説明

硬化性組成物、カラーフィルター、及び液晶表示装置

【課題】凝集異物の発生が少なく、保存安定性に優れた硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を用いて、剥離片異物による欠陥の発生が少なく、高品質な、カラーフィルター及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】(A)バインダ樹脂、(B)単量体、(C)溶剤および(D)顔料を含有する硬化性組成物であって、該硬化性組成物の水分含有量が0.4重量%以上2.0重量%以下であり、特定の4工程からなる塗布適性評価方法(I)によりガラス試験片の一稜線上に形成される付着物(a)が2μg以下であり、かつ該硬化性組成物を常圧下、35℃で2週間保存したときの粘度上昇が1.0cps以下であることを特徴とする硬化性組成物、およびこれを用いてなるカラーフィルターならびに液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、カラーフィルター、及び液晶表示装置に関する。詳しくは、液晶表示装置(液晶パネル)等の表示部材の製造に用いられる画素やブラックマトリックス等を形成する硬化性組成物(レジスト)、カラーフィルター、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の表示部材の製造に用いられる、画素、ブラックマトリックス、フォトスペーサー、リブ材、オーバーコート等は、一般に、硬化性組成物を基板に塗布し、硬化性組成物層を形成する工程を経て形成される。
上記塗布工程においては、従来スピンコート法が用いられてきたが、近年、基板の大型化と省液化の必要性から、スリット・アンド・スピン法やダイコート法に移行している。特に、ダイコート法によればスピンコート法による塗布の際に付着するミストなどの影響が全くない、異物発生が抑制されるなど、総合的な観点から好ましい。
【0003】
しかしながら、スリット・アンド・スピン法やダイコート法では、硬化性組成物の乾きにより、ディスペンスノズルの先端に発生した凝集異物が、塗布膜上に付着して、剥離片異物となって歩留まりを低下させる問題が深刻になっている。
この問題を解決すべく、例えば特許文献1では、着色画像形成用感光液を用いて形成された乾燥膜を、該感光液に含まれる溶媒に浸漬させたときに、5分以内に溶解する(以下、乾燥膜を形成し、これを元の組成物中に含まれるものと同じ溶媒に溶解させることを「再溶解」と称し、これを満たす性質を「再溶解性」と称することがある。)ことができる着色画像形成用感光液とその方法が開示されている。しかしながら、実際の製造プロセスでは一度発生した凝集異物は、再溶解の時間を待たずに塗布面に散布されることになるので、特許文献1に記載の技術は再現性が低く、凝集異物による歩留まり低下を改善するものとしては不十分であった。
【0004】
また特許文献2では、ノズル先端を清掃する装置が開示されている。しかしながら、実際の製造プロセスでは鋭利な形状のノズル先端の異物を完全に除去することは困難である。また塗布動作をノズル清掃のために中断する必要が生じ、製造タクトを阻害するという問題があった。さらに、清掃が完全でないとノズル先端に拭き残りの液溜りが生じるため、むしろ塗布の不均一性(ムラ)をまねくという問題があった。
【特許文献1】特開2002−23352号公報
【特許文献2】特開平9−192566号公報
【特許文献3】特開2006−343648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述の従来技術に鑑みて、スリット・アンド・スピン法やダイコート法において、凝集異物の発生量を適切に評価することのできる、硬化性組成物の塗布適性評価方法を見出した。また、特定の組成を有し、かつ当該評価方法にて良好な結果を得られた硬化性組成物は、スリット・アンド・スピン法やダイコート法に非常に適したものであることを見出した。
本発明は、スリット・アンド・スピン法やダイコート法による塗布に適した硬化性組成物、さらには、これを用いて形成された高品質なカラーフィルター、及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、硬化性組成物の塗布適性は再溶解性に依存するのではなく、むしろ凝集異物の発生過程に着目した適切な評価方法を利用することにより前記課題を解決することができることを見出し、本発明に到達したものである。すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(i)(A)バインダ樹脂、(B)単量体、(C)溶剤および(D)顔料を含有する硬化性組成物であって、
硬化性組成物の水分含有量が0.4重量%以上2.0重量%以下であり、
下記(1)〜(4)の工程からなる塗布適性評価方法(I)によりガラス試験片の一稜線上に形成される付着物(a)が2μg以下であり、かつ
硬化性組成物を常圧下、35℃で2週間保存したときの粘度上昇が1.0cps以下である、
ことを特徴とする硬化性組成物。
[塗布適性評価方法(I)]
(1)雰囲気温度23℃で、長さ100mm×幅5mm×厚み0.7mmのガラス試験片の縦方向の先端部分20mmを、12.5mm/秒の速度で硬化性組成物中に浸漬し、その後4秒間維持する工程
(2)該ガラス試験片を、12.5mm/秒の速度で硬化性組成物から取り出し、該ガラス試験片の先端を下にして垂直に保持した後、雰囲気温度23℃、湿度55%、風速0.5±0.2m/秒の条件下で52秒間乾燥させる工程
(3)工程(1)及び(2)を合計250回繰り返し、該ガラス試験片に硬化性組成物由来の付着物を形成させる工程
(4)該ガラス試験片の4稜線のうち、該付着物量が最も多い稜線を選択する工程(なお、選択された稜線上の付着物を「付着物(a)」と称す。)
(ii)前記(i)に記載の硬化性組成物を用いて形成されたカラーフィルター。
(iii)前記(ii)に記載の硬化性組成物を用いて形成された液晶表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、凝集異物の発生が少なく、保存安定性に優れた硬化性組成物を提供することができる。また、このような硬化性組成物を用いることにより、剥離片異物による欠陥の発生が少なく、高品質なカラーフィルター、及び液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0009】
[1]硬化性組成物
本発明の硬化性組成物は、(A)バインダ樹脂、(B)単量体、(C)溶剤、および(D)顔料を含有する硬化性組成物であって、
硬化性組成物の水分含有量が0.4重量%以上2.0重量%以下であり、
後述する(1)〜(4)の工程からなる塗布適性評価方法(I)において、
ガラス試験片の一稜線上に形成される付着物(a)が2μg以下であり、かつ硬化性組成物を常圧下、35℃で2週間保存したときの粘度上昇が1.0cps以下である、
ことを特徴とする硬化性組成物に存する。
[1−1]硬化性組成物の水分含有量
本発明の硬化性組成物は、当該組成物中の水分含有量が0.4重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは0.6重量%以上、特に好ましくは0.7重量%以上、であり、2.0重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、更に好ましくは1.2重量%以下、特に好ましくは0.9重量%以下である。水分含有量が少なすぎると異物低減効果が発現せず、多すぎると硬化性や長期保存性に問題がある。
なお、硬化性組成物中の水分量は、公知の手段で測定および調整できる。例えば、後述する方法にて調製された硬化性組成物の水分量を、カールフィッシャー法にて測定し、不足分は硬化性組成物に水を滴下することにより補い、過剰分は予めオーブン等で真空乾燥させたモレキュラーシーブ(例えば、和光純薬工業社製「Molecular Sieves 3A 1/16」など)を、硬化性組成物に加えて攪拌することにより脱水することができる。
その他の脱水の手段としては、シリカゲル、アルミナ等の多孔質材料や、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、塩化カルシウム等の脱水剤を用いる方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0010】
[1−2]付着物(a)
本発明の硬化性組成物は、下記(1)〜(4)の工程からなる塗布適性評価方法(I)において、ガラス試験片の一稜線上に形成される付着物(a)が2μg以下である。
[塗布適性評価方法(I)]
(1)硬化性組成物中に、100mm×5mm×0.7mmのガラス試験片の先端部分20mmを気温23℃の条件下で4秒間浸漬する工程
(2)該ガラス試験片を、硬化性組成物から取り出し、先端を下向きに垂直に保持したまま、気温23℃、湿度55%、風速0.5m/秒の条件下で52秒間乾燥させる工程
(3)工程(1)及び(2)を合計250回繰り返し、該ガラス試験片に硬化性組成物由来の付着物を形成させる工程
(4)該ガラス試験片の4稜線のうち、該付着物量が最も多い稜線を選択する工程。(なお、選択された稜線上の付着物を「付着物(a)」と称す。)
[1−2−1]硬化性組成物の塗布適性評価方法(I)
以下、各工程について説明する。
工程(1):「雰囲気温度23℃で、長さ100mm×幅5mm×厚み0.7mmのガラス試験片の縦方向の先端部分20mmを、12.5mm/秒の速度で硬化性組成物中に浸漬し、その後4秒間維持する。」
浸漬工程の雰囲気温度、すなわち本発明で浸漬工程を実施する室温は、23℃とする。浸漬する硬化性組成物の液温は、該硬化性組成物が上記室温下で通常存在している液温でよい。液温が低すぎると粘度が高くなり過ぎる傾向があり、高すぎると温度劣化が生じるおそれがある。
試験片を硬化性組成物中に浸漬させる際の速度は、12.5mm/秒とする。浸漬させる際の速度は、試験片の浸漬時間を均一にするために、後述する取り出し速度と同じ速度にすることが好ましい。
浸漬時間は4秒間とする。ここで浸漬時間とは、ガラス試験片の縦方向の先端部分20mmを硬化性組成物中に浸漬した後、浸漬状態を維持する時間をいう。浸漬時間が短すぎると再現性に問題が生じやすく、長すぎると異物が形成しにくくなる傾向がある。
工程(2):「該ガラス試験片を、12.5mm/秒の速度で硬化性組成物から取り出し、該ガラス試験片の先端を下にして垂直に保持した後、雰囲気温度23℃、湿度55%、風速0.5±0.2m/秒の条件下で52秒間乾燥させる。」
工程(1)で浸漬した試験片を、硬化性組成物から取り出し、乾燥する。試験片を取り出す際の引き出し速度は、浸漬させる時の速度と同様、12.5mm/秒とする。引き出し速度が遅すぎると、試験片に同伴する液が少なすぎ付着物(a)が形成されにくく、速すぎると試験片に同伴する液が多すぎて異物の判別が難しくなるおそれがある。
取り出したガラス試験片は、その先端を下にして垂直に保持した後、雰囲気温度23℃、湿度55%、風速0.5±0.2m/秒の条件下で52秒間乾燥させる。このとき、垂直に保持した試験片の上側から下側に向けて、垂直に気流が流れるように強制対流乾燥(一定の方向に一定の風速で気流が作用する条件で乾燥)することにより、試験片の4稜線に均等に付着物(a)が形成されるため好ましい。乾燥風速が遅すぎると付着物(a)が形成されにくく、速すぎると試験片が振動するおそれがある。また、強制対流乾燥時の風速の振れ幅は±0.2m/秒とする。
本発明において、乾燥時間とは、試験片を硬化性組成物中から全て取り出した後、乾燥状態を維持する時間をいう。
なお、乾燥温度は23℃とするが、これより低すぎると異物が形成されにくく、高すぎると硬化してしまうおそれがある。
工程(3):「工程(1)及び(2)を合計250回繰り返し、該ガラス試験片上に硬化性組成物由来の付着物を形成させる。」
前述の工程(1)及び(2)を複数回(本発明では250回とする)繰り返すことにより、試験片上に硬化性組成物由来の付着物が形成される。
工程(4):「該ガラス試験片の4稜線のうち、該付着物量が最も多い稜線を選択する工程(なお、選択された稜線上の付着物を「付着物(a)」と称す。)」
上記付着物は、特に試験片の稜線部分に形成されやすい(図1〜3参照)。
本発明の硬化性組成物は、ガラス試験片の縦方向の4稜線のうち、最も付着物量が多い稜線を選択し、該稜線上に形成された付着物の量(すなわち「付着物(a)」の量)が2μg以下となることを条件とする。この付着物(a)の量を測定することにより、硬化性組成物の塗布適性を判断することができる。
付着物(a)の重量の測定方法に特に制限は無い。例えば、試験片から掻き取って重量を測定してもよいし、予め該硬化性組成物を用いて形成される膜の比重を測定しておき、3次元レーザー顕微鏡等で付着物(a)の体積を測定し、これらの積より算出してもよい。
付着物(a)の重量は2μg以下、好ましくは1μg未満である。付着物(a)の重量が大きすぎると凝集異物発生の可能性が大きい。また付着物(a)の重量は、通常0.1μg以上程度であるが、少ないほど好ましい。
付着物(a)の量を上記範囲内に制御するには、例えば(D)顔料の分散条件、顔料濃度、バインダ樹脂の種類やその分子量、分散剤の種類やその含有量、溶媒組成、及び硬化性組成物の水分量などの調整を行うことが有効である。
顔料分散は、品質が十分安定した顔料分散液が得られる条件で行うことが好ましい。
分散が不十分であるということは、顔料への分散剤の付着量が不足していることを意味する。このような状態の顔料分散液が、一度塗膜として固化すると、顔料の露出部分が多くなり、再度溶剤に浸漬しても溶解しない。反対に分散が過度な場合、分散剤が顔料表面に強固で密に付着することになる。このような顔料分散液が一度塗膜として固化すると、再度溶剤に浸漬されても、分散剤分子が有するtail構造(後述する)の間に溶剤が入り込みにくく、顔料分散体(顔料と、その周囲に付着した分散剤を併せて、こう称する)は付着物を形成すると考えられる。
また顔料濃度が高すぎると、硬化性組成物の塗布膜が乾燥したときに、膜中の顔料分散体の含有量が多くなり、やはり溶剤が膜中に滲入しにくくなるため、付着物となりやすい。
硬化性組成物中に含まれるバインダ樹脂の分子量は、小さい方が溶剤となじみやすく、塗膜化後、溶剤に浸漬したときに再分散しやすくなる。ただし、分子量が小さすぎると、顔料同士が凝集しやすくなり分散も不安定になるので、一度乾燥すると付着物となりやすい。
硬化性組成物中に含まれる分散剤の顔料に対する含有量も重要である。少なすぎると分散体が安定性せず、顔料が凝集してしまい、異物となりやすい。さらに、後述するように、分散剤や溶剤の種類によっても、付着物(a)の量は変化する。
特に、硬化性組成物の水分量を上記[1−1]で記載した範囲とすることは、本発明の上記の数値範囲を達成するためには有効である。
このように、硬化性組成物の水分量や、上述した各種構成成分の種類や量、また顔料分散条件などを適宜調整することにより、本発明の塗布適性評価方法(I)において、付着量(a)が2μg以下であるような硬化性組成物を得ることができるのである。
[1−3]粘度
本発明の硬化性組成物は、常圧下、35℃で2週間保存したときの粘度上昇が1.0cps以下、好ましくは0.5cps未満である。粘度が増加した硬化性組成物は、塗布ムラまたは乾燥ムラが生じ易くなり、また極端な場合には基板上への塗布自体が困難または不可能になるため、事実上、カラーフィルターを製造することができなくなる。硬化性組成物の、保存後の粘度上昇が1.0cpsより多いと、これを用いて商業的にカラーフィルターを製造することが困難になる。
なお、本発明における「粘度」はE型粘度計でサンプル量1.0ml、測定温度23℃、回転数20rpmにて測定した数値を意味する。
硬化性組成物の粘度増加の原因は幾つかあるが、例えば、リン酸アクリレートと水分の共存が挙げられる。特許文献3などに記載されているように、硬化性組成物を用いて形成された画素の、基板への密着性を向上させるために、硬化性組成物中にリン酸アクリレートを含有させる場合がある。しかし、リン酸アクリレートを含む硬化性組成物が、さらに水分を含有すると、該硬化性組成物は保存に伴い粘度が上昇し、画像形成性が低下する。具体的には、例えばダイコーターのノズルから硬化性組成物が均一に吐出されず塗布ムラや塗布筋が発生する、スピンコート時に滴下液が十分均一に広がらず放射状の塗布ムラや塗り残しが発生する、乾燥時のレベリングが十分に行われずムラになる、などの問題が生じる。
本発明の硬化性組成物は、リン酸アクリレートを含有しないか、あるいはリン酸アクリレートの含有量が5重量%以下であることが好ましい。より好ましくは3重量%以下、最も好ましくは0重量%(含有しない)である。粘度上昇を抑制する、という観点からは、リン酸アクリレートの含有量は、少ないほど好ましい。
また粘度上昇の原因としては、過度に顔料分散したことによる構造粘性の発現、樹脂や単量体の暗反応による重合などが挙げられる。
原因がいずれの場合であっても同様で、硬化性組成物の保存後の粘度が1.0cpsより大幅に上昇するようでは、カラーフィルターを商業的に製造する上で、大きな問題となる。
次に、本発明の硬化性組成物の構成成分について、詳しく説明する。
本発明の硬化性組成物は、(A)バインダ樹脂、(B)単量体、(C)溶剤、および(D)顔料を含有する硬化性組成物であって、硬化性組成物の水分含有量が0.4重量%以上2.0重量%以下であり、上述の塗布適性評価方法(I)において、ガラス試験片の一稜線上に形成される付着物(a)が、2μg以下であり、かつ常圧下、35℃で2週間保存したときの粘度上昇が1.0cps以下である、ことを特徴とする。また、必要に応じて、さらに(E)分散剤、その他成分等を含有してもよい。
【0011】
尚、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味するものとする。また「全固形分」とは、後記する溶剤成分以外の本発明の硬化性組成物の全成分を意味するものとする。
【0012】
[1−4](A)バインダ樹脂
本発明の硬化性組成物はバインダ樹脂を必須成分とする。バインダ樹脂は、例えば、特開平7−207211号、特開平8−259876号、特開平10−300922号、特開平11−140144号、特開平11−174224号、特開2000−56118号、特開2003−233179号などの各公報等に記載される公知の高分子化合物を使用することができるが、(A)バインダ樹脂として特に好ましいものにつき、以下に説明する。
(A−1):「エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させ、更に該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂」
特に好ましい樹脂の一つとして、「エポキシ基含有(メタ)アクリレート5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体10〜95モル%との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に不飽和一塩基酸を付加させ、更に該付加反応により生じた水酸基の10〜100モル%に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂」が挙げられる。
そのエポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が例示できる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと共重合させる他のラジカル重合性単量体としては、下記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
式(1)中、R1〜R6は各々独立して、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R7及びR8は各々独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は連結して環を形成していてもよい。
式(1)において、R7とR8が連結して形成される環は、脂肪族環であるのが好ましく、飽和又は不飽和の何れでもよく、又、炭素数が5〜6であるのが好ましい。
中でも、一般式(1)で表される構造としては、下記式(1a)、(1b)、又は(1c)で表される構造が好ましい。
バインダ樹脂にこれらの構造を導入することによって、本発明の硬化性組成物をカラーフィルターや液晶表示素子に使用する場合に、該硬化性組成物の耐熱性を向上させたり、該硬化性組成物を用いて形成された画素の強度を増すことが可能である。
尚、一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
【化2】

