最大でも70から80%程度の厚みにしか圧縮されないため、研磨部位が十分な剛性を得ることができない。これに対して、本発明の上記構成によれば、パッド素材を圧縮する圧縮工程が溝形成工程とは別に含まれているため、研磨部位を70%未満の厚みになるように圧縮することができる。このように、圧縮工程でのパッド素材の圧縮率を高めれば、研磨部位の剛性が高くなり、研磨パッドの研磨力が向上する。なお、30%を大きく下回るような厚みにパッド素材を圧縮するのは困難であるが、30%以上の厚みになるように圧縮するのは十分に可能である。
【0018】
さらに、上記圧縮工程では、プレス後のパッド素材の厚みが、上記圧縮工程および溝形成工程を施す前のパッド素材の厚みの45%以上55%以下になるように、パッド素材をプレスすることがより好ましい。
【0019】
上記構成によれば、圧縮工程でのパッド素材の圧縮率をさらに高めることにより、研磨パッドの研磨力を一層向上させることができる。また、溝形成工程ではプレス加工によってパッド素材に溝を形成するため、溝部においてはさらに高い圧縮率でパッド素材を圧縮する必要がある。ここで、圧縮工程でのパッド素材の厚みを45%以上に留めておくことにより、溝形成工程において十分な深さの溝をプレス加工により形成することができる。
【0020】
なお、本発明に係る研磨パッドの製造方法では、上記溝形成工程、上記圧縮工程のいずれを先に行ってもよいが、上記溝形成工程を上記圧縮工程の後に行うことが好ましい。
【0021】
溝形成工程を圧縮工程の前に行う場合、プレス加工による溝の形成の際に、溝周辺の材料が溝へと引き込まれることにより、研磨部位の表面形状が山形となる。このように一度研磨部位の表面形状が山形になると、その後に研磨部位を均一にプレスしたとしても、研磨部位を平坦に戻すことができない。これに対して溝形成工程を圧縮工程の後に行う場合、まず、パッド素材の圧縮が行われることにより、パッド素材全体の剛性が高くなる。それゆえ、次のプレス加工による溝の形成の際に、溝周辺の材料が溝へと引き込まれにくくなり、結果として、研磨部位の表面を平坦にすることができる。従って、研磨力の均一な研磨パッドを得ることができる。
【0022】
また、上記溝形成工程でのプレス温度は、上記圧縮工程でのプレス温度よりも低いことが好ましい。
【0023】
溝形成工程でのプレス温度が圧縮工程でのプレス温度よりも高い場合、プレス加工による溝の形成の際に、溝周辺の材料が溝へと引き込まれ易くなり、研磨部位の表面形状が山形となる傾向にある。しかしながら、本発明の上記構成によれば、溝形成工程でのプレス温度が圧縮工程でのプレス温度よりも低いために、プレス加工による溝の形成の際に、溝周辺の材料が溝へと引き込まれにくくなる。それゆえ、研磨部位の表面が平坦で、研磨力の均一な研磨パッドを得ることができる。
【0024】
なお、本発明に係る研磨パッドの製造方法では、上記パッド素材が人工皮革であることが好ましい。上記構成によれば、安価に入手できる人工皮革を用いることにより、機能性の高い研磨パッドを安価に製造することができる。
【0025】
この場合、上記溝形成工程でのプレス温度は、120℃よりも高く160℃よりも低いことが好ましい。上記構成によれば、後述する実施例に示すように、十分な深さの溝と平坦な研磨部位とを有する研磨パッドを得ることができる。
【0026】
また、本発明に係る研磨パッドは、研磨面を有し、パッド素材を成形してなる研磨パッドであって、プレス加工によって形成された溝を上記研磨面に有し、上記研磨面のうちの上記溝を除く研磨部位は、該研磨部位における研磨パッドの厚みが成形前の上記パッド素材の厚みの30%よりも大きくかつ70%未満になるように、研磨面と垂直な方向に圧縮されていることを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、研磨パッドは、プレス加工によって形成された溝を有しているため、溝周辺の材料が圧縮され、密度が高くなっている。それゆえ、切溝加工によって形成された溝とは異なり、スラリーが研磨パッドの裏面まで浸潤し難くなっている。さらに、研磨対象となるワークを摺擦する研磨部位では、パッド素材が成形前の厚みの70%未満になるように圧縮されているため、研磨部位の剛性が向上している。それゆえ、研磨パッドは十分な研磨力を有している。なお、30%を大きく下回るような厚みにパッド素材を圧縮するのは困難であるが、30%以上の厚みになるように圧縮するのは十分に可能である。
【0028】
さらに、上記研磨部位は、該研磨部位における研磨パッドの厚みが成形前の上記パッド素材の厚みの45%以上55%以下になるように、研磨面と垂直な方向に圧縮されていることが好ましい。
【0029】
