説明

硬化性組成物、硬化物および硬化性組成物の使用方法

【課題】耐熱性及び透明性に優れ、かつ、高い接着力を有する硬化物が得られる硬化性組成物、該組成物を硬化してなる硬化物、並びに、該組成物を光素子用接着剤又は光素子用封止剤として使用する方法を提供する。
【解決手段】分子内に、シアノ基を有する繰り返し単位を有し、重量平均分子量が1,000〜30,000であるシラン化合物共重合体と、(C)ホウ素化合物を、前記(A)100質量部に対して、0質量部超2質量部以下含有する硬化性組成物;該組成物を硬化してなる硬化物;並びに、該組成物を光素子用接着剤又は光素子用封止剤として使用する方法)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性及び耐熱性に優れ、かつ、高い接着力を有する硬化物が得られる硬化性組成物、該組成物を硬化してなる硬化物、並びに、該組成物を光素子用接着剤又は光素子用封止剤として使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、硬化性組成物は用途に応じて様々な改良がなされ、光学部品や成形体の原料、接着剤、コーティング剤等として産業上広く利用されてきている。例えば、透明性に優れる硬化物を形成する硬化性組成物は、光学部品の原料やそのコーティング剤として、また、高い接着力を有する硬化物を形成する硬化性組成物は、接着剤やコーティング剤として好ましく用いられる。
また、近年、硬化性組成物は、光素子封止体を製造する際に、光素子用接着剤や光素子用封止剤等の光素子固定材用組成物としても利用されてきている。
【0003】
光素子には、半導体レーザー(LD)等の各種レーザーや発光ダイオード(LED)等の発光素子、受光素子、複合光素子、光集積回路等がある。近年においては、発光のピーク波長がより短波長である青色光や白色光の光素子が開発され広く使用されてきている。このような発光のピーク波長の短い発光素子の高輝度化が飛躍的に進み、これに伴い光素子の発熱量がさらに大きくなっていく傾向にある。
【0004】
ところが、近年における光素子の高輝度化に伴い、光素子固定材用組成物の硬化物が、より高いエネルギーの光や光素子から発生するより高温の熱に長時間さらされ、劣化してクラックが発生したり、剥離したりするという問題が生じた。
【0005】
この問題を解決するべく、特許文献1〜3において、ポリシルセスキオキサン化合物を主成分とする光素子固定材用組成物が提案されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたポリシルセスキオキサン化合物を主成分とする光素子固定材用組成物の硬化物であっても、十分な接着力を保ちつつ、耐熱性及び透明性を得るのは困難な場合があった。
【0006】
また、光素子封止用に用いる組成物として、特許文献4には、脂環式エポキシ樹脂を用いるエポキシ樹脂組成物が、特許文献5には、ポリチオール化合物を含有するエポキシ樹脂組成物が提案されている。
しかしながら、これらの組成物を用いる場合であっても、経時変化に伴う十分な耐光劣化性を満足することができなかったり、接着力が低下する場合があった。
従って、耐熱性、透明性により優れ、高い接着力を有する硬化物が得られる硬化性組成物の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−359933号公報
【特許文献2】特開2005−263869号公報
【特許文献3】特開2006−328231号公報
【特許文献4】特開平7−309927号公報
【特許文献5】特開2009−001752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、耐熱性及び透明性に優れ、かつ、高温においても高い接着力を有する硬化物が得られる硬化性組成物、該組成物を硬化してなる硬化物、並びに、該組成物を光素子用接着剤又は光素子用封止剤として使用する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(A)特定のシラン化合物共重合体、及び(C)ホウ素化合物を、前記(A)成分100質量部に対して、0質量部超2質量部以下含有する組成物は、長期にわたって、優れた透明性、耐熱性を保ちつつ、かつ、高温においても高い接着力を有する硬化物となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明の第1によれば、下記〔1〕〜〔9〕の硬化性組成物が提供される。
〔1〕(A)分子内に、下記式(i)、(ii)及び(iii)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Dは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。Rは、炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
で表される繰り返し単位のうち、(i)及び(ii)、(i)及び(iii)、(ii)及び(iii)、又は(i)、(ii)及び(iii)の繰り返し単位を有し、重量平均分子量が、1,000〜30,000であるシラン化合物共重合体と、
(C)ホウ素化合物を、前記(A)100質量部に対して、0質量部超2質量部以下含有することを特徴とする硬化性組成物。
【0013】
〔2〕さらに、(B)反応性環状エーテル構造を有するシランカップリング剤を、
前記(A)と(B)の質量比で、(A):(B)=95:5〜80:20の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【0014】
〔3〕前記(A)のシラン化合物共重合体が、式:R−CH(CN)−D−で表される基の存在量(〔R−CH(CN)−D〕)とRの存在量(〔R〕)のモル比で、〔R−CH(CN)−D〕:〔R〕=5:95〜50:50のシラン化合物共重合体である〔1〕又は〔2〕に記載の硬化性組成物。
【0015】
〔4〕(A’)式(1):R−CH(CN)−D−Si(OR(X3−p
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Dは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、pは0〜3の整数を表す。)
で表されるシラン化合物(1)の少なくとも一種、及び
式(2):RSi(OR(X3−q
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、qは0〜3の整数を表す。)
で表されるシラン化合物(2)の少なくとも一種を含むシラン化合物の混合物を縮合させて得られる、重量平均分子量が、1,000〜30,000であるシラン化合物共重合体と、(C)ホウ素化合物を、前記(A’)100質量部に対して、0質量部超2質量部以下含有することを特徴とする硬化性組成物。
【0016】
〔5〕さらに、(B)反応性環状エーテル構造を有するシランカップリング剤を、
前記(A’)と(B)の質量比で、(A’):(B)=95:5〜80:20の割合で含有することを特徴とする〔4〕に記載の硬化性組成物。
【0017】
〔6〕前記(A’)のシラン化合物共重合体が、シラン化合物(1)とシラン化合物(2)とを、モル比で、〔シラン化合物(1)〕:〔シラン化合物(2)〕=5:95〜50:50の割合で縮合させて得られるシラン化合物共重合体である〔4〕又は〔5〕に記載の硬化性組成物。
【0018】
〔7〕前記(B)のシランカップリング剤が、シクロヘキセンオキシド基を有するシランカップリング剤であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔8〕前記(C)のホウ素化合物が、下記式(3)