【0017】
前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、当該構造を有する限り公知の各種のものが使用できるが、特に下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0018】
【化3】

【0019】
式(2)中、R9は水素原子又はメチル基を示し、R10は前記一般式(1)の構造を示す。
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体において、前記一般式(1) で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位は、「他のラジカル重合性単量体」に由来する繰返し単位中、5〜90モル%含有するものが好ましく、10〜70モル%含有するものが更に好ましく、15〜50モル%含有するものが特に好ましい。
【0020】
尚、前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート以外の、「他のラジカル重合性単量体」としては、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、スチレン、スチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル誘導体等のビニル芳香族類;ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸−1,1,1−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−iso−プロピルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロイルニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル等のビニル化合物類;シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等のモノマレイミド類;N−(メタ)アクリロイルフタルイミド等が挙げられる。
【0021】
これら「他のラジカル重合性単量体」の中で、硬化性組成物に優れた耐熱性及び強度を付与させるためには、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、及びモノマレイミドから選択された少なくとも一種を使用することが有効である。特に「他のラジカル重合性単量体」に由来する繰返し単位中、これらスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、及びモノマレイミドから選択された少なくとも一種に由来する繰返し単位の含有割合が、1〜70モル%であるものが好ましく、3〜50モル%であるものが更に好ましい。
尚、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、前記他のラジカル重合性単量体との共重合反応には、公知の溶液重合法が適用される。使用する溶剤はラジカル重合に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機溶剤を使用することができる。
その溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等の酢酸エステル類;エチレングリコールジアルキルエーテル類;メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、オクタン、デカン等の炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶剤の使用量は得られる共重合体100重量部に対し、通常30〜1000重量部、好ましくは50〜800重量部である。溶剤の使用量がこの範囲外では共重合体の分子量の制御が困難となる。
【0022】
又、共重合反応に使用されるラジカル重合開始剤は、ラジカル重合を開始できるものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機過酸化物触媒やアゾ化合物触媒を使用することができる。その有機過酸化物触媒としては、公知のケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートに分類されるものが挙げられる。その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシル−3、3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。又、アゾ化合物触媒としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミド等が挙げられる。これらの中から、重合温度に応じて、適当な半減期のラジカル重合開始剤が1種又は2種以上使用される。ラジカル重合開始剤の使用量は、共重合反応に使用される単量体の合計100重量部に対して、0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。
共重合反応は、共重合反応に使用される単量体及びラジカル重合開始剤を溶剤に溶解し、攪拌しながら昇温して行ってもよいし、ラジカル重合開始剤を添加した単量体を、昇温、攪拌した溶剤中に滴下して行ってもよい。又、溶剤中にラジカル重合開始剤を添加し昇温した中に単量体を滴下してもよい。反応条件は目標とする分子量に応じて自由に変えることができる。
【0023】
本発明において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと前記他のラジカル重合性単量体との共重合体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体に由来する繰返し単位10〜95モル%と、からなるものが好ましく、前者20〜80モル%と、後者80〜20モル%とからなるものが更に好ましく、前者30〜70モル%と、後者70〜30モル%とからなるものが特に好ましい。
エポキシ基含有(メタ)アクリレートが少なすぎると、後述する重合性成分及びアルカリ可溶性成分の付加量が不十分となるおそれがあり、一方、エポキシ基含有(メタ)アクリレートが多すぎて、他のラジカル重合性単量体が少なすぎると、耐熱性や強度が不十分となる可能性がある。
【0024】
続いて、エポキシ樹脂含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体のエポキシ基部分に、不飽和一塩基酸(重合性成分)と、多塩基酸無水物(アルカリ可溶性成分)とを反応させる。
エポキシ基に付加させる不飽和一塩基酸としては、公知のものを使用することができ、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。
具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、α−位がハロアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基などで置換された(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。中でも好ましくは(メタ)アクリル酸である。これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダ樹脂に重合性を付与することができる。
【0025】
これらの不飽和一塩基酸は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%に付加させる。不飽和一塩基酸の付加割合が少なすぎると、硬化性組成物の経時安定性等に関して、残存エポキシ基による悪影響が懸念される。尚、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0026】
更に、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させたときに生じる水酸基に付加させる多塩基酸無水物としては、公知のものが使用できる。
例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の三塩基以上の酸の無水物が挙げられる。中でも、テトラヒドロ無水フタル酸、及び/又は無水コハク酸が好ましい。これらの多塩基酸無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダ樹脂にアルカリ可溶性を付与することができる。
【0027】
これらの多塩基酸無水物は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基に、不飽和一塩基酸を付加させることにより生じる水酸基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは20〜90モル%、より好ましくは30〜80モル%に付加させる。この付加割合が多すぎると、現像時の残膜率が低下するおそれがあり、少なすぎると溶解性が不十分となる可能性がある。尚、当該水酸基に多塩基酸無水物を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0028】
更に、光感度を向上させるために、前述の多塩基酸無水物を付加させた後、生成したカルボキシル基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートや重合性不飽和基を有するグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。
また、現像性を向上させるために、生成したカルボキシル基の一部に、重合性不飽和基を有さないグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。
又、この両方を付加させてもよい。
重合性不飽和基を有さないグリシジルエーテル化合物の具体例としては、フェニル基やアルキル基を有するグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。市販品として、例えば、ナガセ化成工業社製の商品名「デナコールEX−111」、「デナコールEX−121」、「デナコールEX−141」、「デナコールEX−145」、「デナコールEX−146」、「デナコールEX−171」、「デナコールEX−192」等がある。
尚、このような樹脂の構造に関しては、例えば特開平8−297366号公報や特開2001−89533号公報に記載されており、既に公知である。
【0029】
上述のバインダ樹脂の、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3000〜100000が好ましく、5000〜50000が特に好ましい。分子量が3000未満であると、耐熱性や膜強度に劣る可能性があり、100000を超えると現像液に対する溶解性が不足する傾向がある。又、分子量分布の目安として、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は、2.0〜5.0が好ましい。
【0030】
(A−2):カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂
カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基を有していれば特に限定されず、通常、カルボキシル基を含有する重合性単量体を重合して得られる。
カルボキシル基含有重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフタル酸等のビニル系単量体;アクリル酸にε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類を付加させたものである単量体;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにコハク酸、マレイン酸、フタル酸、或いはそれらの無水物等の酸或いは無水物を付加させた単量体等が挙げられる。これらは複数種使用してもよい。
中でも好ましいのは、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸であり、更に好ましいのは、(メタ)アクリル酸である。
【0031】
又、カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂は、上記のカルボキシル基含有重合性単量体に、カルボキシル基を有さない他の重合性単量体を共重合させてもよい。
他の重合性単量体としては、特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン及びその誘導体等のビニル芳香族類;N−ビニルピロリドン等のビニル化合物類;N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等のN−置換マレイミド類;ポリメチル(メタ)アクリレートマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマー、ポリ2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートマクロモノマー、ポリエチレングリコールマクロモノマー、ポリプロピレングリコールマクロモノマー、ポリカプロラクトンマクロモノマー等のマクロモノマー類等が挙げられる。これらは複数種併用してもよい。
特に好ましいのは、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミドである。
【0032】
カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂が、さらに水酸基を有していてもよい。水酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを上述の各種単量体と共重合させることにより、カルボキシル基および水酸基を有する樹脂を得ることができる。
【0033】
カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂として、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸と、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルマレイミド等の水酸基を含まない重合性単量体と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体との共重合体;(メタ)アクリル酸と、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体;(メタ)アクリル酸とスチレンとの共重合体;(メタ)アクリル酸とスチレンとα−メチルスチレンとの共重合体;(メタ)アクリル酸とシクロヘキシルマレイミドとの共重合体等が挙げられる。
顔料分散性に優れる点からは、特にベンジル(メタ)アクリレートを含む共重合体樹脂が好ましい。
【0034】
本発明におけるカルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂の酸価は、通常30〜500KOHmg/g、好ましくは40〜350KOHmg/g、さらに好ましくは50〜300KOHmg/gである。
また、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常2000〜80000、好ましくは3000〜50000、さらに好ましくは4000〜30000である。重量平均分子量が小さすぎると、硬化性組成物の安定性に劣る傾向があり、大きすぎると、後述するカラーフィルターや液晶表示装置に使用する場合に、現像液に対する溶解性が悪化する傾向がある。
【0035】
(A−3):(A−2)樹脂のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂
前記(A−2)カルボキシル基含有樹脂の、カルボキシル基部分にエポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂も特に好ましい。
エポキシ基含有不飽和化合物としては、分子内にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有するものであれば特に限定されるものではない。
例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジル−α−エチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、N−(3,5−ジメチル−4−グリシジル)ベンジルアクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等の非環式エポキシ基含有不飽和化合物も挙げることができるが、耐熱性や、後述する顔料の分散性の観点から、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物が好ましい。
【0036】
ここで、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、その脂環式エポキシ基として、例えば、2,3−エポキシシクロペンチル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、7,8−エポキシ〔トリシクロ[5.2.1.0]デシ−2−イル〕基等が挙げられる。又、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基に由来するものであるのが好ましく、好適な脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、下記一般式(3a)〜(3m)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【化4】

【0038】
式(3a)〜(3m)中、R11は水素原子又はメチル基を、R12はアルキレン基を、R13は2価の炭化水素基をそれぞれ示し、nは1〜10の整数である。
一般式(3a)〜(3m)における、R12のアルキレン基は、炭素数1〜10であるものが好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示できるが、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基である。又、R13の炭化水素基としては、炭素数が1〜10であるものが好ましく、アルキレン基、フェニレン基等が挙げられる。
【0039】
これらの脂環式エポキシ基含有不飽和化合物は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、一般式(3c)で表される化合物が好ましく、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
前記(A−2)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基部分に、前記エポキシ基含有不飽和化合物を付加させるには、公知の手法を用いることができる。例えば、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有不飽和化合物とを、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン等の3級アミン;ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;ピリジン、トリフェニルホスフィン等の触媒の存在下、有機溶剤中、反応温度50〜150℃で数時間〜数十時間反応させることにより、樹脂のカルボキシル基にエポキシ基含有不飽和化合物を導入することができる。
【0040】
エポキシ基含有不飽和化合物を導入したカルボキシル基含有樹脂の酸価は、通常10〜200KOHmg/g、好ましくは20〜150KOHmg/g、より好ましくは30〜150KOHmg/gである。
又、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常2000〜100000、好ましくは4000〜50000、更に好ましくは5000〜30000である。
(A−4):アクリル系樹脂
【0041】
(A−4)アクリル系樹脂としては、アクリル酸及び/又はアクリル酸エステルを単量体成分とし、これらを重合してなるポリマーをいう。好ましいアクリル系樹脂としては、例えば、(A−4−1):(メタ)アクリル酸及びベンジル(メタ)アクリレートを含む単量体成分を重合してなるポリマー、及び(A−4−2):下記一般式(4)及び/又は(5)で示される化合物を必須とする単量体成分を重合してなるポリマー、を挙げることができる。
【0042】
【化5】

【0043】
式(4)中、R1aおよびR2aは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
【0044】
【化6】

【0045】
式(5)中、R1bは水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Lは2価の連結基又は直接結合を表し、Xは下記式(6)で示される基又は置換されていてもよいアダマンチル基を示す。
【0046】
【化7】

【0047】
式(6)中、R2b、R3b、R4bはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、又は有機基を表し、L、Lは2価の連結基を、L3は2価の連結基又は直接結合を表し、L、L、Lの2以上が互いに結合し、環を形成してもよい。
(A−4−1):(メタ)アクリル酸及びベンジル(メタ)アクリレートを含む単量体成分を重合してなるポリマー
(メタ)アクリル酸及びベンジル(メタ)アクリレートを含む単量体成分を重合してなるポリマーは、顔料との親和性が高いという点で、好ましく用いられる。
単量体成分中における前記(メタ)アクリル酸及びベンジル(メタ)アクリレートの割合は、特に制限されないが、全単量体成分中(メタ)アクリル酸は、通常10〜90重量%、好ましくは15〜80重量%、さらに好ましくは20〜70重量%である。また、ベンジル(メタ)アクリレートは、全単量体成分中、通常5〜90重量%、好ましくは15〜80重量%、さらに好ましくは20〜70重量%である。(メタ)アクリル酸の量が多すぎると、現像の際、塗膜表面が荒れやすくなり、少なすぎると、現像不可能になる場合がある。また、ベンジル(メタ)アクリレートの量は、多すぎても少なすぎても、分散が困難になる傾向がある。
【0048】
(A−4−2):一般式(4)及び/又は(5)で示される化合物を必須とする単量体成分を重合してなるポリマー
まず、一般式(4)の化合物について説明する。
一般式(4)で表されるエーテルダイマーにおいて、R1aおよびR2aで表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。なお、R1aおよびR2aは、同種の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
【0049】
前記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0050】
前記(A−4)アクリル系樹脂を得る際の、単量体成分中における前記エーテルダイマーの割合は、特に制限されないが、全単量体成分中、通常2〜60重量%、好ましくは5〜55重量%、さらに好ましくは5〜50重量%である。エーテルダイマーの量が多すぎると、重合の際、低分子量のものを得ることが困難になったり、あるいはゲル化し易くなったりするおそれがあり、一方、少なすぎると、透明性や耐熱性などの塗膜性能が不充分となるおそれがある。
【0051】
続いて、一般式(5)の化合物について説明する。
一般式(5)中、R1bは、好ましくは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基を表し、さらに好ましくは水素原子、メチル基である。
また、一般式(6)中、R2b、R3b、R4bの有機基としては、それぞれ独立に、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、カルボキシル基、又はアシルオキシ基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のシクロアルケニル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のアルキルチオ基、炭素数1〜15のアシル基、炭素数1のカルボキシル基、又は炭素数1〜15のアシルオキシ基であり、更に好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数3〜15のシクロアルキル基である。
2b、R3b、R4bの中で好ましい置換基としては、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基である。
1、L2は2価の連結基、L3は2価の連結基又は直接結合であれば特に限定を受けないが、少なくともL1又はL2のどちらかは炭素数1以上の連結基であるのが好ましい。また、L1、L2、L3はそれぞれ独立に、直接結合、炭素数1〜15のアルキレン、−O−、−S−、−C(=O)−、炭素数1〜15のアルケニレン、フェニレン、あるいはそれらの組み合わせが好ましい。
1、L2、L3の好ましい組合せとしては、L3は直接結合、炭素数1〜5のアルキレン、又はR3bあるいはR4bと結合して形成する環であり、L1、L2は炭素数1〜5のアルキレンである。
また、一般式(6)の好ましいものとしては、下記一般式(7)で示される化合物を挙げることができる。
【0052】
【化8】

