説明

破砕装置および該装置を用いた破砕方法

【課題】地盤や岩石などの被破砕物を破砕する際の作業効率を高める。
【解決手段】回転機構部4によって装置本体部1に対して往復軸X0を中心にチゼル3を回転可能となっているため、破砕処理によってチゼル先端部311と削孔内壁とが密着されてしまいチゼル3の引き抜きが困難になったとしても、回転機構部4によるチゼル3の回転によってチゼル3の引き抜きが容易となる。また、チゼル3を回転機構部4により回転位置決めした後で当該チゼル3により破砕処理を行うと、必要な方向についてのみ破砕処理を実行することができ、作業効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地盤や岩石などの被破砕物を破砕する破砕装置および該装置を用いた破砕方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤掘削、砕岩、削岩などの破砕作業には、ブレーカー等の破砕装置が使用される。例えば特許文献1に記載の破砕装置は、油圧パワーショベル等の建設車両のアームに取付けられ、鋭角に形成されたチゼルの先端部を地盤や岩石などの被破砕物の表面に当接させるとともに、往復動するピストンでチゼルの後端部を打撃することによりチゼルが被破砕物の方向に前進する。このとき、ピストンでの打撃によって被破砕物の方向に進行する圧縮の応力波が発生し、それが被破砕物に到達して被破砕物を破砕する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−114297号公報(例えば、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の破砕装置は、上記したように圧縮の応力波を用いて地盤や岩石などの破砕を実行しているため、次のような問題があった。すなわち、地盤や岩石などは圧縮応力に対して極めて高い耐力を有しており、圧縮の応力波を用いた従来技術では硬度の高い地盤や岩石などを容易に破砕することができず、岩石などの破砕に長時間を要してしまうことがあった。このように従来の破砕技術では、エネルギーおよび作業性において非効率な面があり、改善の余地があった。また、砕装置の作動中にチゼル先端部と地盤表面等との摩擦によって大量の熱が発生してチゼルが熱変形してしまい、短時間でのチゼル交換が不可避となっている。このように従来装置では、チゼル寿命が短く、このことがチゼル交換作業やコストの面で大きな問題となっている。
【0005】
そこで、本願発明者はこのような問題を解消するために、次のような破砕技術を創作し、特許を得た(特許第4636294号)。この特許発明は、被破砕物に形成された削孔に対し、先細り形状を有するチゼル先端部を挿入して先端部の傾斜面を削孔の内壁に当接させるとともに、軸方向に往復動するピストンによりチゼルを打撃し、これによって削孔周囲に対して削孔からピストンの往復方向(軸方向)とほぼ直交する方向に引張応力を作用させて削孔周囲を破砕するものである。そして、破砕完了後にチゼルを削孔から引き抜く。
【0006】
このように当該破砕技術は、チゼル先端部を削孔に挿入した状態で破砕処理を行うため、破砕状況によっては削孔にチゼル先端部が密着して削孔からチゼルを引き抜くことが困難となり、このことが破砕作業の低下を招く要因のひとつとなる。
【0007】
また、チゼルの先端部形状によっては破砕処理の進行状況が異なる場合がある。例えばチゼル先端部の傾斜面に溝部を設けた場合、削孔の内壁に対して当接する領域と当接しない領域とが生じる。このため、削孔の周囲に対して引張応力が作用する方向と作用しない方向とが発生して破砕処理に異方性が生じる。したがって、この異方性を積極的に利用して必要な方向にのみ破砕処理を実行して作業効率を高めたい場合には、それに応じてチゼルを回転位置決めするのが望まれるが、上記破砕技術ではこの点まで考慮されていなかった。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、地盤や岩石などの被破砕物を破砕する際の作業効率を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1態様は、地盤や岩石などの被破砕物に形成された削孔の周囲を破砕する破砕装置であって、上記目的を達成するため、装置本体部と、装置本体部内で往復軸に沿って往復動するピストンと、先端端面が削孔の内径よりも小さな第1の外径を有するとともに先端端面から後端に進むにしたがって外径が大きくなり削孔の内径よりも大きな第2の外径となる傾斜面を有する先細り形状の先端部を有し、装置本体部に対して往復軸に沿って往復動自在で、かつ往復軸を中心に回転自在なチゼルと、装置本体部に対してチゼルを往復軸を中心に回転させる回転機構とを備え、チゼルの先端部が削孔に挿入されて傾斜面が削孔の内壁に当接した状態でピストンがチゼルの後端部を打撃することでチゼルの傾斜面が削孔の内壁と直接当接して削孔を起点として被破砕物を破砕することを特徴としている。
