説明

硝化槽、排水処理システム

【課題】アンモニアを効率よく硝化できる硝化槽及び排水処理システムを提供する。
【解決手段】魚介類が飼育されている水槽からの水が供給される供給口と、供給口に供給された水を排出する第1の多孔管と、水に含有されるアンモニアを硝化する硝化細菌が中空の内表面に付着された筒状の複数の中空濾材を有し、複数の中空濾材の外表面同士が夫々隙間なく隣接して配列される第1のフィルタと、硝化細菌が付着され、複数の中空濾材の夫々の上側から下側へ第1の多孔管から排出された水を略均等に供給する第2のフィルタと、複数の中空濾材の下側から上側へ酸素を供給する第2の多孔管と、第1のフィルタの下側から得られる水を排出する排出口とを備えた硝化槽。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝化槽及び排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、魚介類を飼育する水槽内には、魚介類の食べ残した餌や排出物等に起因して、アンモニアが発生する。このアンモニアは魚介類にとって有害であり、水槽内に蓄積されると魚介類の成育を妨げる虞がある。そこで、水槽中の水に含有されるアンモニアを硝化細菌によって硝化して、魚介類に比較的無害な硝酸とする硝化槽が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この硝化槽は、例えば表面に硝化細菌が付着したカキ殻やプラスチック等の濾材を備えている。そして、水槽から供給された水がこの濾材の表面に接触しながら硝化槽を通過することで、水中のアンモニアが硝化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−76257号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した硝化槽では、水槽から供給された水の流れによって濾材が移動し、硝化槽内の濾材の密度が偏ってしまう虞がある。硝化槽内の濾材の密度が偏ると、例えば密度が高くなった箇所では水の流れが滞り、密度が低くなった箇所では水が濾材の表面と効率よく接触しないまま硝化槽を通過してしまう虞がある。このため、効率よくアンモニアを硝化することができない虞がある。
【0005】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アンモニアを効率よく硝化できる硝化槽及び排水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための発明は、魚介類が飼育されている水槽からの水が供給される供給口と、前記供給口に供給された前記水を排出する第1の多孔管と、前記水に含有されるアンモニアを硝化する硝化細菌が中空の内表面に付着された筒状の複数の中空濾材を有し、前記複数の中空濾材の外表面同士が夫々隙間なく隣接して配列される第1のフィルタと、前記硝化細菌が付着され、前記複数の中空濾材の夫々の上側から下側へ前記第1の多孔管から排出された前記水を略均等に供給する第2のフィルタと、前記複数の中空濾材の下側から上側へ酸素を供給する第2の多孔管と、前記第1のフィルタの下側から得られる前記水を排出する排出口とを備えた硝化槽である。
【0007】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アンモニアを効率よく硝化できる硝化槽及び排水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態にかかる排水処理システムを備える養殖システムの構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態にかかる硝化槽の上面図である。
【図3】網目状濾材の模式図である。
【図4】ハニカム濾材の斜視図である。
【図5】図1に示す養殖システムにおいてトラフグを養殖した場合の給餌量と水槽中のアンモニア態窒素濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
<<<養殖システムについて>>>
本実施形態にかかる排水処理システムは、例えばトラフグ等の魚介類を養殖するための養殖システムに備えられる。そこで、先ず、図1を参照して、本実施形態にかかる排水処理システム10を備える養殖システム1について説明する。
