説明

硬化性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法及びその化合物を用いた組成物

【課題】紫外線照射によって短時間で硬化するために、作業性に関しては、従来公知の縮合型、加熱硬化型、白金付加反応型のものに比べて有利であり、かつ原料供給性と製造安定性を良好にした光硬化性と室温硬化性の両方の硬化機構を備えた硬化性オルガノポリシロキサン組成物のベースポリマーとして有用な硬化性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法、及びその化合物を含有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】分子鎖中にアルキレン結合を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサン及び/又は分子鎖中に酸素結合を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサンと、貯蔵安定性が高いヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを特定割合で、相溶化剤の存在下、触媒として2価の有機スズ化合物を用いて反応させた後、該相溶化剤を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性と室温硬化性の両方の硬化機構を備えた硬化性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法、及びその化合物を含有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサンが、有機過酸化物の存在下での加熱によって耐熱性、耐寒性、耐候性、電気特性の優れたシリコーンゴム弾性体となることはよく知られているところであるが、このオルガノポリシロキサンについては、光重合開始剤の存在下に光照射によって硬化するものも知られている。
【0003】
例えば、特公昭52−40334号公報及び特開昭60−104158号公報(特許文献1,2)には、ビニル基含有ポリシロキサンとメルカプト基含有ポリシロキサンとを含有してなり、光ラジカル付加反応によって硬化物を形成する紫外線硬化型のオルガノポリシロキサン組成物が開示されている。また、特公昭53−36515号公報及び特開昭60−215009号公報(特許文献3,4)には、アクリル基含有ポリシロキサンと増感剤とを含有してなり、光照射によって硬化物を形成する光硬化型オルガノポリシロキサン組成物が開示されている。
【0004】
また、特許第2639286号公報(特許文献5)には、末端ヒドロキシオルガノポリシロキサンと(メタ)アクリル官能性アルコキシシランを含有する、室温硬化及び紫外線で硬化する硬化性オルガノポリシロキサン組成物が開示されている。
【0005】
また、特許第2782405号公報(特許文献6)においては、分子鎖末端がアルコキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと(メタ)アクリルオキシオルガノシラノールとを反応させたオルガノポリシロキサンを用いた硬化性オルガノポリシロキサン組成物が開示されている。
【0006】
しかしながら、ビニル基含有ポリシロキサンとメルカプト基含有ポリシロキサンとを含有している前記組成物においては、メルカプト基の臭気と金属の腐食性に問題があるためにその用途が限定されるという不利がある。
【0007】
また、アクリル基含有ポリシロキサンと増感剤とを含有している前記組成物においては、ゴム状弾性体を得るために、アクリル基含有ポリシロキサンとして高分子量の線状ポリシロキサンを用いる必要がある。このために、該ポリシロキサンにおいては末端に位置するアクリル基量が相対的に非常に少なくなり、これに関連して、硬化性が低下する。また空気と接している表面部分が酸素による硬化阻害によって殆ど硬化しないという欠点もある。従って、この種の組成物は、比較的アクリル基量の多いポリシロキサンを使用してレジン状の硬化物を得るものしか実用化されておらず、ゴム状弾性体を得るものについては実用化されていないのが現状である。
【0008】
更に、末端ヒドロキシオルガノポリシロキサンと(メタ)アクリル官能性アルコキシシランを含有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物では、光照射によって硬化物を作製する際、両末端に各1個の(メタ)アクリル基変成により硬化性は乏しく、また深部硬化性が悪い欠点がある。
【0009】
また更に、分子鎖末端がアルコキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと(メタ)アクリルオキシオルガノシラノールとを反応させたオルガノポリシロキサンを用いた硬化性オルガノポリシロキサン組成物では、確かに光照射によって硬化し、ゴム物性の良好な硬化物を得ることができるが、上記オルガノポリシロキサンを得るための原料である(メタ)アクリルオキシオルガノシラノールが不安定なため、原料供給性及び製造安定性に不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭52−40334号公報
【特許文献2】特開昭60−104158号公報
【特許文献3】特公昭53−36515号公報
【特許文献4】特開昭60−215009号公報
【特許文献5】特許第2639286号公報