【0010】
また、この発明の第2態様は、請求項1に記載の破砕装置を用いて地盤や岩石などの被破砕物に形成された削孔の周囲を破砕する破砕方法であって、上記目的を達成するため、 被破砕物を破砕した際に被破砕物からのチゼルの引き抜きが困難となったとき、回転機構により往復軸を中心にチゼルを回転させた後で、チゼルの引き抜きを行うことを特徴としている。
【0011】
さらに、この発明の第3態様は、請求項1に記載の破砕装置を用いて地盤や岩石などの被破砕物に形成された削孔の周囲を破砕する破砕方法であって、上記目的を達成するため、被破砕物の破砕に使用するチゼルの傾斜面に少なくとも1つ以上の溝部や切欠部が形成されているとき、回転機構によって往復軸を中心にチゼルを回転させることで、装置本体部に対してチゼルを回転位置決めした後で、チゼルによる被破砕物の破砕を行うことを特徴としている。
【0012】
このように構成された発明では、地盤や岩石などの被破砕物に形成された削孔に先細り形状のチゼル先端部が挿入される。このチゼルの先端部では、先端端面が削孔の内径よりも小さいため、チゼルの先端は削孔にすっぽりと入り込む。また、チゼルの先端部には、先端端面から後端に進むにしたがって外径が大きくなり削孔の内径よりも大きな第2の外径となる傾斜面が設けられているため、チゼルの先端部を削孔に進入させると、やがて傾斜面が削孔の内壁に直接当接する。そして、その当接状態で往復動するピストンによりチゼルを打撃すると、削孔の周囲では、削孔からピストンの往復方向とほぼ直交する方向に引張応力が被破砕物に作用する。その結果、削孔の周囲が破砕される。
【0013】
また、回転機構によって装置本体部に対して往復軸を中心にチゼルを回転させることが可能となっているため、破砕処理の作業効率を高めることができる。例えば、破砕処理後に削孔からチゼルをそのまま引き抜くことが困難になったとしても、回転機構によりチゼルを強制的に回転させることで被破砕物との密着が解消されてチゼルの引き抜きが容易となる。また、チゼルの傾斜面に溝部や切欠部を設けることで破砕処理に異方性を与えることができるが、このようなチゼルを回転機構により回転位置決めした後で当該チゼルにより破砕処理を行うと、破砕が必要な方向についてのみ破砕処理を実行することができ、作業効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
従来より知られているように、岩盤や岩石の耐力は圧縮方向に比べて引張方向で小さい。したがって、本発明のように削孔からピストンの往復方向とほぼ直交する方向に引張応力を被破砕物に対して作用させて削孔の周囲を破砕する場合、圧縮応力を利用する従来技術に比べ、地盤や岩石などの被破砕物を少ないエネルギーで効率的に破砕することができる。しかも、回転機構によって装置本体部に対してチゼルを回転させることができるため、被破砕物からのチゼルの引き抜きが困難となった場合や所望の方向にのみ破砕処理を実行したい場合などに適切に対応することができ、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる破砕装置の一実施形態たる油圧ブレーカーの一使用態様を示す図である。
【図2】図1の油圧ブレーカーで使用するチゼルと装置本体部との関係を示す図である。
【図3】装置本体部へのチゼルの装着態様を示す組立断面図である。
【図4】チゼルと回転機構との関係を模式的に示す斜視図である。
【図5】図1に示す油圧ブレーカーの他の使用態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明にかかる破砕装置の第1実施形態たる油圧ブレーカーの一使用態様を示す図である。また、図2は図1の油圧ブレーカーで使用するチゼルと装置本体部との関係を示す図である。また、図3は装置本体部へのチゼルの装着態様を示す組立断面図である。さらに、図4はチゼルと回転機構との関係を模式的に示す斜視図である。この油圧ブレーカーは、装置本体部1と、装置本体部1に装着されてピストン21を往復軸X0に沿って往復移動させる油圧シリンダ2と、装置本体部1の先端部に対して往復軸X0に沿って往復動自在で、かつ往復軸X0を中心に回転自在に取り付けられるチゼル3と、装置本体部1に対して往復軸X0を中心にチゼル3を回転させる回転機構部4とを備えている。
【0017】