上記構成によれば、研磨部位の圧縮率がさらに高くなっていることにより、研磨パッドの研磨力を一層向上させることができる。また、研磨面の溝はプレス加工によって形成されているため、溝部の圧縮率は研磨部位よりも高くなっている。ここで、研磨部位の厚みを当初のパッド素材の45%以上にすることにより、十分な深さの溝を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明に係る研磨パッドの製造方法は、研磨パッドのパッド素材を研磨面と垂直な方向に均一にプレスする圧縮工程と、パッド素材の研磨面にプレス加工により溝を形成する溝形成工程とを含んだ構成となっている。
【0031】
それゆえ、上述したように、裏面までスラリーが浸潤し難く、かつ、十分な研磨力を有する研磨パッドを得ることができる。
【0032】
また、本発明に係る研磨パッドは、プレスによって形成された溝を研磨面に有し、研磨面のうちの溝を除く研磨部位は、該研磨部位における研磨パッドの厚みが成形前のパッド素材の厚みの30%よりも大きくかつ70%よりも小さくなるように、研磨面と垂直な方向に圧縮された構成となっている。
【0033】
それゆえ、上述したように、裏面までスラリーが浸潤し難く、かつ、十分な研磨力を有する研磨パッドを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
〔実施形態〕
本発明の一実施形態について図1から図6に基づいて説明すると以下の通りである。図2は、本発明の一実施形態を示すものであり、研磨パッドの構造を示す図である。なお、図2の上側の図は研磨パッド1の平面図であり、下側の図は、上側の図の一点鎖線の位置において鉛直方向に研磨パッド1を切断したときの研磨パッド1の縦断面図である。
【0035】
本実施形態の研磨パッド1は、パッド素材を成形してなるものであり、化学機械研磨装置に好適に使用することができる。研磨パッド1のパッド素材としては、ウレタン樹脂などからなるシート状の公知の各種人工皮革10を使用することができる。具体的には、ナイロン繊維不織布のウレタン湿式発泡により製作したベロアタイプの人工皮革などが好適であるが、特に限定されない。そして、この人工皮革10の、ワークと対向する研磨面11には、図2に示すように、全面に渡って溝12が設けられている。これにより、人工皮革10の研磨面11は、溝12とワークを摺擦する研磨部位13とから構成される。
【0036】
本実施形態の研磨パッド1では、上述した従来の研磨パッドと同様、研磨面11全体に渡って形成された溝12によって、酸化セリウムなどを含むスラリーが好適に保持され、基板などのワークを均一に研磨することができるようになっている。なお、図2では、個々の研磨部位13の形状が正方形となっているが、本発明はこの形状に限定されず、研磨用途に適した形状にすることができる。個々の研磨部位13の大きさとしては、例えば8mm四方や30mm四方など、様々な大きさに設定することができる。同様に、溝12の幅も例えば2mmなど、様々に設定することができる。
【0037】
本実施形態の研磨パッド1の溝12は、切溝加工ではなく、人工皮革10の研磨面11を溝形成用金型により厚み方向(研磨面11と垂直な方向)にプレスするプレス加工によって形成されている。さらに、研磨パッド1の研磨面11のうち、溝12以外の研磨部位13も、厚み方向に圧縮されている。この圧縮は、完成した研磨パッド1の研磨部位13の厚みが成形前のパッド素材(ここでは人工皮革10)の厚みの30%よりも大きくかつ70%よりも小さくになるように行われていることが好ましく、45%以上55%以下になるように行われていることがより好ましい。なお、研磨パッド1における研磨部位13がどの程度圧縮されているかは、研磨部位13の密度を測定したり、断面を観察したりすることによって知ることができる。
【0038】
次に、上述した研磨パッド1の製造方法について説明する。図1は本実施形態の研磨パッドの製造方法の概要を示す模式図であり、図4は本実施形態の研磨パッドの詳細な製造方法を示すフロー図である。本実施形態の研磨パッドの製造方法は、図1に示すように、パッド素材である人工皮革10の研磨面11全体を均一にプレスすることによりパッド素材を圧縮する第1プレス工程(圧縮工程)と、人工皮革10の研磨面11を溝形成用金型51でプレスすることにより人工皮革10の研磨面11に溝12を形成する第2プレス工程(溝形成工程)との2段階のプレス工程を含んでいる点が特徴的である。
【0039】
研磨パッド1の製造にあたって、図4に示すように、まず、研磨パッド1の素材となるシート状の人工皮革10を検品し、人工皮革10の表面に傷などがないかを確認する(S1)。次に、後続の第1プレス工程のために、プレス機に対し、第1プレス時のプレス温度および圧力を設定する(S3)。第1プレス時のプレス温度および圧力は、研磨パッド1の材質や用途に応じて適宜設定することができる。
