説明

破砕処理装置付き搬送装置

【課題】工作機械の周囲にスペースを必要とせず、また、搬送されている切粉などの処理対象物を効率的に破砕する。
【解決手段】破砕処理装置は、本体30に回転可能に取り付けられた、円筒形の外周面に複数の回転刃44を設けた破砕ロータ36と、破砕ロータ36の上部と対向するように、本体上部に取り付けられた固定破砕板40と、を備える。搬送装置の切粉搬送路は、地平面に隣接して位置する水平な第1の水平部、第1の水平部の一端から斜め上方に一定の角度で延びる上昇部、および、上昇部の一端からさらに水平に延びる第2の水平部を有する。破砕処理装置は、上昇部において、第1の水平部が終結した当該上昇部が開始される位置に、エンドレスベルト22の配置方向に略直立して取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工などにより発生した切粉や、種々の廃棄物などを短時間で破砕処理する破砕処理装置を備えた搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械加工などにより多量に発生した切粉などの処理対象物を、切断して減容処理する破砕処理装置が知られている。本発明者は、先端の鋭利な固定刃および回転刃を用いて処理対象物を切断するのではなく、回転体の周囲に形成された突起状の破砕刃に、処理対象物を引掛け、回転体の外側に配置された外側円筒に開けられた穴と協働して、処理対象物を折り曲げ或いは引き延ばし、その繰り返しによって、処理対象物を細かくする装置を提案している(特許文献1)。これにより、刃の欠損や破損のおそれを著しく小さくでき、かつ、刃の磨耗があっても処理能力がそれほど悪化しないような破砕処理装置を提供することができた。このような破砕処理装置を利用することで、処理対象物を減容することができる。
【0003】
しかしながら、従来の破砕処理装置は、たとえば、切粉を排出する工作機械の出口に配置され、破砕処理装置の上部に設けられたホッパに投入された切粉を破砕するようになっている。破砕された切粉は、搬送装置にて、切粉バケットまで搬送される。或いは、破砕処理装置は、搬送装置の端部、つまり、切粉排出部の下側に配置され、工作機械から搬送装置により搬送された切粉を、その上部に設けられたホッパから受け入れて破砕し、破砕された切粉を下側に位置する切粉バケットに落下させるように構成される。
【0004】
何れの場合にも、工作機械の周囲に、破砕処理装置を配置するためのスペースが必要となる。また、切粉には、チップなどの硬い異物が混入する場合がある。上部のホッパから切粉を受け入れる構成の破砕処理装置においては、硬い異物が破砕処理装置の破砕刃や破砕板の間に挟まり、刃などの破損のおそれが大きかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−334321号公報
【特許文献2】特許第3639329号
【特許文献3】特開2005−230653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記破砕処理装置配置のためのスペースを省略するため、搬送装置に破砕処理装置を配置することが提案されている。たとえば、特許文献2には、前方(搬送方向における上流側)に水平部、後方(搬送方向における下流側)に上昇部を有するコンベアにおいて、上昇部の前方にせん断手段を配置することにより、コンベア上を搬送方向に搬送される処理対象物がせん断されて、上昇部に搬送されるように構成された装置が提案されている。特許文献2に開示された装置においては、せん断手段は、軸が搬送方向と垂直である円筒部材と備え、当該円筒部材の上流側に直立するように固定刃が配置され、円筒部材のせん断刃と固定刃とにより処理対象物がせん断される。
【0007】
特許文献3には、円筒形の破砕ロータの上側および下流側の側面の外周に、複数の穴が形成された固定破砕部材が配置されている。
【0008】