【0012】
養殖システム1は、水槽2と、排水処理システム10と、ポンプ7と、冷温水器8とを備えている。水槽2では、例えばトラフグが飼育される。これに伴って、水槽2内の水にはトラフグの食べ残した餌(残餌)や排出物等の固形分が含有されると共に、この残餌や排出物に起因するアンモニア(アンモニア態窒素)が含有される。
【0013】
排水処理システム10は、水槽2から水が供給され、この水に含有される固形分及びアンモニアを除去する。なお、排水処理システム10の詳細については後述する。
【0014】
ポンプ7は、水槽2と排水処理システム10との間に水を循環させる。つまり、水槽2から排水処理システム10に固形分及びアンモニアを含有する水を供給し、排水処理システム10で固形分及びアンモニアが除去された水を水槽2へ戻している。
【0015】
冷温水器8は、ヒートポンプ等を備え、トラフグの飼育に適した温度となるように水槽2内の水温を調節する。
【0016】
<<<排水処理システムについて>>>
以下、排水処理システム10について具体的に説明する。排水処理システム10は、沈殿槽3と、ドラムフィルタ4(フィルタ装置)と、曝気槽5と、硝化槽6とを備えている。
【0017】
沈殿槽3は、水槽2から水が供給され、この水に含有される固形分のうち残餌や糞の集合体等からなる沈殿物を除去する。例えば、沈殿槽3は、底面及び上面を備える中空の円筒形状を呈する処理水槽(不図示)を有している。この処理水槽の底面側には内周面と外周面との間を貫通する貫通孔が設けられ、この貫通孔から水が内周面に沿って回転するように供給される。これによって、処理水槽の内部では渦巻き流が生じ、水より比重の大きい沈殿物が効率よく沈降する。沈降した沈殿物は処理水槽の底面側において捕集される。また、沈殿物と分離された水は処理水槽の上面側に設けられた内周面と外周面との間を貫通する貫通孔から排出される。
【0018】
ドラムフィルタ4は、沈殿槽3を通過して沈殿物が除去された水が供給され、この水に含有される固形分のうち、例えば沈殿物よりも小さく約90μmよりも大きい固形物を除去する。例えば、ドラムフィルタ4は、金属等からなり、中空の円筒形状を呈するフィルタを備えている。このフィルタの周面には、約90μmの大きさの網目が形成されている。また、このフィルタは、中空の円の中心を通る軸心が水平方向を向くと共に、この軸心周りに回転自在となるようにケーシング内に支持されている。そして、モータの駆動力等によって回転しているフィルタの内部に沈殿槽3からの水が供給されることで、フィルタの内部に固形物が残り、フィルタの外部に固形物が除去された水が排出される。
【0019】
尚、ドラムフィルタ4は、フィルタの内部に残った固形物によって網目が塞がれ、フィルタ内の水位が一定値以上となると、沈殿槽3からの水の供給を一時的に停止して、例えばフィルタの外部から内部に向かって洗浄水が噴射されるようになっている。つまり、いわゆる逆洗機能を有している。これによって、フィルタの目詰まりが自動的に解消され、効率よく水中の固形物を除去することができる。
【0020】
曝気槽5は、ドラムフィルタ4を通過した後の水に空気を供給する。例えば、曝気槽5は、ドラムフィルタ4からの水を貯留し、この水に対して不図示のブロワ等によって空気を送る。これによって、水中の溶存酸素の量を増やすことができる。
【0021】
硝化槽6は、曝気槽5で空気が供給された水に含有されるアンモニアを硝化細菌によって硝化する。
【0022】
<<<硝化槽について>>>
以下、図1及び図4を参照して硝化槽6について具体的に説明する。硝化槽6は、供給口60と、第1の多孔管61と、シート状フィルタ62(第3のフィルタ)と、プラスチック濾材63(第2のフィルタ)と、ハニカム濾材64(第1のフィルタ)と、第2の多孔管65と、排出口66と、硝化槽本体67と、ブロック68と、グレーチング69とを備えている。
【0023】
