説明

硫酸リサイクル型洗浄システムおよびその運転方法

【課題】 過硫酸を用いた洗浄システムにおいて、電解反応の利用により過硫酸濃度を高めて洗浄効果を上げるとともに、電解反応に用いる電極の消耗を防止する。
【解決手段】 過硫酸溶液2により被洗浄材30を洗浄する複数の洗浄槽1a、1bと、電解反応により過硫酸溶液2を再生する電解反応装置10と、洗浄槽1a、1bと電解反応槽10との間で、過硫酸溶液2を循環させる循環ライン4a、5a、4b、5bを備える。一方の洗浄槽で被洗浄材30を洗浄する際に、他方の洗浄槽と電解反応装置10との間で溶液を循環させつつ電解をして、洗浄に適した過硫酸濃度にまで高める再生を行う。洗浄によって被洗浄材30から剥離した汚染物が電解反応装置10に流れ込んで電極を消耗させるのを防止する。また、上記洗浄と再生とを複数の洗浄槽で交互に行うことで処理効率を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハなどに付着した汚染物などを剥離効果が高い過硫酸溶液で洗浄剥離する際に、硫酸溶液を繰り返し利用しつつ過硫酸溶液を再生して洗浄に供する硫酸リサイクル型洗浄システムおよびその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超LSI製造工程におけるウエハ洗浄技術は、レジスト残渣、微粒子、金属および自然酸化膜などを剥離洗浄するプロセスであり、濃硫酸と過酸化水素の混合溶液(SPM)あるいは、濃硫酸にオゾンガスを吹き込んだ溶液(SOM)が多用されている。高濃度の硫酸に過酸化水素やオゾンを加えると硫酸が酸化されて過硫酸が生成される。過硫酸は自己分解する際に強い酸化力を発するため洗浄能力が高く、上記ウエハなどの洗浄に役立つことが知られている。
また、過硫酸を生成する方法として、上記方法の他に、硫酸イオンを含む水溶液を電解槽で電解して過硫酸溶解水を得て洗浄に供する方法も知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−192874号公報
【特許文献2】特表2003−511555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、SPMでは、過酸化水素水により発生する過硫酸が自己分解し酸化力が低下すると自己分解した分を補うため過酸化水素水の補給を繰り返すことが必要である。そして硫酸濃度がある濃度を下回ると新しい高濃度硫酸と交換する。しかし、上記方法では、過酸化水素水中の水で過硫酸溶液が希釈されるため、液組成を一定に維持することが難しく、さらには所定時間もしくは処理バッチ数毎に液を廃棄して、更新することが必要である。このため洗浄効果が一定しない他、多量の薬品を保管しなければならないという問題がある。一方、SOMでは液が希釈されることがなく、一般的にSPMより液更新サイクルを長くできるものの、洗浄効果においてはSPMより劣る。
【0005】
また、SPMでは、1回洗浄槽を満たした高濃度硫酸と数回の過酸化水素水添加により発生できる過硫酸量は少なく、限度がある。また、SOM法ではオゾン吹き込み量に対する過硫酸の発生効率が非常に低い。したがって、これらの方法では、生成する過硫酸の濃度に限界があり、洗浄効果にも限界があるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、硫酸を繰り返し使用しつつ硫酸の水溶液から電気化学的作用により過硫酸イオンを生成することで過硫酸イオンをリサイクルして硫酸使用量を大幅に低減するとともに、電気化学的反応で使用する電極の消耗を極力小さくすることができる硫酸リサイクル型洗浄システムおよびその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法のうち、請求項1記載の発明は、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する洗浄装置と、前記電解反応装置と前記洗浄装置との間で、前記過硫酸溶液を循環させる循環ラインとを備える硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法であって、前記洗浄装置で被洗浄材を洗浄する際に、前記循環ラインにおける過硫酸溶液の循環を停止しておき、前記洗浄装置で被洗浄材の洗浄を行っていないときに、前記電解反応装置で電解反応により過硫酸溶液の前記再生を行うとともに循環ラインによって電解反応装置と洗浄装置との間で過硫酸溶液の循環を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法の発明は、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する複数の洗浄装置と、前記電解反応装置と前記複数の洗浄装置とを個々に接続して前記過硫酸溶液をそれぞれ循環可能とする複数の循環ラインとを備える硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法であって、被洗浄材の洗浄を行っている洗浄装置では、前記電解反応装置との間で過硫酸溶液の循環を停止しておき、前記被洗浄材の洗浄を行っていない洗浄装置の少なくとも一つで、電解反応により過硫酸溶液の再生を行っている前記電解反応装置との間で循環ラインによって過硫酸溶液の循環を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記循環ラインにおいて、前記電解反応装置からの相対的に低温な過硫酸溶液の送り液と、前記洗浄装置からの相対的に高温な過硫酸溶液の戻り液との間で熱交換を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、被洗浄材の洗浄を終えた前記洗浄装置と前記電解反応装置との間で過硫酸用溶液を循環させつつ過硫酸濃度が所定濃度に達するまで前記過硫酸溶液の再生を行うステップと、その後、電解反応装置との間で過硫酸溶液の循環を行うことなく、該洗浄装置において被洗浄材の洗浄を行うステップとを繰り返し行うことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、電解反応装置に備える電極のうち、少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、電解反応装置に備える導電性ダイヤモンド電極が、基板上に積層させた後に基板を取り去った自立型導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記再生は、前記電解装置における電解中の過硫酸濃度が、該電解反応装置と循環接続される洗浄装置において洗浄により生成される有機性炭素濃度(TOC)に対し、過硫酸濃度〔g/l〕/TOC濃度〔g/l〕=10〜1000の条件を満たすに至るまで行うことを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する複数の洗浄装置と、前記電解反応装置と前記複数の洗浄装置とを個々に接続して前記過硫酸溶液をそれぞれ循環可能とする複数の循環ラインと、前記電解反応装置と接続する循環ラインおよび洗浄装置を選択切替する選択切替手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の方法によれば、洗浄液中の過硫酸イオンが自己分解して酸化力を発し、この酸化力によって被洗浄材の汚染物(主として有機物)などが効果的に剥離洗浄される。そして洗浄液では、溶液中の過硫酸イオンが自己分解することにより過硫酸濃度が次第に低下するが、洗浄が終了するまでは、電解反応装置との間では、汚染物を含んだ過硫酸溶液の循環はなされない。したがって、汚染物は溶液側に移行した後も洗浄装置側で過硫酸溶液によって酸化分解される。ここで、洗浄装置で洗浄している際に、洗浄装置の過硫酸溶液を電解反応装置との間で循環させると、洗浄装置内で被洗浄装置から剥離した汚染物が電解反応装置に流れ込む。この汚染物は電解反応装置に備える電極で直接酸化されることで電極を消耗させる。しかし、本願発明では、上記のように、被洗浄装置で洗浄中の過硫酸用液を電解反応装置に送液しないので、電極の上記消耗が回避される。
【0016】
また、洗浄装置で過硫酸イオンの自己分解により過硫酸濃度が低下した溶液は、洗浄が終了した後に、循環ラインを通して電解反応装置に送液される。電解反応装置では、硫酸イオンを含む溶液に陽極及び陰極を浸漬し、電極間に電流を流し電解する。これにによって溶液中の硫酸イオンが酸化されて過硫酸イオンが生成され、過硫酸濃度が十分に高い過硫酸溶液が再生される。過硫酸濃度を高めた溶液は、循環ラインを通して洗浄装置に送液される。そして溶液を洗浄装置と電解反応装置との間で循環させて上記動作を繰り返すことで、溶液の過硫酸濃度をさらに高めていくことができる。上記電解反応では、過硫酸濃度の目標値を予め定めておき、目標値に達したことで再生終了とすることができる。過硫酸濃度は、濃度自体を測定することによって知ることができる。また、この他に、洗浄終了時点での過硫酸濃度と、電解反応装置における電解条件(電解電流、電解時間)と過硫酸イオンの生成量との関係とを予めデータとして取得しておき、実際の処理におけるこれら情報から上記データを参照して過硫酸濃度を推定し上記電解処理の停止判断を行ってもよい。
【0017】
また電解反応において目標とする過硫酸濃度は、洗浄装置によって洗浄する被洗浄材の汚染物量を考慮して定めることができる。この汚染物量としては、洗浄装置において洗浄の結果生成される全有機性炭素濃度(TOC)を用いることができる。そして目標とする過硫酸濃度は、上記TOC濃度を示す汚染物を酸化分解するために、過硫酸濃度〔g/l〕/TOC濃度〔g/l〕=10〜1000の条件を満たすものとするのが望ましい。なお、同様の理由で下限を20、上限を500とするのが望ましい。したがって、過硫酸の必要量とTOC濃度との割合が上記条件を満たすように過硫酸含有溶液を製造するのが望ましい。上記TOC濃度は、被洗浄材におけるTOC濃度の情報を予め得ておき、同種の被洗浄材において該情報を用いて上記過硫酸濃度目標を定めることができる。
【0018】
また、本発明は、一つの電解反応装置に対し、複数の洗浄装置を循環ラインで接続してシステムを構築したり、複数の電解反応装置に対し、それ以上の数の複数の洗浄装置を循環ラインで接続してシステムを構築することができる。
電解反応装置の数(一つの場合も含む)以上に洗浄装置を接続するものでは、被洗浄材の洗浄を行っている洗浄装置では、電解反応装置との間で溶液の循環を行わず、被洗浄材の洗浄を行っていない少なくとも一つの洗浄装置と電解反応装置との間で溶液の循環を行いつつ前記電解反応装置で電解を行って過硫酸溶液の再生を行い、過硫酸濃度を高める。
この酸化処理を行っている間に、電解反応装置を別の洗浄槽につないで、溶液を循環させて過硫酸含有溶液を製造するものである。
