説明

硬化性コーティング組成物

硬化すると、実質上透明であり、落書きおよびスカッフィングなどのマーキングおよび微粒子の堆積に対する耐性を示す、硬化性コーティング組成物に関する。特に、本発明の組成物は、硬化すると、インク組成物の吸収および/または濡れを防止する保護コーティングを表面に与える。本発明の組成物は離型剤としても使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化すると、実質上透明で、落書きやスカッフィングなどのマーキング、および微粒子の堆積を防止する、硬化性コーティング組成物に関する。特に、本発明の組成物は、硬化すると、表面に保護コーティングを与えて、インク組成物の吸収および/または濡れを防止する。本発明の組成物は、離型剤として使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
落書きとは、建物の構造物などの表面上の望ましくないマーキングを意味するものとみなされる。一般に、これは望ましくない絵、言葉、および線画を指す。このようなマーキングは、通常、スプレー塗料などのペンキ、マジックインク、または他のインクで書かれる。ペンキは落書きの最もありふれた材料であり、特にエナメル、エポキシ、ラッカー、ウレタンなどの油性ペンキである。しかし、望ましくないマーキングは、とりわけグリース、クレヨン、口紅など、様々な他の材料によって作られることがある。
【0003】
落書きは、今日の社会において非常に重大な問題である。落書きは、芸術の一形態というよりむしろ公共物の破壊行為であると考えられ、公共の場および私的な場所における腹立たしい目障りなものである。落書きは、私有財産の価値を下げ、顧客をビジネスから遠ざける。また、しばしば、とりわけ学校、電車およびバスとその駅、公衆便所、公園の構造物、橋、トンネルなど、公共の建物および施設の外観を損なわせる。
【0004】
多くの従来のクリーニング法が、落書きを処理するために使用されてきた。これらの方法は、一般に、落書きにより外観が損なわれてから、その表面をきれいにするものである。かかるクリーニング法には、様々な類似の手順の中でもとりわけサンドブラスト、研磨、高圧洗浄、および化学処理などが含まれる。落書きを除去するために開発されたクリーニング組成物の例は、米国特許第5,024,780号(Leys)に開示されている。
【0005】
しかし、これらのクリーニング法は、コストが高く、時間がかかる。クリーニングまたは処理した表面はしばしば、過激な汚れ落としまたは化学薬品により悪化する。その結果、高いコストをかけて、表面を修復し、塗り直さなければならない。さらに化学処理手順には、しばしば、不快な、環境上有害な化学薬品が必要であり、これは人が接触すると危険をもたらす。
【0006】
したがって、落書きがその表面に書かれる前に施すことができ、望ましくないマーキングから表面を保護する組成物を開発することが望ましい、過去に開発された保護コーティング組成物には、表面塗料の一部として塗布されるものが含まれている。しかし、これらの塗料コーティングには、落書き除去剤により損傷を受けるという問題がある。開発された他の保護コーティングには、ペンキの上にまたは表面に直接塗布される組成物が含まれている。かかるコーティング組成物の例は、米国特許第5,387,434号(Black)および第5,773,091号(Perlman)に開示されている。
【0007】
Blackの特許に開示されている保護コーティングは、組成物、ケイ酸ナトリウム、ロジン、ゴム、および/またはそれらの組合せを含む水性ワックスを含んでいる。落書きのついたこれらのコーティングを表面から取り除くために、水圧洗浄を使用することができる。Perlmanの特許は、改善されたワックスベースの組成物である保護コーティングを開示している。Perlmanの特許はまた、加熱、加圧水洗浄、有機溶剤を使ったクリーニングなど、改善されたワックスベースのコーティングをクリーニングするための方法を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、広範な種類の表面上で周囲条件で硬化して、とりわけインク組成物が、透過したり、または連続被膜を形成することができず、したがって容易に拭き取られるフィルムコーティングを与える、耐マーキング性組成物の必要性に対処するものである。さらに、本発明は、その組成物で被覆された表面に微粒子が堆積する傾向を低減させるような組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の組成物は、硬化性組成物であり、硬化すると、表面に耐マーキング特性を付与し、同様に実質上透明である既知のコーティングよりずっと落書きを除去しやすくする。
