説明

硬化性オルガノポリシロキサン組成物

【課題】 貯蔵中の経時変化による硬化物の硬さの低下が抑制され、加熱により、各種基材に対して優れた接着性を有する硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】 (A)平均単位式:RaSiO(4-a)/2(式中、Rは一価炭化水素基であり、aは1.0〜2.3の数である。)で示され、一分子中に少なくとも平均1.5個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)一分子中に少なくとも平均1.5個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、(C)ヒドロシリル化反応用触媒、および(D)有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、および有機錫化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機金属化合物と熱可塑性樹脂からなり、該有機金属化合物を含有している熱可塑性樹脂微粒子から少なくともなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関し、詳しくは、該組成物の貯蔵中の経時変化による硬化物の硬さの低下が抑制され、加熱により、各種基材に対して優れた接着性を有する硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロシリル化反応により硬化する硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、一般に接着性が乏しいため、エポキシ化合物と有機アルミニウム化合物を含有する組成物(特許文献1参照)、ケイ素原子結合の不飽和基とアルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物とアルミニウム化合物またはジルコニウム化合物を含有する組成物(特許文献2参照)、またジルコニウム(IV)化合物とビス(トリアルコキシシリル)アルカン、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するジシランおよびエポキシ基含有アルコキシシランもしくはシロキサンからなる群より選ばれる有機ケイ素化合物を含有する組成物(特許文献3参照)等が知られている。
【0003】
しかし、このような硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、貯蔵中に、有機金属化合物によるケイ素原子結合水素原子と水あるいはシラノール基の縮合反応、あるいはその他の反応による経時変化が起こり、該組成物により形成される硬化物の硬さが当初設定の硬さより低下してしまうという問題があった。
【0004】
一方、縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物の縮合反応用触媒として、有機樹脂微粒子中に有機金属化合物を含有している縮合反応用触媒が知られている(特許文献4、5参照)。しかし、このような縮合反応用触媒をヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加すれば、貯蔵中の経時変化が抑制され、ひいては該組成物により形成される硬化物の硬さの低下が抑制されることは知られていなかった。
【特許文献1】特開昭60−101146号公報
【特許文献2】特開昭62−240361号公報
【特許文献3】特開平4−222871号公報
【特許文献4】特開昭59−49260号公報
【特許文献5】特開平4−255758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の貯蔵中の経時変化による硬化物の硬さの低下が抑制され、加熱により、各種基材に対して優れた接着性を有する硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、
(A)平均単位式:RaSiO(4-a)/2(式中、Rは置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、aは1.0〜2.3の数である。)で示され、一分子中に少なくとも平均1.5個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン 100重量部、
(B)一分子中に少なくとも平均1.5個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.05〜20モルとなる量}、
(C)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物のヒドロシリル化反応による架橋を促進する量)、および
(D)有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、および有機錫化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機金属化合物と熱可塑性樹脂からなり、該有機金属化合物を含有している熱可塑性樹脂微粒子 0.001〜50重量部
から少なくともなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、該組成物の貯蔵中の経時変化による硬化物の硬さの低下が抑制され、加熱により、各種基材に対して優れた接着性を有する硬化物を形成するという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を詳細に説明する。
