説明

硬化性組成物の製造方法および装置

【課題】 製鋼の精錬時に発生したスラグを徐冷して得られた大径の徐冷スラグ塊を硬化性組成物に必要な骨材の全量に使用して、この骨材と水硬性材料、水等の硬化性組成物構成材料が常に一定の配合割合でもって混練してなる硬化性組成物を能率よく製造する。
【解決手段】 徐冷スラグ塊を破砕装置によって破砕して複数個の貯留容器に選択的に該破砕物を供給し、各貯留容器に一回分の硬化性組成物の製造に必要な一定量の破砕物を貯留する一方、一つの貯留容器内の破砕物を全量、混練部に供給すると共にこの破砕物の量に応じた所定量の水硬性材料と水と混和剤を供給して攪拌することにより硬化性組成物の製造すると共に、この製造中に空になった上記貯留容器内に一定量の破砕物を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼の精錬等において発生するスラグの塊を破砕し、この破砕物を骨材相当分として用いる硬化性組成物の製造方法とその方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用の観点から鉄鋼スラグを生コンクリートの骨材の一部として使用したり、既存のコンクリート構造物を解体した際に発生するコンクリート塊を生コンクリートに必要な骨材の全量として使用することが行われている。例えば、図6に示すように、既存のコンクリート塊Aを破砕装置Bにバックホウ等によって挿入して破砕し、この破砕物A'を所定量ずつ、複数個の容器Cに収容してストックヤードDにストックしておき、生コンクリートの製造時には図7に示すように容器CをクレーンEによってつり上げて混練装置Fに投入すると共にこの混練装置Fにセメントや水等の他のコンクリート構成材料を供給して攪拌することにより生コンクリートを製造する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、この生コンクリートの製造方法によると、コンクリート構造物を解体してなるコンクリート塊Aを堆積しておく場所と共に、破砕装置Bによって破砕された破砕物A'を貯留している複数個の容器Cを一旦、保管しておくストック場所を必要とするばかりでなく、生コンクリートの製造時には容器Cを一個ずつ、クレーンEによって吊り上げて混練装置Fに投入するといった煩雑な作業を必要するといった問題点がある。
【0004】
そのため、特許文献1に記載されているように、コンクリート塊を破砕する破砕部の下方に混練部を配設し、上記破砕部に一定量のコンクリート塊を投入して破砕したのち、この一定量の破砕物全量を下方の混練部に排出すると共に該混練部に破砕物の量に応じた配合割合でもってセメントや水、混和剤等のコンクリート構成材料を添加して攪拌することにより生コンクリートを製造する方法が開発されている。
【特許文献1】特開2001−150426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この生コンクリートの製造方法によれば、破砕部に一定量のコンクリート塊を投入したのちは、混練部により所定量の生コンクリートの製造が行われてこの生コンクリートを混練部からミキサ車等の運搬車に供給するまで一旦、破砕部に対するコンクリート塊の投入を停止しておかなければならず、さらに、破砕部内でのコンクリート塊の全量の破砕が完了するまでは混練部による混練が行われないので、生コンクリートの製造効率が極めて悪く、ミキサ車等の運搬車の待機時間が長くなるといった問題点があった。
【0006】
