説明

硫酸抱合体を選択的に輸送するトランスポーター及びその遺伝子

【課題】硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーター及びその遺伝子を提供する。
【解決手段】硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を有する有機アニオントランスポータータンパク質、それをコードする遺伝子、および肝臓の硫酸抱合体の輸送に関与するタンパク質、その特異抗体、機能促進物質若しくは機能抑制物質を用いて、該タンパク質の有する硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を変調させることにより、薬物動態を改変する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肝臓の硫酸抱合体の輸送に関与するタンパク質、及びそのタンパク質をコードする遺伝子に関する。また本発明は、肝臓の硫酸抱合体の輸送に関与するタンパク質、その特異抗体、機能促進物質若しくは機能抑制物質を用いて、該タンパク質の有する硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を変調させることにより、薬物動態を改変する方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
肝臓は、生体異物や薬物の代謝および体外排出に関して重要な役割を果たしている。肝細胞は極性を有する上皮細胞であり、側底膜(類同側膜)を介して血液と接し、種々の物質の受け渡しを行っている。門脈血中の薬物は、輸送担体(トランスポーター)を介して、あるいは細胞膜脂質二重層を介した受動拡散により側底膜を介して肝臓細胞中に取り込まれ、細胞内で代謝により抱合反応を受け、抱合体となる。
【0003】
抱合反応には、グルタチオン抱合、グルクロン酸抱合、硫酸抱合等があり、生成した抱合体は、アニオン(陰イオン)の形となり、肝細胞膜に存在する有機アニオントランスポーターに認識されて、肝細胞から排出される。グルタチオン抱合体及びグルクロン酸抱合体は、主に肝細胞の管腔側(細胆管側)膜から、細胆管内へ排出される。硫酸抱合体は、主に肝細胞の側底膜から、血液中へ排出される。
薬物以外の外来性異物や、ステロイドホルモンも薬物と同様な機序で肝細胞内で代謝され、抱合体として排出される。
【0004】
血液中へ排出された薬物、外来性異物、ステロイドホルモン等の硫酸抱合体は、腎臓の近位尿細管上皮細胞の側底膜に存在する有機アニオントランスポーターにより取り込まれ、尿細管上皮細胞の管腔側膜の有機アニオントランスポーターを介して、尿中へ排泄される。
【0005】
肝細胞の管腔側の、有機アニオントランスポーターとしては、すでに細胆管側多選択性有機アニオントランスポーター(cMOAT)が、クローニングされている。
【0006】
肝細胞の側底膜を介した有機アニオンの取り込みについては、これまで摘出臓器灌流法や単離細胞膜小胞系などを用いた実験系により研究されてきた。
しかし従来の手法では、細胞膜を介した有機アニオン輸送、特に細胞内で代謝により産生された有機アニオンの排出を担当する輸送機構を詳細に解析することは困難であり、トランスポーターそのものを単離して詳細に解析することが望まれてきた。
【0007】
これらの背景をふまえ、肝臓の側底膜の有機アニオントランスポーターの分子実体の探索が1990年代に入り積極的に行われた。この結果、肝臓の側底膜の有機アニオントランスポーターoatpが単離された。(Hagenbuch, B.らProc Natl Acad Sci USA 88巻、 10629-33頁、1991年、Jacquemin, E.ら、 Proc Natl Acad Sci USA、91巻、 133-7頁、1994年)。しかしこれは、胆汁酸等の輸送を担当するものであり、薬物抱合体を輸送するものとは異なっていた。
さらに、1997年に、腎臓での有機アニオン輸送を担当する有機アニオントランスポーターOAT1が単離された(Sekine,T.ら、J Biol Chem 272巻, 18526-9頁、1997)。OAT1は、一部の抱合体薬物を輸送するが、肝臓における発現は見られない。
OAT1に続き、OAT1と類似の構造を持ち、肝臓に発現する有機アニオントランスポーターOAT2が単離された(Sekine,T.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun. 251:586-591、1998)。しかし、OAT2は、抱合体薬物に対する輸送活性は低いものであった。
【0008】
さらに、OAT1と類似の構造を持ち、腎臓、肝臓及び脳に発現する有機アニオントランスポーターOAT3が、想定された(Kusuhara,H.ら、J.Biol.Chem.、274: 13675-13680、1999)。OAT3は、薬物抱合体を含む、多岐に渡る有機アニオンを基質とする極めて広い基質選択性を示す多選択性トランスポーターであり、肝細胞の側底膜を介した効率に良い薬物抱合体の排出には、他の有機アニオンとの競合を避けるため、OAT3に加えて薬物抱合体専用の有機アニオントランスポーターが存在することが望ましい。
OAT3に続き、OAT1と類似の構造を持ち、腎臓及び胎盤に発現する有機アニオントランスポーターOAT4が単離された(Cha,S.H.ら、 J. Biol. Chem. 275: 4507-4512 (2000)。OAT4は、硫酸抱合体を中心として一部の有機アニオンを含む、比較的硫酸抱合体選択的な基質選択性を示すが、肝臓には発現しない。
【0009】