【0010】
本発明の組成物はまた、この組成物で被覆された表面に微粒子の堆積する傾向を低減させる。
【0011】
本発明の一態様において、本発明の組成物は(水分への曝露などによって)硬化可能であり、官能化シロキサン(水酸基末端のもの)と;多官能性シラン、アミノ官能性シラン、エノキシ官能性シラン、シラザン、およびそれらの組合せから選択された少なくとも1種の架橋剤と;任意成分として、キャリアとを含む。周囲温度で湿分硬化すると、かかる組成物で被覆された表面に付けられた落書きのマーキングは、容易に除去できる。
【0012】
本発明のもう1つの態様は、硬化後、表面に耐マーキング特性を与える方法に関する。この方法は、落書きマーキングまたはスカッフィング傷を阻止するために表面に本発明の組成物のフィルムコーティングを施す段階と、フィルムコーティングを周囲温度で湿気に曝して、この組成物を硬化させる段階とを含む。
【0013】
本発明のさらなる態様は、耐微粒子堆積特性を表面に付与する方法に関するものである。この方法は、硬化後その上に粒子状物質が堆積するのを防止するために、表面に本発明の組成物のフィルムコーティングを施す段階と、フィルムコーティングを周囲温度で湿気に曝してその組成物を硬化させる段階とを含む。
【0014】
本発明のさらなる態様は、本発明の組成物を離型剤として使用する方法に関するものである。この方法は、型の表面に本発明の組成物のフィルムコーティングを施す段階と、そのフィルムコーティングを周囲温度で湿気に曝して、その組成物を硬化させる段階とを含む。
【0015】
本発明のさらなる態様は、本発明の組成物を調製する方法に関する。官能化シロキサンを架橋剤と、場合によってはキャリア中で混合して合わせ、それによって本発明の組成物を形成する段階を含む。
【0016】
本発明の組成物は、硬化すると、耐マーキング性および耐微粒子堆積性の他に、以下の利益および利点、すなわち高い保光性、および基材表面においてクリヤであるまたは見えない(すなわち硬化すると実質上透明である)ことの1つまたは複数を与える。本発明の組成物はまた、最も滑らかな表面での使用に適しており、室温で硬化が速く(30分未満)、半永久的であり、紫外線および外気に対して安定で、一液型であり(最終使用者による混合が不要)、表面張力が低い[したがって、広範な種類の基材(通常コーティングを施すのが難しいポリオレフィンさえも)での使用に適している]。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、硬化性組成物を対象とし、この組成物は、硬化後実質上透明であり、落書きやスカッフィングなどのマーキングを付けにくく、ホコリおよび汚れの蓄積を抑制し、それにより硬化性組成物が塗布された基材表面にそれらが堆積するのを防止する。こうした組成物で被覆された表面に付けられた落書きやスカッフィングは、拭き取りにより、または類似する他の従来の手段により取り除くことができる。
【0018】
本組成物は、周囲温度で湿気に曝すことによって硬化してフィルムコーティングを形成し、それによって耐マーキング特性および/または耐微粒子堆積特性を表面に付与する。この組成物はまた、離型剤としても有用である。
【0019】
本明細書では、「硬化する(cure)」または「硬化している(curing)」という用語は、材料における状態、条件および/または構造の変化を指し、必ずというわけではないが、通常、時間、温度、湿気、放射、かかる材料における硬化触媒または硬化促進剤の存在および量など、少なくとも1つの変数によって引き起こされる。この用語は部分的および完全な硬化を含んでいる。本発明の組成物が硬化する機構としては、シリコーンの化学的性質に関して、付加硬化(ヒドロシリル反応などとして)、縮合硬化(この場合、シラノール、シラザン、エノキシ、アルコキシ、アセトキシなどの基の架橋が生じる)、開環硬化、UV硬化(シリレン反応などとして)、およびもちろんそれらの組合せが含まれる。
【0020】
本発明の組成物は、広義には、官能化シロキサンと架橋剤と、以下の1つまたは複数の任意選択の成分、すなわち触媒、キャリア、フィラー、可塑剤、カラーインジケータ、および界面活性剤と共に含む。
【0021】
硬化機構が縮合硬化、付加硬化、またはUV硬化であれ、基本ポリマーは以下の構造を有する分枝または直鎖シロキサンおよび/または官能化シロキサンでよい。
【0022】
【化1】