一方、既設のコンクリート構造物の解体物と同様に産業廃棄物である上述した鉄鋼スラグにおいては、そのスラグ塊の破砕物を生コンクリートの一部の細骨材として利用することが行われているが、生コンクリート等の硬化性組成物に必要な粗骨材及び細骨材の全量を鉄鋼スラグの破砕物から得ることは行われていない。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鉄鋼スラグ等のスラグ塊の破砕物を硬化性組成物に必要な骨材量の全量として使用すると共に、一定量の硬化性組成物を連続的に効率よく製造することができる硬化性組成物の製造方法とその方法を実施するための装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の硬化性組成物の製造方法は、請求項1に記載したように、鉄鋼スラグ等を徐冷することによって得られた大径の徐冷スラグ塊を硬化性組成物の骨材としての使用に適した大きさに破砕してこの破砕物全量を複数個の貯留部に一定量ずつ供給する一方、既に一定量の破砕物を貯留している貯留部から該破砕物を全量、骨材として混練部に供給すると共に、この破砕物の供給量に応じた所定量の水と水硬性材料とを上記混練部に供給して混練することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、徐冷スラグ塊の破砕物全量と水と水硬性材料とからなる上記硬化性組成物の製造方法を実施するための装置であって、徐冷スラグ塊を硬化性組成物の骨材として適した大きさに破砕する破砕部と、この破砕部によって破砕された一定量の破砕物全量を直接受け入れて貯留する複数個の貯留容器を備えた貯留部と、これらの貯留容器のうち、一つの貯留容器内の破砕物の全量を受け入れて該破砕物全量と水と水硬性材料とを混練する混練部とから構成している。
【0010】
この請求項2に記載の硬化性組成物の製造装置において、請求項3に係る発明は、上記貯留部として、複数個の貯留容器のうち一つの貯留容器内に一定量の破砕物を貯留したときに、その破砕物全量を混練部に供給すると同時に破砕物の受け入れを他の貯留容器に切り換えるように構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬化性組成物の骨材として使用に適した大きさに破砕した徐冷スラグの破砕物を、貯留部における複数個の貯留容器に順次、貯留する一方、これらの貯留部における一つの貯留容器内の破砕物を全量、該貯留容器から混練部に供給してこの破砕物の量に応じた所定量の他の硬化性組成物構成材料と攪拌、混合して硬化性組成物を製造するものであるから、混練部によって硬化性組成物を製造中においても徐冷スラグ塊の破砕を継続しながら上記複数個の貯留容器における空の貯留容器に一定量の徐冷スラグ塊の破砕物の供給を行うことができると共に、混練部による一定量の硬化性組成物の製造後には直ちに該混練部に上記複数個の貯留容器における一つの貯留容器から一定量のスラグ破砕物の供給と共にこの破砕物の量に応じた配合割合でもって水や水硬性材料等の他の硬化性組成物構成材料を供給することにより硬化性組成物を製造することができ、従って、硬化性組成物の製造が効率よく行えてミキサ車等の運搬車に対する一定量の硬化性組成物の供給を順次、遅滞なく行うことができる。
【0012】
さらに、貯留部における各貯留容器には一回の硬化性組成物の製造に使用される一定量のスラグ破砕物が貯留されていると共にこの破砕物全量と、この量に応じた量の他の硬化性組成物構成材料とを所定の配合割合でもって混練部に供給するものであるから、常に一定の物性を有する一定量の硬化性組成物を安定的に製造することができる。
【0013】
また、スラグ破砕部の破砕物から排出される徐冷スラグ塊の破砕物は、複数個の貯留容器のうち一つの貯留容器内に一定量の破砕物を貯留したときに、その破砕物全量を混練部に供給すると同時に破砕物の受け入れを他の貯留容器に切り換えるように構成しているので、破砕部による徐冷スラグ塊の破砕処理速度と混練部における硬化性組成物の製造速度とを同調させながら簡単な装置により徐冷スラグ塊の破砕処理と一定量の硬化性組成物の製造とを能率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は天然骨材を使用することなく、鉄鋼スラグを徐冷することによって得られた大径の徐冷スラグ塊の破砕物を骨材として使用し、この骨材にスラグ微粉末やフライアッシュ、消石灰、セメントなどの水硬性材料と水とを添加、混練することによって硬化性組成物を製造する方法を実施するための基本構成を示すもので、鉄鋼精錬時において発生する鉄鋼スラグを徐冷することにより得られた大径の徐冷スラグ塊Aを破砕するための破砕部1の下方に、この破砕部1によって破砕された骨材としてのスラグ破砕物を一定量ずつ貯留しておく複数個の貯留容器2a1 