図1及び図2に示すように、硝化槽本体67は例えば繊維強化プラスチック(FRP)からなり、上部が開口した箱形状を呈している。硝化槽本体67の幅方向を形成する一対の側壁のうち、一方の側壁の上側に供給口60が設けられ、他方の側壁の下側に排出口66が設けられている。また、硝化槽本体67の内部には上側から順に、第1の多孔管61、シート状フィルタ62、プラスチック濾材63、ハニカム濾材64、グレーチング69、第2の多孔管65、ブロック68が収容されている。そして、硝化槽本体67の内部に収容されたこれらの構成と、硝化槽本体67の排出口66が設けられた側壁との間には管理用空間67aが形成されている。また、硝化槽本体67の供給口60が設けられた側壁には曝気槽5が隣接している。
【0024】
供給口60は、曝気槽5からの水を第1の多孔管61に供給するべく、例えば曝気槽5及び硝化槽本体67を連通する貫通孔であり、第1の多孔管61の一端側が挿通されている。例えば、図2に示すように、供給口60は硝化槽本体67の幅方向に略等間隔となるように3つ設けられている。
【0025】
第1の多孔管61は、例えば金属や樹脂等からなり、周面に長手方向に沿って複数列の穿孔61aが設けられた管形状を呈している。例えば、図2に示すように、第1の多孔管61は、供給口60から硝化槽本体67の長さ方向に夫々延在する3本からなり、曝気槽5からの水が供給口60を介して分配される。そして、第1の多孔管61は、供給口60から供給された水を複数の穿孔61aによって分散しながら排出することで、硝化槽本体67の全体に水を供給する。
【0026】
シート状フィルタ62は、第1の多孔管61から排出された水に含有される例えば約90μmより小さく約10μmより大きい懸濁物を除去する。例えば、シート状フィルタ62は、繊維状の樹脂等からなり、約10μmの大きさの網目を有するシート形状を呈している。そして、第1の多孔管61の下側において、硝化槽本体67の水平方向に広がるようにプラスチック濾材63の上側全体を覆っている。
【0027】
プラスチック濾材63は、例えば樹脂からなる約6cm四方の網目状濾材63a(図3参照)が複数積み重ねられて一体に形成された直方体形状を呈している。また、プラスチック濾材63の表面には、アンモニアを硝化する硝化細菌が付着されている。尚、硝化細菌は固形担体に付着する性質を有しているため、例えば硝化細菌が存在する水槽内にプラスチック濾材63を浸しておくことで、プラスチック濾材63の表面に硝化細菌が付着される。
【0028】
このプラスチック濾材63は、シート状フィルタ62の下側であって、ハニカム濾材64の上側全体に複数敷き並べられている。このため、シート状フィルタ62を通過した水は、プラスチック濾材63の表面に接触して隣り合うプラスチック濾材63に伝わりながら、ハニカム濾材64に向かって流れる。つまり、プラスチック濾材63を通過した水は、硝化槽本体67の水平方向に分散されて排出される。このため、プラスチック濾材63はシート状フィルタ62からの水を硝化してハニカム濾材64に略均等となるように供給する。
【0029】
尚、図2に示す硝化槽6の上面図では、説明の便宜上、シート状フィルタ62及びプラスチック濾材63を省略している。
【0030】
ハニカム濾材64は、図4に示すように、例えば樹脂からなり、中空の六角柱形状を呈する複数の中空濾材64aを有している。この複数の中空濾材64aは夫々、両端の開口が上側及び下側を向き、外表面同士が隙間なく隣接するように配列した状態で硝化槽本体67内に固定配置されている。
【0031】
例えば、中空濾材64a夫々の六角形状の開口の中空を挟んで対向する頂点同士の距離(図2の矢印Aで示す長さ、セルサイズ)は約13mmとなっている。また、ハニカム濾材64は、複数の中空濾材64aが互いに外表面を共有するように一体に形成された形状を呈している。このハニカム濾材64は、幅方向の両端側から加えられる力に対して弾性を有すると共に水よりも大きい比重を有している。このため、例えば先ず、弾性力に抗する力を加えて収縮した状態のハニカム濾材64を硝化槽本体67内に隙間なく設置する。そして、この弾性力に抗する力を解放することで、ハニカム濾材64の外表面が硝化槽本体67の内壁に押し付けられるように接触する。これによって、ハニカム濾材64は硝化槽本体67に対して水流等によって移動することがないように固定配置されている。
【0032】
尚、これに限らず、複数の中空濾材64aは例えば接着剤等によって硝化槽本体67内に固定配置されていてもよい。
【0033】