【0053】
式(7)中、R2b、R3b、R4b、L1、L2は、式(6)におけると同義であり、R5b、R6bはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、又は有機基を表わす。
一般式(7)中、R5b、R6bの有機基としては、それぞれ独立に、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、カルボキシル基、又はアシルオキシ基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のシクロアルケニル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のアルキルチオ基、炭素数1〜15のアシル基、炭素数1のカルボキシル基、又は炭素数1〜15のアシルオキシ基であり、更に好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数3〜15のシクロアルキル基である。
5b、R6bの中で好ましい置換基としては、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基である。
また、R1bのアルキル基、R2b、R3b、R4b、の各有機基、L1、L2、L3の2価の連結基、Xのアダマンチル基は、それぞれ独立して置換基を有していてよく、具体的には以下の置換基を挙げることができる。
【0054】
ハロゲン原子;水酸基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、t−オクチル基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜18のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18のシクロアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、アミルオキシ基、t−アミルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、t−オクチルオキシ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、アミルチオ基、t−アミルチオ基、n−ヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、t−オクチルチオ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6〜18のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基;ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基;ビニルチオ基、プロペニルチオ基、ヘキセニルチオ基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニルチオ基;−COR17で表されるアシル基;カルボキシル基;−OCOR18で表されるアシルオキシ基;−NR1920で表されるアミノ基;−NHCOR21で表されるアシルアミノ基;−NHCOOR22で表されるカーバメート基;−CONR2324で表されるカルバモイル基;−COOR25で表されるカルボン酸エステル基;−SO3NR2627で表されるスルファモイル基;−SO328で表されるスルホン酸エステル基;2−チエニル基、2−ピリジル基、フリル基、オキサゾリル基、ベンゾキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、ピロリジニル基、テトラヒドロチオフェンジオキサイド基等の飽和もしくは不飽和の複素環基;トリメチルシリル基などのトリアルキルシリル基等。
なお、R17〜R28は、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。
また、上記置換基の位置関係は特に限定されず、複数の置換基を有する場合、同種でも異なっていてもよい。
一般式(5)で表される化合物の具体例としては下記が挙げられる。
【0055】
【化9】

【0056】
【化10】

【0057】
本発明に係る(A−4−2)ポリマーを構成する単量体成分中、一般式(5)の割合は、特に制限されないが、通常は全単量体成分中0.5〜60重量%、好ましくは1〜55重量%、さらに好ましくは5〜50重量%である。多すぎると、分散剤として使用する場合、分散体の分散安定性が低下するおそれがあり、一方、少なすぎると、地汚れ適性が低下するおそれがある。
【0058】
(A−4−3)(A−4)アクリル系樹脂について
本発明における(A−4)アクリル系樹脂は、(A−4−1)および(A−4−2)で述べたポリマーを含め、いずれも酸基を有することが好ましい。酸基を有することにより、得られる硬化性組成物が、酸基とエポキシ基が反応してエステル結合を形成する架橋反応(以下、酸−エポキシ硬化と略する)により硬化が可能な硬化性組成物、あるいは未硬化部をアルカリ現像液で顕像可能な組成物、とすることができる。前記酸基としては、特に制限されないが、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基等が挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0059】
アクリル系樹脂に酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマーおよび/または「重合後に酸基を付与しうるモノマー」(以下「酸基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として使用すればよい。なお「重合後に酸基を付与しうるモノマー」を単量体成分として使用する場合には、重合後に、後述するような酸基を付与するための処理が必要となる。
【0060】
前記酸基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;N−ヒドロキシフェニルマレイミド等のフェノール性水酸基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー等が挙げられるが、これらの中でも特に、(メタ)アクリル酸が好ましい。
前記重合後に酸基を付与しうるモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。
これら酸基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0061】
アクリル系樹脂を得る際の単量体成分が、前記酸基を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は全単量体成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%である。
また(A−4)アクリル系樹脂は、ラジカル重合性二重結合を有するものであってもよい。
【0062】
前記アクリル系樹脂にラジカル重合性二重結合を導入するには、例えば「重合後にラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマー」(以下「ラジカル重合性二重結合を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合した後に、後述するようなラジカル重合性二重結合を付与するための処理を行えばよい。
重合後にラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマー等が挙げられる。これらラジカル重合性二重結合を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0063】
(A−4)アクリル系樹脂を得る際の単量体成分が、前記ラジカル重合性二重結合を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は全単量体成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%である。
本発明の(A−4)アクリル系樹脂が、(A−4−2)の項で説明した、前記一般式(4)の化合物を必須の単量体成分とするポリマーである場合、エポキシ基を有することが好ましい。
エポキシ基を導入するには、例えば、エポキシ基を有するモノマー(以下「エポキシ基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合すればよい。
【0064】
前記エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらエポキシ基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
(A−4)アクリル系樹脂を得る際の単量体成分が、前記エポキシ基を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は全単量体成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%であるのがよい。
【0065】
(A−4)アクリル系樹脂を得る際の単量体成分は、上記必須の単量体成分のほかに、必要に応じて、他の共重合可能なモノマーを含んでいてもよい。
他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸メチル2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類;ブタジエン、イソプレン等のブタジエンまたは置換ブタジエン化合物;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリロニトリル等のエチレンまたは置換エチレン化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレンが、透明性が良好で、耐熱性を損ないにくい点で好ましい。これら共重合可能な他のモノマーは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
また、特に(A−4)アクリル系樹脂の一部または全部を、後述するように分散剤として用いる場合は、(メタ)アクリル酸ベンジルを用いることが好ましく、その含有量は、通常全単量体成分中1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%であるのがよい。
【0066】
前記アクリル系樹脂を得る際の単量体成分が、前記共重合可能な他のモノマーをも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、95重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましい。
【0067】
次に、(A−4)アクリル系樹脂の製造方法(重合方法)について説明する。
前記単量体成分の重合方法に特に制限はなく、従来公知の各種方法を採用することができるが、特に、溶液重合法によることが好ましい。なお、重合温度や重合濃度(重合濃度=[単量体成分の全重量/(単量体成分の全重量+溶媒重量)]×100とする)は、使用する単量体成分の種類や比率、目標とするポリマーの分子量によって異なる。重合温度に関しては、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは重合温度60〜130℃である。また重合濃度に関しては、好ましくは重合濃度5〜50%、さらに好ましくは10〜40%である。
【0068】
また、重合時に溶媒を用いる場合には、通常のラジカル重合反応で使用される溶媒を用いればよい。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これら溶媒は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0069】
前記単量体成分を重合する際には、必要に応じて、重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に特に制限は無いが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物が挙げられる。これら重合開始剤は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
なお、開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件、目標とするポリマーの分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万のポリマーを得ることができる点で、通常は全単量体成分に対して0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0070】
また分子量調整のために、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸メチル等のメルカプタン系連鎖移動剤、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられるが、好ましくは、連鎖移動効果が高く、残存モノマーを低減でき、入手も容易な、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸がよい。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件、目標とするポリマーの分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万のポリマーを得ることができる点で、通常は全単量体成分に対して0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0071】
なお、一般式(4)の化合物を必須の単量体成分として使用する場合、前記重合反応においては、エーテルダイマーの環化反応が同時に進行するものと考えられるが、このときのエーテルダイマーの環化率は必ずしも100モル%である必要はない。
前記アクリル系樹脂を得る際に、単量体成分として、前述した酸基を付与しうるモノマーを用いることにより酸基を導入する場合、重合後に酸基を付与するための処理を行う必要がある。該処理は、用いるモノマーの種類によって異なるが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するモノマーを用いた場合には、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物等の酸無水物を付加させればよい。グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマーを用いた場合には、N−メチルアミノ安息香酸、N−メチルアミノフェノール等のアミノ基と酸基を有する化合物を付加させるか、もしくは、まず(メタ)アクリル酸のような酸を付加させ、結果生じた水酸基に、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物等の酸無水物を付加させればよい。2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマーを用いた場合には、例えば、2−ヒドロキシ酪酸等の水酸基と酸基を有する化合物を付加させればよい。
【0072】
前記アクリル系樹脂を得る際に、単量体成分として、前述したラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマーを用いることによりラジカル重合性二重結合を導入する場合、重合後にラジカル重合性二重結合を付与するための処理を行う必要がある。
該処理は、用いるモノマーの種類によって異なるが、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマーを用いた場合には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等の、エポキシ基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させればよい。無水マレイン酸や無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマーを用いた場合には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の、水酸基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させればよい。グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等の、エポキシ基を有するモノマーを用いた場合には、(メタ)アクリル酸等の酸基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させればよい。
【0073】
本発明の(A−4)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくはGPCにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2000〜200000、より好ましくは4000〜100000である。重量平均分子量が200000を超える場合、高粘度となりすぎ塗膜を形成しにくくなる場合があり、一方2000未満であると、十分な耐熱性を発現しにくくなる傾向がある。
前記アクリル系樹脂が酸基を有する場合、好ましい酸価は30〜500mgKOH/g、より好ましくは50〜400mgKOH/gである。酸価が30mgKOH/g未満の場合、アルカリ現像に適用することが難しくなる場合があり、500mgKOH/gを超える場合、高粘度となりすぎ塗膜を形成しにくくなる傾向がある。
【0074】
尚、前記アクリル系樹脂成分のうち、一般式(4)で示される化合物を必須の単量体成分とするポリマーは、それ自体公知の化合物であり、例えば、特開2004−300203号公報及び特開2004−300204号公報に記載の化合物を挙げることが出来る。
【0075】
(A−5):カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂
エポキシアクリレート樹脂は、エポキシ樹脂にα,β−不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸無水物を反応させることにより合成される。かかる反応生成物は化学構造上、実質的にエポキシ基を有さず、かつ「アクリレート」に限定されるものではないが、エポキシ樹脂が原料であり、かつ「アクリレート」が代表例であるので、慣用に従いこのように命名したものである。
【0076】
原料となるエポキシ樹脂として、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、油化シェルエポキシ社製の「エピコート828」、「エピコート1001」、「エピコート1002」、「エピコート1004」等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「NER−1302」(エポキシ当量323,軟化点76℃))、ビスフェノールF型樹脂(例えば、油化シェルエポキシ社製の「エピコート807」、「EP−4001」、「EP−4002」、「EP−4004等」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「NER−7406」(エポキシ当量350,軟化点66℃))、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルグリシジルエーテル(例えば、油化シェルエポキシ社製の「YX−4000」)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN−201」、油化シェルエポキシ社製の「EP−152」、「EP−154」、ダウケミカル社製の「DEN−438」)、(o,m,p−)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EOCN−102S」、「EOCN−1020」、「EOCN−104S」)、トリグリシジルイソシアヌレート(例えば、日産化学社製の「TEPIC」)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN−501」、「EPN−502」、「EPPN−503」)、フルオレンエポキシ樹脂(例えば、新日鐵化学社製のカルドエポキシ樹脂「ESF−300」)、脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製の「セロキサイド2021P」、「セロキサイドEHPE」)、ジシクロペンタジエンとフェノールの反応によるフェノール樹脂をグリシジル化したジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「XD−1000」、大日本インキ社製の「EXA−7200」、日本化薬社製の「NC−3000」、「NC−7300」)、および下記構造式で示されるエポキシ樹脂(特許第2878486号公報参照)、等を好適に用いることができる。
【化11】

これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
エポキシ樹脂の他の例としては共重合型エポキシ樹脂が挙げられる。共重合型エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルメチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイドなど(以下「共重合型エポキシ樹脂の第1成分」と称す。)とこれら以外の1官能エチレン性不飽和基含有化合物(以下、「共重合型エポキシ樹脂の第2成分」と称す。)、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、α−メチルスチレン、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、下記一般式(8)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上、とを反応させて得られた共重合体が挙げられる。
【0078】
【化12】

