説明

硬化性組成物、硬化膜、フォトスペーサーの製造方法、液晶表示装置用基板及び液晶表示装置

【課題】硬化後に高度の変形回復性を有し、液晶表示装置を形成したときには表示ムラを解消し得る硬化性組成物を提供する。
【解決手段】硬化性組成物に、分岐及び/又は脂環構造を有する基と、酸性基を有する基と、エポキシ基を有する基とを含有する樹脂(A)と、重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、界面活性光重合開始剤(D)とを少なくとも含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、硬化膜、フォトスペーサーの製造方法、液晶表示装置用基板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、高画質画像を表示する表示装置に広く利用されている。液晶表示装置は一般に、一対の基板間に所定の配向により画像表示を可能とする液晶層が配置されている。この基板間隔、すなわち液晶層の厚みを均一に維持することが画質を決定する要素の一つであり、そのために液晶層の厚みを一定に保持するためのスペーサーが配設されている。この基板の間の厚みは一般に「セル厚」と称され、セル厚は通常、前記液晶層の厚み、換言すれば、表示領域の液晶に電界をかけている2枚の電極間の距離を示す。
【0003】
スペーサーは、従来ビーズ散布により形成されていたが、近年では、硬化性組成物を用いてフォトリソグラフィーにより位置精度の高いスペーサーが形成されるようになってきている。このような硬化性組成物を用いて形成されたスペーサーは、フォトスペーサー(photo spacer)と呼ばれている。
【0004】
硬化性組成物を用いてパターニング、アルカリ現像、及びベークを経て作製されたフォトスペーサーについては、そのスペーサドットの圧縮強度が弱く、パネル形成時に塑性変形が大きくなる傾向を有している。高画質の画像表示には、これに起因して液晶層の厚みが設計値より小さくなる等して均一性が保持できない問題や、画像ムラを生ずるといった問題がないことが要求される。また、液晶表示装置の高精度化の点では、硬化性組成物のアルカリ現像残渣が生じないことも重要である。
【0005】
上記に関連して、液晶層の厚さ(セル厚)を一定に保つためのフォトスペーサー形成技術として、フォトスペーサー形成用にアリル基を有する樹脂を用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、製造が容易で貯蔵安定性に優れたフォトスペーサー用の硬化性組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、耐冷熱衝撃性に優れた組成物も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、硬化性組成物として、形成される硬化膜の表面強度を改良することができる界面活性光開始剤を含む硬化性組成物が開示されている(例えば、特許文献4〜6参照)。
【特許文献1】特開2003−207787号公報
【特許文献2】特開2005−62620号公報
【特許文献3】特開2002−287354号公報
【特許文献4】特表2004−515611号公報
【特許文献5】特表2004−522819号公報
【特許文献6】特表2004−525994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
元々、液晶セルに用いられるフォトスペーサーには、高い変形回復性が要求されている。これを実現するために、モノマーなどの架橋反応率を高くすることが行なわれ、変形回復率をある程度高めることができるものの、その向上効果は頭打ちになる傾向にあり、更なる改善が求められていた。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、硬化後に高度の変形回復性を有し、例えば、液晶表示装置を形成したときには表示ムラを解消し得る硬化性組成物、及び硬化膜、フォトスペーサーの製造方法、並びに、表示ムラを防止して高画質画像の表示を可能とする液晶表示装置用基板、及び液晶表示装置を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 分岐及び/又は脂環構造を有する基と、酸性基を有する基と、エポキシ基を有する基とを含有する樹脂と、重合性化合物と、光重合開始剤と、界面活性光重合開始剤とを少なくとも含む硬化性組成物。
<2> 前記界面活性光重合開始剤は、置換されていてもよい炭素数3以上30以下のアルキル基、置換されていてもよいシロキサン基及び置換されていてもよいフッ素化アルキル基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物である、前記<1>に記載の硬化性組成物。
<3> 前記界面活性光重合開始剤は、トリハロメチル−s−トリアジン化合物、トリハロメチルオキサジアゾール化合物、α−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、又はオキシム系化合物から誘導される置換基を含む化合物である、前記<1>又は<2>に記載の硬化性組成物。
<4> 前記脂環構造を有する基は、置換されていてもよい炭素数6以上25以下の環状化合物に由来する基である、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0008】
<5> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜。
<6> <1>〜<4>のいずれか1項に記載の硬化性組成物を塗布することで、支持体上に硬化性組成物層を形成する工程を有するフォトスペーサーの製造方法。
<7> 前記<6>に記載のフォトスペーサーの製造方法により製造されたフォトスペーサーを備えた液晶表示装置用基板。
<8> 前記<7>に記載の液晶表示装置用基板を備えた液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬化後に高度の変形回復性を有し、例えば、液晶表示装置を形成したときには表示ムラを解消し得る硬化性組成物、及び硬化膜、フォトスペーサーの製造方法、並びに、表示ムラを防止して高画質画像の表示を可能とする液晶表示装置用基板、及び液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の硬化性組成物、及び硬化膜、フォトスペーサーの製造方法、並びに、液晶表示装置用基板、及び液晶表示装置について詳細に説明する。
【0011】
<硬化性組成物及びフォトスペーサーの製造方法>
本発明の硬化性組成物は、分岐及び/又は脂環構造を有する基と、酸性基を有する基と、エポキシ基を有する基とを含有する樹脂(A)の少なくとも1種と、重合性化合物(B)の少なくとも1種と、光重合開始剤(C)の少なくとも1種と、界面活性光重合開始剤(D)の少なくとも1種とを少なくとも含有する。本発明の硬化性組成物により製造されるフォトスペーサーは高度の変形回復性を有するため、表示装置における表示ムラを解消することができる。
【0012】
また、本発明のフォトスペーサーの製造方法は、少なくとも2枚の支持体と、前記支持体間に設けられた液晶と、前記液晶に電界を印加する2枚の電極と、前記支持体間のセル厚を規制するためのフォトスペーサーと、を備えた液晶表示装置における前記フォトスペーサーを製造する方法であり、前記2枚の支持体の一方の上に、本発明の硬化性組成物を用いた硬化性組成物層を形成する層形成工程を有する。
【0013】
本発明のフォトスペーサーの製造方法によれば、高度の変形回復性を有するフォトスペーサーを容易に製造できる。
【0014】
以下、本発明のフォトスペーサーの製造方法について説明し、該説明を通じて本発明の硬化性組成物の詳細についても述べる。
【0015】
[層形成工程]
本発明における層形成工程は、支持体上に本発明の硬化性組成物を塗布することで含む硬化性組成物層(以下、単に「硬化性樹脂層」とも言う)を形成する工程である。
この硬化性樹脂層は、後述するパターニング工程を経て、変形回復性が良好でセル厚を均一に保持し得るフォトスペーサーを構成することができる。該フォトスペーサーを用いることにより特にセル厚の変動で表示ムラが生じやすい表示装置における画像中の表示ムラが効果的に解消される。
【0016】
支持体上に硬化性樹脂層を形成する方法としては、(a)本発明の硬化性組成物を含む溶液を公知の塗布法により塗布する方法、及び(b)硬化性樹脂転写材料を用いた転写法によりラミネートする方法が好適に挙げられる。以下、各々について述べる。
【0017】
(a)塗布法
硬化性組成物の塗布は、公知の塗布法、例えば、スピンコート法、カーテンコート法、スリットコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、あるいは米国特許第2681294号明細書に記載のポッパーを使用するエクストルージョンコート法(extrusion coating)等により行なうことができる。中でも、特開2004−89851号公報、特開2004−17043号公報、特開2003−170098号公報、特開2003−164787号公報、特開2003−10767号公報、特開2002−79163号公報、特開2001−310147号公報等に記載のスリットノズルあるいはスリットコーターによる方法が好適である。
【0018】
(b)転写法
転写による場合、仮支持体上に硬化性組成物層を少なくとも有する硬化性樹脂転写材料を用いて、仮支持体上に膜状に形成された硬化性樹脂層を支持体面に加熱及び/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着することによって貼り合せた後、仮支持体の剥離により硬化性樹脂組成物層を支持体上に転写する。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネーター及びラミネート方法が挙げられ、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
【0019】
仮支持体上に硬化性樹脂層を形成する場合、硬化性樹脂層と仮支持体間には更に酸素遮断層(以下、「酸素遮断膜」または「中間層」とも言う。)を設けることができる。これにより露光感度をアップすることができる。また、転写性を向上させるためにクッション性を有する熱可塑性樹脂層を設けてもよい。
該硬化性転写フイルムを構成する仮支持体、酸素遮断層、熱可塑性樹脂層、その他の層や該硬化性転写フイルムの作製方法については、特開2006−23696号公報の段落番号[0024]〜[0030]に記載の構成、作製方法と同様である。
【0020】
(a)塗布法、(b)転写法共に、硬化性樹脂層を塗布形成する場合、その層厚は0.5〜10.0μmが好ましく、1〜6μmがより好ましい。層厚が前記範囲であると、製造時における塗布形成の際のピンホールの発生が防止され、未露光部の現像除去を長時間を要することなく行なうことができる。
【0021】
硬化性樹脂層を形成する支持体としては、例えば、透明基板(例えばガラス基板やプラスチックス基板)、透明導電膜(例えばITO膜)付基板、カラーフィルタ付きの基板(カラーフィルタ基板ともいう。)、駆動素子(例えば薄膜トランジスタ[TFT])付駆動基板、などが挙げられる。支持体の厚みとしては、700〜1200μmが一般に好ましい。
【0022】
〜硬化性組成物〜
次に、硬化性組成物について説明する。
硬化性組成物は、分岐及び/又は脂環構造を有する基と、酸性基を有する基と、エポキシ基を有する基とを含有する樹脂(A)(以下、単に「樹脂(A)」とも言う。)と、重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、界面活性光重合開始剤(D)とを少なくとも含有する。また、必要に応じて、着色剤や界面活性剤などのその他の成分を用いて構成することができる。
前記硬化性組成物は、フォトスペーサー用に特に好ましく用いられる。
【0023】
―樹脂(A)―
樹脂(A)は側鎖に、分岐及び/又は脂環構造を有する基:Xと、酸性基を有する基:Yと、エポキシ基を有する基:Zと、を含有してなり、必要に応じてその他の基(L)を有していてもよい。また、樹脂(A)中のひとつの基の中にX、Y、及びZが複数組み合わされていてもよい。
【0024】
−分岐及び/又は脂環構造を有する基:X−
前記「分岐及び/又は脂環構造を有する基」について説明する。
まず、分岐を有する基としては、炭素原子数3〜12個の分岐状のアルキル基を示し、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、i−アミル基、t−アミル基、3−オクチル、t−オクチル等が挙げられる。これらの中でも、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基等が好ましく、さらにi−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が好ましい。
【0025】
次に脂環構造を有する基は、炭素数が5〜25の、置換されていてもよい脂環式炭化水素基を意味する。溶解性、合成適性の観点から、脂環構造を有する基の炭素数は6〜20であることが好ましく、6〜17であることがより好ましい。
脂環構造を有する基の具体例としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基、及びトリシクロペンタニル基等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロデシル基、トリシクロペンテニル基、及びトリシクロペンタニル基等が好ましく、更にシクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンテニル基、及びトリシクロペンテニル基等が好ましい。
【0026】
側鎖に分岐及び/又は脂環構造を有する基を含有する単量体としては、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリレート類である。
【0027】
前記側鎖に分岐構造を有する基を含有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸sec−iso−アミル、(メタ)アクリル酸2−オクチル、(メタ)アクリル酸3−オクチル、(メタ)アクリル酸t−オクチル等が挙げられ、その中でも、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等が好ましく、さらに好ましくは、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸t−ブチル等である。
【0028】
次に、前記側鎖に脂環構造を有する基を含有する単量体の具体例としては、炭素数5〜20の、好ましくは炭素数6〜20の、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである。具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル)、(メタ)アクリル酸−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−エチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸−1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、(メタ)アクリル酸−3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシ−ビシクロ[4.1.0]ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸−2,2,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリレートルの中でも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−エチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸−1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシルなどが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチルが特に好ましい。
【0029】
更に、前記側鎖に脂環構造を有する基を含有する単量体の具体例としては、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物が挙げられる。ここで、一般式(1)、(2)において、xは1又は2を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。m及びnはそれぞれ独立に0〜15を表す。一般式(1)、(2)の中でも、x=1又は2、m=0〜8、n=0〜4が好ましく、m=1〜4、n=0〜2がより好ましい。一般式(1)又は(2)で表される化合物の好ましい具体例として、下記化合物D−1〜D−5、T−1〜T−8が挙げられる。
【0030】
【化1】

