説明

硬化可能なシリコーン組成物

【課題】ヒドロシリル化により熱架橋可能なシリコーン組成物、それらの製造方法、並びにそれらの架橋可能な組成物の使用。
【解決手段】付加架橋性シリコーン組成物は、・それぞれ少なくとも1つの化合物(A)、(B)、(D)、(K)及び(L)、・それぞれ少なくとも1つの化合物(C)、(D)、(K)及び(L)及び・それぞれ少なくとも1つの化合物(A)、(B)、(C)、(D)、(K)及び(L)を含む群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリル化により熱架橋可能なシリコーン組成物、それらの製造方法、並びに前記の架橋可能な組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
付加架橋性シリコーン組成物をヒドロシリル化反応により架橋させるために、典型的には白金又は白金族の金属を含有する触媒が一般的に使用される。触媒作用により進行する反応の場合に、脂肪族不飽和基はSiに結合した水素と反応して網目構造を形成する。
【0003】
二成分系の場合に、それらの反応性成分は、それらの加工直前にはじめて混合される。前記混合物は活性な白金触媒を含有し、このことは結果として、架橋反応が室温で既に進行し、かつ加工までの時間(ポットライフ)が、狭く制限されていることになる。これらから、追加の混合工程、技術的障害の場合の高められた清浄化費用及び容器中の白金汚染の危険のような欠点が明らかになる。
【0004】
理想的には室温で全く硬化せず、かつ高められた温度でできるだけ迅速に硬化する一成分系付加架橋性シリコーンゴム系への需要が、長い間存在している。
【0005】
室温での早期架橋の問題を解決するために多様なアプローチが存在する。1つの可能性は、例えば欧州特許出願公開(EP-A2)第0 459 464号明細書に記載されているように、高められた温度で溶融し、かつそれにより活性な触媒を放出する熱可塑性材料中に触媒をカプセル化することにある。しかしながら、前記触媒の製造は相対的に費用がかかる。
【0006】
室温での一成分系の早期架橋を防止するさらなる可能性は、特殊な白金錯体の使用である。白金アルキニル錯体は、米国特許(US-B)第6,252,028号明細書及び米国特許(US-B)第6,359,098号明細書に記載されている。米国特許(US-A)第4,256,616号明細書において、Pt(0)−ホスフィン錯体及びPt(0)−ホスフィット錯体は、スズ塩との組合せで使用され、かつ国際公開(WO-A1)第03/098 890号には、構造の特徴としてホスフィット配位子並びにジビニルジシロキサン配位子を有するPt(0)−ホスフィット錯体が記載されている。
【0007】
上記のものとは原則的に異なるさらなる可能性は、ポットライフの延長を生じさせるために、前記混合物に添加剤として添加される抑制剤の使用にある。これらの抑制剤は、触媒成分に対して常にモル過剰量で使用され、かつその触媒活性を阻害する。しかしながら、抑制剤量が増加するにつれて、ポットライフ延長に加えて、より高い温度での前記系の反応性の低下も起こり、かつ活性開始温度(Anspringtemperatur)は上昇する。文献には、多様な物質の種類の抑制剤の多数の例が存在する。米国特許(US-A)第3,723,567号明細書においては、抑制剤としてのアミノ官能性シランの特許の保護が請求されている。アセチレン系不飽和アルコールと組合せでのアルキルジアミンが、米国特許(US-A)第5,270,422号明細書において抑制に使用される。欧州特許出願公開(EP-A2)第0 761 759号明細書においては、抑制剤の組合せの特許の保護が請求されており、アミンが、別の抑制剤であるアセチレンアルコールと併せて使用される。独国特許出願公開(DE-A1)第19 757 221号明細書には、同様に、抑制剤の使用におけるホスフィットの物質の種類が記載されている。ホスフィンは、米国特許(US-A)第4,329,275号明細書において抑制のための添加剤として特許の保護が請求されている。有機過酸化物との組合せでのホスフィットの組合せは、欧州特許出願公開(EP-A1)第1 437 382号明細書に記載されている。架橋速度論への負の影響に加えて、部分的に揮発性の抑制剤又は揮発性成分を放出する抑制剤の使用が、同様に不都合であることが判明している。相応する添加剤により、室温で完全に抑制し、かつ硬化条件で反応速度に完全に影響を及ぼさない混合物は、これまで知られていない。
【0008】
前記の材料が、一成分系で配合される付加架橋性材料の場合に、部分的に十分に高い架橋速度で明らかに改善されたポットライフを提供するにも拘わらず、高められた温度で前記材料の迅速な架橋を保証するが、しかし前記の欠点を示さないより性能の良い白金触媒への需要がさらに存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開(EP-A2)第0 459 464号明細書
【特許文献2】米国特許(US-B)第6,252,028号明細書
【特許文献3】米国特許(US-B)第6,359,098号明細書
【特許文献4】米国特許(US-A)第4,256,616号明細書
【特許文献5】国際公開(WO-A1)第03/098 890号
