説明

硫黄中間資材およびその製造方法

【課題】非危険物としての取り扱いが可能で、安全に且つ容易に硫黄資材の製造に利用することができる硫黄中間資材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】硫黄中間資材は、JIS標準ふるいで粒径1mm以下の細骨材100質量部と、改質硫黄からなる硫黄材料30〜400質量部とを含み、JIS標準ふるいで最大寸法が101.6mm以下であり、かつ小ガス炎着火試験によって検定される非危険物を充足することを特徴とする。硫黄中間資材の製造方法は、硫黄と硫黄変性剤とを120〜140℃で混合して改質硫黄からなる硫黄材料の溶融物を得、細骨材100質量部に対して前記硫黄材料の溶融物を30〜400質量部混合し、固化することを特徴とする。硫黄中間資材は、土木・建設製品の資材として利用でき、非危険物扱いとして貯蔵可能で運搬が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄を利用した土木・建設製品の資材として利用でき、非危険物扱いとして貯蔵可能で運搬が容易な硫黄中間資材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄資材は、コンクリートに比べて優れた強度を有する材料として知られているが、硫黄は危険物扱いであり、現場で溶融し打設することが困難である。特に大型海洋構造物のような場合は、硫黄資材を使用現場に近いところで製造する必要があるが、硫黄や硫黄の改質に使用する添加剤は危険物で運搬が困難であり、またその製造装置は防爆装置である必要がある。加えて、製造現場での硫黄の保管も専用の溶融硫黄タンクが必要である。従って、硫黄資材の利用には、運搬や製造コストが高いという問題がある。
ところで、細骨材は、粗骨材に比べて硫黄と混ざりにくいため、細骨材を利用した硫黄資材の製造においては、既存の簡便な装置を用いた場合、時間と手間がかかるという問題もある。
このような状況において、従来、硫黄資材の製造方法としては、特許文献1〜31が知られている。
【特許文献1】特開平11−347514号公報
【特許文献2】特開2002−60491号公報
【特許文献3】特開2001−163649号公報
【特許文献4】特開2002−69188号公報
【特許文献5】特開2002−97060号公報
【特許文献6】特開2002−97059号公報
【特許文献7】特開2002−255625号公報
【特許文献8】特開2001−170596号公報
【特許文献9】特開2002−205032号公報
【特許文献10】特開2002−241166号公報
【特許文献11】特開平11−349372号公報
【特許文献12】特開2000−072523号公報
【特許文献13】特開2000−264713号公報
【特許文献14】特開2000−264714号公報
【特許文献15】特開2000−281425号公報
【特許文献16】特開2001−030213号公報
【特許文献17】特開2001−048618号公報
【特許文献18】特開2001−253759号公報
【特許文献19】特開2001−261425号公報
【特許文献20】特開2002−255623号公報
【特許文献21】特開2002−255624号公報
【特許文献22】特開2001−191322号公報
【特許文献23】特開平11−123376号公報
【特許文献24】特開平11−070375号公報
【特許文献25】特開2001−121104号公報
【特許文献26】特開2001−129509号公報
【特許文献27】特開2002−126715号公報
【特許文献28】特開平10−072245号公報
【特許文献29】特開平10−114564号公報
【特許文献30】特開平10−114565号公報
【特許文献31】特開平9−124349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、非危険物としての取り扱いが可能で、安全に且つ容易に硫黄資材の製造に利用することができる硫黄中間資材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、JIS標準ふるいで粒径1mm以下の細骨材100質量部と、改質硫黄からなる硫黄材料30〜400質量部とを含み、JIS標準ふるいで最大寸法が101.6mm以下であり、かつ小ガス炎着火試験によって検定される非危険物を充足することを特徴とする硫黄中間資材が提供される。