既に述べたように、肝臓の側底膜における有機アニオン輸送は複雑であり、特に肝細胞内で多量に産生される抱合体(その多くは有機アニオン)の血中への流出経路は未だ不明である。肝臓に発現する上記有機アニオトランスポーターのみでは説明しきれず、さらなる未知のトランスポーターの存在が予想される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、肝細胞側底膜の硫酸抱合体を選択的に輸送する新規な有機アニオンントランスポーター遺伝子およびその遺伝子がコードするポリペプチドである有機アニオントランスポーターを同定し、提供することにある。その他の目的については以下の記載より明白である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、OAT1のcDNAの翻訳領域の塩基配列を用いてEST (expressed
sequence tag) データベースを検索し、OAT1と類似の塩基配列を同定した。それに相当するプローブを作製してcDNAライブラリーをスクリーニングし、新規タンパク質をコードする遺伝子をクローニングした。さらに、この遺伝子の産物をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させて、この遺伝子の産物が硫酸抱合体を選択的に輸送する新規有機アニオンントランスポーターであることを明らかにした。さらに、この遺伝子の産物に対する特異抗体を作製し、この遺伝子の産物が肝細胞側底膜に存在することを明らかにし、本発明を完成するにいたった。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の(A)及び(B)から選択されるタンパク質であって、硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を有するタンパク質である。
(A)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質
【0013】
また、本発明は、以下の(a)及び(b)から選択されるDNAであって、硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子である。
(a)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
【0014】
本発明の、硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を有する新規タンパク質[以下有機アニオントランスポーターOAT7(organic anion transporter 7)と称す。]は、硫酸抱合体を選択的に輸送する(取り込む)能力を有する。
硫酸抱合体を選択的に輸送する該肝特異有機アニオントランスポーターOAT7は、生体内においては肝臓のみに発現し、肝細胞の側底膜に存在する。OAT7は、肝細胞内で細胞内代謝により生成した、薬物、外来性異物、ステロイドホルモン等の硫酸抱合体を、血液中に排出するトランスポーターであると考えられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーター及びその遺伝子は、当該トランスポーターの肝での薬物及び外来性異物やステロイドホルモン及びその類似化合物の硫酸抱合体の輸送のインビトロでの検討や、それを基にした薬物及び外来性異物やステロイドホルモン及びその類似化合物の体内動態のインビトロでの予測を可能とする。さらに、当該トランスポーターを効率良く透過する薬物の開発に有用と考えられる。また、当該トランスポーターの関わる薬物間相互作用のインビトロでの予測を可能とする。さらに、当該トランスポーターの有する硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を変調させることにより、薬物、毒物あるいは外来性異物、及びステロイドホルモン等の体内動態を改変する方法、薬物の副作用を及び外来性異物の毒性作用を軽減する方法、肝細胞を薬物及び外来性異物から保護する方法の開発に利用できる。
【発明を実施するための最良形態】
【0016】
後記配列表の配列番号2は、ヒト肝由来の硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーター(ヒトOAT7)の遺伝子の全長cDNA塩基配列(約2.3kbp)、及びその翻訳領域にコードされたタンパク質のアミノ酸配列(533アミノ酸)を表わす。
【0017】
本発明のタンパク質としては、配列番号1で示されたアミノ酸配列を有するもののほか、例えば配列番号1で示されたアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。アミノ酸の欠失、置換もしくは付加は、有機アニオン輸送活性が失われない程度であればよく、通常1〜約110個、好ましくは1〜約55個である。このようなタンパク質は、配列番号1で示されたアミノ酸配列と通常、1〜80%、好ましくは1〜90%のアミノ酸配列のホモロジーを有する。
【0018】
また、本発明の遺伝子としては、配列番号2で示された塩基配列を有するもののほか、配列番号2で示された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNAを含むものが挙げられる。このようにハイブリダイズし得るDNAは、そのDNAにコードされるタンパク質が有機アニオンを輸送する能力を有するものであればよい。このようなDNAは配列番号2で示された塩基配列と通常70%以上、好ましくは80%以上の塩基配列のホモロジーを有する。このようなDNAとしては、自然界で発見される変異型遺伝子、人為的に改変した変異型遺伝子、異種生物由来の相同遺伝子等が含まれる。
本発明において、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、通常、ハイブリダイゼーションを、5×SSC又はこれと同等の塩濃度のハイブリダイゼーション溶液中、37−42℃の温度条件下、約12時間行い、5×SSC又はこれと同等の塩濃度の溶液などで必要に応じて予備洗浄を行った後、1×SSC又はこれと同等の塩濃度の溶液中で洗浄を行うことにより実施できる。
【0019】