【0023】
式中、繰り返し単位の数n、はこの組成物の分子量および粘度を決定するときにある役割を果たす。R、R、R、R、R、およびRは、同じでも異なってもよく、シロキサン、アルキル、アリル、アリール、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシル、水素、メルカプト、ハロ、およびシアノの各基でよく、nは0〜約100,000である。PおよびPは、同じでも異なってもよく、アルキル、アリル、ヒドロキシル、水素、アミノ、アセトキシ、アルコキシ、エノキシ、およびオキシムでよい。ヘテロ原子によるポリマー鎖への割込みも、本発明の範囲内にある。
【0024】
縮合硬化反応のための架橋剤としては、少なくとも2つの反応性官能基を有する環式/直鎖/分枝シリコーンオリゴマーなどの官能化シランが挙げられる。この反応性官能基としては、シラザン、シラノール、アルコキシ、アセトキシ、アミノ、オキシミノ、アミド、およびエノキシ基、またはそれらの組合せが挙げられる。付加硬化反応の場合、官能基としては、アリル、アルキル、ヒドリド基、またはそれらの組合せが挙げられる。UV硬化反応の場合、官能基としてはアリル、アルキル、メルカプト、(メタ)アクリロキシの各基、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0025】
本発明の組成物は、縮合反応などにより、硬化プロセスを加速または促進するための触媒を含んでよい。こうした場合、触媒は、有機スズ、チタン化合物、強ルイス塩基から選択してよい。一般に、この触媒は0〜約0.5%(w/w)で存在する。しかし、この濃度は、選択された特定の成分、所望の硬化機構、および所望の硬化速度に応じて変わりうる。
【0026】
本組成物のためのキャリアが必要な場合は、それを含めてよい。こうした場合、キャリアは、有機溶媒(8〜12個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素および8〜12個の炭素原子を含む芳香族炭化水素など)、低分子量のシロキサン類(2〜6個のケイ素原子を含むシロキサンや3〜5個のケイ素原子を含む環式シロキサンなど)、水、エアゾール噴射剤(塩素化過フッ化炭化水素でも、そうでないもの、例えばプロパンなどでもよい)および超臨界二酸化炭素から選択してよい。さらに、本発明の組成物を調製するために、低VOC(揮発性有機化合物)溶剤を使用してよい。低VOC組成は、600g/L未満の揮発性有機溶媒を含む。キャリアは、例えば約10%〜90%(w/w)の量で本組成物中に存在する。キャリアは、約60%〜約85%(w/w)の量で存在していることが望ましい。
【0027】
コーティングの耐久性を高めるなどの目的で、フィラーを含めてよい。適切なフィラーとしては、処理シリカなどのシリカ、クレイ、MQレジン(当技術分野で知られている)、および酸化チタンが挙げられる。
【0028】
望むなら、ある程度の弾性率を付与するために、可塑剤も含んでよい。適切な可塑剤としては、不活性なオリゴマーまたはポリマー化合物が挙げられ、かかる化合物は、上述の架橋性ベースポリマーと相溶性があることが望ましい。好ましくは、これらの可塑剤は架橋したベースポリマーとの相溶性が大きくなく、したがってその可塑剤の一部が、硬化したコーティングの表面に移動できる。こうした可塑剤としては、例えばポリジアルキルシロキサン類、分枝ポリジアルキルシロキサン類、ポリフッ化ジアルキルシロキサン類、および有機官能性ポリアルキルシロキサン類が挙げられる。
【0029】
組成物の着色が望ましい場合、顔料、染料、トレースUV染料などの着色剤を添加してよい。
【0030】
表面の濡れおよびフィルム形成の性質を改変する必要がある場合、界面活性剤も望ましい。界面活性剤は、もちろん特定の用途で求められる物理的特性の個々のセットにより異なるが、イオン性および非イオン性界面活性剤から選択できる。
【0031】
電荷ディスペンサーも、処理された表面の静電荷を除去して、ホコリなどの粒子状物質または望ましくない物体が表面に引き寄せられないようにするのに有用なことがある。
【0032】
付加硬化反応性組成物(湿分硬化性組成物など)触媒は、白金、チタン、スズ、ジルコニウム、およびもちろんそれらの組合せの有機化合物であるが、上記の任意選択の成分として含めることができる。チタン酸テトライソプロポキシおよびチタン酸テトラブトキシが特に望ましい。米国特許第4,111,890号を参照のこと。その開示を参照により本明細書に特に組み込む。かかる有機白金触媒の例としては、白金ジビニル錯体[米国ペンシルバニア州のUCTおよびGelestから市販されている]が挙げられる。
【0033】
UV硬化反応性組成物の場合、触媒はUV開始剤であるが、上記の任意選択の成分として含まれてよい。かかるUV開始剤の例としては、「IRGACUREおよび「DAROCUR」の商標名で市販されている光開始剤、特に「IRGACURE」184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、369(2−ベンジル2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン)、500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケントンとベンゾフェノンとの組合せ)、651(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)。1700(ビス(2−6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの組合せ)および819[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド]、ならびに「DAROCUR」1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン)および4265(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンとの組合せ)ならびに可視光(青色)光開始剤、すなわちdl−カンファーキノンおよび「IRGACURE」784DCが挙げられる。もちろん、こうした材料の組合せも、本発明で使用してよい。
【0034】
開環硬化反応性組成物の場合、上記の任意選択の成分を含んでよく、触媒は酸性または塩基性である。かかる酸性または塩基性触媒の例としては、それぞれ硫酸および水酸化カリウムが挙げられる。
【0035】
硬化性ベースポリマーは、開環反応により、シラシクロプロパン[RSi(CHCH)]またはシラシクロブタン[RSi(CHCHCH)]などの化学物質を用いて形成してよい。このとき、RとRは同じでも、異なっていてもよく、H、アルキル基およびアリル基から選択される。
【0036】
開環硬化のための架橋剤の反応性官能基としては、ハロゲン化物(塩化物など)、アルコキシ(メトキシなど)、シアノ、シラノールまたはそれらの組合せが挙げられる。
【0037】
ベースとなる硬化性成分のための特に望ましい官能化シロキサンとしては、適当な架橋剤と結合してフィルムコーティングを形成できる、通常のどんな水酸基末端シロキサンまたはポリシロキサンも挙げられる。かかる水酸基末端ポリシロキサンは、以下の一般式で表される。
【0038】
【化2】