また本発明によれば、硫黄と硫黄変性剤とを120〜140℃で混合して改質硫黄からなる硫黄材料の溶融物を得、細骨材100質量部に対して前記硫黄材料の溶融物を30〜400質量部混合し、固化することを特徴とする硫黄中間資材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明の硫黄中間資材は、粗骨材との混合性に優れ、非危険物とすることが可能であるので、管理、保管、運搬、硫黄資材の製造に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の硫黄中間資材は、特定割合の粒径1mm以下の細骨材と改質硫黄からなる硫黄材料とを含み、JIS標準ふるいで最大寸法が101.6mm以下であり、小ガス炎着火試験によって検定される非危険物であることを充足する。
【0007】
本発明の硫黄中間資材において用いることができる改質硫黄は、硫黄変性剤により硫黄を重合したものであって、硫黄と硫黄変性剤との反応物である。該硫黄は、通常の硫黄単体であり、例えば、天然産又は、石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等が挙げられる。
硫黄変性剤としては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)、テトラハイドロインデン(THI)、若しくはシクロペンタジエンと、そのオリゴマー(2〜5量体混合物)、ジペンテン、ビニルトルエン、ジシクロペンテン等のオレフィン化合物類の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
前記DCPDとしては、シクロペンタジエンの単体、2〜5量体を主体に構成される混合物を用いることもできる。該混合物としては、DCPDの含有量が70質量%以上、好ましくは85質量%以上のものが挙げられ、また、いわゆるジシクロペンタジエンと称する市販品の多くを使用することができる。
前記THIとしては、THIの単体、若しくはTHIと、シクロペンタジエンの単体、シクロペンタジエンとブタンジエンとの重合物、及びシクロペンタジエンの2〜5量体からなる群より選択される1種又は2種以上を主体に構成されるものとの混合物を用いることもできる。該混合物中のTHIの含有量は、通常50質量%以上、好ましくは65質量%以上である。該混合物としては、いわゆるテトラハイドロインデンと称する市販品やエチルノルボルネンの製造プラントから排出される副生成油の多くが使用できる。
【0008】
前記改質硫黄は、硫黄と硫黄変性剤とを溶融混合することにより得ることができる。この際、硫黄変性剤の使用割合は、硫黄と硫黄変性剤との合計量に対して、通常0.01〜30質量%、特に、0.1〜20質量%の割合が好ましい。
前記溶融混合は、例えば、インターナルミキサー、ロールミル、ドラムミキサー、ポニーミキサー、リボンミキサー、ホモミキサー、スタティックミキサー等を用いて行うことができ、特に、スタティックミキサーのようなラインミキサーを使用して行うことが好ましい。
【0009】
前記改質硫黄の製造を、例えば、前記ラインミキサーを用いて行う場合は、ラインミキサー中で硫黄と硫黄変性剤とを120〜160℃の範囲で溶融混合し、140℃における粘度が0.05〜3.0Pa・sになるまで滞留させる方法等が好ましい。ラインミキサー内の溶融混合温度は、硫黄が効率よく変性するように通常130〜155℃、特に130〜150℃が好ましい。
ラインミキサー内で生じる硫黄と硫黄変性剤との初期反応は、硫黄と硫黄変性剤とが反応することで変性硫黄前駆体が生成する発熱反応である。このためラインミキサー内では急激な発熱が生じないことを確認しながら連続撹拌しラインミキサー内で120〜160℃まで次第に温度上昇させることが好ましい。
ラインミキサー内で硫黄と硫黄変性剤とを反応させる際は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量が150〜500の改質硫黄前駆体を生成させ、反応系中において前記改質硫黄前駆体を0.01〜45質量%、特に1〜40質量%生成させることが好ましい。