式(8)中、R61は水素又はエチル基、R62は水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、rは2〜10の整数である。
【0079】
一般式(8)の化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、等のアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0080】
上記共重合型エポキシ樹脂の分子量は約1000〜200000が好ましい。また、上記共重合型エポキシ樹脂の第1成分の使用量は、上記共重合型エポキシ樹脂の第2成分に対して好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。
【0081】
このような共重合型エポキシ樹脂としては、具体的には日本油脂社製の「CP−15」、「CP−30」、「CP−50」、「CP−20SA」、「CP−510SA」、「CP−50S」、「CP−50M」、「CP−20MA」等が例示される。
【0082】
原料エポキシ樹脂の分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量として、通常200〜20万、好ましくは300〜100000の範囲である。重量平均分子量が上記範囲未満であると被膜形成性に問題を生じる場合が多く、逆に、上記範囲を越えた樹脂ではα,β−不飽和モノカルボン酸の付加反応時にゲル化が起こりやすく製造が困難となるおそれがある。
【0083】
α,β−不飽和モノカルボン酸としては、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸及びメタクリル酸であり、特にアクリル酸が反応性に富むため好ましい。
エステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとしては、アクリル酸−2−サクシノイルオキシエチル、アクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル、アクリル酸−2−フタロイルオキシエチル、アクリル酸−2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、メタクリル酸−2−サクシノイルオキシエチル、メタクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル、メタクリル酸−2−フタロイルオキシエチル、メタクリル酸−2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、クロトン酸−2−サクシノイルオキシエチル等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル及びアクリル酸−2−フタロイルオキシエチルであり、特にアクリル酸−2−マレイノイルオキシエチルが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
α,β−不飽和モノカルボン酸又はそのエステルとエポキシ樹脂との付加反応は、公知の手法を用いることができ、例えば、エステル化触媒存在下、50〜150℃の温度で反応させることにより実施することができる。エステル化触媒としてはトリエチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等の3級アミン;テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩等を用いることができる。
【0085】
α,β−不飽和モノカルボン酸又はそのエステルの使用量は、原料エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対し0.5〜1.2当量の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.1当量の範囲である。α,β−不飽和モノカルボン酸又はそのエステルの使用量が少ないと不飽和基の導入量が不足し、引き続く多塩基酸無水物との反応も不十分となる。また、多量のエポキシ基が残存することも有利ではない。一方、該使用量が多いとα,β−不飽和モノカルボン酸又はそのエステルが未反応物として残存する。いずれの場合も硬化特性が悪化する傾向が認められる。
【0086】
α,β−不飽和カルボン酸又はそのエステルが付加したエポキシ樹脂に、更に付加させる多塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、好ましくは、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、特に好ましい化合物は、無水テトラヒドロフタル酸及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
多塩基酸無水物の付加反応に関しても公知の手法を用いることができ、α,β−不飽和カルボン酸又はそのエステルの付加反応と同様な条件下で継続反応させることにより実施することができる。
多塩基酸無水物の付加量は、生成するエポキシアクリレート樹脂の酸価が10〜150mg−KOH/gの範囲となるような量が好ましく、更に20〜140mg−KOH/gの範囲が特に好ましい。樹脂の酸価が小さすぎるとアルカリ現像性に乏しくなり、また、樹脂の酸価が大きすぎると硬化性能に劣る傾向が認められる。
【0088】
その他、カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂としては、例えば特開平6−49174号公報記載のナフタレン含有樹脂;特開2003−89716、特開2003−165830、特開2005−325331、特開2001−354735号公報記載のフルオレン含有樹脂;特開2005−126674、特開2005−55814、特開2004−295084号公報等に記載の樹脂を挙げることができる。
また、市販のカルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂を用いることもでき、市販品としては例えばダイセル社製の「ACA−200M」等を挙げることが出来る。
【0089】
バインダ樹脂としては、また、例えば特開2005−154708号公報などに記載のアクリル系のバインダーも用いることができる。
【0090】
本発明における(A)バインダ樹脂としては、前述の各種バインダ樹脂のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前述の各種バインダ樹脂は、特に後述する(E)分散剤等との併用で、基板上の非画像部に未溶解物が残存することなく、基板との密着性に優れた、高濃度の色画素を形成し得るといった効果を奏し、好ましい。
本発明の硬化性組成物において、(A)バインダ樹脂の含有割合は、全固形分中、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上であり、又、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下である。バインダ樹脂の含有量がこの範囲よりも少ないと、膜が脆くなり、基板への密着性が低下することがある。逆に、この範囲よりも多いと、露光部への現像液の浸透性が高くなり、画素の表面平滑性や感度が悪化する場合がある。
【0091】
[1−5](B)単量体
本発明の硬化性組成物は、単量体を含有するのが好ましい。単量体は、重合可能な低分子化合物であれば特に制限はないが、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する付加重合可能な化合物(以下、「エチレン性化合物」と言う場合がある。)が好ましい。
エチレン性化合物は、本発明の硬化性組成物が活性光線の照射を受けた場合、後述する光重合開始系の作用により付加重合し、硬化するようなエチレン性二重結合を有する化合物である。尚、本発明における単量体は、いわゆる高分子物質に相対する概念を意味し、狭義の単量体以外に二量体、三量体、オリゴマーも含有する。
【0092】
エチレン性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、モノヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び前述の脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル、ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物等が挙げられる。
【0093】
脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。又、これらアクリレートの(メタ)アクリル酸部分を、イタコン酸部分に代えたイタコン酸エステル、クロトン酸部分に代えたクロトン酸エステル、或いは、マレイン酸部分に代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
又、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、ハイドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。又、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステルは、必ずしも単一物ではなく、混合物であってもよい。代表例としては、(メタ)アクリル酸、フタル酸、及びエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及びジエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、テレフタル酸、及びペンタエリスリトールの縮合物;(メタ)アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール、及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
【0094】
ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ〔1,1,1−トリ(メタ)アクリロイルオキシメチル〕プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物との反応物が挙げられる。
【0095】
その他、本発明に用いられるエチレン性化合物の例としては、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が挙げられる。
又、エチレン性化合物は酸価を有する単量体であってもよい。酸価を有する単量体としては、例えば、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能単量体が好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。これらの単量体は1種を単独で用いてもよいが、製造上、単一の化合物を得ることは難しいことから、2種以上を混合して用いてもよい。又、必要に応じて単量体として酸基を有しない多官能単量体と酸基を有する多官能単量体を併用してもよい。
【0096】
酸基を有する多官能単量体の好ましい酸価としては、0.1〜40mg・KOH/gであり、特に好ましくは5〜30mg・KOH/gである。多官能単量体の酸価が低すぎると現像溶解特性が低下する傾向があり、高すぎると製造や取扱いが困難になる場合があり、また光重合性能が落ちたり、画素の表面平滑性等の硬化性が劣る場合がある。従って、異なる酸基の多官能単量体を2種以上併用する場合、或いは酸基を有しない多官能単量体を併用する場合、全体の多官能単量体としての酸基が上記範囲に入るように調整することが好ましい。
本発明において、より好ましい酸基を有する多官能単量体は、東亞合成社製の「TO1382」として市販されているジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸エステルを主成分とする混合物である。この多官能単量体と他の多官能単量体を組み合わせて使用することもできる。
【0097】
本発明の硬化性組成物において、これらの単量体の含有割合は、全固形分中、通常0重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、又、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。又、後述する色材に対する比率は、通常0重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、又、通常200重量%以下、好ましくは100重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。
【0098】
[1−6](C)溶剤
本発明の硬化性組成物は、溶剤を必須成分とする。溶剤は、前記各成分を溶解又は分散させ、粘度を調節する機能を有する。
かかる溶剤としては、硬化性組成物を構成する各成分を溶解または分散させることができるものであればよく、沸点が100〜200℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120〜170℃の沸点をもつものである。
このような溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリプロピレングリコールメチルエーテルのようなグリコールモノアルキルエーテル類;
【0099】
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;
アミルエーテル、プロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルのようなエーテル類;
【0100】
アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトンのようなケトン類;
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンのような1価又は多価アルコール類;
n−ペンタン、n−オクタン、ジイソブチレン、n−ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンのような脂肪族炭化水素類;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;
【0101】
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;
アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトンのような鎖状又は環状エステル類;
3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;
【0102】
ブチルクロライド、アミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;
メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類;
アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類である。
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
上記溶剤中、塗布性、表面張力などのバランスが良く、組成物中の構成成分の溶解度が比較的高い点からは、グリコールアルキルエーテルアセテート類が好ましい。
また、グリコールアルキルエーテルアセテート類は、単独で使用してもよいが、他の溶剤を併用してもよい。併用する溶剤として、特に好ましいのはグリコールモノアルキルエーテル類である。中でも、特に組成物中の構成成分の溶解性からプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。なお、グリコールモノアルキルエーテル類は極性が高く、添加量が多すぎるとレジスト顔料が凝集しやすく、硬化性組成物の粘度が上がっていくなどの保存安定性が低下する傾向があるので、(C)溶剤中のグリコールモノアルキルエーテル類の割合は5%〜30%が好ましく、5%〜20%がより好ましい。
また、150℃以上の沸点をもつ溶剤を併用することも好ましい。このような溶剤を併用することにより、硬化性組成物は乾きにくくなるが、急激に乾燥することによる顔料分散体の相互関係(後述する)の破壊を起こし難くする効果がある。高沸点溶剤の含有量は、(C)溶剤に対して3%〜50%が好ましく、5%〜40%がより好ましく、5%〜30%が特に好ましい。
なお沸点150℃以上の溶剤が、グリコールアルキルエーテルアセテート類であっても、またグリコールアルキルエーテル類であってもよく、この場合は、沸点150℃以上の溶剤を別途含有させなくてもかまわない。
本発明の硬化性組成物において、(C)溶剤の含有割合に特に制限はないが、その上限は通常99重量%とする。溶剤が99重量%を超える場合は、溶剤を除く各成分の濃度が小さくなり過ぎて、塗布膜を形成するには不適当となるおそれがある。一方、溶剤含有割合の下限値は、塗布に適した粘性等を考慮して、通常75重量%、好ましくは80重量%、更に好ましくは82重量%である。
【0104】
[1−7](D)顔料
本発明の硬化性組成物は、(D)顔料を必須成分とし、例えばカラーフィルターの画素等を形成する場合には、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料等各種の色の顔料を使用することができる。又、その化学構造としては、例えばアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料が挙げられる。この他に種々の無機顔料等も利用可能である。以下、使用できる顔料の具体例をピグメントナンバーで示す。以下に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0105】
赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、1 01、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276を挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントレッド48:1、122、168、177、202、206、207、209、224、242、254であり、更に好ましくはC.I.ピグメントレッド177、209、224、254である。
【0106】
青色顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79を挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6であり、更に好ましくはC.I.ピグメントブルー15:6である。
【0107】
緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55を挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントグリーン7、36である。
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208を挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、150、154、155、180、185であり、更に好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、138、139、150、180である。
【0108】
紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50を挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントバイオレット19、23であり、更に好ましくはC.I.ピグメントバイオレット23である。
【0109】
オレンジ顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79を挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントオレンジ38、71である。
【0110】
又、無機顔料として、硫酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、黄色鉛、ベンガラ、酸化クロム等が挙げられる。
上記の各種の顔料は、複数種を併用することもできる。例えば、色度の調整のために、顔料として、緑色顔料と黄色顔料とを併用したり、青色顔料と紫色顔料とを併用したりすることができる。
尚、これらの顔料は、平均粒径が通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下となるよう分散処理して使用する。
【0111】
本発明の硬化性組成物を使用してカラーフィルタの樹脂ブラックマトリックスを形成する場合には、黒色顔料を使用することができる。また黒色顔料を単独で使用してもよく、赤色、緑色、青色等の顔料を混合して使用してもよい。これら色材は、無機又は有機の顔料の中から適宜選択することができる。無機顔料、有機顔料は、平均粒径が、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下となるよう分散して使用するのが好ましい。
【0112】
単独使用可能な黒色顔料としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、チタンブラック等が挙げられる。これらの中では、遮光率、画像特性の観点からカーボンブラック、チタンブラックが好ましい。
カーボンブラックの例としては、例えば、三菱化学社製の商品として、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA220、MA230、MA600、#5、#10、#20、#25、#30、#32、#33、#40、#44、#45、#47、#50、#52、#55、#650、#750、#850、#950、#960、#970、#980、#990、#1000、#2200、#2300、#2350、#2400、#2600、#3050、#3150、#3250、#3600、#3750、#3950、#4000、#4010、OIL7B、OIL9B、OIL11B、OIL30B、OIL31B等が、デグサ社製の商品として、Printex3、Printex3OP、Printex30、Printex30OP、Printex40、Printex45、Printex55、Printex60、Printex75、Printex80、Printex85、Printex90、Printex A、Print ex L、Printex G、Printex P、Printex U、Printex V、PrintexG、SpecialBlack550、SpecialBlack 350、SpecialBlack250、SpecialBlack100、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S160、Color Black S170等が、キャボット社製の商品として、Monarch120、Monarch280、Monarch460、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、Monarch4630、REGAL99、REGAL99R、REGAL415、REGAL415R、REGAL250、REGAL250R、REGAL330、REGAL400R、REGAL55R0、REGAL660R、BLACK PEARLS480、PEARLS130、VULCAN XC72R、ELFTEX−8等が、コロンビヤンカーボン社製の商品として、RAVEN11、RAVEN14、RAVEN15、RAVEN16、RAVEN22RAVEN30、RAVEN35、RAVEN40、RAVEN410、RAVEN420、RAVEN450、RAVEN500、RAVEN780、RAVEN850、RAVEN890H、RAVEN1000、RAVEN1020、RAVEN1040、RAVEN1060U、RAVEN1080U、RAVEN1170、RAVEN1190U、RAVEN1250、RAVEN1500、RAVEN2000、RAVEN2500U、RAVEN3500、RAVEN5000、RAVEN5250、RAVEN5750、RAVEN7000等が、それぞれ挙げられる。
尚、高い光学濃度及び高い表面抵抗率を有する樹脂ブラックマトリックスの製造には樹脂被覆されたカーボンブラックを用いるのが特に好ましい。なお、樹脂被覆されたカーボンブラックは、例えば特開平9−26571号公報、同9−71733号公報、同9−95625号公報、同9−238863号公報、又は同11−60989号公報に記載の方法で、公知のカーボンブラックを処理することにより、得ることが出来る。
【0113】
又、チタンブラックの作製方法としては、二酸化チタンと金属チタンの混合体を還元雰囲気下で加熱し還元させる方法(特開昭49−5432号公報)、四塩化チタンの高温加水分解で得られた超微細二酸化チタンを、水素を含む還元雰囲気中で還元する方法(特開昭57−205322号公報)、二酸化チタン又は水酸化チタンをアンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭60−65069号公報、特開昭61−201610号公報)、二酸化チタン又は水酸化チタンにバナジウム化合物を付着させ、アンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭61−201610号公報)、等があるがこれらに限定されるものではない。チタンブラックの市販品の例としては、三菱マテリアル社製のチタンブラック10S、12S、13R、13M、13M−C等が挙げられる。
【0114】
他の黒色顔料の例としては、赤色、緑色、青色の三色の顔料を混合して黒色顔料として用いることができる。黒色顔料を調製するために混合使用可能な色材としては、ビクトリアピュアブルー(42595)、オーラミンO(41000)、カチロンブリリアントフラビン(ベーシック13)、ローダミン6GCP(45160)、ローダミンB(45170)、サフラニンOK70:100(50240)、エリオグラウシンX(42080)、No.120/リオノールイエロー(21090)、リオノールイエローGRO(21090)、シムラーファーストイエロー8GF(21105)、ベンジジンイエロー4T−564D(21095)、シムラーファーストレッド4015(12355)、リオノールレッド7B4401(15850)、ファーストゲンブルーTGR−L(74160)、リオノールブルーSM(26150)、リオノールブルーES(ピグメントブルー15:6)、リオノーゲンレッドGD(ピグメントレッド168)、リオノールグリーン2YS(ピグメントグリーン36)等が挙げられる。なお、上記の括弧内の数字は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
又、更に、他の混合使用可能な顔料について、C.I.ナンバーにて示すと、例えば、C.I.黄色顔料20、24、86、93、109、110、117、125、137、138、147、148、153、154、166、C.I.オレンジ顔料36、43、51、55、59、61、C.I.赤色顔料9、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、C.I.バイオレット顔料19、23、29、30、37、40、50、C.I.青色顔料15、15:1、15:4、22、60、64、C.I.緑色顔料7、C.I.ブラウン顔料23、25、26等を挙げることができる。
【0115】
本発明の硬化性組成物において、これら(D)顔料の含有割合は、全固形分中、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、又、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下である。
(D)顔料の割合が少な過ぎると、色濃度に対する膜厚が大きくなり過ぎて、液晶セル化の際のギャップ制御等に悪影響を及ぼすおそれがある。一方で、逆に(D)顔料の割合が多過ぎると、十分な画像形成性が得られなくなることがある。
なお、後述するカラーフィルターの各色の画素毎に、これを形成する硬化性組成物中の色材量を最適な範囲に調製することも好ましい。例えば、一般にカラーフィルターに設けられる赤色、緑色および青色画素を形成する場合、赤色硬化性組成物としては、好ましくは全固形分中15〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%の色材を含むものが挙げられ、緑色硬化性組成物としては、好ましくは全固形分中15〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%の色材を含むものが挙げられ、青色硬化性組成物としては、好ましくは全固形分中5〜35重量%、より好ましくは10〜30重量%の色材を含むものが挙げられる。
また、樹脂ブラックマトリックスの場合、黒色硬化性組成物としては、好ましくは全固形分中20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の色材を含むものが好ましい。
【0116】
[1−8](E)分散剤
本発明の硬化性組成物は、さらに(E)分散剤を含有することが好ましい。(E)分散剤の種類は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、(E−1):窒素原子を含有するグラフト共重合体、(E−2):窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体、(E−3):ウレタン樹脂分散剤から選ばれた1以上の分散剤を含有することが好ましい。
【0117】
(E−1):窒素原子を含有するグラフト共重合体、および(E−2):窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体は、これに含まれる窒素原子が顔料表面に対して親和性をもち、窒素原子以外の部分が媒質に対する親和性を高めることにより、全体として分散安定性の向上に寄与するものと推定される。
分散剤の性能は、その固体表面に対する吸着挙動により大きく左右される。分子のアーキテクチャーと吸着挙動の関係については、同じユニットを用いた場合は、ランダム共重合<グラフト共重合体<ブロック共重合体、の順で吸着挙動が優れていることが知られている。(例えば、Jones and Richards,”Polymers at Surfaces and Interfaces” p281)。
詳しいメカニズムは不明だが、以下のことが推察される。
即ち、通常のランダム共重合体の場合、共重合体を構成するモノマーは、重合体形成時に、立体的に及び/又は電気的に、共重合体中に安定的に配置される確率が高くなる。モノマーが安定的に配置された部分(分子)は、立体的に及び/又は電気的に安定しているため、顔料に吸着するとき、かえって障害となる場合がある。これに対し、グラフト共重合体あるいはブロック共重合体のように分子配列が制御された樹脂は、分散剤の吸着を妨げる部分を、顔料と分散剤との吸着部から離れた位置に配置することができる。つまり、顔料と分散剤との吸着部には吸着に最適な部分を、溶媒親和性が必要な部分にはそれに適した部分を配置することができる。特に結晶子サイズの小さい顔料を含有する色材の分散には、この分子配置が良好な分散性に影響するものと推察される。
【0118】
(E−1):窒素原子を含有するグラフト共重合体
窒素原子を含有するグラフト共重合体は、(D)顔料を極めて効率よく分散しうる点で好ましい。その理由は明らかではないが、顔料と分散剤との吸着の障害となる部分(分子)が、顔料への吸着部周辺に配置することを、積極的に排斥し得る構造を有しているためと推察される。窒素原子を含有するグラフト共重合体としては、主鎖に窒素原子を含有する繰り返し単位を有するものが好ましい。中でも、式(I)で表される繰り返し単位または/及び式(II)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0119】
【化13】