【0039】
式中、R、R、R、R、RおよびRは、同じでも、異なっていてもよく、望ましくは、C1−6のアルキルであり、nは1〜約30,000amuである。酸素以外のヘテロ原子によるポリマー鎖への割り込みもまた、本発明の範囲に含まれる。
【0040】
構造Iを形成するのに使用してよい特定の水酸基末端ポリシロキサンの例は、構造式IIで表される、水酸基末端ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)である。
【0041】
【化3】

【0042】
繰り返し単位の数「n」は、組成物の分子量および粘度を決定する上である役割を果たす。したがって、nは、1から約30,000amuの整数である。本発明の組成物に組み込まれるPDMSは、分子量が4,000amu以上であることが望ましい。しかし、PDMSの分子量は、表面に塗布されるフィルムコーティングの所望の厚みおよび/または粘度に応じて変わることがある。一般に、本発明の組成物の粘度は、通常2000cps未満であり、望ましくは500cps未満である。
【0043】
PDMSなどの官能化シロキサンは、例えば、最終組成物中に約0.001〜約50重量%(w/w)存在してよい。PDMSは約0.1%〜約3%(w/w)の量で存在することが望ましい。
【0044】
本発明の組成物はまた、上記のように、ポリシロキサンおよび/またはそれ自体と、架橋結合を生成するための架橋剤ならびに表面の材料と相互作用する組成物を含む。架橋結合とは、例えば、元素、基、または化合物を含む架橋および交叉架橋により、ポリマーの2つ以上の鎖が結合することである。架橋剤は、官能性シロキサンおよび表面の官能性残基と化学的に相互作用できる化学基として働く。架橋結合を行う基の相互作用により、落書き防止コーティングと表面との化学結合が促進され、したがってそのコーティングは特定の環境においてより長持ちし得る。架橋反応は、本発明の組成物が湿気に曝されるとすぐ開始する。ある種の架橋剤が、水酸基末端ポリシロキサンとあいまって、組成物が周囲条件下で30分未満内で硬化して、高光沢性をもたらす実質的な透明性を保持しながら、落書き防止またはスカッフィング防止、および/または微粒子堆積防止特性を示す硬化特性をもたらすことを、思いがけなく発見した。
【0045】
シロキサンと組み合わせると、硬化したとき実質上透明になる、耐マーキング性および/または耐微粒子堆積性のコーティングを生成するのが分かった適切な架橋剤としては、アミノ官能性シラン、水素化官能性シランやエノキシ官能性シランなどいくつかの多官能性シラン、シラザン、およびそれらの組合せが挙げられる。これらの架橋剤は、適当なポリシロキサンと混合すると、硬化特性をもたらし、マーキングおよび微粒子堆積を抑制するとともに優れた保光性をもたらす実質的な透明性をもたらす組成物を生成する。
【0046】
水素化ケイ素化合物クラス中の有機官能性シランは、有機ポリマーが無機質の基材と結合するのを助ける能力を持つことで知られている。本発明の組成物は、アミノおよび/またはエノキシ官能性シランを含むことができる。本発明に従って使用できるアミノ官能性シランの例は、構造式IIIで表される。
【0047】
【化4】

【0048】
他の適切なアミノ官能性シランとしては、CHSi(NHCHなど、ジまたはトリアミノ官能性シランが挙げられる。
【0049】
本発明の組成物に使用できるエノキシ官能性シランの例は、構造式IVで表される。
【0050】
【化5】

【0051】
アミノおよび/またはエノキシ官能性シランを本発明の組成物に組み込むと、水酸基末端ポリシロキサンと一緒にしたとき、優れた落書き防止、スカッフィング防止、および微粒子堆積防止特性をもたらすことが分かった。他のいくつかの官能性シラン、特にエトキシおよびエポキシ官能性シランは、本発明の組成物中で単独で使用する場合、有用な落書き防止および/または離型特性を示さない。しかし、エトキシおよびエポキシ官能性シランは、他の構造中に、例えばラダー構造のシラザン中の官能基として組み込むと、有用となることがある。
【0052】
本発明の組成物に組み込むのに望ましいシラザンとしては、環式シラザンおよびラダー構造のシラザンが挙げられる。シラザン化合物は、交互にケイ素と窒素原子を含む。環式シラザンは、1つまたは複数の閉じた環を含む。環式シラザンの例は、下記の一般式Vで表される。
【0053】
【化6】

【0054】
特に望ましい1種の環式シラザンは、構造式VIで表されるトリスシクロシラザンである。
【0055】
【化7】

【0056】
本発明によるシラザンとして、ラダー構造シラザンも望ましい。ラダー構造シラザンは、はしご状の形に架橋する直鎖を含む。構造式VIIは、本発明の組成物中で使用するのに適したラダー構造シラザンを表している。しかし、他の類似のラダー構造シラザンも、これらの組成物中で使用するのに適することがある。式VIIは下記により表される。
【0057】
【化8】

【0058】
式中、各Rは、それぞれ独立にメチルまたはエチルであり、yは化合物の約20〜約80%であり、zは化合物の約0〜40%であり、nは1〜約500である。
【0059】
式VIIのラダー構造シラザンは、構造式VIIIで表される直鎖シラザン化合物から誘導される。
【0060】
【化9】