、2a2 (図においては2個)を備えた貯留部2を配設してあり、さらに、この貯留部2の下方に該貯留部2における一個の貯留容器2a1 又は2a2 から排出されるスラグ破砕物全量と上記水及び水硬性材料等の他の硬化性組成物構成材料とを混練する混練部3を配設してある。なお、破砕部1を構成する破砕装置としては、ジョークラッシャ、コーンクラッシャ、ロールクラシャ等を採用することができる。
【0015】
破砕部1によって破砕された徐冷スラグ塊の破砕物を上記貯留部2における各貯留容器2a1 、2a2 内に供給するための破砕物搬送路4は管路からなり、この管路は上端開口部を破砕部1の下端の破砕物落下口1aに臨ませている垂直な管路部4aと、この垂直な管路部3aの下端から分岐して各貯留容器2a1 、2a2 の上端にそれぞれ連通している分岐管路部4a1 、4a2 とからなり、垂直な管路部4aの下端部内には分岐管路部4a1 、4a2 に対して破砕物の供給を切り替えるための切替ダンパ5を配設している。また、各貯留容器2a1 、2a2 には、分岐管路部4a1 、4a2 を通じてそれぞれ投入される破砕物を計量する計量器6a1 、6a2 がそれぞれ付設されてあり、この計量器6a1 、6a2 によって貯留容器2a1 、2a2 内に一定量、即ち、一回の硬化性組成物の製造に必要な量のスラグ破砕物が収容されたことを検出された場合に、該計量器6a1 、6a2 からダンパ制御部CPU を介して上記切替ダンパ5に信号を発してこの切替ダンパ5を切り替えるように構成している。
【0016】
さらに、各貯留容器2a1 、2a2 の底面は扉によってそれぞれ開閉させられる排出口2b1 、2b2 に形成されてあり、これらの排出口2b1 、2b2 にホッパ7の上端開口部を臨ませていると共に該ホッパ7の下端を上記混練部3上に臨ませている。また、この混練部3には該混練部3による一回の硬化性組成物の製造に必要な量に計量された水と水硬性材料と混和剤をそれぞれの供給管路を通じて供給するように構成している。
【0017】
このように構成したので、破砕部1によって破砕された徐冷スラグ塊の破砕物を一定量、収容、貯留している一つの貯留容器2a1 の下端排出口を開放して該容器内の破砕物を全量、ホッパ6を通じて混練部3内に投入すると共に、この破砕物の量に対して所定の硬化性組成物を製造するための配合割合となるように計量した水と水硬性材料と混和剤を混練部3に投入して攪拌、混練することにより一定量の硬化性組成物を製造する。なお、混和剤とは減水剤やAE剤など、コンクリートなどの硬化性組成物中に少しだけ混入してワーカビリティや初期強度の増大などの性質を改良するために用いるものの総称である。
【0018】
この混練部3による硬化性組成物の製造中において、上記空になった貯留容器2a1 には、破砕部1によって破砕物された徐冷スラグ塊の破砕物が上記破砕物搬送路4の垂直な管路部4aから切替ダンパ5を介して該貯留容器2a1 に連通する分岐管路部4a1 を通じて一回分の硬化性組成物の製造に必要な一定量だけ供給される。
【0019】
そして、破砕部1側からこの貯留容器2a1 内への破砕物の供給中において、上記混練部3内での一回分の硬化性組成物の製造が終了し、該硬化性組成物をミキサ車等の運搬車に供給した場合には、次の貯留容器2a2 内の破砕物を全量、混練部3内に投入すると共に上記同様にこのスラグ破砕物の量に対して所定の硬化性組成物を製造するための配合割合となるように計量した水と水硬性材料と混和剤を混練部3に投入して攪拌、混練し、硬化性組成物を製造する。