たとえば、特許文献2、3に記載された装置においては、水平部に破砕処理装置が配置されている。破砕ロータ(円筒部材)の回転刃と、固定刃との間で破砕しきれなかった処理対象物は、下方に落下して、再度コンベア上を搬送方向に移動される。この破砕しきれなかった処理対象物のサイズが大きい場合には、破砕ロータ(円筒部材)とコンベアとの間に処理対象物が挟まってしまい、破砕ロータを駆動するモータに過剰な負荷がかかり、また、破砕ロータの回転刃やコンベアが破損するおそれがあった。
【0009】
また、特許文献2に記載された装置においては、円筒部材の上流側に直立するように固定刃が配置されており、コンベアと破砕対象物の破砕領域とが接近しているため、破砕対象物が、回転刃と円筒部材との間で詰まりやすいという問題点がった。
【0010】
本発明は、工作機械の周囲にスペースを必要としない破砕処理装置付き搬送装置を提供することを目的とする。また、本発明は、搬送されている切粉などの処理対象物を搬送路において詰まらせることなく、効率的に破砕することができる破砕処理装置付き搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、下方が開口した本体と、本体に回転可能に取り付けられた円筒形の破砕ロータであって、その円筒形の外周面に複数の破砕刃が設けられ破砕ロータと、前記破砕ロータの上部と対向するように、前記本体上部に取り付けられた耐磨耗プレートから構成される固定破砕部材と、前記破砕ロータの軸と連結され、前記破砕ロータを回転駆動するモータを含み、当該モータを駆動および制御する駆動手段と、を有する破砕処理装置、並びに、
工作機械から排出される処理対象物を搬送する搬送路にエンドレスベルトを有する搬送装置、を備えた、破砕処理装置付き搬送装置であって、
前記搬送路が、地平面に隣接して位置する水平な第1の水平部、第1の水平部の一端から斜め上方に一定の角度で延びる上昇部、および、上昇部の一端からさらに水平に延びる第2の水平部を有し、
前記回転刃が前記エンドレスベルトと対向する位置にあるときに、当該回転刃が当該エンドレスベルトの搬送方向と反対に動く方向を正回転として、前記駆動手段は、前記破砕ロータを回転し、
前記破砕処理装置が、前記上昇部において、前記第1の水平部が終結した当該上昇部が開始される位置に、前記上昇部における前記エンドレスベルトの配置方向に略直立して取り付けられることを特徴とする破砕処理装置付き搬送装置により達成される。
【0012】
好ましい実施態様においては、前記搬送路において、前記第1の水平部が終結して前記上昇部に移行した領域において、当該上昇部が、弧を描く湾曲部と、前記湾曲部に接続された、斜め上方に直線状に延びる直線部と、を有し、
前記破砕処理装置が、前記直線部において、前記湾曲部が終結して、前記直線部が開始される位置に配置される。
【0013】
また、別の好ましい実施態様においては、前記エンドレスベルトが、エンドレスベルトの幅と略同一の幅を有し、回動手段により、前記エンドレスベルトから直立する位置、および、前記エンドレスベルトと水平で、当該エンドレスベルトの面と平滑となる位置のいずれかに配置され得る可動直立部材を備え、前記エンドレスベルが、その上面で処理対象物を受け得る状態のときに、前記可動直立部材が、前記エンドレスベルトから直立する位置にある。
【0014】
さらに好ましい実施態様においては、前記可動直立部材が直立位置にあったときに、前記可動直立部材と、前記破砕ロータの下端との間のクリアランスを調整するクリアランス調整手段を備えている。
【0015】
また、別の好ましい実施態様においては、前記破砕処理装置において、前記固定破砕部材の取り付け位置である上面に接続された、前記破砕ロータの前記正回転方向に位置する側面に、第2の固定破砕部材が取り付けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、工作機械の周囲にスペースを必要としない破砕処理装置付き搬送装置を提供することを目的とする。また、本発明は、搬送されている切粉などの処理対象物を搬送路において詰まらせることなく、効率的に破砕することができる破砕処理装置付き搬送装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる破砕処理装置付き搬送装置の概略を示す、一部断面略正面図である。