【0061】
式中、各Rは、それぞれ独立にメチルまたはエチルであり、xは化合物の約20〜約50%であり、yは化合物の約20〜約80%であり、zは化合物の約0〜40%である。
【0062】
アンモニアを添加すると、式VIIのはしご形構造が形成される。特に、塩化アンモニウムが、ラダー構造のin situ形成を引き起こす反応の副生物として発生する。式VIIIの構造の「x」部分は架橋し、一方、「y」部分および「z」部分は直鎖のままである。in situで形成されるので、本発明の組成物に使用されるラダー構造シラザンは、式VIIとVIIIの混合物である。
【0063】
望ましい架橋剤は、例えば約0.1〜約50%(w/w)の量で、本発明の組成物中に存在してよい。架橋剤は、約1〜約15%(w/w)の量で存在していることが望ましい。
【0064】
本発明の組成物の所望の特性を損なわなければ、通常のどんな触媒も使用してよい。使用してよい。適切な触媒としては、有機チタン誘導体、有機スズなど、通常の有機金属触媒が挙げられる。
【0065】
これらの成分を併せ含む特に望ましい本発明の組成物は、約0.01〜約5%のトリスシクロシラザン、約0.005〜約1%の水酸基末端ポリシロキサン、および残余の約99%までのキャリア、つまり溶剤を含む。
【0066】
他の望ましい本発明の組成物は、約0.5〜約5%のラダー構造シラザン、約5〜約30%のアミノ官能性シラン、約0.01〜約5%の水酸基末端ポリシロキサンを含み、残余は溶剤を含むキャリアである。他の望ましい組成物を表3に示す。
【0067】
本発明の組成物は、表面に塗布すると、(望ましくは、周囲温度で30分未満内に)湿気で硬化して、落書きやスカッフィングなどのマーキングおよび微粒子の堆積に耐性があるとともに実質上透明でかつ光沢を保持する、フィルムコーティングを形成する。硬化を起こさせるのに熱を加える必要はない。
【0068】
これらのフィルムコーティングは、表面に塗布したとき、2.5ミクロン未満の厚みを有することが望ましい。表面に塗布された組成物の美的効果を高めるために、この組成物は、アルコキシシランプレポリマー樹脂、および/またはMQ樹脂(かかる樹脂は当技術分野で知られている)とも呼ばれるアルコキシ官能性プレポリマー樹脂を含んでよい。かかる樹脂類は、塗りやすさおよび/またはフィルムコーティングの表面仕上げを向上させて、光沢のある外見をもたらす。バスや電車のサイドパネルをコーティングするなど、様々な用途には、よりつやのある仕上りが望ましいことがある。一般に、約0%〜約5%(w/w)の濃度で十分である。
【0069】
本発明は、耐マーキング特性および/または耐微粒子堆積特性を表面に付与する方法も対象とする。こうした方法によれば、表面の落書きマーキングあるいは他のスカッフィングマーキング、または表面における微粒子の堆積を防止するために、本発明の組成物を表面に塗布する。
【0070】
表面上にフィルムコーティングを形成するために、所望の表面に塗り付けるまたは噴霧することにより、または他の適切な手段により、本発明の組成物を塗布することができる。通常単一の塗膜で十分であるが、望みに応じて、追加の塗膜を塗布してよい。例えば、より粗い表面に数層の塗膜を施すことが望ましいことがある。望ましくは、多層の塗膜が施される場合、塗布と塗布の間に、硬化を可能にすることができる。
【0071】
本発明の組成物のための他の塗布方法としては、噴霧(スプレーまたはポンプ駆動などによる)、塗付け、はけ塗り、浸せき塗装、およびロール塗りが挙げられる。
【0072】
表面への塗布後、フィルム状の本発明の組成物を周囲温度で湿気に曝して、組成物を硬化させる。普通、硬化は30分未満内に起こり、またそれが望ましい。熱を加えることが可能であるが、ときには5分〜20分未満という短い時間で硬化させる必要はない。しかし、上記のようないくつかの適当な触媒を添加すると、硬化時間はさらに短くなることがある。一旦硬化すると、表面に付けられた落書きまたは他のスカッフィングマーキングは、拭き取りや他の通常の手段で容易に除去でき、表面上への微粒子の堆積は劇的に減少することが分かる。
【0073】
本発明の組成物は、離型剤として使用される場合、離型組成物が型から部品に移行することにより離型した部品を汚染することなく何度も離型が可能な、耐久性の高い仕上り状態に、望ましく硬化できる。さらに、いくつかの実施形態では、コーティングが、最初の光沢値から測定可能な低下がなく、何度も離型が可能な非常に光沢のある仕上り状態に望ましく硬化できる。例えば、本発明の組成物は、60度の光沢計で測定して、少なくとも80の光沢値を有する仕上り状態に硬化させることができる。何度も、例えば5回離型した後、この光沢値はほとんど同じであった。さらに、この仕上りは、5回の離型の後、離型剤の組成物が部品に移行しない程度に十分な耐久性を維持している。
【0074】
したがって、本発明は、耐マーキング特性を表面に付与する方法を提供する。この方法の段階は、表面のマーキングを抑えるために本発明の組成物のフィルムコーティングを表面に施す段階と、この組成物を硬化させるのに適した条件にこのフィルムコーティングを曝す段階とを含む。
【0075】
本発明はまた、微粒子を寄せ付けない特性を表面に付与する方法を提供する。この方法の段階は、表面に微粒子が堆積するのを防止するために、本発明の組成物のフィルムコーティングをその表面に施す段階と、このフィルムコーティングを組成物を硬化させるのに適した条件に曝す段階とを含む。
【0076】
もちろん、本発明の組成物の反応生成物を含むマーキング防止フィルム、および本発明の組成物の反応生成物を含む組成の微粒子堆積フィルムも、それぞれ本発明よって提供される。
【0077】
本発明はまた、硬化した離型用組成物で被覆された型の中で成形された部品の光沢値を少なくとも80にまで高める方法も提供する。この方法の段階は、離型剤組成物のフィルムコーティングを型の内面に施す段階と、組成物を硬化させるのに適した条件にこのフィルムコーティングを曝す段階とを含む。
【0078】
本発明の組成物の消費者市場での機会としては、離型剤の他に、社会基盤(道路標識、スクールバス、郵便ポスト、橋、およびトンネルの表面への適用など)、自動車補修部品市場型市場での用途(ホイールおよびホイールウェル、計器盤およびトリム、フロントガラス、横窓、車台など);建築(浴室や洗面所などの住宅内部、ロッカー、窓、および住宅の外観を維持するための住宅の外装);エンジン室;整備、修理、操作(「MRO」)型の市場での用途(塗装ブースおよび選択的マスキング)、自動車アセンブリ(全体的な清浄化のためのエンジン室のすべてのむき出しの構成部品用、清浄化および熱管理のための励振器/トナー/ABSリング、センサ、およびラジエータ用、ならびに関連装置(スクールバスや通勤バスのようなバス、電車/地下鉄の車両、トラック、トレーラ、ボート用など);ポリエステルおよびエポキシ製部品、および他の複合材料と共に使用する離型剤;ならびに塗料配合用添加物が挙げられる。
【0079】
その他の最終使用者のための自動車補修部品市場での機会としては、ブレーキ時のダストから保護するためのホイールリムのコーティング、およびフロントガラスのコーティングなどのための塗付けタイプが挙げられる。
【実施例】
【0080】
<実施例1>
実施例1では、本発明の組成物を作製するために使用する成分の配合について述べる。表1は、組成物中の下記の各成分、つまりトリスシクロシラザン、水酸基末端ポリジメチルシロキサン、および溶媒としての8〜12個の炭素原子を含む芳香族および脂肪族炭化水素の混合物の重量パーセントを表している。
【0081】
【表1】