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はアシル基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、mは0〜3の整数を表し、m+n=3である。m、nがそれぞれ2以上のとき、複数のR同士、R同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)で表される化合物、及び、ボロントリハライド類の錯体からなる群から選ばれる少なくとも一種である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔9〕前記(C)のホウ素化合物が、ボロントリフルオリド錯体、ボロン酸類及びボロン酸アルキルエステル類からなる群から選ばれる少なくとも一種である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔10〕光素子固定材用組成物である〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0021】
本発明の第2によれば、下記〔11〕、〔12〕の硬化物が提供される。
〔11〕〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
〔12〕光素子固定材である〔11〕に記載の硬化物。
【0022】
本発明の第3によれば、下記〔13〕、〔14〕の本発明の硬化性組成物を使用する方法が提供される。
〔13〕〔10〕に記載の硬化性組成物を、光素子用接着剤として使用する方法。
〔14〕〔10〕に記載の硬化性組成物を、光素子用封止剤として使用する方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の硬化性組成物によれば、高エネルギーの光が照射される場合や高温状態であっても、着色して透明性が低下したりすることがなく、長期にわたって優れた透明性を有し、かつ、高い接着力を有する硬化物を得ることができる。
本発明の硬化性組成物は、光素子固定材を形成する際に使用することができ、特に、光素子用接着剤、及び光素子用封止剤として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を、1)硬化性組成物、2)硬化物、及び、3)硬化性組成物の使用方法、に項分けして詳細に説明する。
【0025】
1)硬化性組成物
本発明の硬化性組成物は、(A)分子内に、下記式(i)、(ii)及び(iii)
【0026】
【化3】

【0027】
で表される繰り返し単位のうち、(i)及び(ii)、(i)及び(iii)、(ii)及び(iii)、又は(i)、(ii)及び(iii)の繰り返し単位を有し、重量平均分子量が、1,000〜30,000であるシラン化合物共重合体と、(C)ホウ素化合物を、前記(A)100質量部に対して、0質量部超2質量部以下含有することを特徴とする。
【0028】
(A)シラン化合物共重合体
本発明の硬化性組成物は、(A)成分として、前記式(i)、(ii)及び(iii)で表される繰り返し単位のうち、(i)及び(ii)、(i)及び(iii)、(ii)及び(iii)、又は(i)、(ii)及び(iii)の繰り返し単位を有し、重量平均分子量が、1,000〜30,000であるシラン化合物共重合体(以下、「シラン化合物共重合体(A)」ということがある。)を含有する。
シラン化合物共重合体(A)は、(i)、(ii)、(iii)で表される繰り返し単位をそれぞれ一種有していてもよく、二種以上有していてもよい。
【0029】
式(i)〜(iii)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、水素原子が好ましい。
で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
【0030】
Dは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。
当該2価の有機基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニレン基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基、置換基を有していてもよい(アルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基)と置換基を有していてもよいアリーレン基との組み合わせからなる、置換基を有していてもよい炭素数7〜20の2価の有機基等が挙げられる。
【0031】
炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
炭素数2〜20のアルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基等が挙げられる。
炭素数2〜20のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基等が挙げられる。
炭素数6〜20のアリーレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、2,6−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基等が挙げられる。
【0032】
前記アルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;等が挙げられる。
【0033】
前記アリーレン基の置換基としては、シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;等が挙げられる。
これらの置換基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基等の基において任意の位置に結合していてよく、同一若しくは相異なって複数個が結合していてもよい。
【0034】
置換基を有していてもよい(アルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基)と置換基を有していてもよいアリーレン基との組み合わせからなる、置換基を有していてもよい炭素数7〜20の2価の有機基としては、前記置換基を有していてもよい(アルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基)の少なくとも一種と、前記置換基を有していてもよいアリーレン基の少なくとも一種とが直列に結合した基が挙げられる。具体的には、下記式で表される基が挙げられる。
【0035】
【化4】

【0036】
これらの中でも、Dとしては、高い接着力を有する硬化物が得られることから、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基が特に好ましい。
【0037】
式(i)〜(iii)中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
で表される炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。
【0038】
で表される置換基を有していてもよいフェニル基の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
で表される置換基を有していてもよいフェニル基の具体例としては、フェニル基、2−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基等が挙げられる。
【0039】