【図2】図2は、図1に示す本実施の形態にかかる切粉搬送路のC−D断面図である。
【図3】図3は、図1に示す本実施の形態にかかる切粉搬送路および破砕処理装置のA−B線断面である。
【図4】図4は、本実施の形態にかかる破砕処理装置の正面図である。
【図5】図5(a)、(b)は、本実施の形態にかかる搬送装置における動作を説明する図である。
【図6】図6(a)は、本実施の形態にかかる破砕ロータの一例の部分側面図、図6(b)は、破砕ロータの一例の正面図である。
【図7】図7(a)は、破砕ロータの他の例を示す側面図、図7(b)は、その断面図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態にかかる破砕処理装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態につき説明を加える。図1は、本実施の形態にかかる破砕処理装置付き搬送装置の概略を示す、一部断面略正面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態にかかる破砕処理装置10は、チップコンベア12の切粉搬送路14上に配置される。破砕処理装置10の配置位置については後に再度説明する。
【0020】
図1に示すように、チップコンベア12は、地平面に隣接して位置する、水平な第1の水平部15、第1の水平部15の一端から斜め上方に所定の角度で延びる上昇部16、および、上昇部16の一端からさらに水平に延びる第2の水平部17を有する。第1の水平部15の他端(符号18参照)は、切削機や研磨機などの工作機械(図示せず)の切粉排出口に位置する。以下、本明細書においては、チップコンベア12において、工作機械が配置される、第1の水平部15の他端側を上流側と称し、第2の水平部17の側を下流側と称する。
【0021】
切粉搬送路14において、たとえば、上流側に位置するの第1の水平部15は工作機械の内部を通り、工作機械の外部に露出される。上昇部16は、工作機械に隣接して配置された切粉バケット(図示せず)の開口に向かって上方に延びる。切粉搬送路14において、チップコンベア12の第2の水平部17の下流側端部には、切粉バケットの開口に対向する排出口20が設けられている。
【0022】
また、チップコンベア12の切粉搬送路14の下流側端部には、モータを備えたコンベア駆動部材23が取り付けられ、コンベア駆動部材23が駆動軸24を回転させることにより、切粉搬送路14中に配置される金属製のエンドレスベルト22を移動させる。また、切粉搬送路14の上流側端部には従動軸25が設けられている。
【0023】
チップコンベア12の内部に設けられたエンドレスベルト22は、工作機械の切粉排出口から排出されて、エンドレスベルト22の外部に露出した面(上側表面)に載置された切粉を、下流端の排出口20まで搬送することができるようになっている。また、エンドレスベルト22には所定間隔でエンドレスベルト22から垂直方向に延びる可動直立部材26が設けられている。
【0024】
図2は、図1に示す本実施の形態にかかる切粉搬送路のC−D断面図である。図1および図2に示すように、可動直立部材26は、エンドレスベルト22の幅と略同じ幅を有している。本実施の形態においてエンドレスベルト22および可動直立部材の幅は400mmである。可動直立部材26は、ヒンジのような回動手段(図示せず)により、エンドレスベルト22から直立する位置、および、エンドレスベルト22と水平な位置、つまり、エンドレスベルト22の面と平滑となる位置のいずれかに配置され得る。可動垂直部材26が直立する位置にあるときの高さは、たとえば、20mmである。
【0025】
可動直立部材26はエンドレスベルト22の移動に伴って移動し、また、可動直立部材26は、切粉搬送路14上、つまり、エンドレスベルト22の表面が上方に向いている状態、つまり、エンドレスベルト22上に処理対象物が載せられて搬送される状態では、エンドレスベルト22に垂直に位置し、エンドレスベルトの表面が下方に向いている状態、つまり、エンドレスベルト22が、チップコンベア12の裏面を、下流側から上流側に移動する状態では、エンドレスベルト22と水平に位置する。