前記分子量の測定は、硫黄変性剤を加えた硫黄を二硫化炭素やトルエン等に溶かし、GPCにより行うことができる。その測定は、例えば、クロロホルム溶媒を使用し室温において、1ml/分の流速で、二硫化炭素1質量/vol%濃度試料溶液を、UV254Nm検出器を用い、ポリスチレンで測定した検量線により行うことができる。
【0010】
前記ラインミキサーの流速及び圧力は、管の径、製造量に応じて適宜設定できるが、好ましくは、流速0.1cm/秒〜100cm/秒程度の流速(時間ならば1秒〜30分間)及び圧力の組合せにより設定することができる。
なお、硫黄と硫黄変性剤とが反応を開始し、改質硫黄前駆体が生成した後では、硫黄変性剤が蒸発する問題はないので、該反応開始後であればラインミキサーを使用しなくてもよく、ラインミキサーを通過したものを、ドラムミキサーやホールディング管に導入、滞留し、改質硫黄前駆体と溶融硫黄を重合反応させて高分子量化してもよい。
前記ドラムミキサーやホールディング管の内部における滞留時間は、管の径、製造量に応じて適宜設定できるが、好ましくは、1分〜24時間程度である。
ホールディング管の滞留時間は、硫黄変性剤の使用量と溶融温度により異なる。
硫黄改質のための反応終了時期は、溶融物の粘度により決定できる。例えば、140℃における粘度が0.05〜3.0Pa・sの範囲が好ましいが、得られる硫黄中間資材の強度や製造工程の作業性の観点から、140℃における粘度が0.05〜2.0Pa・sの範囲が総合的に最適である。
また、改質硫黄はバッチ式によっても製造できる。
【0011】
本発明の硫黄中間資材において、前記硫黄材料としては、改質硫黄の割合が高いか、実質的に改質硫黄のみの使用が、最終的に得られる硫黄資材の強度及び耐久性等をより改善し得る点から好ましい。
本発明の硫黄中間資材において、小ガス炎着火試験によって検定される非危険物を充足させるには、例えば、硫黄中間資材の製造に用いる改質硫黄において、該改質硫黄を調製する際に使用する硫黄変性剤の使用割合を通常多くすることで達成できる。硫黄変製剤を、硫黄と硫黄変性剤との合計量に対して、約30質量%使用することで前記各性能の改善効果は飽和し、それ以上では変化は少なく、0.01質量%未満の使用では改質硫黄を用いることによる十分な強度改善がなされない恐れがあるので好ましくない。
【0012】
本発明の硫黄中間資材において、前記硫黄材料の含有割合は、後述する細骨材100質量部に対して、30〜400質量部、好ましくは50〜300質量部である。30質量部未満では、得られる硫黄中間資材の均一混練が十分でなく、400質量部を超えると、硫黄材料と細骨材とが分離して均一な材料が得られない。
本発明の硫黄中間資材において、小ガス炎着火試験によって検定される非危険物を充足させるには、例えば、細骨材の配合量を多くするほど達成させ易い。このような細骨材の割合は、硫黄材料100質量部に対して、通常25〜300質量部、好ましくは30〜250質量部である。
【0013】
本発明の硫黄中間資材に含まれる細骨材は、骨材として使用可能であれば特に限定されないが、一般にコンクリートで用いられる骨材、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属製造時に生成する副生物、石炭灰、燃料焼却灰、電気集塵灰、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。また、シリカヒューム、アルミナ、石英粉、石英質岩石、粘土鉱物、活性炭、ガラス粉末やこれらと同等の有害物質を含有しない無機系、有機系等の骨材も使用可能である。これらの細骨材の中でも、粒経分布の調整が容易で均一なものを大量に入手しやすい点で、石炭灰、珪砂、シリカヒューム、石英粉、砂、ガラス粉末及び電気集塵灰からなる群より選択される1種又は2種以上が好ましい。
本発明の硫黄中間資材においては、細骨材として産業廃棄物を使用した場合でも、前述の硫黄材料により無害化することが可能である。
【0014】
前記細骨材は、通常、粒径5mm以下、好ましくは1mm以下の骨材からなる。前記細骨材の粒径が5mmを超えると再溶融が速やかにできない。このような細骨材の粒径調整は公知技術が利用でき、例えば、篩等で調整することができる。粒径はJIS標準ふるいを使用して規定できる。
本発明の硫黄中間資材には、前記改質硫黄からなる硫黄材料と細骨材の他に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で後述する繊維質充填材等が適量含まれていても良い。