【0082】
組成物内に水分が浸入するのを防ぐために、この生成物を窒素条件下で、炭化水素溶剤中でよく混ぜる。生成した組成物(試料No.1)を塗付けまたは噴霧のいずれかによって表面に塗布して、フィルムコーティングを形成した。このコーティングを約5〜20分間周囲温度で大気中の湿気に曝して、硬化させた。
【0083】
硬化した組成物および未硬化の組成物のFTIRスペクトルをそれぞれ図1aおよび図1bに示す。図1bの約950cm−1のピークは、シラザン官能基の存在を示している。硬化したフィルムのFTIR(図1aで、約800cm−1、1020cm−1、1100cm−1、および1260cm−1にピークがある)は、すべてのシラザン官能基が消費されていることを示している。硬化したコーティングの性質は架橋したポリシロキサンである。
【0084】
部品の光沢を測定するために、BYKガードナーの60度マイクログロスメーターを使用した。ポリエステルゲルの塗布表面から作製された清浄な基材は、平均光沢値が91.8である。試料No.1は、塗布された表面上で平均光沢値85.0のつやのある仕上りを示したが、この値は、わずか6.8単位、すなわち7.4%の光沢値の低下となっている。
【0085】
機械的除去による落書きの消しやすさを評価するために、引っかき試験およびテープ試験と呼ばれる試験を設計した。
【0086】
引っかき試験およびテープ試験は、平滑面に本発明の組成物を塗布することにより実施した。本発明者らの試験で使用した2種の表面は、灰色またはオレンジ色のゲルでコーティングした板、およびイムロンを塗布したスチールパネルであった。塗付けまたは噴霧によって各組成物を平滑面に1回コーティングし、放置して硬化させた。そのコーティングの上にスプレー塗料を塗布し、12時間を超える時間放置して乾燥させた。
【0087】
引っかき試験では、塗面を引っかくために、木製アプリケータを使用し、落書きの除去の評価は、目視検査により確定した。
【0088】
テープ試験では、スコッチ商標のテープを塗面に使用した。両方の方法の消しやすさを、1〜6段階の尺度でランク付けした。この尺度では、1=ペンキ0%除去、2=5%未満除去、3=6〜49%除去、4=50〜94%除去、5=95%以上除去、6=100%除去である。
【0089】
どの試験が使用されたかにかからわず、落書き防止の等級は、測定によれば5であった。
【0090】
<実施例2>
実施例2では、本発明の組成物を作製するのに使用される成分のもう1つの配合について述べる。組成物中に下記の成分、すなわちラダー構造のシラザン、アミノ官能性シラン、水酸基末端ポリジメチルシロキサン、および8〜12個の炭素原子を含む芳香族炭化水素混合物それぞれの重量パーセントを表している。
【0091】
【表2】

【0092】
組成物内に水分が浸入するのを防ぐために、これらの成分を窒素条件下で、溶剤中でよく混ぜる。得られた組成物(試料No.2)は、本発明の組成物を作製するのに使用されるもう1つの成分配合を示している。この組成物を、塗付けまたは噴霧のいずれかによって表面に塗布して、フィルムコーティングを形成する。このコーティングを約5〜20分間周囲温度で湿気に曝して、硬化させた。
【0093】
未硬化の組成物および硬化の組成物のFTIRスペクトルをそれぞれ図2aおよび図2bに示す。フィルム状の硬化していない組成物のFTIRスペクトル(図2a)は、Si−Nアミノ官能基(約1109cm−1のピーク)、約810および840cm−1の複数のシラザン基の存在に関する情報を提供する。図2bは、ポリシロキサンの存在についての情報を提供する。
【0094】
試料No.2は、つやのある仕上りを示した。選択した個々の官能性PDMSおよび溶剤に応じて、観察される表面の保光性を変えることができる。例えば、低amuのPDMSは表面に高い保光性をもたらす。湿分硬化性の本発明の組成物でコーティングされた部品の平均光沢値は、82.3および86.0であった。この値は、それぞれ平均光沢値における、わずか9.5および5.8単位、すなわちそれぞれ10.3および6.3%の低下である。
【0095】
どの試験を使用したかにかかわらず、測定の結果、落書き防止等級は5であった。より高amuのPDMSまたはamu値の異なるPDMSとのブレンドを使用してより高い落書き防止等級を達成することが可能である。
【0096】
<実施例3>
(合成)
A.1,2,3,4,5,6−ヘキサメチル−2,4,6−トリス(メチルアミノ)−シクロトリスシラザン(「トリスシクロシラザン」):
加圧反応器中で、窒素環境中、混合炭化水素溶媒中で、メチルトリクロロシランをメチルアミンと反応させた。最初に、メチルトリクロロシラン0.81モルを反応器中で芳香族溶媒920mlと混合した。次いで、この中にメチルアミン4.5モルをゆっくり加えた。このアミンの添加中、反応温度を上昇させた。アミンの添加は、12時間で完了した。ゆっくりと過剰のアミンを乾燥窒素でパージした。次に、この反応に水を加え、得られた懸濁液を終夜攪拌した。この懸濁液を窒素中でろ過し、溶液を(溶液の)生成物としてさらに精製することなく回収した。このシラザン溶液を試料No.3で使用した。最終生成物の濃度は、水で十分加水分解した生成物のパーセントで測定して、8〜10%(w/w)であった。
【0097】
B.トリス(メチルアミノ)メチルシラン:
加圧反応器中で、窒素環境中、混合炭化水素溶媒中で、メチルトリクロロシランをメチルアミンと反応させた。最初に、メチルトリクロロシラン0.44モルを反応器中で芳香族溶媒1000mlと混合した。次いで、この混合物を15℃未満の温度に冷却した。この中にメチルアミン(2.9モル)を加え、反応温度は、反応が完了するまで20℃未満に調節した。反応の完了は反応器中の圧力上昇によって示された。この懸濁液を窒素中でろ過し、さらに精製することなく溶液を生成物として(溶液状態で)回収した。このシラン溶液を試料No.6で使用した。最終生成物の濃度は、水で十分加水分解した生成物のパーセントで測定して、4〜6%(w/w)であった。
【0098】
(配合)
表3aで特定された範囲の量の様々な成分を使用し、それらの成分を表3bと3cに指定されている量で用いて、試料No.3〜10を配合した。
【0099】
【表3】