【特許文献6】特許第2782405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、紫外線照射によって短時間で硬化するために、作業性に関しては、従来公知の縮合型、加熱硬化型、白金付加反応型のものに比べて有利であり、かつ原料供給性と製造安定性を良好にした光硬化性と室温硬化性の両方の硬化機構を備えた硬化性オルガノポリシロキサン組成物のベースポリマーとして有用な硬化性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法、及びその化合物を含有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、分子鎖中にアルキレン結合を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサン及び/又は分子鎖中に酸素結合を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサンと、貯蔵安定性が高いヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを特定割合で、相溶化剤の存在下、触媒として2価の有機スズ化合物を用いて反応させた後、該相溶化剤を除去することで、光硬化性と室温硬化性の両方の硬化機構を備えた硬化性オルガノポリシロキサン化合物が良好に得られることを知見した。更にその化合物をベースポリマーとして用いた場合に、良好な硬化性オルガノポリシロキサン組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
従って、本発明は、下記硬化性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法及びその化合物を用いた組成物を提供する。
〔請求項1〕
(A)分子鎖中にアルキレン結合を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサン及び/又は分子鎖中に酸素原子を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサンと、
(B)下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜3の非置換もしくは置換1価炭化水素基であり、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換2価炭化水素基である。)
で表される有機化合物とを、(A)成分の加水分解性シリル基量(a)と(B)成分の水酸基量(b)のモル比で(a)/(b)が3以下の範囲内で、
(C)(A)成分と(B)成分を相溶化させる相溶化剤と、
(D)下記一般式(2)で示される2価の有機スズ化合物
SnX2 (2)
(式中、Xはそれぞれ同一又は異種のハロゲン原子、OR3基又は
【化2】


基である。R3,R4はそれぞれ炭素数1〜12の非置換又は置換1価炭化水素基であり、R3及びR4は互いに同一の基であっても異種の基であってもよい。)
を用いて反応させた後、(C)成分を除去することを特徴とする硬化性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法。
〔請求項2〕
前記(A)成分と(B)成分の反応配合比率が、(A)成分の加水分解性シリル基量(a)と(B)成分の水酸基量(b)のモル比で(a)/(b)が1〜3の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法。
〔請求項3〕
請求項1又は2記載の方法により得られた硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有してなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
〔請求項4〕
(I)請求項1又は2記載の方法により得られた硬化性オルガノポリシロキサン化合物: 100質量部、
(II)光重合開始剤: 0.01〜10質量部、
(III)硬化触媒: 0.01〜10質量部、
(IV)下記一般式(3)
54-aSiKa (3)
(式中、R5は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。Kは加水分解性基であり、aは2〜4の整数である。)
で示されるシラン又はその部分加水分解縮合物: 1〜30質量部
を含有してなる請求項3記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法によれば、原料の経時変化が少ないため、原料の供給安定性及び製造安定性が良好となる。また、本製造方法により得られる硬化性オルガノポリシロキサン化合物は、光硬化性と室温硬化性の両方の硬化機構を有するため、該化合物を含有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、紫外線照射によって短時間で硬化するとともに、大気中の湿分の存在によっても硬化するため、紫外線が届かないような深部も時間と共に硬化する。該組成物は、従来公知の縮合型、加熱硬化型、白金付加反応型のものに比べ、作業性において有利であり、シール剤、コーティング剤、ポッティング剤等の各種用途に応用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン化合物は、
(A)分子鎖中にアルキレン結合を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサン及び/又は分子鎖中に酸素原子を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサンと、
