説明

硬化性ポリウレタン組成物

【課題】
耐ブリードアウト性、塗膜密着性、及び耐候性が改良された1液または2液型硬化性ポリウレタン組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
末端イソシアネート基含有化合物(A)、アリルアルコール、またはプロペニルアルコールにアルキレンオキシド基を付加したモノオールと有機イソシアネートとを反応させることによって得られる実質上水酸基を有さない反応生成物を可塑剤(B)として含有する硬化性ポリウレタン組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性ポリウレタン組成物に関する。さらに詳しくは、硬化後のポリウレタン樹脂硬化物からの可塑剤の溶出(ブリードアウト)が少なく、硬化物の耐汚染性、ポリウレタン樹脂硬化物に対する上塗り塗料の塗膜密着性が改良され、さらに耐候性に優れ、特にシーリング材に適するポリウレタン系硬化剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、硬化性ポリウレタン組成物は、常温でも硬化し、硬化物が良好なゴム弾性を有することから、塗料、防水材、床材及びシーリング材等として使用されている。このような硬化性ポリウレタン組成物には、通常、柔軟性を付与する目的で可塑剤が配合されている。
従来、この種の可塑剤としてはジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル、ジオクチルアジペート等の脂肪酸エステル、塩素化パラフィン等の低分子可塑剤が使用されてきた。
しかし、これらの低分子可塑剤を使用した硬化性ポリウレタン組成物を、たとえばシーリング材等に使用した場合、可塑剤の硬化物表面への溶出、すなわちブリードアウトが避けられず、硬化物の表面にべたつきが生じ、埃の付着等により汚れを生じさせる。さらに、硬化物表面に塗装を施す場合には、ブリードアウトした可塑剤が塗膜を軟化、剥離させる等、硬化物の外観を著しく損なう。
【0003】
これらの可塑剤のブリードアウトに起因する問題を改善する目的で、ポリオキシアルキレン系モノオールと有機イソシアネートから合成されるウレタン系可塑剤を使用するウレタンシーラント組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、このウレタン系可塑剤は主成分であるポリウレタンと可塑剤の相溶性が悪く、可塑剤のブリードアウトを抑えられず、耐汚染性、塗膜密着性も十分ではない。また、これらウレタン樹脂系可塑剤においては、太陽光や外気に対する暴露により生じるクラックを抑制する効果は無く、伸び、強度などの物性ならびに硬化物の外観を著しく損なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−36034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、特定の化学構造のウレタン系化合物を、1液または2液硬化性ポリウレタン組成物中に、可塑剤として用いることにより、硬化後の硬化物からの可塑剤のブリードアウトが起こらず、硬化物の耐汚染性、塗膜の密着性が改善され、かつ耐候性に優れた可塑剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、分子内にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマー(A)、およびアリルアルコールまたはプロペニルアルコールにアルキレンオキシドを付加して得られたモノオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させることによって得られる可塑剤(B)として含有することを特徴とする1液型または2液型の硬化性ポリウレタン組成物;およびこれらの硬化物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化性ポリウレタン組成物は、硬化後のポリウレタン樹脂硬化物からの可塑剤の溶出(ブリードアウト)が少なく、硬化物の耐汚染性、ポリウレタン樹脂硬化物に対する上塗り塗料の塗膜密着性が改良され、さらに耐候性に優れたポリウレタン系硬化剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、湿気硬化性の1液型または硬化剤硬化性の2液型のいずれにも使用できる硬化性ポリウレタン組成物、およびこれらの硬化物であって、分子内にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマー(A)と可塑剤(B)から構成される。そして、この可塑剤(B)は、アリルアルコールまたはプロペニルアルコールにアルキレンオキシドを付加して得られたモノオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させることによって得られる。