(A)成分は本組成物の主剤であり、平均単位式:RaSiO(4-a)/2で示され、一分子中に少なくとも平均1.5個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。上式中のRは置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、この一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。但し、一分子中の少なくとも平均1.5個のRは前記のようなアルケニル基である。このアルケニル基としては、ビニル基、ヘキセニル基が好ましい。また、このアルケニル基以外のケイ素原子結合の基としては、メチル基、フェニル基が好ましい。上式中のaは1.0〜2.3の数である。このような(A)成分の分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝状が例示される。(A)成分は、これらの分子構造を有するオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物であってもよい。また、(A)成分の25℃における粘度は特に限定されないが、50〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、100〜500,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0009】
(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基封鎖され、他の分子鎖片末端がジメチルビニルシロキシ基封鎖されたメチルビニルポリシロキサン、分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基封鎖され、他の分子鎖片末端がジメチルビニルシロキシ基封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、式:R3SiO1/2で示される単位と式:SiO4/2で示される単位からなるオルガノポリシロキサン、式:RSiO3/2で示される単位からなるオルガノポリシロキサン、式:R2SiO2/2で示される単位と式:RSiO3/2で示される単位からなるオルガノポリシロキサン、式:R2SiO2/2で示される単位と式:RSiO3/2で示される単位と式:SiO4/2で示される単位からなるオルガノポリシロキサン、およびこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が例示される。なお、上式中のRは置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、前記と同様の基である。
【0010】
また、(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、上記で例示した一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと次に例示する一分子中にアルケニル基を有しないか、または有していても2個未満であるオルガノポリシロキサンとを混合して、一分子中のアルケニル基の数を少なくとも平均1.5個としたオルガノポリシロキサン混合物を用いることもできる。このような一分子中にアルケニル基を有しないか、または有していても2個未満であるオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖片末端がジメチルビニルシロキシ基封鎖され、他の分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖片末端がジメチルビニルシロキシ基封鎖され、他の分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基封鎖されたメチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基封鎖され、分子鎖側鎖にビニル基を1個有するジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサンが例示される。
【0011】
(B)成分は本組成物の架橋剤であり、一分子中に少なくとも平均1.5個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。特に、このケイ素原子結合水素原子は、一分子中に少なくとも平均2個であることが好ましい。このケイ素原子結合水素原子の結合位置は特に限定されず、例えば、分子鎖末端、分子鎖側鎖、分子鎖末端と分子鎖側鎖が挙げられる。この水素原子以外のケイ素原子結合の基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等のアルケニル基を除く置換もしくは非置換の一価炭化水素基、さらには、トリメトキシシリルエチル基、メチルジメトキシシリルエチル基、トリエトキシシリルエチル基、トリメトキシシリルプロピル基等のアルコキシシリルアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;グリシドキシプロピル基、グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基が例示される。このような(B)成分の分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝状が例示される。(B)成分はこれらの分子構造を有するオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物であってもよい。また、(B)成分の25℃における粘度は特に限定されないが、1〜500,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、1〜1,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0012】
(B)成分のオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、式:R'3SiO1/2で示される単位と式:SiO4/2で示される単位からなるオルガノポリシロキサン、式:R'SiO3/2で示される単位からなるオルガノポリシロキサン、式:R'2SiO2/2で示される単位と式:R'SiO3/2で示される単位からなるオルガノポリシロキサン、式:R'2SiO2/2で示される単位と式:R'SiO3/2で示される単位と式:SiO4/2で示される単位からなるオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチル(トリメトキシシリルエチル)シロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチル(トリメトキシシリルエチル)シロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチル(トリメトキシシリルエチル)シロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチル(トリメトキシシリルエチル)シロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチル(トリエトキシシリルエチル)シロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチル(トリエトキシシリルエチル)シロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチル(トリメトキシシリルエチル)シロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチル(トリエトキシシリルエチル)シロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサン共重合体、およびこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が例示される。上式中のR'はアルケニル基を除く置換もしくは非置換の一価炭化水素基または水素原子であり、この一価炭化水素基としては、前記のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはハロゲン化アルキル基が例示される。特に、本組成物により形成される硬化物の機械的特性、特に、伸びが優れることから、(B)成分は、分子鎖両末端にのみケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンとの混合物であることが好ましい。
【0013】
(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.05〜20モルの範囲内となる量であり、好ましくは、0.1〜20モルの範囲内となる量であり、特に好ましくは、0.1〜10モルの範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、組成物が十分に硬化しなくなる傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えると、組成物が硬化途上で発泡したりして、該組成物により形成される硬化物の機械的特性が低下する傾向があるからである。
【0014】
(C)成分は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応による本組成物の架橋を促進するための触媒である。このような(C)成分としては、白金黒、白金担持アルミナ粉末、白金担持シリカ粉末、白金担持カーボン粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体等のヒドロシリル化反応用触媒、さらには、これらのヒドロシリル化反応用触媒と熱可塑性樹脂からなり、該熱可塑性樹脂の微粒子中に該ヒドロシリル化反応用触媒を含有しているヒドロシリル化反応用触媒が例示される。この熱可塑性有機樹脂としては、ヒドロシリル化反応による本組成物の架橋を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、メチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、またはシリコーン樹脂であることが好ましい。この熱可塑性樹脂の軟化点は特に限定されないが、40〜200℃の範囲内であることが好ましく、さらには、40〜150℃の範囲内であることが好ましく、特には、40〜100℃の範囲内であることが好ましい。これは、熱可塑性樹脂の軟化点が上記範囲の下限未満であると、組成物を低温で調製したり貯蔵しなければならず、一方、上記範囲の上限を超えると、比較的低温で硬化させることが困難となるからである。この熱可塑性樹脂微粒子からなるヒドロシリル化反応用触媒の製造方法は、例えば、特開昭64−45468号公報(米国特許第4,766,176号明細書)により公知である。
【0015】
(C)成分の含有量は、本組成物のヒドロシリル化反応による架橋を促進する量であれば特に限定されないが、(A)成分と(B)成分の合計量に対して、(C)成分中の触媒金属が重量単位で0.1〜10,000ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、組成物が十分に硬化しなくなる傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えても、組成物の硬化は著しく促進されないからである。
【0016】
(D)成分は、本組成物により形成される硬化物に接着性を付与するための成分であり、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、および有機錫化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機金属化合物と熱可塑性樹脂からなり、該有機金属化合物を含有している熱可塑性樹脂微粒子である。(D)成分の構造は特に限定されず、(D)成分として、熱可塑性樹脂のシェルと有機金属化合物のコアからなる微粒子、熱可塑性樹脂のコアの表面を有機金属化合物で被覆し、その有機金属化合物の表面を熱可塑性樹脂で被覆している微粒子等の熱可塑性樹脂中に有機金属化合物を内包している微粒子、あるいは熱可塑性樹脂中に有機金属化合物を分散している微粒子が例示される。このような(D)成分の平均粒子径は特に限定されないが、0.01〜500μmの範囲内であることが好ましく、さらには、0.01〜200μmの範囲内であることが好ましく、特には、0.01〜100μmの範囲内であることが好ましい。これは、この平均粒子径が上記範囲の下限未満であると、得られる熱可塑性樹脂粒子自体が凝集しやすく、組成物中に分散しにくくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、組成物を加熱した際の有機金属化合物の分散性が低下し、該組成物により形成される硬化物に十分な接着性を付与することができなくなるからである。
【0017】