【特許文献6】米国特許(US-A)第3,723,567号明細書
【特許文献7】米国特許(US-A)第5,270,422号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開(EP-A2)第0 761 759号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開(DE-A1)第19 757 221号明細書
【特許文献10】米国特許(US-A)第4,329,275号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開(EP-A1)第1 437 382号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、前記の欠点を示さず、かつ良好な架橋速度で本質的に改善されたポット時間を可能にする付加架橋性材料を提供することであった。
【0011】
以下に、オルガノポリシロキサンの概念には、ポリマーシロキサン、オリゴマーシロキサン並びに二量体シロキサンも含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書の対象は、
・それぞれ少なくとも1つの化合物(A)、(B)、(D)、(K)及び(L)、
・それぞれ少なくとも1つの化合物(C)、(D)、(K)及び(L)及び
・それぞれ少なくとも1つの化合物(A)、(B)、(C)、(D)、(K)及び(L)
を含む群から選択される付加架橋性シリコーン組成物であり、
ここで、
(A)は、脂肪族炭素−炭素多重結合を有する基少なくとも2個を有する有機化合物又は有機ケイ素化合物を表し、
(B)は、Siに結合した水素原子少なくとも2個を有する有機ケイ素化合物を表し、
(C)は、脂肪族炭素−炭素多重結合を有するSiC結合した基及びSiに結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物を表し、
(D)は、白金触媒を表し、
(K)は、ヒドロペルオキシドを表し、
(L)は、アセチレン系アルコールを表す。
【0013】
1つ又はそれ以上のアセチレン系アルコール(L)と1つ又はそれ以上のヒドロペルオキシド(K)との組合せの使用から、活性開始温度が、明らかに改善されたポットライフで中程度にのみ上昇するような相乗効果となることが意外なことに見出された。この効果は、抑制剤の個々の使用によって単独では達成されることはできない。
【0014】
本発明による組成物は、一成分系シリコーン組成物並びに二成分系シリコーン組成物であることができる。後者の場合に、本発明による組成物の双方の成分は全ての成分を任意の組合せで含有することができるが、但し一般的に、一方の成分は、脂肪族多重結合を有するシロキサン、Siに結合した水素を有するシロキサン及び触媒を同時に含有しない、すなわち本質的には成分(A)、(B)及び(D)もしくは(C)及び(D)を同時に含有しない。好ましくは、本発明による組成物は、しかしながら一成分系組成物である。
【0015】
本発明による組成物中で使用される化合物(A)及び(B)もしくは(C)は、周知のように、架橋が可能であるように選択される。こうして、例えば化合物(A)は、脂肪族不飽和基少なくとも2個を有し、かつ(B)は、Siに結合した水素原子少なくとも3個を有するか、又は化合物(A)は、脂肪族不飽和基少なくとも3個を有し、かつシロキサン(B)は、Siに結合した水素原子少なくとも2個を有するか、又はしかし化合物(A)及び(B)の代わりに、脂肪族不飽和基及びSiに結合した水素原子を0.1〜10、好ましくは0.2〜5の比で有するシロキサン(C)が使用される。また、(A)と、(B)と、脂肪族不飽和基及びSiに結合した水素原子の前記の比を有する(C)との混合物も可能である。
【0016】
本発明により使用される化合物(A)は、脂肪族不飽和基を好ましくは少なくとも2個有するケイ素不含の有機化合物並びに脂肪族不飽和基を好ましくは少なくとも2個有する有機ケイ素化合物であることができ、又はまたそれらの混合物であることもできる。
【0017】
ケイ素不含の有機化合物(A)の例は、1,3,5−トリビニルシクロヘキサン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、4,7−メチレン−4,7,8,9−テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基含有ポリブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリアリルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、3−メチル−ヘプタジエン−(1,5)、3−フェニル−ヘキサジエン−(1,5)、3−ビニル−ヘキサジエン−(1,5)及び4,5−ジメチル−4,5−ジエチル−オクタジエン−(1,7)、N,N′−メチレン−ビス−アクリル酸アミド、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)−プロパン−トリアクリラート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリメタクリラート、トリプロピレングリコール−ジアクリラート、ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルカーボネート、N,N′−ジアリル尿素、トリアリルアミン、トリス(2−メチルアリル)アミン、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、トリアリル−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ジアリルマロン酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリラート、ポリエチレングリコールジメタクリラート、ポリ(プロピレングリコール)メタクリラートである。