本発明の、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーター遺伝子は、適当な哺乳動物の臓器や組織もしくは培養細胞を遺伝子源として用いてスクリーニングを行うことにより単離取得できる。哺乳動物としては、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、サル、ブタ、ウサギ、ラット及びマウスなどの非ヒト動物のほか、ヒトが挙げられる。
遺伝子のスクリーニング及び単離は、ホモロジークローニング法などにより好適に実施できる。
【0020】
例えば、マウスあるいはヒト肝を遺伝子源として用い、これからmRNA(ポリ(A)+RNA)を調製する。これからcDNAライブラリーを構築し、EST(expressed
sequence tag) データベースの検索によって得られるOAT7類似配列(例えば、GenBankTM/EBI/DDBJ accession No. AA705512) に相当するプローブを用いてcDNAライブラリーをスクリーニングすることによってOAT7遺伝子のcDNAを含むクローンを得ることができる。
得られたcDNAについては、常法により塩基配列を決定し、翻訳領域を解析して、これにコードされるタンパク質、すなわち、OAT7のアミノ酸配列を決定することができる。
【0021】
得られたcDNAが、硫酸抱合体を選択的に輸送する有機アニオントランスポーター遺伝子のcDNAであること、すなわち、cDNAにコードされた遺伝子産物が硫酸抱合体を選択的に輸送するトランスポーターであることは、例えば次のようにして検証することができる。すなわち、得られたOAT7遺伝子のcDNAから調製した、これに相補的なRNA(cRNA)(キャプ化されたもの)を卵母細胞内に導入して発現させ、硫酸抱合体を細胞内へ輸送する(取り込む)能力を、適当な硫酸抱合体を基質とする通常の取り込み試験(Kanai and Hediger、Nature、第360巻、467-471項、1992年)により、細胞内への基質の取り込みを測定することにより確認できる。
【0022】
得られたOAT7遺伝子のcDNAから調製した、これに相補的なRNA(cRNA)を用いて、インビトロ翻訳法[Hedigerら、Biochim.Biophys.Acta、第1064巻、360項、1991年]により、OAT7タンパク質を合成し、電気泳動によりタンパク質のサイズ、糖付加の有無等を検討することができる。
【0023】
また、発現細胞について、同様の取り込み実験を応用して、OAT7の特性、例えば、OAT7の基質選択性、pH依存性などを調べることができる。
【0024】
得られたOAT7遺伝子のcDNAを用いて、異なる遺伝子源で作製された適当なcDNAライブラリー又はゲノミックDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、異なる組織、異なる生物由来の相同遺伝子や染色体遺伝子等を単離することができる。
また、開示された本発明の遺伝子の塩基配列あるいはその遺伝子産物のアミノ酸配列を用いて、各種遺伝子タンパク質データベースを検索することにより、異なる組織、異なる生物由来の相同遺伝子や染色体遺伝子等を同定することができる。
さらに、開示された本発明の遺伝子の塩基配列(配列番号2に示された塩基配列、もしくはその一部)の情報に基づいて設計された合成プライマーを用い、通常のPCR(Polymerase Chain Reaction)法によりcDNAライブラリー又はゲノミックDNAライブラリーから遺伝子を単離することができる。
cDNAライブラリー又はゲノミックDNAライブラリー等のDNAライブラリーは、例えば、「Molecular cloning」[Sambrook, J., Fritsh, E.F.及びManitis, T.著、Cold Spring Harbor Pressより1989に発刊] に記載の方法により調製することができる。あるいは、市販のライブラリーがある場合はこれを用いてもよい。
【0025】
本発明の、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーター(OAT7)は、例えば、それをコードするcDNAを用い、遺伝子組換え技術により生産することができる。例えば、OAT7をコードするDNA(cDNA等)を適当な発現ベクターに組み込み、得られた組換えDNAを適当な宿主細胞に導入することができる。ポリペプチド生産するための発現系(宿主-ベクター系)としては、例えば、細菌、酵母、昆虫細胞及び哺乳類細胞の発現系等が挙げられる。このうち、機能タンパクを得るためには、昆虫細胞及び哺乳類細胞を用いることが好ましい。
【0026】
例えば、ポリペプチドを哺乳類細胞で発現させる場合には、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーターOAT7をコードするDNAを、適当な発現ベクター(例えば、アデノウイルス系ベクター、レトロウイルス系ベクター、パピローマウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、SV40系ベクター等)中の適当なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルスプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、エロンゲーション1aプロモーター等)の下流に挿入して発現ベクターを構築する。次に、得られた発現ベクターで適当な動物細胞を形質転換し、形質転換体を適当な培地で培養することによって、目的とするポリペプチドが生産される。宿主とする哺乳動物細胞としては、マウスS2細胞、サルCOS−7細胞、チャイニーズハムスターCHO細胞、又はヒトHeLa細胞などの細胞株などが挙げられる。
【0027】
硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーターOAT7をコードするDNAとしては、例えば、配列番号2で示される塩基配列を有するcDNAを用いることができるほか、前記のcDNA配列に限定されることなく、アミノ酸配列に対応するDNAを設計し、ポリペプチドをコードするDNAとして用いることもできる。この場合、ひとつのアミノ酸をコードするコドンは各々1〜6種類知られており、用いるコドンの選択は任意で良いが、例えば発現に利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、より発現効率の高い配列を設計することができる。設計した塩基配列を持つDNAは、DNAの化学合成、前記cDNAの断片化と結合、塩基配列の一部改変等によって取得できる。人為的な塩基配列の一部改変、変異導入は、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用して部位特異的変異導入法(site specific mutagenesis)[Mark, D.F. et al.、Proceedings of National Academy of Sciences、第81巻、第5662項(1984年)]等によって実施できる。
【0028】
本発明はまた、配列番号2で示される塩基配列の中の連続する14塩基以上、好ましくは20塩基以上の部分配列もしくはその相補的な配列を含むヌクレオチドを提供するものである。
本発明のヌクレオチドは、硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を有するタンパク質をコードする遺伝子を検出するためのプローブとして使用することができ、また、当該タンパク質をコードする遺伝子やそれと相同性の高いタンパク質をコードする遺伝子などを入手する際のプライマーとして使用することができ、さらに、そのアンチセンス鎖などにより硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を有するタンパク質をコードする遺伝子の発現を変調させるために使用することができる。
【0029】
本発明の、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーター又はこれと免疫学的同等性を有するポリペプチドを用いて、その抗体を取得することができる。抗体は、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーターの検出や精製などに利用できる。抗体は、本発明の、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーター、その断片、またはその部分配列を有する合成ペプチドなどを抗原として用いて製造できる。ポリクロナール抗体は、宿主動物(例えば、ラットやウサギ等)に抗原を接種し、免疫血清を回収する、通常の方法により製造することができ、モノクロナール抗体は、通常のハイブリドーマ法などの技術により製造できる。
【0030】
本発明の、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーターOAT7、その遺伝子およびその発現細胞は、OAT7が存在する細胞膜や、OAT7が存在すると予想される部位での透過効率についての、インビトロでの試験に使用できる。すなわち本発明のタンパク質を用いて該タンパク質の有する硫酸抱合体を選択的に輸送する能力に対する被検物質の基質としての作用を検出することができる。
また、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーターOAT7、その遺伝子およびその発現細胞は、OAT7が存在する細胞膜や、OAT7が存在すると予想される部位を効率良く透過する化合物の開発に使用できる。
【0031】
本発明の、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーターOAT7、その遺伝子およびその発現細胞は、OAT7により輸送される化合物の、細胞膜通過や、OAT7が存在すると予想される部位の透過を制限する抑制剤(OAT7の特異的なインヒビター等)の開発に使用できる。
例えば、ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞を用いて、OAT7により輸送される物質(例えばステロイドホルモンの硫酸抱合体など)の取り込み実験を行う。この実験を様々な薬剤の存在下でおこない、OAT7により輸送される物質の吸収速度を測定する。OAT7により輸送される物質の吸収速度を低下させる薬剤が、OAT7の有する硫酸抱合体を選択的に輸送する能力の抑制剤として得られる。
また、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーターOAT7、その遺伝子およびその発現細胞は、OAT7が存在する細胞膜や、OAT7が存在すると予想される部位での薬物間相互作用のインビトロでの試験に使用できる。
【0032】
本発明の、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーター、その特異抗体、その機能促進物質あるいは機能抑制物質を用いて、該タンパク質の有する硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を変調させることができ、本発明のトランスポーターによって輸送される薬物、毒物、外来性異物又はステロイドホルモンの体内動態を改変することが可能である。
本発明のトランスポーターは、前記した遺伝子組換え技術により生産することができ、硫酸抱合体の体内移行活性剤として用いることが可能である。また本発明の有機アニオントランスポーター及びその発現細胞を用いた試験により、硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーターの機能促進物質あるいは機能抑制物質の開発が可能であり、これらの薬剤を用いることにより本発明のトランスポーターによって輸送される薬物、毒物、外来性異物又はステロイドホルモンの体内動態を改変することが可能である。