シラン化合物共重合体(A)においては、式:R−CH(CN)−D−で表される基の存在量(〔R−CH(CN)−D〕)とRの存在量(〔R〕)のモル比が、〔R−CH(CN)−D〕:〔R〕=5:95〜50:50が好ましく、10:90〜40:60がより好ましい。当該範囲内にあることで、得られる硬化物は透明性及び接着性に優れ、かつ、耐熱性に優れるため高温に置いた後であってもこれらの性質の低下が抑えられる。
式:R−CH(CN)−D−で表される基及びRの存在量は、例えば、シラン化合物共重合体(A)のNMRスペクトルを測定して定量することができる。
【0040】
シラン化合物共重合体(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体等のいずれの共重合体であってもよいが、入手容易性の観点からランダム共重合体が特に好ましい。
【0041】
シラン化合物共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜30,000の範囲であり、好ましくは1,500〜6,000の範囲である。当該範囲内にあることで、組成物の取扱性に優れ、かつ、接着性、耐熱性に優れる硬化物が得られる。重量平均分子量(Mw)は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0042】
シラン化合物共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限されないが、通常1.0〜3.0、好ましくは1.1〜2.0の範囲である。当該範囲内にあることで、接着性、耐熱性に優れる硬化物が得られる。
【0043】
シラン化合物共重合体(A)は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
本発明の硬化性組成物においては、前記(A)成分のシラン化合物共重合体(A)が、(A’)式(1):R−CH(CN)−D−Si(OR(X3−p(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Dは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、pは0〜3の整数を表す。)で表されるシラン化合物(1)の少なくとも一種、及び式(2):RSi(OR(X3−q(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、qは0〜3の整数を表す。)で表されるシラン化合物(2)の少なくとも一種を含むシラン化合物の混合物を縮合させて得られる、重量平均分子量が、1,000〜30,000であるシラン化合物共重合体(以下、「シラン化合物共重合体(A’)」ということがある。)であってもよく、シラン化合物共重合体(A)が、シラン化合物共重合体(A’)であることが好ましい。
【0045】
〔シラン化合物(1)〕
シラン化合物(1)は、式(1):R−CH(CN)−D−Si(OR(X3−pで表される化合物である。シラン化合物(1)を用いることにより、硬化後においても透明性、接着力が良好なシラン化合物共重合体を得ることができる。
【0046】
式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、水素原子が好ましい。具体例としては、シラン化合物共重合体(A)におけるRとして例示したものが挙げられる。
式(1)中、Dは単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。当該2価の有機基の具体例としては、シラン化合物共重合体(A)におけるDとして例示したものが挙げられる。
【0047】
は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
はフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表す。
pは0〜3の整数を表す。
pが2以上のとき、OR同士は同一であっても相異なっていてもよい。また、(3−p)が2以上のとき、X同士は同一であっても相異なっていてもよい。
【0048】
シラン化合物(1)の具体例としては、シアノメチルトリメトキシシラン、シアノメチルトリエトキシシラン、1−シアノエチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリプロポキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリプロポキシシラン、3−シアノプロピルトリブトキシシラン、4−シアノブチルトリメトキシシラン、5−シアノペンチルトリメトキシシラン、2−シアノプロピルトリメトキシシラン、2−(シアノメトキシ)エチルトリメトキシシラン、2−(2−シアノエトキシ)エチルトリメトキシシラン、o−(シアノメチル)フェニルトリプロポキシシラン、m−(シアノメチル)フェニルトリメトキシシラン、p−(シアノメチル)フェニルトリエトキシシラン、p−(2−シアノエチル)フェニルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン化合物類;
【0049】
シアノメチルトリクロロシラン、シアノメチルブロモジメトキシシラン、2−シアノエチルジクロロメトキシシラン、2−シアノエチルジクロロエトキシシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、3−シアノプロピルトリブロモシラン、3−シアノプロピルジクロロメトキシシラン、3−シアノプロピルジクロロエトキシシラン、3−シアノプロピルクロロジメトキシシラン、3−シアノプロピルクロロジエトキシシラン、4−シアノブチルクロロジエトキシシラン、3−シアノ−n−ブチルクロロジエトキシシラン、2−(2−シアノエトキシ)エチルトリクロロシラン、2−(2−シアノエトキシ)エチルブロモジエトキシシラン、2−(2−シアノエトキシ)エチルジクロロプロポキシシラン、o−(2−シアノエチル)フェニルトリクロロシラン、m−(2−シアノエチル)フェニルメトキシジブロモシラン、p−(2−シアノエチル)フェニルジメトキシクロロシラン、p−(2−シアノエチル)フェニルトリブロモシラン等のハロゲノシラン化合物類;等が挙げられる。
これらのシラン化合物(1)は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
これらの中でも、シラン化合物(1)としては、より優れた接着性を有する硬化物が得られることから、トリアルコキシシラン化合物類が好ましく、2−シアノエチル基を有するトリアルコキシシラン化合物類、又は3−シアノプロピル基を有するトリアルコキシシラン化合物類がより好ましい。
【0051】
〔シラン化合物(2)〕
シラン化合物(2)は、式(2):RSi(OR(X3−qで表される化合物である。
式(2)中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。具体例としては、シラン化合物共重合体(A)におけるRとして例示したものが挙げられる。
【0052】
は、前記Rと同様の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、前記Xと同様のハロゲン原子を表す。
qは0〜3のいずれかの整数を表す。
qが2以上のとき、OR同士は同一であっても相異なっていてもよい。また、(3−q)が2以上のとき、X同士は同一であっても相異なっていてもよい。
【0053】
シラン化合物(2)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、i−オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、メチルジメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン化合物類;