【0026】
可動直立部材26により、切粉など処理対象物を、エンドレスベルト22の移動にともなって適切に下流側に搬送することができる。エンドレスベルト22および可動直立部材26を構成する材料は、当該エンドレスベルト22が周回する間に通過するクーラントによる腐食に耐えられるものであれば良い。無論、金属以外の材料を利用することも可能である。
【0027】
また、図2に示すように、切粉搬送路14は、エンドレスベルト22を収容するケーシング27と、ケーシング27の上部を覆う蓋体28を備えている。ケーシング27と蓋体28とは、ネジなどの取り付け部材(図示せず)により固定される。本実施の形態においては、ケーシング27の幅は500mm、また、高さは165mmである。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態にかかる破砕処理装置10は、チップコンベア14の上昇部16において、上昇部16のエンドレスベルト22の面(つまり、エンドレスベルト22の移動方向)に垂直方向に取り付けられる。図3は、図1に示す本実施の形態にかかる切粉搬送路および破砕処理装置のA−B線断面であり、破砕処理装置の側断面を示している。また、図4は、本実施の形態にかかる破砕処理装置の正面図である。なお、図4において、破砕ロータ36の周辺は断面で示されている。
【0029】
図3および図4に示すように、本実施の形態にかかる破砕処理装置10は、破砕装置本体30と、モータ(図示せず)を備えた駆動手段32とを有する。破砕装置本体30の下方は開口し、チップコンベア12のハウジング27の上部と整合する。モータ軸31の端部にはプーリー33が取り付けられる。また、破砕手段を構成する破砕ロータ36の軸35の端部にもプーリー34が取り付けられる。プーリー33およびプーリー34には、チェーン或いはベルト(図示せず)が掛け渡されており、モータ軸31の回転が、プーリー33およびプーリー34を経て、軸35に伝達され、軸35に固定された破砕ロータ36を回転させることができる。
【0030】
軸35は、軸受37により回転可能に支持される。破砕ロータ36は、円筒形であり、その外周に回転刃44が形成される。破砕ロータ36は軸受37とともに、フレーム38に、ネジなどを有するフレーム取り付け部材39により固定される。図3に示すように、破砕ロータ36の下端と、エンドレスベルト22から直立する直立部材26の上端との間には所定の大きさの空隙(クリアランス)45が設けられる。後述するように、切粉搬送路14を搬送される処理対象物のうち、所定の絡まり具合で所定の大きさになっている処理対象物を、回転刃44により引っ掛ける。そこで、クリアランスの大きさにより、回転刃44が引っ掛けることができる、絡み合った処理対象物の大きさを規定することができる。本実施の形態においては、フレーム取り付け部材39により、上記クリアランス45の大きさ(垂直方向の長さ)を調整することができる。なお、図3および図4に示す例では、クリアランス45(の垂直方向の長さ)は22mmである。
【0031】
図4に示すように、破砕ロータ36は、通常は、回転刃44が、エンドレスベルト22と対向する位置にあるときに、回転刃44が、エンドレスベルト22の移動方向(処理対象物の搬送方向:矢印Y参照)と反対に動くように回転される(矢印X参照)。破砕ロータ36による、矢印Xに示す回転を正回転と称する。したがって、回転刃44がエンドレスベルト22に近接する位置から、矢印X方向に進む領域が破砕室42を構成する。
【0032】
また、本実施の形態において、破砕処理装置本体10において、破砕ロータ36の上部に、破砕ロータ36と対向するように平板状の固定破砕板40が配置される。固定破砕板40は、対磨耗材料、たとえば、高硬度鋼を用いたプレート(耐磨耗プレート)である。固定破砕板40は、固定破砕板取り付け部材41により、破砕装置本体30に固定される。固定破砕板40の幅(破砕ロータ36の軸方向の長さ)は、破砕ロータ36の軸方向の長さと同じ或いはそれより長いのが望ましく、本例では400mmである。また、固定破砕板40の、上記軸方向と垂直方向の長さは、たとえば、75mmである。また、固定破砕板40と、回転刃44の先端との間には所定のクリアランス(たとえば、略2mm)が設けられている。このクリアランスも処理対象物の材質やサイズに応じて変更可能である。クリアランスの変更は、たとえば、厚みの異なる固定破砕板40を用いること、或いは、固定刃44の歯の長さ(歯たけ)を変更することで実現できる。