また、複数の中空濾材64a夫々の内表面には硝化細菌が付着されている。尚、例えば、硝化細菌が付着されたプラスチック濾材63から中空濾材64aへ水が供給されると、硝化細菌がプラスチック濾材63から中空濾材64aの内表面上に移動して増殖する。これによって、複数の中空濾材64a夫々の内表面に硝化細菌が付着される。
【0034】
ハニカム濾材64にはプラスチック濾材63から略均等に水が供給されるため、この水が複数の中空濾材64a夫々の内表面に接触しながら上側から下側へ流れる。これによって、水中のアンモニアが効率よく硝化される。つまり、プラスチック濾材63からの水がハニカム濾材64を通過することでアンモニアが酸化されて硝酸(硝酸態窒素)となるため、トラフグにとって有害なアンモニアが除去された水がハニカム濾材64の下側から得られる。
【0035】
尚、本実施形態においては、ハニカム濾材64の径を例えば13mmとして説明したが、説明の便宜上、図2では、ハニカム濾材64のハニカム形状がわかる程度の大きさに記載されている。
【0036】
第2の多孔管65は、例えば金属や樹脂等からなり、周面に長手方向に沿って複数の穿孔65aが設けられた管形状を呈している。例えば、第2の多孔管65は、硝化槽本体67内のハニカム濾材64の下側において、硝化槽本体67の長さ方向に延在する3本からなり、硝化槽本体67の幅方向に互いに略等間隔となるように配置されている。そして、第2の多孔管65は、一端側から不図示のブロワ等によって空気が送り込まれることで穿孔65aから空気を排出し、中空濾材64aの下側から上側へ酸素を供給する。
【0037】
これによって、中空濾材64aの上側から下側に向かう水の流れを抑制することや、下側から上側へ向かう水の流れを発生することができる。このため、中空濾材64aの内表面と水との接触時間及び接触機会を増やして、アンモニアを効率よく硝化することができる。また、硝化槽本体67内の水の溶存酸素量を増やすことができ、硝化細菌が好気的に保たれるため、アンモニアを効率よく硝化することができる。
【0038】
尚、この第2の多孔管65からの空気の供給は、連続的に行われていても、断続的に行われていてもよい。また、第2の多孔管65は、特定の中空濾材64aのみに空気を供給することとしてもよい。
【0039】
ブロック68は、例えば樹脂やコンクリート等の水より比重の大きい材料からなる直方体形状を呈し、硝化槽本体67内の底面上に配置されている。グレーチング69は例えば樹脂等の水より比重の大きい材料からなる格子形状を呈し、ブロック68の上に配置されている。そして、グレーチング69の上には、ハニカム濾材64が配置されている。つまり、ハニカム濾材64は、ブロック68及びグレーチング69によって第2の多孔管65の上に固定配置され、第2の多孔管65から排出された空気は、グレーチング69の格子の間を通ってハニカム濾材64に供給されている。
【0040】
排出口66は、硝化槽本体67の内側面と外側面との間を貫通する貫通孔であり、排出口66を介して、ハニカム濾材64の下側から得られる水を硝化槽本体67から排出する。排出口66から排出された水はポンプ7に供給される。
【0041】
管理用空間67aは、ポンプ7の吸い込み口である排出口66を管理するために設けられている。例えば排出口66に異物が詰まった場合、不図示の清掃用具等により、管理用空間67aを介して、排出口66を清掃することが可能になっている。
【0042】
<<<養殖システムにおける養殖試験結果について>>>
本実施形態にかかる排水処理システム10を備える養殖システム1において、稚魚期から成魚期までの約1年3ヶ月の間トラフグの養殖試験を実施し、トラフグの給餌量と水槽2中のアンモニア態窒素濃度との関係を調べた。図5を参照してこの養殖試験の結果について説明する。
【0043】
尚、養殖システム1の各構成に貯留される水量は、水槽2では26.8m、曝気槽5及び硝化槽6では7.5m、沈殿槽3では0.3mとし、各構成を繋ぐ配管部分を含めた合計水量は35mとした。また、養殖システム1では、ポンプ7によって243l/minの流量の水が循環することとし、水槽2で飼育するトラフグの個体数を1029尾とした。
【0044】
結果、図5に示すように、養殖システム1ではトラフグが成長するごとに給餌量が増加するため排出物等の量は増加するが、この給餌量の増加に伴うアンモニア態窒素濃度の増加は見られず、常に1mg/Lを下回った。よって、排水処理システム10によって効率よくアンモニアが硝化され、水槽2内の水がトラフグの成育に適したアンモニア態窒素濃度に維持されたことがわかった。