メチルクロロジメトキシシラン、メチルジクロロメトキシシラン、メチルジクロロメトキシシラン、メチルクロロジエトキシシラン、エチルクロロジメトキシシラン、エチルジクロロメトキシシラン、n−プロピルクロロジメトキシシラン、n−プロピルジクロロメトキシシラン等のアルキルハロゲノアルコキシシラン化合物類;
メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリブロモシラン、n−プロピルトリクロロシラン等のアルキルトリハロゲノシラン化合物類;
【0054】
フェニルトリメトキシシラン、4−メトキシフェニルトリメトキシシラン、2−クロロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、2−メトキシフェニルトリエトキシシラン、フェニルジメトキシエトキシシラン、フェニルジエトキシメトキシシラン等の置換基を有していてもよいフェニルトリアルコキシシラン化合物類;
フェニルクロロジメトキシシラン、フェニルジクロロメトキシシラン、フェニルクロロメトキシエトキシシラン、フェニルクロロジエトキシシラン、フェニルジクロロエトキシシラン等の置換基を有していてもよいフェニルハロゲノアルコキシシラン化合物類;
フェニルトリクロロシラン、フェニルトリブロモシラン、4−メトキシフェニルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、2−エトキシフェニルトリクロロシラン、2−クロロフェニルトリクロロシラン等の置換基を有していてもよいフェニルトリハロゲノシラン化合物;が挙げられる。
これらのシラン化合物(2)は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
〔シラン化合物の混合物〕
シラン化合物共重合体(A’)を製造する際に用いられるシラン化合物の混合物としては、シラン化合物(1)及びシラン化合物(2)からなる混合物であっても、さらに、本発明の目的を阻害しない範囲でその他のシラン化合物を含む混合物であってもよいが、シラン化合物(1)及びシラン化合物(2)のみからなる混合物が好ましい。
【0056】
シラン化合物(1)とシラン化合物(2)との使用割合は、モル比で、〔シラン化合物(1)〕:〔シラン化合物(2)〕=5:95〜50:50であるのが好ましく、10:90〜40:60がより好ましい。
【0057】
前記シラン化合物の混合物を縮合させる方法としては、特に限定されないが、シラン化合物(1)、シラン化合物(2)、及び所望によりその他のシラン化合物を溶媒に溶解し、所定量の触媒を添加し、所定温度で撹拌する方法が挙げられる。
【0058】
用いる触媒は、酸触媒及び塩基触媒のいずれであってもよい。
酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸;等が挙げられる。
【0059】
塩基触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、アニリン、ピコリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、イミダゾール等の有機塩基;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド等の金属アルコキシド;水素化ナトリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;等が挙げられる。
【0060】
触媒の使用量は、シラン化合物の総モル量に対して、通常、0.1mol%〜10mol%、好ましくは1mol%〜5mol%の範囲である。
【0061】
用いる溶媒は、シラン化合物の種類等に応じて、適宜選択することができる。例えば、水;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、或いは二種以上を混合して用いることができる。
【0062】
溶媒の使用量は、溶媒1リットルあたり、シラン化合物の総モル量が、通常0.1mol〜10mol、好ましくは0.5mol〜10molとなる量である。
【0063】
シラン化合物を縮合(反応)させるときの温度は、通常0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは20℃〜100℃の範囲である。反応温度があまりに低いと縮合反応の進行が不十分となる場合がある。一方、反応温度が高くなりすぎるとゲル化抑制が困難となる。反応は、通常30分から20時間で完結する。
【0064】
反応終了後は、酸触媒を用いた場合は、反応溶液に炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を添加することにより、塩基触媒を用いた場合は、反応溶液に塩酸等の酸を添加することにより中和を行い、その際に生じる塩をろ別又は水洗等により除去し、目的とするシラン化合物共重合体を得ることができる。
【0065】
(C)ホウ素化合物
本発明の硬化性組成物は、前記(A)成分に加えて、(C)成分として、ホウ素化合物(以下、「ホウ素化合物(C)」ということがある。)を含有する。
(C)成分を用いることにより、アルコキシシリル基の加水分解反応が促進され、硬化性組成物のバルクの凝集力が上がり、優れた接着強度を得ることができる。
【0066】
(C)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対して、0質量部超2質量部以下、好ましくは0.005質量部以上1.5質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上1.2質量部以下である。前記使用量が2質量部を超えると、本発明の硬化性組成物が未加熱の状態で硬化が進み、接着時の濡れ性の低下、ひいては接着強度の低下を招くおそれがある。
【0067】
ホウ素化合物(C)としては、ホウ素原子を有する化合物であれば特に制約はなく、例えば、ホウ酸、メタホウ酸、ポリホウ酸、ホウ酸塩類(ホウ酸のナトリウム塩、カリウム塩等)、ボロン酸アルキルエステル類、ボラン類、ボラン類の錯体、ボロン酸類、ボロン酸塩類(ボロン酸のナトリウム塩、カリウム塩等)、ボロントリハライド類及びその錯体等が挙げられる。
ホウ素化合物(C)は、1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
なかでも、本発明において用いるホウ素化合物としては、ルイス酸として機能するホウ素化合物が好ましく、接着性を高める効果が得られることから、下記式(3)で表されるホウ素化合物、並びに、ボロントリハライド類及びその錯体がより好ましい。
【0069】
【化5】

【0070】
式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はアシル基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、mは0〜3の整数を表し、m+n=3である。m、nがそれぞれ2以上のとき、複数のR同士、R同士は、同一であっても相異なっていてもよい。
【0071】
、Rの炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0072】
置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。アリール基の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、t−ブチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0073】