【0033】
次に、本実施の形態にかかる搬送装置における破砕処理装置10の位置について説明する。本実施の形態においては、上昇部16の比較的下方に、破砕処理装置10が配置されている。図1に示すように、第1の水平部15が終結して、上昇部16に移行した領域において、上昇部16には、弧を描く湾曲部51が設けられ、湾曲部51が終結すると、斜め上方に直線状に延びる直線部52が延びる。本実施の形態では、直線部52において、湾曲部51が終結して、当該直線部52が開始される位置に破砕処理装置10が配置される。
【0034】
このように構成された搬送装置の動作について以下に説明する。工作機械(図示せず)からは、切粉など処理対象物が排出され、切粉搬送部14の第1の水平部15の上流側端部18に落下し、チップコンベア12のエンドレスベルト22上に載せられる。エンドレスベルト22は、所定の速度で矢印Y方向に移動する。これにより、処理対象物は、エンドレスベルト22の移動に伴って、破砕処理装置10の配置位置、つまり、上昇部16における直線部52の開始位置に誘導される。上昇部17の湾曲部51に達すると、既に裁断された状態でサイズが小さい処理対象物(たとえば、符号501、502参照)は、図5(a)に示すように、エンドレスベルト22の上に載せられたまま、或いは、直立部材26に支持されて下方への落下が阻止された状態で、徐々に搬送方向(矢印Y参照)に沿って上昇する。サイズが小さい処理対象物は、破砕ロータ36と、エンドレスベルト22との間のクリアランス45の存在により、その間を通過していく(符号502参照)。
【0035】
その一方、図5(b)に示すように、絡まりあった状態で比較的サイズの大きい処理対象物(たとえば符号511、512参照)は、直立部材26により落下が阻止された状態で移動され、かつ、湾曲部51を通過した後、破砕ロータ36の下側に達した際に、破砕ロータ36の回転刃44に引っ掛けられ、破砕ロータ36の回転(矢印X参照)に伴って、矢印520方向に、破砕室42に送り込まれる。破砕ロータ36の上部に配置された固定破砕板40と破砕ロータ36の回転刃44とにより、引っ張られ、あるいは、折り曲げられ、場合によっては、引きちぎられる。折り曲げられ引きちぎられることにより、細かくなった処理対象物は、上流側に落下し(矢印521参照)、或いは、破砕ロータ36の回転に伴って、下流側に運ばれて落下する(矢印522参照)。上流側に落下した、サイズが小さくなった処理対象物は、破砕ロータ36とエンドレスベルト22との間のクリアランス45の存在により、その間を通過していく。
【0036】
なお、本実施の形態においては、一定の大きさの破砕室42が、破砕処理装置10の本体の上流側の側部に確保される。したがって、破砕ロータ36の回転刃44と、固定破砕部材40との間に処理対象物が挟まってしまい、破砕ロータ36の回転が阻害され、或いは、回転刃44が損傷するおそれを著しく小さくすることができる。
【0037】
固定破砕板40と破砕ロータ36の回転刃44とによって、引っ張られ、あるいは、折り曲げられたにもかかわらず、そのサイズが依然として大きい処理対象物は、その重みにより、上流側でエンドレスベルト22に向けて落下する(矢印521参照)。落下した処理対象物は、さらに、湾曲部51の傾斜によりエンドレスベルト22上を上流側(矢印Z参照)、つまり、エンドレスベルト22の搬送方向と逆方向に滑り落ちる。エンドレスベルト22上を滑り落ちた処理対象物は、直立部材26により、さらには上流側に滑り落ちないように支持され、その後、直立部材26の移動に伴って、再度搬送方向に移動され、湾曲部51の終端位置において、破砕ロータ36の回転刃44に再度引っ掛けられる。
【0038】