【0018】
好ましくは、本発明によるシリコーン組成物は、成分(A)として少なくとも1つの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含有し、その際にこれまで付加架橋性組成物中で使用されてきた全ての脂肪族不飽和有機ケイ素化合物、例えば尿素セグメントを有するシリコーンブロックコポリマー、アミドセグメント及び/又はイミドセグメント及び/又はエステル−アミドセグメント及び/又はポリスチレンセグメント及び/又はシルアリーレンセグメント及び/又はカルボランセグメントを有するシリコーンブロックコポリマー及びエーテル基を有するシリコーングラフトコポリマーが使用されることができる。
【0019】
脂肪族炭素−炭素多重結合を有するSiC結合した基を有する有機ケイ素化合物(A)として、一般式(II)
a4bSiO(4-a-b)/2 (II)
で示される単位からなる好ましくは線状又は分枝鎖状のオルガノポリシロキサンが使用され、ここで、
Rは互いに独立して、同じか又は異なり、脂肪族炭素−炭素多重結合を含まない有機基又は無機基を表し、
4は互いに独立して、同じか又は異なり、脂肪族炭素−炭素多重結合少なくとも1個を有する、置換又は非置換の、SiC結合した一価炭化水素基を表し、
aは0、1、2又は3であり、かつ
bは0、1又は2であり、
但し、a+bの総和は3又はそれ未満であり、かつ1分子あたり基R4少なくとも2個が存在する。
【0020】
基Rは、一価又は多価の基であることができ、その際に多価の基、例えば二価、三価及び四価の基が、そして複数の、例えば2つ、3つ又は4つの、式(II)のシロキシ単位を互いに結合させる。
【0021】
Rのさらなる例は、一価の基−F、−Cl、−Br、OR5、−CN、−SCN、−NCO及び酸素原子又は基−C(O)−で中断されていてもよいSiC結合した置換又は非置換の炭化水素基並びに式(II)による両側にSiに結合した二価の基である。基Rが、SiC結合した、置換された炭化水素基である場合には、好ましい置換基は、ハロゲン原子、リン含有基、シアノ基、−OR5、−NR5−、−NR52、−NR5−C(O)−NR52、−C(O)−NR52、−C(O)R5、−C(O)OR5、−SO2−Ph及び−C65である。その場合に、R5は互いに独立して、同じか又は異なり、水素原子を表すか又は炭素原子1〜20個を有する一価の炭化水素基を表し、かつPhはフェニル基に等しい。
【0022】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、及びオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基、アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、及びアラルキル基、例えばベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基である。
【0023】
置換された基Rの例は、ハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2′,2′,2′−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ハロゲンアリール基、例えばo−、m−及びp−クロロフェニル基、−(CH2)−N(R5)C(O)NR52、−(CH2n−C(O)NR52、−(CH2n−C(O)R5、−(CH2n−C(O)OR5、−(CH2n−C(O)NR52、−(CH2)−C(O)−(CH2mC(O)CH3、−(CH2)−O−CO−R5、−(CH2)−NR5−(CH2m−NR52、−(CH2n−O−(CH2mCH(OH)CH2OH、−(CH2n(OCH2CH2mOR5、−(CH2n−SO2−Ph及び−(CH2n−O−C65であり、その際にR5及びPhは上記のそれらについて記載された意味に相当し、かつn及びmは、0〜10の同じか又は異なる整数を表す。
【0024】
式(II)による両側にSiに結合した二価の基に等しいRの例は、上記で基Rについて挙げられた一価の例から、追加の結合が水素原子1個の置換により行われることにより誘導されるような基であり、この種の基の例は、−(CH2)−、−CH(CH3)−、−C(CH32−、−CH(CH3)−CH2−、−C64−、−CH(Ph)−CH2−、−C(CF32−、−(CH2n−C64−(CH2n−、−(CH2n−C64−C64−(CH2n−、−(CH2O)m、(CH2CH2O)m、−(CH2n−Ox−C64−SO2−C64−Ox−(CH2n−であり、その際にxは0又は1であり、かつPh、m及びnは上記で挙げた意味を有する。