【0010】
本発明では、課題解決のために、特定の化学構造を有するウレタン化合物を可塑剤(B)として適用する。
【0011】
本発明の可塑剤(B)は、アリルアルコールまたはプロペニルアルコールにアルキレンオキシドを付加して得られたモノオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させることによって得られる。
【0012】
可塑剤(B)において、モノオール(a)の製造に用いられるアルコールは、アリルアルコールまたはプロペニルアルコールである。これらのうち良好な耐候性を得ることができる不飽和基濃度の観点からアリルアルコールの使用が好ましい。
【0013】
可塑剤(B)において、モノオール(a)の製造に用いるアルキレンオキサイドは、通常、炭素数2〜4のものであり、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、1,2−もしくは2,3−ブチレンオキサイド(BO)、テトラヒドロフラン(THF)等があげられる。
これらのアルキレンオキサイドは単独でも2種類以上で併用してもよく、後者の場合はブロック付加でもランダム付加でも両者の混合系でもよい。
これらのうち、好ましくはEO単独、PO単独、BO単独、EOおよびPOの併用、EOおよびBOの併用、POおよびBOの併用(併用の場合ランダム、ブロック及び両者の混合系)であり、さらに好ましくはPO単独、EOおよびPOの併用であり、特に好ましくはEOおよびPOの併用である。
【0014】
可塑剤(B)において、モノオール(a)と反応させるポリイソシアネート(b)は、通常のポリウレタン製造に使用されているものが使用できる。
例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等である。これらのうち、TDI、MDI、HDI、XDIが、プレポリマー(A)との相溶性の観点から好ましい。
本発明においては、このような理由から好適に例示される各種有機ポリイソシアネート化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
可塑剤(B)の数平均分子量(以下、Mnと略記)は、通常500〜20,000、好ましくは800〜15,0000、特に好ましくは1,000〜10,000である。
Mnが500未満の場合、硬化物から可塑剤(B)のブリードアウトが増加し好ましくなく、20,000を超えると硬化性組成物の粘度が高くなり、取り扱い時の作業性が低下して好ましくない。
なお、本発明におけるMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算の数平均分子量である。
【0016】
可塑剤(B)の、オキシエチレン基の含有量は、通常0〜40重量%、好ましくは3〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。可塑剤(B)中のオキシエチレン基の含有量が5重量%未満の場合、塗膜の密着性が低下し、40重量%を超えると可塑剤(B)がブリードアウトしやすくなり好ましくない。
【0017】
可塑剤(B)の、硬化性ポリウレタン組成物中の含有量は、通常2〜35重量%、好ましくは5〜30重量%である。硬化性ポリウレタン組成物中の含有量が、2重量%未満の場合、硬化性ポリウレタン組成物の粘度が高くなり、取り扱い時の作業性が低下して好ましくなく、35重量%を超える場合、硬化物から可塑剤(B)のブリードアウトが増加し好ましくない。
【0018】
本発明における主剤成分であるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)[以下において、単にプレポリマー(A)または(A)と表記することがある]としては、具体的には、以下に説明するポリイソシアネート(a1)とポリオール(a2)との反応で得られるウレタンプレポリマーである。
【0019】
本発明のウレタンプレポリマー(A)に使用するポリイソシアネート(a1)としては、通常のポリウレタン製造に使用されているものが使用でき、可塑剤(B)のポリイソシアネート(b)で例示したものが挙げられる。
例えば、TDI、MDI、HDI、XDI、IPDI、NDI等である。これらのうち、TDI、MDIであるのが、反応性が高い理由から好ましい。本発明においては、このような理由から好適に例示される各種有機ポリイソシアネート化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明のウレタンプレポリマー(A)に使用するポリオール(a2)としては、2〜6価の高分子ポリオール(好ましくはMnが500〜4,000)が挙げられ、例えば、アルコール類、フェノール類及びアミン類のアルキレンオキサイド付加物等を用いることができる。具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ブチルアミン、エチレンジアミン等の活性水素を有する化合物に、EO、PO、BO及びTHF等の1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加(2種以上付加する場合の重合形式はランダムでもブロックでも良い)したポリオールが挙げられる。