さらに、本発明のトランスポーターによって輸送される薬物の体内動態を改変することにより、薬物の副作用及び外来性異物の毒性作用を軽減することが可能である。また、本発明のトランスポーターによって輸送される化合物の体内動態を改変することにより、肝細胞を薬物及び外来性異物から保護することが可能である。
【0033】
以下、実施例をもって本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、下記実施例において、各操作は特に明示がない限り、「Molecular cloning」[Sambrook, J., Fritsh, E.F.及びManitis, T.著、Cold Spring Harbor Pressより1989に発刊] に記載の方法により行うか、または、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従って使用した。
【実施例】
【0034】
実施例1 硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーター遺伝子のヒトcDNAのクローニング
(1)硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーターOAT7のヒトcDNAの単離とcRNAの調製
OAT1の翻訳領域の塩基配列を用いたEST(expressed sequence tag) データベースの検索によって得られたOAT1類似配列(GenBankTM/EBI/DDBJ accession No. AA705512)に相当する配列をヒト肝由来ポリ(A)+RNAを鋳型として逆転写−PCRにより増幅し、その増幅産物を32P−dCTPでラベルしてプローブとして、ヒト肝cDNAライブラリーをスクリーニングした。
cDNAライブラリーはヒト肝由来ポリ(A)+RNAから、cDNA合成用キット(商品名:Superscript Choice System、ギブコ社製)を使用して作製し、ファージベクターlZipLox(ギブコ社製)の制限酵素EcoRI切断部位に組み込んだ。32P−dCTPでラベルしてプローブによるハイブリダイゼーションは、37℃のハイブリダイゼーション用溶液中一晩行い、フィルター膜は、37℃で0.1×SSC/0.1%SDSで洗浄した。ハイブリダイゼーション用溶液としては、5×SSC、3×デンハード液(Denhard's液)0.2%SDS、10%硫酸デキストラン、50%ホルムアミド、0.01%Abtiform B(商品名、シグマ社)(消泡剤)、0.2mg/mlサーモン精子変性DNA、2.5mMピロリン酸ナトリウム、25mMMESを含むpH6.5の緩衝液を用いた。cDNAを組み込んだlZipLoxファージのcDNA部分を、プラスミドpZL1に組み込んだ。
【0035】
得られたクローンすなわち、ヒトOAT7のcDNAを含むクローンについて、塩基配列決定のための合成プライマーを用いてダイターミネーターサイクルシーケンシング法(Applied Biosystems社)により、cDNAの塩基配列を決定した。
これにより、ヒトOAT7遺伝子の塩基配列が得られた。また、cDNAの塩基配列を常法により解析して、cDNAの翻訳領域とそこにコードされるヒトOAT7のアミノ酸配列を決定した。
これらの配列を、後記配列表の配列番号2に示した。
OAT7は、ヒト有機アニオントランスポーターOAT1と42%、ラット有機アニオントランスポーターOAT2と35%、ヒト有機アニオントランスポーターOAT3と41%、ヒト有機アニオントランスポーターOAT4と46%のアミノ酸配列の相同性を有していた。
OAT7とヒトOAT1、ラットOAT2、ヒト OAT3及びヒト OAT4のアミノ酸配列の比較を図1に示した。図1中において、予想される膜貫通部位を付線で示した。また、予想される糖鎖付加部位を*、予想されるC−キナーゼ依存性のリン酸化部位を#で示した。また、ヒトOAT7、ヒトOAT1、ラットOAT2、ヒトOAT2、ヒトOAT3、ヒト OAT4及び、類似の構造的を持つ有機カチオントランスポーターヒトOCT1、ヒトOCT2、ヒトOCT3のアミノ酸配列に基づいて構成した分子進化の系統樹を図2に示した。
TopPred2アルゴリズム[von Heijne, G. et al.、J. Mol. Biol.、第225巻、第487項(1992年); Cserzo, M. et al.、Protein Eng、第10巻、第673項(1997年)]により、OAT7のアミノ酸配列を解析した結果、図1に示したように、12個の膜貫通領域(membrane-spanning domain)が予想された。また、第1の親水性ループに糖鎖付加部位、第2、第4、第6の親水性ループにプロテインキナーゼC依存性のリン酸化部位と考えられる部位があった。
【0036】
(2)ヒトOAT7染色体遺伝子の同定とエクソン−イントロン構築の決定
ヒトOAT7のcDNAの塩基配列を用いて、NCBIヒトゲノム塩基配列データベースを検索した結果、第11番染色体上にマップされるコンティクRP11-151E18 (Accession No. AP002367)が、ヒトOAT7の塩基配列と同一の配列を含むことを明らかにした。このコンティクの塩基配列とヒトOAT7のcDNAの塩基配列を比較することにより、ヒトOAT7のエクソン-イントロン構築を決定した。その結果を図3に示した。
【0037】
(3)ヒトの種々の組織におけるOAT7遺伝子の発現(ノーザンブロッティングによる解析)
OAT7のcDNAの全長をEcoRIで切り出し、32P−dCTP でラベルしてプローブとして、Human Blot(クロンテク社)用いて、添付のプロトコールに従い、ハイブリダイゼーションを行なった。
ノーザンブロッティングの結果(図4A)、肝のみにおいて2.4、3.0、及び4.4kb付近にバンドが検出された。また、胎児組織のノーザンブロッティングにおいて、胎児肝、胎児腎、胎児肺、胎児脳を比較したが、胎児肝にのみ発現が検出された(図4B)。バンドのサイズは、成体肝のものと同じであった。
【0038】
(4)ヒト肝におけるOAT7蛋白の発現