また、破砕ロータ36とエンドレスベルト22との間のクリアランス45を通過可能なサイズの処理対象物であっても、比較的サイズが大きく、または、重量の大きいものは、自重などにより湾曲部51を、矢印Z方向、つまり、搬送方向と反対方向に移動する場合もある。この場合にも、エンドレスベルト22上を滑り落ちた処理対象物は、直立部材26により、上流側に滑り落ちないように支持される。ここで、直立部材26に、他の処理対象物が存在すれば、滑り落ちた処理対象物と他の処理対象物とが絡み合って、新たにより大きなサイズの処理対象物が形成される。より大きなサイズの処理対象物は、再度搬送方向に移動され、湾曲部51の終端位置において、破砕ロータ36の回転刃44に再度引っ掛けられる。
【0039】
本実施の形態のように上昇部16、特に、上昇部16の直線部52において、湾曲部51が終端し、当該直線部52開始された位置に、破砕処理装置10を配置することにより、第1の水平部15に破砕処理装置を配置するのと比較して、以下のような利点がある。
【0040】
固定破砕板40と破砕ロータ36の回転刃44とによって、引っ張られ、あるいは、折り曲げられたにもかかわらず、そのサイズが依然として大きい処理対象物がエンドレスベルト22に向かって落下した後、湾曲部51に沿っていったん上流側に滑り落ちる。したがって、落下した処理対象物は、いったん、破砕ロータ36と離間するように移動した後、再度、エンドレスベルト22の移動に伴って搬送方向に移動して、破砕ロータ36に接近する。このような動作により、破砕ロータ36とエンドレスベルト22との間に処理対象物が挟まり、破砕ロータ36の回転が阻害される可能性や、エンドレスベルト22が破損する可能性を小さくすることができる。
【0041】
その一方、破砕処理装置が第1の水平部に配置されている場合には、破砕されなかった処理対象物は、破砕ロータ36と離間するような移動を伴わず、エンドレスベルト22により搬送され、エンドレスベルト22と破砕ロータ36との間に送り込まれる。この場合、破砕ロータ36の回転が阻害され、或いは、エンドレスベルト22が破損する場合がある。
【0042】
また、湾曲部51を滑り落ちる処理対象物が直立部材26に達したときに、そこに、他の処理対象物が存在すれば、滑り落ちた処理対象物と他の処理対象物とが絡み合って、新たにより大きなサイズの処理対象物が形成される。より大きなサイズの処理対象物が形成されることにより、再度、破砕ロータ36に接近したときに、破砕ロータ36の回転刃44に引っ掛けられる可能性が大きくなる。
【0043】
その一方、破砕処理装置が第1の水平部に配置されている場合には、処理対象物が他の処理対象物と絡み合い新たな処理対象物が形成される可能性は小さい。
【0044】
なお、本実施の形態において、破砕ロータ36は、破砕ロータ36は、通常は、矢印X方向、すなわち、回転刃44が、エンドレスベルト22と対向する位置にあるときに、回転刃44が、エンドレスベルト22の搬送方向と反対に動くように回転される。しかしながら、常に、矢印X方向に正回転することに限定されない。たとえば、ある時間Tだけ矢印X方向に正回転し、次いで、時間t(T>t)だけ逆回転することを繰り返しても良い。
【0045】
また、破砕ロータ36を回転駆動する駆動手段32において、トルクセンサ或いは電流センサを設け、破砕ロータ36における過負荷や、モータにおける過電流を検出した場合に、所定時間だけ破砕ロータ36を逆回転させるように構成しても良いことは言うまでも無い。
【0046】
本実施の形態にかかる破砕ロータ36の外周に形成される回転刃44は、種々の形状であって良い。図6(a)は、本実施の形態にかかる破砕ロータの一例の部分側面図、図6(b)は、破砕ロータの一例の正面図である。図6(a)、(b)においては、破砕ロータ36の軸35を除く本体部分のみを図示している。
【0047】
図6(a)、(b)に示す例では、破砕ロータ36には円周方向に破砕刃44が形成されている。本実施の形態において、破砕ロータ36の軸方向の長さは380mm、直径は95mmである。また、破砕刃44は、歯たけ5mm、ピッチ10mmで形成されている。