【0025】
好ましくは、基Rは、炭素原子1〜18個を有し、脂肪族炭素−炭素多重結合を含まず、SiC結合した、場合により置換された一価の炭化水素基、特に好ましくは炭素原子1〜6個を有する、脂肪族炭素−炭素多重結合を含まず、SiC結合した一価の炭化水素基、特にメチル基又はフェニル基である。
【0026】
基R4は、SiH官能性化合物との付加反応(ヒドロシリル化)で得ることができる任意の基であることができる。
【0027】
基R4が、SiC結合した置換された炭化水素基である場合には、置換基としてハロゲン原子、シアノ基及び−OR5が好ましく、その際にR5は前記の意味を有する。
【0028】
好ましくは、基R4は、炭素原子2〜16個を有するアルケニル基及びアルキニル基、例えばビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、5−ヘキセニル基、エチニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、ビニルシクロヘキシルエチル基、ジビニルシクロヘキシルエチル基、ノルボルネニル基、ビニルフェニル基及びスチリル基であり、その際にビニル基、アリル基及びヘキセニル基が特に好ましくは使用される。
【0029】
成分(A)の分子量は、幅広い範囲内に、例えば102〜106g/molにわたることができる。こうして、成分(A)は、例えば、相対的に低分子量のアルケニル官能性オリゴシロキサン、例えば1,2−ジビニルテトラメチルジシロキサンであることができ、しかしながらまた非末端の(kettenstaendige)又は末端のSiに結合するビニル基を介して結合した高ポリマーポリジメチルシロキサン、例えば105g/molの分子量(NMRにより測定された数平均)を有するポリジメチルシロキサンであることもできる。また、成分(A)を形成する分子の構造は、定められていない;特に、より高分子量のシロキサン、すなわちオリゴマーシロキサン又はポリマーシロキサンの構造は、線状、環状、分枝鎖状であることができ、又はまた樹脂状、網目状であることもできる。線状及び環状のポリシロキサンは、式R3SiO1/2、R42SiO2/2、R4RSiO1/2及びR2SiO2/2の単位から好ましくは構成されており、その際にR及びR4は上記で示した意味を有する。分枝鎖状及び網目状のポリシロキサンは、付加的に三官能性及び/又は四官能性の単位を含有し、その際に式RSiO3/2、R4SiO3/2及びSiO4/2のような単位が好ましい。もちろん、成分(A)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物も使用されることができる。
【0030】
特に好ましくは成分(A)として、25℃でそれぞれ、0.01〜500 000Pa・s、特に好ましくは0.1〜100 000Pa・sの粘度を有し、ビニル官能性で、本質的には線状のポリジオルガノシロキサンの使用である。
【0031】
有機ケイ素化合物(B)として、これまでも付加架橋可能な組成物中で使用されてきた全ての水素官能性有機ケイ素化合物が使用されることができる。
【0032】
Siに結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B)として、好ましくは、一般式(III)
cdSiO(4-c-d)/2 (III)
で示される単位からなる線状、環状又は分枝鎖状のオルガノポリシロキサンが使用され、ここで、
Rは前記の意味を有し、
cは0、1、2又は3であり、かつ
dは0、1又は2であり、
但し、c+dの総和は3又はそれ未満であり、かつ1分子あたりSiに結合した水素原子少なくとも2個が存在する。
【0033】
好ましくは、本発明により使用されるオルガノポリシロキサン(B)は、オルガノポリシロキサン(B)の全質量を基準として、0.04〜1.7質量%の範囲内のSiに結合した水素を含有する。
【0034】
成分(B)の分子量は、同様に、幅広い範囲内で、例えば102〜106g/molにわたることができる。こうして、成分(B)は、例えば相対的に低分子量のSiH官能性オリゴシロキサン、例えばテトラメチルジシロキサンであることができ、しかしながらまた、非末端の又は末端のSiH基を介して結合する高ポリマーポリジメチルシロキサン又はSiH基を有するシリコーン樹脂であることもできる。
【0035】
また、成分(B)を形成する分子の構造は、定められていない;特に、SiH含有のより高分子量のシロキサン、すなわちオリゴマーシロキサン又はポリマーシロキサンの構造は、線状、環状、分枝鎖状であることができ、又はまた樹脂状、網目状であることもできる。線状及び環状のポリシロキサン(B)は、式R3SiO1/2、HR2SiO1/2、HRSiO2/2及びR2SiO2/2の単位から好ましくは構成されており、その際にRは上記で示した意味を有する。分枝鎖状及び網目状のポリシロキサンは、付加的に三官能性及び/又は四官能性の単位を有し、その際に式RSiO3/2、HSiO3/2及びSiO4/2のような単位が好ましく、その際にRは上記で示した意味を有する。