(D)成分中の有機チタン化合物としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン酸エステル、ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物が挙げられ、この有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムテトラプロピレート、ジルコニウムテトラブチレート等の有機ジルコニウムエステル;ジルコニウムジアセテート、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)、トリブトキシジルコニウムアセチルアセトネート、ジブトキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、トリブトキシジルコニウムアセトアセテート、ジブトキシジルコニウムアセチルアセトネート(エチルアセトアセテート)等の有機ジルコニウムキレート化合物が挙げられる。また、(D)成分中の有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリ(sec−ブチレート)、モノ(sec−ブトキシ)アルミニウムジイソプロピレート等の有機アルミニウムエステル;ジイソプロポキシアルミニウム(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等の有機アルミニウムキレート化合物が挙げられる。また、(D)成分中の有機錫化合物としては、例えば、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ブチル錫−2−エチルヘキソエート等の有機錫化合物;ナフテン酸錫、オレイン酸錫、ブチル酸錫等の有機カルボン酸錫塩が挙げられる。(D)成分中の有機金属化合物としては、これらの化合物を一種または二種以上併用することができる。特に、(D)成分中の有機金属化合物は金属キレート化合物であることが好ましい。
【0018】
(D)成分中の有機金属化合物の含有量は特に限定されないが、1〜99.9重量%の範囲内であることが好ましく、さらには、2〜90重量%の範囲内であることが好ましく、特には、5〜90重量%の範囲内であることが好ましい。これは、有機金属化合物の含有量が上記範囲の下限未満であると、十分な接着性を得るためには熱可塑性樹脂微粒子を組成物中に多量に配合しなければならないため、該組成物により形成される硬化物の機械的特性が低下するからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、有機金属化合物を熱可塑性樹脂中に含有することが困難となるからである。
【0019】
(D)成分中の熱可塑性有機樹脂は、ヒドロシリル化反応による本組成物の架橋を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、メチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、またはシリコーン樹脂であることが好ましい。この熱可塑性樹脂の軟化点は特に限定されないが、40〜200℃の範囲内であることが好ましく、さらには、40〜150℃の範囲内であることが好ましく、特には、40〜100℃の範囲内であることが好ましい。これは、熱可塑性樹脂の軟化点が上記範囲の下限未満であると、組成物を低温で調製したり貯蔵しなければならず、一方、上記範囲の上限を超えると、比較的低温で硬化させて、各種基材に対して良好な接着性を得ることが困難となるからである。
【0020】
(D)成分の製造方法は特に限定されないが、例えば、従来公知の界面重合法やin−situ重合法等の化学的方法;コアセルベーション法や液中乾燥法等の物理化学的方法;スプレードライニング法等の物理・機械的方法によることが好ましい。(D)成分の製造は、いずれの方法によってもよいが、特に、広範囲の熱可塑性樹脂を用いることができ、また、熱可塑性樹脂微粒子を比較的容易に得ることができることから、スプレードライニング法によることが好ましい。
【0021】
(D)成分の含有量は、(A)成分100重量部に対して0.001〜50重量部の範囲内であり、好ましくは、0.01〜50重量部の範囲内であり、さらに好ましくは、0.01〜20重量部の範囲内であり、特に好ましくは、0.1〜20重量部の範囲内である。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、組成物の接着性が低下するためであり、一方、上記範囲の上限を超えると、組成物により形成される硬化物の機械的特性が低下したりするためである
【0022】
本組成物は、上記(A)成分〜(D)成分から少なくともなるが、その他任意の成分として、さらに、(E)ケイ素原子結合アルコキシ基および/またはエポキシ基を含有し、ケイ素原子結合水素原子を有さないケイ素化合物を含有してもよい。(E)成分中のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基が好ましい。また、(E)成分中のエポキシ基としては、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基が例示される。(E)成分は、ケイ素原子結合アルコキシ基および/またはエポキシ基を含有し、ケイ素原子結合水素原子を有さないものであれば、特に限定されるものではなく、ケイ素原子結合の基がアルコキシ基のみであるアルキルシリケート、あるいはケイ素原子結合の基がアルコキシ基とエポキシ基のみであるエポキシ基含有アルコキシシランであってもよい。また、(E)成分がアルコキシ基またはエポキシ基以外のケイ素原子結合の基を有する場合には、このような基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基、さらには、3−メタクリロキシプロピル基等のアクリロキシアルキル基が例示される。特に、この基はアルケニル基であることが好ましい。
【0023】
(E)成分の有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、アルキルシリケートが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーあるいはアルキルシリケートの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物またはシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、式:
【化1】