【0015】
本発明の硫黄中間資材は、JIS標準ふるいによる最大寸法が101.6mm以下である。101.6mmを超えると運搬が困難である。このような大きさにするための粉砕、篩い分けの方法は公知の方法を用いることができる。
本発明の硫黄中間資材は、通常、5MNmm2以上の強度、好ましくは10〜60MNmm2程度の強度を発揮する。また硫黄中間資材は、再溶融してコンクリートと一体化させた際のコンクリートとの付着強度(JIS A 6910)が1.5N/mm2以上、好ましくは2〜5N/mm2を示す。
本発明の硫黄中間資材は、前記硫黄材料の溶融物と細骨材等とを混合、固化して得ることができる。該資材はそのままあるいは成型、粉砕、加工、再溶融等の処理によって硫黄資材として使用することもできる。
【0016】
硫黄資材は、前述の本発明の硫黄中間資材の溶融物と粗骨材を含む材料とを混合、固化して得たものである。該固化にあたっては所望の形状に成型することもでき、また固化物は、粉砕、加工、再溶融等の処理によって硫黄資材として使用することもできる。
硫黄資材において粗骨材の粒径は、JIS標準ふるいで1mm以上が好ましく、特に、5mmを超えることが好ましく、その上限は50mm以下が好ましい。粗骨材の粒径が50mmを超えると製造時の混合に長時間を要する恐れがあるので好ましくない。このような粗骨材の寸法調整は公知技術が利用でき、例えば、篩等で調整することができる。粗骨材の種類は特に限定されず、例えば、上述の細骨材と同様な種類のものを挙げることができる。
硫黄資材において、粗骨材の含有割合は、硫黄中間資材の溶融物100質量部に対して通常10〜700質量部、好ましくは50〜500質量部である。10質量部未満では高い強度が得られ難く、700質量部を超えると硫黄材料が少なすぎるため固化が困難であり好ましくない。
硫黄材料において、細骨材及び粗骨材からなる骨材の配合割合は、硫黄資材全量基準で50〜90質量%が好ましい。骨材の配合割合が90質量%を超えると骨材としての無機系資材表面を硫黄材料により十分濡らすことができず、骨材が露出した状態となり、強度が十分発現しないと共に遮水性が維持できない恐れがあるので好ましくない。一方、骨材の配合割合が50質量%未満では、強度が低下するので好ましくない。
【0017】
硫黄資材における前記粗骨材を含む材料において、粗骨材以外の材料としては、例えば、硫黄資材の曲げ強度を更に高め、パネルやタイル等に用いる際に資材自体を薄型化、軽量化を可能にするために、細骨材、繊維質充填材、繊維状粒子、薄片状粒子等を含有させることができる。このような材料は前述の本発明の硫黄中間資材に含まれていても良い。
繊維質充填材としては、例えば、カーボンファイバー、グラスファイバー、鋼繊維、アモルファス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維又はこれらの混合物等が挙げられる。
繊維質充填材の繊維径は、材質により異なるが通常5μm〜1mmが好ましい。繊維形態は、短繊維、連続繊維いずれでも良いが、短繊維の場合の繊維長は2〜30mmの均一分散が容易な長さが好ましい。連続繊維としては、骨材が通過できるような隙間を空けた格子状であれば良く、織構造又は不織布構造のいずれでも良い。
繊維質充填材を配合する場合の配合割合は、得られる硫黄資材中に通常0.1〜10質量%、特に0.5〜3重量%が好ましい。
【0018】
硫黄資材又は本発明の硫黄中間資材には、靭性を高めるため等に、繊維状粒子、薄片状粒子等を配合することもできる。
繊維状粒子としては、平均長さ1mm以下のウォラスナイト、ボーキサイト、ムライト等が挙げられる。
薄片状粒子としては、平均粒度1mm以下のマイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。繊維状粒子及び/又は薄片状粒子を配合する場合の配合割合は、硫黄資材中に通常35質量%以下、特に1〜25質量%が好ましい。
硫黄資材又は本発明の硫黄中間資材には、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、上記以外にも必要に応じて他の成分が配合されていても良い。
【0019】
本発明の硫黄資材は、通常、10N/mm2以上の強度、好ましくは10〜80N/mm2程度の強度を発揮することができる。
【0020】