ヒトOAT7の542−552に相当する合成オリゴペプチド[CKQEDPRVEVTQ]に対する特異抗体をAltmanらの方法に準じて作製した[Altman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 第81巻、2176-2180項、1984年]。N-末端のシステイン残基は、KLHコンジュゲーションのために導入した。
ヒト肝全タンパク質及ヒト肝タンパク質膜画分(ともにBIOCHAIN社から購入)を、SDS-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、Hybond−P PVDV トランスファー膜にブロッティングし、ペプチドアフィニティー精製抗OAT7抗体(1:100)で処理した。
その結果、ヒト肝全タンパク質及ヒト肝タンパク質膜画分ともに、抗OAT7抗体によって図5Aに示すように、50kDa付近にバンドが検出された。
【0039】
(5)ヒト肝におけるOAT7蛋白の免疫組織化学的解析
常法に従い、ヒト肝パラフィン切片(BIOCHAIN社から購入)をペプチドアフィニティー精製抗OAT7抗体(1:100)で処理後、ジアミノベンチジンで発色した。また、染色の特異性を検討する目的で、200mg/mlの抗原ペプチドの存在下でペプチドアフィニティー精製抗OAT7抗体(1:100)で処理する実験も行った。
その結果、図5Cに示すように、肝細胞に染色が見られた。この染色は、抗原ペプチドの存在下で抗OAT7抗血清を作用させた場合には検出されず、染色の特異性が示された(図5E)。さらに強拡大で観察することにより、肝細胞の側底膜にOAT7タンパク質が存在することが明らかになった(図5D)。
【0040】
実施例2 硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーターOAT7の特徴づけ
(1)OAT7の輸送活性
ヒトOAT7遺伝子cRNAを卵母細胞に発現させ、[H]エストロン−硫酸抱合体([H]estrone sulfate)、[H]デヒドロエピアンドロステロン−硫酸抱合体([H]dehydroepiandrosterone sulfate)の取り込みを測定した。
ヒトOAT7遺伝子cRNA20ngを卵母細胞に注入することによって発現させ、3日間培養した。
ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞及び対照として水を注入した卵母細胞について、基質として[H]エストロン−硫酸抱合体及び[H]デヒドロエピアンドロステロン−硫酸抱合体を用い、基質の取り込み実験を金井らの方法(Kanai and Hediger、Nature、第360巻、467-471項、1992年)に準じて、以下のように行った。基質として[H]エストロン−硫酸抱合体(50nM)及び[H]デヒドロエピアンドロステロン−硫酸抱合体(100nM)を含むND96溶液[96mM塩化ナトリウム、2mM塩化カリウム、1.8mM塩化カルシウム、1mM塩化マグネシウム、5mM HEPES、pH7.4]中にて卵母細胞を60分間放置して、細胞内に取り込まれた放射能のカウントで基質の取り込み率を測定した。
その結果(図6A)、[H]エストロン−硫酸抱合体の取り込み及び[H]デヒドロエピアンドロステロン−硫酸抱合体の取り込みは、OAT7を発現させた卵母細胞では、対照として水を注入した卵母細胞に比し、有意の大きな値を示した。
【0041】
(2)OAT7の輸送活性の時間依存性
ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞及び対照として水を注入した卵母細胞について、基質として[H]エストロン−硫酸抱合体(50nM)を用い、実施例2(1)の方法に準じ、基質の取り込みの時間経過を観察した。
その結果(図6B)、OAT7を介する[H]エストロン−硫酸抱合体の取り込みは、120分まで時間依存的にほぼ直線的に増加することが明らかになった。
【0042】
(3)OAT7の輸送活性のナトリウムイオン依存性
ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞及び対照として水を注入した卵母細胞について、[H]エストロン−硫酸抱合体(50nM)取り込み実験において培地に添加する塩の影響を調べた。
H]エストロン−硫酸抱合体の取り込み実験は、ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記実施例2(1)記載方法に準じて実施した。但し、取り込み用溶液は、ナトリウムイオンの影響をみる目的で、標準吸収溶液にかえて、ナトリウムイオンフリー吸収溶液(96mM塩化ナトリウムを96mM塩化コリンに変えたもの)を用いた。
その結果(図6C)、細胞外のナトリウムをコリンに変えても、[H]エストロン−硫酸抱合体(50nM)取り込みに何ら影響を与えなかった。このことから、OAT7はナトリウムイオンに非依存的に働くトランスポーターであることが示された。
【0043】
(4)OAT7のミカエリス-メンテン動力学試験
硫酸抱合体を選択的に輸送する肝特異有機アニオントランスポーターOAT7のミカエリス-メンテン動力学試験を行った。基質[H]エストロン−硫酸抱合体及び[H]デヒドロエピアンドロステロン−硫酸抱合体の濃度の違いによる基質[H]エストロン−硫酸抱合体及び[H]デヒドロエピアンドロステロン−硫酸抱合体の取り込み率の変化を調べることにより、OAT7のミカエリス-メンテン動力学試験を行った。
H]エストロン−硫酸抱合体及び[H]デヒドロエピアンドロステロン−硫酸抱合体の取り込み実験は、ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記実施例2(1)記載方法に準じて実施した。その結果(図7A及び7B)、Km値はそれぞれに対して8.7±1.1mM、2.2±0.3 mM (平均±標準誤差)であった。
【0044】
(5)OAT7の基質選択性(種々の有機アニオン及び有機カチオン添加による阻害実験)
ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞による[H]エストロン−硫酸抱合体の取り込み実験において、系への各種び有機アニオン及び有機カチオン添加の影響を調べた。
H]エストロン−硫酸抱合体の取り込み実験は、ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記実施例2(1)記載方法に準じて実施した。但し、100mMの各種化合物(非標識)の存在下及び非存在下で、[H]エストロン−硫酸抱合体(1mM)の取り込みを測定した。
その結果、図8に示す検討した有機アニオン及び有機カチオンのうちで、エストロン−硫酸抱合体(estrone sulfate)、デヒドロエピアンドロステロン−硫酸抱合体(dehydroepiandrosterone sulfate)、及びβ−エストラジオール−硫酸抱合体(β-estradiol sulfate)によって有意なシス−阻害効果が観察された。しかし、図8に示す他の化合物においては、有意なシス−阻害効果は観察されなかった。
OAT7は、肝に存在する有機アニオントランスポーターであることから、肝細胞において輸送されるとされている種々の有機アニオンの、OAT7を介する[H]エストロン−硫酸抱合体の取り込みに対する効果を検討した。
その結果、図9に示す検討した有機アニオンのうちで、スルホブロモフタレイン(Sulfobromophthalein;BSP)、及びインドシアニングリーン(Indocyanin green;ICG) によって有意なシス−阻害効果が観察された。しかし、図9に示す他の化合物においては、有意なシス−阻害効果は観察されなかった。
OAT7は、硫酸抱合体、グルクロン酸抱合体、グルタチオン酸抱合体のうち、どの抱合体を受け入れるかを明らかにするために、種々の抱合体化合物の、[H]エストロン−硫酸抱合体の取り込みに対する効果を検討した。
その結果、図10A及び図10Bに示す検討した抱合体化合物のうちで、エストロン−硫酸抱合体(estrone sulfate)、デヒドロエピアンドロステロン−硫酸抱合体(dehydroepiandrosterone sulfate)、p−ニトロフェノール−硫酸抱合体(p-nitrophenyl sulfate), β−エストラジオール−硫酸抱合体(β-estradiol sulfate), 4−メチルウンベリフェロン−硫酸抱合体(4-methlumbelliferyl sulfate), ミノキシジル−硫酸抱合体(minoxidil sulfate)によって有意なシス−阻害効果が観察された。しかし、図10A及び図10Bに示すグルクロン酸抱合体、グルタチオン酸抱合体をはじめとする他の化合物においては、有意なシス−阻害効果は観察されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】ヒトOAT7と、ヒトOAT1、ラットOAT2、ヒトOAT3及びヒトOAT4のアミノ酸配列の比較を示す図。予想される膜貫通部位を付線で示した。予想される糖鎖付加部位を*、予想されるC-キナーゼ依存性のリン酸化部位を#で示した。
【図2】ヒトOAT7、ヒトOAT1、ラットOAT2、ヒトOAT2、ヒトOAT3、ヒトOAT4及び、類似の構造的を持つ有機カチオントランスポーターヒトOCT1、ヒトOCT2、ヒトOCT3のアミノ酸配列に基づいて構成した分子進化の系統樹を示す図。
【図3】ヒトOAT7染色体遺伝子のエクソン-イントロン構築を示す図。
【図4】ヒトの各臓器組織におけるOAT7遺伝子mRNAの発現をノーザンブロッティングにより解析した結果を示した写真。A:成体組織及び胎盤。B:胎児組織。
【図5】A:抗OAT7抗体によるヒト肝タンパク質に対するウェスタンブロット解析の結果を示した写真。B〜E:ヒト肝における抗OAT7抗体によるOAT7の免疫組織化学的解析の結果を示した写真。 B.抗OAT7抗体未添加で反応させたもの。染色は観察されない。 C.抗OAT7抗体による染色像の弱拡大像。肝臓全体に染色が見られる。 D.抗OAT7抗体による染色像の強拡大像。肝細胞の側底膜に染色が見られる。 E.抗原ペプチドによる吸収実験。Dで検出された染色は消失し、染色の特異性が示された。
【図6】A:ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞による[H]エストロン−硫酸抱合体([H]estrone sulfate)及び[H]デヒドロエピアンドロステロン−硫酸抱合体([H]dehydroepiandrosterone sulfate)取り込み実験の結果を示す図。B:ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞による[H]エストロン−硫酸抱合体取り込みの時間経過を示す図。C:ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞による[H]エストロン−硫酸抱合体取り込み実験において添加する塩の影響を調べた結果を示す図。
【図7】ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞による[H]エストロン−硫酸抱合体及び[H]デヒドロエピアンドロステロン−硫酸抱合体取り込み実験において基質エストロン−硫酸抱合体及びデヒドロエピアンドロステロン−硫酸抱合体の濃度の影響を調べた結果を示す図。
【図8】ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞による[H]エストロン−硫酸抱合体取り込み実験において、系への各種有機アニオン及び有機カチオン添加の影響を調べた結果を示す図。
【図9】ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞による[H]エストロン−硫酸抱合体取り込み実験において、系への各種の肝細胞において輸送されるとされる有機アニオン添加の影響を調べた結果を示す図。