(式中、j、k、およびpは正数である。)
で示されるシロキサン化合物、式:
【化2】

(式中、j、k、p、およびqは正数である。)
で示されるシロキサン化合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。(E)成分は低粘度の液状であることが好ましく、その25℃における粘度は限定されないが、1〜500mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0024】
(E)成分の含有量は特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して0.01〜30重量部の範囲内であることが好ましく、さらには、0.1〜30重量部の範囲内であることが好ましく、特には、0.1〜20重量部の範囲内であることが好ましい。これは、(E)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、組成物の接着性の向上が見られなくなり、一方、上記範囲の上限を超えると、組成物により形成される硬化物の機械的特性が低下したりするからである。
【0025】
また、本組成物には、その他任意の成分として、本組成物のヒドロシリル化反応を調整するために(F)反応抑制剤を含有してもよい。この(F)成分としては、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、2−エチニルイソプロパノール、2−エチニルブタン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレン系アルコール;トリメチル(3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オキシ)シラン、メチルビニルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、((1,1−ジメチル−2−プロピニル)オキシ)トリメチルシラン等のシリル化アセチレン系アルコール;ジアリルマレート、ジメチルマレート、ジエチルフマレート、ジアリルフマレート、ビス(メトキシイソプロピル)マレート等の不飽和カルボン酸エステル;2−イソブチル−1−ブテン−3−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3−メチル−3−ヘキセン−1−イン、1−エチニルシクロヘキセン、3−エチル−3−ブテン−1−イン、3−フェニル−3−ブテン−1−イン等の共役エン−イン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有環状シロキサンが例示される。(F)成分の含有量は特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して0.001〜5重量部の範囲内であることが好ましい。
【0026】
また、本組成物には、その他任意の成分として、本組成物により形成される硬化物の機械的強度を向上させるために無機質充填剤を含有してもよい。この無機質充填剤としては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック、アルミナ、石英粉末、およびこれらの無機質充填剤をオルガノアルコキシシラン、オルガノクロロシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により表面処理してなる無機質充填剤が例示される。本組成物において、この無機質充填剤の含有量は特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して100重量部未満であることが好ましく、特に、0.1〜20重量部の範囲内であることが好ましい。
【0027】
本組成物は加熱により硬化が進行するが、各種基材に対して良好に接着するためには、(D)成分中の熱可塑性樹脂の軟化点以上に加熱することが必要である。このような本組成物の硬化により形成される硬化物の性状としては、エラストマー状であることが好ましく、特に、ゲル状、ゴム状であることが好ましい。
【実施例】
【0028】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の粘度は25℃において測定した値である。また、硬化性オルガノポリシロキサン組成物により形成される硬化物の接着強度は、JIS K 6850に規定の引張せん断接着強さ試験方法に準じて測定した。
【0029】
[参考例1]
6gの塩化白金酸水溶液(白金の含有量=33重量%)と16gの1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンを35gのイソプロピルアルコールに溶解した。この溶液に10gの重炭酸ソーダを加えて懸濁状態で攪拌しながら70〜80℃で30分間反応させた。その後、イソプロピルアルコールと水を圧力50mmHg、温度45℃の条件下で減圧留去し、固形分をろ過し、白金の含有量が8.5重量%で、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンが配位した白金錯体触媒の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液を調製した。
【0030】
[参考例2]
332gのフェニルトリクロロシラン、53gのジメチルジクロロシランおよび110gのジフェニルジクロロシランを150gのトルエンで希釈した溶液を、430gのトルエンと142gのメチルエチルケトンと114gの水からなる液中に滴下して加水分解した。この反応混合物を水洗して塩化水素を除去してから有機層を分離し、さらに加熱してメチルエチルケトンを除去した。その後、0.2gの水酸化カリウムを加えて加熱し、発生する水を留去した後、酢酸で中和して水洗を繰り返した。次いで、溶媒を乾固して熱可塑性シリコーン樹脂を得た。この熱可塑性シリコーン樹脂のガラス転移点は65℃、軟化点は85℃であった。
【0031】
[参考例3]