【0120】
式中、R51は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Aは水素原子または下記式(III)〜(V)のいずれかを表す。
式(I)中、R51は、メチレン、エチレン、プロピレン等の直鎖状または分岐状の炭素数1〜5のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2〜3であり、更に好ましくはエチレン基である。Aは水素原子または下記式(III)〜(V)のいずれかを表すが、好ましくは式(III)である。
【0121】
【化14】

【0122】
式(II)中、R51、Aは、式(I)のR51、Aと同義である。
【0123】
【化15】

【0124】
式(III)中、W1は炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、中でもブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等の炭素数4〜7のアルキレン基が好ましい。pは1〜20の整数を表し、好ましくは5〜10の整数である。
【0125】
【化16】

【0126】
式(IV)中、Y1は2価の連結基を表し、中でもエチレン、プロピレン等の炭素数1〜4のアルキレン基、又はエチレンオキシ、プロピレンオキシ等の炭素数1〜4のアルキレンオキシ基が好ましい。W2はエチレン、プロピレン、ブチレン等の直鎖状または分岐状の炭素数2〜10のアルキレン基を表し、中でもエチレン、プロピレン等の炭素数2〜3のアルキレン基が好ましい。Y2は水素原子または−CO−R52(R52はエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等の炭素数1〜10のアルキル基を表し、中でもエチル、プロピル、ブチル、ペンチル等の炭素数2〜5のアルキル基が好ましい。)を表す。qは、1〜20の整数を表し、好ましくは5〜10の整数である。
【0127】
【化17】

【0128】
式(V)中、W3は炭素数1〜50のアルキル基または水酸基を1〜5有する炭素数1〜50のヒドロキシアルキル基を表し、中でもステアリル等の炭素数10〜20のアルキル基、モノヒドロキシステアリル等の水酸基を1〜2個有する炭素数10〜20のヒドロキシアルキル基が好ましい。
本発明のグラフト共重合体における式(I)または(II)で表される繰り返し単位の含有率は、高い方が好ましく、通常50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上である。式(I)で表される繰り返し単位と、式(II)で表される繰り返し単位の、両方を併有してもよく、その含有比率に特に制限は無いが、式(I)の繰り返し単位を多く含有していた方が好ましい。式(I)または式(II)で表される繰り返し単位の合計数は、1分子中に通常1〜100、好ましくは10〜70、更に好ましくは20〜50である。
また、式(I)及び式(II)以外の繰り返し単位を含んでいてもよく、他の繰り返し単位としては、例えばアルキレン基、アルキレンオキシ基などが例示できる。本発明のグラフト共重合体は、その末端が−NH2及び−R51−NH2(R51は、前記R51と同義)のものが好ましい。
【0129】
尚、本発明のグラフト共重合体であれば、主鎖が直鎖状であっても分岐していてもよい。
本発明のグラフト共重合体のアミン価は、通常5〜100mgKOH/gであり、好ましくは10〜70mgKOH/gであり、更に好ましくは15〜40mgKOH/g以下である。アミン価が低すぎると分散安定性が低下し、粘度が不安定になることがあり、逆に高すぎると残渣が増加したり、液晶パネルを形成した後の電気特性が低下することがある。
【0130】
上記分散剤のGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、3000〜100000が好ましく、5000〜50000が特に好ましい。重量平均分子量が3000未満であると、色材の凝集を防ぐことができず、高粘度化ないしはゲル化してしまうことがあり、100000を超えるとそれ自体が高粘度となり、また有機溶媒への溶解性が不足する場合がある。
【0131】
上記分散剤の合成方法は、公知の方法が採用でき、例えば特公昭63−30057号公報に記載の方法を用いることができる。
本発明においては、上述のものと同様の構造を有する市販のグラフト共重合体を適用することもできる。
【0132】
(E−2):アクリル系ブロック共重合体
アクリル系ブロック共重合体は、(D)顔料を極めて効率よく分散しうる点で好ましい。その理由は明らかではないが、分子配列が制御されていることにより、分散剤が顔料に吸着する際に障害となる構造が少ないためと推察される。
アクリル系ブロック共重合体としては、側鎖に4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を有さないBブロックとからなる、A−Bブロック共重合体及び/又はB−A−Bブロック共重合体が好ましい。
【0133】
アクリル系ブロック共重合体のブロック共重合体を構成するAブロックは、4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を有する。
4級アンモニウム塩基は、好ましくは−N+313233・Z(但し、R31、R32及びR33は、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表す。或いは、R31、R32及びR33のうち2つ以上が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。Zは、対アニオンを表す。)で表わされる4級アンモニウム塩基を有する。この4級アンモニウム塩基は、直接主鎖に結合していてもよいが、2価の連結基を介して主鎖に結合していてもよい。
【0134】
−N+313233・Zにおいて、R31、R32及びR33のうち2つ以上が互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5〜7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。具体的には、例えば下記のものが挙げられる。
【0135】
【化18】

【0136】
上記式中、RはR31、R32、及びR33のうち何れかの基を表す。
これらの環状構造は、更に置換基を有していてもよい。
−N+313233におけるR31、R32、R33としては、それぞれ独立に、より好ましいのは、置換基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいベンジル基である。
【0137】
4級アンモニウム塩基を有するAブロックとしては、下記一般式(VI)で表わされる部分構造を含有するものが好ましい。
【0138】
【化19】

【0139】
上記一般式(VI)中、R31、R32、R33は各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表す。或いは、R31、R32、及びR33のうち2つ以上が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。R34は、水素原子又はメチル基を表す。Xは、2価の連結基を表し、Zは、対アニオンを表す。
一般式(VI)において、R31、R32、R33の炭化水素基は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20の芳香族基を有する置換基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ベンジル基、フェニル基等を挙げることができる。中でもメチル基、エチル基、プロピル基、ベンジル基が好ましい。
一般式(VI)において、2価の連結基Xとしては、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−R35−、−COO−R36−(但し、R35及びR36は、それぞれ独立に、直接結合、炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のエーテル基(−R37−O−R38−:R37及びR38は、各々独立にアルキレン基)を表わす。)等が挙げられ、好ましくは−COO−R36−である。
【0140】
また、対アニオンのZとしては、Cl-、Br-、I-、ClO4-、BF4-、CH3COO-、PF6-等が挙げられる。
Aブロックとしては、アミノ基を有するものが特に好ましい。アミノ基は、好ましくは−NR4142(但し、R41及びR42は、各々独立に、置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリル基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)で表わされ、更に好ましくは、下記式で表されるアミノ基が挙げられる。
【0141】
【化20】

【0142】
但し、R41及びR42は、上記のR41及びR42と同義、R43は炭素数1以上のアルキレン基、R44は水素原子又はメチル基を表す。)
中でも、R41及びR42はメチル基が好ましく、R43はメチレン基、エチレン基が好ましく、R44は水素原子であるのが好ましい。このような化合物として下記式で表される置換基が挙げられる。
【0143】
【化21】

【0144】
上記の如き特定の4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を含有する部分構造は、1つのAブロック中に2種以上含有されていてもよい。その場合、2種以上の4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基含有部分構造は、該Aブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合の何れの態様で含有されていてもよい。また、該4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を含有しない部分構造が、Aブロック中に含まれていてもよく、該部分構造の例としては、後述の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造等が挙げられる。かかる4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を含まない部分構造の、Aブロック中の含有量は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜20重量%であるが、かかる4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基非含有部分構造はAブロック中に含まれないことが最も好ましい。
【0145】
一方、分散剤のブロック共重合体を構成するBブロックとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチルアクリル酸グリシジルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸クロライドなどの(メタ)アクリル酸塩系モノマー;酢酸ビニル系モノマー;アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系モノマーなどのコモノマーを共重合させたポリマー構造が挙げられる。
【0146】
Bブロックは、特に下記一般式(VII)で表される、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造であることが好ましい。
【0147】
【化22】

【0148】
(一般式(VII)中、R39は、水素原子又はメチル基を表す。R40は、置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリル基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)
上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造は、1つのBブロック中に2種以上含有されていてもよい。もちろん該Bブロックは、更にこれら以外の部分構造を含有していてもよい。2種以上のモノマー由来の部分構造が、4級アンモニウム塩基を含有しないBブロック中に存在する場合、各部分構造は該Bブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合の何れの態様で含有されていてもよい。Bブロック中に上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造以外の部分構成を含有する場合、当該(メタ)アクリル酸エステル系モノマー以外の部分構造の、Bブロック中の含有量は、好ましくは0〜99重量%、より好ましくは0〜85重量%である。
【0149】
本発明で用いるアクリル系分散剤は、このようなAブロックとBブロックとからなる、A−Bブロック又はB−A−Bブロック共重合型高分子化合物であるが、このようなブロック共重合体は、例えば以下に示すリビング重合法にて調製される。
リビング重合法にはアニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法、ラジカルリビング重合法がある。アニオンリビング重合法は、重合活性種がアニオンであり、例えば下記スキームで示される。
【0150】
【化23】