【0021】
本発明のウレタンプレポリマー(A)は分子内にイソシアネート基を有する。そのため、プレポリマー(A)の製造におけるNCO/OHの仕込み当量比は、組成物の粘度の観点から好ましくは1.05〜3.0、さらに好ましくは1.2〜2.5である。
また、生成したプレポリマー(A)のNCO含量は、ポリウレタン系硬化性組成物の発泡の危険性低下の観点から好ましくは10%以下、さらに好ましくは0.5〜3.5%である。
【0022】
本発明のポリウレタン系硬化性組成物は、1液型又は2液型のいずれでもよい。
ここでいう1液型とは、プレポリマー(A)、可塑剤(B)、及び必要によりその他の添加剤(D)を1液中に含有する組成物であり、プレポリマー(A)の末端イソシアネート(NCO)基が、施工後に大気中の水分で反応し硬化するものである。
【0023】
2液型とは、プレポリマー(A)を含有する主剤成分及び硬化剤(C)を含有する硬化剤成分からなり、主剤成分及び硬化剤成分のいずれかに、可塑剤(B)を含有し、必要によりその他の添加剤(D)を主剤成分または硬化剤成分に含有する組成物であり、施工の直前に主剤成分と硬化剤成分を混合して硬化するものである。
2液型の場合の硬化剤成分に含まれる硬化剤(C)としては、通常はポリオールが用いられ、前記のプレポリマー(A)を得るためのポリオール(a2)として例示したものと同様のものが例示できる。
【0024】
2液型の場合のプレポリマー(A)中のイソシアネート基と、硬化剤としてのポリオール(C)中のOH基との当量比(NCO/OH比)は、好ましくは0.7〜1.3、特に好ましくは0.8〜1.2である。
【0025】
必要により添加されるその他の添加剤(D)としては、硬化促進触媒、充填剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤等)、溶剤、着色剤(染料、顔料)、難燃剤、殺菌剤及び公知の可塑剤等が挙げられる。これらのその他の添加剤(D)は、1液型であっても、2液型であっても、同様のものが例示できる。
【0026】
硬化促進触媒としては、金属触媒[錫系触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド及びジメチルチンジラウレート等)及び鉛系触媒]、アミン触媒[トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン及びDBU等]及びこれらの2種以上の併用系が挙げられる。硬化促進触媒は、通常、硬化性ポリウレタン組成物中の0.1〜5%、好ましくは1〜3%である。
【0027】
充填剤としては、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、シリカ、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタン等、及びこれらの2種以上の併用系が挙げられる。
【0028】
安定剤としては、ヒンダードフェノール系及びヒンダードアミン系の酸化防止剤、並びにトリアゾール系及びベンゾフェノン系の紫外線吸収剤等、及びこれらの2種以上の併用系が挙げられる。
【0029】
本発明の可塑剤(B)以外の公知の可塑剤としては、エステル系可塑剤[ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート及びポリエチレングリコール(Mn:200)ジアジペート等];タール系可塑剤(タール及びアスファルト等);石油樹脂系可塑剤等、及びこれらの2種以上の併用系が挙げられる。
【0030】
本発明の硬化性ポリウレタン組成物において、プレポリマー(A)、可塑剤(B)、硬化剤(C)、添加剤(D)の好ましい含有量は以下の通りである。
【0031】
プレポリマー(A)の含有量は、樹脂物性の観点から、1液型硬化性ポリウレタン組成物の場合、好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは30〜40重量%である。2液型硬化性ポリウレタン組成物の場合、好ましくは20〜40重量%、さらに好ましくは25〜30重量%である。
【0032】
可塑剤(B)は、ブリードアウトの防止並びに施工時の作業性の観点から、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜25重量%である。
【0033】
硬化剤(C)は、2液型の場合のみに含有するが、樹脂物性の観点から好ましくは10〜25重量%、さらに好ましくは15〜20重量%である。
【0034】