ガラス製の攪拌機付容器に参考例2で調製した熱可塑性シリコーン樹脂900gとトルエン500gとジクロロメタン4600gを投入し均一に混合した。次いで、参考例1で調製した1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンが配位した白金錯体触媒の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液44.4gを投入して、混合した後、得られた溶液を2流体ノズルを使って、窒素ガスを熱気流にしたスプレードライヤー槽(アシザワ・ニトロ・アトマイザー株式会社製)内に連続して噴霧した。ここで、窒素ガスの熱気流温度はスプレードライヤーの入り口で95℃であり、スプレードライヤーの出口で45℃であり、熱気流速度は1.3m3/分であった。1時間の運転後でバッグフィルターによって450gのヒドロシリル化反応触媒含有熱可塑性シリコーン樹脂微粒子を捕集した。この微粒子の平均粒子径は1.1μmであり、白金の含有量は0.4重量%であった。
【0032】
[参考例4]
ガラス製の攪拌機付容器に、参考例2で調製した熱可塑性シリコーン樹脂50gとトルエン50gとジクロロメタン500gを投入し均一に混合した。次いで、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)50gを投入し、混合した後、得られたスラリーを2流体ノズルを使って、窒素ガスを熱気流にしたスプレードライヤー槽(アシザワ・ニトロ・アトマイザー株式会社製)内に連続して噴霧した。ここで、窒素ガスの熱気流温度はスプレードライヤーの入り口で95℃であり、スプレードライヤーの出口で45℃であり、熱気流速度は1.3m3/分であった。10分間の運転後でバッグフィルターによって70gのジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)含有熱可塑性シリコーン樹脂微粒子を捕集した。この微粒子の平均粒子径は2μmであり、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)の含有量は50重量%であった。
【0033】
[参考例5]
参考例4において、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)50gを10gとした以外は参考例4と同様にして、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)含有熱可塑性シリコーン樹脂微粒子を調製した。ここで、窒素ガスの熱気流温度はスプレードライヤーの入り口で95℃であり、スプレードライヤーの出口で45℃であり、熱気流速度は1.3m3/分であった。5分間の運転後でバッグフィルターによって40gのジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)含有熱可塑性シリコーン樹脂微粒子を捕集した。この微粒子の平均粒子径は2μmであり、この微粒子中のジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)の含有量は10重量%であった。
【0034】
[実施例1]
粘度約2,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン47重量部、粘度約10,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン49重量部、およびヘキサメチルジシラザンで表面が疎水化処理された比表面積約200m2/gのシリカ微粉末16重量部を均一に混合した後、平均分子式:
【化3】

で示されるオルガノポリシロキサン2.3重量部(上記ジメチルポリシロキサンの合計中のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1.5モルとなる量)、参考例2で調製したヒドロシリル化反応用触媒を含有する熱可塑性シリコーン樹脂微粒子0.37重量部、参考例4で調製したジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)含有熱可塑性シリコーン樹脂微粒子0.88重量部、および2−フェニル−3−ブチン−2−オ−ル0.018重量部を均一に混合して硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0035】
この組成物を調製直後にポリフェニレンサルファイド(以下、PPS)製の2枚のテストピースに厚みが1mmとになるよう挟み込み、110℃のオーブン中で30分間加熱して硬化させ、2枚のテストピースがゴム状硬化物を介して一体化した試験体を作製した。次いで、この試験体を引張試験機にかけ、その引張せん断接着強さを測定した。また、破壊面を観察し、このゴム状硬化物が凝集破壊している面積の割合を測定した。さらに、この調製直後の組成物を110℃のオーブン中で30分間加熱して硬化させ、得られたゴム状硬化物の硬さをJIS K 6253に規定のタイプEデュロメータを用いて測定した。また、この組成物を調製後、25℃で4日間放置した後、上記と同様の条件で硬化させ、得られたゴム状硬化物の硬さを測定した。これらの結果を表1に示した。
【0036】
[実施例2]
実施例1において、参考例4で調製したジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)含有熱可塑性シリコーン樹脂微粒子の代わりに参考例5で調製したジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)含有熱可塑性シリコーン樹脂微粒子を2.2重量部添加した以外は実施例1と同様にして硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。調製直後の組成物について、実施例1と同様にして、引張せん断接着強さ、凝集破壊率、およびゴム状硬化物の硬さをそれぞれ測定した。また、この組成物を、調製後、25℃で4日間放置した後、上記と同様の条件で硬化させ、得られたゴム状の硬化物の硬さを測定した。これらの結果を表1に示した。
【0037】
[比較例1]
実施例1において、参考例4で調製したジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)含有熱可塑性シリコーン樹脂微粒子を添加しない以外は実施例1と同様にして硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。調製直後の組成物について、実施例1と同様にして、引張せん断接着強さ、凝集破壊率、およびゴム状硬化物の硬さをそれぞれ測定した。また、この組成物を、調製後、25℃で4日間放置した後、上記と同様の条件で硬化させ、得られたゴム状硬化物の硬さを測定した。これらの結果を表1に示した。