硫黄資材を製造するには、例えば、120〜200℃に予熱した粗骨材を含む材料に、好ましくは120〜160℃に保持した前記硫黄中間資材の溶融物を投入し、混合した後、固化する方法又は、120〜160℃に保持した前記硫黄中間資材の溶融物に、120〜160℃に予熱した粗骨材を含む材料を投入し、混合した後、固化する方法等により得ることができる。
該製造方法では、固体として安価かつ容易に保管でき、また、非危険物としうる本発明の硫黄中間資材を用いるので、溶融硫黄タンクの使用も不要である。
該製造方法において、粗骨材を含む材料の予熱は、予熱装置を用いて行うことができる。
該製造方法において、硫黄中間資材の溶融物と粗骨材を含む材料との混合は、加熱可能な型枠等の加熱装置を使用し、内部を120〜200℃に予熱して行うことが好ましい。混合機も120〜155℃に予熱しておくことが好ましい。
前記予熱装置及び加熱装置は、防爆装置にする必要もないので裸火の使用が可能でありこれら装置にキルンを使用することができる。硫黄中間資材の溶融物と粗骨材を含む材料との混合は容易であるため、型枠装置等の簡便なものを使用することができる。また溶融混合時間も短いという特徴がある。硫黄中間資材を製造しない従来の方法では、骨材と硫黄の混合が不十分になりやすく硫黄材料が連続相とならず得られる硫黄資材の強度が低下する恐れがあった。
【0021】
前記硫黄中間資材の溶融物と粗骨材を含む材料との混合は、含有される溶融状態の硫黄材料、特に改質硫黄を含む硫黄材料の140℃における粘度を0.05〜3.0Pa・sの範囲内に維持しながら行うことが好ましい。前記改質硫黄を含む硫黄材料の粘度は、硫黄の重合進行により時間と共に上昇するので、取り扱いが容易で好ましい最適粘度範囲とすることが好ましい。該粘度が0.05Pa・s未満では、得られる硫黄資材の強度が低下し、改質硫黄による改質効果が不十分となるので好ましくない。一方、粘度が高くなるに従い、強度改善効果も高くなるが、3.0Pa・sを超えると溶融混合における撹拌が困難となり、作業性が著しく悪化するので好ましくない。
前記混合に用いる混合機は、混合が十分に行えるものであれば特に限定されず、好ましくは固液撹拌用が使用できる。例えば、パドルミキサー、インターナルミキサー、ロールミル、ボールミル、ドラムミキサー、スクリュー押出し機、パグミル、ポエーミキサー、リボンミキサー、ニーダー等が使用できる。
【0022】
前記製造方法において、固化は、前記溶融状態の混合物を型枠に導入して冷却固化する方法等により行うことができる。
前記固化は、公知の成型法、例えば、型枠に流し込み冷却固化し、任意の形状にすることにより行うことができる。型枠の形状としては、パネル型、タイル型、ブロック型等が挙げられるがこれらに限定されない。
前記固化時の成型には、適宜振動を加えたり、超音波を照射したりしながら成型してもよい。
【0023】
硫黄資材は、所望形状の成型体として、ブロックをはじめ各種構造物として利用することができる。例えば、タイル、ブロック、パネル材、床材、魚礁、護岸資材、藻場造成用資材等として利用できる。また、道路用製品として、歩道境界ブロック、平板、インターロッキングブロック等に、建築用製品として、漁礁、消波ブロック、防波ブロック、植生ブロック等に、土木施工用材料として、土留用壁、擁壁、L型用壁、矢板等に使用できる。
これら用途において、硫黄資材を成型物全部に使用する必要は必ずしもなく、表面部分に使用しても目的を果たすことができる。例えば、コンクリート製護岸壁面に当該硫黄資材を配置してもよい。他の用途、例えば、タイル、ブロック、パネル材、床材、壁材等においても同様にコンクリートと組み合わせて二層構造にしても良いし、更にコンクリートを硫黄中間資材で挟むような三層構造や多層構造にしてもよい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。なお、例中で作製した各硫黄中間資材や硫黄資材について、以下に示す方法に従い測定及び評価を行なった。
小ガス炎着火試験検定:消防法危険物第2類可燃性固体類の判定試験による。
圧縮強度:JIS A 1108
骨材の粒度調整:事前にJISふるいを用いて調整した。
(改質硫黄の製造)