過硫酸濃度が所定濃度にまで高められた洗浄装置では、該過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材の洗浄に供することができる。過硫酸イオンの酸化力は強いので、溶液を洗浄槽内でのみ滞留させるだけで汚染物の酸化分解処理が行える。一方、洗浄処理を終えた洗浄装置では、電解反応装置との間で溶液を循環させるとともに電解反応装置で電解を行って上記と同様に過硫酸溶液の再生を行う。上記動作を繰り返すことで、1台の電解反応装置に対して複数の洗浄装置をメリーゴーランド式に一定の時間間隔でつないでウエハ洗浄することができる。なお、2台以上の電解反応装置に対してそれ以上の台数の洗浄装置を備えるものでも良い。
【0019】
本発明では、電解反応装置での電解処理や洗浄装置での洗浄処理を長い時間に亘って中断する必要がなく、また、電解処理と洗浄処理に要する時間のバランスによっては連続処理が可能になり、処理効率が大幅に向上する。
なお、電解反応装置と接続する循環ラインと洗浄装置の選択は、適宜の選択切替手段を用いて行うことができる。選択切替手段としては、切替弁や開閉弁などの弁装置などを用いることができる。
【0020】
なお、過硫酸は、温度が高い程、自己分解速度が速くなり高い剥離洗浄作用が得られる。130℃といった高温では半減期が5分程度と自己分解速度が非常に速くなる。一方、電解反応装置では、溶液温度が低いほど過硫酸の生成効率が良く、また電極の損耗も小さくなる。本発明では、洗浄装置と電解反応装置とを分離することから、電解反応装置で電解される溶液の温度を、洗浄液の温度よりも低く保持することが可能になり、洗浄装置および電解反応装置での効率を上げることができる。
【0021】
洗浄液は、適宜の加熱手段により加熱して適温にすることができる。加熱手段としてはヒータや熱水、蒸気などとの熱交換を利用した加熱器などが例示されるが本発明としては特定のものに限定されない。洗浄液の適温としては、例えば100℃〜150℃を示すことができる。該温度範囲を下回ると、過硫酸による剥離洗浄効果が低下する。一方、160℃を超えると、過硫酸の自己分解速度が極めて大きくなり、レジストなどを十分に酸化できないので、洗浄液の適温を上記範囲に定めた。
【0022】
また、電解反応装置で電解される溶液は、適宜の冷却手段で冷却して適温にすることができる。冷却手段としては空冷、水冷などの冷却器を例示することができる。電解される溶液としての適温は、10〜90℃の範囲を示すことができる。上記温度範囲を超えると、電解効率が低下し、電極の損耗も大きくなる。一方、上記温度範囲を下回ると、洗浄装置内温度を130℃まで加熱するための熱エネルギーが莫大になるとともに、熱交換のための配管経路が大幅に長くなり実用的でない。なお、同様の理由により、下限を40℃、上限を80℃とするのが一層望ましい。
上記した加熱手段や冷却手段は、洗浄装置や電解反応装置に付設してもよく、また、循環ラインに設けても良い。さらに洗浄装置や電解反応装置に別ラインを設けて溶液の加熱や冷却を行うようにしてもよい。
【0023】
また、電解される溶液の温度調整は、溶液を循環ラインで洗浄装置と電解反応装置との間で送液する際に互いに熱交換することにより行うことができる。すなわち、相対的に温度が高くされ、洗浄装置から電解反応装置に送液する過硫酸溶液(戻り液)と、相対的に温度が低くされ、電解反応装置から洗浄装置に送液する過硫酸溶液(送り液)とを互いに熱交換すると、温度の高い戻り液は、熱交換によって熱が奪われることで温度が低下し、電解反応装置の電解用の溶液として望ましい温度調整がなされる。熱交換は、熱交換器等の適宜の熱交換手段により行うことができる。熱交換器の流路を含めて循環ラインにおける流路材料には、過硫酸による損傷を受けにくい石英やテトラフルオロエチレンが望ましい。なお、上記熱交換に加えて電解される溶液を冷却する手段を付設することも可能である。
【0024】
上記システムでは、電解反応装置で電解される溶液は、硫酸イオンを含むものであり、電解反応装置における過硫酸イオンの生成効率は、硫酸濃度に大きく影響される。具体的には硫酸濃度が低いほど過硫酸発生効率は大きくなる。一方で、硫酸濃度を低くすると、レジスト等の有機化合物の溶解度が低くなり、被洗浄材から剥離しにくくなる。これらの観点から、システムに用いられる溶液の硫酸濃度は、例えば8M〜18Mの範囲が望ましい。同様の理由で、下限は12M、上限は17Mであるのが一層望ましい。
【0025】
電解反応装置では、陽極と陰極とを対にして電解がなされる。これら電極の材質は、本発明としては特定のものに限定はしない。しかし、電極として一般に広く利用されている白金を本発明の電解反応装置の陽極として使用した場合、過硫酸イオンを効率的に製造することができず、白金が溶出するという問題がある。これに対し、ダイヤモンド電極は、過硫酸イオンの生成を効率よく行えるとともに、電極の損耗が小さい。したがって、電解反応装置の電極のうち、少なくとも、硫酸イオンの生成がなされる陽極をダイヤモンド電極で構成するのが望ましく、陽極、陰極ともにダイヤモンド電極で構成するのが一層望ましい。
【0026】
導電性ダイヤモンド電極は、シリコンウエハ等の半導体材料を基盤とし、このウエハ表面に導電性ダイヤモンド薄膜を合成させた後に、ウエハを溶解させたものや、基盤を用いない条件で板状に析出合成したセルフスタンド型導電性多結晶ダイヤモンドを挙げることができる。また、Nb,W,Tiなどの金属基板上に積層したものも利用できるが、電流密度を大きくした場合には、ダイヤモンド膜が基板から剥離するという問題が生じやすい。