【0040】
続いて、ステップS1において検品した人工皮革10をプレス機のプレス台に載置した後(S5)、ステップS3で設定したプレス温度および圧力で人工皮革10の研磨面11を所定の時間だけ均一にプレスする(S7;第1プレス工程)。このステップでは、図4に示すように、金属などからなり平坦なプレス面を有するプレス部材50によって、人工皮革10の研磨面11を厚み方向(研磨面11と垂直な方向)に均一にプレスする。これにより、人工皮革10全体が厚み方向に圧縮される。
【0041】
このとき、人工皮革10の厚みがプレス前の70%未満になるようにプレスを行うことが好ましく、55%以下になるようにプレスを行うことがより好ましい。ここで圧縮率を高くすればするほど、研磨部位の剛性が上がり、研磨力の高い研磨パッドを得ることができる。また、人工皮革10は、通常、厚みが30%を大きく下回るように圧縮するのは困難である。従って、このステップでは、人工皮革10の厚みがプレス前の30%よりも大きくなるようにプレスを行うことが好ましい。また、後の第2プレス工程では、溝を形成するために人工皮革10をさらに圧縮する必要があるため、このステップでは、人工皮革10の厚みが45%以上になるようにプレスを行うことがより好ましい。
【0042】
そして、第1プレス後の人工皮革10の厚みをダイヤルゲージにより0.01mm単位で測定し、人工皮革10の厚みが適切な厚みになっているかを検査する(S9)。
【0043】
次に、後続の第2プレス工程で用いる溝形成用金型51を検品する(S11)。図3は、本発明の一実施形態を示すものであり、溝形成用金型51の構造を示す図である。なお、図3の上側の図は溝形成金型51の平面図であり、下側の図は、上側の図の一点鎖線の位置において鉛直方向に溝形成金型51を切断したときの溝形成金型51の縦断面図である。図3に示すように、溝形成金型51は、格子状(升目状)のフレームを有している。溝形成金型51のフレーム部分は、四角柱形状で、研磨パッド1に形成したい溝12と合致する形状となっている。なお、溝形成金型51のフレームの形状は、研磨パッド1の研磨面11に形成したい溝の形状に応じて様々に変更することができ、図3の形状に限定されない。本ステップでは、この溝形成用金型51に傷などがないかを確認する。
【0044】
続いて、後続の第2プレス工程のために、プレス機に対し、第2プレス時のプレス温度および圧力を設定する(S13)。第2プレス時のプレス温度および圧力も、第1プレス時の場合と同様に、研磨パッド1の材質や用途に応じて適宜設定することができる。ただし、後述する実施例に示すように、第2プレス時のプレス温度は、第1プレス時のプレス温度よりも低いことが好ましい。
【0045】
続いて、第1プレス後の人工皮革10およびステップS11において検品した溝形成用金型51をプレス機にセットし(S15)、ステップS13で設定したプレス温度および圧力で人工皮革10の研磨面を所定の時間だけ溝形成用金型51でプレスする(S17;第2プレス工程)。これにより、人工皮革10の研磨面11に、溝形成用金型51のフレーム部分に対応する溝12が形成される。一方、人工皮革10の研磨面のうち、溝形成用金型51のフレーム部分が圧接されない領域については圧縮がなされず、その結果、溝12よりも突出した研磨部位13が形成される。以上のようにして研磨パッド1が完成する。
【0046】
以上のように、本実施形態の研磨パッドの製造方法では、溝形成用金型51を用いたプレス加工によって溝12を形成する。それゆえ、得られた研磨パッド1の溝12の周辺は、材料が圧縮されて密度が高くなっている。従って、切溝加工を施したときと異なり、スラリーが研磨パッド1の溝12から裏面へと浸潤し難くなっている。
【0047】
そして、研磨パッド1の研磨部位13も、第1プレスによって厚みが70%未満、好ましくは55%以下になるように厚み方向に圧縮されているため、研磨部位13は十分な剛性を有している。それゆえ、従来の研磨パッドと異なり、十分な研磨能力を有している。以上のように、本実施形態では、第1プレスおよび第2プレスの2段階のプレスを行うことにより、裏面までスラリーが浸潤し難く、かつ、十分な研磨力を有する研磨パッド1を実現している。
【0048】
さらに、第2プレス工程では、研磨パッド1の研磨面101のうち、研磨部位13に対応する領域の圧縮を行う必要がないため、溝12に対応する領域にプレス圧が十分に伝わり、研磨面101に十分な深さの溝12を形成することができるという利点もある。
【0049】