本発明の硬化性組成物の製法は特に限定しないが、1液型の場合、好ましくは、プレポリマー(A)、可塑剤(B)、および(D)を減圧下で十分に混練した後、(D)のうちの硬化促進触媒を加えて(この際、硬化促進触媒をトルエン等の溶媒に溶解しておいてもよい)、減圧下でさらに十分混練するのが良い。2液型の場合、硬化剤(C)及び(D)を十分に混合した硬化剤成分と、プレポリマー(A)を含む主剤成分を施工前に混合することで得られる。
【0035】
得られる硬化物の物性は特に限定されないが、好ましくは、JIS A5758の測定法による破断時の伸びが50%以上、さらに好ましくは100〜1000%となるものである。本発明のポリウレタン系硬化性組成物は、硬化後、たとえば、シーリング材、塗料、防水材、床材、接着剤及びポリウレタン成型物等として使用される。シーリング材としては、その用途は特に限定されないが、屋内外の建築物の床、壁等の目地、窓枠、電気機器等のシール材等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0037】
製造例1
ポリオキシプロピレングリコール(Mn2,000)30部と、トリメチロールプロパンのPO付加物(Mn4,000)60部を反応容器に入れ、120±5℃で0.01MPaの減圧下で脱水し、水分を0.02%以下にした。次いで、80℃に冷却し、トリレンジイソシアネート(TDI)10部を反応容器に投入し、80±5℃で4時間反応させ、末端NCO含量1.6%のプレポリマー(A−1)を得た。
【0038】
製造例2
ポリオキシプロピレングリコール(Mn1,000)15部とトリメチロールプロパンのPO付加物(Mn5,000)70部を反応容器に入れ、120±5℃で0.01MPa以下の減圧下で脱水し、水分を0.03%以下にした。次いで、80℃に冷却し、TDI15部を反応容器に投入し、80±5℃で4時間反応させ、末端NCO含量3.0%のプレポリマー(A−2)を得た。
【0039】
製造例3
アリルアルコール5部、触媒として水酸化カリウム0.25部を反応容器に入れ、110±5℃で、1時間攪拌した。次いで、プロピレンオキサイド95部を容器内に滴下し、110±5℃で10時間攪拌して付加反応させた。
反応後、80℃に冷却し、キョーワード600〔協和化学工業(株)製〕で残存触媒を吸着除去し、Mn1,200のアリルアルコールPO付加物 (a−1)を得た。
【0040】
得られた(a−1)90部を反応容器に入れ、120±5℃で、0.01MPa以下の減圧下で2時間脱水し、水分を0.02%以下にした。次いで、80℃まで冷却し、TDI10部を反応容器に投入した後に80±5℃で2時間攪拌した後に、鉛系硬化促進触媒〔ネオスタンU−28、日東化成(株)製〕0.5部を反応容器に投入し、80±5℃で4時間ウレタン化反応させた。反応後、末端NCO含量0.04%、水酸基価2.0の本発明の可塑剤(B−1)を得た。
【0041】
製造例4
アリルアルコール5部、水酸化カリウム0.25部を反応容器に入れ、110±5℃で、1時間攪拌し、次いで、エチレンオキサイド10部を容器内に滴下し、110±5℃で6時間攪拌し、最後に、プロピレンオキサイド87部を容器内に滴下し、110±5℃で10時間攪拌して付加反応させた。
反応後、80℃に冷却し、キョーワード600で残存触媒を吸着除去し、数平均分子量1,200のアリルアルコールPO・EOブロック重合体(a−2)を得た。
【0042】
得られた(a−2)90部とTDI10部を製造例3と同様にしてウレタン化反応させた。反応後、末端NCO含量0.04%、水酸基価2.0の本発明の可塑剤(B−2)を得た。
【0043】
比較製造例1
アリルアルコールの代わりにメチルアルコール3部と、プロピレンオキサイドの代わりに、プロピレンオキサイド97部を用いたこと以外は製造例3と同様にして、Mn1,200のメチルアルコールPO付加物(a’−1)、ならびに末端NCO含量0.04%、水酸基価2.0の比較のための可塑剤(B’−1)を得た。
【0044】
比較製造例2
メチルアルコール3部、水酸化カリウム0.25部を反応容器に入れ、110±5℃で、1時間攪拌し、次いで、エチレンオキサイド10部を容器内に滴下し、110±5℃で6時間攪拌し、最後に、プロピレンオキサイド87部を容器内に滴下し、110±5℃で10時間攪拌して付加反応させた。
反応後、80℃に冷却し、キョーワード600で残存触媒を吸着除去し、数平均分子量1,200のアリルアルコールPO・EOブロック重合体(a’−2)を得た。
【0045】
得られた(a’−2)90部とTDI10部を製造例3と同様にしてウレタン化反応させた。反応後、末端NCO含量0.04%、水酸基価2.0の比較のための可塑剤(B’−2)を得た。
【0046】
比較製造例3
比較製造例1のプロピレンオキサイド97部の代わりに、エチレンオキサイド97部を用いた以外は比較製造例1と同様にして、Mn1,200のアリルアルコールEO付加物(a’−3)、ならびに末端NCO含量0.04%、水酸基価2.0の比較のための可塑剤(B’−3)を得た。
【0047】
実施例1
