説明

破砕装置

【課題】破砕対象物の形状などに制限がなく、長い時間に渡る騒音も発生することのない破砕装置を提供することを課題とする。
【解決手段】破砕装置を、重量物から構成される打撃体と、上下に延びる長尺体であり、前記打撃体を上下に沿って移動するように保持するガイド手段と、下端側にチゼルが形成される棒体からなり、前記ガイド部材の下端側の前記打撃体が落下する位置において、上下方向にスライド可能に保持される破砕体と、前記打撃体の上方側で駆動手段により上下動する移動体と、前記移動体の前記打撃体に接触する位置に設けられる磁石又は鉄からなる第一吸着部と、前記打撃体の前記移動体に接触する位置に設けられる前記第一吸着部に吸着する磁石又は鉄からなる第二吸着部と、前記打撃体の前記ガイド部材の上方への移動を規制する前記ガイド部材の上方側に固定される規制手段とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤やコンクリート等を破砕する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート基礎や岩盤などの破砕には油圧ブレーカーや圧砕機が用いられていた。油圧ブレーカーはチゼルにより破砕対象物に毎分500回以上の打撃を加えることで対象物を破砕するものであり、圧砕機は対象物を狭持し、油圧と梃子の力により破砕対象物に圧縮力を加えることで破砕するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの従来の装置には次のような問題がある。まず、油圧ブレーカーは、対象物の形状などは限定されないが、チゼルを短時間で往復運動させるために大きな騒音と振動が比較的長い時間に渡って発生するという問題がある。また、圧砕機は作業音は静かであるが、狭持できる形状、大きさを有する対象物でなければ使用することができないという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑み、破砕対象物の形状などに制限がなく、長い時間に渡る騒音も発生することのない破砕装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。
請求項1に記載の発明は、重量物から構成される打撃体と、上下に延びる長尺体であり、前記打撃体を上下に沿って移動するように保持するガイド手段と、下端側にチゼルが形成される棒体からなり、前記ガイド部材の下端側の前記打撃体が落下する位置において、上下方向にスライド可能に保持される破砕体と、前記打撃体の上方側で駆動手段により上下動する移動体と、前記移動体の前記打撃体に接触する位置に設けられる磁石又は鉄からなる第一吸着部と、前記打撃体の前記移動体に接触する位置に設けられる前記第一吸着部に吸着する磁石又は鉄からなる第二吸着部と、前記打撃体の前記ガイド部材の上方への移動を規制する前記ガイド部材の上方側に固定される規制手段とからなる破砕装置である。
このような構成を有する破砕装置は、破砕体を上方に移動させた状態で破砕体先端のチゼルを破砕対象物に当てる。そして、移動手段の移動体を下方に下げて第一吸着部と第二吸着部とを互いに吸着させてから、移動体を上方に持ち上げることで第二吸着部が設けられる打撃体をガイド部材に沿って上方へ持ち上げる。打撃体は、規制手段の位置から上方には移動できないので、移動体を規制手段の位置からさらに上方に移動させると、第一吸着部と第二吸着部との吸着が解け、打撃体は重力によって落下し、破砕体の上端に落下して打撃を与える。この打撃により破砕体のチゼル先端には瞬時に大きな応力が発生し、これにより破砕対象物を破砕することができる。
【0005】
請求項2に記載の発明は、前記破砕装置において、前記磁石を永久磁石としたものである。
請求項3に記載の発明は、前記破砕装置において、前記移動体は、前記ガイド手段の先端側に一端が固定され、他端が前記ガイド手段の先端方向へ前記駆動手段となる正反転可能なウインチに巻かれるワイヤーと、前記移動体の上部に設けられる前記ワイヤーに通される動滑車とにより上下動するものである。
請求項4に記載の発明は、前記破砕装置において、前記ガイド手段は、前記打撃体が通る内面を有する筒体により形成されるものである。
請求項5に記載の発明は、前記破砕装置において、前記打撃体は鉄から構成され、前記第二吸着部は打撃体を構成する鉄からなるものである。
【発明の効果】
【0006】