前記式(3)で表されるホウ素化合物の具体例としては、ホウ酸;メチルホウ酸、エチルホウ酸、フェニルホウ酸、アセチルフェニルホウ酸、ジフェニルホウ酸等のボロン酸類;ブチルボレート、ジブチルボレート、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリn−プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリn−ブチルボレート等のボロン酸アルキルエステル類;トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリn−プロピルボラン、トリフェニルボラン等のボラン類;等が挙げられる。
【0074】
ボラン類の錯体としては、ボラン類の、アンモニア錯体、t−ブチルアミン錯体、ジメチルアミン錯体、トリエチルアミン錯体、N,N−ジイソプロピルエチルアミン錯体、N,N−ジエチルアニリン錯体、ジメチルスルフィド錯体、イソアミルスルフィド錯体、ジフェニルホスフィン錯体、トリフェニルホスフィン錯体、モルフォリン錯体、ピリジン錯体、テトラヒドロフラン錯体等が挙げられる。
【0075】
ボロントリハライド類としては、ボロントリフルオリド、ボロントリクロリド、ボロントリブロミドが挙げられる。その錯体としては、モノメチルアミン錯体、モノエチルアミン錯体等のアルキルアミン錯体;ジメチルエーテル錯体、ジエチルエーテル錯体、ジブチルエーテル錯体、テトラヒドロフラン錯体等のエーテル錯体;酢酸錯体等のカルボン酸錯体;等が挙げられる。
【0076】
これらの中でも、ボロントリハライド類の錯体、ホウ酸、ボロン酸類、ボロン酸アルキルエステル類がより好ましく、ボロントリフルオリドの錯体、ホウ酸、ボロン酸類、ボロン酸のアルキルエステル類がさらに好ましく、ボロントリフルオリド−モノエチルアミン錯体(三フッ化ホウ素エチルアミン)、ボロントリフルオリド−ジメチルエーテル錯体、ボロントリフルオリド−ジエチルエーテル錯体、ボロントリフルオリド−ジブチルエーテル錯体、ボロントリフルオリド−テトラヒドロフラン錯体、ボロントリフルオリド−酢酸錯体、ホウ酸、フェニルホウ酸、トリブチルボレートが特に好ましい。
【0077】
(C)成分は、硬化性組成物を調製する際、取扱い容易性の観点から、有機溶媒に溶解又は分散させて用いてもよい。用いる有機溶媒としては、メチルエチルケトン、イソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;等が挙げられる。
【0078】
(B)反応性環状エーテル構造を有するシランカップリング剤
本発明の硬化性組成物は、前記(A)成分、(C)成分に加えて、(B)成分として、反応性環状エーテル構造を有するシランカップリング剤(以下、「シランカップリング剤(B)」ということがある。)を、前記(A)と(B)の質量比で、(A):(B)=95:5〜80:20の割合で含有するのが好ましい。シランカップリング剤(B)を用いることにより、相分離(白濁)することなく、透明性に優れ、より高い接着力を有する硬化物を得ることができる。
【0079】
シランカップリング剤(B)における反応性環状エーテル構造は、反応性環状エーテル基を有する構造である。反応性環状エーテル基としては、例えば、エポキシ基;3,4−エポキシシクロヘキシル基等のシクロヘキセンオキシド基;オキセタニル基;テトラヒドロフラニル基;テトラヒドロピラニル基;等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ基、シクロヘキセンオキシド基、オキセタニル基が好ましく、シクロヘキセンオキシド基がより好ましく、3,4−エポキシシクロヘキシル基が特に好ましい。
反応性環状エーテル構造の具体例としては、下記式(E1)〜(E3)
【0080】
【化6】

【0081】
(式中、hは、1〜10の整数を表し、−(CH−中に、エーテル結合(−O−)が介在していてもよい。)で表される基が挙げられる。
なかでも、式(E2)で表される基が好ましく、式(E2)で表される基であって、hが2〜8の整数である基が特に好ましい。
【0082】
シランカップリング剤(B)としては、一つの分子中に、反応性環状エーテル構造(E)と、加水分解性基(OR)の両者を併せ持つ有機ケイ素化合物が好ましく、具体的には下記式(a)で表される化合物が挙げられる。
【0083】
【化7】

【0084】
式(a)中、Eは反応性環状エーテル構造を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、iは1〜3の整数を表し、jは0〜2の整数を表し、kは1〜3の整数を表し、i+j+k=4である。
【0085】
式(a)中、R、Rで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、前記Rで表される炭素数1〜6のアルキル基として先に例示したのと同様の基が挙げられ、前記Rで表される置換基を有していてもよいフェニル基としては、前記Rで表される置換基を有していてもよいフェニル基として先に例示したのと同様の基が挙げられる。
【0086】
前記式(a)で表されるシランカップリング剤(B)の具体例としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のシクロヘキセンオキシド基を有するシランカップリング剤;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシドキシ基を有するシランカップリング剤;
(オキセタン−3−イル)メチルトリメトキシシラン、(オキセタン−3−イル)メチルトリエトキシシラン、(オキセタン−3−イル)メチルメチルジメトキシシラン、(オキセタン−3−イル)メチルメチルジエトキシシラン、(オキセタン−3−イル)メチルエチルジメトキシシラン、(オキセタン−3−イル)メチルエチルジエトキシシラン、(オキセタン−3−イル)メチルフェニルジメトキシシラン、(オキセタン−3−イル)メチルフェニルジエトキシシラン、2−(オキセタン−3’−イル)エチルトリメトキシシラン、2−(オキセタン−3’−イル)エチルトリエトキシシラン等のオキセタニル基を有するシランカップリング剤;等が挙げられる。
これらの中でも、入手容易性、及びより高い接着力を有する硬化物を得ることができる観点から、下記式(b)で表される化合物が好ましい。
【0087】
【化8】

【0088】
式(b)中、E2、R、i、j、kは前記と同じ意味を表す。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシメチル基等の、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0089】
式(b)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤(B)は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
シランカップリング剤(B)は、前記(A)と(B)の質量比で、(A):(B)=95:5〜80:20の割合で含有するのが好ましい。
このような割合で(B)成分を用いることにより、透明性、接着性に優れ、さらに耐熱性に優れ、高温にしても接着力が低下しにくい硬化物が得られる硬化性組成物を得ることができる。当該観点から、(A):(B)=95:5〜85:15の割合が好ましく、92:8〜87:13の割合が特に好ましい。
【0091】
本発明の硬化性組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、さらに他の成分を含有させてもよい。
他の成分としては、前記(B)以外のシランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈剤等が挙げられる。
【0092】
前記(B)以外のシランカップリング剤としては、シランカップリング剤(B)以外のシランカップリング剤であって、本発明の目的を阻害しないものであれば特に制約はない。なかでも、より接着力の高い硬化物が得られる観点から、酸無水物構造を有するシランカップリング剤を用いるのが好ましい。