【0151】
ラジカルリビング重合法は重合活性種がラジカルであり、例えば下記スキームで示される。
【0152】
【化24】

【0153】
【化25】

【0154】
このようなアクリル系ブロック共重合体を合成するに際しては、特開昭60−89452号公報、特開平9−62002号公報、P. Lutz, P. Masson et al, Polym. Bull. 12, 79 (1984)、B. C. Anderson, G. D. Andrews et al, Macromolecules, 14, 1601 (1981)、K. Hatada, K. Ute, et al, Polym. J. 17, 977 (1985)、K. Hatada, K. Ute, et al, Polym. J.18, 1037 (1986)、右手浩一、畑田耕一、高分子加工、36、366(1987)、東村敏延、沢本光男、高分子論文集、46、189(1989)、M. Kuroki, T. Aida, J. Am. Chem. Sic, 109, 4737 (1987)、相田卓三、井上祥平、有機合成化学、43,300(1985)、D. Y. Sogoh, W. R. Hertler et al, Macromolecules, 20, 1473 (1987)、K. Matyaszewski et al, Chem. Rev.2001,101,2921-2990などに記載の公知の方法を採用することができる。
【0155】
本発明に係るA−Bブロック共重合体およびB−A−Bブロック共重合体の、1g中のアミン価は、通常1〜300mgKOH/g程度であるが、その好ましい範囲は、Aブロックが4級アンモニウム塩基を有する場合と有さない場合とで異なる。
本発明に係るA−Bブロック共重合体およびB−A−Bブロック共重合体の、Aブロックが4級アンモニウム塩基を有する場合、該共重合体1g中の4級アンモニウム塩基の量は、0.1〜10mmolであることが好ましい。この範囲外では、良好な耐熱性と分散性を兼備することができない場合がある。このようなブロック共重合体中には、製造過程で生じたアミノ基が含有される場合があり、そのアミン価は、通常、共重合体1gあたり1〜100mgKOH/g程度、好ましくは1〜50mgKOH/g、より好ましくは1〜30mgKOH/gである。
また、Aブロックに4級アンモニウム塩基を含まない場合、該共重合体のアミン価は、通常、1gあたり50〜300mgKOH/g程度、好ましくは50〜200mgKOH/gである。なおアミン価は、アミノ基を酸により中和滴定し、酸価に対応させてKOHのmg数で表した値である。
【0156】
また、このブロック共重合体の酸価は、該酸価の元となる酸性基の有無及び種類にもよるが、一般に低い方が好ましく、通常100mgKOH/g以下であり、その分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で通常1000以上、100,000以下の範囲である。ブロック共重合体の分子量が小さすぎると分散安定性が低下し、大きすぎると現像性、解像性が低下する傾向にある。
本発明においては、上述のものと同様の構造を有する市販のアクリル系ブロック共重合体を適用することもできる。
【0157】
(E−3):ウレタン樹脂分散剤
ウレタン樹脂分散剤としては、ポリイソシアネート化合物と、同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物と、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物とを反応させることによって得られるウレタン樹脂が特に好ましい。
【0158】
上記ポリイソシアネート化合物の例としては、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ω,ω′−ジイソシネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニルメタン)、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等のトリイソシアネート;及び、これらの3量体、水付加物、並びにこれらのポリオール付加物等が挙げられる。ポリイソシアネートとして好ましいのは有機ジイソシアネートの三量体で、最も好ましいのはトリレンジイソシアネートの三量体とイソホロンジイソシアネートの三量体であり、これらを単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0159】
イソシアネートの三量体の製造方法としては、前記ポリイソシアネート類を適当な三量化触媒、例えば第3級アミン類、ホスフィン類、アルコキシド類、金属酸化物、カルボン酸塩類等を用いてイソシアネート基の部分的な三量化を行い、触媒毒の添加により三量化を停止させた後、未反応のポリイソシアネートを溶剤抽出、薄膜蒸留により除去して目的のイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを得る方法が挙げられる。
【0160】
上記同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物としては、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコール、ポリオレフィングリコール等、又はこれらの化合物の片末端水酸基が炭素数1〜25のアルキル基でアルコキシ化されたもの、若しくはこれら2種類以上の混合物が挙げられる。
ポリエーテルグリコールとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、又はこれら2種類以上の混合物が挙げられる。ポリエーテルジオールとしては、アルキレンオキシドを単独又は共重合させて得られるもの、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコール、ポリオキシオクタメチレングリコール、又はそれらの2種以上の混合物が挙げられる。ポリエーテルエステルジオールとしては、エーテル基含有ジオール若しくは他のグリコールとの混合物をジカルボン酸又はそれらの無水物と反応させるか、ポリエステルグリコールにアルキレンオキシドを反応させることによって得られるもの、例えば、ポリ(ポリオキシテトラメチレン)アジペート等が挙げられる。ポリエーテルグリコールとして最も好ましいのは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、又はこれらの化合物の片末端水酸基が炭素数1〜25のアルキル基でアルコキシ化された化合物である。
【0161】
ポリエステルグリコールとしては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸等のジカルボン酸類又はそれらの無水物と、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジーオル、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレングリコール、2−メチル−1,8−オクタメチレングリコール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール;ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール;キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール;N−メチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン等のジオール類と、を重縮合させて得られたもの、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリエチレン/プロピレンアジペート等、又は前記ジオール類若しくは炭素数1〜25の1価アルコールを開始剤として用いて得られるポリラクトンジオールあるいはポリラクトンモノオール、例えば、ポリカプロラクトングリコール、ポリメチルバレロラクトン、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。ポリエステルグリコールとして最も好ましいのは、ポリカプロラクトングリコール又は炭素数1〜25のアルコールを開始剤としたポリカプロラクトン、より具体的には、モノオールにε−カプロラクトンを開環付加重合して得られる化合物である。
【0162】
ポリカーボネートグリコールとしては、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
又、ポリオレフィングリコールとしては、ポリブタジエングリコール、水素添加型ポリブタジエングリコール、水素添加型ポリイソプレングリコール等が挙げられる。
これらの同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物のうち、特にポリエーテルグリコールとポリエステルグリコールが好ましい。尚、同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物の数平均分子量は、通常300〜10,000、好ましくは500〜6,000、更に好ましくは1,000〜4,000である。
【0163】
上記同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物において、活性水素、即ち、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子に直接結合している水素原子としては、水酸基、アミノ基、チオール基等の官能基中の水素原子が挙げられ、中でもアミノ基、特に1級のアミノ基の水素原子が好ましい。又、3級アミノ基としては、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルアミノ基や、該ジアルキルアミノ基が連結してヘテロ環構造を形成している基、より具体的には、イミダゾール環、又はトリアゾール環が挙げられるが、中でもジメチルアミノ基及びイミダゾール環が分散安定性に優れるため好ましい。
【0164】
このような同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物を例示するならば、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジプロピルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジプロピル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン等か挙げられる。
【0165】
又、3級アミノ基が窒素含有ヘテロ環であるものとして、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、インドール環、カルバゾール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチアジアゾール環等の窒素原子含有ヘテロ5員環;ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、アクリジン環、イソキノリン環等の窒素原子含有ヘテロ6員環が挙げられる。これらのイミダゾール環と1級アミノ基を有する化合物を具体的に例示するならば、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ヒスチジン、2−アミノイミダゾール、1−(2−アミノエチル)イミダゾール等が挙げられる。又、トリアゾール環と1級アミノ基を有する化合物を具体的に例示するならば、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、5−(2−アミノ−5−クロロフェニル)−3−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−4H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジオール、3−アミノ−5−フェニル−1H−1,3,4−トリアゾール、5−アミノ−1,4−ジフェニル−1,2,3−トリアゾール、3−アミノ−1−ベンジル−1H−2,4−トリアゾール等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等が好ましい。
【0166】
これらのウレタン樹脂分散剤原料の好ましい使用比率は、ポリイソシアネート化合物100重量部に対し、同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物が、通常10〜200重量部、好ましくは20〜190重量部、更に好ましくは30〜180重量部、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物が、通常0.2〜25重量部、好ましくは0.3〜24重量部である。
【0167】
又、ウレタン樹脂分散剤の製造は、ウレタン樹脂製造の公知の方法に従って行われる。製造する際の溶媒としては、通常、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類;ダイアセトンアルコール、イソプロパノール、第二ブタノール、第三ブタノール等の一部のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド等の非プロトン性極性溶媒等が用いられる。又、製造する際の触媒としては、通常のウレタン化反応触媒が用いられる。例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の錫系;鉄アセチルアセトナート、塩化第二鉄等の鉄系;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン系等が挙げられる。
又、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物の導入量は、反応後の分散樹脂のアミン価で1〜100mgKOH/gの範囲に制御するのが好ましく、より好ましくは5〜80mgKOH/gの範囲であり、更に好ましくは10〜60mgKOH/gの範囲である。アミン価が上記範囲以下であると分散能力が低下する傾向があり、又、上記範囲を超えると現像性が低下しやすくなる。尚、以上の反応で分散樹脂にイソシアネート基が残存する場合には、更にアルコールやアミノ化合物でイソシアネート基を潰すと分散樹脂の経時安定性が高くなるので好ましい。
【0168】
尚、これらウレタン樹脂分散剤のGPCで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常1,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000、より好ましくは3,000〜50,000の範囲である。分子量1,000以下では分散性及び分散安定性が劣り、200,000以上では溶解性が低下し分散性が劣ると同時に反応の制御が困難となる。
【0169】
(E−4):その他の分散剤
本発明の硬化性組成物に用いられる分散剤は上記の各種分散剤以外に、その他の分散剤を含有していてもよい。
その他の分散剤としては、例えば、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤等を挙げることができる。
このような分散剤の具体例としては、商品名で、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(EFKA)社製)、Disperbyk(ビックケミー社製)、ディスパロン(楠本化成社製)、SOLSPERSE(ゼネカ社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社化学社製)、アジスパー(味の素社製)等を挙げることができる。これらの高分子分散剤は1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0170】
本発明の硬化性組成物において、(E)分散剤の含有割合は、(D)顔料に対して、通常95重量%以下、好ましくは65重量%以下、更に好ましくは50重量%以下であり、また、通常5重量%以上、好ましくは7重量%以上、特に好ましくは10重量%以上である。分散剤の含有割合が少なすぎると、色材への吸着が不足し、凝集を防ぐことができず、高粘度化ないしゲル化してしまうことがあるため、分散安定性が悪化し、再凝集や増粘等の問題が発生する可能性がある。逆に多すぎると、相対的に顔料の割合が減るため、着色力が低くなり、色濃度に対して膜厚が厚くなりすぎて、カラーフィルタに用いた場合、液晶セル化工程でのセルギャップ制御不良が出ることがある。
前述の塗布適性評価方法(I)における付着物の発生、ひいてはスリット・アンド・スピン法やダイコート法における凝集異物の発生は、特に分散剤の顔料表面への吸着部の構造が関与していると考えられる。
本発明の(E)分散剤として特に好ましいのは、顔料への吸着部の窒素原子がイオン性を持たないものである。つまり3級アミン、2級アミン、1級アミン、環状アミン、またはイミノ基等4級化していない窒素原子であることが好ましい。これは、おそらく分散剤の種類によらず、前記(E−1)、(E−2)、(E−3)のいずれの分散剤においても同様である。
詳細な機構は不明だが、おそらく窒素原子に残存する共有電子対が、該機構に関与している可能性が考えられる。上述した各分散剤の構造は、一般に、anchor部分(顔料への吸着部)と、tail部分(分散性を司る部分)を有している。吸着部に、イオン性を持たない窒素原子を含有する分散剤の場合、該窒素原子が有する電子対に対して溶剤分子、または溶剤中の水分子が水素結合を作り、分散剤分子が有する複数のtail間に入り込む。このため、吸着部に4級アミン基等、その他の基を有する分散剤と較べて、tail間が大きく広がった構造になると考えられる。
「再溶解性が良好である」とは、硬化性組成物が一度固化し、再度溶剤に浸漬されたときすぐに溶剤になじむことをいうが、顔料に吸着した分散剤のtail間の距離が開いている場合、そこに溶剤分子が入り込みやすくなる。例えば水が水素結合を作っている場合には、溶剤分子の一部が、水分子または窒素原子の電子対と結合を作る形で、より分散剤のtail間に入り込みやすくなり、容易に微細に分散することが可能となると考えられる。
なお、本発明の硬化性組成物は、後述する該硬化性組成物調製時の分散処理工程において、上記(E)分散剤とともに、前述の(A)バインダ樹脂の一部を含有させることにより、共に分散剤としての役割を担わせてもよい。
【0171】
[1−9]光重合開始系
本発明の硬化性組成物は、さらに光重合開始系を含有していてもよい。光重合開始系は、通常、光重合開始剤、及び必要に応じて添加される増感色素、重合加速剤等の付加剤との混合物として用いられ、光を直接吸収し、或いは光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する成分である。
【0172】
光重合開始系を構成する光重合開始剤としては、例えば、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号各公報等に記載のチタノセン誘導体類;特開平10−300922号、特開平11−174224号、特開2000−56118号各公報等に記載されるヘキサアリールビイミダゾール誘導体類;特開平10−39503号公報等に記載のハロメチル化オキサジアゾール誘導体類、ハロメチル−s−トリアジン誘導体類、N−フェニルグリシン等のN−アリール−α−アミノ酸類、N−アリール−α−アミノ酸塩類、N−アリール−α−アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤、α- アミノアルキルフェノン誘導体類;特開2000−80068号公報等に記載のオキシムエステル系誘導体類等が挙げられる。
【0173】
具体的には、例えば、チタノセン誘導体類としては、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムビスフェニル、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1一イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,4−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウム〔2,6−ジ−フルオロ−3−(ピロ−1−イル)−フェニ−1−イル〕等が挙げられる。
又、ビイミダゾール誘導体類としては、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダソール2量体、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ビス(3’−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(2’−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−メトキシフエニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、(4’−メトキシフエニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体等が挙げられる。
又、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体類としては、2−トリクロロメチル−5−(2’−ベンゾフリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−(6''−ベンゾフリル)ビニル)〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5一フリル−1,3,4−オキサジアゾール等が挙げられる。
又、ハロメチル化トリアジン誘導体類としては、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
又、α−アミノアルキルフェノン誘導体類としては、2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、4−ジメチルアミノエチルベンゾエ−ト、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエ−ト、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−エチルヘキシル−1,4−ジメチルアミノベンゾエート、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、4−(ジエチルアミノ)カルコン等が挙げられる。
又、オキシムエステル系誘導体類としては、1,2−オクタンジオン、1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕、2−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕、1−(o−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0174】
その他に、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン誘導体類;ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体類;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p一ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体類;p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体類;9−フェニルアクリジン、9−(pメトキシフェニル)アクリジン等のアクリジン誘導体類;9,10−ジメチルベンズフェナジン等のフェナジン誘導体類;ベンズアンスロン等のアンスロン誘導体類等も挙げられる。
【0175】
必要に応じて用いられる重合加速剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等のN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル類;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等の複素環を有するメルカプト化合物;又は脂肪族多官能メルカプト化合物等のメルカプト化合物類等が挙げられる。
これらの光重合開始剤及び重合加速剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の硬化性組成物において、これらの光重合開始系の含有割合は、全固形分中、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、又、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。この含有割合が著しく低いと露光光線に対する感度が低下する原因となることがあり、反対に著しく高いと未露光部分の現像液に対する溶解性が低下し、現像不良を誘起させることがある。
【0176】
又、必要に応じて感応感度を高める目的で、増感色素が用いられる。増感色素は、画像露光光源の波長に応じて、適切なものが用いられるが、例えば特開平4−221958号、特開平4−219756号各公報等に記載のキサンテン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の複素環を有するクマリン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の3−ケトクマリン系色素;特開平6−19240号公報等に記載のピロメテン系色素;特開昭47−2528号、特開昭54−155292号、特公昭45−37377号、特開昭48−84183号、特開昭52−112681号、特開昭58−15503号、特開昭60−88005号、特開昭59−56403号、特開平2−69号、特開昭57−168088号、特開平5−107761号、特開平5−210240号、特開平4−288818号各公報等に記載のジアルキルアミノベンゼン骨格を有する色素等を挙げることができる。
【0177】
これらの増感色素のうち好ましいものは、アミノ基含有増感色素であり、更に好ましいものは、アミノ基及びフェニル基を同一分子内に有する化合物である。特に、好ましいのは、例えば、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ〔4,5〕ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ〔6,7〕ベンゾオキサゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジメチルアミノフェニル)キノリン、(p−ジエチルアミノフェニル)キノリン、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリミジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリミジン等のp−ジアルキルアミノフェニル基含有化合物等である。このうち最も好ましいものは、4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノンである。増感色素もまた1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0178】
本発明の硬化性組成物において、これらの増感色素の含有割合は、全固形分中、通常0重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、又、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、更に好ましくは10重量%以下の範囲である。
【0179】
[1−10]界面活性剤
本発明の硬化性組成物は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性界面活性剤等、各種のものを用いることができるが、電圧保持率や有機溶媒に対する相溶性等の諸特性に悪影響を及ぼす可能性が低い点で、非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、花王社製の「エマール10」等のアルキル硫酸エステル塩系界面活性剤、花王社製の「ペレックスNB−L」等のアルキルナフタレンスルフォン酸塩系界面活性剤、花王社製の「ホモゲノールL−18」、「ホモゲノールL−100」等の特殊高分子系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、特殊高分子系界面活性剤が好ましく、特殊ポリカルボン酸型高分子系界面活性剤が更に好ましい。
【0180】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、花王社製の「アセタミン24」等のアルキルアミン塩系界面活性剤、花王社製の「コータミン24P」、「コータミン86W」等の第4級アンモニウム塩系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、第4級アンモニウム塩系界面活性剤が好ましく、ステアリルトリメチルアンモニウム塩系界面活性剤が更に好ましい。
非イオン系性面活性剤としては、例えば、トーレシリコーン社製の「SH8400」;シリコーン社製の「KP341」等のシリコーン系界面活性剤;住友3M社製の「FC430」;大日本インキ化学工業社製の「F470」;ネオス社製の「DFX−18」等の弗素系界面活性剤;花王社製の「エマルゲン104P」、「エマルゲンA60」等のポリオキシエチレン系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、シリコーン系界面活性剤が好ましく、ポリジメチルシロキサンにポリエーテル基又はアラルキル基の側鎖が付加された構造を有する、いわゆるポリエーテル変性又はアラルキル変性シリコーン系界面活性剤が更に好ましい。
【0181】
界面活性剤は2種類以上を併用してもよく、例えばシリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤、弗素系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。中でも、シリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤の組み合わせが好ましい。
このシリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤の組み合わせとしては、例えばポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤/オリゴマー型弗素系界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。具体的には、例えば、ジーイー東芝シリコーン社製「TSF4460」/ネオス社製「DFX−18」、ビックケミー社製「BYK−300」/セイミケミカル社製「S−393」、信越シリコーン社製「KP340」/大日本インキ化学工業社製「F−478」、トーレシリコーン社製「SH7PA」/ダイキン社製「DS−401」、日本ユニカー社製「L−77」/住友3M社製「FC4430」等の組み合わせが挙げられる。
【0182】
本発明の硬化性組成物において、これら界面活性剤の含有割合は、全固形分中、通常0.001重量%以上、好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上である。又、通常10重量%以下、好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.05重量%以下の範囲で用いられる。
【0183】
[1−11]その他成分
本発明の硬化性組成物は、前記各成分の外に、分散助剤、有機カルボン酸又は/及び有機カルボン酸無水物、可塑剤、染料、熱重合防止剤、保存安定剤、表面保護剤、密着向上剤、現像改良剤等を含有していてもよい。
分散助剤は、前記(D)顔料の分散性の向上、分散安定性の向上等のために用いられ、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンツイミダゾロン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、インダンスレン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系顔料等の誘導体が挙げられる。
これらの顔料誘導体の置換基としては、スルホン酸基、スルホンアミド基及びその4級塩、フタルイミドメチル基、ジアルキルアミノアルキル基、水酸基、カルボキシル基、アミド基等が挙げられる。これらの置換基は顔料骨格に直接結合していてもよく、又はアルキル基、アリール基、複素環基等を介して結合していてもよい。前記置換基のうち、スルホンアミド基及びその4級塩、スルホン酸基が好ましく、スルホン酸基がより好ましい。
これら置換基は、一つの顔料骨格に複数置換していてもよいし、置換数の異なる化合物の混合物でもよい。
顔料誘導体の具体例としては、アゾ系顔料のスルホン酸誘導体、フタロシアニン系顔料のスルホン酸誘導体、キノフタロン系顔料のスルホン酸誘導体、アントラキノン系顔料のスルホン酸誘導体、キナクリドン系顔料のスルホン酸誘導体、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン酸誘導体、ジオキサジン系顔料のスルホン酸誘導体等が挙げられる。中でも好ましくは、ピグメントイエロー138のスルホン酸誘導体、ピグメントイエロー139のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド254のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド255のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド264のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド272のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド209のスルホン酸誘導体、ピグメントオレンジ71のスルホン酸誘導体、ピグメントバイオレット23のスルホン酸誘導体であり、より好ましくはピグメントイエロー138のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド254のスルホン酸誘導体である。
【0184】
本発明の硬化性組成物において、これらの分散助剤の含有割合は、前記色材成分に対して、通常0.1重量%以上であり、又、通常30重量%以下、好ましくは200重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。添加量が少ないとその効果が発揮されず、逆に添加量が多過ぎると分散性、分散安定性がかえって悪くなるためである。
【0185】
本発明の硬化性樹脂組成物は、リン酸アクリレート含有量を含有していないか、あるいは全固形分に対して5重量%以下とすることが好ましい。リン酸アクリレートは主に密着改良剤として使用されることが多いが、極性が高く、顔料と分散剤の吸着を阻害する傾向があり、顔料の再凝集が起こりやすくなる。このため硬化性樹脂組成物の粘度が上昇し、安定性が低下するおそれがある。この再凝集は組成物に含有される水分によって加速される。
リン酸アクリレートとしては、例えば、特開2006−343648号公報に記載の化合物などが挙げられる。
本発明の硬化性組成物は、後述するようにカラーフィルターに使用した場合、高いパターン密着性を保ちながら、樹脂組成物の未溶解物の残存をより一層低減するために、分子量1000以下の有機カルボン酸又は/及び有機カルボン酸無水物を含有していてもよい。これらは前述の(E)分散剤として、ウレタン樹脂分散剤を含む場合に含有されていることが好ましい。
その有機カルボン酸としては、具体的には、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、グリコール酸、(メタ)アクリル酸、等のモノカルボン酸;蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸等のトリカルボン酸等が挙げられる。又、芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸等のフェニル基に直接カルボキシル基が結合したカルボン酸、フェニル基から炭素結合を介してカルボキシル基が結合したカルボン酸等が挙げられる。
これらの中では、分子量600以下のものが好ましく、とりわけ分子量50〜500のものが好ましい。具体的には、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、イタコン酸が好ましい。
有機カルボン酸無水物としては、脂肪族カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸無水物が挙げられ、具体的には無水酢酸、無水トリクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、無水n−オクタデシルコハク酸、無水5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸無水物が挙げられる。芳香族カルボン酸無水物としては、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、無水ナフタル酸等が挙げられる。
これらの中では、分子量600以下のものが好ましく、とりわけ分子量50〜500のものが好ましい。具体的には無水マレイン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸が好ましい。
【0186】
本発明の硬化性組成物において、これらの有機カルボン酸又は/及び有機カルボン酸無水物の含有割合は、全固形分中、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上であり、又、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。
【0187】
本発明の硬化性組成物は、染料を含有していてもよく、例えばアゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料等が挙げられる。
アゾ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー11、C.I.アシッドオレンジ7、C.I.アシッドレッド37、C.I.アシッドレッド180、C.I.アシッドブルー29、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトレッド83、C.I.ダイレクトイエロー12、C.I.ダイレクトオレンジ26、C.I.ダイレクトグリーン28、C.I.ダイレクトグリーン59、C.I.リアクティブイエロー2、C.I.リアクティブレッド17、C.I.リアクティブレッド120、C.I.リアクティブブラック5、C.I.ディスパースオレンジ5、C.I.ディスパースレッド58、C.I.ディスパースブルー165、C.I.ベーシックブルー41、C.I.ベーシックレッド18、C.I.モルダントレッド7、C.I.モルダントイエロー5、C.I.モルダントブラック7等が挙げられる。
【0188】
アントラキノン系染料としては、例えば、C.I.バットブルー4、C.I.アシッドブルー40、C.I.アシッドグリーン25、C.I.リアクティブブルー19、C.I.リアクティブブルー49、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー56、C.I.ディスパースブルー60等が挙げられる。
フタロシアニン系染料として、例えば、C.I.パッドブルー5等が、キノンイミン系染料として、例えば、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー9等が、キノリン系染料として、例えば、C.I.ソルベントイエロー33、C.I.アシッドイエロー3、C.I.ディスパースイエロー64等が、ニトロ系染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー1、C.I.アシッドオレンジ3、C.I.ディスパースイエロー42等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物は、可塑剤を含有していてもよく、その可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等が挙げられる。これら可塑剤の含有割合は、全固形分中、10重量%以下の範囲であるのが好ましい。
【0189】
又、本発明の硬化性組成物は、熱重合防止剤を含有していてもよく、その熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ピロガロール、カテコール、2,6−t−ブチル−p−クレゾール、β−ナフトール等が挙げられる。これら熱重合防止剤の含有割合は、全固形分中、3重量%以下の範囲であるのが好ましい。
【0190】
[2]硬化性組成物の調製方法
次に、本発明の硬化性組成物を調製する方法を説明する。
先ず(D)顔料、(C)溶剤、および任意成分である(E)分散剤とを各所定量秤量し、分散処理工程において、(D)顔料を分散させてインキ状液体とする。この分散処理工程では、ペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー等を使用することができる。この分散処理を行なうことによって顔料が微粒子化されるため、硬化性組成物の塗布特性が向上し、製品のカラーフィルター基板等の透過率が向上する。
顔料を分散処理する際には、(A)バインダ樹脂の一部及び分散助剤等を適宜併用するのが好ましい。又、サンドグラインダーを用いて分散処理を行なう場合は、0.1〜数mm径のガラスビーズ、又はジルコニアビーズを用いるのが好ましい。分散処理する際の温度は、通常0℃以上、好ましくは室温以上、又、通常100℃以下、好ましくは80℃以下の範囲に設定する。尚、分散時間は、インキ状液体の組成、及びサンドグラインダーの装置の大きさ等により適正時間が異なるため、適宜調整する必要がある。
【0191】
上記分散処理によって得られたインキ状液体に、更に必須成分である(A)バインダ樹脂、(B)単量体、及び(C)溶剤、場合によっては、任意成分である光重合開始系、界面活性剤、及びそれら以外の成分を混合し、均一な分散溶液とすることにより、硬化性組成物を得る。尚、分散処理工程及び混合の各工程において、微細なゴミが混入することがあるため、得られたインキ状液体をフィルター等によって濾過処理することが好ましい。
【0192】
[3]硬化性組成物の応用
本発明の硬化性組成物は、通常、すべての構成成分が溶剤中に溶解或いは分散された状態である。これが基板上へ供給され、カラーフィルターや液晶表示装置の構成部材が形成される。
【0193】
以下、本発明の硬化性組成物の液晶表示装置への応用例として、カラーフィルターのブラックマトリックスや画素としての応用、及びそれらを用いた液晶表示装置(パネル)について、説明する。
【0194】
[3−1]カラーフィルターの画素及びブラックマトリックス
カラーフィルターの透明基板としては、透明で適度の強度があれば、その材質は特に限定されるものではない。材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスルホン系樹脂等の熱可塑性樹脂製シート;エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂シート;又は各種ガラス等が挙げられる。この中でも、耐熱性の観点からガラス、耐熱性樹脂が好ましい。これらの透明基板には、接着性等の表面物性の改良のため、必要に応じ、コロナ放電処理やオゾン処理等の表面処理、シランカップリング剤やウレタン系樹脂等の各種樹脂等による薄膜形成処理等を行なってもよい。透明基板の厚さは、通常0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、又、通常10mm以下、好ましくは7mm以下の範囲とされる。又、各種樹脂による薄膜形成処理を行なう場合、その膜厚は、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、又、通常10μm以下、好ましくは5μm以下の範囲である。
上述の透明基板上にブラックマトリックスを設け、更に通常は赤色、緑色、青色の画素画像を形成することにより、カラーフィルターを作製することができる。
ブラックマトリックスは、遮光金属薄膜、又は本発明の硬化性組成物を利用して、透明基板上に形成される。
【0195】
その遮光金属材料としては、金属クロム、酸化クロム、窒化クロム等のクロム化合物、ニッケルとタングステン合金等が用いられ、これらを複数層状に積層させたものであってもよい。これらの遮光金属薄膜は、一般にスパッタリング法によって形成され、ポジ型フォトレジストにより、膜状に所望のパターンを形成する。
クロムに対しては硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸及び/又は硝酸とを混合したエッチング液を用い、その他の材料に対しては、材料に応じたエッチング液を用いて蝕刻され、最後にポジ型フォトレジストを専用の剥離剤で剥離することによって、ブラックマトリックスを形成することができる。この場合、先ず、蒸着又はスパッタリング法等により、透明基板上にこれら金属又は金属・金属酸化物の薄膜を形成する。次いで、この薄膜上にポジ型フォトレジスト用樹脂組成物の塗布膜を形成する。次いで、ストライプ、モザイク、トライアングル等の繰り返しパターンを有するフォトマスクを用いて、塗布膜を露光・現像し、画像を形成する。その後、この塗布膜にエッチング処理を施してブラックマトリックスを形成することができる。
【0196】
本発明の硬化性組成物を利用する場合は、黒色の(D)顔料を含有する硬化性組成物を使用して、ブラックマトリックスを形成する。例えば、カーボンブラック、黒鉛、鉄黒、チタンブラック等の黒色顔料を単独又は複数、もしくは、無機又は有機の顔料の中から適宜選択される赤色、緑色、青色等の顔料を混合して得られる黒色顔料を含有する硬化性組成物を使用し、後述する赤色、緑色、青色の画素画像を形成する方法と同様にして、ブラックマトリックスを形成することができる。
上記硬化性組成物は、これら黒色、赤色、緑色、青色のうち少なくとも一種の画像形成用塗布液として使用される。黒色の硬化性組成物に関しては、透明基板上に、赤色、緑色、青色の硬化性組成物に関しては、透明基板上に形成された樹脂ブラックマトリックス形成面上、又は、クロム化合物その他の遮光金属材料を用いて形成された金属ブラックマトリックス形成面上に、塗布、加熱乾燥、画像露光、現像及び熱硬化の各処理を経て、各色の画素画像が形成される。