【0031】
【化2】

【0032】
【化3】

【0033】
前記側鎖に脂環構造を有する基を含有する単量体は適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、日立化成工業(株)製:FA−511A、FA−512A(S)、FA−512M、FA−513A、FA−513M、TCPD−A、TCPD−M、H−TCPD−A、H−TCPD−M、TOE−A、TOE−M、H−TOE−A、H−TOE−M等が挙げられる。これらの中でも現像性に優れ、変形回復率に優れる点で、FA−512A(S)、512Mが好ましい。
【0034】
−酸性基を有する基:Y−
前記酸性基としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホンアミド基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。これらの中でも、現像性、及び硬化膜の耐水性が優れる点から、カルボキシ基、フェノール性水酸基であることが好ましい。
【0035】
前記側鎖に酸性基を有する基の単量体としては、特に制限はなく、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリレート類である。
【0036】
前記側鎖に酸性基を有する基の単量体の具体例としては、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、α−シアノ桂皮酸、アクリル酸ダイマー、水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0037】
前記水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物に用いられる水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記環状酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0038】
前記市販品としては、東亞合成化学工業(株)製:アロニックスM−5300、アロニックスM−5400、アロニックスM−5500、アロニックスM−5600、新中村化学工業(株)製:NKエステルCB−1、NKエステルCBX−1、共栄社油脂化学工業(株)製:HOA−MP、HOA−MS、大阪有機化学工業(株)製:ビスコート#2100等が挙げられる。これらの中でも現像性に優れ、低コストである点で(メタ)アクリル酸等が好ましい。
【0039】
−エポキシ基を有する基:Z−
エポキシ基を有する基としては、特に制限はなく、例えば、下記構造式(1)又は構造式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物に由来する基を好ましく挙げることができる。
【0040】
【化4】

【0041】
構造式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表す。
【0042】
【化5】



【0043】
構造式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、Wは4〜7員環の脂肪族炭化水素基を表す。
【0044】
前記構造式(1)で表される化合物及び構造式(2)で表される化合物の中でも、構造式(1)で表される化合物が構造式(2)よりも好ましい。前記構造式(1)及び(2)においては、L及びLがそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基のものがより好ましい。
【0045】
前記構造式(1)で表される化合物又は構造式(2)で表される側鎖にエポキシ基を有する単量体としては、特に制限はないが、例えば、以下の例示化合物(1)〜(16)が挙げられる。
【0046】
【化6】