また、軸方向に隣接する破砕刃44間のそれぞれの面は、10mm離間し(図6(a)参照)、また、それぞれの面のなす角は60度である(図6(a)参照)。また、破砕刃44は、円周方向に20度間隔で形成される(図6(b)参照)。この例では、破砕ロータ36は、高硬度鋼で作られ、破砕刃44は、たとえば、切削加工により形成され得る。
【0048】
また、上述したように、破砕ロータ36の上部に配置された固定破砕板(耐磨耗プレート)40と、破砕ロータ36との間の空隙は略2mmである。無論、この距離は、たとえば、0.5mm〜2mm程度の間で調整しても良い。この距離の調整は、固定破砕板40の厚みや、回転刃44の歯たけを調整することにより実現できる。
【0049】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0050】
破砕ロータ36の構成は上述したものに限定されない。図7(a)は、破砕ロータの他の例を示す側面図、図7(b)は、その断面図である。図7(a)、(b)に示すように、破砕ロータ136の外周面には、90度の角度間隔で、回転破砕刃144が設けられている。それぞれの回転破砕刃144の断面形状において、正転方向(矢印X方向)に、その先端部分154が向くようになっている。また、刃の上側156は、破砕ロータ136の周とほぼ一致し、かつ、背面側158は、破砕ロータ136の周の接線と略一致するようになっている。破砕ロータ136は、チップコンベア12のエンドレスベルト22の幅と略同じの軸方向長さを有している。なお、破砕ロータ136の先端と、切粉搬送路14のエンドレスベルト22との距離は、回転破砕刃42の先端が、エンドレスベルト22の直立部材26に接触しない状態で、所望のように設定すればよい。
【0051】
破砕ロータは、円柱状の本体に、回転刃を、ねじなどの取り付け部材により取り付けるような構成としても良い。或いは、中実の筒体を削りだして製作しても良いし、鋳造により一体整形されても良い。
【0052】
また、本実施の形態にかかる破砕処理装置10においては、破砕ロータ36の上側に、前記破砕処理装置の取り付け方向(つまり、エンドレスベルト22の垂直方向)と垂直の方向(つまり、エンドレスベルト22と平行)に、単一の固定破砕板40が配置されている。しかしながら、これに限定されるものではない。図8は、本発明の第2の実施の形態にかかる破砕処理装置の正面図である。図4と同様に、図8においても、破砕ロータ36の周辺は断面で示されている。また、図8において、図4と同じ構成部分には同一の符号を付している。
【0053】
図8に示すように、第2の実施の形態にかかる破砕処理装置10においては、破砕ロータ36の上側に固定破砕板(耐磨耗プレート)40が取り付けられるのに加えて、破砕処理装置10の下流側側面、つまり、上記固定破砕板40の取り付け位置から、破砕ロータ36の正回転方向(矢印X方向)に位置する側面に、第2の固定破砕板(耐摩擦プレート)150が、ネジを含む取り付け部材151により取り付けられる。
【0054】
第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、絡まりあった状態で比較的サイズの大きい処理対象物は、直立部材26により落下が阻止された状態で移動され、かつ、湾曲部51を通過した後、破砕ロータ36の下側に達した際に、破砕ロータ36の回転刃44に引っ掛けられ、破砕ロータ36の回転(矢印X参照)に伴って、破砕ロータ36の破砕室42に送り込まれる。したがって、破砕ロータ36の上部に配置された固定破砕板40と破砕ロータ36の回転刃とにより、引っ張られ、あるいは、折り曲げられ、場合によっては、引きちぎられる。折り曲げられ引きちぎられることにより、細かくなった処理対象物は、さらに、破砕ロータ36の回転に伴って移動し、破砕ロータ36の回転刃と、第2の固定破砕板150とにより、さらに細かく破砕される。破砕ロータ36の回転刃44と固定破砕板40とによる破砕、および、回転刃44と、第2の固定破砕板150とによる破砕の2度の破砕により、十分に細かくなった処理対象物は、下流側、つまり、上昇部16のエンドレスベルト22上に落下し、エンドレスベルト22の移動に伴って移動される。
【0055】