【0036】
もちろん、成分(B)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物も使用されることができる。特に、成分(B)を形成する分子は、必須のSiH基に加えて、場合により同時に、脂肪族不飽和基も有することができる。低分子量のSiH官能性化合物、例えばテトラキス(ジメチルシロキシ)シラン及びテトラメチルシクロテトラシロキサン、並びにより高分子量のSiH含有シロキサン、例えばポリ(ハイドロジェンメチル)シロキサン及び25℃で10〜10 000mPa・sの粘度を有するポリ(ジメチルハイドロジェンメチル)シロキサン、又は類似のSiH含有化合物の使用が特に好ましく、その場合にメチル基の一部は、3,3,3−トリフルオロプロピル基又はフェニル基により置換されている。
【0037】
成分(B)は、好ましくは、(A)の脂肪族不飽和基に対するSiH基のモル比が0.1〜20、特に好ましくは1.0〜5.0であるような量で、本発明による架橋可能なシリコーン組成物中に含まれている。
【0038】
本発明により使用される成分(A)及び(B)は、市販製品であるか、もしくは化学における通常の方法により製造可能である。
【0039】
成分(A)及び(B)の代わりに、本発明によるシリコーン組成物は、脂肪族炭素−炭素多重結合及びSiに結合した水素原子を同時に有するオルガノポリシロキサン(C)を含有することができる。また、本発明によるシリコーン組成物は、3つの成分(A)、(B)及び(C)全てを含有することもできる。
【0040】
シロキサン(C)が使用される場合には、好ましくは、一般式(IV)、(V)及び(VI)
fSiO4-f/2 (IV)
g4SiO3-g/2 (V)
hHSiO3-h/2 (VI)
で示される単位からなるそのようなシロキサンであり、ここで、
R及びR4は上記でこれらについて記載された意味を有し、
fは0、1、2又は3であり、
gは0、1又は2であり、かつ
hは0、1又は2であり、
但し、1分子あたり基R4少なくとも2個及びSiに結合した水素原子少なくとも2個が存在する。
【0041】
オルガノポリシロキサン(C)の例は、SiO4/2単位、R3SiO1/2単位、R24SiO1/2単位及びR2HSiO1/2単位からなるそのようなオルガノポリシロキサン、いわゆるMQ樹脂であり、その際にこれらの樹脂は付加的にRSiO3/2単位及びR2SiO単位を含有することができ、並びにR24SiO1/2単位、R2SiO単位及びRHSiO単位から本質的になる線状のオルガノポリシロキサンであり、ここでR及びR4は前記の意味に等しい。
【0042】
オルガノポリシロキサン(C)は、好ましくは、25℃でそれぞれ、0.01〜500 000Pa・s、特に好ましくは0.1〜100 000Pa・sの平均粘度を有する。オルガノポリシロキサン(C)は、化学における通常の方法により製造可能である。
【0043】
脂肪族多重結合へのSiに結合した水素の付加を促進する触媒(D)として、本発明による方法の場合にも、これまでも脂肪族多重結合へのSiに結合した水素の付加を促進するために使用されることができていた同じ触媒(D)が使用されることができる。前記触媒は、好ましくは、白金金属の群からの金属又は白金金属の群からの化合物又は錯体である。そのような触媒(D)の例は、担体、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム又は活性炭上に存在していてよい金属白金及び微粒状白金、白金の化合物又は錯体、例えば白金ハロゲン化物、例えばPtCl4、H2PtCl6・6H2O、Na2PtCl4・4H2O、白金−オレフィン錯体、白金−ホスフィット錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコラート錯体、白金−エーテル錯体、白金−アルデヒド錯体、H2PtCl6・6H2O及びシクロヘキサノンの反応生成物を含め白金−ケトン錯体、白金−ビニル−シロキサン錯体、例えば検出可能な無機結合したハロゲン含量を有するか又は有しない白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラ−メチル−ジシロキサン錯体、ビス−(γ−ピコリン)白金二塩化物、トリメチレンジピリジン白金二塩化物、ジシクロペンタジエン白金二塩化物、ジメチルスルホキシドエチレン白金(II)二塩化物、シクロオクタジエン−白金二塩化物、ノルボルナジエン−白金二塩化物、γ−ピコリン−白金二塩化物、シクロペンタジエン−白金二塩化物、並びに四塩化白金とオレフィン及び第一級アミン又は第二級アミン又は第一級及び第二級アミンとの反応生成物、例えば1−オクテン中に溶解された四塩化白金とs−ブチルアミン又はアンモニウム−白金錯体との反応生成物である。
【0044】
触媒(D)は、本発明による方法の場合に、好ましくは0.5〜100質量ppmの量(100万質量部あたりの質量部)、特に好ましくは5〜50質量ppmの量で、それぞれ元素白金として計算して、かつ前記シリコーン組成物の全質量を基準として、使用される。
【0045】