【0020】
この際、混練部3による硬化性組成物の製造中において、空になった該貯留容器2a2 内に、上記同様にして破砕部1によって破砕物された徐冷スラグ塊の破砕物を一定量、供給して貯留させる。破砕部1に徐冷スラグ塊Aを投入すると、この徐冷スラグ塊Aは硬化性組成物の骨材としての使用に適した大きさの破砕物に破砕され、この破砕物は落下口1aから破砕物搬送路4の垂直な管路部4aに投入される。破砕部1による徐冷スラグ塊Aの破砕処理は連続的に行われて破砕物は垂直な管路部4a内に次々と投下されると、該管路部4aの下端部内に配設している切替ダンパ5によって二つの貯留容器2a1 、2a2 におけるいずれか一方の空の貯留容器2a1 に連通している分岐管路部4a1 側に流通し、この分岐管路部4a1 を通じて上記空の貯留容器2a1 内に供給される。
【0021】
該貯留容器2a1 内に供給される破砕物の量は、計量器6a1 によって検出されてその量が一回の硬化性組成物の製造に必要な量に達すると、該計量器6a1 から上記切替ダンパ5に信号が発せられて該切替ダンパ5が他方の分岐管路部4a2 側に切り替わり、他方の貯留容器2a2 が空の場合には破砕部1によって破砕された徐冷スラグ塊Aの破砕物は垂直な管路部4aからこの分岐管路部4a2 内を通過して他方の貯留容器2a2 内に供給され、該貯留容器2a2 への供給量が上記一方の貯留容器2a1 と同量となった時に計量器6a2 から上記切替ダンパ5に信号が発せられて、該切替ダンパ5が一方の分岐管路部4a1 側に破砕物を供給できるように切り替わるものである。
【0022】
こうして、混練部3による一定量の硬化性組成物の製造が終了して次の硬化性組成物の製造を行う際に、上記貯留容器2a1 、2a2 のいずれか一方から直ちに一定量の破砕物を供給可能にしておくものである。
【0023】
なお、この硬化性組成物の製造方法を実施するための基本構成においては、破砕部1の下方に2個の貯留容器2a1 、2a2 を並設した2連式タイプのものを示したが、3個以上の貯留容器を使用した複連式タイプとしておいてもよい。
【0024】
図2は4連式タイプを示すもので、4個の貯留容器2a1 、2a2 、2a3 、2a4 を並設してなり、これらの貯留容器2a1 〜2a4 に破砕部1側から一定量のスラグ破砕物を供給するための破砕物搬送通路4としては上端開口部を破砕部1の落下口1aに臨ませている垂直な管路部4aの下端から第1切替ダンパ5aを介して2本の第1分岐管路4a1 、4a2 を連続させ、これらの各分岐管路4a1 、4a2 の下端からそれぞれ第2切替ダンパ5b1 、5b2 を介して2本一組とする二組の第2分岐管路4b1 、4b2 及び4b3 、4b4 にそれぞれ連続させてあり、これらの各第2分岐管路4b1 〜4b4 の開口下端を上記4個の貯留容器2a1 、2a2 、2a3 、2a4 の上端開口部にそれぞれ臨ませてなるものである。
【0025】
そして、4個の貯留容器2a1 〜2a4 の扉により開閉させられる下端排出口は2b1 〜2b4 は一つの共通するホッパ7を通じて上記実施の形態と同様に混練部3の上端に臨ませている。なお、各貯留容器2a1 〜2a4 には計量器6a1 〜6a4 が付設されている。
【0026】
このように構成したので、破砕部1によって破砕された徐冷スラグ塊の破砕物を一定量、収容、貯留している一つの貯留容器2a1 の下端排出口を開放して該容器内の破砕物を全量、ホッパ7を通じて混練部3内に投入すると共に、この破砕物の量に対して所定の硬化性組成物を製造するための配合割合となるように計量した水と水硬性材料と混和剤を混練部3に投入して攪拌、混練することにより一定量の硬化性組成物を製造する。そして、この硬化性組成物の製造中において、上記空になった貯留容器2a1 に、破砕部1によって破砕物された徐冷スラグ塊の破砕物を一定量、供給する。
【0027】