また、ダイヤモンドホイールにより手作業で切溝加工を行う場合には、溝の形状が直線形状に制限されたり、溝の形成に時間がかかったりするが、本実施形態では、溝形成用金型51を用いたプレス加工によって溝12を形成するため、溝12の形状を自由自在に設計することができるとともに、溝のパターンが複雑な場合であっても短時間で溝を形成することができる。
【0050】
なお、人工皮革10を均一に圧縮する第1プレスと研磨面11に溝12を形成する第2プレスとはどちらを先に行ってもよいが、研磨部位13の平坦性を確保する観点からは、上述した実施形態に示したように、第1プレス、第2プレスの順にプレスを行うことが好ましい。その理由について以下に説明する。図5は、人工皮革10に対して第2プレス、第1プレスの順にプレスを行った場合の研磨パッド1の構造を示す説明図であり、図6は、人工皮革10に対して第1プレス、第2プレスの順にプレスを行った場合の研磨パッド1の構造を示す説明図である。
【0051】
従来の第2の方法のように、未圧縮の人工皮革10に対して溝形成用金型51を用いて溝12を形成する場合、研磨部位13のうち、溝12と隣接する領域は、溝12の底部へと引きずり込まれることにより、高さが低くなる傾向にある。その一方で、研磨部位13の中央付近は、溝12に引き込まれることがないため、高さが殆ど変化しない。その結果、研磨部位13の形状が図5に示すように山形となり、平坦さが失われてしまう。一旦このようになると、後から研磨部位13を均一にプレスしても、研磨部位13が平坦にならない。
【0052】
これに対して第1プレスの後に第2プレスを行う場合、第2プレスの前に、人工皮革10が第1プレスによって圧縮されるため、人工皮革10全体の剛性が高くなる。それゆえ、第2プレスによって溝12を形成する際に、研磨部位13のうち、溝12と隣接する領域が溝12の底部へ引き込まれにくくなる。その結果、図6に示すように、研磨部位13の平坦性が確保されるのである。
【0053】
〔実施例〕
以下では、上述した製造方法による研磨パッドの製造例について説明する。
【0054】
(実施例1)
本実施例では、研磨パッド1のパッド素材として、ナイロン繊維不織布のウレタン湿式発泡により製作したベロアタイプの人工皮革を用いた。なお、この人工皮革は、繊維とウレタンとの比率が50:50となっている。そして、上述したステップS5において、第1プレス時のプレス温度を170℃、圧力を8Kgf/cm2(≒0.78MPa)に設定した。そして、ステップS7において第1プレスを3分間行い、人工皮革の厚みがプレス前の50%になるように人工皮革10を圧縮した。
【0055】
また、上述したステップS13において、第2プレス時のプレス温度を140℃、圧力を10Kgf/cm2(≒0.98MPa)に設定した。そして、ステップS9において、第2プレスを5分間行い、人工皮革10の研磨面11に溝12を形成した。形成された溝12部分の厚みは初期(第1プレス前)の約30%であった。
【0056】
以上の条件で研磨パッド1を製造したところ、研磨面11に溝12が形成された研磨パッド1を得ることができた。この研磨パッド1の研磨部位13は、上述したように厚みが50%になるまで圧縮されているため、十分な剛性を有し、研磨性に優れていた。また、溝12の深さおよび研磨部位13の平坦性も良好であった。
【0057】
(実施例2)
本実施例では、上述したステップS13において、第2プレス時のプレス温度を120℃に設定した。それ以外は実施例1と同じ条件とした。
【0058】
この条件で研磨パッド1を製造したところ、基本的に実施例1の研磨パッドと同様の性能が得られたが、研磨面11に形成された溝12が浅くなる傾向にあった。これは、第2プレス時のプレス温度が低いために、人工皮革10の研磨面11に十分に目がつかなかったためと考えられる。
【0059】
(実施例3)
本実施例では、上述したステップS13において、第2プレス時のプレス温度を160℃に設定した。それ以外は実施例1と同じ条件とした。
【0060】
この条件で研磨パッド1を製造したところ、基本的に実施例1の研磨パッドと同様の性能が得られ、研磨面11に十分な深さの溝12が形成されたものの、溝12周辺の研磨部位13が溝に引き込まれ、研磨部位13の平坦性が低下する傾向にあった。
【0061】
(まとめ)
実施例1の結果などから、研磨部位13を十分に圧縮するためには、第1プレス時のプレス温度を170℃近辺(具体的には160℃以上180℃以下)にすることが好ましいといえる。また、実施例3の結果から、研磨部位13の平坦性を確保するためには、第2プレス時のプレス温度を少なくとも第1プレス時のプレス温度よりも低くすることが好ましく、具体的には、第2プレス時のプレス温度を160℃未満にすることがより好ましいことが分かった。