【0047】
本発明のおける側鎖にエポキシ基を有する単量体としては、溶解性、合成適性の観点から、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。また、これらの単量体は1種単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
―その他の単量体―
前記その他の単量体としては、特に制限はなく、例えば分岐及び/又は脂環構造をもたない(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルエーテル、二塩基酸無水物基、ビニルエステル基、炭化水素アルケニル基等を有する単量体などが挙げられる。
前記ビニルエーテル基としては、特に制限はなく、例えば、ブチルビニルエーテル基などが挙げられる。
【0049】
前記二塩基酸無水物基としては、特に制限はなく、例えば、無水マレイン酸基、無水イタコン酸基などが挙げられる。
前記ビニルエステル基としては、特に制限はなく、例えば、酢酸ビニル基などが挙げられる。
前記炭化水素アルケニル基としては、特に制限はなく、例えば、ブタジエン基、イソプレン基などが挙げられる。
【0050】
前記樹脂(A)におけるその他の単量体の含有率としては、モル組成比が、0〜30mol%であることが好ましく、0〜20mol%であることがより好ましい。
【0051】
樹脂(A)の具体例としては、例えば、下記化合物構造P−1〜P−7で表される化合物が挙げられる。なお、下記構造中x、y、z、およびlはそれぞれの構成比(モル%)を示す。
【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
−製造法について−
前記樹脂(A)は、上述した単量体(モノマー)の(共)重合反応の工程を少なくとも含んで製造することができる。
(共)重合反応の方法には、特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、重合の活性種については、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合などを適宜選択することができる。これらの中でも合成が容易であり、低コストである点からラジカル重合であることが好ましい。また、重合方法についても特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、バルク重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などを適宜選択することができる。これらの中でも、溶液重合法であることがより望ましい。
【0055】
−分子量−
樹脂(A)として好適な前記共重合体の重量平均分子量は、10,000〜10万が好ましく、12,000〜6万が更に好ましく、15,000〜4.5万が特に好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、共重合体の製造適性、現像性の点で望ましい。また、溶融粘度の低下により形成された形状が潰れ難い点、架橋不良となり難い点、現像における残渣を抑制できる点で好ましい。
尚、重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて測定される。
【0056】
−ガラス転移温度−
樹脂(A)として好適なガラス転移温度(Tg)は、40〜180℃であることが好ましく、45〜140℃であることはより好ましく、50〜130℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる。
【0057】
−酸価−
樹脂(A)として好適な酸価はとりうる分子構造により好ましい範囲は変動するが、一般には20mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることはより好ましく、70〜130mgKOH/gであることが特に好ましい。酸価が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる。
【0058】
前記樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が40〜180℃であり、かつ重量平均分子量が10,000〜100,000であることが良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる点で好ましい。
更に、前記樹脂(A)の好ましい例は、好ましい前記分子量、ガラス転移温度(Tg)、及び酸価のそれぞれの組合せがより好ましい。
【0059】
本発明における樹脂(A)は、前記側鎖に分岐及び/又は脂環構造を有する基:Xと、酸性基を有する基:Yと、エポキシ基を有する基:Zと、をそれぞれ別の共重合単位に有する少なくとも3元共重合以上の共重合体であることが変形回復率、現像残渣、レチキュレーションの観点から好ましい。具体的には、前記X、Y、Zを構成する各々の単量体を少なくとも1つ共重合させてなる共重合体が好ましい。
【0060】
前記樹脂(A)の前記各成分の共重合組成比については、ガラス転移温度と酸価を勘案して決定され、一概に言えないが、「分岐及び/又は脂環構造を有する基」は10〜70モル%が好ましく、15〜65モル%が更に好ましく、20〜60モル%が特に好ましい。側鎖に分岐及び/又は脂環構造を有する基の組成比が前記範囲内であると、良好な現像性が得られると共に、画像部の現像液に対する耐性も良好である。
また、「酸性基を有する基」は5〜70モル%が好ましく、10〜60モル%が更に好ましく、20〜50モル%が特に好ましい。側鎖に酸性基を有する基の組成比が前記範囲内であると、良好な硬化性、現像性が得られる。
また、「エポキシ基を有する基」は10〜70モル%が好ましく、20〜70モル%が更に好ましく、30〜70モル%が特に好ましい。側鎖にエポキシ基を有する基の組成比が前記範囲内であると、顔料分散性に優れると共に、現像性及び硬化性も良好である。
【0061】
前記樹脂(A)の含有量としては、前記硬化性組成物全固形分に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。本発明の硬化性組成物は樹脂(A)以外の樹脂を含有してもよいが、樹脂(A)のみを含むことが好ましい。
【0062】
−樹脂(A)以外の樹脂−
前記樹脂(A)と併用することができる樹脂としては、アルカリ性水溶液に対して膨潤性を示す化合物が好ましく、アルカリ性水溶液に対して可溶性である化合物がより好ましい。
アルカリ性水溶液に対して膨潤性又は溶解性を示す樹脂としては、例えば、酸性基を有するものが好適に挙げられ、具体的には、エポキシ化合物にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した化合物(エポキシアクリレート化合物)、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体、エポキシアクリレート化合物と、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体との混合物、マレアミド酸系共重合体、などが好ましい。
前記酸性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、などが挙げられ、これらの中でも、原料の入手性などの観点から、カルボキシル基が好ましく挙げられる。
【0063】
−樹脂(A)および樹脂(A)以外の樹脂の合計含有量−
前記樹脂(A)および樹脂(A)以外の樹脂の合計含有量としては、前記硬化性組成物全固形分に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。該含有量が、5質量%未満であると、後述する硬化性樹脂層の膜強度が弱くなりやすく、該硬化性樹脂層の表面のタック性が悪化することがあり、70質量%を超えると、露光感度が低下することがある。なお、前記含有量は、固形分含有量のことを表す。
【0064】
−重合性化合物(B)、光重合開始剤(C)、その他の成分−
本発明において、重合性化合物(B)、光重合開始剤(C)、その他の成分として公知の組成物を構成する成分を好適に用いることができ、例えば、特開2006−23696号公報の段落番号[0010]〜[0020]に記載の成分や、特開2006−64921号公報の段落番号[0027]〜[0053]に記載の成分が挙げられる。
【0065】
−界面活性光重合開始剤(D)−
本発明における界面活性光重合開始剤(D)としては、界面活性作用と光重合開始作用とを有する化合物であれば、特に制限なく用いることができ、例えば、界面活性作用を有する置換基の少なくとも1種と光重合開始作用を有する置換基の少なくとも1種とを同一分子内に含む化合物を挙げることができる。
本発明の硬化性組成物においては、光重合開始剤(C)に加えて界面活性光重合開始剤(D)を更に含有していることにより、硬化性組成物によって形成される硬化膜の表面特性が向上し、良好な現像耐性を示すことができる。これにより、例えば、表示装置を構成するフォトスペーサーを作製した場合には、高度の変形回復性を示す。
【0066】
前記界面活性作用を有する置換基は、硬化膜の表面特性の観点から、置換されていてもよい炭素数3以上30以下のアルキル基、置換されていてもよいシロキサン基及び置換されていてもよいフッ化アルキル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
これらの基が置換基を有している場合の置換基としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0067】
前記置換基を有していてもよい炭素数3以上30以下のアルキル基は、炭素数4以上20以下であることがより好ましい。具体的には例えば、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基、ヘキサデシル基等を挙げることができる。
【0068】
また、前記置換基を有していてもよいシロキサン基としては、例えば、下記一般式(3)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0069】
【化9】

【0070】
式中、R31は水素原子、炭化水素基又は−OR33を表し、R32は水素原子、炭化水素基又は−OR34を表す。R33及びR34はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。R31〜R34で表される炭化水素基としては炭素数1〜8のアルキル基を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましい。
上記一般式(3)で表される構造単位の繰り返し数としては、硬化膜の表面特性の観点から、2〜20であることが好ましく、2〜10であることがより好ましい。
【0071】
また、前記置換基を有していてもよいフッ化アルキル基は、炭素数が1以上16以下のフッ化アルキル基であることが好ましく、炭素数が3以上12以下のフッ化アルキル基であることがより好ましい。
また、フッ化アルキル基が置換基を有している場合の置換基としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基等を挙げることができる。
本発明においては、下記一般式(4)で表されるフッ化アルキル基であることが好ましい。
【0072】
【化10】



【0073】
式中、Lは酸素原子又は単結合を表し、iは0〜8の整数を表し、jは1〜12の整数を表す。本発明においては、iが0〜6の整数であって、jが1〜10の整数であることが好ましく、iが1〜4の整数であって、jが2〜8の整数であることがより好ましい。
具体的には例えば、ペルフルオロヘキシルオキシエチル基、ペルフルオロオクチルエチル基等を挙げることができる。
【0074】
また、光重合開始作用を有する置換基としては、上記光重合開始剤(C)として説明した光重合開始剤から誘導される置換基を挙げることができる。中でも、光重合開始活性の観点から、トリハロメチル−s−トリアジン化合物、トリハロメチルオキサジアゾール化合物、α−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物などから誘導される置換基であることが好ましい。
【0075】
本発明における界面活性光重合開始剤(D)は、界面活性作用を有する置換基と光重合開始作用を有する置換基との間に連結基を有していてもよい。前記連結基としては特に制限はなく、例えば、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、窒素原子、カルボニル基、アミド結合、エステル結合、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、及びこれらの組合せからなる連結基を挙げることができる。また、2価の連結基に限らず、3価以上の連結基であってもよい。
【0076】
本発明における界面活性光重合開始剤(D)としては、具体的には、特表2004−515611号公報、特表2004−522819号公報、特表2004−525994号公報等に記載の化合物や、下記例示化合物1〜44を挙げることができる。
【0077】
【化11】