(B)下記一般式(1)
【化3】


(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜3の非置換もしくは置換1価炭化水素基であり、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換2価炭化水素基である。)
で表される有機化合物とを、(A)成分の加水分解性シリル基量(a)と(B)成分の水酸基量(b)のモル比で(a)/(b)が3以下の範囲内で、
(C)(A)成分と(B)成分を相溶化させる相溶化剤と、
(D)下記一般式(2)で示される2価の有機スズ化合物
SnX2 (2)
(式中、Xはそれぞれ同一又は異種のハロゲン原子、OR3基又は
【化4】


基である。R3,R4はそれぞれ炭素数1〜10の非置換又は置換1価炭化水素基であり、R3及びR4は互いに同一の基であっても異種の基であってもよい。)
を用いて反応させた後、(C)成分を除去することにより得られるものである。
【0016】
[(A)成分]
(A)成分の分子鎖中にアルキレン結合を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサン及び/又は分子鎖中に酸素原子を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサンは、光硬化性と室温硬化性の両方の硬化機構を備えた硬化性オルガノポリシロキサン化合物を得るためのベースオイルであり、好ましくは分子鎖両末端にアルキレン結合及び/又は酸素原子を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサンであり、特には下記一般式(4)で表されるものが好ましい。
【0017】
(R7O)3Si−Y−(R62SiO)b−R62Si−Y−Si(OR73 (4)
(式中、R6は同一又は異種の炭素数1〜10の非置換もしくは置換1価炭化水素基であり、R7は同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基であり、Yは酸素原子又は炭素数1〜12のアルキレン基である。bは1〜2,000の整数である。)
【0018】
上記式(4)中、R6は炭素数1〜10、好ましくは1〜6の非置換又は置換1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の水素原子の一部又は全部が塩素、フッ素、臭素といったハロゲン原子、シアノ基等で置換された基、例えばクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられ、これらの中でもメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。このR6は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0019】
また、R7は炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルキル基又はアルコキシアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、エトキシメチル基、2−エトキシエチル基、プロポキシメチル基、2−プロポキシエチル基、ブトキシメチル基、2−ブトキシエチル基等のアルコキシアルキル基が挙げられ、これらの中でもメチル基、エチル基が特に好ましい。このR7は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0020】
Yは酸素原子又は炭素数1〜12、好ましくは1〜6のアルキレン基であり、具体的には、酸素原子、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、シクロヘキシレン基、オクチレン基等が挙げられ、これらの中でも酸素原子、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましく、特に酸素原子、エチレン基が好ましい。このYは同一の基であっても異種の基であってもよい。
bは1〜2,000、好ましくは5〜1,000の整数である。
【0021】
式(4)で示されるポリシロキサンとして、具体的には、下記のものが挙げられる。
【化5】


(式中、bは上記と同じであり、Meはメチル基、Etはエチル基である。)
上記式(4)で示されるポリシロキサンは、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0022】
(A)成分の25℃における粘度は、5〜1,000,000mPa・s、特に50〜100,000mPa・sであることが好ましい。なお、本発明において、粘度は、回転粘度計による測定値である。
【0023】
(A)成分のポリシロキサンは、相当する水酸基を有するオルガノポリシロキサンとアルコキシ基を有するシランとを縮合反応させること、又は相当するアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル基及びアルコキシ基を有するシランとを、もしくは相当するヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンとアルケニル基及びアルコキシ基を有するシランとを、触媒存在下で付加反応させることで容易に得ることができる。
【0024】
[(B)成分]
(B)成分は、分子内に(メタ)アクリル基と水酸基を有する有機化合物であり、(A)成分と反応させることで、光硬化性と室温硬化性の両方の硬化機構を備えた硬化性オルガノポリシロキサン化合物を得るための必須原料である。(B)成分は、下記一般式(1)で示される。