この場合、該貯留容器2a1 内が空になったことを計量器6a1 によって検出し、ダンパ制御部(図示せず)を介して上記第1、第2切替ダンパ5a、5b1 、5b2 に信号を発してこれらの第1、第2切替ダンパ5a、5b1 、5b2 を上記第1、第2分岐管路が貯留容器2a1 側に連通するように切り替えて破砕部1から該貯留容器2a1 に破砕物を供給し、該破砕物が一回分の硬化性組成物の製造に必要な一定量に達した時に計量器6a1 から信号を発して切替ダンパを切り替えることにより貯留容器2a1 への破砕物の供給を停止する。
【0028】
混練部3内での一定量の硬化性組成物の製造が終了すると、次の貯留容器2a2 内に貯留している一定量の破砕物を全量、混練部3内に投入して所定量の水や水硬性材料等の他の硬化性組成物構成材料と共に上記同様にして混練して硬化性組成物を製造し、この間に空になった貯留容器2a2 に破砕部1によって破砕された徐冷スラグ塊の破砕物を一定量、上記同様にして供給する。こうして、全ての貯留容器2a1 〜2a4 内に貯留している一定量の破砕物を混練部3に硬化性組成物の骨材として順次、投入して硬化性組成物を製造するものである。
【0029】
次に、図3、図4は切替ダンパを使用することなく複数個の貯留容器2a1 、2a2 ・・・に一定量の破砕物を供給、貯留させることができる装置を示すもので、この装置は、上記複数個の貯留容器2a1 、2a2 ・・・を回転中心軸2c回りに水平方向に旋回可能に並設していると共に上記破砕部1の破砕物落下口1aに管路4'の上端開口部を臨ませ、この管路4'の下端を上記複数個の貯留容器2a1 、2a2 ・・・のうちの一つの貯留容器上に臨ませてあり、さらに、各貯留容器に破砕物計量器(図示せず)を配設していると共に各貯留容器の底部に扉によって開閉可能な排出口2b1 、2b2 ・・・を設け、いずれか一つの貯留容器の下方に混練部3を設置してなるものである。
【0030】
上記貯留部2の具体的な構造としては、中心部に上記回転中心軸2cを配設している円筒形状の容器2'内を、周方向に一定間隔毎に配設した仕切板2dによって区画することより隣接する仕切板2dで囲まれた空間部を貯留容器に形成してなるもので、この円筒形状の容器2'の下端外周面にラック2eを一体に設けて、該ラック2eにモータ2fの回転軸に固着しているピニオン2gを噛合させてモータ2fの駆動により貯留容器2a1 、2a2 ・・・を順次、上記管路4'の下方にまで移動させ、さらに、管路4'の直下とは異なった位置にある混練部3の上方に一つの貯留容器を移動させるように構成している。
【0031】
このように構成したので、破砕部1によって破砕された徐冷スラグ塊Aの破砕物は、管路4'を通じて一つの貯留容器2a1 内に供給され、その供給量が計量器6a1 によって一定量となったことを検出されるとモータ2fを作動させて次の貯留容器2a2 を上記管路4'の下方にまで移動させ、該貯留容器2a2 内に破砕物を一定量、供給する。以下、同様に、空の或いは空になった貯留容器に管路4'を通じて破砕部1側からスラグ破砕物を供給する。
【0032】
一方、混練部3上に位置している貯留容器はその排出口を開放することによって貯留している破砕物を全量、混練部3内に投入すると共に、この破砕物の量に対して所定の硬化性組成物を製造するための配合割合となるように計量した水と水硬性材料と混和剤を混練部3に投入して攪拌、混練することにより一定量の硬化性組成物を製造する。そして、この硬化性組成物の製造中において、上記空になった貯留容器を管路4'の下方にまで移動させて破砕部1により破砕された徐冷スラグ塊Aの破砕物を管路4'を通じてこの貯留容器に一定量、供給する。なお、この貯留容器への破砕物の供給により、破砕物が貯留していない空の貯留容器がなくなると、管路4'の排出口を閉じると共に破砕部1による徐冷スラグ塊Aの破砕を停止させるように構成している。
【0033】