【0078】
【化12】

【0079】
【化13】

【0080】
【化14】

【0081】
【化15】

【0082】
【化16】

【0083】
本発明における界面活性光重合開始剤(D)としては、硬化膜の表面特性の観点から、界面活性作用を有する置換基が、置換されていてもよい長鎖アルキル基、置換されていてもよいシロキサン基及び置換されていてもよいフッ化アルキル基から選ばれる少なくとも1種であって、光重合開始作用を有する置換基が、トリハロメチル−s−トリアジン化合物、トリハロメチルオキサジアゾール化合物、α−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物から誘導される置換基であることが好ましく、界面活性作用を有する置換基が炭素数1〜16のフッ化アルキル基、ケイ素数2〜20のポリメチルシロキサン基、または炭素数4〜20のアルキル基であって、光重合開始作用を有する置換基がトリハロメチル−s−トリアジン化合物であることがより好ましい。中でも、上記例示化合物9、30、31などが特に好ましい。
【0084】
本発明の硬化性組成物においては、硬化膜の表面特性の観点から、樹脂(A)として脂環構造を有する基がシクロヘキシル基、トリシクロペンテニル基又はジシクロペンテニル基であって、酸性基がカルボキシ基である樹脂(例えば、化合物構造P−4、P−6など)を用い、界面活性化合物(D)としてトリハロメチル−s−トリアジン化合物から誘導される基と、炭素数1〜16のフッ化アルキル基、ケイ素数2〜20のポリメチルシロキサン基又は炭素数4〜20のアルキル基を有する化合物(例えば、例示化合物9、30、31など)を用いることが好ましく、樹脂(A)として脂環構造を有する基がジシクロペンテニル基であって、酸性基がカルボキシ基である樹脂(例えば、化合物構造P−6など)を用い、界面活性化合物(D)としてトリハロメチル−s−トリアジン化合物から誘導される基と炭素数1〜16のフッ化アルキル基を有する化合物(例えば、例示化合物30など)を用いることがより好ましい。
【0085】
本発明の硬化性組成物においては、重合性化合物(B)の樹脂(A)に対する質量比率((B)/(A)比)が0.3〜1.5であることが好ましく、0.4〜1.4であることはより好ましく、0.5〜1.2であることが特に好ましい。(B)/(A)比が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる。
【0086】
また、硬化膜の力学強度の観点から、前記光重合開始剤(C)の含有量としては、樹脂(A)に対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
また、硬化膜の力学強度の観点から、前記界面活性光重合開始剤(D)の含有量としては、重合性化合物(B)に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましい。
更に、前記光重合開始剤(C)に対する前記界面活性光重合開始剤(D)の質量比率((D)/(C)比)としては、0.1〜1が好ましい。
【0087】
−微粒子−
本発明の硬化性組成物においては、微粒子を更に含有することができる。前記微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、特開2003−302639号公報[0035]〜[0041]に記載の体質顔料を用いることができる。中でも良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られるという観点からコロイダルシリカが好ましい。
【0088】
前記微粒子の平均粒子径は、高い力学強度を有するフォトスペーサーが得られるという観点から、5〜50nmであることが好ましく、10〜40nmであることがより好ましく、15〜30nmであることが特に好ましい。
【0089】
また、前記微粒子の含有量は、高い力学強度を有するフォトスペーサーが得られるという観点から、本発明における硬化性組成物中の全固形分に対する質量比率が5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが特に好ましい。
【0090】
[パターニング工程]
本発明においては、支持体上に形成された硬化性樹脂層を露光及び現像してパターニングするパターニング工程を更に設けることができる。パターニング工程の具体例としては、特開2006−64921号公報の段落番号[0071]〜[0077]に記載の形成例や、特開2006−23696号公報の段落番号[0040]〜[0051]に記載の工程などが、本発明においても好適な例として挙げられる。
【0091】
本発明の硬化膜は、前記硬化性組成物を硬化させてなるものであることから、表面特性が良好な硬化膜である。本発明の硬化膜は、前記層形成工程によって硬化性樹脂層を形成した後、活性エネルギー線の照射によって硬化させて形成される。活性エネルギー線の照射による硬化に加えて、更に加熱による硬化を行ってもよい。また、前記パターニング工程によってパターニングされていてもよい。
本発明の硬化膜は表面特性が良好であることから、外力に対する塑性変形回復が良好であり、例えば、フォトスペーサー、着色層、保護層等の形成に好適に適用することができる。
【0092】
本発明におけるフォトスペーサーは、ブラックマトリクス等の黒色遮蔽部及び着色画素等の着色部を含むカラーフィルタを形成した後に形成することができる。
前記黒色遮蔽部及び着色部とフォトスペーサーとは、硬化性組成物を塗布する塗布法と硬化性組成物からなる感光性樹脂層を有する転写材料を用いる転写法と、を任意に組合せて形成することが可能である。
【0093】
前記黒色遮蔽部及び着色部並びに前記フォトスペーサーはそれぞれ硬化性組成物から形成でき、具体的には、例えば、基板に液体の前記硬化性組成物を直接塗布することにより硬化性樹脂層を形成した後に、露光・現像を行い、前記黒色遮蔽部及び着色部をパターン状に形成し、その後、別の液体の前記硬化性組成物を前記基板とは異なる別の基板(仮支持体)上に設置して硬化性樹脂層を形成することにより作製された硬化性樹脂転写材料を用い、この硬化性樹脂転写材料を前記黒色遮蔽部及び着色部が形成された前記基板に密着させて硬化性樹脂層を転写した後に、露光・現像を行うことによりフォトスペーサーをパターン状に形成することができる。このようにして、フォトスペーサーが設けられたカラーフィルタを作製することができる。
【0094】
また、黒色遮蔽部及び着色部を、それぞれ硬化性樹脂転写材料を基板に密着させて硬化性樹脂層を転写した後に、露光・現像を行い、前記黒色遮蔽部及び着色部をパターン状に形成し、その後、液体の硬化性組成物を直接塗布することにより、前記黒色遮蔽部及び着色部が形成された前記基板上に硬化性樹脂層を形成した後に、露光・現像を行うことによりフォトスペーサーをパターン状に形成することができる。このようにして、フォトスペーサーが設けられたカラーフィルタを作製することができる。
【0095】
本発明のフォトスペーサーの製造方法においては、表示品質の観点から、黒色遮蔽部及び着色部が形成された支持体上に、前記硬化性組成物を塗布することで硬化性樹脂層(硬化性組成物層)を形成する工程を含むことが好ましい。
【0096】
<液晶表示装置用基板>
本発明の液晶表示装置用基板は、前記本発明のフォトスペーサーの製造方法により得られたフォトスペーサーを備えたものである。フォトスペーサーは、支持体上に形成されたブラックマトリクス等の表示用遮光部の上やTFT等の駆動素子上に形成されることが好ましい。また、ブラックマトリクス等の表示用遮光部やTFT等の駆動素子とフォトスペーサーとの間にITO等の透明導電層(透明電極)やポリイミド等の液晶配向膜が存在していてもよい。
【0097】
例えば、フォトスペーサーが表示用遮光部や駆動素子の上に設けられる場合、該支持体に予め配設された表示用遮光部(ブラックマトリクスなど)や駆動素子を覆うようにして、例えば感光性樹脂転写フイルムの感光性樹脂層を支持体面にラミネートし、剥離転写して感光性樹脂層を形成した後、これに露光、現像、加熱処理等を施してフォトスペーサーを形成することによって、本発明の液晶表示装置用基板を作製することができる。