【0027】
導電性ダイヤモンド電極によって、硫酸イオンから過硫酸イオンを製造することは、電流密度を0.2A/cm程度にした場合については報告されている(Ch.Comninellis et al.,Electrochemical and Solid−State Letters,Vol.3(2)77−79(2000),特表2003−511555号)。しかし、金属基板にダイヤモンド薄膜を担持した電極ではダイヤモンド膜の剥離が生じて、作用効果が短期間で消失するという問題がある。よって、基板上に析出させた後に基板を取り去った自立型導電性ダイヤモンド電極が望ましい。
【0028】
なお、導電性ダイヤモンド薄膜は、ダイヤモンド薄膜の合成の際にボロンまたは窒素の所定量をドープして導電性を付与したものであり、通常はボロンドープしたものが一般的である。これらのドープ量は、少なすぎると技術的意義が発生せず、多すぎてもドープ効果が飽和するため、ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、50〜20,000ppmの範囲のものが適している。
本発明において、導電性ダイヤモンド電極は、通常は板状のものを使用するが、網目構造物を板状にしたものも使用できる。すなわち、本発明としては、電極の形状や数は特に限定されるものではない。
【0029】
この導電性ダイヤモンド電極を用いて行う電解処理は、導電性ダイヤモンド電極表面の電流密度を10〜100,000A/mとし、硫酸イオンを含む溶液をダイヤモンド電極面と平行方向に、通液線速度を1〜10,000m/hで接触処理させることが望ましい。
【0030】
なお、本発明の洗浄システムでは、種々の被洗浄材を対象にして洗浄処理を行うことができるが、シリコンウエハ、液晶用ガラス基板、フォトマスク基板などの電子材料基板を対象にして洗浄処理をする用途に好適である。さらに具体的には、半導体基板上に付着したレジスト残渣などの有機化合物の剥離プロセスに利用することができる。また、半導体基板上に付着した微粒子、金属などの異物除去プロセスに利用することができる。
なお、従来、半導体基板の処理プロセスなどでは、洗浄処理に先立って、通常、前処理工程としてドライエッチングやアッシングプロセスを利用して有機物であるレジストを予め酸化して灰化する工程が組み込まれている。この工程は、装置コストや処理コストを高価にするという問題を有している。ところで、本発明のシステムでは、優れた洗浄効果が得られることから、上記したドライエッチングやアッシングプロセスなどの前処理工程を組み込むことなく洗浄処理を行った場合にも、十分にレジストなどの除去効果が得られる。すなわち、本発明は、これらの前処理工程を省略したプロセスを確立することも可能にする。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明の硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法によれば、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する洗浄装置と、前記電解反応装置と前記洗浄装置との間で、前記過硫酸溶液を循環させる循環ラインとを備える硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法であって、前記洗浄装置で被洗浄材を洗浄する際に、前記循環ラインにおける過硫酸溶液の循環を停止しておき、前記洗浄装置で被洗浄材の洗浄を行っていないときに、前記電解反応装置で電解反応により過硫酸溶液の前記再生を行うとともに循環ラインによって電解反応装置と洗浄装置との間で過硫酸溶液の循環を行うので、洗浄液に移行した汚染物によって電解反応装置の電極が消耗するのを回避することができる。これにより電極の交換が不要になったり、交換時期を遅らせることができる。
【0032】
さらに、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する複数の洗浄装置と、前記電解反応装置と前記複数の洗浄装置とを個々に接続して前記過硫酸溶液をそれぞれ循環可能とする複数の循環ラインとを備える硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法であって、被洗浄材の洗浄を行っている洗浄装置では、前記電解反応装置との間で過硫酸溶液の循環を停止しておき、前記被洗浄材の洗浄を行っていない洗浄装置の少なくとも一つで、電解反応により過硫酸溶液の再生を行っている前記電解反応装置との間で循環ラインによって過硫酸溶液の循環を行うものとすれば、洗浄装置で被洗浄材の洗浄を行っている際に、他の洗浄装置と電解反応装置との間で溶液を循環させて電解を行うことで過硫酸溶液の再生を行うことができ、前記効果に加えて処理効率を向上させる効果がある。
【0033】
また、本発明の硫酸リサイクル型洗浄システムによれば、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する複数の洗浄装置と、前記電解反応装置と前記複数の洗浄装置とを個々に接続して前記過硫酸溶液をそれぞれ循環可能とする複数の循環ラインと、前記電解反応装置と接続する循環ラインおよび洗浄装置を選択切替する選択切替手段とを備えるので、上記運転方法を確実かつ容易に実行して上記効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(実施形態1)