この装置本体部1は、図2に示すように、本体フレーム11と、中空フランジ形状を有するチゼル支持部材12とを有している。これらのうち本体フレーム11は、図1に示すように油圧パワーショベル等の建設車両5のアーム51に直接またはブラケット(図示省略)を介して取り付可能に構成されている。また、装置本体部1の内部には、油圧シリンダ2を装備するシリンダ空間13が設けられるとともに、当該シリンダ空間13の先端側(反アーム側)でシリンダ空間13に連通するチゼル空間14が設けられている。そして、シリンダ空間13に油圧シリンダ2が配置され、不図示の切換弁を介して建設車両5から圧油を油圧シリンダ2に供給することにより、ピストン21をチゼル空間14に対して往復動させてチゼル空間14に配置されるチゼル3の後端部を打撃可能となっている。
【0018】
このチゼル空間14には、図4に示すように、3つのギア41〜43が往復軸X0を中心に等角度間隔で配置されている。これらのギア41〜43の回転軸X1〜X3はともに往復軸X0と平行であり、チゼル本体31の後端部に取り付けられたギア32と噛合可能となっている。このギア32はチゼル本体31の後端部に対してフランジ状に取り付けられたものであり、ギア32とチゼル本体31とを一体成型してもよいし、チゼル本体31に対してギア32を溶接等により接合してもよい。
【0019】
また、これらのギア41〜43は回転機構部4の構成要素であるが、それらのうちギア41はウォーム・ホィールとして機能するものであり、このギア41に対してウォーム44が噛み合ってウォーム・ギヤ機構が構成されている。また、このウォーム44には減速ギアボックス45を有する油圧モーター46が接続されている。この油圧モーター46は建設車両5からの圧油の供給によって作動するものであり、減速ギアボックス45を介してウォーム44を回転させることでウォーム・ギヤ機構によって往復軸X0を回転中心としてチゼル本体31およびギア32からなるチゼル3を回転させる。なお、残りのギア42、43はアイドルギアであり、チゼル3の回転に従動しながらそれぞれ回転軸X2、X3を回転中心として回転する。したがって、図2や図4に示すように、本実施形態では、チゼル3は装置本体部1に対して往復軸X0に沿って往復動自在で、かつ往復軸X0を中心に回転自在となっている。
【0020】
また、このようにチゼル本体31の後端部を本体フレーム11の先端開口(反アーム側開口)より挿入し、ギア32を各ギア41〜43と噛合させた状態では、図2に示すように、チゼル3の先端部(より詳しくはチゼル本体31の先端部)は本体フレーム11から先端側に突出している。また、このチゼル先端部を支持するために、2本のOリング15、16がチゼル支持部材12の中空内周面に設けられた溝に挿入されている。そして、チゼル本体31の中央部がチゼル支持部材12の中空部に挿通されてOリング15、16に圧接される状態で、チゼル支持部材12が本体フレーム11の先端部に取り付けられる。こうして、チゼル支持部材12がOリング15、16を介してチゼル本体31を往復軸方向Xに移動自在に、かつ回転方向θに回転自在に支持するとともに、破砕された岩石片や埃などがチゼル空間14に入り込むのを防止する。なお、このようにチゼル支持部材12はボルトなどの締結金具17によって本体フレーム11の先端部に固定されており、こうして油圧ブレーカーを組み立てた状態では、図2に示すように、本体フレーム11の内部に設けた段差面とチゼル支持部材12の後端面との間に、ギア41の厚み程度の隙間が形成されており、その隙間内でチゼル3は往復軸方向Xに往復移動可能となっている。
【0021】
このチゼル3の先端部、つまりチゼル本体31の先端部311は、先端側に進むにしたがって外径が減少する、いわゆる先細り形状を有している。より詳しくは、チゼル本体31のうち先細りが開始される位置では、削孔6の内径よりも大きな外径を有する一方、先端端面312では、削孔6の内径よりも小さな外径を有する。このようにチゼル本体31の先端側面は傾斜面313となっている。このため、後述するように削孔6にチゼル3の先端部311を挿入すると、先端部311の一部が削孔6に入り込んで傾斜面313が削孔6の内壁に係止される。
【0022】
また、チゼル3の先端部311には、図4に示すように、往復軸方向Xに延びる溝部が2本等間隔で形成されており、往復軸方向Xに対して直交する水平面での断面は、江戸時代に両替商が用いた後藤分銅に類似した形状を有している。したがって、上記のようにチゼル3の先端部311を削孔6に挿入すると、先端部311の先端領域314が削孔6の内壁と当接し、本発明の「当接領域」に相当している。このように本実施形態では、チゼル3の傾斜面313には、2個の当接領域314がピストン21の往復軸X0に対して略対称に設けられている。
【0023】
次に、上記のように構成された油圧ブレーカーを使用して地盤や岩石などの被破砕物7を破砕する動作について説明する。この実施形態では、被破砕物7に対して次の関係、
W1<W3<W2
ただし、W1:チゼル先端端面312の外径、
W2:先細り開始位置でのチゼル本体31の外径、
W3:削孔6の内径