混練部3内での一定量の硬化性組成物の製造が終了すると、次の貯留容器内に貯留している一定量の破砕物を全量、混練部3内に投入して所定量の水や水硬性材料等の他の硬化性組成物構成材料と共に上記同様にして混練して硬化性組成物を製造し、この間に空になった貯留容器2a2 に破砕部1によって破砕された破砕物を一定量、上記同様にして供給する。こうして全ての貯留容器2a1 、2a2 ・・・内に貯留している一定量の破砕物を混練部3に硬化性組成物の骨材として順次、投入して硬化性組成物を製造するものである。
【0034】
図5は、上記硬化性組成物の製造方法を実施するための具体的な実施の形態を示すもので、破砕部1から貯留部2に至るまでの破砕物搬送路4としては第1コンベア41、第2コンベア42、第3コンベア43と上記切替ダンパ5を有する垂直な管路部4aと分岐管路部4a1 、4a2 とからなり、第1コンベア41上にはグリスリフィーダ8とジョークラッシャからなる一次破砕部1が配設されている。
【0035】
第3コンベア43の搬送始端部の上方には、上記第1コンベア41の搬送終端から落下するスラグ破砕物を受け入れる分粒装置10が配設されてあり、この分粒装置10のフィルター10a の網目を通過できない大径のスラグ破砕物を該フィルタ10a の傾斜下端から上記第2コンベア42上に排出すると共にこの第2コンベア42の搬送終端からバイブロフィーダ11を通じて上記一次破砕部1よりも細かく破砕することができる二次破砕装置1'に供給するように構成し、さらに、この二次破砕装置1'によって破砕されたスラグ破砕物を戻し路12を通じて上記第1コンベア41上に送り込むように構成している。
【0036】
そして、第3コンベア43の搬送終端の下方に、上記切替ダンパ5を有する垂直な管路部4aと分岐管路部4a1 、4a2 を介して貯留部2を配設していると共にこの貯留部2を構成している各貯留容器2a1 、2a2 の下方に第4コンベア44を配設し、該第4コンベア44の搬送終端部を2軸強制練ミキサーからなる混練部3上に臨ませている。
【0037】
一方、一次、二次破砕部1、1'や貯留部2とは別な場所にセメントなどの水硬性材料のサイロ13、水タンク14、減水剤槽15、AE剤槽16が設置されてあり、水硬性材料のサイロ13からはスクリューフィーダ17を通じて計量器18内に水硬性材料が供給されると共にこの計量器18から供給管路19を通じて上記混練部3に一定量の水硬性材料が供給されるように構成している。また、水タンク14は、圧送ポンプ20を有する水送り込み管路21を通じて水計量器22に水を送給すると共にこの水計量器22から水供給管路23を通じて上記混練装置2に一定量の水を供給するように構成している。
【0038】
さらに、減水剤槽15、AE剤槽16は、それぞれ圧送ポンプ24、25を有する送り込み管路26、27を通じて共通の混和剤計量器28に減水剤とAE剤を送り込むと共にこの混和剤計量器28から混和剤供給管路29を通じて上記混練装置2に一定量の混和剤を供給するように構成している。
【0039】
なお、必要に応じて適所に砂(川砂、海砂、水砕スラグ砂など)の貯留計量ホッパ30を設置し、このホッパ30から一定量の砂を第5コンベア45を通じて上記第4コンベア44に供給するように構成している。
【0040】
このように構成した装置によって硬化性組成物を製造するには、鉄鋼精錬時に生じた鉄鋼スラグを徐冷することによって得られた大径の徐冷スラグ塊をグリズリフィーダ8に投入すると、この徐冷スラグ塊に混入している細かいスラグはこのグリズリフィーダ8に張設しているスクリーン8aの網目を通過して下方の第1コンベア41上に載せられる一方、スクリーン8aを通過できない大径の上記徐冷スラグ塊はスクリーン8aの傾斜下端から破砕部1に投下され、この破砕部1によって所定大きさ以下に破砕されたのち、該破砕部1の落下口1aから上記第1コンベア41上に落下する。そして、上記スクリーン8aの網目を通過した小径のスラグと共に破砕部1で破砕された破砕物(以下、単にこれらを破砕物という)は第1コンベア41の搬送終端から分粒装置10に投入される。