【0038】
[比較例2]
実施例1において、参考例4で調製したジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)含有熱可塑性シリコーン樹脂微粒子の代わりにジルコニウムアセチルアセトネートを0.44重量部添加した以外は実施例1と同様にして硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。調製直後の組成物について、実施例1と同様にして、引張せん断接着強さ、凝集破壊率、およびゴム状硬化物の硬さをそれぞれ測定した。また、この組成物を、調製後、25℃で4日間放置した後、上記と同様の条件で硬化させ、得られたゴム状硬化物の硬さを測定した。これらの結果を表1に示した。
【0039】
[比較例3]
実施例1において、参考例4で調製したジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)含有熱可塑性シリコーン樹脂微粒子の代わりにジルコニウムアセチルアセトネートを0.22重量部添加した以外は実施例1と同様にして硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。調製直後の組成物について、実施例1と同様にして、引張せん断接着強さ、凝集破壊率、およびゴム状硬化物の硬さをそれぞれ測定した。また、この組成物を、調製後、25℃で4日間放置した後、上記と同様の条件で硬化させ、得られたゴム状硬化物の硬さを測定した。これらの結果を表1に示した。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、各種基材に対して優れた接着性を有することから、自動車用途の電子機器のケースのシール剤、電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均単位式:RaSiO(4-a)/2(式中、Rは置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、aは1.0〜2.3の数である。)で示され、一分子中に少なくとも平均1.5個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン 100重量部、
(B)一分子中に少なくとも平均1.5個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.05〜20モルとなる量}、
(C)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物のヒドロシリル化反応による架橋を促進する量)、および
(D)有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、および有機錫化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機金属化合物と熱可塑性樹脂からなり、該有機金属化合物を含有している熱可塑性樹脂微粒子 0.001〜50重量部
から少なくともなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(D)成分が、平均粒子径0.01〜500μmの熱可塑性樹脂微粒子であることを特徴とする、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
(D)成分中の有機金属化合物が金属キレート化合物であることを特徴とする、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
(D)成分中の有機金属化合物の含有量が1〜99.9重量%であることを特徴とする、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
(D)成分中の熱可塑性樹脂が、メチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、またはシリコーン樹脂であることを特徴とする、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
(D)成分中の熱可塑性樹脂が、軟化点40〜200℃の熱可塑性樹脂であることを特徴とする、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
(C)成分が、ヒドロシリル化反応用触媒と熱可塑性樹脂からなり、該熱可塑性樹脂の微粒子中に該ヒドロシリル化反応用触媒を含有しているヒドロシリル化反応用触媒であることを特徴とする、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項8】
(C)成分中の熱可塑性樹脂が、メチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、またはシリコーン樹脂であることを特徴とする、請求項7記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項9】
(C)成分中の熱可塑性樹脂が、軟化点40〜200℃の熱可塑性樹脂であることを特徴とする、請求項7記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項10】
さらに、(E)ケイ素原子結合アルコキシ基および/またはエポキシ基を含有し、ケイ素原子結合水素原子を有さないケイ素化合物を、(A)成分100重量部に対して0.01〜30重量部含有することを特徴とする、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項11】
さらに、(F)反応抑制剤を、(A)成分100重量部に対して0.001〜5重量部含有することを特徴とする、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

【公開番号】特開2006−2093(P2006−2093A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181741(P2004−181741)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】