【0062】
一方、実施例2の結果から、研磨面11に十分な深さの溝12を形成するためには、第2プレス時のプレス温度を120℃以上にすることが好ましいことが分かった。そして、実施例1の結果から、第2プレス時のプレス温度を140℃近辺(具体的には130℃以上150℃以下)にすれば、研磨面11の平坦性を確保し、かつ、十分な深さの溝12を形成することができることが分かった。
【0063】
従って、第2プレス時の温度は、120℃よりも高くかつ160℃よりも低いことが好ましく、140℃であることが特に好ましいといえる。
【0064】
本発明は上述した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
また、本明細書で示した数値範囲以外であっても、本発明の趣旨に反しない合理的な範囲であれば、本発明に含まれることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば研磨面に溝が形成された研磨パッドが提供されるため、化学機械研磨装置の研磨パッドの製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、研磨パッドの製造方法の概要を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであり、研磨面に溝が形成された研磨パッドの構造を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すものであり、溝形成用金型の構造を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態を示すものであり、研磨パッドの詳細な製造方法を示すフロー図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示すものであり、第2プレス、第1プレスの順にプレスを行った場合の研磨部位の形状を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態を示すものであり、第1プレス、第2プレスの順にプレスを行った場合の研磨部位の形状を示す模式図である。
【図7】従来の技術を示すものであり、研磨面に溝が形成された研磨パッドを製造するための第1の方法を示す模式図である。
【図8】従来の技術を示すものであり、研磨面に溝が形成された研磨パッドを製造するための第2の方法を示す模式図である。
【図9】従来の技術を示すものであり、研磨パッドの裏面に両面テープが貼着された様子を示す断面図である。
【図10】従来の技術の問題点を示すものであり、スラリーが研磨パッドの研磨面に設けられた溝から入り込み、裏面へ到達する様子を示す模式図である。
【図11】未使用の研磨パッドの裏面の様子を示す図である。
【図12】剥がれた研磨パッド105の裏面の様子を示した図である。
【符号の説明】
【0068】
1 研磨パッド
10 人工皮革(パッド素材)
11 研磨面
12 溝
13 研磨部位
50 プレス部材
51 溝形成用金型
100 パッド素材
101 研磨面
102 溝
103 研磨部位
105 研磨パッド
110 プレス部材
111 金型
115 両面テープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面に溝が形成された研磨パッドの製造方法であって、
上記研磨パッドのパッド素材を研磨面と垂直な方向に均一にプレスする圧縮工程と、
上記パッド素材の研磨面にプレス加工により溝を形成する溝形成工程とを含んでいることを特徴とする研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
上記圧縮工程では、プレス後のパッド素材の厚みが、上記圧縮工程および溝形成工程を施す前のパッド素材の厚みの30%よりも大きくかつ70%よりも小さくになるように、パッド素材をプレスすることを特徴とする、請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項3】
上記圧縮工程では、プレス後のパッド素材の厚みが、上記圧縮工程および溝形成工程を施す前のパッド素材の厚みの45%以上55%以下になるように、パッド素材をプレスすることを特徴とする、請求項2に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項4】
上記溝形成工程を上記圧縮工程の後に行うことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項5】