製造例1で得たプレポリマー(A−1)100部、表面処理炭酸カルシウム〔ホワイトンSSB赤、白石カルシウム(株)製〕70部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤〔イルガノックス1010、日本チバガイギー(株)製〕2部、トリアゾール系紫外線吸収剤〔チヌビン320、日本チバガイギー(株)製〕1部、鉛系硬化促進触媒〔ネオスタンU−28、日東化成(株)製〕2部をプラネタリーミキサーにて減圧下で30分間混練して主剤成分を得た。
得られた主剤成分に、製造例3で得た可塑剤(B−1)25部を、プラネタリーミキサーにて減圧下30分間混練して、1液硬化性ポリウレタン組成物を得た。
【0048】
実施例2
実施例1の(B−1)の代わりに、製造例4で得た可塑剤(B−2)を25部使用したこと以外は実施例1と同様にして、1液型硬化性ポリウレタン組成物を得た。
【0049】
実施例3
製造例2で得たプレポリマー(A−2)100部、表面処理炭酸カルシウム〔ホワイトンSSB赤、白石カルシウム(株)製〕120部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤〔イルガノックス1010、日本チバガイギー(株)製〕3部、トリアゾール系紫外線吸収剤〔チヌビン320、日本チバガイギー(株)製〕2部、鉛系硬化促進触媒〔ネオスタンU−28、日東化成(株)製〕3部をプラネタリーミキサーにて減圧下で30分間混練して主剤成分を得た。
別途、可塑剤として製造例3で得た可塑剤(B−1)40部、硬化剤としてのポリオキシプロピレングリコール(Mn5,000)(C−1)62部をプラネタリーミキサーにて減圧下30分間混練して2液硬化性ポリウレタン組成物の硬化剤成分を得た。
【0050】
実施例4
実施例1の(B−1)の代わりに製造例4で得た可塑剤(B−2)を40部使用したこと以外は実施例1と同様にして、2液型硬化性ポリウレタン組成物を得た。
【0051】
比較例1
実施例1の(B−1)の代わりに比較製造例1で得た可塑剤(B’−1)を25部使用したこと以外は実施例1と同様にして、1液型硬化性ポリウレタン組成物を得た。
【0052】
比較例2
実施例1の(B−1)の代わりに比較製造例2で得た可塑剤(B’−2)を25部使用したこと以外は実施例1と同様にして、1液型硬化性ポリウレタン組成物を得た。
【0053】
比較例3
実施例1の(B−1)の代わりに比較製造例3で得た可塑剤(B’−3)を25部使用したこと以外は実施例1と同様にして、1液型硬化性ポリウレタン組成物を得た。
【0054】
比較例4
実施例3の(B−1)の代わりに比較製造例1で得た可塑剤(B’−1)を40部使用したこと以外は実施例3と同様にして、2液型硬化性ポリウレタン組成物を得た。
【0055】
比較例5
実施例3の(B−2)の代わりに比較製造例2で得た可塑剤(B’−2)を40部使用したこと以外は実施例3と同様にして、2液型硬化性ポリウレタン組成物を得た。
【0056】
比較例6
実施例3の(B−3)の代わりに比較製造例1で得た可塑剤(B’−3)を40部使用したこと以外は実施例3と同様にして、2液型硬化性ポリウレタン組成物を得た。
【0057】
<性能評価用の硬化物シートの作成>
得られた実施例1、2と比較例1〜3の1液型硬化性ポリウレタン組成物を70mm×110mm×5mmのプラスチック製の型に流し込み、温度20℃、湿度50%の恒温恒湿器中で14日間養生した後、型から取りだして、厚さ5mmの硬化物シートを得た。
【0058】
得られた実施例3、4と比較例4〜6の2液型硬化性ポリウレタン組成物で、主剤成分228部と硬化剤成分62部をプラネタリーミキサーで減圧下で30分間混練した。
この混合物を70mm×110mm×5mmのプラスチック製の型に流し込み、温度20℃、湿度50%の恒温恒湿器中で、14日間養生した後、型から取りだして、厚さ5mmの硬化物シートを得た。
【0059】
<性能評価>
実施例1〜4及び比較例1〜6で得られた硬化物シートを用いて、耐汚染性、硬化物表面の塗膜の密着性、および硬化物の50時間後と100時間後の耐候性試験を行った。
【0060】
性能評価における試験方法は以下の通りである。
(1)耐汚染性試験
得られた70mm×110mm×5mmの硬化物シートを70mm×20mm×5mmの短冊状の硬化物シートに切り分けた後、短冊状硬化物シートの表面に、アクリルエマルション系塗料「エスダイン#7110、積水フーラー(株)製」を厚さ100μmで塗布し、恒温恒湿器中にて70℃、湿度50%で1週間放置した。
塗膜上にJIS Z8901−2005に規定されたJIS試験用粉体「1,1種」(ケイ砂)を塗膜が隠れる程度に振りかけ、さらに恒温恒湿器中で70℃、湿度50%で30分間放置した。
恒温恒湿器から取り出して10分後に、硬化物シートを裏返し底面を軽く叩くことでシートの表面上の余分なケイ砂を落とし、塗膜上に付着して取れないケイ砂の付着部の面積の全体に占める割合を目視で観察し、以下に示す3段階の評価を行った。