を満足するサイズの削孔6を形成する。そして、その削孔6に対し、チゼル3の先端部311を挿入し、傾斜面313に形成された当接領域314を削孔6の内壁に当接させるとともに、建設車両5から切換弁を介して油圧シリンダ2へ圧油を供給することによりピストン21を往復軸方向に往復動させてチゼル3を打撃する。このとき、削孔6の周囲では、削孔6からピストン21の往復軸方向Xとほぼ直交し、しかも互いに異なる2方向に引張応力が作用して削孔6の周囲が破砕される。
【0024】
こうして破砕処理が完了すると、建設車両5のアーム51を上昇させてチゼル3の先端部311を削孔6から引き上げる。ここで、破砕状況によっては削孔6に対してチゼル先端部311が密着して削孔6からチゼル3を引き抜くことが困難となる場合がある。このような場合、建設車両5から切換弁を介して油圧モーター46へ圧油を供給することにより往復軸方向Xを中心にチゼル3を回転させるのが効果的である。つまり、チゼル3の回転によりチゼル先端部311と削孔内壁との密着が解消されるため、チゼル3の引き抜きが容易となる。なお、チゼル3の回転方向については、チゼル先端部311と削孔内壁との密着状況に応じて適宜設定することができる。また、一定方向に回転させるだけでなく、正逆往復回転させてもよい。さらに、チゼル3を回転させつつチゼル3を徐々に上昇させる、つまりチゼル3の回転と上昇を組み合わせて実行してもよい。
【0025】
以上のように、本実施形態では、削孔6からピストン21の往復方向とほぼ直交する方向に引張応力を被破砕物7に対して作用させて削孔6の周囲を破砕しているので、圧縮応力を利用する従来技術に比べ、地盤や岩石などの被破砕物7を少ないエネルギーで効率的に破砕することができる。
【0026】
また、上記したように本実施形態では、回転機構部4によって装置本体部1に対して往復軸X0を中心にチゼル3を回転可能となっているため、破砕処理によってチゼル先端部311と削孔内壁とが密着されてしまいチゼル3の引き抜きが困難になったとしても、回転機構部4によるチゼル3の回転によってチゼル3の引き抜きが容易となる。
【0027】
さらに、本実施形態では、チゼル3の傾斜面313に2本の溝部が設けられているため、チゼル先端部311では削孔内壁と当接する当接領域314とそうではない非当接領域とが生じている。したがって、このチゼル3により破砕処理を行った場合、当接領域314で破砕処理が進行する一方、非当接領域では破砕処理は進行せず、破砕処理に異方性を与えることができる。しかも、本実施形態では、上記したように装置本体部1に対してチゼル3を回転させることができる。よって、このように異方性を有するチゼル3を回転機構部4により回転位置決めした後で当該チゼル3により破砕処理を行うと、必要な方向についてのみ破砕処理を実行することができ、作業効率を高めることができる。その一例について図5を参照しつつ説明する。
【0028】
図5は、図1に示す油圧ブレーカーの他の使用態様を示す図である。この使用態様は、建設車両5を所定位置に固定しながら破砕位置に応じて装置本体部1に対してチゼル3を回転位置決めすることによって、同図(a)中の2点鎖線で示す破砕予定ラインに沿って被破砕物7を破砕するものである。このように建設車両5を固定する場合、アーム51の旋回と伸縮とにより破砕予定ライン上に形成された削孔6の上方位置に油圧ブレーカーを移動させることが可能である。例えば破砕予定ラインの1点で破砕処理を行う場合、同図(a)および(b)に示すようにチゼル先端部311に形成される溝部が破砕予定ラインと直交する方向を向くように装置本体部1に対してチゼル3を回転位置決めした状態で破砕処理を行う。これによって、2つの当接領域314を結んだ仮想ラインが破砕予定ラインとほぼ一致し、破砕予定ラインに沿って破砕処理が進行する一方、破砕予定ラインと直交する方向では破砕処理は行われない。
【0029】
そして、破砕予定ラインに沿って次の破砕処理を行うためには、例えば同図(a)および(c)に示すようにアーム旋回軸X5を中心にアーム51を所定角度θ1だけ旋回移動させるとともにアーム51を伸縮させて次の削孔6の上方位置に油圧ブレーカーを移動させる必要がある。ただし、こうして油圧ブレーカーを移動させたのみでは、アーム51の旋回移動に伴い破砕予定ラインに対してチゼル3が回転変位し、2つの当接領域314を結んだ仮想ラインが破砕予定ラインに傾いてしまう。そこで、この使用態様では、回転機構部4により往復軸X0を中心にチゼル3を角度(−θ1)だけ回転させて上記仮想ラインを破砕予定ラインとほぼ一致させる。その後で、上記実施形態と同様にして破砕処理を実行する。これによって、破砕予定ラインに沿った破砕処理が進行する一方、破砕予定ラインと直交する方向では破砕処理は行われず、所望の破砕処理が実行される。
【0030】