上記溝形成工程でのプレス温度は、上記圧縮工程でのプレス温度よりも低いことを特徴とする、請求項4に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項6】
上記パッド素材が人工皮革であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項7】
上記溝形成工程でのプレス温度は、120℃よりも高く160℃よりも低いことを特徴とする請求項6に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項8】
研磨面を有し、パッド素材を成形してなる研磨パッドであって、
プレス加工によって形成された溝を上記研磨面に有し、
上記研磨面のうちの上記溝を除く研磨部位は、該研磨部位における研磨パッドの厚みが成形前の上記パッド素材の厚みの30%よりも大きくかつ70%よりも小さくなるように、研磨面と垂直な方向に圧縮されていることを特徴とする研磨パッド。
【請求項9】
上記研磨部位は、該研磨部位における研磨パッドの厚みが成形前の上記パッド素材の厚みの45%以上55%以下になるように、研磨面と垂直な方向に圧縮されていることを特徴とする、請求項8に記載の研磨パッド。
【請求項1】
研磨面に溝が形成された研磨パッドの製造方法であって、
上記研磨パッドのパッド素材を研磨面と垂直な方向に均一にプレスする圧縮工程と、
上記パッド素材の研磨面にプレス加工により溝を形成する溝形成工程とを含んでいることを特徴とする研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
上記圧縮工程では、プレス後のパッド素材の厚みが、上記圧縮工程および溝形成工程を施す前のパッド素材の厚みの30%よりも大きくかつ70%よりも小さくになるように、パッド素材をプレスすることを特徴とする、請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項3】
上記圧縮工程では、プレス後のパッド素材の厚みが、上記圧縮工程および溝形成工程を施す前のパッド素材の厚みの45%以上55%以下になるように、パッド素材をプレスすることを特徴とする、請求項2に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項4】
上記溝形成工程を上記圧縮工程の後に行うことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項5】
上記溝形成工程でのプレス温度は、上記圧縮工程でのプレス温度よりも低いことを特徴とする、請求項4に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項6】
上記パッド素材が人工皮革であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項7】
上記溝形成工程でのプレス温度は、120℃よりも高く160℃よりも低いことを特徴とする請求項6に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項8】
研磨面を有し、パッド素材を成形してなる研磨パッドであって、
プレス加工によって形成された溝を上記研磨面に有し、
上記研磨面のうちの上記溝を除く研磨部位は、該研磨部位における研磨パッドの厚みが成形前の上記パッド素材の厚みの30%よりも大きくかつ70%よりも小さくなるように、研磨面と垂直な方向に圧縮されていることを特徴とする研磨パッド。
【請求項9】
上記研磨部位は、該研磨部位における研磨パッドの厚みが成形前の上記パッド素材の厚みの45%以上55%以下になるように、研磨面と垂直な方向に圧縮されていることを特徴とする、請求項8に記載の研磨パッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−302454(P2008−302454A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150985(P2007−150985)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(391061613)ポバール興業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(391061613)ポバール興業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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