【0093】
シランカップリング剤の具体例としては、2−トリメトキシシリルエチル無水コハク酸、3−トリエトキシシリルプロピル無水コハク酸等が挙げられる。
【0094】
酸無水物構造を有するシランカップリング剤は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
酸無水物構造を有するシランカップリング剤を使用する場合、その使用量は、(A)成分又は(A’)成分に対して、通常、0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0095】
前記酸化防止剤は、加熱時の酸化劣化を防止するために添加される。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
【0096】
リン系酸化防止剤としては、ホスファイト類、オキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、モノフェノール類、ビスフェノール類、高分子型フェノール類等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0097】
これら酸化防止剤は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の使用量は、(A)成分又は(A’)成分に対して、通常、10質量%以下である。
【0098】
紫外線吸収剤は、得られる硬化物の耐光性を向上させる目的で添加される。
紫外線吸収剤としては、サリチル酸類、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤の使用量は、(A)成分又は(A’)成分に対して、通常、10質量%以下である。
【0099】
光安定剤は、得られる硬化物の耐光性を向上させる目的で添加される。
光安定剤としては、例えば、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}]等のヒンダードアミン類等が挙げられる。
【0100】
これらの光安定剤は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
光安定剤の使用量は、(A)成分又は(A’)成分に対して、通常、10質量%以下である。
【0101】
希釈剤は、硬化性組成物の粘度を調整するため添加される。
希釈剤としては、例えば、グリセリンジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジグリシジルアニリン;等が挙げられる。
これらの希釈剤は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0102】
本発明の硬化性組成物は、例えば、前記(A)、(C)成分、及び、所望により(B)成分、他の成分を所定割合で配合して、公知の方法により混合、脱泡することにより得ることができる。
【0103】
以上のようにして得られる本発明の硬化性組成物によれば、高エネルギーの光が照射される場合や高温状態であっても、着色して透明性が低下したりすることがなく、長期にわたって優れた透明性を有し、かつ、高い接着力を有する硬化物を得ることができる。
したがって、本発明の硬化性組成物は、光学部品や成形体の原料、接着剤、コーティング剤等として好適に使用される。特に、光素子の高輝度化に伴う、光素子固定材の劣化に関する問題を解決することができることから、本発明の硬化性組成物は、光素子固定材用組成物として好適に使用することができる。
【0104】
2)硬化物
本発明の第2は、本発明の硬化性組成物を硬化してなる硬化物である。
本発明の硬化性組成物を硬化する方法としては加熱硬化が挙げられる。硬化するときの加熱温度は、通常、100〜200℃であり、加熱時間は、通常10分から20時間、好ましくは30分から10時間である。
【0105】
本発明の硬化物は、高エネルギーの光が照射される場合や高温状態であっても、着色して透明性が低下したりすることがなく、長期にわたって優れた透明性を有し、かつ、高い接着力を有する。
したがって、本発明の硬化物は、光素子の高輝度化に伴う光素子固定材の劣化に関する問題を解決することができることから、光素子固定材として好適に使用することができる。例えば、光学部品や成形体の原料、接着剤、コーティング剤等として好適に使用される。
【0106】
本発明の硬化性組成物を硬化してなる硬化物が高い接着力を有することは、例えば、次のようにして接着力を測定することで確認することができる。すなわち、シリコンチップのミラー面に硬化性組成物を塗布し、塗布面を被着体の上に載せ圧着し、加熱処理して硬化させる。これを、予め所定温度(例えば、23℃、100℃)に加熱したボンドテスターの測定ステージ上に30秒間放置し、被着体から50μmの高さの位置より、接着面に対し水平方向(せん断方向)に応力をかけ、試験片と被着体との接着力を測定する。
硬化物の接着力は、23℃及び100℃において60N/2mm□以上であることが好ましく、100N/2mm□以上であることがより好ましい。
【0107】
前記硬化物が透明性に優れることは、光透過率を測定することで確認することができる。硬化物の光透過率は、例えば、波長400nm、450nmの光で、80%以上が好ましい。
【0108】
前記硬化物が耐熱性に優れることは、硬化物を高温下に置いた後であっても透明性の変化が小さいことから確認することができる。透明性は、150℃で500時間置いた後に、波長400nm、450nmの透過率が、共に初期透過率の80%以上であることが好ましい。
【0109】
3)硬化性組成物の使用方法
本発明の第3は、本発明の硬化性組成物を、光素子用接着剤又は光素子用封止剤等の光素子固定材用組成物として使用する方法である。
光素子としては、LED、LD等の発光素子、受光素子、複合光素子、光集積回路等が挙げられる。
【0110】
〈光素子用接着剤〉
本発明の硬化性組成物は、光素子用接着剤として好適に使用することができる。
本発明の硬化性組成物を光素子用接着剤として使用する方法としては、接着の対象とする材料(光素子とその基板等)の一方又は両方の接着面に該組成物を塗布し、圧着した後、加熱硬化させ、接着の対象とする材料同士を強固に接着させる方法が挙げられる。
【0111】
光素子を接着するための主な基板材料としては、ソーダライムガラス、耐熱性硬質ガラス等のガラス類;セラミックス;鉄、銅、アルミニウム、金、銀、白金、クロム、チタン及びこれらの金属の合金、ステンレス(SUS302、SUS304、SUS304L、SUS309等)等の金属類;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ガラスエポキシ樹脂等の合成樹脂;等が挙げられる。
【0112】
加熱硬化させる際の加熱温度は、用いる硬化性組成物等にもよるが、通常、100〜200℃である。加熱時間は、通常10分から20時間、好ましくは30分から10時間である。
【0113】
〈光素子用封止剤〉
本発明の硬化性組成物は、光素子封止体の封止剤として好適に用いることができる。
本発明の硬化性組成物を光素子用封止剤として使用する方法としては、例えば、該組成物を所望の形状に成形して、光素子を内包した成形体を得た後、そのものを加熱硬化させることにより光素子封止体を製造する方法等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物を所望の形状に成形する方法としては、特に限定されるものではなく、通常のトランスファー成形法や、注型法等の公知のモールド法を採用できる。
【0114】
加熱硬化する際の加熱温度は、用いる硬化性組成物等にもよるが、通常、100〜200℃である。加熱時間は、通常10分から20時間、好ましくは30分から10時間である。