【0025】
【化6】


(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜3の非置換もしくは置換1価炭化水素基であり、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換2価炭化水素基である。)
【0026】
上記式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1〜3の非置換もしくは置換1価炭化水素基であり、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基であり、水素原子、メチル基が好ましい。
【0027】
また、R2は炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜3の非置換又は置換2価炭化水素基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、シクロヘキシレン基、オクチレン基等のアルキレン基が挙げられ、これらの中でもエチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0028】
式(1)で示される有機化合物として、具体的には、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
上記式(1)で示される有機化合物は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0029】
(B)成分は、R2が2価炭化水素基であるため、温度における貯蔵安定性が良く、硬化性オルガノポリシロキサン化合物を安定して得ることができる。
【0030】
上記(A)成分と(B)成分の反応比率は、(A)成分の加水分解性シリル基量(a)と(B)成分の水酸基量(b)のモル比で(a)/(b)が3以下の範囲内で反応させるものであり、(a)/(b)が1〜3の範囲内で反応させることが好ましく、特に(a)/(b)が1〜2、即ち(A)成分の加水分解性シリル基の半分以上が(B)成分の水酸基と反応していることが好ましい。これにより、光硬化と室温硬化の両方の硬化機構を備えた硬化性オルガノポリシロキサン化合物を得ることができる。上記モル比(a)/(b)が3より大きい場合、即ち(A)成分の加水分解性シリル基量と(B)成分の水酸基量との反応率が低い状態では、光硬化する際、ゴム組成物を良好に硬化させることができず、深部硬化性が劣ったり、更には光硬化しなくなったりする。
【0031】
[(C)成分]
(C)成分の(A)成分と(B)成分を相溶化させる相溶化剤は、(A)成分と(B)成分を良好に反応させるための必須成分である。(A)成分と(B)成分は相溶しないため、(C)成分にて相溶せずに反応を行うと、得られる硬化性オルガノポリシロキサン化合物の安定性が悪くなったり、反応しない場合がある。
【0032】
(C)成分の相溶化剤の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ソルベントナフサ、工業用ガソリン等の工業用溶剤、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素溶剤、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、エチレンジクロライド、塩化メチレン、塩化フッ化メタン類等のハロゲン化炭化水素、エチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキシルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などが挙げられる。(C)成分としては、(A)成分が溶解しやすく、減圧蒸留により除去しやすい溶剤が好ましく、より好ましくは溶解度パラメーター(SP値)が小さい無極性溶剤で、かつ常圧での沸点が150℃以下の溶剤、即ちトルエン、キシレンがより好ましい。
【0033】
(C)成分の使用量は少なければ少ないほどよいが、より良好に相溶させるため(B)成分の使用質量に対し、好ましくは5〜50倍量、より好ましくは10〜30倍量とする。この範囲で使用することにより、(A)成分と(B)成分を良好に相溶させることができる。
【0034】
[(D)成分]
(D)成分である2価の有機スズ化合物は、(A)成分中の加水分解性シリル基と(B)成分中の水酸基を良好に反応させるための触媒として必須の成分である。(D)成分は、下記一般式(2)で示される。
【0035】
SnX2 (2)
(式中、Xはそれぞれ同一又は異種のハロゲン原子、OR3基又は
【化7】


基である。R3,R4はそれぞれ炭素数1〜12の非置換又は置換1価炭化水素基であり、XがOR3基及びOCOR4基である場合、R3及びR4は互いに同一の基であっても異種の基であってもよい。)
【0036】
上記式(2)中、Xはそれぞれ同種又は異種のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、OR3基又はOCOR4基である。
ここで、R3,R4はそれぞれ炭素数1〜12、好ましくは1〜10の非置換又は置換1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。R3として、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜7のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基である。また、R4としては、R3と同様なものが例示される。