本発明の液晶表示装置用基板には更に、必要に応じて赤色(R)、青色(B)、緑色(G)3色等の着色画素が設けられていてもよい。
【0098】
<液晶表示素子>
前記本発明の液晶表示装置用基板を設けて液晶表示素子を構成することができる。液晶表示素子の1つとして、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段(単純マトリックス駆動方式及びアクティブマトリックス駆動方式を含む。)を少なくとも備えたものが挙げられる。
【0099】
この場合、本発明の液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されているカラーフィルタ基板として構成できる。このカラーフィルタ基板には、高さ均一で変形回復性に優れたフォトスペーサーが設けられるため、該カラーフィルタ基板を備えた液晶表示素子は、カラーフィルタ基板と対向基板との間にセルギャップムラ(セル厚変動)の発生が抑えられ、色ムラ等の表示ムラの発生を効果的に防止することができる。これにより、作製された液晶表示素子は鮮やかな画像を表示できる。
【0100】
また、液晶表示素子の別の態様として、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段とを少なくとも備え、前記液晶駆動手段がアクティブ素子(例えばTFT)を有し、かつ一対の基板間が高さ均一で変形回復性に優れたフォトスペーサーにより所定幅に規制して構成されたものである。
この場合も、本発明の液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されたカラーフィルタ基板として構成されている。
【0101】
本発明において使用可能な液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、強誘電液晶が挙げられる。
また、前記カラーフィルタ基板の前記画素群は、互いに異なる色を呈する2色の画素からなるものでも、3色の画素、4色以上の画素からなるものであってもよい。例えば3色の場合、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3つの色相で構成される。RGB3色の画素群を配置する場合には、モザイク型、トライアングル型等の配置が好ましく、4色以上の画素群を配置する場合にはどのような配置であってもよい。カラーフィルタ基板の作製は、例えば2色以上の画素群を形成した後既述のようにブラックマトリックスを形成してもよいし、逆にブラックマトリックスを形成した後に画素群を形成するようにしてもよい。RGB画素の形成については、特開2004−347831号公報等を参考にすることができる。
【0102】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、前記液晶表示装置用基板を設けて構成されたものである。また、本発明の液晶表示装置は、前記液晶表示素子を設けて構成されたものである。すなわち、互いに向き合うように対向配置された一対の基板間を既述のように、本発明のフォトスペーサーの製造方法により作製されたフォトスペーサーで所定幅に規制し、規制された間隙に液晶材料を封入(封入部位を液晶層と称する。)して構成されており、液晶層の厚さ(セル厚)が所望の均一厚に保持されるようになっている。
【0103】
液晶表示装置における液晶表示モードとしては、STN型、TN型、GH型、ECB型、強誘電性液晶、反強誘電性液晶、VA型、IPS型、OCB型、ASM型、その他種々のものが好適に挙げられる。中でも、本発明の液晶表示装置においては、最も効果的に本発明の効果を奏する観点から、液晶セルのセル厚の変動により表示ムラを起こし易い表示モードが望ましく、セル厚が2〜4μmであるVA型表示モード、IPS型表示モード、OCB型表示モードに構成されるのが好ましい。
【0104】
本発明の液晶表示装置の基本的な構成態様としては、(a)薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動素子と画素電極(導電層)とが配列形成された駆動側基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサーを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、(b)駆動基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサーを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、等が挙げられ、本発明の液晶表示装置は、各種液晶表示機器に好適に適用することができる。
【0105】
液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、側工業調査会、1994年発行)」に記載がある。本発明の液晶表示装置には、本発明の液晶表示素子を備える以外に特に制限はなく、例えば前記「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載された種々の方式の液晶表示装置に構成することができる。中でも特に、カラーTFT方式の液晶表示装置を構成するのに有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)、1996年発行)」に記載がある。
【0106】
本発明の液晶表示装置は、既述の本発明の液晶表示素子を備える以外は、電極基板、偏光フイルム、位相差フイルム、バックライト、スペーサー.視野角補償フイルム、反射防止フイルム、光拡散フイルム、防眩フイルムなどの様々な部材を用いて一般的に構成できる。これら部材については、例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島健太郎、(株)シーエムシー、1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表良吉、(株)富士キメラ総研、2003等発行)」に記載されている。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0108】
本発明における樹脂Aとして、化合物構造P−1〜P−7で表される化合物の合成例を以下に示す。
(合成例1)
反応容器中に1−メトキシ−2−プロパノール(MFG、ダイセル化学工業(株)製) 203.9部をあらかじめ窒素ガス雰囲気下70℃に昇温し、スチレン 12.5部と、グリシジルメタクリレート 76.8部と、ジシクロペンテニルメタクリレート 66.1部と、メタクリル酸 46.5部と、アゾ系重合開始剤(和光純薬社製、V−65)9.5部とを2時間かけて滴下した。滴下後4時間反応させて、化合物構造P−1で表される樹脂の溶液(28.6%溶液)を得た。
前記化合物構造P−1で表される樹脂の重量平均分子量Mwを、ゲル浸透クロマトグラフにて求めたところ31,500であった。
【0109】
(合成例2)
合成例1において、ジシクロペンテニルメタクリレートの代わりに2−アダマンチルメタクリレートを用いた以外は合成例1と同様にして、化合物構造P−2で表される樹脂の溶液(28.0%溶液)を得た。
前記化合物構造P−2で表される樹脂の重量平均分子量Mwは、28,700であった。
【0110】
(合成例3)
合成例1において、ジシクロペンテニルメタクリレートの代わりにイソボルニルメタクリレートを用いた以外は合成例1と同様にして、化合物構造P−3で表される樹脂の溶液(28.6%溶液)を得た。
前記化合物構造P−3で表される樹脂の重量平均分子量Mwは、34,200であった。
【0111】
(合成例4)
合成例1において、ジシクロペンテニルメタクリレートの代わりにトリシクロペンテニルメタクリレートを用いた以外は合成例1と同様にして、化合物構造P−4で表される樹脂の溶液(28.2%溶液)を得た。