ブラックマトリックスを設けた透明基板上に、赤色、緑色、青色のうち一色の顔料を含有する硬化性組成物を塗布し、乾燥した後、塗布膜の上にフォトマスクを重ね、このフォトマスクを介して画像露光、現像、必要に応じて熱硬化又は光硬化により画素画像を形成させ、着色層を作成する。この操作を、赤色、緑色、青色の三色の硬化性組成物について各々行うことによって、カラーフィルター画像を形成することができる。
【0197】
硬化性組成物の基板への供給方法としては、従来公知の方法、例えば、スピナー法、ワイヤーバー法、フローコート法、スリット・アンド・スピン法、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法等が挙げられる。中でも、スリット・アンド・スピン法、及びダイコート法が好ましい。すなわち、前述したように、本発明の硬化性組成物は、ディスペンスノズル先端に凝集異物が発生しにくいため、歩留まりを低下させることなく、平滑で美しい表面を有する塗布膜を提供することができる。また、その塗布の際の塗布ムラや、その後の乾燥工程における乾燥ムラ等も生じず、露光工程、現像工程、熱処理工程等を経て、極めて平滑な表面を有する層を形成することができる。
スリット・アンド・スピン法、及びダイコート法による塗布条件は、硬化性組成物の組成や、作製するカラーフィルターの種類等によって適宜選択すればよい。例えば、両方法のいずれにおいても、ノズル先端のリップ幅は50〜500μmとし、ノズル先端と基板面との間隔は30〜300μmとするのが好ましい。
ダイコート法によれば、塗布膜の厚さを調節するためには、リップの走行速度、及びリップからの液状の樹脂組成物の吐出量を調整すればよく、スリット・アンド・スピン法によれば、主にスリット塗布後のスピン回転数および回転時間によって調整すればよい。
塗布膜の厚さは、厚過ぎるとパターン現像が困難となるとともに、液晶セル化工程でのギャップ調整が困難となることがある一方で、薄過ぎると顔料濃度を高めることが困難となり、所望の色発現が不可能となることがある。塗布膜の厚さは、乾燥後の膜厚として、通常0.2μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上、又、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下の範囲である。
本発明の硬化性組成物は、ダイコート法に用いた時に、その有効性が顕著である。
【0198】
基板に硬化性組成物を塗布した後の塗布膜の乾燥は、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブンを使用した乾燥法によるのが好ましい。通常は、予備乾燥の後、再度加熱させて乾燥させる。予備乾燥の条件は、前記溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能等に応じて適宜選択することができる。乾燥温度及び乾燥時間は、溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能等に応じて選択されるが、具体的には、乾燥温度は通常40℃以上 、好ましくは50℃以上、又、通常80℃以下、好ましくは70℃以下の範囲であり、乾燥時間は通常15秒以上、好ましくは30秒以上、又、通常5分間以下、好ましくは3分間以下の範囲である。又、再加熱乾燥の温度条件は、予備乾燥温度より高い温度が好ましく、具体的には、通常50℃以上、好ましくは70℃以上、又、通常200℃以下、好ましくは160℃以下、特に好ましくは130℃以下の範囲である。又、乾燥時間は、加熱温度にもよるが、通常10秒以上、好ましくは15秒以上、又、通常10分以下、好ましくは5分以下の範囲とするのが好ましい。乾燥温度は、高いほど透明基板に対する接着性が向上するが、高過ぎるとバインダ樹脂が分解し、熱重合を誘発して現像不良を生ずる場合がある。尚、この塗布膜の乾燥工程としては、温度を高めず減圧チャンバー内で乾燥を行なう減圧乾燥法を用いてもよい。
【0199】
画像露光は、着色樹脂組成物の塗布膜上に、ネガのマトリックスパターンを重ね、このマスクパターンを介し、紫外線又は可視光線の光源を照射して行う。この際、必要に応じ、酸素による光重合性層の感度の低下を防ぐため、光重合性層上にポリビニルアルコール層等の酸素遮断層を形成した後に露光を行ってもよい。上記の画像露光に使用される光源は、特に限定されるものではない。光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプ等のランプ光源;アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルターを利用することもできる。
【0200】
カラーフィルターは、硬化性組成物の塗布膜に対し、上記の光源によって画像露光を行なった後、有機溶剤、又は、界面活性剤とアルカリ性化合物とを含む水溶液を用いて現像を行うことによって、基板上に画像を形成して作製することができる。この水溶液には、更に有機溶剤、緩衝剤、錯化剤、染料又は顔料を含ませることができる。
ここで、アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸二水素カリウム、水酸化アンモニウム等の無機アルカリ性化合物;モノ−・ジ−・又はトリ−エタノールアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−メチルアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−エチルアミン、モノ−・又はジ−イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−イソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等の有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。有機溶剤は、単独でも水溶液と併用して使用できる。
【0201】
現像処理の条件には特に制限はないが、現像温度は通常10℃以上、中でも15℃以上、更には20℃以上、又、通常50℃以下、中でも45℃以下、更には40℃以下の範囲が好ましい。
現像方法は、浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法、超音波現像法等の何れかの方法によることができる。
尚、本発明におけるカラーフィルターは、上記した作製方法の他に、(1)溶剤、顔料としてのフタロシアニン系顔料、バインダ樹脂としてのポリイミド系樹脂を含む硬化性組成物を、基板に塗布し、エッチング法により画素画像を形成する方法によっても作製することができる。又、(2)フタロシアニン系顔料を含む硬化性組成物を着色インキとして用い、印刷機によって、透明基板上に直接画素画像を形成する方法、(3)フタロシアニン系顔料を含む硬化性組成物を電着液として用い、基板をこの電着液に浸漬させ所定パターンにされたITO電極上に、着色膜を析出させる方法、更に、(4)フタロシアニン系顔料を含む硬化性組成物を塗布したフィルムを、透明基板に貼りつけて剥離し、画像露光、現像し画素画像を形成する方法、(5)フタロシアニン系顔料を含む硬化性組成物を着色インキとして用い、インクジェットプリンターにより画素画像を形成する方法、等によっても作製することができる。カラーフィルターの作製方法は、本発明の硬化性組成物の組成に応じ、これに適した方法が採用される。
【0202】
現像の後のカラーフィルターには、熱硬化処理を施す。この際の熱硬化処理条件は、温度は通常100℃以上、好ましくは150℃以上、又、通常280℃以下、好ましくは250℃以下の範囲で選ばれ、時間は5分間以上、60分間以下の範囲で選ばれる。これら一連の工程を経て、一色のパターニング画像形成は終了する。この工程を順次繰り返し、ブラック、赤色、緑色、青色をパターニングし、カラーフィルターを形成する。尚、4色のパターニングの順番は、上記した順番に限定されるものではない。
【0203】
更に、カラーフィルターは、このままの状態で画像上にITO等の透明電極を形成して、カラーディスプレー、液晶表示装置等の部品の一部として使用されるが、表面平滑性や耐久性を高めるため、必要に応じ、画像上にポリアミド、ポリイミド等のトップコート層を設けることもできる。又、一部、平面配向型駆動方式(IPSモード)等の用途においては、透明電極を形成しないこともある。
又、垂直配向型駆動方式(MVAモード)では、リブを形成することもある。又、ビーズ散布型スペーサに代わり、フォトリソによる柱構造(フォトスペーサー)を形成することもある。
【0204】
[3−2]液晶表示装置(パネル)
本発明に係る液晶表示装置は、例えば、前記[3−1]カラーフィルター(以降、「カラーフィルター基板」と称することがある)と、薄膜トランジスタ(TFT)による駆動基板とを、液晶層を介して対向した構造により構成することができる。より具体的には、配向膜材料を塗布し配向処理を施したカラーフィルター基板と、同じくTFT駆動基板とを、周辺シール材を介して貼り合わせ、その空隙に液晶材料を注入することで、液晶表示装置とすることができる。
【0205】
本発明に係る液晶表示装置は、通常、上記本発明に係るカラーフィルター上に配向膜を形成し、この配向膜上にスペーサを散布した後、対向基板と貼り合わせて液晶セルを形成し、形成した液晶セルに液晶を注入し、対向電極に結線して作製される。
配向膜は、ポリイミド等の樹脂膜が好適である。配向膜の形成には、通常、グラビア印刷法及び/又はフレキソ印刷法が採用され、配向膜の厚さは数10nmとされる。熱焼成によって配向膜の硬化処理を行った後、紫外線の照射やラビング布による処理によって表面処理し、液晶の傾きを調整しうる表面状態に加工される。
【0206】
スペーサは、対向基板とのギャップ(隙間)に応じた大きさのものが用いられ、通常2〜8μmのものが好適である。カラーフィルター基板上に、フォトリソグラフィ法によって透明樹脂膜のフォトスペーサー(PS)を形成し、これをスペーサの代わりに活用することもできる。
対向基板としては、通常、アレイ基板が用いられ、特にTFT(薄膜トランジスタ)基板が好適である。又、対向基板との貼り合わせのギャップは、液晶パネルの用途によって異なるが、通常2μm以上、8μm以下の範囲で選ばれる。対向基板と貼り合わせた後、液晶注入口以外の部分は、エポキシ樹脂等のシール材によって封止する。シール材は、UV照射及び/又は加熱することによって硬化させ、液晶セル周辺がシールされる。
【0207】
周辺をシールされた液晶セルは、パネル単位に切断した後、真空チャンバー内で減圧とし、上記液晶注入口を液晶に浸漬した後、チャンバー内をリークすることによって、液晶を液晶セル内に注入する。液晶セル内の減圧度は、通常1×10-2Pa以上、好ましくは1×10-3以上、又、通常1×10-7Pa以下、好ましくは1×10-6Pa以下の範囲である。又、減圧時に液晶セルを加温するのが好ましく、加温温度は通常30℃以上、好ましくは50℃以上、又、通常100℃以下、好ましくは90℃以下の範囲である。減圧時の加温保持は、通常10分間以上、60分間以下の範囲とされ、その後、液晶中に浸漬される。
液晶を注入した液晶セルは、液晶注入口をUV硬化樹脂を硬化させて封止することによって、液晶表示装置が完成する。尚、液晶の種類には特に制限がなく、芳香族系、脂肪族系、多環状化合物等、従来から知られている液晶であって、リオトロピック液晶、サーモトロピック液晶等の何れでもよい。サーモトロピック液晶には、ネマティック液晶、スメスティック液晶及びコレステリック液晶等が知られているが、何れであってもよい。
【実施例】
【0208】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらに限定して解釈されるものではない。
〔塗布適性評価方法(I)〕
後述する手順により得られた硬化性組成物を、以下に記載する(1)〜(4)の工程を経て評価するに当たって、アクチュエータのアームに試験片を取り付け、瓶に満たした着色硬化性組成物にその先端を繰り返し出し入れする操作を、自動的に行う制御装置を使用した。
(1)雰囲気温度23℃で、長さ100mm×幅5mm×厚み0.7mmのガラス試験片の縦方向の先端部分20mmを、12.5mm/秒の速度で硬化性組成物中に浸漬し、その後4秒間維持した。
(2)該ガラス試験片を、12.5mm/秒の速度で硬化性組成物から取り出し、該ガラス試験片の先端を下にして垂直に保持した後、雰囲気温度23℃、湿度55%、風速0.5±0.2m/秒の条件下で52秒間乾燥させた。
(3)工程(1)及び(2)を合計250回繰り返し、該ガラス試験片に硬化性組成物由来の付着物(a)を形成させた。
(4)該ガラス試験片の4稜線のうち、該付着物が最も多い稜線を選択し、該稜線上の付着物(「付着物(a)」)の重量を測定した。
なお付着物(a)の重量測定は、予め、該硬化性組成物を用いて形成される膜の比重を測定しておき、3次元レーザー顕微鏡で付着物(a)の体積を測定し、これらの積より算出した。
〔硬化性組成物の含水量の測定〕
後述する手順により得られた硬化性組成物について、カールフィッシャー法により、以下の条件で水分量の測定を行なった。
・装置:ダイアインスツルメンツ社製KF水分計CA−100
・注入量:40〜50μL
・陽極/陰極液:アクアミクロンAS/CXU
・End Sens.:0.1μg/sec
〔粘度測定方法〕
後述する手順により得られた硬化性組成物について、硬化性組成物調製直後の粘度と、常圧下、35℃で2週間保存した後の粘度を、以下の条件で測定した。
・装置:東機産業社製RE80L型粘度計(E型粘度計)
・サンプル量:1.0ml
・回転数:20rpm
【0209】
〔硬化性組成物の水分含有量の調整〕
後述する手順により得られた硬化性組成物につき、上記〔硬化性組成物の含水量の測定〕方法にて水分含有量を測定した。硬化性組成物は、いずれも本発明の水分含有量の範囲(0.4重量%以上2.0重量%以下)よりも少なかった。続いて、各組成物に水を滴下し、再度上記方法にて水分含有量を確認した。各組成物の最終的な水分含有量を表−1に示す。
(合成例1:バインダ樹脂a:(A−3)バインダ樹脂に相当)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート220.73部、V−59(和光純薬社製アゾ系重合開始剤)8.5重量部を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下に、80℃に昇温し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート127.5重量部、ベンジルメタクリレート55重量部、メタクリル酸45重量部を2時間かけて滴下し、さらに6時間撹拌を行い、重合反応液を得た。
【0210】
次いで、反応槽に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート20重量部、p−メトキシフェノール0.2部、トリエチルアミン0.4部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30重量部に溶解して滴下し、そのまま110℃で9時間反応させ、濃度が40重量%の重合体溶液を得た。重合体のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、同様)は8000、酸価は72mgKOH/gであった。
(合成例2:バインダ樹脂b:(A−3)バインダ樹脂に相当)
V−59を6重量部にした以外は、合成例1と同様に重合体溶液を調製した。得られた重合体の重量平均分子量は20000、酸価は72mgKOH/gであった。
(合成例3:バインダ樹脂c:(A−2)バインダ樹脂に相当)
ベンジルメタクリレート55重量部、メタクリル酸45重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150重量部を500mlセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内を充分窒素で置換した。その後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル6重量部を添加し、80℃で5時間攪拌し、重合体溶液を得た。合成された重合体の重量平均分子量は8000、酸価は176mgKOH/gであった。
(合成例4:バインダ樹脂d:(A−1)バインダ樹脂に相当)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン20重量部、グリシジルメタクリレート57部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA−513M)82重量部を滴下し、更に120℃で2時間攪拌し続けた。
次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸27重量部、トリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部およびハイドロキノン0.12重量部を投入し、120℃で6時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)52重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、120℃で3.5時間反応させた。
こうして得られた重合体の重量平均分子量Mwは約8000であった。
(合成例5:バインダ樹脂e:(A−5)バインダ樹脂に相当)
日本化薬社製XD1000(ジシクロペンタジエン・フェノール重合物のポリグリシジルエーテル、重量平均分子量700、エポキシ当量252)300部、メタクリル酸101部、p−メトキシフェノール0.2部、トリフェニルホスフィン5部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート255部を反応容器に仕込み、100℃で酸価が3.0mgKOH/gになるまで撹拌した。酸価が目標に達するまで9時間を要した(酸価2.5)。次いで更にテトラヒドロ無水フタル酸145部を添加し、120℃で4時間反応させ、酸価100mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量1800のバインダー樹脂溶液を得た。
(合成例6:分散剤f:(E−1)窒素原子を含有するグラフト共重合体に相当)
分子量約5000を有するポリエチレンイミン50重量部、およびn=5のポリカプロラクトン40重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300重量部と混合し、150℃3時間、窒素雰囲気下にて攪拌した。こうして合成した分散剤のGPCで測定した重量平均分子量Mwは約9000であった。
(合成例7:分散剤g:(E−2)窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体に相当)
共重合体中のアミノ基(ジメチルアミノ基)を4級化しなかった以外は、特開平1−229014号公報の実施例1に準じて、3級アミノ基を有するアクリル系B−A−Bブロック共重合体を合成した。得られた共重合体の重量平均分子量Mwは9000、アミン価は121mgKOH/g、酸価は0mgKOH/gであった。
(合成例8:分散剤h:(E−2)窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体に相当)
特開平1−229014号公報の実施例1に準じて、4級アンモニウム塩基(ジメチルベンジルアンモニウム塩基)を有するアクリル系B−A−Bブロック共重合体を合成した。得られた共重合体の重量平均分子量Mwは9000、アミン価は10mgKOH/g、酸価は0mgKOH/gであった。
【0211】
[実施例1、2、4〜7、比較例1〜4および7〜9]
〔顔料分散液の調製〕
色材としてC.I.ピグメントグリーン36を7.3重量部、C.I.ピグメントイエロー150を3.1重量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60.0重量部、分散剤として表−1に記載の分散剤を固形分換算で合計1.3重量部、(表)に記載の樹脂を3.4重量部、平均粒径0.5mmのジルコニアビーズ225重量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させた後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、緑顔料分散液を調製した。
〔硬化性組成物の調製〕
上記で得られた顔料分散液58.4重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)35.0重量部、樹脂3.5重量部、単量体としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3.2重量部、光重合開始系として2−メルカプトベンゾチアゾール、p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、およびミヒラーズケトンを、それぞれ0.7重量部を添加し、硬化性組成物を調製した。
なお、比較例8および9については、上記組成の各成分に加えて、リン酸アクリレート(PM−21:日本化薬社製)を、全固形分に対して1重量%の割合になるように加えた。
【0212】
[実施例3および比較例5,6]
〔顔料分散液の調製〕
カラー用カーボンブラック(三菱化学社製「MA−8」、平均粒子径24μm、DBP吸油量58ml/100g)100gを2軸ニ−ダ−内で超純水500mlとともに20分混練し、濾過により超純水を除去した。濾過されたカ−ボンブラックに再度超純水を添加して混練し、濾過を4回繰り返し行った。最後に濾過したカ−ボンブラックを乾燥して洗浄したカ−ボンブラックを得た。洗浄したカーボンブラック50重量部に、byk161(ビック・ケミー社製ウレタン樹脂分散剤。アミン価39mgKOH/g)10重量部、およびPGMEAを加え、固形分濃度が30重量%となるように調整した。顔料分散液の全重量は50gであった。これを攪拌機によりよく攪拌しプレミキシングを行った。
次に、ペイントシェーカーにより25〜45℃の範囲で6時間分散処理を行った。ビーズは0.5mmφのジルコニアビーズを用い、分散液と同じ重量を加えた。分散終了後(JIS Z8741における20度鏡面光沢度170)、フィルターによりビーズと分散液を分離して、顔料分散液を調製した。
【0213】
〔硬化性組成物の調製〕
上記で得られた黒色顔料分散液を用いて、下記の配合割合となるように各成分を加え、スターラーにより攪拌、溶解させて、ブラックレジスト感光液を調製した。
調製したインク:固形分として50g
バインダーe:固形分として30g
モノマー(エチレン性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):10g
分散剤(byk161)含有溶液:固形分として5g
光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製「CGI242」、下記構造式に示す化合物。):5g
【0214】
【化26】