【0037】
(D)成分の具体例としては、塩化スズ(II)、臭化スズ(II)、ヨウ化スズ(II)等のハロゲン化スズ化合物、ジメトキシスズ、ジエトキシスズ等のジアルキルスズ化合物、スズジブチレート、スズジラウレート、スズジオクテート等の脂肪酸スズ化合物等が例示される。
【0038】
(D)成分の使用量は、(A)成分の使用量に対し、約0.0001〜0.01質量%の使用が好ましく、より好ましくは0.001〜0.005質量%が好ましい。0.0001質量%より少ない量では(A)成分中の加水分解性シリル基と(B)成分中の水酸基を良好に反応させることが難しくなり、目的とする硬化性オルガノポリシロキサン化合物を得ることができない場合があり、0.01質量%より多くなると、得られる硬化性オルガノポリシロキサン化合物の安定性が悪くなったり、ゲル化したり、変色が起きたりするおそれがある他、コスト的にも不利となる。
【0039】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン化合物は、上記(A)成分と(B)成分とを、(C)成分の相溶化剤と(D)成分の触媒を用いて反応させた後、該(C)成分を除去することにより得るものである。
ここで、上記反応方法及び反応条件としては、上記各成分を(C)成分の相溶化剤の沸点以下の温度で混合・攪拌すればよい。
また、(C)成分の除去方法としては、特に制限されないが、蒸留等によりストリップすればよい。
【0040】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン化合物は、原料の安定性が高いため製造が容易であり、かつ安定した化合物が得られる。上記方法により、光硬化性と室温硬化性との両方の硬化機構を備えた硬化性オルガノポリシロキサン化合物を得ることができる。
【0041】
上記で得られた硬化性オルガノポリシロキサン化合物は、これをベースポリマーとする硬化性オルガノポリシロキサン組成物とすることができ、該組成物は、下記(I)〜(IV)成分を含有する。
(I)上記で得られた硬化性オルガノポリシロキサン化合物、
(II)光重合開始剤、
(III)硬化触媒、
(IV)下記一般式(3)
54-aSiKa (3)
(式中、R5は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。Kは加水分解性基であり、aは2〜4の整数である。)
で示されるシラン又はその部分加水分解縮合物。
【0042】
[(II)成分]
(II)成分の光重合開始剤は、(I)成分である硬化性オルガノポリシロキサン化合物中の(メタ)アクリル基の光重合を促進させるためのものである。これは当業界でよく知られているもの、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン、ジエチルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕2−モルフォリノ−1−プロパノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン等を使用することができる。
【0043】
この光重合開始剤は、(I)成分の硬化性オルガノポリシロキサン化合物100質量部に対し、0.01〜10質量部、特に0.1〜5質量部の量で使用される。0.01質量部未満とするとその添加効果がないため、光による硬化性が悪くなり、10質量部より多くするとこれから得られるシリコーンゴムが強度の低いものとなって硬化物の物理特性が悪くなる他、コスト的にも不利となる。
【0044】
[(III)成分]
(III)成分の硬化触媒は、(I)成分である硬化性オルガノポリシロキサン化合物中の加水分解性基部の硬化を促進させるために使用されるものである。これは当業界でよく知られている湿分の存在下で硬化するシリコーン樹脂組成物に使用されているものと同様の成分の使用が好ましい。
【0045】
(III)成分としては、スズ系触媒、チタン系触媒が例示される。スズ系触媒の具体例としては、ナフテン酸スズ、カプリル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレート、ジフェニルスズジアセテート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジブチルスズベンジルマレート等を挙げることができる。また、チタン系触媒の具体例としては、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラビス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタンイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステルやチタンキレート化合物などを挙げることができる。
なお、本発明において、チタン系触媒を選択した場合、縮合硬化において問題は起こらないが、光硬化させた場合、チタン原子は紫外線を吸収するため、外観不良が起こる可能性があるため、スズ系触媒を使用することがより好ましい。
【0046】
これらの硬化触媒の使用量はごく微量の触媒量でよい。例えば(I)成分の硬化性オルガノポリシロキサン化合物100質量部に対し、0.01〜10質量部、特に0.1〜5質量部の範囲で使用される。
【0047】
[(IV)成分]
(IV)成分の下記一般式(3)で示されるシラン又はその部分加水分解縮合物は、本発明の組成物において架橋剤として作用するものである。