【0045】
以上より、本実施形態にかかる硝化槽6では、水槽2からのアンモニアを含有する水が、供給口60を介して第1の多孔管61に供給される。そして、第1の多孔管61の穿孔61aから排出された水がシート状フィルタ62を介してプラスチック濾材63に供給され、プラスチック濾材63を通過した水がハニカム濾材64に供給される。
【0046】
第1の多孔管61では、穿孔61aによって水を分散して、シート状フィルタ62に供給することができる。このため、シート状フィルタ62全体の網目を用いて、水中の懸濁物を効率よく捕捉することができる。そして、シート状フィルタ62によって懸濁物が除去された水を複数のプラスチック濾材63の全体に供給することができる。これによって、プラスチック濾材63の網目が懸濁物によって塞がれることを防止できると共に、プラスチック濾材63の表面に効率よく水が接触するため、アンモニアを効率よく硝化することができる。
【0047】
また、プラスチック濾材63を通過することによって分散された水が、ハニカム濾材64に供給されることで、複数の中空濾材64a夫々に略均等に水が供給される。さらに、中空濾材64aは硝化槽本体67内に固定配置されているため、水流等によって硝化槽本体67内で密度が偏ることを抑制できる。よって、複数の中空濾材64a夫々の内表面に効率よく水が接触するため、アンモニアを効率よく硝化することができる。
【0048】
また、本実施形態にかかる排水処理システム10では、トラフグを飼育する水槽2からの水を浄化することとした。トラフグの糞は他の魚介類に比べて小さいため、シート状フィルタ62の網目の大きさを約10μmとすることで、水中において懸濁物となった糞を効率よく除去することができる。これによって、プラスチック濾材63の目詰まり等を防止して、水中のアンモニアを効率よく硝化することができる。また、トラフグの糞等が集合して形成された約90μm以上の固形物をドラムフィルタ4によって除去した後の水をシート状フィルタ62に供給する。これによって、シート状フィルタ62の目詰まり等を効果的に防止して、水中の固形分を効率よく除去することができる。さらに、トラフグの糞の大きさに応じた固形物の大きさに合わせて、ドラムフィルタ4のフィルタの網目の大きさを約90μmとすることで、ドラムフィルタ4の逆洗機能が効果的に働いて、水中の固形分を効率よく除去することができる。
【0049】
また、本実施形態にかかる排水処理システム10を備える養殖システム1では、水槽2と排水処理システム10との間で水を循環している。つまり、水槽2でトラフグを飼育するための水を排水処理システム10で浄化しながら繰り返し使用する、いわゆる循環濾過方式が採用されている。これによって、冷温水器8等によって容易に水槽2内の水温を調整することができると共に、外部から病原菌が混入した水が供給されることを防止できるため、効率よくトラフグを成育することができる。また、トラフグの養殖によって発生する排水を減らすことができ、環境負荷を低減できる。
【0050】
<<<その他の実施形態について>>>
前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0051】
本実施形態にかかる硝化槽6のハニカム濾材64は、中空の六角柱形状を呈する複数の中空濾材64aが隙間なく隣接して形成されることとしたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、ハニカム濾材64は、中空の四角柱形状や三角柱形状等の筒状を呈する複数の中空濾材が隙間なく隣接して形成されていてもよい。
【0052】
また、本実施形態にかかる硝化槽6では、プラスチック濾材63を約6cm四方の網目状濾材63aが複数積み重ねられて形成されていることとしたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば表面に硝化細菌が付着されたカキ殻等であってもよい。
【0053】