以下に、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。
本発明の洗浄装置に相当する洗浄槽1には、電解反応装置10を構成する電解反応槽10a、10bが戻り管4と送り管5とによって接続されている。戻り管4および送り管5は、それぞれ少なくとも内面がテトラフルオロエチレンで構成されており、戻り管4には過硫酸溶液を送液するための送液ポンプ6が介設されている。また、戻り管4、送り管5にはそれぞれ開閉弁40、50が設けられており、これら開閉弁40、50は連動して開または閉動作をする。上記戻り管4、送り管5、送液ポンプ6によって、本願発明の循環ラインが構成されている。また、戻り管4と送り管5との間には、本発明の熱交換手段に相当する熱交換器7が介設されており、該熱交換器7によって戻り管4を流れる溶液と送り管5を流れる溶液とが互いに熱交換可能になっている。なお、熱交換器7内の流路(図示しない)も少なくとも内面がテトラフルオロエチレンで構成されている。上記のように戻り管4、送り管5、熱交換器7の流路を過硫酸に対し耐性のあるテトラフルオロエチレンなどで構成することで、過硫酸による損耗を回避することができる。
【0035】
上記電解反応槽10a、10bは、直列に接続されており、電解反応槽10aに前記戻り管4が接続され、電解反応槽10bに前記送り管5が接続されている。電解反応槽10aと電解反応槽10bとの間には、連結管15が連結されている。すなわち、戻り管4、電解反応槽10a、連結管15、電解反応槽10b、送り管5の順に通液する。
電解反応槽10aには、陽極11a、陰極12a、電解反応槽10bには陽極11b、陰極12bとが配置され、さらに陽極11aと陰極12aとの間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極13a…13aが配置され、陽極11bと陰極12bとの間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極13b…13bが配置されている。なお、本発明としては電解槽は、バイポーラ式ではなく、陽極と陰極のみを電極として備えるものであってもよい。この実施形態では、これら電極11a、11b、12a、12b、13a、13bは、直径15cmのダイヤモンド電極によって構成され、各電解反応槽において10枚で一組となっている。該ダイヤモンド電極は、基板状にダイヤモンド薄膜を形成するとともに、該ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、好適には50〜20,000ppmの範囲でボロンをドープすることにより製造したものである。また、薄膜形成後に基板を取り去って自立型としたものであってもよい。上記陽極11aと陰極12aおよび陽極11bと陰極12bは、直流電源14に並列状態で接続されており、これにより電解反応槽10a、10bでの直流電解が可能になっている。ここで、陽極11aと陰極12aおよび陽極11bと陰極12bは直流電源14と直列状態で接続しても良い。
また上記洗浄槽1は、収容された過硫酸溶液2を加熱するヒータ21を備えており、さらに、過硫酸溶液2に超純水を補給する超純水補給ライン25を備えている。
【0036】
次に、上記構成よりなる硫酸リサイクル型洗浄システムの作用について説明する。
上記洗浄槽1内に、98%濃硫酸40l、超純水10lの割合で調整した高濃度硫酸溶液を収容し、ヒータ21によって加熱し、130℃に保持する。
電解反応槽10a、10bでは、陽極11a、11bおよび陰極12a、12bに直流電源14によって通電すると、バイポーラ電極13a…13a、13b…13bが分極し、所定の間隔で陽極、陰極が出現する。電解反応槽10a、10bに送液される溶液は、これら電極間に通水される。この際に通液線速度が1〜10,000m/hとなるように送液ポンプ6の出力を設定するのが望ましい。なお、上記通電では、ダイヤモンド電極表面での電流密度が10〜100,000A/mとなるように通電制御するのが望ましい。
【0037】
電解反応槽10a、10bで溶液に対し通電されると、溶液中の硫酸イオンが酸化反応して過硫酸イオンが生成される。この過硫酸溶液2は、送り管5から洗浄槽1へと送液され、洗浄槽1内において高濃度の過硫酸溶液2が得られる。洗浄槽1では、電解反応槽10a、10bとの間で溶液が循環し、電解反応槽10a、10bにおいて電解されて過硫酸イオンが生成されることから、高い過硫酸イオン濃度が得られる。なお、この実施形態では、立ち上げ時に硫酸から過硫酸を製造する過程について説明したが、本発明としては、当初から過硫酸が用意されているものであってもよい。ただし、オンサイトで過硫酸を製造するという点では、電解反応装置を用いて過硫酸を製造することが有利である。
【0038】
洗浄槽1における洗浄液が洗浄に供するものとして過硫酸濃度が十分に高くなった後、送液ポンプ6の停止、開閉弁40、50の閉動作を行い、洗浄液となる過硫酸溶液2の温度が、洗浄槽1内において130℃程度になった状態で、被洗浄材である半導体ウエハ30を洗浄槽1内に浸漬して洗浄を開始する。すると、洗浄槽1内では、過硫酸イオンの自己分解によって高い酸化作用が得られ、半導体ウエハ30上の汚染物などが効果的に剥離除去され、過硫酸溶液2中に移行する。また、過硫酸溶液2に移行した汚染物は、さらに過硫酸の酸化作用によって分解される。洗浄を継続すると、半導体ウエハ30の汚染物は次第に除去され、さらに過硫酸中の汚染物も次第に分解される。これらの除去および分解が十分になされた段階で洗浄槽1における洗浄処理を停止する。