【0115】
得られる光素子封止体は、本発明の硬化性組成物を用いているので、光素子に、白色や青色発光LED等の、発光のピーク波長が400〜490nmと短波長のものを用いても、熱や光により着色劣化することがない透明性、耐熱性に優れるものである。
【実施例】
【0116】
次に実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0117】
(重量平均分子量測定)
製造例で得たシラン化合物共重合体の重量平均分子量(Mw)は標準ポリスチレン換算値とし、以下の装置及び条件にて測定した。
装置名:HLC−8220GPC、東ソー社製
カラム:TSKgelGMHXL、TSKgelGMHXL、及び、TSKgel2000HXLを順次連結したもの
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:80μl
測定温度:40℃
流速:1ml/分
検出器:示差屈折計
【0118】
(IRスペクトルの測定)
製造例で得たシラン化合物共重合体のIRスペクトルは、以下の装置を使用して測定した。
フーリエ変換赤外分光光度計(Spectrum100、パーキンエルマー社製)
【0119】
(製造例1) シラン化合物共重合体(A1)の製造
300mlのナス型フラスコに、フェニルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)20.2g(102mmol)と、2−シアノエチルトリメトキシシラン(アヅマックス社製)3.15g(18mmol)、並びに、溶媒として、アセトン96ml及び蒸留水24mlを仕込んだ後、攪拌しながら、触媒としてリン酸(関東化学社製)0.15g(1.5mmol)を加え、室温でさらに16時間攪拌を継続した。
【0120】
反応終了後、反応液をエバポレーターで50mlまで濃縮し、酢酸エチル100mlを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にて中和した。しばらく静置した後、有機層を分取した。次いで、有機層を蒸留水にて2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別後、ろ液をエバポレーターにて50mlまで濃縮し、これを多量のn−ヘキサン中に滴下して沈殿させ、沈殿物をデカンテーションにより分離した。得られた沈殿物をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して回収し、エバポレーターで溶媒を減圧留去し、真空乾燥することにより、シラン化合物共重合体(A1)を13.5g得た。
【0121】
シラン化合物共重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は1,900であった。
また、シラン化合物共重合体(A1)のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−Ph:698cm−1,740cm−1,Si−O:1132cm−1,−CN:2259cm−1
【0122】
(製造例2) シラン化合物共重合体(A2)の製造
製造例1において、フェニルトリメトキシシランの使用量を16.7g(84mmol)とし、2−シアノエチルトリメトキシシランの使用量を6.31g(36mmol)とした以外は製造例1と同様にして、シラン化合物共重合体(A2)を12.9g得た。
【0123】
シラン化合物共重合体(A2)の重量平均分子量(Mw)は2,000であった。
また、シラン化合物共重合体(A2)のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−Ph:698cm−1,740cm−1,Si−O:1132cm−1,−CN:2255cm−1
【0124】
(製造例3) シラン化合物共重合体(A3)の製造
300mlのナス型フラスコに、フェニルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)11.9g(60mmol)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)14.2g(60mmol)、並びに、溶媒として、トルエン60ml及び蒸留水30mlを仕込んだ後、攪拌しながら、触媒としてリン酸(関東化学社製)0.15g(1.5mmol)を加え、室温でさらに16時間攪拌を継続した。
【0125】
反応終了後、反応混合物に酢酸エチル100mlを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にて中和した。しばらく静置した後、有機層を分取した。次いで、有機層を蒸留水にて2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別後、ろ液をエバポレーターにて50mlまで濃縮し、これを多量のn−ヘキサン中に滴下して沈殿させ、沈殿物をデカンテーションにより分離した。得られた沈殿物をMEKに溶解して回収し、エバポレーターで溶媒を減圧留去し、真空乾燥することにより、シラン化合物共重合体(A3)を16.3g得た。
【0126】
シラン化合物共重合体(A3)の重量平均分子量(Mw)は2,800であった。
また、シラン化合物共重合体(A3)のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−Ph:699cm−1,741cm−1,Si−O:1132cm−1,エポキシ基:1254cm−1
【0127】
(実施例1)
製造例1で得たシラン化合物共重合体(A1)100質量部に、シランカップリング剤(B)として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)10質量部、ホウ素化合物(C)として、ボロントリフルオリド−モノエチルアミン錯体(東京化成工業社製)の10質量%MEK溶液1質量部(C成分として0.1質量部)を加え、全容を十分に混合、脱泡することにより、硬化性組成物(1)を得た。
【0128】
(実施例2〜22、比較例1〜3)
シラン化合物共重合体(A1)〜(A3)、下記に示すホウ素化合物(C1)〜(C7)、シランカップリング剤(B1)を、下記第1表に示す量で用い、実施例1と同様にして、実施例2〜22の硬化性組成物(2)〜(22)、比較例1〜3の硬化性組成物(1r)〜(3r)を得た。
【0129】
・ホウ素化合物(C1):ボロントリフルオリド−モノエチルアミン錯体(東京化成工業社製)の10質量%MEK溶液
・ホウ素化合物(C2):ボロントリフルオリド−ジブチルエーテル錯体(東京化成工業社製)の10質量%MEK溶液
・ホウ素化合物(C3):ボロントリフルオリド−テトラヒドロフラン錯体(シグマアルドリッチ社製)の10質量%MEK溶液
・ホウ素化合物(C4):ボロントリフルオリド−酢酸錯体(東京化成工業社製)の10質量%MEK溶液
・ホウ素化合物(C5):ホウ酸(関東化学社製)の10質量%メタノール溶液
・ホウ素化合物(C6):フェニルホウ酸(東京化成工業社製)の10質量%MEK溶液
・ホウ素化合物(C7):トリブチルボレート(東京化成工業社製)の10質量%MEK溶液
【0130】
実施例1〜22及び比較例1〜3で得た硬化性組成物(1)〜(22)、(1r)〜(3r)の硬化物につき、下記のようにして、接着力、初期透過率、及び加熱後透過率を測定し、接着耐熱性、初期透明性、耐熱性(加熱後透明性)を評価した。
【0131】
(接着力試験)