また、本実施形態にかかる硝化槽6では、シート状フィルタ62を備えることとしたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、硝化槽6はシート状フィルタ62を備えず、第1の多孔管61の穿孔61aから排出された水が直接プラスチック濾材63に供給されることとしてもよい。この場合、硝化槽6には、懸濁物が取り除かれた水が供給されることが好ましいため、マイクロフィルタ4の後段であって、硝化槽6の前段となる位置にシート状フィルタ62が設けられることが好ましい。
【0054】
また、本実施形態にかかる硝化槽6では、中空濾材64aは硝化槽本体67に固定配置されることとしたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、水流等によって硝化槽本体67内で中空濾材64aの密度が偏ることが抑制される程度に、硝化槽本体67内に固定されていない複数の中空濾材64aが満たされてもよい。
【0055】
また、本実施形態にかかる排水処理システム10は、いわゆる循環濾過方式の養殖システム1に備えられることとしたが、特にこれに限定されるものではない。排水処理システム10は、水槽2で使用した水を海等に排水して魚介類を養殖する、いわゆる掛け流し方式の養殖システムにおいて、排水中に含有されるアンモニアを硝化することとしてもよい。また、トラフグ以外の魚介類を養殖する養殖システムに備えられてもよい。また、排水処理システム10は、魚介類を養殖するための養殖システムに限らず、水中のアンモニアを硝化する必要があるものに適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…養殖システム,2…水槽,3…沈殿槽,4…ドラムフィルタ,5…曝気槽,6…硝化槽,7…ポンプ,8…冷温水器,10…排水処理システム,60…供給口,61…第1の多孔管,61a、65a…穿孔,62…シート状フィルタ,63…プラスチック濾材,63a…網目状濾材,64…ハニカム濾材,64a…中空濾材,65…第2の多孔管,66…排出口,67…硝化槽本体,67a…管理用空間,68…ブロック,69…グレーチング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類が飼育されている水槽からの水が供給される供給口と、
前記供給口に供給された前記水を排出する第1の多孔管と、
前記水に含有されるアンモニアを硝化する硝化細菌が中空の内表面に付着された筒状の複数の中空濾材を有し、前記複数の中空濾材の外表面同士が夫々隙間なく隣接して配列される第1のフィルタと、
前記硝化細菌が付着され、前記複数の中空濾材の夫々の上側から下側へ前記第1の多孔管から排出された前記水を略均等に供給する第2のフィルタと、
前記複数の中空濾材の下側から上側へ酸素を供給する第2の多孔管と、
前記第1のフィルタの下側から得られる前記水を排出する排出口と、
を備えたことを特徴とする硝化槽。
【請求項2】
前記第1のフィルタは、硝化槽内に固定配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の硝化槽。
【請求項3】
前記第1の多孔管から排出された前記水に含有される懸濁物を除去して、前記第2のフィルタに供給する第3のフィルタを更に備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の硝化槽。
【請求項4】
前記魚介類は、フグ類である
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の硝化槽。
【請求項5】
請求項1に記載の硝化槽と、
前記水槽からの水が供給され、当該水に含有される沈殿物を除去する沈殿槽と、
前記沈殿槽を通過した後の前記水に含有される前記沈殿物よりも小さい固形物を除去するフィルタ装置と、
前記フィルタ装置を通過した後の前記水に空気を供給する曝気槽と、を備え、
硝化槽は、前記曝気槽から前記供給口に前記水が供給されること特徴とする排水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−194368(P2011−194368A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66782(P2010−66782)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】