【0039】
上記洗浄によって洗浄槽1内の過硫酸は、自己分解によって過硫酸濃度が低下しており、上記洗浄処理後、開閉弁40、50を開き、送液ポンプ6によって電解反応槽10a、10bに送液して電解反応に供する。なお、洗浄処理の終了は、実質的に終了していると見なせる状態であればよく、洗浄槽1から被洗浄材を取り除く前に上記処理を開始しても良い。電解反応槽10a、10bでは、電解反応によって硫酸イオンから過硫酸イオンが生成されて、自己分解によって低下した過硫酸濃度を高めて過硫酸溶液を再生する。再生された過硫酸溶液2は、送り管5によって洗浄槽1に送液して、洗浄槽1と電解反応槽10a、10bとの間で過硫酸溶液2を循環させつつ電解を行うことで、過硫酸溶液2の過硫酸濃度を次第に高くすることができる。
【0040】
また、過硫酸溶液2が洗浄槽1から電解反応槽10aに向けて上記戻り管4を移動する際に、電解反応槽10bにおいて電解処理がなされて送り管5を移動する過硫酸溶液2との間で、熱交換器7において熱交換がなされる。洗浄槽1から送液される過硫酸溶液2は、洗浄に好適なように130℃程度に加熱されている。一方、電解反応槽10bから洗浄槽1に送液される過硫酸溶液2は、40℃程度の温度を有している。これら過硫酸溶液2が熱交換されることによって戻り管4を移動する過硫酸溶液2は40℃に近い温度に低下し、一方、送り管5を移動する過硫酸溶液2は、130℃に近い温度にまで加熱される。熱交換器7で熱交換され、戻り管4を移動する過硫酸溶液2は、その後、自然冷却によって次第に降温し、電解反応に好適な40℃程度の温度となる。なお、確実に温度を低下させたい場合には、電解槽を水冷、空冷するなどして強制的に冷却する冷却手段を付設することもできる。熱交換器7で熱交換され、送り管5を移動する過硫酸溶液2は、洗浄槽1に送られ、洗浄槽1内に残存する過硫酸溶液2に混合される。洗浄槽1内の過硫酸溶液2の温度が低下してしまった場合には、前記ヒータ21での加熱によって洗浄に最適な温度に昇温させることができる。上記のように、高濃度硫酸溶液は洗浄槽1から電解反応槽10aへ送られる際に冷却され、電解された後、電解反応槽10bから洗浄槽1へ戻される際に加温される。この1サイクルの中で冷却される熱量と加温される熱量はほぼ等しいため、高効率の熱交換器7を組み込み、放熱分程度について外部から熱エネルギーを加えることで、効率的に過硫酸溶液の温度調整を行うことができる。なお、上記のように、電解時に洗浄装置1内の溶液温度を高く維持しておくことで、過硫酸溶液2の再生を終えた後に、速やかに洗浄に供することができる。
上記硫酸リサイクル型洗浄システムによって半導体ウエハ30の洗浄を行うことで、過酸化水素水やオゾンの添加を必要とすることなく、硫酸溶液を繰り返し使用して過硫酸溶液2を再生しつつ効果的な洗浄を継続することができる。また、電解反応装置における電極の消耗も小さなものにすることができる。
【0041】
(実施形態2)
次に、本発明の第2の実施形態について図2に基づいて説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
この実施形態では、洗浄装置としての洗浄槽1a、1bと、電解反応装置10とを有しており、電解反応装置10と洗浄槽1aとは、戻り管4aと送り管5aとによって連結され、電解反応装置10と洗浄槽1bとは、戻り管4bと送り管5bとによって連結されている。洗浄槽1a、1bは、前記実施形態1の洗浄槽1と同様の構成を有しており、それぞれ過硫酸溶液を加熱するヒータ(図示しない)、過硫酸溶液に超純水を補給する超純水補給ライン(図示しない)を備えている。
【0042】
電解反応装置10は、実施形態1で示したものと同様に2槽の電解反応槽を直列に接続して構成されており、該2槽の電解反応槽には図示しない直流電源が接続されて直流電解可能になっている。
【0043】
戻り管4a、4bには、過硫酸溶液2を送液するための送液ポンプ6a、6bが介設されている。また、戻り管4a、送り管5aにはそれぞれ開閉弁40a、50aが設けられ、戻り管4b、送り管5bには開閉弁40b、50bが設けられており、これら開閉弁40aと開閉弁50aおよび開閉弁40bと開閉弁50bとはそれぞれ連動して開または閉動作をする。上記戻り管4a、送り管5a、送液ポンプ6aによって、一つの循環ラインが構成され、戻り管4b、送り管5b、送液ポンプ6bによって、他の循環ラインが構成されている。なお、上記開閉弁40a、40b、50a、50bは、電解反応装置と循環ラインおよび洗浄槽とを選択して接続可能にする選択切替手段を構成している。
また、戻り管4aと送り管5aとの間、戻り管4bと送り管5bとの間には、それぞれ本発明の熱交換手段に相当する熱交換器7a、7bが介設されている。該熱交換器7aによって戻り管4aを流れる溶液と送り管5aを流れる溶液とが互いに熱交換可能になっており、該熱交換器7bによって戻り管4bを流れる溶液と送り管5bを流れる溶液とが互いに熱交換可能になっておりいる。
【0044】
次に、上記洗浄システムの動作について説明する。
立ち上げ時に、洗浄槽1a、1b内に、98%濃硫酸40l、超純水10lの割合で調整した高濃度硫酸溶液を収容し、ヒータによって加熱し、130℃に保持する。そして、開閉弁40a、50aを開き、送液ポンプ6aを動作させて電解反応装置10との間で溶液の循環を行う。一方、洗浄槽1b側では開閉弁40b、50bを閉じ、送液ポンプ6bを停止させて溶液の循環を停止しておく。