【0100】
【表4】

【0101】
【表5】

【0102】
各試料の様々な成分を混合して合わせることにより、この配合物を調製した。
【0103】
<実施例4>
実施例4では、組成物の性能を評価するために、ASTM Dの6578−00の試験法を使用した。この方法で、本発明の組成物の硬化したコーティング上に付けた落書きの消しやすさを評価した。ここでは、規定の1組のマーキングが規定の1組の洗浄剤によりいかに除去されるかに基づいて、耐落書き性を測定した。
【0104】
比較として、競合製品、Sierraから市販されているTK1495を使用した。TK1495は、製造業者の報告では、溶剤中に、とりわけヒドロキシルジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートのホモポリマーを含んでいる。
【0105】
方法の一般的説明は次の通りである。試験を実施するために以下の材料を使用した、すなわちアルミニウムパネル、セルローススポンジ、綿布、溶剤ベースのマーカー(SharpieまたはMarks−A−Lotsブランドなど)、溶剤ベースのスプレー塗料(Krylonブランドなど)、中性洗剤、柑橘類ベースのクリーナー、イソプロピルアルコール(「IPA」)およびメチルエチルケトン(「MEK」)。各試料のコーティングをアルミニウムQパネルに1回施し、室温(約72°F)で約10〜20分間放置して硬化させた。正確な時間は湿度条件によって決まる。コーティングを施したパネルに落書きマーキング材料を塗布し、室温で12時間を超える時間放置して乾燥させた。
【0106】
消しやすさ試験の各レベル毎にパネルを1枚使用した。規定の洗浄剤で湿らせた綿布で包んだセルローススポンジで、各パネルを、前後に往復25回こすった。落書き除去の評価は、目視検査により行った。往復25回で、落書きが完全に取り除かれれば、試験は完了したと判定し、コーティングを、使用した洗浄剤に基づいてランク付けした。
【0107】
消しやすさレベルの等級は、以下の通りである。1=乾いた綿布を使用してマーキングが完全に除去される。2=中性洗剤の1%水溶液できれいに取れる。3=柑橘類ベースのクリーナーできれいに取れる。4=IPAできれいに取れる。5=MEKできれいに取れる。「きれいに取れない」=MEKによって、落書きマーキングがコーティングされたパネルから完全には除去されない。試料3〜8のそれぞれの消しやすさのデータは、3であることが示された。
【0108】
したがって、前段で言及したように、落書き防止性能には大きな違いが観察されたが、この方法では上記の試料およびTK1495間の違いが区別されなかった。
【0109】
さらに、これらの試料は、落書きマーキング材料を、最初に塗布したとき、Qパネル上に均一に浸潤させなかった。これをASTMでは「撥水性」と呼んでいる。これとは対照的に、TK1495は、落書き材料を、最初に塗布したとき、Qパネル上に浸潤させた。したがって、TK1495は、落書き剥離剤として働くとはみなされない。したがって、上記の実施例1で述べた方法を使用した。
【0110】
<実施例5>
実施例5では、噴射剤としてプロパンを使用して、組成物(試料No.7)を、エアゾール缶に入れた。
【0111】
この組成物を、表面の外観を観察するために、エアゾールの形でレンガ、ガラス、プラスチック、および様々な材料から作られた基材上に塗布した。より具体的には、エアゾールの外観を、バルクスプレーおよび塗付け法での塗布と比較して、下記の表5に示している。
【0112】
【表6】

【0113】
試料No.7のコーティングを、アルミニウムQパネル上にエアゾールスプレーで施し、各コーティング後に10分間放置して乾燥させ、最後に10分間硬化させた。コーティングの厚みは、32の読取り値の平均として測定値を出し、それをQパネルに塗布したコーティングの数で割った。厚みの読取りはエルコメーター355デジタル膜厚計を使用して行い、表6に示した。
【0114】
【表7】