2mm角のシリコンチップのミラー面に、硬化性組成物(1)〜(22)、(1r)〜(3r)のそれぞれを厚さが約2μmになるよう塗布し、塗布面を被着体(銀メッキ銅板)の上に載せ圧着した。その後、180℃で2時間加熱処理して硬化させて試験片付被着体を得た。この試験片付被着体を、予め所定温度(23℃、100℃)に加熱したボンドテスター(シリーズ4000、デイジ社製)の測定ステージ上に30秒間放置し、被着体から50μmの高さの位置より、スピード200μm/sで接着面に対し水平方法(せん断方向)に応力をかけ、23℃及び100℃における、試験片と被着体との接着力(N/2mm□)を測定した。
【0132】
(接着耐熱性)
接着力試験において、23℃及び100℃における接着力が、いずれも100N/2mm□以上である場合を「◎」、23℃における接着力が100N/2mm□以上であり、100℃における接着力が80N/2mm□以上である場合を「○」、23℃における接着力が70N/2mm□以上であり、100℃における接着力が60N/2mm□以上である場合を「△」、100℃における接着力が60N/2mm□未満である場合を「×」と評価した。
【0133】
(初期透過率の測定)
硬化性組成物1〜12のそれぞれを、長さ25mm、幅20mm、厚さ1mmとなるように鋳型に流し込み、140℃で6時間加熱して硬化させ、試験片をそれぞれ作製した。得られた試験片につき、分光光度計(MPC−3100、島津製作所社製)にて、波長400nm、450nmの初期透過率(%)を測定した。
【0134】
(初期透明性)
初期透過率測定において、400nmの透過率が80%以上を「○」、70%以上80%未満を「△」、70%未満を「×」と評価した。
【0135】
(加熱後の透過率の測定)
初期透過率を測定した各試験片を150℃のオーブン中に500時間静置し、再度、波長400nm、450nmの透過率(%)を測定した。これを加熱後透過率とした。
【0136】
〔耐熱性(加熱後透明性)〕
加熱後透過率測定において、400nmの透過率が、初期透過率の80%以上であれば「○」、70%以上80%未満であれば「△」、70%未満であれば「×」と評価した。
測定結果及び評価を下記第1表に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
第1表から、実施例1〜22の硬化性組成物(1)〜(22)の硬化物は、接着性及び接着耐熱性に優れ、波長400nm、450nmの初期透過率、加熱後透過率がいずれも高く、初期透明性、耐熱性(加熱後透明性)にも優れていた。
一方、比較例1〜3の硬化性組成物(1r)〜(3r)の硬化物は、接着性、接着耐熱性に劣っていた。また、比較例2の硬化性組成物(2r)の硬化物は、加熱することで透過率が大きく低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内に、下記式(i)、(ii)及び(iii)
【化1】

(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Dは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。Rは、炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
で表される繰り返し単位のうち、(i)及び(ii)、(i)及び(iii)、(ii)及び(iii)、又は(i)、(ii)及び(iii)の繰り返し単位を有し、重量平均分子量が、1,000〜30,000であるシラン化合物共重合体と、
(C)ホウ素化合物を、前記(A)100質量部に対して、0質量部超2質量部以下含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
さらに、(B)反応性環状エーテル構造を有するシランカップリング剤を、
前記(A)と(B)の質量比で、(A):(B)=95:5〜80:20の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(A)のシラン化合物共重合体が、式:R−CH(CN)−D−で表される基の存在量(〔R−CH(CN)−D〕)とRの存在量(〔R〕)のモル比で、〔R−CH(CN)−D〕:〔R〕=5:95〜50:50のシラン化合物共重合体である請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
(A’)式(1):R−CH(CN)−D−Si(OR(X3−p
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Dは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、pは0〜3の整数を表す。)
で表されるシラン化合物(1)の少なくとも一種、及び
式(2):RSi(OR(X3−q
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、qは0〜3の整数を表す。)
で表されるシラン化合物(2)の少なくとも一種を含むシラン化合物の混合物を縮合させて得られる、重量平均分子量が、1,000〜30,000であるシラン化合物共重合体と、
(C)ホウ素化合物を、前記(A’)100質量部に対して、0質量部超2質量部以下含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項5】
さらに、(B)反応性環状エーテル構造を有するシランカップリング剤を、
前記(A’)と(B)の質量比で、(A’):(B)=95:5〜80:20の割合で含有することを特徴とする請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記(A’)のシラン化合物共重合体が、シラン化合物(1)とシラン化合物(2)とを、モル比で、〔シラン化合物(1)〕:〔シラン化合物(2)〕=5:95〜50:50の割合で縮合させて得られるシラン化合物共重合体である請求項4または5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記(B)のシランカップリング剤が、シクロヘキセンオキシド基を有するシランカップリング剤であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記(C)のホウ素化合物が、下記式(3)
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はアシル基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、mは0〜3の整数を表し、m+n=3である。m、nがそれぞれ2以上のとき、複数のR同士、R同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)で表される化合物、及び、ボロントリハライド類の錯体からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記(C)のホウ素化合物が、ボロントリフルオリド錯体、ボロン酸類及びボロン酸アルキルエステル類からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項10】
光素子固定材用組成物である請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項12】
光素子固定材である請求項11に記載の硬化物。
【請求項13】
請求項10に記載の硬化性組成物を、光素子用接着剤として使用する方法。
【請求項14】
請求項10に記載の硬化性組成物を、光素子用封止剤として使用する方法。

【公開番号】特開2012−197425(P2012−197425A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27976(P2012−27976)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】