電解反応装置10では、溶液に対し通電されると、溶液中の硫酸イオンが酸化反応して過硫酸イオンが生成される。この過硫酸溶液2は、送り管5aから洗浄槽1aへと送液され、洗浄槽1a内において高濃度の過硫酸溶液2が得られる。洗浄槽1aでは、電解反応槽10a、10bとの間で溶液が循環し、電解反応装置10において電解されて過硫酸イオンが生成されることから、高い過硫酸イオン濃度が得られる(図2(a))。
この際には、過硫酸溶液2が洗浄槽1aから電解反応装置10に向けて上記戻り管4aを移動する際に、電解反応装置10において電解処理がなされて送り管5aを移動する過硫酸溶液2との間で、熱交換器7aにおいて前記実施形態1と同様に熱交換がなされる。
この実施形態においてもこの1サイクルの中で冷却される熱量と加温される熱量はほぼ等しいため、効率的に過硫酸溶液2の温度調整を行うことができる。
なお、上記のように、電解時に洗浄槽1内の温度を高く維持しておくことで、過硫酸溶液2の濃度を高めた後に、速やかに洗浄に供することができる。
【0045】
洗浄に適した濃度にまで高過硫酸化された洗浄槽1aでは、被洗浄材である半導体ウエハ30の洗浄を開始する。この際には、開閉弁40a、50aを閉じ、送液ポンプ6aを停止させておく。一方、洗浄槽1b側では開閉弁40b、50bを開き、送液ポンプ6bを動作させて溶液の循環を開始する。電解反応装置10では、上記と同様に溶液中の硫酸イオンが酸化反応して過硫酸イオンが生成される。この過硫酸溶液2は、送り管5bから洗浄槽1bへ送液され、洗浄槽1b内において高濃度の過硫酸溶液2が得られる。(図2(b))。したがって、洗浄槽1bにおいて、既に半導体ウエハ30の洗浄が行われていて過硫酸濃度が低下した溶液が収容されている場合にも、過硫酸溶液2として再生し、洗浄に適した過硫酸濃度にまで高めることができる。また、上記戻り管4bと送り管5bとの間においても上記と同様に熱交換器7bによって熱交換がされて過硫酸溶液2の適切な温度調整がなされている。
【0046】
次いで、洗浄槽1aにおける洗浄処理が終了すると、半導体ウエハ30を洗浄槽1aから取り出すとともに、開閉弁40b、50bを閉じて送液ポンプ6bを停止し、その一方で開閉弁40a、50aを開いて送液ポンプ6aを動作させて洗浄槽1aと電解反応装置10との間で溶液を循環させる。洗浄槽1bでは、溶液の循環が停止されており、新たな半導体ウエハ30を浸漬して洗浄を開始する。洗浄槽1aでは、電解反応装置10による電解反応によって洗浄に適した過硫酸濃度に至るまで再生処理が行われる(図2(c))。図2(b)に示す処理ステップと、図2(c)に示す処理ステップとは、交互に繰り返すことで被洗浄材の洗浄と過硫酸溶液の再生とが効率的に行われる。
【実施例1】
【0047】
図2に示すシステムを用いて、2槽の洗浄槽1a、1bに、98%濃硫酸40l、超純水10lの割合で調整した高濃度硫酸溶液を130℃に加熱保持した。電解反応装置10内には、直径15cm、厚さ1mmのSi基板上にボロンドープ(5,000ppm)した導電性ダイヤモンド電極を10枚組み込んだ槽を2槽直列に配列させた。2つの洗浄槽と電解反応装置とは溶液を循環させたり止めたりすることができるように設置している。電解のための有効陽極面積は30(dm)であり、電流密度を30A/(dm)に設定して、40℃で電解し、洗浄槽1aと電解反応装置との間で溶液循環を2l/min(通液線速度160m/h)の流量で実施した。10分間電解を実施した後に、洗浄槽1a内の過硫酸濃度が1.5g/lに達したことを確認したので、溶液循環を止めて、洗浄槽1bと電解反応装置10との間で溶液循環を行い、洗浄槽1aでは、レジスト付きの5インチウエハ50枚(TOC濃度:10〔mg/枚〕×50〔枚〕/50〔l〕=10〔mg/l〕)を浸漬させた。ウエハ浸漬直後のみ薄い茶色に溶液が着色したが、すぐに透明になり、TOC濃度も検出限界以下となった。洗浄槽1bについても10分間電解を実施した後に洗浄槽内の過硫酸濃度が1.5g/lに達したので、溶液循環を止めて、洗浄槽1aと電解反応装置10との間で溶液循環を再度開始した。洗浄槽1bでは、レジスト付きの5インチウエハ50枚を浸漬させた。ウエハ浸漬直後のみ薄い茶色に溶液が着色したが、すぐに透明になり、TOC濃度も検出限界以下となった。上記の手順で、洗浄槽1aと洗浄槽1bとを交互に電解反応装置10と接続して溶液循環を行い、10分を1サイクルとして、洗浄槽を切り替えながらレジスト付きウエハ50枚/サイクルの洗浄を繰り返した。32時間(洗浄ウエハ枚数は9,600枚)継続したが、高濃度硫酸溶液のレジスト剥離溶解効果は良好であり、TOC濃度についても検出限界以下を維持した。
【0048】
(比較例1)
単独の洗浄槽に、98%濃硫酸40lを入れて、35%過酸化水素水10lを添加した溶液を130℃に加熱保持した。この溶液に実施例1と同様の浸漬サイクルでレジスト付きウエハを浸漬させて、レジスト溶解を行った。最初の6サイクル(洗浄ウエハ枚数は300枚)までは、ウエハ浸漬直後に溶液が茶褐色に着色するが、10分弱で無色透明となり、TOC濃度についても検出限界となった。しかし、次の50枚については、浸漬直後から10分経過しても溶液は茶褐色を呈したままで、TOC濃度として10mg/lの残存が認められた。そこで、洗浄槽内の溶液10lを引き抜き、過酸化水素水10lを追加添加し、溶液を130℃に加熱保持した。再びウエハ浸漬を継続した。最初の2サイクル(洗浄ウエハ枚数は100枚)までは、ウエハ浸漬直後に溶液が茶褐色に着色するが、10分弱で無色透明となり、TOC濃度についても検出限界となった。しかし、次の50故については、浸漬直後から10分経過しても溶液は茶褐色を呈したままで、TOC濃度として10mg/lの残存が認められた。再度、洗浄槽内の溶液10lを引き抜いて、過酸化水素水10lを追加添加した。ウエハ浸漬を継続したが、50枚のウエハを浸漬したところで、レジスト剥離溶解効果が悪く10分経過してもレジストがウエハに残存した。ウエハの総処理枚数は、400枚のところで、全体の溶液の交換が必要となった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態における洗浄システムを示す図である。