有機溶剤(PGMEA):300g
界面活性剤(住友3M社製「FC−430」、フッ素系界面活性剤):レジスト液中の濃度が100ppmとなる量。
得られた硬化性組成物につき、〔硬化性組成物の水分含有量の調整〕の項に記載の方法で水分量を調整した後、上述の〔塗布適性評価方法(I)〕にて評価を行った。次いで、10cm幅の小型ラボコーターを用いてダイコート法による塗布試験を行い、得られた塗布膜を乾燥した後、10cm×10cmの塗布エリアにおける、剥離片異物による欠陥発生の様子を観察した。なお、塗布速度は0.1m/sec、塗布ギャップは0.1mm、ウェット状態の塗布膜厚は20ミクロンであった。結果を表−1に示す。
さらに、前述の〔粘度測定方法〕に従って、硬化性組成物の調製直後の粘度に対する、2週間保存後の粘度の変化を観察した。結果を表−1に示す。
続いて、2週間保存後の硬化性組成物を用いて、前述と同様の条件で、小型ラボコーターを用いて塗布試験を行った。
2週間保存後の粘度上昇が0.5cps未満であった、実施例1〜3および5〜7の組成物は、問題なく塗布することができ、凝集異物による欠陥も非常に少なかった。同じく粘度上昇が0.5cps未満であった、比較例1,3,5および8の硬化性組成物については、塗布は行えたものの、硬化性組成物調製直後の塗布試験時と同様、10cm×10cmの塗布エリア中に多数の剥離片異物による欠陥が発生した。
2週間保存後の粘度上昇が0.5cps以上1.0cps以下の範囲であった実施例4は、塗布時に若干の、塗布筋が生じたが、得られた塗布エリア中の欠陥数は少なかった。
2週間保存後の粘度上昇が1cps以上であった、比較例2,4および6〜8は、保存中に顔料分散体が壊れ、そのため硬化性組成物中で顔料が凝集しており、ダイコーターのディスペンスノズルから硬化性組成物を供給することが著しく困難であり、得られた塗布膜にも塗布ムラが多く発生した。
【0215】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明によれば、凝集異物の発生が少なく、保存安定性に優れた硬化性組成物を提供することができる。また、このような硬化性組成物を用いることにより、剥離片異物による欠陥の発生が少なく、高品質なカラーフィルター、及び液晶表示装置提供することができる。従って、画素やブラックマトリックス等の材料となる各種硬化性組成物、カラーフィルター、及び液晶表示装置の分野において、産業上の利用可能性は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】付着物が形成されたガラス試験片の写真を示す。
【図2】付着物がガラス試験片の一稜線に形成された部分の拡大写真を示す。
【図3】付着物が形成されたガラス試験片の模式図を示す。
【符号の説明】
【0218】
1 ガラス試験片
2 付着物
3 硬化性組成物の塗膜
4 稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダ樹脂、(B)単量体、(C)溶剤、および(D)顔料を含有する硬化性組成物であって、
硬化性組成物の水分含有量が0.4重量%以上2.0重量%以下であり、
下記(1)〜(4)の工程からなる塗布適性評価方法(I)において、
ガラス試験片の一稜線上に形成される付着物(a)が2μg以下であり、かつ硬化性組成物を常圧下、35℃で2週間保存したときの粘度上昇が1.0cps以下である、
ことを特徴とする硬化性組成物。
[塗布適性評価方法(I)]
(1)雰囲気温度23℃で、長さ100mm×幅5mm×厚み0.7mmのガラス試験片の縦方向の先端部分20mmを、12.5mm/秒の速度で硬化性組成物中に浸漬し、その後4秒間維持する工程
(2)該ガラス試験片を、12.5mm/秒の速度で硬化性組成物から取り出し、該ガラス試験片の先端を下にして垂直に保持した後、雰囲気温度23℃、湿度55%、風速0.5±0.2m/秒の条件下で52秒間乾燥させる工程
(3)工程(1)及び(2)を合計250回繰り返し、該ガラス試験片に硬化性組成物由来の付着物を形成させる工程
(4)該ガラス試験片の4稜線のうち、該付着物量が最も多い稜線を選択する工程。(なお、選択された稜線上の付着物を「付着物(a)」と称す。)
【請求項2】
リン酸アクリレートを含有していないか、あるいは該リン酸アクリレートの含有量が硬化性組成物の全固形分中5重量%以下である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
さらに、(E)分散剤を含有する請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
(E)分散剤として、(E−1)窒素原子含有グラフト共重合体、(E−2)窒素原子含有アクリル系ブロック共重合体、および(E−3)ウレタン系分散剤からなる群から選ばれた少なくとも1つを含有する、請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
(E)分散剤として、吸着部に、イオン化されていない窒素原子を有する分散剤を含有する、請求項3または4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(C)溶剤として、グリコールアルキルエーテルアセテート類を含有する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
(C)溶剤として、沸点150℃以上の溶剤を含有する、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
(A)バインダ樹脂として、下記(A−1)〜(A−5)から選ばれた少なくとも1つを含有する、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の硬化性組成物
(A−1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させ、更に該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる、アルカリ可溶性樹脂
(A−2):カルボキシル基含有樹脂
(A−3):前記(A−2)樹脂のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂
(A−4):アクリル系樹脂
(A−5):カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂
【請求項9】
ダイコート塗布用である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の硬化性組成物を用いて形成されたカラーフィルター。
【請求項11】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の硬化性組成物を用いて形成された液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−270147(P2007−270147A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60896(P2007−60896)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】