【0041】
分粒装置10に破砕物が投入されると、この分粒装置10のスクリーン10a の網目を通過した破砕物は第3コンベア43上に載せられる。このスクリーン10a の網目の大きさは硬化性組成物用の骨材として使用可能な骨材の最大限の大きさに形成されてあり、従って、このスクリーン10a を通過した破砕物は粗骨材及び細骨材として使用することができる。一方、スクリーン10a を通過できない大径の破砕物は、スクリーン10a の傾斜下端から第2コンベア42上に排出され、この第2コンベア42からバイブロフィーダ11を通じて二次破砕装置1'に投入される。
【0042】
二次破砕装置1'によって破砕処理された破砕物は、戻し路12を通じて再び上記第1コンベア41上に送られてこの第1コンベア41から分粒装置10に投入され、上記同様に、この分粒装置10により骨材として適した破砕物と骨材よりも大径の破砕物とに分粒されて適しない破砕物は再度、二次破砕装置1'側に送られて破砕処理され、これを繰り返すことによって全ての破砕物を硬化性組成物用の骨材として適した大きさの破砕物に処理して分粒装置10から第3コンベア43上に投下、供給する。
【0043】
こうして骨材の大きさに処理された破砕物は、第3コンベア43から切替ダンパ5を設けている管路部4a内に投入され、切替ダンパ5を空の貯留容器2a1 又は2a2 に連通する分岐管路部4a1 又は4a2 側に切り替えることによって空になっている貯留容器2a1 又は2a2 、或いは、空になった貯留容器2a1 又は2a2 に破砕物を供給して貯留させる。この際、上述したように、各貯留容器2a1 、2a2 には計量器6a1 、6a2 が付設されてあり、貯留容器2a1 、2a2 に一回分の硬化性組成物の製造に必要な量のスラグ破砕物が供給されると、検出器6a1 、6a2 からその量に達した信号を発してダンパ制御部(図示せず)を介して切替ダンパ5を切り替えて該貯留容器2a1 又は2a2 に対する破砕物の供給を停止する。なお、貯留部2の構造としては、このような2連式タイプに限らず、上述したように4連式タイプ等、複数の貯留容器を備えた装置であってもよく、また、第3コンベア43から垂直管路部4aを通じての各貯留容器に対する破砕物の供給は、切替ダンパ5によることなく、上記図3、図4に示すような装置であってもよく、さらは、その他の適宜な構造のものを採用してもよい。
【0044】
そして、硬化性組成物の製造時には、破砕物を一定量、貯留している一つの貯留容器2a1 又は2a2 の下端排出口を開放すると、該貯留容器2a1 又は2a2 内の破砕物が全量、第4コンベア44上に投下されたこの第4コンベア44により混練部3に投入される。さらに、該混練部3に、水硬性材料計量器18と水計量器23及び混和剤計量器28から一回の硬化性組成物の製造に必要な量の水硬性材料、水及び混和剤も投入されて上記骨材としての破砕物と共に混練することにより硬化性組成物が製造される。
【0045】
混練部3に水硬性材料や水、混和剤が供給された直後に、或いは、この硬化性組成物の製造中に、セメントサイロ13からスクリューフィーダ17によって水硬性材料を上記水硬性材料の計量器18に供給して一回の硬化性組成物の製造に要する一定量の破砕物の量に応じた配合割合となるように一定量の水硬性材料を計測し、この計量器18内で次の硬化性組成物の製造に待機させておく。同様に、水や減水剤、AE剤も水タンク14や減水剤槽15、AE剤槽16から圧送ポンプ20、24、25によって送り込み管路26、27を通じて上記水計量器22、混和剤計量器28にそれぞれ供給され、一回の硬化性組成物の製造に要する一定量の破砕物の量に応じた配合割合となるように計測されてそれぞれの計量器22、28内で次の硬化性組成物の製造に待機させておく。
【0046】