【0048】
54-aSiKa (3)
(式中、R5は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。Kは同一又は異種の加水分解性基であり、aは2〜4の整数である。)
【0049】
上記式(3)中、R5は炭素数1〜12、好ましくは1〜6の非置換又は置換の1価炭化水素基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素等のハロゲン原子で置換された基、例えばトリフルオロプロピル基などが挙げられ、これらの中でもメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基が好ましい。
【0050】
また、Kは加水分解性基である。その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;イソプロペノキシ基;1−エチル−2−メチルビニルオキシム基等のアルケニルオキシム基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基等のケトオキシム基;アセトキシ基、プロピオノキシ基、ブチロイロキシ基、ベンゾイルオキシム基等のアシロキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基;ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等のアミノキシ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基などが例示される。これらの中でも加水分解する際に発生する副生成物がアルコール化合物であるものが好ましく、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である。このKは同一の基であっても異種の基であってもよい。
nは2〜4の整数、好ましくは3である。
【0051】
この(IV)成分は、上記式(3)で示されるシラン、このシランの部分加水分解縮合で得られたシロキサンのいずれでもよい。また、このシロキサンは直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、これらは1種類に限定されず、その2種以上を使用してもよい。
【0052】
この(IV)成分の配合量は、(I)成分の硬化性オルガノポリシロキサン化合物100質量部に対し、1〜30質量部が好ましく、より好ましくは3〜15質量部である。(IV)成分が1質量部未満では、この組成物の製造時あるいは保存中にこれがゲル化を起したり、この組成物から得られる弾性体が目的とする物性を示さなくなり、逆に30質量部より多くすると、この組成物の硬化時における収縮率が大きくなり、この硬化物の弾性も低くなる。
【0053】
[その他の配合剤]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上述した(1)〜(4)成分以外にも、その硬化性が損なわれない範囲において、それ自体公知の種々の添加剤を配合することができる。例えば、硬化物であるシリコーンゴム弾性体の機械的性質を向上させるために、必要に応じて光硬化を阻害しないフュームドシリカ系の充填剤を添加することも可能であり、更にはその物性を調節する目的において、チクソトロピー付与剤、耐熱性向上剤、着色剤などを添加することもできる。
【0054】
また、接着性を付与させる目的として、公知であるシランカップリング剤を添加し、接着性を付与させることも可能である。シランカップリング剤としては、(メタ)アクリルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤等が例示され、具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
【0055】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上記の各成分を均一に混合することによって得られ、例えば、紫外線照射すると1〜20秒という短時間で容易に硬化してシリコーンゴムとなる。更に大気中の湿分の存在により硬化し、例えば紫外線が届かないような深部も時間と共に硬化する。かかる本発明の組成物は、例えば、シール剤、コーティング剤、ポッティング剤等の用途に極めて有用である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、Meはメチル基である。
【0057】
[実施例1]
温度計、冷却管、滴下ロート、攪拌装置を備えた1リットルの4つ口丸底フラスコに(A)粘度が1,000mPa・sの両末端がトリメトキシシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン350質量部(OMe基0.105モル)と、(B)アクリル酸2−ヒドロキシエチル10.2質量部(OH基0.088モル、(A)成分のOMe基/(B)成分のOH基=1.19)、(C)トルエン180質量部((B)成分に対し、約17.6質量倍)を入れて混合した。その後40℃に加熱したのち、これに(D)スズジオクテート0.35質量部((A)成分に対し0.1質量%)を添加し、40℃にて約4時間攪拌しながら反応させた。その後、40℃/10mmHgの条件下で(C)成分のトルエン、並びに副生成物であるメタノールをストリップし、目的とする硬化性オルガノポリシロキサン化合物(1)を得た(以下、ポリシロキサン(1)と呼ぶ)。
【0058】
[実施例2]