前記化合物構造P−4で表される樹脂の重量平均分子量Mwは、30,700であった。
【0112】
(合成例5)
合成例1において、ジシクロペンテニルメタクリレートの代わりにシクロヘキシルメタクリレートを用いた以外は合成例1と同様にして、化合物構造P−5で表される樹脂の溶液(28.6%溶液)を得た。
前記化合物構造P−5で表される樹脂の重量平均分子量Mwは、28,100であった。
【0113】
(合成例6)
合成例1において、ジシクロペンテニルメタクリレートの代わりにジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(日立化成工業(株)製のファンクリルFA−512M)を用いた以外は合成例1と同様にして、化合物構造P−6で表される樹脂の溶液(28.2%溶液)を得た。
前記化合物構造P−6で表される樹脂の重量平均分子量Mwは、29,800であった。
【0114】
(合成例7)
合成例1において、ジシクロペンタニルメタクリレートの代わりにトリシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(日立化成工業(株)製のTCPD−M)を用いた以外は合成例1と同様にして、化合物構造P−7で表される樹脂の溶液(28.5%溶液)を得た。
前記化合物構造P−7で表される樹脂の重量平均分子量Mwは、31,800であった。
【0115】
−カラーフィルタ基板の作製−
特開2005−3861号公報の段落番号[0084]〜[0095]に記載の方法でブラックマトリクス、R画素、G画素、B画素を有するカラーフィルタ基板を作製した。次いで、カラーフィルタ基板のR画素、G画素、及びB画素並びにブラックマトリクスの上に更に、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0116】
(実施例1)
上記で作製したITO膜がスパッタ形成されたカラーフィルタ基板のITO膜上に、スリット状ノズルを有するガラス基板用コーターMH−1600(エフ・エー・エス・アジア社製)にて下記表1に示す処方5からなる硬化性樹脂層用塗布液を塗布した。引き続き、真空乾燥機VCD(東京応化社製)を用いて30秒間溶媒の一部を乾燥させて塗布膜の流動性をなくした後、120℃で3分間プリベークして膜厚3.8μmの硬化性樹脂層を形成した(層形成工程)。
【0117】
次に、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、マスク(画像パターンを有する石英露光マスク)と、該マスクと硬化性樹脂層とが向き合うように配置したカラーフィルタ基板とを略平行に垂直に立てた状態で、マスクと硬化性樹脂層の露出面との間の距離を40μmとし、マスクを介して硬化性樹脂層側から露光量300mJ/cmにてプロキシミティー露光した。
【0118】
次に、炭酸Na系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、及び安定剤含有;商品名:T−CD1(富士フイルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて29℃で30秒間、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し、フォトスペーサーのパターン像を得た。
引き続き、洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有;商品名:T−SD3(富士フイルム(株)製))を純水で10倍に希釈した液を用いて33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.02MPaにてシャワーで吹きかけ、形成されたパターン像の周辺の残渣除去を行ない、所望のスペーサーパターンを得た。
【0119】
次に、スペーサーパターンが設けられたカラーフィルタ基板を、230℃下で30分間加熱処理を行ない(熱処理工程)、フォトスペーサーを作製した。
得られたフォトスペーサーは、直径24μm、平均高さ3.6μmの円柱状であった。尚、平均高さは、得られたフォトスペーサー1000個を三次元表面構造解析顕微鏡(メーカー:ZYGO Corporation、型式:New View 5022)を用い、ITOの透明電極形成面から最も高いフォトスペーサーの最も高い位置を測定(n=20)した。
【0120】
<液晶表示装置の作製>
別途、対向基板としてガラス基板を用意し、上記で得られたカラーフィルタ基板の透明電極上及び対向基板上にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
【0121】
その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリックス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。
【0122】
次いで、赤色(R)LEDとしてFR1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、緑色(G)LEDとしてDG1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、青色(B)LEDとしてDB1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)を用いてサイドライト方式のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、液晶表示装置とした。
【0123】
(実施例2〜実施例4、実施例7〜実施例11、比較例2〜比較例4、比較例6、比較例7)
実施例1において、処方5の硬化性樹脂層用塗布液の代わりに、下記表1及び表2に示した処方をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にしてフォトスペーサーが設けられたカラーフィルタ基板を作製した。得られたスペーサーパターンは、直径24μm、平均高さ3.6μmの円柱状であった。
【0124】
次いで、実施例1で得られたカラーフィルタ基板の代わりに、上記で得られたカラーフィルタ基板をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を作製した。
【0125】
(実施例5)
実施例1において、処方5の硬化性樹脂層用塗布液の代わりに、下記表1に示した処方8を用い、露光量を300mJ/cmの代わりに、100mJ/cmに変更した以外は、実施例1と同様にしてフォトスペーサーが設けられたカラーフィルタ基板を作製し、これを用いて液晶表示装置を作製した。得られたスペーサーパターンは、直径24μm、平均高さ3.6μmの円柱状であった。
【0126】
(実施例6)
実施例1において、露光量を300mJ/cmの代わりに、100mJ/cmに変更した以外は、実施例1と同様にしてフォトスペーサーが設けられたカラーフィルタ基板を作製し、これを用いて液晶表示装置を作製した。得られたスペーサーパターンは、直径24μm、平均高さ3.6μmの円柱状であった。
【0127】
(比較例1)
実施例1において、処方5の硬化性樹脂層用塗布液の代わりに、下記表1に示した処方1を用い、露光量を300mJ/cmの代わりに、100mJ/cmに変更した以外は、実施例1と同様にしてフォトスペーサーが設けられたカラーフィルタ基板を作製し、これを用いて液晶表示装置を作製した。得られたスペーサーパターンは、直径24μm、平均高さ3.6μmの円柱状であった。
【0128】
(比較例5)
実施例1において、処方5の硬化性樹脂層用塗布液の代わりに、下記表1に示した処方4を用い、露光量を300mJ/cmの代わりに、100mJ/cmに変更した以外は、実施例1と同様にしてフォトスペーサーが設けられたカラーフィルタ基板を作製し、これを用いて液晶表示装置を作製した。得られたスペーサーパターンは、直径24μm、平均高さ3.6μmの円柱状であった。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】