以上のような構成により、本発明は次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明は、チゼルが前方に移動する力によって対象物を破砕するので対象物の形状に制限がなく、また、重力物からなる打撃体の落下によってチゼル先端に力を付与することで大きな力をチゼル先端に加えることができるので、一回から数回の操作で破砕対象物を破砕でき、長い時間に渡る騒音を発生させることがない。
請求項2に記載の発明は、吸着部を構成する磁石を永久磁石とすることによって、電磁石を利用を利用しなくてもよいので、電力を供給する必要をなくすことができる。
請求項3に記載の発明は、移動手段を簡易な構成とでき、製造コストを抑えることができる。
請求項4に記載の発明は、ガイド手段を筒状とすることで、構造的に簡易かつ頑強にでき、また、打撃体を確実に保持することができる。
請求項5に記載の発明は、打撃体を鉄として第二吸着部を別途設ける必要をなくすことで打撃体を簡易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る破砕装置の正面図である。
【図2】実施形態に係る破砕装置の縦断面図である。
【図3】(a)〜(c)は破砕装置の動作を示す立て断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
図1に本実施形態に係る破砕装置Xの正面図を示し、図2に破砕装置Xの縦断面図を示す。破砕装置Xは、ガイド体10、破砕体20、打撃体30、移動機構40、規制体50を有する。
ガイド体10は、高さ約6mの円筒体であり、下端側が蓋11により閉じられる。蓋11の中央には孔が設けられ円筒体からなるスリーブ12が下端側に突出するように設けられている。また、ガイド体10の側面中央やや下端寄りには、固定アングル14が設けられている。固定アングル14は、2枚の直角三角形状の板体を上縁が水平となるようにして、互いが一定間隔を空けて対向するようにガイド体10側面に溶接固定されている。固定アングル14には重機Mに固定するためのスリット14a、14bが設けられている。
【0009】
破砕体20は、スリーブ12内を摺動できる外径を有する鋼鉄製の棒体であり、スリーブ12内に収められる。破砕体20の先端にはチゼル21が形成されている。なお、チゼルの形状は特に特定されるものではなく、円錐や四角錘のように先端が点になるものや、鑿のように先端が線状になるものや、円柱のように先端が面になるものなど破砕対象物に応じて適宜変更が可能である。また、破砕体20の後端はスリーブ12から抜けない外径を有する円板22が形成されており、また、チゼル部分上部近傍にも同様にスリーブ12から抜けない外径を有する円板23が形成されている。このような構成により、破砕体20はスリーブ12内に一定範囲で上下動できるように固定される。
打撃体30は、下側の球体と上側の扁平な円柱体が連結した形状を有する鉄の塊であり、約800kgの重量を有する重量物からなる。打撃体30は、ガイド体10の内部、破砕体20の上に設置される。また、打撃体30の上部の円柱体の外径及び下部の球体の外径がガイド体10の内径よりも少し小さく形成されることで、打撃体30は姿勢を維持した状態でガイド体内を上下に移動できるようになっている。
【0010】
移動機構40は、移動体41、ワイヤー42、ウインチ43、動滑車44を有する。移動体41はガイド体10内部において打撃体30の上方に設けられる円板体であり外周にガイド体10内部で転動しないように円筒状の枠41aが設けられている。枠41aの外径は打撃体30の外径よりも少し小さく形成されており、また、先端側が先端に向かって縮径するように形成されている。ワイヤー42は鋼製のワイヤーであり先端がガイド体10の上端に係止金具42aにより固定され、基端側はウインチ43のスプールに巻かれている。ウインチ43はガイド体10の上端の係止金具42aに対向する位置の外側に固定される油圧ウインチであり、正転することでワイヤー42を巻き取るとともに逆転することでワイヤー42を繰り出すことができる。ウインチ43の油圧ケーブルは、ガイド体10の側面を通って、固定アングル14内に固定される連結ジョイント14cに先端が固定される。動滑車44は移動体41の上面に設けられる動滑車でありワイヤー42が掛けられている。このような構成によりウインチ43を正転させるとワイヤー42が巻き上げられて動滑車44とともに移動体41はガイド体10内を上昇し、ウインチ43を逆転させるとワイヤー42が繰り出され動滑車44とともに移動体41はガイド体10内を下降する。また、移動体41の下面には打撃体30に吸着し持ち上げ得る磁力を有する永久磁石45が固定されている。なお、永久磁石45は第一吸着部を構成し、これに吸着される打撃体30の上面は第二吸着部を構成する。