【図10】ヒトOAT7遺伝子cRNAを注入した卵母細胞による[H]エストロン−硫酸抱合取り込み実験において、系への各種の抱合体化合物添加の影響を調べた結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)及び(B)から選択されるタンパク質であって、硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を有するタンパク質。
(A)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質
【請求項2】
哺乳動物由来である請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
ヒト由来である請求項2に記載のタンパク質。
【請求項4】
臓器、組織、もしくは培養細胞由来である請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項6】
以下の(a)及び(b)から選択されるDNAであって、硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子。
(a)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
【請求項7】
哺乳動物由来である請求項5又は6に記載の遺伝子。
【請求項8】
ヒト由来である請求項7に記載の遺伝子。
【請求項9】
臓器、組織、もしくは培養細胞由来である請求項5〜8のいずれかに記載の遺伝子。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の中のタンパク質をコードする遺伝子を含むベクター。
【請求項11】
発現プラスミドである請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
【請求項13】
配列番号2で示される塩基配列の中の連続する14塩基以上の部分配列もしくはその相補的な配列を含むヌクレオチド。
【請求項14】
硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を有するタンパク質をコードする遺伝子を検出するためのプローブとして使用する請求項13に記載のヌクレオチド。
【請求項15】
硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を有するタンパク質をコードする遺伝子の発現を変調させるために使用する請求項13に記載のヌクレオチド。
【請求項16】
請求項1〜4のいずれかに記載するタンパク質に対する抗体。
【請求項17】
請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を用いて、該タンパク質の有する硫酸抱合体を選択的に輸送する能力に対する被検物質の基質としての作用を検出する方法。
【請求項18】
請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を用いて、該タンパク質の有する硫酸抱合体を選択的に輸送する能力に対する被検物質の抑制剤としての作用を検出する方法。
【請求項19】
請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を用いて、該タンパク質を介する物質輸送における薬物間相互作用を検出する方法。
【請求項20】
請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質、その特異抗体、その機能促進物質あるいは機能抑制物質を用いて、該タンパク質の有する硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を変調させることにより、薬物動態を改変する方法。
【請求項21】
請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質、その特異抗体、その機能促進物質あるいは機能抑制物質を用いて、該タンパク質の有する硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を変調させることにより、毒物あるいは外来性異物の体内動態を改変する方法。
【請求項22】
請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質、その特異抗体、その機能促進物質あるいは機能抑制物質を用いて、該タンパク質の有する硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を変調させることにより、ステロイドホルモンの体内動態を改変する方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法により、薬物の副作用及び外来性異物の毒性作用を軽減する方法。
【請求項24】
請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質、その特異抗体、その機能促進物質あるいは機能抑制物質を用いて、該タンパク質の有する硫酸抱合体を選択的に輸送する能力を変調させることにより、肝細胞を薬物及び外来性異物から保護する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−34096(P2009−34096A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153720(P2008−153720)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【分割の表示】特願2002−70985(P2002−70985)の分割
【原出願日】平成14年3月14日(2002.3.14)
【出願人】(506334311)ジェイファーマ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】