【0061】
○:ケイ砂の付着面積が3割未満
△:ケイ砂の付着面積が3割以上6割未満
×:ケイ砂の付着面積が6割以上
【0062】
(2)塗膜密着性試験
硬化物シートの表面に、アクリルエマルション系塗料「エスダイン#7110、積水フーラー株式会社製」を厚さ100μmで塗布し、恒温恒湿器中で70℃、湿度50%で、1週間放置した。
恒温恒湿器から取り出し後、塗膜をカッターナイフを用いて2mm幅で縦6本、横6本の格子状に切り込みを入れ、25マス(5×5)の碁盤目の上からJIS−Z1525に規定する粘着テープを貼付し、剥がしたときに硬化物シート上に残ったマスの数を、下記の計算式から算出し、塗膜密着性として評価した。
塗膜密着性(%)=(硬化物シート上に残ったマスの数)×100/25
【0063】
(3)硬化物の耐候性試験
得られた70mm×110mm×5mmの硬化物シートを70mm×50mm×5mmに切り分け、アイスーパーUVテスター〔SUV−W151型:岩崎電気(株)製〕中にサンプルを静置し、温度50±3℃、湿度50±5%、紫外線照度100mWの条件で、50時間、及び100時間UV照射した。シート表面のクラックの数を目視で確認し、耐侯性を下記の通り二段階判定を行った。
○:シート表面に生じたクラック数5本以下
×:シート表面に生じたクラック数6本以上
【0064】
実施例ならびに比較例にて用いた配合物の配合量を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例ならびに比較例の評価結果を表2および表3に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
表2と表3から明らかなように、アリルアルコールのアルキレンオキサイド付加物から由来する本発明の可塑剤を使用した実施例1〜4の耐汚染性、塗膜密着性に優れ、耐侯性は100時間後でもクラックが起きにくかった。
一方、メチルアルコールのアルキレンオキサイド付加物から由来する可塑剤を使用した比較例1〜6は、耐汚染性がいずれも不十分であり、耐侯性は100時間で多数クラックが生じ、しかもこれ以前の50時間でもクラックが多い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の硬化性ポリウレタン組成物は、従来の硬化性ポリウレタン組成物に比較して、可塑剤のブリードアウトが少なく、硬化物表面の塗膜の耐汚染性及び塗膜密着性に優れていることから、シーリング材、塗料、接着剤、防水材、床材、ポリウレタン成型物等の用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマー(A)、およびアリルアルコールまたはプロペニルアルコールにアルキレンオキシドを付加して得られたモノオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させることによって得られる可塑剤(B)として含有することを特徴とする硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項2】
1液型湿気硬化性である請求項1記載の硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項3】
該イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤成分および硬化剤成分からなる2液型硬化剤硬化性であって、主剤成分または硬化剤成分中に該可塑剤(B)を含有する請求項1記載の硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項4】
該可塑剤(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチ
レングリコール換算の数平均分子量が1,000〜10,000である請求項1〜3いずれか記載の硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項5】
該可塑剤(B)中のオキシエチレン基の含有量が5〜30重量%である請求項1〜4のいずれか記載の硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項6】
該可塑剤(B)の含有量が5〜30重量%である請求項1〜5のいずれか記載の硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の硬化性ポリウレタン組成物を硬化させて得られるポリウレタン樹脂硬化物。

【公開番号】特開2010−215829(P2010−215829A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65770(P2009−65770)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】