【図2】同じく、他の実施形態における洗浄システムにおける動作状態を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1、1a、1b 洗浄槽
2 過硫酸溶液
4、4a、4b 戻り管
5、5a、5b 送り管
6、6a、6b 送液ポンプ
7、7a、7b 熱交換器
10 電解反応装置
10a、10b 電解反応槽
11、11a、11b 陽極
12、12a、12b 陰極
13 バイポーラ電極
14 直流電源
21 ヒータ
25 超純水補給ライン
30 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する洗浄装置と、前記電解反応装置と前記洗浄装置との間で、前記過硫酸溶液を循環させる循環ラインとを備える硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法であって、前記洗浄装置で被洗浄材を洗浄する際に、前記循環ラインにおける過硫酸溶液の循環を停止しておき、前記洗浄装置で被洗浄材の洗浄を行っていないときに、前記電解反応装置で電解反応により過硫酸溶液の前記再生を行うとともに循環ラインによって電解反応装置と洗浄装置との間で過硫酸溶液の循環を行うことを特徴とする硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法。
【請求項2】
電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する複数の洗浄装置と、前記電解反応装置と前記複数の洗浄装置とを個々に接続して前記過硫酸溶液をそれぞれ循環可能とする複数の循環ラインとを備える硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法であって、被洗浄材の洗浄を行っている洗浄装置では、前記電解反応装置との間で過硫酸溶液の循環を停止しておき、前記被洗浄材の洗浄を行っていない洗浄装置の少なくとも一つで、電解反応により過硫酸溶液の再生を行っている前記電解反応装置との間で循環ラインによって過硫酸溶液の循環を行うことを特徴とする硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法。
【請求項3】
前記循環ラインにおいて、前記電解反応装置からの相対的に低温な過硫酸溶液の送り液と、前記洗浄装置からの相対的に高温な過硫酸溶液の戻り液との間で熱交換を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法。
【請求項4】
被洗浄材の洗浄を終えた前記洗浄装置と前記電解反応装置との間で過硫酸用溶液を循環させつつ過硫酸濃度が所定濃度に達するまで前記過硫酸溶液の再生を行うステップと、その後、電解反応装置との間で過硫酸溶液の循環を行うことなく、該洗浄装置において被洗浄材の洗浄を行うステップとを繰り返し行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法。
【請求項5】
電解反応装置に備える電極のうち、少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法。
【請求項6】
電解反応装置に備える導電性ダイヤモンド電極が、基板上に積層させた後に基板を取り去った自立型導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の洗浄システムの運転方法。
【請求項7】
前記再生は、前記電解装置における電解中の過硫酸濃度が、該電解反応装置と循環接続される洗浄装置において洗浄により生成される有機性炭素濃度(TOC)に対し、過硫酸濃度〔g/l〕/TOC濃度〔g/l〕=10〜1000の条件を満たすに至るまで行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの運転方法。
【請求項8】
電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する複数の洗浄装置と、前記電解反応装置と前記複数の洗浄装置とを個々に接続して前記過硫酸溶液をそれぞれ循環可能とする複数の循環ラインと、前記電解反応装置と接続する循環ラインおよび洗浄装置を選択切替する選択切替手段とを備えることを特徴とする硫酸リサイクル型洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−111943(P2006−111943A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302401(P2004−302401)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】