【0131】
[評価]
上記で得られたフォトスペーサー及び液晶表示装置について、以下の評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0132】
−変形回復率−
フォトスペーサーの各々について、微小硬度計(DUH−W201、(株)島津製作所製)を用いて、次のようにして測定を行ない、評価した。測定は、50μmφの円錘台圧子を採用し、最大荷重50mN、保持時間5秒として、負荷−除荷試験法により行なった。この測定値から下記式により変形回復率〔%〕を求め、下記基準にしたがって評価した。測定は、22±1℃、50%RHの環境下で行った。
(式)変形回復率(%)=
(加重開放後の回復量[μm]/加重による変形量[μm])×100
【0133】
〈評価基準〉
5:変形回復率が90%以上であった。
4:変形回復率が87%以上90%未満であった。
3:変形回復率が85%以上87%未満であった。
2:変形回復率が80%以上85%未満であった。
1:変形回復率が75%以上80%未満であった。
0:変形回復率が75%未満であった。
【0134】
−現像性−
上記「−フォトスペーサーの作製−」において、プロキシミティー露光後、各実施例の現像条件と同様の方法で現像し、形成したフォトスペーサー周辺部分のSEM観察を行い周辺に残渣が残っているか確認した。
【0135】
〈評価基準〉
5: 残渣がまったく見られない。
4: パターン周辺に若干の残渣が見られた。
3: パターン周辺に残渣が見られた。
2: パターン周辺とパターン近傍の基板上に残渣が見られた。
1: 基板上所々に残渣が確認できた。
【0136】
−ラミネート適性<ラミ泡>評価−
カラーフィルタ基板に硬化性樹脂転写材料を用いて、硬化性樹脂層を転写した状態について、仮支持体剥離後、光学顕微鏡にてラミネート状態を観察し、ラミ泡の有無を観察した。
【0137】
<評価基準>
3:ラミ泡がまったく無い。
2:ラミ泡が、パターン形成箇所以外に発生した。
1:ラミ泡がパターン形成部に発生した。
【0138】
−レチキュレーション−
45℃/75%RH環境下で24時間放置した後の、硬化性樹脂転写材料の表面を、顕微鏡を用いて観察し、下記基準にしたがって目視による評価を行なった。
【0139】
〈評価基準〉
4:細かい「しわ」等の発生は、全く認められなかった。
3:細かい「しわ」等の発生が僅かに認められたが、実用上使用可能な程度であった。
2:細かい「しわ」等の発生が少し認められた。
1:細かい「しわ」等の発生がかなり認められた。
【0140】
−表示ムラ−
液晶表示装置の各々について、グレイのテスト信号を入力させたときのグレイ表示を目視及びルーペにて観察し、表示ムラの発生の有無を下記評価基準にしたがって評価した。
【0141】
〈評価基準〉
○:表示ムラは全く認められなかった。
△:表示ムラが僅かに認められた。
×:表示ムラが顕著に認められた。
【0142】
【表3】