また、本実施の形態において、固定破砕板40に、破砕ロータ36の軸方向に、当該軸と平行な、固定破砕板40の厚み(垂直方向の厚み)が他の部分と比較して薄くなっている薄肉部が形成されていても良い。薄肉部の幅(厚みと垂直方向の長さ)も、破砕ロータ36の軸と固定破砕板40との間の距離により、所望のように変更することができる。無論、薄肉部を形成せず、固定破砕板40の面が平面状であっても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
10 破砕処理装置
12 チップコンベア
14 切粉搬送路
16 切粉バケット
22 エンドレスベルト
30 破砕装置本体
32 駆動手段
33、34 プーリー
35 軸
36 破砕ロータ
37 軸受
38 フレーム
39 フレーム取り付け部材(クリアランス調整部材)
40 固定破砕板(耐磨耗プレート)
41 固定破砕板取り付け部材
42 破砕室
44 回転刃
45 クリアランス
50 湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方が開口した本体と、本体に回転可能に取り付けられた円筒形の破砕ロータであって、その円筒形の外周面に複数の破砕刃が設けられ破砕ロータと、前記破砕ロータの上部と対向するように、前記本体上部に取り付けられた耐磨耗プレートから構成される固定破砕部材と、前記破砕ロータの軸と連結され、前記破砕ロータを回転駆動するモータを含み、当該モータを駆動および制御する駆動手段と、を有する破砕処理装置、並びに、
工作機械から排出される処理対象物を搬送する搬送路にエンドレスベルトを有する搬送装置、を備えた、破砕処理装置付き搬送装置であって、
前記搬送路が、地平面に隣接して位置する水平な第1の水平部、第1の水平部の一端から斜め上方に一定の角度で延びる上昇部、および、上昇部の一端からさらに水平に延びる第2の水平部を有し、
前記回転刃が前記エンドレスベルトと対向する位置にあるときに、当該回転刃が当該エンドレスベルトの搬送方向と反対に動く方向を正回転として、前記駆動手段は、前記破砕ロータを回転し、
前記破砕処理装置が、前記上昇部において、前記第1の水平部が終結した当該上昇部が開始される位置に、前記上昇部における前記エンドレスベルトの配置方向に略直立して取り付けられることを特徴とする破砕処理装置付き搬送装置。
【請求項2】
前記搬送路において、前記第1の水平部が終結して前記上昇部に移行した領域において、当該上昇部が、弧を描く湾曲部と、前記湾曲部に接続された、斜め上方に直線状に延びる直線部と、を有し、
前記破砕処理装置が、前記直線部において、前記湾曲部が終結して、前記直線部が開始される位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の破砕処理装置付き搬送装置。
【請求項3】
前記エンドレスベルトが、エンドレスベルトの幅と略同一の幅を有し、回動手段により、前記エンドレスベルトから直立する位置、および、前記エンドレスベルトと水平で、当該エンドレスベルトの面と平滑となる位置のいずれかに配置され得る可動直立部材を備え、前記エンドレスベルが、その上面で処理対象物を受け得る状態のときに、前記可動直立部材が、前記エンドレスベルトから直立する位置にあることを特徴とする請求項1または2に記載の破砕処理装置付き搬送装置。
【請求項4】
前記可動直立部材が直立位置にあったときに、前記可動直立部材と、前記破砕ロータの下端との間のクリアランスを調整するクリアランス調整手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の破砕処理装置付き搬送装置。
【請求項5】
前記破砕処理装置において、前記固定破砕部材の取り付け位置である上面に接続された、前記破砕ロータの前記正回転方向に位置する側面に、第2の固定破砕部材が取り付けられたことを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の破砕処理装置付き搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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