規制体50は、打撃体30は通れないが、移動体41は通れる内径を有し、外径はガイド体10内径と一致するリング体である。規制体はガイド体10内面上方において、移動体41が移動できる最上部に位置したときに、永久磁石45下面よりも下方に位置するように固定される。
【0011】
次に、以上のような構成を有する破砕装置Xの使用方法について説明する。使用者は、まず、図1に示すバケットを取り外したバックホーなどの重機Mのアーム先端部に固定アングル14部分を固定し、また、重機Mからの油圧ケーブル先端を連結ジョイント14cによってウインチ43の油圧ケーブルに連結させる。
この状態で、図3(a)に示すように破砕対象物C上部に破砕体20のチゼル21先端を当接させて全体を少し下方に移動させることで、破砕体20をスリーブ12上方へ移動させ、さらに、ウインチ43を逆転させることで移動体41を下げて永久磁石45を打撃体30上面に吸着させる。この状態でウインチ43を正転させて移動体41を打撃体30とともにガイド体10内を上昇させていく。やがて図3(b)に示すように、移動体41が規制体50を通る一方で、打撃体30が規制体50に当接して移動できない状態となる。この状態から、さらに移動体41を上昇させていくと、永久磁石45と打撃体30との吸着が解け、打撃体30は重力により落下し、図3(c)に示すように破砕体20の上端に激突する。これにより破砕体20のチゼル21先端が破砕対象物Cに瞬間的に強い応力を与えることになり、この衝撃力で破砕対象物Cを破砕することができる。
【0012】
なお、上記実施形態では、ガイド体を筒状にしているが、打撃体30を上下方向に沿って移動可能に保持するものであればよく、例えば、ガイド体を打撃体30を取り囲む柱体や細長い板体から形成することで、打撃体30を上下方向に移動可能に保持したり、一本の柱体をレールとして打撃体に当該レールに上下動可能に係合する係合部分を設けることで打撃体を上下方向に移動可能に保持したりするようにできる。
また、永久磁石45は電磁石にしてもよく、打撃体30上面側も永久磁石45に吸着する極を向けた永久磁石を固定するようにしてもよい。さらに、打撃体30上面側に永久磁石を設け、移動体下面には鉄のブロック体などを固定するようにしてもよい。
さらに、移動規制体50はリング状としているが、半径方向に突出するいくつかの突起物により構成してもよい。
【符号の説明】
【0013】
X 破砕装置
10 ガイド体
20 破砕体
21 チゼル
30 打撃体
40 移動構造
41 移動体
42 ワイヤー
43 ウインチ
44 動滑車
45 永久磁石
50 規制体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物から構成される打撃体と、
上下に延びる長尺体であり、前記打撃体を上下に沿って移動するように保持するガイド手段と、
下端側にチゼルが形成される棒体からなり、前記ガイド部材の下端側の前記打撃体が落下する位置において、上下方向にスライド可能に保持される破砕体と
前記打撃体の上方側で駆動手段により上下動する移動体と、
前記移動体の前記打撃体に接触する位置に設けられる磁石又は鉄からなる第一吸着部と、
前記打撃体の前記移動体に接触する位置に設けられる前記第一吸着部に吸着する磁石又は鉄からなる第二吸着部と、
前記打撃体の前記ガイド部材における上方への移動を規制する前記ガイド部材に固定される規制手段と
からなる破砕装置。
【請求項2】
前記磁石は永久磁石である請求項1に記載の破砕装置。
【請求項3】
前記移動体は
前記ガイド手段の先端側に一端が固定され、他端が前記ガイド手段の先端方向へ前記駆動手段となる正反転可能なウインチに巻かれるワイヤーと、
前記移動体の上部に設けられる前記ワイヤーに通される動滑車と
により上下動するものである
請求項1又は2に記載の破砕装置。
【請求項4】
前記ガイド手段は、前記打撃体が通る内面を有する筒体により形成される請求項1から3のいずれか1項に記載の破砕装置。
【請求項5】
前記打撃体は鉄から構成され、前記第二吸着部は打撃体を構成する鉄からなる請求項1から4のいずれか1項に記載の破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−77474(P2012−77474A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221673(P2010−221673)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(510261647)
【Fターム(参考)】