混練部3による一回分の硬化性組成物の製造が行われて該混練部3の排出ホッパからミキサ車等の運搬車Bに硬化性組成物を収容させたのち、再び、破砕物を一定量、貯留している一つの別な貯留容器から破砕物を全量、上記同様に混練部3に供給すると共に、水硬性材料計量器18、水計量器22、混和剤計量器28からこれらの計量器内に滞留させておいた一回分の硬化性組成物の製造に必要な量の水硬性材料と水、混和剤も混練部3に供給して次の一定量の硬化性組成物を製造する。
【0047】
そして、この硬化性組成物の製造が終わるまでに、上記同様に水硬性材料計量器18、水計量器22、混和剤計量器28に一回分の硬化性組成物の製造に必要な量の水硬性材料と水、混和剤を収容して準備しておくと共に、硬化性組成物の製造時には一定量の破砕物を貯留している貯留容器が少なくとも1つ、存在するように空になった貯留容器に一定量の破砕物を供給、貯留させておくものである。
【0048】
上記のように製造された硬化性組成物は良好な流動性を確保することができてスランプ等の物性において優れていると共に、打設したのちの強度の発現にも問題はない。なお、スラグ破砕物からなる骨材に添加する水硬性材料としては、セメント以外にも高炉スラグ微粉末やフライアッシュ、消石灰またはこれらの混合物等が使用できる。さらに、徐冷スラグ塊としては、高炉スラグ、製鋼スラグのような鉄鋼スラグに限らず、ゴミ溶融スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグなど、あらゆる炉で発生するスラグを徐冷したものが適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】硬化性組成物の製造装置の基本構造を示す簡略縦断面図。
【図2】貯留容器を4連式にした場合の簡略縦断面図。
【図3】別な構造の貯留部の簡略斜視図。
【図4】その縦断面図。
【図5】具体的な硬化性組成物製造装置の全体図。
【図6】貯留容器をストックしておく従来例を示す簡略図。
【図7】その貯留容器から破砕物を混練装置に投下している状態の簡略図。
【符号の説明】
【0050】
1 破砕部
2 貯留部
2a1 、2a2 貯留容器
3 混練部
4 破砕物搬送路
4a 垂直な管路部
4a1 、4a2 分岐管路部
5 切替ダンパ
6a1 、6a2 計量器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
徐冷スラグ塊を硬化性組成物の骨材として適した大きさに破砕してこの破砕物全量を複数個の貯留部に一定量ずつ、供給する一方、既に一定量の破砕物全量を貯留している貯留部から該破砕物を全量、骨材として混練部に供給すると共に、この破砕物の供給量に応じた所定量の水と水硬性材料とを上記混練部に供給して混練することを特徴とする硬化性組成物の製造方法。
【請求項2】
徐冷スラグ塊の破砕物全量と水と水硬性材料とからなる硬化性組成物の製造装置であって、徐冷スラグ塊を硬化性組成物の骨材として適した大きさに破砕する破砕部と、この破砕部によって破砕された一定量の破砕物全量を直接受け入れて貯留する複数個の貯留容器を備えた貯留部と、これらの貯留容器のうち、一つの貯留容器内の破砕物の全量を受け入れて該破砕物全量と水と水硬性材料とを混練する混練部とからなることを特徴とする硬化性組成物の製造装置。
【請求項3】
貯留部は、複数個の貯留容器のうち一つの貯留容器内に一定量の破砕物を貯留したときに、その破砕物全量を混練部に供給すると同時に破砕物の受け入れを他の貯留容器に切り換えるように構成していることを特徴とする請求項2に記載の硬化性組成物の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−341413(P2006−341413A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167634(P2005−167634)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】