成分(K)として、技術水準において知られた全てのヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、5−フェニル−4−ペンテニルヒドロペルオキシド、2−ブタノンペルオキシド(1−[(1−ヒドロペルオキシ−1−メチルプロピル)ペルオキシ]−1−メチルプロピルヒドロペルオキシド)等が使用されることができる。ヒドロペルオキシ基少なくとも1個及びペルオキシ基少なくとも1個を有する化合物、例えば2−ブタノンペルオキシドが好ましい。
【0046】
成分(L)として、技術水準において知られた全てのアセチレン系アルコールが使用されることができる。適した例は、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール又は3−メチル−1−ドデシン−3−オールである。好ましくは、成分(L)として1−エチニルシクロヘキサノールが使用される。
【0047】
前記の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(K)及び(L)に加えて、さらに別の成分(E)又は(F)が、本発明によるシリコーン組成物中に含まれていることができる。
【0048】
成分(E)、例えば(K)及び(L)とは異なる抑制剤及び安定剤は、本発明によるシリコーン組成物の加工時間、活性開始温度及び架橋速度の特定目的に合わせた調節に役立つ。これらの抑制剤及び安定剤は、付加架橋性組成物の分野で極めてよく知られている。一般に使われている抑制剤の例は、ポリメチルビニルシクロシロキサン、例えば1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルテトラシクロシロキサン、メチルビニル−SiO1/2基及び/又はR2ビニルSiO1/2末端基を有する低分子量シリコーン油、例えばジビニルテトラメチルジシロキサン、テトラビニルジメチルジシロキサン、トリアルキルシアヌラート、アルキルマレアート、例えばジアリルマレアート、ジメチルマレアート及びジエチルマレアート、アルキルフマラート、例えばジアリルフマラート及びジエチルフマラート、有機過酸化物、有機スルホキシド、有機アミン、ジアミン及びアミド、ホスファン及びホスフィット、ニトリル、トリアゾール、ジアジリジン及びオキシムである。これらの抑制剤添加剤(E)の効果は、それらの化学構造に依存しているので、濃度は個々に決定されなければならない。抑制剤及び抑制剤混合物は、前記混合物の全質量を基準として、好ましくは0.00001%〜5%、より好ましくは0.00005〜2%及び特に好ましくは0.0001〜1%の量割合で添加される。
【0049】
成分(F)は、これまでも付加架橋可能な組成物の製造に使用されてきた別の全ての添加剤である。本発明による架橋可能な組成物の活性補強充填剤(F)含量は、0〜70質量%の範囲内、好ましくは0〜50質量%である。
【0050】
本発明によるシリコーン組成物は選択的に、成分(F)を、別の添加剤として70質量%まで、好ましくは0.0001〜40質量%の割合で、含有することができる。これらの添加剤は、例えば、不活性充填剤、シロキサン(A)、(B)及び(C)とは異なる樹脂状ポリオルガノシロキサン、補強充填剤及び非補強充填剤、殺真菌剤、香気物質、レオロジー添加剤(rheologische Additive)、腐食抑制剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤及び電気的性質に影響を及ぼす薬剤、分散助剤、溶剤、接着促進剤(Haftvermittler)、顔料、染料、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤等であることができる。これらには、添加剤、例えば石英粉、ケイソウ土、粘土、白亜、リトポン、カーボンブラック、グラファイト、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、カルボン酸の金属塩、金属ダスト、金属水酸化物、繊維、例えばガラス繊維、プラスチック繊維、プラスチック粉末、金属ダスト、染料、顔料等が含まれる。
【0051】
成分(F)として本発明によるシリコーン組成物中で使用されることができる補強充填剤の例は、少なくとも50m2/gのBET表面積を有する熱分解法シリカ又は沈降ケイ酸並びにカーボンブラック及び活性炭、例えばファーネスブラック及びアセチレンブラックであり、その際に少なくとも50m2/gのBET表面積を有する熱分解法シリカ及び沈降ケイ酸が好ましい。前記のシリカ充填剤は、親水性を有していてよく、又は知られた方法により疎水化されていてよい。親水性充填剤の混入の場合に、疎水化剤の添加が必要である。
【0052】
本発明によるシリコーン組成物は、必要な場合には、液体中に溶解、分散、懸濁又は乳化されることができる。本発明による組成物は、− 特に前記成分の粘度並びに充填剤含量に応じて − 低粘稠かつ注型可能であることができ、ペースト状のコンシステンシーを有することができ、粉末状であることができ、又はまたフレキシブルで高粘稠な材料であることもでき、例えば周知のように専門家の中ではしばしばRTV−1、RTV−2、LSR及びHTVと呼ばれる組成物があてはまりうる。特に、本発明による組成物は、これらが高粘稠である場合には、グラニュールの形に加工されることができる。この場合に、個々のグラニュール粒子は、全ての成分を含有することができ、又は本発明により使用される成分は、異なるグラニュール粒子中へ別個に導入されている。架橋された本発明によるシリコーン組成物のエラストマー特性に関して、同様に、極度に軟質のシリコーンゲルで始まり、ゴム状材料を経て、ガラス状挙動を有する高度に架橋されたシリコーンまでの全ての範囲が含まれる。