【0143】
表3から、本発明の硬化性組成物で作製したフォトスペーサーは高い変形回復率を示すことがわかる。更に、低露光量でフォトスペーサーを作製した場合でも、同様に高い変形回復率を示すことから、硬化性樹脂層の表面からの酸素の影響を軽減し、硬化性樹脂層全体の効果的な重合が促進されていることが推察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐及び/又は脂環構造を有する基と、酸性基を有する基と、エポキシ基を有する基とを含有する樹脂と、重合性化合物と、光重合開始剤と、界面活性光重合開始剤とを少なくとも含む硬化性組成物。
【請求項2】
前記界面活性光重合開始剤は、置換されていてもよい炭素数3以上30以下のアルキル基、置換されていてもよいシロキサン基及び置換されていてもよいフッ素化アルキル基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記界面活性光重合開始剤は、トリハロメチル−s−トリアジン化合物、トリハロメチルオキサジアゾール化合物、α−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、又はオキシム化合物から誘導される置換基を含む化合物である、請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記脂環構造を有する基は、置換されていてもよい炭素数6以上25以下の環状化合物に由来する基である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の硬化性組成物を塗布することで、支持体上に硬化性組成物層を形成する工程を有するフォトスペーサーの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のフォトスペーサーの製造方法により製造されたフォトスペーサーを備えた液晶表示装置用基板。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶表示装置用基板を備えた液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−53663(P2009−53663A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153208(P2008−153208)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】