温度計、冷却管、滴下ロート、攪拌装置を備えた1リットルの4つ口丸底フラスコに(A)粘度が1,000mPa・sの両末端がアルキレン結合を介したトリメトキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン350質量部(OMe基0.105モル/100g)と、(B)アクリル酸2−ヒドロキシエチル10.2質量部(OH基0.088モル、(A)成分のOMe基/(B)成分のOH基=1.19)、(C)トルエン180質量部((B)成分に対し、約17.6質量倍)を入れて混合した。その後40℃に加熱したのち、これに(D)スズジオクテート0.35質量部((A)成分に対し0.1質量%)を添加し、40℃にて約4時間攪拌しながら反応させた。その後、40℃/10mmHgの条件下で(C)成分のトルエン、並びに副生成物であるメタノールをストリップし、目的とする硬化性オルガノポリシロキサン化合物(2)を得た(以下、ポリシロキサン(2)と呼ぶ)。
【0059】
[実施例3]
温度計、冷却管、滴下ロート、攪拌装置を備えた1リットルの4つ口丸底フラスコに(A)粘度が1,000mPa・sの両末端がトリメトキシシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン350質量部(OMe基0.105モル/100g)と、(B)メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル13.7質量部(OH基0.105モル、(A)成分のOMe基/(B)成分のOH基=1.00)、(C)トルエン180質量部((B)成分に対し、約17.6質量倍)を入れて混合した。その後40℃に加熱したのち、これに(D)スズジオクテート0.35質量部((A)成分に対し0.1質量%)を添加し、40℃にて約4時間攪拌しながら反応させた。その後、40℃/10mmHgの条件下で(C)成分のトルエン、並びに副生成物であるメタノールをストリップし、目的とする硬化性オルガノポリシロキサン化合物(3)を得た(以下、ポリシロキサン(3)と呼ぶ)。
【0060】
[実施例4]
温度計、冷却管、滴下ロート、攪拌装置を備えた1リットルの4つ口丸底フラスコに(A)粘度が1,000mPa・sの両末端がトリメトキシシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン350質量部(OMe基0.105モル)と、(B)40℃にて2週間放置したアクリル酸2−ヒドロキシエチル10.2質量部(OH基0.088モル、(A)成分のOMe基/(B)成分のOH基=1.19)、(C)トルエン180質量部((B)成分に対し、約17.6質量倍)を入れて混合した。その後40℃に加熱したのち、これに(D)スズジオクテート0.35質量部((A)成分に対し0.1質量%)を添加し、40℃にて約4時間攪拌しながら反応させた。その後、40℃/10mmHgの条件下で(C)成分のトルエン、並びに副生成物であるメタノールをストリップし、目的とする硬化性オルガノポリシロキサン化合物(4)を得た(以下、ポリシロキサン(4)と呼ぶ)。
【0061】
[比較例1]
実施例1において、(B)アクリル酸2−ヒドロキシエチルの添加量を3.8質量部(OH基0.033モル、(A)成分のOMe基/(B)成分のOH基=3.18)とした他は、実施例1と同様の添加量及び手順を行い、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(5)を得た(以下、ポリシロキサン(5)と呼ぶ)。
【0062】
[比較例2]
実施例1において、(C)トルエンを除いた以外は、実施例1と同様の添加量及び手順を行い、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(6)を得た(以下、ポリシロキサン(6)と呼ぶ)。
【0063】
[比較例3]
実施例1において、(D)スズジオクテートの代わりに4価のスズ触媒であるジブチルスズジラウレート0.35質量部((A)成分に対し0.001質量%)を添加した以外は、実施例1と同様の添加量及び手順を行い、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(7)を得た(以下、ポリシロキサン(7)と呼ぶ)。
【0064】
[比較例4]
実施例4において、(B)40℃にて4週間放置したアクリル酸2−ヒドロキシエチルの代わりに、40℃にて4週間放置したアクリルオキシメチルシラノール14.1質量部(OH基0.088モル、(A)成分のOMe基/(B)成分のOH基=1.19)を添加した以外は、実施例4と同様の添加量及び手順を行い、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(8)を得た(以下、ポリシロキサン(8)と呼ぶ)。
【0065】
得られたポリシロキサン(1)〜(8)において、外観、粘度、不揮発分、紫外線照射後の性状及び硬さを下記に示す評価方法により測定した。これらの結果を表1に示す。
〈外観〉
得られたポリシロキサンの色調外観を目視にて確認した。
〈粘度〉
粘度は25℃において回転粘度計にて測定した。
〈不揮発分〉
不揮発分は105℃/3時間の条件に曝した後の質量変化から算出した。
【0066】
〈紫外線照射後の性状〉
得られたポリシロキサン100質量部に対し、ジエトキシアセトフェノン(光重合開始剤)を2質量部加えて混合した後、紫外線照射装置・ASE−20(日本電池(株)製商品名)を用いて、紫外線を1m/minのスピードで3回照射(照射エネルギー量は約1,500mJ/cm2)し、このものの性状を確認した。
〈紫外線照射後の硬さ〉
上記紫外線照射後の性状で得られたものについて、JIS K 6249に準じて硬さの測定を行った。