【0115】
<実施例6>
実施例6では、試料No.3、6〜10および11〜16を離型剤として評価した。試料No.12は別として、これらの試料は、成形部品で少なくとも80の光沢値を保持することを示した。
【0116】
より具体的には、例えば試料No.6は、成形部品上で86.3の光沢値を保持することを示した。また、試料No.3は、成形部品上で、85.0の光沢値を保持することを示し、試料No.8および14は、成形部品上で、それぞれ91.1および87.0の光沢値を保持することを示し、試料No.7、13、15および16は、成形部品上で、それぞれ85.9、90.7、83.2、および83.0の光沢値を保持することを示した。各試料を直径約3インチの囲いのない液だまり(puddle)として注ぎ、剥離特性の試験を行う前に、12時間放置して硬化させることによって、成形部品上で剥離性の測定を行った。剥離性は、定性的尺度(1〜6)で測り、1=剥離しない、2=無理にはがすと一部破壊。3=はがすにはボードを曲げるか強い圧力が必要、4=はがすには適度の圧力が必要、5=はがすには少しの圧力が必要、6=ボードから部分的に落下(剥離前として)である。試料No.3は剥離度3を示し、試料No.8および14は、それぞれ剥離度5および4を示し、試料No.7、13、15および16はそれぞれ剥離度5を示した。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1a】硬化した本発明のフィルムコーティング組成物のFTIRスペクトルである。
【図1b】硬化前における図1aのコーティング組成物のFTIRスペクトルである。
【図2a】未硬化の本発明のフィルムコーティング組成物のFTIRスペクトルである。
【図2b】硬化後における図2aのフィルムコーティングのFTIRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応生成物が実質上透明である硬化性組成物であって、
官能化シロキサンと、
多官能性シラン、アミノ官能性シラン、エノキシ官能性シラン、シラザン、およびそれらの組合せから成る群から選択される架橋剤と、
任意成分として、キャリアとを含み、
大気条件下で、30分未満内で硬化されたとき、前記反応生成物が実質上透明となり、前記組成物でコーティングされた表面に付けられたマーキングが容易に除去可能である、硬化性組成物。
【請求項2】
前記架橋剤が前記組成物の約0.1〜約50重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、表面に塗布されたとき、2000cps未満の粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記官能化シロキサンが水酸基末端ポリシロキサンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記架橋剤がトリスシクロシラザンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記架橋剤が、ラダー構造のシラザンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記キャリアが、8〜12個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、8〜12個の炭素原子を有する芳香族炭化水素、2〜6個のケイ素原子を含むシロキサン、3〜5個のケイ素原子を含む環式シロキサン、水、およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記官能化シロキサンが前記組成物の約0.01〜約50重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
表面に塗布された前記落書き防止組成物の美的効果を向上させるために、アルコキシシランプレポリマー樹脂、アルコキシ官能性プレポリマー樹脂、およびそれらの組合せから成る群から選択される樹脂をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
湿分硬化触媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
光開始剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
官能化シロキサンと、
アミノ官能性シラン、エノキシ官能性シラン、シラザンおよびそれらの組合せから成る群から選択される少なくとも1種の架橋剤と
を含む組成物の湿分硬化反応生成物を含む耐マーキング性フィルム。
【請求項13】
官能化シロキサンと、
アミノ官能性シラン、エノキシ官能性シラン、シラザンおよびそれらの組合せから成る群から選択される少なくとも1種の架橋剤とを含む組成物の湿分硬化反応生成物を含む微粒子堆積フィルム。
【請求項14】
表面に耐マーキング特性を付与する方法であって、
表面上にマーキングされるのを阻止するために組成物を表面に塗布する段階と、
前記フィルムコーティングを組成物を硬化させるのに適した条件に曝す段階とを含み、
前記組成物が、官能化シロキサンと、アミノ官能性シラン、エノキシ官能性シラン、シラザンおよびそれらの組合せから成る群から選択される少なくとも1種の架橋剤と、任意成分として、キャリアとを含む方法。
【請求項15】
硬化に適した条件が、周囲温度で湿気に曝すことである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
表面に微粒子付着防止特性を付与する方法であって、
表面上に微粒子が堆積しないように、組成物のフィルムコーティングを施す段階と、
前記組成物を硬化させるのに適した条件に前記フィルムコーティングを曝す段階とを含み、
前記組成物が、官能化シロキサンと、アミノ官能性シラン、エノキシ官能性シラン、シラザンおよびそれらの組合せから成る群から選択される少なくとも1種の架橋剤と、任意成分として、キャリアとを含む方法。
【請求項17】
前記組生物を硬化させるのに適した条件が、周囲温度で湿気に曝すことである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
硬化性離型用組成物でコーティングされた型内で成形された部品の光沢度を少なくとも80に高める方法であって、
型の内面に離型用組成物フィルムコーティングを施す段階と、
前記組成物を硬化させるのに適した条件に前記フィルムコーティングを曝す段階とを含み、
前記組成物が、官能化シロキサンと、アミノ官能性シラン、エノキシ官能性シラン、シラザンおよびそれらの組合せから成る群から選択される少なくとも1種の架橋剤と、任意成分として、キャリアとを含む方法。
【請求項19】
前記組成物を硬化するのに適した条件が、周囲温度で湿気に曝すことである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
官能化シロキサンと、多官能性シラン、アミノ官能性シラン、エノキシ官能性シラン、シラザン、およびそれらの組合せから成る群から選択される少なくとも1種の架橋剤と、任意成分として、キャリアとを含み、硬化したとき、内部に離型用組成物が塗布された型内で成形された部品が少なくとも80の光沢度を保持することを可能にする、離型用組成物。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2006−519919(P2006−519919A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509142(P2006−509142)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/006669
【国際公開番号】WO2004/078866
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】