密閉式撹拌混合槽中に、固体硫黄95kgを入れ、120℃で加温して溶解後、130℃に保持した。続いて、約50℃に加熱溶解したジシクロペンタジエン5kgをゆっくりと添加し、約10分間静かに撹拌して、初期反応による温度上昇が収束することを確認してから、140℃まで昇温した。反応が開始され、次第に粘度が上昇し、約1時間で粘度が0.1Pa・sに達したところで直ちに加熱を停止し、適当な型又は容器に流し込んで室温で冷却し、改質硫黄(C-1)を得た。
【0025】
(細骨材と粗骨材の調整)
細骨材は粒径1mm以下の石炭灰をそのまま使用し細骨材(A-1)とした。
粗骨材は高炉スラグをふるいにより粒径5mm超で分別し、粒径5mmを超える高炉スラグからなる粗骨材(A-2)を製造した。
【0026】
実施例1
140℃に予熱した細骨材(A-1)20kgと、改質硫黄(C-1)20kgを130℃に再加熱して溶解した溶解物とを、140℃に保った混練機(プローシェアーミキサー)内にほぼ同時に投入した。続いて10分間混練し、これをW46cm×D55cm×H6cmの板状型に流し込んで冷却し、100mm以下に破砕した。これを硫黄中間資材(B-1)とする。
硫黄中間資材(B-1)の小ガス炎着火試験検定は、硫黄中間資材(B-1)を更に砕き3gの小塊10個とし、小ガス炎着火試験を実施した。その結果、全て10秒以内に着火することはなく非危険物であった。
次に、硫黄中間資材(B-1)20kgと180℃に予熱した粗骨材(A-2)30kgを140℃の二軸パドルミキサーに入れ5分間混練した。これをφ10cm×H20cmの円柱型枠に注ぎ室温まで冷却した。脱型した供試体(硫黄資材)の圧縮強度は82N/mm2と高かった。
【0027】
比較例1
硫黄中間資材(B-1)20kgと140℃に予熱した細骨材(A-1)10kg、粗骨材(A-2)30kgと130℃に再加熱した改質硫黄(C-1)10kgを140℃に予熱した二軸パドルミキサーに入れ5分間混練した。これをφ10cm×H20cmの円柱型枠に注ぎ室温まで冷却し、脱型した供試体は、細骨材(A-1)に改質硫黄が十分行き渡らず見た目もまだらで圧縮強度は値を示さなかった。
【0028】
実施例2
硫黄中間資材(B-1)を140℃の二軸パドルミキサーに入れて10分間で溶融した。これを100ccすくい取りコンクリート板(300×300×60mm)に広げた。1時間後にJIS A 6910に規定する建研式接着力試験を行ったところ、3.5N/mm2を示した。これは首都高速道路公団の断面修復材(モルタル工)の品質規格値(標準養生後)の1.5N/mm2を十分超えるものであり高い付着力であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS標準ふるいで粒径1mm以下の細骨材100質量部と、改質硫黄からなる硫黄材料30〜400質量部とを含み、JIS標準ふるいで最大寸法が101.6mm以下であり、かつ小ガス炎着火試験によって検定される非危険物を充足することを特徴とする硫黄中間資材。
【請求項2】
コンクリートとの付着強度(JIS A 6910)が1.5N/mm2以上であることを特徴とする請求項1記載の硫黄中間資材。
【請求項3】
前記細骨材が、石炭灰、珪砂、シリカヒューム、石英粉、砂、ガラス粉末及び電気集塵灰からなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の硫黄中間資材。
【請求項4】
前記細骨材が、石炭灰を含むことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の硫黄中間資材。
【請求項5】
硫黄と硫黄変性剤とを120〜140℃で混合して改質硫黄からなる硫黄材料の溶融物を得、細骨材100質量部に対して前記硫黄材料の溶融物を30〜400質量部混合し、固化することを特徴とする硫黄中間資材の製造方法。

【公開番号】特開2007−302557(P2007−302557A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219880(P2007−219880)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【分割の表示】特願2003−320308(P2003−320308)の分割
【原出願日】平成15年9月11日(2003.9.11)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(590000455)財団法人石油産業活性化センター (249)
【Fターム(参考)】