このように油圧ブレーカーの位置に応じてチゼル3の回転位置を調整することのみで、建設車両5を所定位置に固定しながらも破砕予定ラインに沿った破砕処理を行うことができ、優れた作業効率が得られる。
【0031】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、2つの溝部を設けたチゼル3を用いているが、溝部の代わりに切欠部を設けてもよく、この場合、先細り形状の先端部311における往復軸方向Xに対して直交する水平面での断面は略小判型となる。また、溝部や切欠部の個数はこれに限定されるものではなく、例えば4つの溝部や切欠部を設けて4つの当接領域を形成したものを用いてもよい。このように先細り形状の先端部311に溝部や切欠部を1個以上設けることで破砕処理に対して異方性を与えることができる。もちろん、溝部や切欠部を設けていないチゼルを用いてもよいことはいうまでもない。さらに、当接領域314の形状および大きさなどについても任意である。
【0032】
また、上記実施形態では、3つのギア41〜43によりチゼル3を回転自在に支持しながら油圧モーター46の回転駆動力によりチゼル3を回転させるように構成しているが、ギアを4個以上設けてもよく、またギアの大きさや配設位置などについても任意である。
【0033】
また、上記実施形態では、油圧モーター46をチゼル回転の駆動源として用いているが、駆動源はこれに限定されるものではなく、電気モーターなどの他のアクチュエーターを用いることができる。
【0034】
また、上記実施形態では、ウォーム・ギヤ機構によってチゼル本体31およびギア32からなるチゼル3が往復軸X0を回転中心として回転されるが、他の動力伝達機構を用いて油圧モーター46の駆動力をチゼル3に伝達するように構成してもよい。
【0035】
さらに、上記実施形態では油圧によりピストンを往復動させているが、ピストンの駆動源は油圧に限定されるものでなく、破砕装置全般で使用される駆動源、例えばエアーなどを用いる破砕装置にも本発明を適用することができることが言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、地盤や岩石などの被破砕物を破砕する破砕技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…装置本体部
3…チゼル
4…回転機構部
6…削孔
7…被破砕物
21…ピストン
31…チゼル本体
311…先端部
312…先端端面
313…傾斜面
314…当接領域
X0…往復軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤や岩石などの被破砕物に形成された削孔の周囲を破砕する破砕装置であって、
装置本体部と、
前記装置本体部内で往復軸に沿って往復動するピストンと、
先端端面が前記削孔の内径よりも小さな第1の外径を有するとともに前記先端端面から後端に進むにしたがって外径が大きくなり前記削孔の内径よりも大きな第2の外径となる傾斜面を有する先細り形状の先端部を有し、前記装置本体部に対して前記往復軸に沿って往復動自在で、かつ前記往復軸を中心に回転自在なチゼルと、
前記装置本体部に対して前記往復軸を中心に前記チゼルを回転させる回転機構部とを備え、
前記チゼルの先端部が前記削孔に挿入されて前記傾斜面が前記削孔の内壁に当接した状態で前記ピストンが前記チゼルの後端部を打撃することで前記チゼルの傾斜面が前記削孔の内壁と直接当接して前記削孔を起点として前記被破砕物を破砕することを特徴とする破砕装置。
【請求項2】
請求項1に記載の破砕装置を用いて地盤や岩石などの被破砕物に形成された削孔の周囲を破砕する破砕方法であって、
前記被破砕物を破砕した際に前記被破砕物からの前記チゼルの引き抜きが困難となったとき、
前記回転機構部により前記往復軸を中心に前記チゼルを回転させた後で、前記チゼルの引き抜きを行うことを特徴とする破砕方法。
【請求項3】
請求項1に記載の破砕装置を用いて地盤や岩石などの被破砕物に形成された削孔の周囲を破砕する破砕方法であって、
前記被破砕物の破砕に使用するチゼルの傾斜面に少なくとも1つ以上の溝部が形成されているとき、
前記回転機構部によって前記往復軸を中心に前記チゼルを回転させることで、前記装置本体部に対して前記チゼルを回転位置決めした後で、前記チゼルによる前記被破砕物の破砕を行うことを特徴とする破砕方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−130975(P2012−130975A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283119(P2010−283119)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(399048869)株式会社神島組 (10)
【Fターム(参考)】