【0067】
【表1】

【0068】
また、実施例1及び3により得られた硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する組成物を以下の手順にて調製した。
【0069】
[実施例5]
(I)実施例1により得られたポリシロキサン(1)100質量部に対し、(II)ジエトキシアセトフェノン(光重合開始剤)2質量部、(III)ジブチルスズジオクトエート0.2質量部、及び(IV)メチルトリメトキシシラン5質量部を添加し、均一に混合してシロキサン組成物(a)を調製した。
【0070】
[実施例6]
(I)実施例3により得られたポリシロキサン(3)100質量部に対し、(II)ジエトキシアセトフェノン(光重合開始剤)2質量部、(III)ジブチルスズジオクトエート0.2質量部、及び(IV)メチルトリメトキシシラン5質量部を添加し、均一に混合してシロキサン組成物(b)を調製した。
【0071】
[実施例7]
(I)実施例1により得られたポリシロキサン(1)100質量部に、補強用充填剤としてヘキサメチルジシラザンで表面処理したBET法による比表面積が130m2/gである煙霧質シリカを5質量部加え、均一に混合した後、(II)ジエトキシアセトフェノン(光重合開始剤)2質量部、(III)ジブチルスズジオクトエート0.2質量部、及び(IV)メチルトリメトキシシラン5質量部を添加し、均一に混合してシロキサン組成物(c)を調製した。
【0072】
[比較例5]
実施例5において、(IV)メチルトリメトキシシランを除いた他は、実施例5と同様の添加量及び手順を行い、シロキサン組成物(d)を調製した。
【0073】
得られたシロキサン組成物(a)〜(d)に、紫外線照射装置・ASE−20(日本電池(株)製商品名)を用いて、紫外線を1m/minのスピードで3回照射(照射エネルギー量は約1,500mJ/cm2)して硬化させ(UV硬化)、硬化30分後にゴム物性をJIS K 6249に準拠して測定した。また、UV硬化後、更に23±2℃,50±5%RHの条件で7日間硬化を行い(RTV硬化)、同様にして硬化物のゴム物性を測定した。更に、UV硬化を行わずに、RTV硬化(上記と同条件)のみを行い、同様にして硬化物のゴム物性(硬さ、切断時伸び、引張強さ)をJIS K 6249に準じて測定した。また、上記の各硬化物を、70℃で7日間保存した時のゴム物性(硬さ、切断時伸び、引張強さ)を同様に測定した。これらの結果を表2に示す。
【0074】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖中にアルキレン結合を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサン及び/又は分子鎖中に酸素原子を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサンと、
(B)下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜3の非置換もしくは置換1価炭化水素基であり、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換2価炭化水素基である。)
で表される有機化合物とを、(A)成分の加水分解性シリル基量(a)と(B)成分の水酸基量(b)のモル比で(a)/(b)が3以下の範囲内で、
(C)(A)成分と(B)成分を相溶化させる相溶化剤と、
(D)下記一般式(2)で示される2価の有機スズ化合物
SnX2 (2)
(式中、Xはそれぞれ同一又は異種のハロゲン原子、OR3基又は
【化2】


基である。R3,R4はそれぞれ炭素数1〜12の非置換又は置換1価炭化水素基であり、R3及びR4は互いに同一の基であっても異種の基であってもよい。)
を用いて反応させた後、(C)成分を除去することを特徴とする硬化性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記(A)成分と(B)成分の反応配合比率が、(A)成分の加水分解性シリル基量(a)と(B)成分の水酸基量(b)のモル比で(a)/(b)が1〜3の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法により得られた硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有してなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
(I)請求項1又は2記載の方法により得られた硬化性オルガノポリシロキサン化合物: 100質量部、
(II)光重合開始剤: 0.01〜10質量部、
(III)硬化触媒: 0.01〜10質量部、
(IV)下記一般式(3)
54-aSiKa (3)
(式中、R5は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。Kは加水分解性基であり、aは2〜4の整数である。)
で示されるシラン又はその部分加水分解縮合物: 1〜30質量部
を含有してなる請求項3記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

【公開番号】特開2012−193286(P2012−193286A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58752(P2011−58752)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】