【0053】
本発明によるシリコーン組成物の製造は、知られた方法により、例えば個々の成分の均一混合により行われることができる。その際に順序は任意であるが、しかしながら白金触媒(D)と、(A)、(B)、場合により(E)及び(F)の混合物との均一混合が好ましい。本発明により使用される白金触媒(D)及び場合により(C)は、その場合に固体物質として又は溶液として − 適した溶剤中に溶解されて −又はいわゆるバッチとして − 少量の(A)と、又は(A)は(E)と均一に混合されて − 導入されることができる。
【0054】
本発明により使用される成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(K)及び(L)はそれぞれ、そのような成分の個々の種類、並びにそのような成分の少なくとも2つの異なる種類の混合物であることができる。
【0055】
脂肪族多重結合へのSiに結合した水素の付加により架橋可能な本発明によるシリコーン組成物は、これまで知られたヒドロシリル化反応により架橋可能な組成物と同じ条件下で架橋されることができる。
【0056】
好ましくは、その場合に100〜220℃、特に好ましくは130〜190℃の温度、及び900〜1100hPaの圧力である。しかし、より高い又はより低い温度及び圧力も使用されることもできる。
【0057】
本発明のさらなる対象は、本発明による組成物の架橋により製造された成形体である。
【0058】
本発明によるシリコーン組成物並びにこれから製造された本発明により架橋生成物は、これまでもエラストマーへと架橋可能なオルガノポリシロキサン組成物もしくはエラストマーが使用されてきた全ての目的に使用されることができる。これらは、例えば、任意の基体のシリコーンコーティングもしくは含浸、成形品の製造、例えば射出成形法、真空押出し法、押出法、注型(Formgiessen)及び圧縮成形(Formpressen)における成形品の製造、及び型取り(Abformungen)、シール材料、包埋材料(Einbettmassen)及び注型材料(Vergussmassen)としての使用等を含む。
【0059】
本発明による架橋可能なシリコーン組成物は、容易に入手可能な出発物質を使用して単純に、ひいては経済的に製造されることができるという利点を有する。本発明による架橋可能な組成物は、これらが一成分系配合物として25℃及び周囲圧力で極めて良好な貯蔵安定性を有し、かつ高められた温度ではじめて迅速に架橋するというさらなる利点を有する。その際に、双方の成分(K)及び(L)は、意外なことに貯蔵安定性に関して相乗効果を示す。本発明によるシリコーン組成物は、これらが、二成分系配合物の場合に双方の成分の混合後に、架橋できるシリコーン材料をもたらし、それらの加工性が25℃及び周囲圧力で長い期間を越えて変わらないままであり、すなわち極端に長いポットライフを示し、かつ高められた温度ではじめて迅速に架橋するという利点を有する。
【0060】
本発明による組成物は、さらに、これらから得られた架橋されたシリコーンゴムが、傑出した透明性を有するという利点を有する。
【0061】
本発明による組成物は、さらに、ヒドロシリル化反応が、反応期間が経つにつれてゆっくりにならないという利点を有する。
【実施例】
【0062】
次に記載された例において、部及び百分率の全ての記載は、他に記載されない場合には、質量を基準とする。他に記載されない場合には、次の実施例は、包囲する雰囲気の圧力で、すなわち約1000hPaで、及び室温で、すなわち約20℃で、もしくは反応物を室温で合一する際に付加的に加熱又は冷却せずに確立する温度で、実施される。実施例の実施のためには、充填剤及び添加剤を含め前もって記載された成分(A)、(B)、(C)及び(D)の各々可能な混合物がベース混合物として使用されることができる、それというのも、ベース混合物は、測定すべき値"活性開始温度"及び"ポットライフ"への影響を有しないからである。活性開始温度は、最終値の4%で前記架橋の開始を示し、その際に測定自体は、80℃〜200℃の温度上昇(Temperaturrampe)及び10K/minの増加で実施される。ポットライフの終点で、前記材料は、もはや加工可能でなく、再可塑化はもはや不可能である。
【0063】
第1表には、1つ又はそれ以上のアセチレン系アルコール(L)と1つ又はそれ以上のヒドロペルオキシド(K)との組合せの相乗効果が示されている。添加剤、Si−H架橋剤及び触媒は、各々任意の順序で混入されることができ、その際に触媒の添加は好ましくは添加剤の添加後に行われる。前記の成分ビニルポリマー、Si−H架橋剤、充填剤から、架橋可能なベース混合物が製造され、その際に前記組成物は、関連パラメーターであるポットライフ及び活性開始温度への影響を有しないか、又は低い影響のみを有する。このベース混合物の製造のためには、前記の全ての混合比が許容される。当該実施例において、いわゆるKarstedt触媒(白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラ−メチル−ジシロキサン錯体)が使用されるが、しかしまた白金族の知られた他の全ての触媒が使用されることもできる。ヒドロペルオキシドの量の記載は、使用される溶液もしくは混合物の総和をそれぞれ基準としており、かつ次の省略形が使用される:
2−ブタノンペルオキシド: ジアセトンアルコール中50〜60%(BPO)
t−ブチルヒドロペルオキシド: デカン中5〜6M(tBuHPO)
クメンヒドロペルオキシド: 工業用80%(CHPO)
Bsp. Nr.(例番号)
Kat.(触媒)
RT(室温)
n.a.(実施せず)
【表1】

【0064】
第1表の実施例において、ベース混合物が抑制剤(アセチレン系アルコール及びヒドロペルオキシド)と混合されてから、前記白金触媒が添加される。
【0065】
第1表は、組成及び結果を示す。例10、17及び21において、抑制剤として添加されたヒドロペルオキシドが、白金触媒されたヒドロシリル化に役立ち、かつその結果、過酸化物誘導された架橋が行われることが明らかになる、それというのも、白金触媒を有しない材料は架橋しないからである。例5及び6は、抑制剤としてのヒドロペルオキシドの単独の使用の場合に、ヒドロシリル化は、アセチレン系アルコールを添加せずには、十分に抑制されないことを示す。しかしながら前記混合物にアセチレン系アルコール及びヒドロペルオキシドの組合せを添加する場合には(例2、3、4、14、15、16、18、19、20)、とりわけ室温ポットライフは、超比例的に(ueberproportional)延長されることができる。意外なことに、双方の抑制剤の組合せにより、相乗効果が観察されることができる。これらの混合物の活性開始温度は、ポットライフ(特に室温ポットライフ)と比較して中程度にのみ上昇する。2つの化合物の種類の組合せからもたらされるさらなる利点は、同じポットライフを得るために、全体として明らかにより多い量の抑制剤が混合される必要がないことである。絶縁材料用の前記材料の使用の場合に、このことは、明らかな利点である(より少なく分解生成物及び副生物を生じる)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・それぞれ少なくとも1つの化合物(A)、(B)、(D)、(K)及び(L)、
・それぞれ少なくとも1つの化合物(C)、(D)、(K)及び(L)及び
・それぞれ少なくとも1つの化合物(A)、(B)、(C)、(D);(K)及び(L)
を含む群から選択されることを特徴とする、付加架橋性シリコーン組成物、ここで、
(A)は、脂肪族炭素−炭素多重結合を有する基少なくとも2個を有する有機化合物又は有機ケイ素化合物を表し、
(B)は、Siに結合した水素原子少なくとも2個を有する有機ケイ素化合物を表し、
(C)は、脂肪族炭素−炭素多重結合を有するSiC結合した基及びSiに結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物を表し、
(D)は、白金触媒を表し、
(K)は、ヒドロペルオキシドを表し、
(L)は、アセチレン系アルコールを表す。
【請求項2】
別の成分(E)として、(K)及び(L)とは異なる、抑制剤又は安定剤又は少なくとも2つの成分(E)の混合物を、前記組成物の全質量を基準として、0.00001%〜5%の量割合で含有する、請求項1記載の付加架橋性シリコーン組成物。
【請求項3】
別の成分(F)として、補強充填剤及び非補強充填剤、分散助剤、溶剤、接着促進剤、顔料、染料、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤、殺真菌剤、香気物質、レオロジー添加剤、腐食抑制剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤及び電気的性質に影響を及ぼす薬剤を含む群から選択されるものを含有する、請求項1又は2のいずれか1項記載の付加架橋性シリコーン組成物。
【請求項4】
・それぞれ少なくとも1つの化合物(A)、(B)、(D)、(K)及び(L)、
・それぞれ少なくとも1つの化合物(C)、(D)、(K)及び(L)又は
・それぞれ少なくとも1つの化合物(A)、(B)、(C)、(D)、(K)及び(L)
を互いに混合することを特徴とする、請求項1記載の付加架橋性シリコーン組成物の製造方法。
【請求項5】
それぞれ、(E)、(F)を含む化合物の群からの付加的にさらに別の化合物を混入する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
成形体を製造するため、シリコーンコーティングのため、含浸のため、型取りを製造するため、シール用途、包埋用途及び注型用途のための、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物の使用。

【公開番号】特開2011−21189(P2011−21189A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162492(P2010−162492)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】